JP3882363B2 - 楽音信号のエフェクト回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、入力される楽音信号を利用して特定帯域の音を発生するエフェクト回路に関し、もとの楽音信号に含まれていない帯域の音をもとの楽音信号に同期して発生できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
楽器の演奏や音楽の再生等において特定帯域の音を強調しようとする場合、従来においてはそれらの楽音信号をイコライザに入力して希望する帯域のゲインを持ち上げることにより実現していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記イコライザによる方法では、特定帯域の音(例えば30Hz等の低音)を強調しようとしても、もとの楽音信号(原音)にその帯域成分が含まれていなければあるいは非常にわずかしか含まれていなければ、強調することはできなかった。また、演奏音や再生音のアタック感、リリース感等はもとの楽音信号に相似したものに限られていた。
【0004】
この発明は、従来の技術における問題点を解決して、もとの楽音信号に含まれていないあるいは非常にわずかしか含まれていない帯域の音をもとの楽音信号に同期して発生できるようにした楽音信号のエフェクト回路を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、楽音信号を入力し、その音量レベルの時間変化を検出し、該時間変化に対応した波形を有する信号を生成する波形生成器と、任意の共振周波数に設定され、前記波形生成器の出力信号を入力する共振器とを具備し、該共振器から出力される共振信号をスピーカの駆動信号として出力してなるものである。この発明によれば、演奏音や再生音の音量レベルの時間変化を検出することによりパルス系の波形が得られ、このパルス系の信号で共振器がトリガされて、該共振器から共振信号が発生されて再生される。したがって、もとの楽音信号に含まれていない帯域の音であっても発生することができる。この発生された共振信号をもとの楽音信号にミキシングして再生することにより、特定の帯域を強調することができる。
【0006】
共振器は、共振周波数の異なるものを複数個並列に設けることができる。共振器の共振周波数、Q、入力ゲイン等のパラメータを使用者の操作に基づき可変できるようにしておけば、効果を可変することができる。すなわち、共振周波数を制御することにより、共振信号の帯域を可変することができる。また、Qを制御することにより、共振信号のリリース(音の余韻)を可変することができる。すなわち、Qが高いほど、共振回路の共振時間が長くなり、結果的にリリース感を可変することができる。また、入力ゲインを制御することにより、共振信号の帯域の音量を可変することができる。また、共振信号ともとの楽音信号のミキシング比率を使用者の操作に基づき可変できるようにすることによってもとの楽音信号に対する強調の度合を可変することができる。
【0007】
前記波形生成回路は、例えば、入力される楽音信号の波形を絶対値化する絶対値回路と、該絶対値回路の出力信号の波形のピーク値を検出し保持して出力し、保持した値より大きなピーク値が検出されたときは保持値を該より大きなピーク値に更新して出力し、該更新が行われないときは適宜の時定数で出力を減少させるピーク値保持回路とを具備して構成することができる。この場合、ローパスフィルタのカットオフ周波数を使用者の操作に基づき可変できるようにしておけば、共振信号のアタック(音の立ち上がり)を可変することができ、結果的に、共振信号による帯域の音のアタック感を可変することができる。すなわち、カットオフ周波数を上げるほどアタック感は強くなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図1に示す。入力端子10から入力される楽音信号(楽器の演奏信号、音楽の再生信号、ボーカル信号等)は、トリガ生成器12に入力される。トリガ生成器12はこの発明の波形生成器に相当するもので、入力される楽音信号のエンベロープに相当する音量レベルの時間変化を検出し、この時間変化に対応した波形を有する信号(楽器の演奏あるいは音楽の再生に伴ってレベル変化するパルス系の信号となる。)を生成し出力する。トリガ生成器12の出力信号は共振器14,16,18に並列に入力される。共振器14,16,18のQは大きな値に設定され、共振周波数は異なる値(付加したい帯域の音に相当する周波数)に設定されている。共振器14,16,18はパルス系の信号が入力されると共振し、それぞれの共振周波数を中心帯域とする共振信号を発生する。
【0009】
共振器14,16,18から出力される信号は、可変アンプ20,22,24でミキシング比率が調整された後ミキシング回路26でミキシングされる。ミキシングされた共振信号はさらにミキシング回路28でドライ音信号(もとの楽音信号)とミキシングされる。共振信号とドライ音信号のミキシング比率は可変アンプ30,32で調整される。ミキシング回路28の出力信号は出力端子34から出力され、アンプで増幅されてスピーカで発音される。
【0010】
図1の回路において、共振器14,16,18の共振周波数を例えば30Hz,70Hz,100Hz程度の周波数にそれぞれ設定し、通常のベースギターの楽音信号を入力すると、この楽音信号に同期して超低域がブーストされた音が発生される。したがってベースギターそのものの演奏音に、ベースアンプの持つ個性とか、演奏される部屋の共振周波数とか、よりアタック感を持った音が付加されるといった効果が期待でき、イコライザだけでは得られない音楽的な効果として用いることができる。なお、共振器14,16,18の共振周波数は低域に限るものではないが、曲への応用上は低域の方が扱いやすい。
【0011】
図1の回路の具体例を図2に示す。図2の(a)〜(g)の箇所の信号波形を図3に(a)〜(g)でそれぞれ示す。入力端子10L,10Rから入力された左右各チャンネルの楽音信号(ディジタル信号)は、可変アンプ36,38でレベルバランスが調整された後ミキシング回路40でミキシングされて(図3(a))、トリガ生成器12に入力される。トリガ生成器12の入力側に入力制限回路を設けて、一定のレベル以上の信号のみを通過させるようにすることもできる。トリガ生成器12に入力された信号は、絶対値回路42で両波整流されて絶対値化されて(図3(b))、ピーク値保持回路44に入力される。ピーク値保持回路44は、その入力信号の波形のピーク値を検出し保持して出力する回路で(図3(c))、より大きなピーク値が検出されたときはそのピーク値に更新し、更新が行われなくなると適宜の時定数で出力を減少させるように構成されている。
【0012】
ピーク値保持回路44の構成および動作について説明する。絶対値化された入力信号は、反転アンプ48で逆性が反転され、加算器50で帰還回路からの信号と加算される。整流回路52はその入力が0または正のときは該入力をそのまま通過させ、負のときは0を出力する。
【0013】
整流回路52の出力信号と絶対値回路42の出力信号は加算器54で加算され、その加算出力は1サンプル遅延回路56で1サンプル遅延され、帰還アンプ58を介して加算器50に入力される。
【0014】
いま、図4に示すように、ピーク値保持回路44の入力をAn 、出力をyn 、帰還アンプ58のゲインをK(K≦1)とする。このとき加算器50の出力はKyn-1 −An となる。整流回路52の出力をfunc(x) (ただしx=Kyn-1 −An )とすると、func(x) の値は、
Figure 0003882363
となる。そして、出力yn
n =An +func(Kyn-1 −An ) (3)
となる。
【0015】
いま仮に、K=1とすると、yn-1 ≧An のときは、(1)式から
func(Kyn-1 −An )=yn-1 −An
となるから、(3)式から
n =yn-1
となる。また、yn-1 <An のときは、(2)式から
func(Kyn-1 −An )=0
となるから、(3)式から
n =An
となる。すなわち、ピーク値保持回路44は、現入力サンプル値An が1サンプル前の出力値yn-1 より小さいかまたは等しければ、1サンプル前の出力値yn-1 を保持して出力し、現入力サンプル値An が1サンプル前の出力値yn-1 より大きければ、保持値を現入力サンプル値An に更新して出力する。このようにしてピーク値保持が行われる。
【0016】
ただし、K−1であるとピーク値が保持されたままになるので、K<1に設定して時定数を持たせて、入力値が減少したときに、保持している値を少しずつ減少させるようにする。Kの値は使用者の操作により変更可能であり、Kの値によって減少時の時定数が調整される。すなわち、Kの値を小さくするほど時定数は小さくなり、保持値の減少速度は速くなる。
【0017】
図2において、ピーク値保持回路44の出力信号はローパスフィルタ46でピーク、ディップが除去される(図3(d))。ローパスフィルタ46のカットオフ周波数は使用者の操作により変更可能であり、このカットオフ周波数によって共振信号のアタック感を調整することができる。すなわち、カットオフ周波数を下げるほどピーク値保持回路44の出力信号波形がなまり、共振信号のアタック感が弱くなり、カットオフ周波数を上げるほどアタック感が強くなる。
【0018】
トリガ生成器12の出力信号は共振器14,16,18に入力される。共振器14,16,18の入力段に配置されている可変アンプ60,62,64は共振器14,16,18の入力ゲインを調整するもので、使用者の操作に基づき個別に調整される。この入力ゲインの調整により共振信号のミキシング比率を変えて効果を調整したり、共振器14,16,18のオーバーフローを防止することができる。
【0019】
共振器14,16,18は、例えばQ値が非常に高い2次の極を持つディジタルフィルタで構成され、共振周波数が異なる値fc1,fc2,fc3に設定され、その入力がパルス系信号の場合、共振周波数fc1,fc2,fc3を増幅する出力が得られる(図3(e),(f),(g))。共振器14,16,18内の後段の1次フィルタ66,68,70は、共振周波数をそれぞれfc1,fc2,fc3としたローパスフィルタまたはハイパスフィルタで構成され、余分な成分を排除する働きをする。共振器14,16,18の共振周波数fc1,fc2,fc3は使用者の操作に基づいて様々に変更することができる。また、共振器14,16,18のQ値も使用者の操作に基づき調整可能で、Q値を変えることによってリリース感を調整することができる。すなわち、Q値を高くするほどパルス系入力によって得られる共振時間が長くなり、リリース感が長く得られる。
【0020】
共振器14,16,18から出力される共振信号は可変アンプ20,22,24を介してミキシング回路26でミキシングされる。可変アンプ20,22,24は使用者の操作に基づいてミキシング比率の調整を行う。なお、図2の構成によれば、共振信号のミキシング比率の調整を共振器14,16,18の入力側の可変アンプ60,62,64と出力側の可変アンプ20,22,24の両方で行えるようにしたが、いずれか一方側だけで行えるようにしてもよい。
【0021】
ミキシング回路26の出力信号はハイパスフィルタ72で直流成分が除去され、ローパスフィルタ74で高域成分が除去される。ローパスフィルタ74のカットオフ周波数は使用者の操作に基づき調整可能で、その調整により効果を変更することができる。ローパスフィルタ74から出力される共振信号は可変アンプ30L,30Rを介してミキシング回路28L,28Rに入力される。ドライ信号は可変アンプ32L,32Rを介してミキシング回路28L,28Rに入力される。ミキシング回路28L,28Rはドライ音信号と共振信号をミキシングする。ドライ音信号と共振信号のミキシング比率およびパン(左右バランス)は、使用者の操作に基づき調整することができる。ミキシング回路28L,28Rの出力信号は出力端子34L,34Rから出力され、D/A変換され、アナログアンプで増幅されてスピーカから再生される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】 図1の具体例を示す回路図である。
【図3】 図2に(a)〜(g)で示した箇所のそれぞれの波形図である。
【図4】 図2のピーク値保持回路44の動作説明図である。
【符号の説明】
12…トリガ生成器(波形生成器)、14,16,18…共振器、26,28,28L,28R…ミキシング回路、42…絶対値回路、44…ピーク値保持回路、46…ローパスフィルタ。

Claims (6)

  1. 楽音信号を入力し、その音量レベルの時間変化を検出し、該時間変化に対応した波形を有する信号を生成する波形生成器と、
    任意の共振周波数に設定され、前記波形生成器の出力信号を入力する共振器とを具備し、
    該共振器から出力される共振信号をスピーカの駆動信号として出力してなる楽音信号のエフェクト回路。
  2. 楽音信号を入力し、その音量レベルの時間変化を検出し、該時間変化に対応した波形を有する信号を生成する波形生成器と、
    共振周波数が異なる値に設定され、前記波形生成器の出力信号を並列に入力する複数の共振器と、
    該複数の共振器から出力される複数の共振信号をミキシングするミキシング回路とを具備し、
    該ミキシング回路から出力される共振信号をスピーカの駆動信号として出力してなる楽音信号のエフェクト回路。
  3. 前記波形生成器が、
    入力される楽音信号の波形を絶対値化する絶対値回路と、
    該絶対値回路の出力信号の波形のピーク値を検出し保持して出力し、該保持した値より大きなピーク値が検出されたときは保持値を該より大きなピーク値に更新して出力し、該更新が行われないときは適宜の時定数で出力を減少させるピーク値保持回路と、
    該ピーク値保持回路の出力信号のピーク、ディップを除去するローパスフィルタと
    を具備してなる請求項1または2記載の楽音信号のエフェクト回路。
  4. 前記ローパスフィルタのカットオフ周波数が、使用者の操作に基づき可変に構成されている請求項3記載の楽音信号のエフェクト回路。
  5. 前記共振器の共振周波数、Q、入力ゲインのうち1または複数のパラメータが、使用者の操作に基づき可変に構成されている請求項1から4のいずれかに記載の楽音信号のエフェクト回路。
  6. 前記出力される共振信号ともとの楽音信号をミキシングするミキシング回路をさらに具備し、
    該ミキシング回路でミキシングする前記共振信号ともとの楽音信号のミキシング比率が、使用者の操作に基づき可変に構成されている請求項1から5のいずれかに記載の楽音信号のエフェクト回路。
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