JP3881264B2 - 可変利得等化器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可変の光減衰器に関し、特に光ファイバ増幅器の利得傾斜を補正し、利得の波長特性を平坦にする用途に好適な可変利得等化器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光伝送システムの大容量化を実現する方法のひとつとして、1つの伝送路に波長の異なる2つ以上の光信号を多重して伝送する波長多重(WDM)光伝送方式が注目されている。また光ファイバアンプによって、2つ以上の波長の光信号を一括して増幅する技術が広く用いられている。
【0003】
ここで問題となるのが、光ファイバアンプによって2つ以上の信号を増幅する場合の、増幅度の波長依存性である。
【0004】
この増幅度の波長依存性により、利得が小さい波長域に含まれる光信号のSN比は悪くなる。特に1.55μm帯で波長依存性が大きいEDFA(エルビウム添加ファイバ増幅器)を直列に接続する場合には、その影響が大きくなる。
【0005】
この影響を除去する為に、送信機側の出力を予め変化させるなどの対策が取られるが、伝送システム敷設後入力信号強度の変化などに伴い、増幅度の波長特性は変化する為、伝送路中の信号強度の波長依存性に対応して、能動的にそれを補正するデバイスが求められている。
【0006】
このような目的に用いられるデバイスとして、例えば、特開2001−356310号公報で開示された可変利得等化器がある。図12は、このデバイスの動作原理を示した図である。すなわち、図12は、従来の可変利得等化器を示す図である。
【0007】
図12において、101は偏光分離素子、102は偏光面一致制御素子、103は第一の偏光角可変素子、103aは第二の偏光角可変素子、104は透過率波長特性の可変素子、105は偏光面復帰素子、106は位相差制御素子、107は偏光合成素子、108は偏光角制御電流生成手段、109及び109aはコリメート系、109−1及び109−1aはフェルール、109−2及び109−2aはレンズ・ホルダ、109−3及び109−3aはコリメート・レンズ、110は入力光ファイバ、そして、110aは出力光ファイバである。
【0008】
図12において、入力光ファイバ110から射出した光束は、コリメート・レンズ109−3によって平行光にされた後に、偏光分離素子101に入射する。ここで用いられる代表的な偏光分離素子としては平行ルチル板がある。
【0009】
次に、入力された光は、円偏光、直線偏光、楕円偏光などの任意の偏光状態を有するが、偏光分離素子101にて、偏光の振動方向が偏光分離素子101の結晶軸を含む面に対して平行な成分(異常光成分)と、垂直な成分(常光成分)とに、空間的に分離されて偏光分離素子101を射出する。
【0010】
ここで、常光は、偏光分離素子101の入射面において、屈折することなく直進し、入射面と平行な射出面においても屈折することなく直進する。一方、異常光は、偏光分離素子101の入射面で屈折してから直進し、入射面と平行な射出面において再び屈折してから入射光と平行な方向に射出する。
【0011】
偏光分離素子101を射出した光束のうち片方は、偏光面一致制御素子(主に1/2波長板)102に入射し、偏光方向(振動面)を回転させられて、もう一方の光束と振動方向を一致させられる。
【0012】
その後、2本の光束は、偏光角可変素子103に入射する。偏光角可変素子は磁界によって光の偏光角を回転させるYIG(イットリウム・鉄・ガーネット)結晶を用いたファラデー回転子103−1と、このファラデー回転子103−1に磁界をかける磁石系103−2によって構成されている。
【0013】
磁石系103−2は、永久磁石と電磁石によって構成されており、永久磁石で光の進行方向に平行な磁界を、電磁石で光の進行方向に垂直な磁界を形成する。108は該電磁石に電流を供給し、磁界の強度を制御する偏光角制御電流生成手段である。
【0014】
上記状態で該電磁石によって磁界H1に垂直方向の磁界H2をかけると、合成磁界の方向は磁界H1と磁界H2によって形成される矩形の対角線の方向になる。これにより合成磁界の強度が変化し、偏光の回転角が変化する。
【0015】
磁界H2は、偏光角の制御電流生成手段108によって制御されるので、偏光の回転角も偏光角の制御電流生成手段108によって制御される。
【0016】
偏光角可変素子103を射出した光束は、透過率波長特性の可変素子104に入射する。これは、ガラスなどの透明物質による基板104−1と、この基板上に異なる屈折率を有する誘電体薄膜を多層に形成した多層誘電体薄膜104−2によって形成される。
【0017】
多層膜誘電体薄膜104−2に光が入射される場合、そのP偏光成分とS偏光成分の大きさ、つまり偏光角によって多層膜誘電体薄膜における光の透過率が異なる。つまり偏光角によって光の透過率が異なる。
【0018】
従って、偏光角可変素子103の偏光回転角を変化させることによって、透過率波長特性の可変素子104に入射した光束の、透過率を変化させることが出来る。
【0019】
さらにこの透過率は、波長依存性を併せ持ち、この特性も入射光の偏光角によって異なる為に、透過率の波長特性を変化させることが出来るものである。
【0020】
透過率波長特性の可変素子104を射出した2本の光束は、偏光角可変素子103aに入射する。これは、光の偏光角を、偏光角可変素子103が回転したのとは反対方向に同じ偏光角だけ回転させるものであり、103と同様、YIG結晶を用いたファラデー回転子103−1a及び磁石系103−2aによって構成される。
【0021】
偏光角可変素子103aを射出した2本の光束うちの1本は、偏光面復帰素子105に入射する。偏光面復帰素子105は、偏光面一致制御素子102と同一のものである。なお偏光面復帰素子105は、2本の光に対する光路長を一致させるために、偏光分離素子1の射出側で、偏光面一致制御素子102を挿入しなかった光束の方に挿入するのが望ましい。
【0022】
偏光面復帰素子105を射出した光束と、偏光面復帰素子105に入射しなかった光束の両方は、位相差制御素子106に入射する。位相差制御素子106は、透過率波長特性の可変素子104を透過する際に生じた、P偏光とS偏光の位相差を解消する為のものである。
【0023】
2本の光束が、透過率波長特性の可変素子104を透過する際には、光束のP偏光成分とS偏光成分とで光路長が異なる為に、透過率波長特性の可変素子104が光学活性を有する状態となっており、従って、2本の光束の偏光状態は、透過率波長特性の可変素子104への入射前後で異なる。
【0024】
すなわち、透過率波長特性の可変素子104を透過した後の光束の偏光状態は、直線偏光ではなく、楕円偏光の状態になっている。
【0025】
このような状態になった光束の偏光を、偏光角可変素子103aで回転させ、さらにその一方の偏光方向を、偏光面復帰素子105にて回転させても、2つの光束の偏光状態が楕円偏光であることに変わりはない。
【0026】
次に、位相差制御素子106を射出した後の光束は、偏光合成素子107に入射する。偏光合成素子107は、偏波分離素子101と同じ長さを持った素子であり、偏波面がその結晶軸方向に平行な直線偏光と、垂直な直線偏光とを入射させた場合には、双方のビームを合成することが出来る。
【0027】
しかしながら、仮に位相差制御素子106が無かった場合、偏光合成素子107に入射する2本の光束の偏波状態が直線偏光ではなく楕円偏光であるために、入射した光束の一部は合波されることがなく、従って意図しないロスとなる。
【0028】
位相差制御素子106は、この透過率波長特性の可変素子104で発生した位相差を補償し、偏光合成素子107に直線偏光が入射するようにする為のものである。代表的な位相差制御素子としては、波長板や多層誘電体薄膜がある。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の可変利得等化器では、以下のような問題点があった。偏光分離素子101にて入力ビームを分離させた後、分離された2つのビームの偏光方向を揃える為に偏光面一致制御素子102を設け、かつ透過率波長特性を変化させた後に、ビームを合成して出力光ファイバ110aに結合させる為に、再び偏光面復帰素子105を設けている。その為、構成が複雑となっていた。
【0030】
また、偏光面一致制御素子102及び偏光面復帰素子105の特性のバラツキにより、偏光面の回転角が90度からずれる場合があり、特性劣化の要因となっていた。
【0031】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、単純な構成で、特性の優れた可変利得等化器を提供することを課題とする。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明は、偏光分離素子によって常光と異常光に分離した後に、第一の偏光角可変素子によって、光の偏光角に所定の回転を与え、透過率波長特性の可変素子によって、該回転に対する透過率の波長特性を与え、第二の偏光角可変素子において、第一の偏光角可変素子によって与えられた偏光角の回転とは逆の回転を与え、偏光合成素子において常光と異常光とを合成する可変利得等化器において、偏光分離素子によって常光と異常光とに分離した後に、常光として射出されたビームと、異常光として射出されたビームとの偏光面を一致させることなく、透過率波長特性を与える技術である。
【0033】
従って、本発明によれば、従来技術中にあった偏光面一致制御素子を省略することが可能である。その結果、より簡単な構成で可変利得等化器を実現できる。
【0034】
また、従来技術にて、偏光面一致制御素子である1/2波長板、または偏光面復帰素子である1/2波長板の結晶軸方向がずれた場合、偏光面角度は所望の角度よりずれることになる。これは最終的には過剰な挿入損失となるが、参考技術によれば、偏光面一致素子及び偏光面復帰素子を省略する事が出来る為、過剰な挿入損失の発生を予防することが出来る。
【0035】
また、本発明も、偏光分離素子から射出された常光及び異常光の偏波面を一致させることなく、透過率波長特性を与える技術である。
【0036】
すなわち、参考技術の可変利得等化器は、偏光分離素子と、第一の偏光角可変素子と、透過率波長特性の可変素子と、第二の偏光角可変素子と、位相差補償素子と、偏光合成素子とからなる可変利得等化器であって、前記透過率波長特性の可変素子は光軸方向に対して併置される第一の透過率波長特性の可変素子と第二の透過率波長特性の可変素子からなり、この第一及び第二の透過率波長特性の可変素子は、光軸に対して等しい傾き角度を有し、その入射面が互いに直交している。
【0037】
また、本発明の可変利得等化器は、第一の偏光分離素子と、第一の偏光角可変素子と、第二の偏光分離素子と、透過率スペクトルの可変素子と、第二の偏光合成素子と、第二の偏光角可変素子と、位相差補償素子と、第一の偏光合成素子とからなる可変利得等化器であって、前記透過率スペクトルの可変素子は、光軸方向に対して併置された4つの透過率スペクトル素子からなり、第一の透過率スペクトル素子の透過率特性は、第二の透過率スペクトル素子の透過率波長特性とは異なり、かつ第三の透過率スペクトル素子の透過率波長特性に等しく、さらに第二の透過率スペクトル素子の透過率波長特性は第四の透過率スペクトル素子の透過率波長特性と等しい。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0039】
図1は、参考技術の光学的な構成を示す平面図である。図1において、1は偏光分離素子、2は第一の偏光角可変素子、3は第一の透過率波長特性の可変素子、4は第二の透過率波長特性の可変素子、5は第二の偏光角可変素子、6は偏光合成素子、7は入力ファイバ系、8は出力ファイバ系、9は第一の位相差補償素子、そして、10は第二の位相差補償素子である。
【0040】
次に、図1に基づき、第1の発明に係る可変光減衰器の動作について説明する。入力ファイバ系7を射出した光束は、偏光分離素子1に入射して、結晶軸に垂直な方向に振幅を有する成分と、結晶軸に平行な方向に振幅を有する成分とに分離される。
【0041】
偏光分離素子1を射出した光束は、第一の偏光角可変素子2に入射し、所望のファラデー回転角を与えられた後に射出する。このとき、2つのビームの偏光状態は、いずれも直線偏光であり、互いに直交し、かつ入射前の偏光方向から、偏光角可変素子2による回転角θだけ同方向に回転しているものとなっている。
【0042】
第一の偏光角可変素子2を透過した光束のうち、第一の光束は第一の透過率波長特性の可変素子3に入射し、第二の光束は第二の透過率波長特性の可変素子4に入射する。
【0043】
第一の透過率波長特性の可変素子3と、第二の透過率波長特性の可変素子4は、各々の入射面が互いに直交するような関係となっている。すなわち、入射面で定義される偏光状態が、第一の透過率波長特性の可変素子3に対する第一の光束と、第二の透過率波長特性の可変素子4に対する第二の光束とで等しい関係となっている。
【0044】
従って、透過率波長特性の可変素子が入射ビームに与える透過率波長依存性は、いずれの入射ビームに対しても同一になる。
【0045】
次に、第一の透過率波長特性の可変素子3と、第二の透過率波長特性の可変素子4とを透過した光束は、第二の偏光角可変素子5にて、第一の偏光角可変素子が与えたのと同量でかつ逆向きの回転角を与えられる。
【0046】
これにより、第一の光束と第二の光束の偏光方向は、偏光分離素子から射出した時の状態とほぼ等しくなるが、透過率波長特性の可変素子において、P偏光成分とS偏光成分とで異なる光学距離を有する為に、完全な直線偏光にはなっていない。
【0047】
2つのビームは、第二の偏光角可変素子5を射出した後に、各々、第一の位相差補償素子9と第二の位相差補償素子10に入射する。ここで、各々2つのビームの偏光状態は、完全な直線偏光へと補償されて変換される。
【0048】
位相差補償素子を射出した光束は、偏光合成素子6により結合されて1つのビームとなり、出力光ファイバ系8に結合される。
【0049】
以上の構成により、偏光面一致制御素子を用いることなく、可変利得透過動作をもたらすことが可能となる。
【0050】
引き続き、本発明について説明する。
【0051】
図2は、本発明の構成を示す平面図である。なお、参考技術と共通の構成要素については、図1と同じ番号を用いて説明を省略する。なお、本発明における、第一の偏光分離素子及び第一の偏光合成素子は、参考技術においては、それぞれ、単に偏光分離素子及び偏光合成素子と呼んだ素子である。
【0052】
図2において、21は第二の偏光分離素子であり、入射光を常光と異常光に分離する作用があるが、その分離方向は、第一の偏光分離素子1と直交する方向に分離するように配置されている。
【0053】
また、22は第二の偏光合成素子であり、入射した常光ビームと異常光ビームとを1つのビームに合成する作用があるが、その合成方向は、第一の偏光合成素子6の合成方向と直交する方向になるように配置されている。
【0054】
また、23は透過率スペクトルの可変素子であるが、図3に示すごとく、4つの透過率スペクトル素子23a,23b,23c,23dの側面同士を接合して一体化した構成となっている。すなわち、図3は、透過率スペクトルの可変素子の構成を示す図であり、光軸方向から見た図である。
【0055】
また、その透過率波長特性は、23aと23cが同じ特性を有する。また23bと23dとは、23a及び23cとは異なり、かつ同じ特性を有している。
【0056】
また、24,25,26,27は位相差補償素子であり、図2が平面図であるため一部を省略しているが、4枚が同一平面上に2×2で並べて配置されている。紙面において、位相差補償素子24の裏側に位相差補償素子27が配置され、位相差補償素子25の裏側に位相差補償素子26が配置されている。
【0057】
図2において、入力ファイバ系7から入射したビームが、第一の偏光角可変素子2を通過するまでは参考技術と同様であるので説明を省略する。
【0058】
第一の偏光角可変素子2を射出した2つのビームは、第二の偏光分離素子21に入射する。ここで、第二の偏光分離素子21の偏光分離方向は、第一の偏光分離素子1と直交している為に、図2では平面図であるため図示を省略しているが、入射した2つのビームの各々は更に常光成分と異常光成分とに分離される。このときの分離方向は、紙面に垂直な方向である。これら4つのビームは、第二の偏光分離素子21を射出する。
【0059】
ところで、第一の偏光角可変素子2を射出したビームは、偏光方向が互いに直交する直線偏光であるため、それら2つの強度が等しいとき、第二の偏光分離素子21を射出する4つのビームの強度は、互いに対角線方向に対向するビーム同士で等しくなる。
【0060】
また、4つのビームの強度比は、第二の偏光分離素子へ入射した2つの直線偏光を有するビームの、偏光角に依って決まる。
【0061】
第二の偏光分離素子21を射出した光束は、透過率スペクトルの可変素子23に入射するが、4本のビームは各々、透過率スペクトル素子23a,23b,23c,23dのいずれか一つに入射する。
【0062】
ここで、素子23a〜23dは、前述したごとく、対向する各素子(23aと23c、23bと23d)が同じ波長透過率特性を有している為に、例えば、第一の偏光分離素子を射出する異常光と常光の強度が等しい場合には、偏光回転角に依らず、強度が同じビーム同士が、同じ透過率波長特性を有する素子に入射することになる。
【0063】
このように、透過率スペクトルの可変素子23においては、透過率波長特性が与えられるが、全体として与えられる透過率波長特性は、透過率スペクトル素子23a及び23cに入射したビームの強度の和と、透過率スペクトル素子23b及び23dに入射したビームの強度の和との比によって与えられる。
【0064】
例えば、第二の偏光分離素子21に入射する2つのビームの偏光状態が、片方は常光成分のみであったとすると、もう一方のビームの偏光状態は、それと直交した状態であるので、異常光成分のみである。
【0065】
このような偏光状態の2つのビームが第二の偏光分離素子21に入射すると、片方は素子を直進してそのまま射出し、もう一方は異常光線としてビームシフトを起こして射出する(この場合は、第二の偏光分離素子21からの射出ビームは2本のままである)。
【0066】
このような位置関係で2つのビームが第二の偏光分離素子21を射出した場合、2つのビームは23a及び23c、あるいは23b及び23dの対向した素子へ入射することになる。すなわち、特性の同じ素子同士に全ビームが入射することとなり、この場合の透過率波長特性は、1種類の透過率スペクトル素子の特性によって定まる。
【0067】
第一の偏光角可変素子2の偏光回転角により、第二の偏光分離素子21に入射する2つのビームの偏光方向が変化させられるので、ほとんどの場合においては、透過率スペクトル素子23a〜23dの4つにビームが入射することになるが、この場合の透過率波長特性は、第二の偏光分離素子21に入射する2つのビームの偏光方向によって定まる。
【0068】
言い換えると、第一の偏光角可変素子2の偏光回転角に依存して、透過率波長特性の異なる2種類の透過率スペクトル素子へ分配される光強度の比率が変化する。また、第一の偏光分離素子を射出した常光と異常光の各々において、透過率波長特性の異なる2種類の透過率スペクトル素子への光強度の分配比率は等しいので、偏光無依存型の構成になっている。
【0069】
次に、透過率スペクトルの可変素子23を透過したビームは、第二の偏光合成素子22に入射し偏光合成される。この場合の合成は、第二の偏光合成素子22の結晶軸方向が、第一の偏光合成素子6と直交する方向にある為、紙面に垂直な方向2つのビームとなる。
【0070】
第二の偏光合成素子22を射出したビームは、第二の偏光角度可変素子に入射するが、これ以降の作用は参考技術の場合と同様であるので説明を省略する。
【0071】
以上の構成により、偏光面一致制御素子を用いることなく、可変利得等化動作をもたらすことが可能となる。
【0072】
【実施例】
実施例によって、本発明を更に詳しく説明する。
【0073】
図4は、参考技術の実施例を示す平面図である。図4において、11は光入力用ファイバ系であり、シングルモードファイバ11a、フェルール11b、レンズ11cとからなる。
【0074】
12は偏光分離素子であるルチル平板であり、結晶軸の方向は矢印12aの方向である。
【0075】
13は第一の偏光角可変素子であり、ガーネット結晶13a、永久磁石13b、及び電磁石13cからなる。
【0076】
14は第一の透過率波長特性の可変素子であり、溶融石英基板上に、二酸化シリコンと五酸化タンタルの薄膜を交互に積層したものである。
【0077】
15は第二の透過率波長特性の可変素子であり、溶融石英基板上に、二酸化シリコンと五酸化タンタルの薄膜を交互に積層したものである。
【0078】
第一の透過率波長特性の可変素子14と、第二の透過率波長特性の可変素子15の透過率特性は、P偏光とS偏光とで異なる特性を持っている。図5は、透過率波長特性の可変素子におけるP偏光に対する透過率波長特性を示す図であり、図6は、透過率波長特性の可変素子におけるS偏光に対する透過率波長特性を示す図である。
【0079】
すなわち、P偏光に対しては、波長1530〜1570nmの波長域内で損失がなく、図5のごとくフラットな透過率特性であり、S偏光に対しては、波長1530〜1570nmの波長域内で図6のごとく、波長が大きくなるほど小さくなる(損失が大きくなる)透過率特性となっている。
【0080】
16は第二の偏光角可変素子であり、ガーネット結晶16a、永久磁石16b、電磁石16cとからなる。
【0081】
17a及び17bは位相差補償素子である水晶波長板である。
【0082】
18は偏光合成素子であるルチル平板であり、結晶軸の方向は矢印18aの方向である。
【0083】
19は光出力用ファイバ系であり、シングルモードファイバ19a、フェルール19b、レンズ19cとからなる。
【0084】
また、20は、電磁石13c及び16cに電流を供給し、第一の偏光角可変素子13及び第二の偏光角可変素子16の偏光回転角を制御する為の定電流電源である。
【0085】
次に、図4に基づいて、本実施例の動作を説明する。
【0086】
シングルモードファイバ11aから射出したレーザービームは、レンズ11cによってコリメート光となり、偏光分離素子であるルチル平板12に入射する。
【0087】
ここで、入射レーザービームのうち、異常光成分は矢印12aの方向に分離する。また、常光成分は直進する。ルチル平板12を射出する時には、レーザービームは常光成分と異常光成分とに分離し、2つのビームとなって射出する。
【0088】
2つのビームは、第一の偏光角可変素子13に入射する。ここでは、ガーネット結晶には、永久磁石13bによる磁界と電磁石13cによる磁界が印加されており、その2つの合成磁界により、ガーネットによるファラデー回転角の大きさが定まる。
【0089】
電磁石13cに印加される電流により、光軸に垂直な方向の磁界の大きさが決まる為、これにより合成磁場の方向及び大きさが決まるが、この大きさにより、ビームがガーネット結晶13aを透過した時の偏光回転角度が決定される。
【0090】
ガーネット結晶13aに入射する際の、2つのビームの偏光状態は、互いに直交した直線偏光となっている。
【0091】
第一の偏光角可変素子を透過した2つのレーザービームのうち、異常光成分は第一の透過率波長特性の可変素子に、常光成分は第二の透過率波長特性の可変素子にそれぞれ入射する。
【0092】
第一及び第二の透過率波長特性の可変素子での各ビームの透過率は、第一及び第二の透過率波長特性の可変素子の透過特性が図5及び図6の特性を有する為に、入射した2つのビームの偏光比によって定まる。
【0093】
すなわち、入射偏光がP偏光である場合には、透過率に波長依存性はなくフラットな透過率となり、また逆に入射偏光状態がS偏光状態である場合には、波長が大きくなるに従って透過率が低下する特性を有する事となる。
【0094】
また、この偏光状態は、第一及び第二の透過率波長特性の可変素子の面の法線と、ビームの入射方向によって決まる面(これを入射面という)に対して、振動方向が平行な方向がP偏光、垂直な方向がS偏光と定義されるが、2つのビームの偏光状態は前述した通り、互いに90度直交した直線偏光であり、また第一及び第二の透過率波長特性の可変素子の入射面は互いに直交している為に、2つのビームが、各々の透過率波長特性の可変素子に入射するときの偏光状態は等しくなる。
【0095】
すなわち、2つのビームは、第一及び第二の透過率波長特性の可変素子にて、同じ透過率波長特性を与えられる事となる。
【0096】
第一及び第二の透過率波長特性の可変素子を透過した光束は、第二の偏光角可変素子に入射する。ここで2つの入射光は、第一の偏光角可変素子で与えられたのと同じ大きさで、逆向きのファラデー回転を与えられる。
【0097】
第二の偏光角可変素子を射出した2つの光束は、位相差補償素子17a及び17bに入射する。
【0098】
2つのビームは、第一及び第二の透過率波長特性の可変素子を透過する際に、P偏光とS偏光とで異なる光学距離を伝播する事となり、その結果、P偏光とS偏光との間で位相のずれを生ずる事となる。
【0099】
位相差補償素子17a及び17bにおいては、第一及び第二の透過率波長特性の可変素子を透過する際に、P偏光とS偏光とで異なる光学距離を伝搬することによって生じた位相のずれをキャンセルされるような位相差が、入射ビームに与えられる。
【0100】
その結果、2つのビームは、位相差補償素子17a及び17bを射出する時点で直線偏光となり、その偏光方向は、偏光分離素子12を射出した直後と同じ状態となる。
【0101】
位相差制御素子17a及び17bを射出したビームは、偏光合成素子18で合波され、光出力用ファイバ系19に結合する。
【0102】
また、本実施例においては、定電流電源は1つであるが、第一の偏光角可変素子と第二の偏光角可変素子の電流対ファラデー回転角の特性が異なる場合には、定電流電源を2つ用意し、各々独立に電流を制御する事により、所望の特性により近い特性を得る事が出来る。
【0103】
また、本構成においては、透過率波長特性の可変素子として、誘電体多層膜を使用したが、この代わりに、水晶板等の複屈折結晶を用いても、複屈折結晶の波長分散を利用して同様の効果を得ることが可能である。
【0104】
次に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【0105】
図7は、本発明の実施例を示す平面図である。この図7において、参考技術の実施例を示す図4と共通の部材には共通の符号(番号)が与えられているので、説明を省略する。
【0106】
図7において、31は第二の偏光分離素子であるルチル平板であり、その結晶軸は、第一の偏光分離素子と直交する方向に配置されている。
【0107】
32は第二の偏光合成素子であるルチル平板であり、その結晶軸は、第一の偏光合成素子と直交する方向に配置されている。
【0108】
33は透過率スペクトルの可変素子であり、図8のように、33a,33b,33c,33dの、4つの透過率スペクトル素子の側面を接合した構成となっている。
【0109】
なお、図8は、透過率スペクトルの可変素子の構造を示す斜視図である。また、透過率スペクトルの可変素子を構成する素子の特性として、図9は、波長が長くなるに従って透過率が大きくなる透過スペクトル素子の特性を示す図であり、図10は、波長が長くなるに従って透過率が小さくなる透過スペクトル素子の特性を示す図である。
【0110】
透過率スペクトル素子33a〜33dは、溶融石英基板にSiOとTaとからなる誘電体多層膜が形成されている。また、透過率波長特性は、33aと33cは、図9のごとく波長が長くなるに従って透過率が大きくなる(損失が小さくなる)特性を有し、また33bと33dは、図10のごとく波長が長くなるにつれて透過率が小さくなる(損失が大きくなる)特性を有している。
【0111】
入射したビームが、第一の偏光角可変素子13を射出するところまでは、参考技術の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0112】
第一の偏光角可変素子13を射出した2つの光束は、第二の偏光分離素子31に入射する。ここで、第二の偏光分離素子31の結晶軸は、第一の偏光分離素子12と直交している為に、入射した2つのビームの各々は更に常光成分と異常光成分とに分離され、4つのビームとなって第二の偏光分離素子31を射出する。
【0113】
図11は、第二の偏光分離素子を射出したビームの断面を表し、43a〜43dはそれぞれビームの断面であるが、第一の偏光角可変素子13を射出したビームは、偏光方向が互いに直交する直線偏光であるため、第二の偏光分離素子31を射出した4つのビームの強度は、第一の偏光分離素子を射出する常光と異常光の強度が等しい場合には、互いに対向するビーム同士(図11における43aと43c,43bと43d)で等しくなる。
【0114】
また、4つのビームの強度比は、第二の偏光分離素子31へ入射した2つの直線偏光を有するビームの、偏光角に依って決まる。
【0115】
第二の偏光分離素子31を射出した光束は、透過率波長特性の可変素子33に入射するが、4本のビームは各々、素子33a,33b,33c,33dのいずれか一つに入射する。
【0116】
ここで、透過スペクトル素子33a〜33dは、前述したごとく、対向する各素子(33aと33c、33bと33d)が同じ波長透過率特性を有している為に、第一の偏光分離素子に入射する常光成分と異常光成分の強度が等しい場合に、強度が同じビーム同士が、同じ透過率波長特性を有する透過率スペクトル素子に入射することになる。
【0117】
このように、透過率スペクトルの可変素子33においては、透過率波長特性が与えられるが、全体として与えられる透過率波長特性は、素子33a及び33cに入射したビームの強度の和と、素子33b及び33dに入射したビームの強度の和との比によって与えられる。
【0118】
例えば、第二の偏光分離素子31に入射する2つのビームの偏光状態が、片方のビームでは常光成分のみであったとすると、もう一方のビームの偏光状態はそれと直交した状態であるので、異常光成分のみである。
【0119】
このような偏光状態の2つのビームが第二の偏光分離素子31に入射すると、片方は常光として素子を直進してそのまま射出し、もう一方は異常光線としてビームシフトを起こして射出する(この場合は、第二の偏光分離素子31からの射出ビームは2本のままである)。
【0120】
このような位置関係で2つのビームが第二の偏光分離素子31を射出した場合、2つのビームは33a及び33c、あるいは33b及び33dの対向した素子へ入射することになる。すなわち、特性の同じ素子同士に全ビームが入射することとなり、この場合の透過率波長特性は、1種類の素子特性によって定まる。
【0121】
素子33a及び33cのみにビームが入射した場合には、与えられる透過率波長特性は図9のようになり、また逆に素子33b及び33dのみにビームが入射した場合には、与えられる透過率波長特性は図10のようになる。
【0122】
一般の場合には、第一の偏光角可変素子13の偏光回転角により、第二の偏光分離素子31に入射する2つのビームの偏光方向が変化させられるので、ほとんどの場合においては、素子33a〜33dの4つにビームが入射することになるが、この場合の透過率波長特性は、第二の偏光分離素子31に入射する2つのビームの偏光方向によって定まる。
【0123】
第二の偏光分離素子31を射出した光束は、透過率スペクトルの可変素子33に入射するが、ビーム43aは素子33aに、ビーム43bは素子33bに、ビーム43cは素子33cに、ビーム43dは素子33dにそれぞれ入射する。
【0124】
ここで、透過率スペクトル素子33a〜33dは、前述したごとく、対向する各素子が同じ透過率波長特性を有している為に、第一の偏光分離素子に入射する常光成分と異常光成分の強度が等しい場合に、同じ強度のビーム同士が同じ特性を有する素子に入射することになる。
【0125】
透過率スペクトルの可変素子33においては、透過率の波長依存性が与えられる。透過率スペクトルの可変素子33を透過したビームは、第二の偏光合成素子32に入射し、偏光合成される。この場合の合成は、第二の偏光合成素子32の結晶軸方向が、第一の偏光合成素子18と直交する方向にある為、図11における43aと43b、43cと43dとが合成されて2つのビームとなる。
【0126】
第二の偏光合成素子32を射出した2本のビームは、第二の偏光角可変素子16に入射する。これ以降の動作は、参考技術の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0127】
上述のように、第1及び第2のいずれの発明によっても、偏光分離素子を射出したビームの偏光面を一致させることなく、可変利得等化器を構成できる。その結果、部材コストと組立工数の低減が可能となった。
【0128】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、偏光面一致制御素子を不要とし、より簡易な構成で特性のよい、可変利得等化器を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考技術の光学的な構成を示す平面図。
【図2】 本発明の光学的な構成を示す平面図。
【図3】 透過率スペクトルの可変素子の構成を示す図。
【図4】 参考技術の実施例を示す平面図。
【図5】 透過率波長特性の可変素子におけるP偏光に対する透過率波長特性を示す図。
【図6】 透過率波長特性の可変素子におけるS偏光に対する透過率波長特性を示す図。
【図7】 本発明の実施例を示す平面図。
【図8】 透過率スペクトルの可変素子の構造を示す斜視図。
【図9】 波長が長くなるに従って透過率が大きくなる透過率スペクトル素子の特性を示す図。
【図10】 波長が長くなるに従って透過率が小さくなる透過率スペクトル素子の特性を示す図。
【図11】 第二の偏光分離素子を射出したビームの断面を示す図。
【図12】 従来の可変利得等化器を示す図。
【符号の説明】
1,21 偏光分離素子
2,5 偏光角可変素子
3,4 透過率波長特性の可変素子
6,22 偏光合成素子
7 入力ファイバ系
8 出力ファイバ系
9,10,24,25,26,27 位相差補償素子
23 透過率スペクトルの可変素子
23a,23b,23c,23d 透過率スペクトル素子

Claims (1)

  1. 第一の偏光分離素子と、第一の偏光角可変素子と、第二の偏光分離素子と、透過率スペクトルの可変素子と、第二の偏光合成素子と、第二の偏光角可変素子と、位相差補償素子と、第一の偏光合成素子とからなる可変利得等化器において、前記透過率スペクトルの可変素子は、光軸方向に対して併置された4つの透過率スペクトル素子からなり、第一の透過率スペクトル素子の透過率特性は、第二の透過率スペクトル素子の透過率波長特性とは異なり、かつ第三の透過率スペクトル素子の透過率波長特性に等しく、さらに第二の透過率スペクトル素子の透過率波長特性は第四の透過率スペクトル素子の透過率波長特性と等しいことを特徴とする可変利得等化器。
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