JP3881257B2 - 長靴 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、成形性、風合い、強度に優れた長靴用熱可塑性エラストマー組成物を用いた長靴に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、履物用のゴム的な材料として、加硫工程を必要とする合成ゴム、又は加硫工程を必要としない軟質ポリ塩化ビニル(PVC)が、射出成形加工性、耐傷付性、風合い(履き心地)などに優れ、多用されてきた。しかし、昨今の環境問題等に対処するため、市場から熱可塑性エラストマー(TPE)素材の要求が増えてきている。
【0003】
市場からの要請の多い熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0004】
これらのうちで、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)は、特に、柔軟性に富み、機械的強度等に優れているが、その分子内に共役ジエンとして二重結合を有しているため、耐熱性、耐候性および耐油性に問題がある。また、該スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレンと共役ジエンのブロック共重合体の分子内二重結合を水素添加したエラストマー組成物は、耐熱老化性(熱安定性)および耐候性を向上させたエラストマーとして、広く多用されているが、ショアA硬さで40以上であるため、軟化剤の添加量を増量することによって軟化させており、かかる場合には、成形品表面にベタツキが発生したり、加熱応力下において軟化剤のブリードアウトを生じ、更にゴワゴワした風合いとなり、長靴用エラストマー組成物としては適していなかった。
【0005】
さらに、長靴を射出成形で成形する際、靴底部の射出ランナーから熱可塑性エラストマー組成物をモールドに導入すると、一般に、長靴の前面の甲部から胴部への屈曲部においてモールド内の樹脂速度は遅くなり、得られた長靴製品における部位によっては、硬さと柔軟性のバランスが悪くなるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を改善し、ゴム弾性に富み、耐熱性、耐候性、耐油性および成形加工性に優れた長靴用熱可塑性エラストマー組成物を用いた、ゴワゴワした履き心地が解消された長靴を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、スチレン系熱可塑性エラストマーに特定量の高流動性ポリプロピレン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、水添石油樹脂を配合することにより、ゴム弾性に富み、耐熱性、耐油性および成形加工性に優れた長靴用熱可塑性エラストマー組成物が得られ、それを用いることによりゴワゴワした履き心地が解消された長靴が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、(a)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体及び/又はそれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体100重量部、(b)非芳香族系ゴム用軟化剤5〜250重量部、(c)メルトフローレートが700〜900g/10分であるポリプロピレン系樹脂5〜50重量部、(d)水添石油樹脂5〜50重量部、及び(e)芳香族ビニル系樹脂5〜100重量部を含有する長靴用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる長靴である。
請求項2に記載の発明は、前記長靴用熱可塑性エラストマー組成物が、(f)無機充填剤1〜100重量部を更に含有してなることを特徴とする請求項1に記載の長靴である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明を各成分、製造方法について以下に詳細に説明する。
【0012】
1.長靴用熱可組成エラストマー組成物の構成成分
(1)スチレン系ブロック共重合体及び/又はその水添ブロック共重合体成分(a)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物で用いるスチレン系ブロック共重合体成分(a)は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体又はこれらを水素添加して得られるもの、あるいはこれらの混合物である。例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体又はこれらの水素添加されたもの等を挙げることができる。
【0013】
上記(水添)ブロック共重合体(以下、(水添)ブロック共重合体とは、ブロック共重合体、及び/又は、水添ブロック共重合体を意味する。)は、芳香族ビニル化合物を5〜60重量%、好ましくは、20〜50重量%含む。
【0014】
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、好ましくは、芳香族ビニル化合物のみからなるか、または芳香族ビニル化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と(水素添加された)共役ジエン化合物(以下、(水素添加された)共役ジエン化合物とは、共役ジエン化合物、及び/又は、水素添加された共役ジエン化合物を意味する。)との共重合体ブロックである。
【0015】
(水素添加された)共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、好ましくは、(水素添加された)共役ジエン化合物のみからなるか、または(水素添加された)共役ジエン化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックである。
【0016】
ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000〜1,500,000、より好ましくは、10,000〜550,000、更に好ましくは50,000〜150,000の範囲であり、分子量分布は10以下である。ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
【0017】
また、これらの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、分子鎖中の共役ジエン化合物又は芳香族ビニル化合物由来の単位の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの任意の組合せでなっていてもよい。芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA又は共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBがそれぞれ2個以上ある場合には、各重合体ブロックはそれぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0018】
ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、なかでもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、なかでもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せが好ましい。
【0019】
上記ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、等が挙げられる。
【0020】
水添ブロック共重合体は、上記ブロック共重合体の水素添加物であり、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体の水素添加物である。
【0021】
ブロック共重合体の水素添加物であって、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、そのミクロ構造は、任意であり、水素添加率は任意であるが、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。例えば、ポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。また、1,2−結合を選択的に水素添加した物であっても良い。ポリイソプレンブロックにおいてはイソプレンの好ましくは70〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつイソプレンに由来する脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
【0022】
用途により水素添加したブロック共重合体を使用する場合には、好ましくは上記水添物を用途に合わせて適宜使用することが出来る。
【0023】
水添ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、SBBS)等を挙げることができる。
【0024】
これらのブロック共重合体又は水添ブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒又はチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得ることができ、水添ブロック共重合体は、上記ブロック共重合体を公知の方法で水素添加して得ることができる。
【0025】
(2)非芳香族系ゴム用軟化剤成分(b)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の非芳香族系ゴム用軟化剤成分(b)は、得られた長靴の柔軟性をコントロールし、履き心地を良くすることに寄与する。成分(b)としては、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を挙げることができる。ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものはパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
【0026】
本発明の成分(b)として用いられる鉱物油系ゴム用軟化剤は、区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。芳香族系の軟化剤は、その使用により成分(a)が可溶となり、得られる組成物の物性の向上が図れないので好ましくない。本発明の成分(b)としては、パラフィン系のものが好ましく、更にパラフィン系の中でも芳香族環成分の少ないものが特に適している。また、液状もしくは低分子量の合成軟化剤としては、ポリブテン、水素添加ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0027】
これらの非芳香族系ゴム用軟化剤の性状は、37.8℃における動的粘度が20〜50000cSt、100℃における動的粘度が5〜1500cSt、流動点が−10〜−15℃、引火点(COC)が170〜300℃を示すのが好ましい。さらに、重量平均分子量が100〜2,000のものが好ましい。
【0028】
成分(b)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、5〜250重量部、好ましくは50〜150重量部である。配合量が5重量部未満であると柔軟性のコントロールが難しく、また、成形性が悪くなる。250重量部を超えると、得られる長靴から軟化剤がブリードアウトしやすく、強度低下やベタツキが生じる。
【0029】
(3)ポリプロピレン系樹脂成分(c)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のポリプロピレン系樹脂成分(e)は、得られる組成物の流動性を向上させ、成形性を改良すると共に、硬度及び収縮率の調整に効果を有するものである。該成分としては、例えば、アイソタクチックポリプロピレンやプロピレンと他のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどとのランダム、ブロック共重合体を挙げることができる。
【0030】
また、成分(c)のメルトフローレート(MFR、ASTM D−1238、L条件、230℃)は、700〜900g/10分であり、好ましくは750〜850g/10分である。MFRが700g/10分未満では、得られるエラストマー組成物による長靴の成形が困難となり、900g/10分を超えると、得られるエラストマー組成物の物性が悪化する。
【0031】
成分(c)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、5〜50重量部であり、好ましくは10〜40重量部である。配合量が5重量部未満であると、成形性が悪くなり、50重量部を超えると、得られる長靴の履き心地が悪くなり、成形時に脱靴時の歪みが残る。
【0032】
(4)水添石油樹脂成分(d)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の水添石油樹脂成分(d)は、長靴にバランスのよい柔軟性とグリップ性(滑り止め性)を付与する機能、すなわち、柔軟性があり、脱靴時の歪みを抑える機能を果たす。本発明において用いることのできる水添石油樹脂としては、水素化石油樹脂であって、例えば水素化脂肪族系石油樹脂、水素化芳香族系石油樹脂、水素化共重合系石油樹脂及び水素化脂環族系石油樹脂、及び水素化テルペン系樹脂等が挙げられる。
【0033】
ここで、石油樹脂とは、石油精製工業、石油化学工業の各種工程で得られる樹脂状物、又は、それらの工程、特にナフサの分解工程にて得られる不飽和炭化水素を原料として共重合して得られる樹脂のことをいう。例えば、C5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂、シクロペンタジエン系化合物を主原料とする脂環族系石油樹脂、それらの共重合系石油樹脂が挙げられる。上記水素化石油樹脂は、公知の方法によって水素化することにより得られる。
【0034】
本発明で用いる水添石油樹脂は、これらの中でもシクロペンタジエン系化合物とスチレン等の芳香族ビニル系化合物とを共重合した石油樹脂を水素添加したものが好ましい。
【0035】
成分(d)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは5〜30重量部の量である。5重量部未満であると長靴製品の風合いが悪化する。50重量部を超えると、長靴製品の表面性、特に表面にベタツキが生じる。
【0036】
(5)芳香族ビニル系樹脂成分(e)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の芳香族ビニル系樹脂成分(e)は、得られる長靴の風合いの向上を発現させる機能を果たす。用いることのできる芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−パラメチルスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸ゴム−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらのうちから1種類又は2種類以上を選択できる。ゴム変性ポリスチレンのゴム成分は2〜15重量%含有するものである。これらの中でもポリスチレンが好ましい。また、ポリスチレンのメルトフローレートは、0.5〜60g/10分(200℃、荷重5.0kgで測定)のものが好ましく、さらに、重量平均分子量103〜107のものが好ましい。
【0037】
成分(e)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、5〜100重量部であり、好ましくは10〜80重量部、更に好ましくは15〜50重量部である。配合量が5重量部未満であると、成形性向上のためポリプロピレン系樹脂を増量する必要があり、得られる長靴はゴワゴワした履き心地となる。100重量部を超えると、得られるエラストマ−組成物の硬度が高くなりすぎて柔軟性が失われ、ゴム的感触の長靴が得られない。
【0038】
(6)無機充填剤成分(f)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、無機充填剤成分(f)を配合することができる。成分(f)は、エラストマー組成物から得られる長靴製品の圧縮永久歪みなど一部の物性を改良する効果のほかに、ベタツキの抑制、増量による経済上の利点を有する。成分(f)としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マイカ、クレー、酸化チタン、カーボンブラック、ガラス繊維、中空ガラスバルーン、炭素繊維、チタン酸カルシウム繊維、天然けい酸、合成けい酸(ホワイトカーボン)等が挙げられる。これらの中では、炭酸カルシウム、タルクが特に好ましい。
【0039】
成分(f)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、より好ましくは、10〜40重量部である。配合量が、100重量部を超えると、得られる長靴の耐傷付性、機械的強度の低下が著しく、かつ、硬度が高くなって柔軟性が失われ、ゴム的な感触の製品が得られなくなる。
【0040】
(7)その他の成分
なお、本発明のエラストマー組成物は、上記の成分の他に、さらに必要に応じて、各種のブロッキング防止剤、シール性改良剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、着色剤等を含有することも可能である。ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−p−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、上記の成分(a)〜(e)の合計100重量部に対して、0〜3.0重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0041】
2.長靴用熱可塑性エラストマー組成物の製造
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(a)〜(e)、又は必要に応じて成分(f)等を加えて、各成分を同時にあるいは任意の順に加えて溶融混練することにより製造することができる。
【0042】
溶融混練の方法は、特に制限はなく、通常公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。例えば、適度なL/Dの二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いることにより、上記操作を連続して行うこともできる。ここで、溶融混練の温度は、好ましくは160〜220℃である。
【0043】
3.長靴の製造
上記で得られた長靴用熱可塑性エラストマー組成物を用いて、長靴を成形する。本発明の長靴用熱可塑性エラストマー組成物は、長靴の甲部、胴部、底部等の靴の全ての部分の材料として用いることができる。
【0044】
具体的な製造方法は、特に限定されないが、一般に、靴下状の裏布材をラストモールドに吊り込み、ラストモールド、ボトムモールド、サイドモールドを嵌合し、本発明の長靴用熱可塑性エラストマー組成物を長靴成形空隙内に射出して胴部、甲部、靴底部を一体成形した長靴を製造することができる。なお、靴底部を他の樹脂で成形することもできる。また、靴下状裏布材としては、織布、編布、人工皮革、合成皮革などを使用することができる。
【0045】
本発明の靴用熱可塑性エラストマー組成物を用いて射出成形して得られた長靴は、ゴワゴワした履き心地が解消され、実履きしたときの風合い(履き心地)に優れ、また長期使用に耐える強度を有する。
【0046】
【実施例】
本発明を以下の実施例、比較例によって具体的に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、用いた試験方法及び試料は以下の通りである。
【0047】
1.試験方法
(1)ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR):ASTM D−1238に準拠して230℃、2.16kg荷重で測定した。
(2)硬度(HDA):JIS K 6252に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用いた。
(3)引張強さ:JIS K 6251に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、3号ダンベル型試験片に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
(4)100%伸び応力:JIS K 6251に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、3号ダンベル型試験片に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
(5)破断伸び:JIS K 6251に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、3号ダンベル型試験片に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0048】
(6)成形性(流動性):射出成形により長靴を成形し、下記の基準で判断した。
○:ヒケ、バリがなく良好に成形できた。
△:成形は可能であったがフローマーク、ウエルドラインが見られた。
×:成形型の流動末端まで樹脂が流れきらず、成形が不可能であった。
【0049】
(7)脱靴時(離型時)の歪み残:射出成形による成形時に、長靴の離型時の状況を下記の基準で判断した。
○:脱靴時の歪みがなく離型できる。
△:脱靴時に若干の歪みが生じる。
×:脱靴時に歪みが生じ、変形がひどい。
【0050】
(8)ベタツキ:射出成形で成形した長靴を手で触って下記の基準で判断した。
○:長靴表面にベタツキを感じない。
△:長靴表面に若干ベタツキがある。
×:長靴表面にベタツキがあり、汚れもつく。
【0051】
(9)風合い(履き心地):射出成形で成形した長靴を5人の造園業の女性作業者に2ヶ月(実動8時間/日)実履きしてもらい、モニター試験を行い、下記の基準で判断した。
○:違和感を感じなく履ける人が4人以上。
△:違和感を感じなく履ける人が3人。
×:違和感を感じなく履ける人が2人以下。
【0052】
(10)外観評価:上記モニター試験後の長靴について下記の基準で外観評価の判断をした。
○:変形摩耗など殆どなく実用に耐えた。
△:若干の変形は認められた。
×:変形摩耗があり、実用性に欠ける。
【0053】
2.試料
(1)水添ブロック共重合体成分(a): セプトン4033(SEPS、クラレ株式会社製)、スチレン含有量30重量%、イソプレン含有量70重量%、数平均分子量100,000、重量平均分子量130,000、分子量分布1.3、水素添加率90%以上
(2)非芳香族系ゴム用軟化剤成分(b):ダイアナプロセスオイル PW−90(出光興産株式会社製)
(3)ポリプロピレン系樹脂成分(c):PA189V(ホモポリプロピレン、ダイリン産業社製)、MFR800g/10分
(4)水添石油樹脂成分(d):P−140(水添C5系石油樹脂、出光石油化学株式会社製)
(5)ポリスチレン系樹脂成分(e):G32(ポリスチレンホモポリマー、東洋スチレン株式会社製)
(6)炭酸カルシウム成分(f):NS400(三共精粉株式会社製)
(7)エチレン−プロピレン共重合体(EPR):EP912P(JSR株式会社製)
(8)線状低密度ポリエチレン(LLDPE):EG8400(メタロセン系線状低密度ポリエチレン、ダウケミカル社製)
【0054】
実施例1〜3及び比較例1〜9
表1及び表2に示す量の各成分を用い、L/Dが47の二軸押出機に投入して、混練温度180℃、スクリュー回転数350rpmで溶融混練をして、ペレット化した。次に、得られたペレットを射出成形して試験片を作成し、夫々の試験に供した。さらに、靴下状の裏布材をラストモールドに吊り込み、ラストモールド、ボトムモールド、サイドモールドを嵌合し、該ペレットを用い長靴成形型空隙内に射出して胴部、甲部、靴底部を一体成形した長靴を作成し、各評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1及び表2より明らかなように、実施例1〜3は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物である。任意成分である成分(f)の有無にかかわらず、いずれの熱可塑性エラストマー組成物も良好な性状を示した。また、成分(a)のセプトン4033の一部、又は全部をタフテックP JT−90(旭化成社製 スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体、SBBS、スチレン含有量:30重量%、重量平均分子量(Mw):110,000、数平均分子量(Mn):99,000、分子量分布:1.11)に置換しても同様に良好な結果が得られた。
【0058】
一方、比較例1は、成分(d)及び成分(e)を用いない場合の例であり、得られた長靴の風合いが好ましくなく、成形時の歪み残がある。比較例2は、成分(e)を用いない場合の例であり、(e)成分がないと、ベタツキによる離型性が悪くなる。比較例3及び7は、(d)成分が多すぎる場合の例であり、ベタツキが悪くなる。比較例4は、(d)成分を配合しない場合の例であり、(d)成分がないと脱靴時の歪みがある。比較例5は、(e)成分の配合量が多すぎる場合の例であり、(e)成分が多いと脱靴時の歪み及び風合いが悪化する。比較例6は、(d)成分と(e)成分の配合量が本発明の範囲外の例であり、(d)成分と(e)成分の配合量が多すぎるとベタツキが多く、また、風合いが悪い。さらに比較例8及び9は、(e)成分のポリスチレン代わりにポリエチレン系樹脂のEPR、LLDPEを用いた例であり、EPR、LLDPEを用いると長期使用性が悪かった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の長靴用熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物に特定量の高流動性ポリプロピレン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、水添石油樹脂を配合したものであるから、低硬度であり、ゴム弾性に富み、耐熱性、耐候性、耐油性および成形加工性に優れた長靴用熱可塑性エラストマーである。また、該長靴用熱可塑性エラストマー組成物から得られた長靴は、ゴワゴワした履き心地が解消され、風合い、強度に優れた長靴である。
Claims (2)
- (a)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体及び/又はそれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体100重量部、(b)非芳香族系ゴム用軟化剤5〜250重量部、(c)メルトフローレートが700〜900g/10分であるポリプロピレン系樹脂5〜50重量部、(d)水添石油樹脂5〜50重量部、及び(e)芳香族ビニル系樹脂5〜100重量部を含有する長靴用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる長靴。
- 前記長靴用熱可塑性エラストマー組成物が、(f)無機充填剤1〜100重量部を更に含有してなることを特徴とする請求項1に記載の長靴。
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