JP3881232B2 - ドライバドリル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドリルモードとクラッチモードとの2つの動作モードを選択して使用可能としたドライバドリルに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、充電式のドライバドリル40の一部縦断面図で、ハウジング41内には、直流モータ42と、直流モータ42の前方(図3の右側)に連結され、遊星歯車減速機構47を内設するギヤアッセンブリ44とが収容される。直流モータ42の出力軸43は、ギヤアッセンブリ44の第1ギヤケース45に軸支されて遊星歯車減速機構47の一段目の遊星歯車48,48・・と噛合して、出力軸43の回転を、ギヤアッセンブリ44の第2ギヤケース46に軸支されるスピンドル49へ減速して伝達可能となっている。
また、遊星歯車減速機構47において、三段目の遊星歯車48,48・・が噛合するインターナルギヤ50は、第2ギヤケース46内で回動可能且つ軸方向へ移動可能に収容されており、インターナルギヤ50の前面には、第2ギヤケース46へ同心円上で等間隔に配置された5つのピン51,51・・が当接している。このピン51,51・・は、第2ギヤケース46におけるスピンドル49の軸支部52へ螺合されたスプリングホルダ53と、各ピン51の後面に当接するフラットワッシャ54との間に介在された同軸異径の2つのコイルバネ55a,55bの付勢力によって、インターナルギヤ50を後方へ押圧するもので、スプリングホルダ53は、第2ギヤケース46へ回動可能に装着されるチェンジリング56と回動のみが一体に連結されている。なお、内周側でバネ定数の大きいコイルバネ55aはトルク調整用、外周側でバネ定数の小さいコイルバネ55bはスプリングホルダ53を介したチェンジリング56の回転抵抗付与用である。
【0003】
一方、第1ギヤケース45とインターナルギヤ50との間には、モード切替部材としてのモード切替リング57が、後方へ押圧されるインターナルギヤ50によって第1ギヤケース45側へ付勢される状態で、且つハウジング41の外部に突設されたモード切替レバー58によって回動操作可能に設けられている。ここで、モード切替リング57の後面には、周方向の一方を傾斜面とした複数の案内突起59,59・・が突設され、第1ギヤケース45の前面には、案内突起59,59・・が嵌合可能な案内凹部60,60・・が夫々凹設され、モード切替レバー58によるモード切替リング57の回動操作で、各案内突起59と各案内凹部60とが周方向にずれて各案内突起59が第1ギヤケース45の前面に乗り上がり、モード切替リング57が前進する前進位置と、両者が周方向で同位相にあって互いに嵌合し、モード切替リング57が後退する後退位置とを移動可能となっている。また、第1ギヤケース45の前面で案内凹部60,60・・の内周と、インターナルギヤ50の後端とには、互いに噛合可能な噛み合い歯61,61・・及び62,62・・が夫々形成されており、モード切替リング57の後退位置では、後退したインターナルギヤ50が噛み合い歯61,62同士の噛み合いにより回転を規制される固定位置に、モード切替リング57の前進位置では、前進したインターナルギヤ50が第1ギヤケース45と離反して回転がフリーとなる空転可能位置に夫々位置するものとなっている。
【0004】
よって、モード切替レバー58の操作によって、モード切替リング57が後退し、インターナルギヤ50が固定位置にある状態では、出力軸43の回転は遊星歯車減速機構47を介してスピンドル49に伝わるドリルモードとなる。一方、モード切替リング57が前進し、インターナルギヤ50が空転可能位置にある状態では、インターナルギヤ50は各ピン51を介したコイルバネ55a,55bの付勢力によって固定されるため、スピンドル49への負荷がインターナルギヤ50へのコイルバネ55a,55bの付勢力を超えると、インターナルギヤ50が空転してスピンドル49への回転伝達を遮断するクラッチモードとなる。なお、このクラッチモードでのクラッチ作動トルクは、チェンジリング56の回転操作によるスプリングホルダ53の軸方向へのネジ送りによってコイルバネ55aの付勢力を変更することで調整可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記ドライバドリル40において、コイルバネ55a,55bによる付勢力は、フラットワッシャ54、各ピン51、インターナルギヤ50を介して常にモード切替リング57に加わる。よって、チェンジリング56を回転操作してクラッチモードでのクラッチ作動トルク、すなわちコイルバネ55aの付勢力を大きくすると、その付勢力がモード切替リング57にも伝わるため、第1ギヤケース45へ強く押圧されてモード切替リング57の回転操作がしづらくなってしまう。
【0006】
そこで、請求項1に記載の発明は、クラッチモードでの作動トルクにかかわらず、モード切替部材によるモード切替に係る操作性が良好となるドライバドリルを提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ハウジング内に、後退位置のインターナルギヤ側と弾性部材側との間に所定の間隔が形成されるように弾性部材側の後端位置を規制する規制部を設けて、後退位置のインターナルギヤへは所定の間隔によって弾性部材の付勢力の伝達を遮断し、インターナルギヤが前進位置で回転しようとする際には所定の間隔の解消によって弾性部材の付勢力がインターナルギヤへ伝達可能としたものである。
なお、本発明でいうハウジングとは、ドライバドリルの外側のハウジングは勿論、ハウジング内部で遊星歯車減速機構を収容するギヤケース等の内側ハウジングも含む。また、インターナルギヤ側及び弾性部材側とは、インターナルギヤと弾性部材夫々の部品自身の他、両者の間にあって進退動するワッシャやピン等の介在部品も含む趣旨である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、充電式のドライバドリルの一部縦断面図で、ドライバドリル1は、左右に二分割される半割ハウジングを組み付けてなるハウジング2内に、直流モータ3と、直流モータ3の前方(図1の右側)でギヤアッセンブリ5とを収容してなる。ギヤアッセンブリ5の前方には、先端にドリルチャック7を装着したスピンドル6が突出している。
ギヤアッセンブリ5は、筒状の第1ギヤケース8の前方に、スピンドル6を軸支する第2ギヤケース9を組み付けて形成される。第1ギヤケース8内には、複数の遊星歯車12,12・・を後面で支持するキャリア11を軸方向に3セット連結し、一段目の遊星歯車12,12・・と噛合する直流モータ3の出力軸4の回転を3段階に減速する周知の遊星歯車減速機構10が形成されて、三段目のキャリア11に、スピンドル6の後端が一体に連結されている。
【0009】
さらに、遊星歯車減速機構10において、三段目の遊星歯車12,12・・を公転させるインターナルギヤ13は、第2ギヤケース9内で回動可能且つ軸方向へ移動可能に収容されており、インターナルギヤ13の前面には、両側を傾斜面とした6つの突条13a,13a・・が放射方向に突設され、各突条13a間に、第2ギヤケース9へ同心円上で等間隔に配置された6つのピン14,14・・が当接している。このピン14,14・・は、第2ギヤケース9におけるスピンドル6の軸支部15へ螺合されたスプリングホルダ16と、各ピン14の前方に配置される同軸異径のフラットワッシャ17a,17bとの間に介在された二重のコイルバネ18a,18bの付勢力によって、インターナルギヤ13を後方へ押圧するもので、スプリングホルダ16は、軸支部15へ回動可能に装着されるチェンジリング19に軸方向へ形成された溝に嵌合して、回動のみが一体に連結されている。ここでは、弾性部材となる内周側のコイルバネ18aがバネ定数の大きいトルク調整用、それよりバネ定数の小さい外周側のコイルバネ18bが、スプリングホルダ16を介したチェンジリング19の回転抵抗付与用となっている。
【0010】
軸支部15の根元には、図2にも示すように、倒L型の段状突起31,31と突起32,32とが周方向へ等間隔に形成されており、フラットワッシャ17a,17bは、内周縁に各段状突起31及び各突起32が嵌合する切欠きを有して、軸支部15の根元に回転止めされた状態で外装されている。ここで、フラットワッシャ17aは、段状突起31,31の段部前面にあって、内周側のコイルバネ18aのみが当接して後方へ付勢され、各段状突起31の段部に当接する位置でコイルバネ18aの後端位置を規制している。また、フラットワッシャ17aより外径が大きいフラットワッシャ17bは、フラットワッシャ17aの後方にあって、外周側のコイルバネ18bのみが当接して後方へ付勢され、各ピン14に押圧されている。よって、コイルバネ18aの付勢力は、フラットワッシャ17bが前進してフラットワッシャ17aに当接しない限り各ピン14に伝わらない構造となっている。
【0011】
一方、第1ギヤケース8とインターナルギヤ13との間には、ロックワッシャ20及びモード切替部材としてのモード切替リング21が設けられている。ロックワッシャ20は、周縁に形成された図示しない突起が、第2ギヤケース9の内面で軸方向へ形成された溝に嵌合することで、回り止めされた状態で軸方向へ移動可能となっている。また、モード切替リング21の後面で同心円上には、円周方向の一方の側面を傾斜面とした8つの案内突起22,22・・が等間隔に突設されている。同様に、第1ギヤケース8の前面には、モード切替リング21の案内突起22,22・・と同心円上にあり、円周方向側面が傾斜面となって各案内突起22が嵌合可能な8つの案内凹部23,23・・が等間隔に凹設されている。
【0012】
24は、モード切替リング21の操作用のモード切替レバーで、モード切替レバー24は、第2ギヤケース9の後縁に設けられたスリット25を貫通してモード切替リング21と連結され、図2に示すように、第2ギヤケース9の周面に沿った円弧状に形成されるスライド板26と、そのスライド板26の上面中央部に立設され、ハウジング2に形成された窓27を貫通して外部に露出するレバー部28とからなる。よって、レバー部28を窓27内で左右にスライド操作することで、モード切替リング21が所定量回動可能となっている。
【0013】
ここで、レバー部28が窓27の左端(図2の二点鎖線で示す位置)に位置する場合、モード切替リング21は、案内突起22と案内凹部23とが夫々周方向に同位相となるため、案内突起22と案内凹部23との嵌合を許容し、コイルバネ18bの付勢によってインターナルギヤ13と共に後退する。インターナルギヤ13の後面と第1ギヤケース9の前面における案内凹部23の内周側とには、インターナルギヤ13の後退位置で互いに噛合する噛み合い歯29,29・・及び30,30・・が周方向に8つずつ形成されていることから、この後退位置では、図1の上側に示すように噛み合い歯29,30同士の噛合によってインターナルギヤ13の回転はロックされる(ドリルモード)。このドリルモードの状態で、フラットワッシャ17aとフラットワッシャ17bとの間には、インターナルギヤ13の進退動のストロークより僅かに大きい間隔Sが生じるようになっている。
【0014】
一方、レバー部28が窓27の右端(図2の実線で示す位置)に位置する場合、モード切替リング21は、案内突起22と案内凹部23とが周方向にずれる位置にあるため、傾斜面同士の案内によって案内突起22が第1ギヤケース8の前面に乗り上がり、図1の下側に示すようにインターナルギヤ13と共に前進する。この前進位置では、噛み合い歯29,30同士を離反させるため、インターナルギヤ13の回転はフリーとなる。そして、インターナルギヤ13の前進に伴って各ピン14も、コイルバネ18bの付勢に抗してフラットワッシャ17bと共に前進する。前述の間隔Sとインターナルギヤ13の進退動のストロークとの関係により、当該ストローク分前進したフラットワッシャ17bはフラットワッシャ17aの後方で近接する。よって、この状態でも各ピン14には、コイルバネ18bの付勢力のみが加わり、インターナルギヤ13は、コイルバネ18bの付勢力によって固定される状態となる(クラッチモード)。
【0015】
以上の如く構成されたドライバドリル1においては、直流モータ3が駆動すると、出力軸4の回転が遊星歯車減速機構10を介してスピンドル6に伝わり、ドリルチャック7に装着したビットを回転させる。このとき、モード切替レバー24のレバー部28のスライド操作によってドリルモードを選択していると、モード切替リング21が、第1ギヤケース8との間で案内突起22と案内凹部23とが嵌合する後退位置にあって、インターナルギヤ13を固定位置に後退させる。よって、ビットからスピンドル6に加わる負荷がインターナルギヤ13に伝わっても、インターナルギヤ13は固定されているため、スピンドル6は回転を継続する。
【0016】
一方、モード切替レバー24のスライド操作によってクラッチモードを選択すると、モード切替リング21が、案内突起22が第1ギヤケースの前面に乗り上がる前進位置にあって、インターナルギヤ13を空転可能位置に前進させる。よって、スピンドル6からインターナルギヤ13に伝わる負荷が、ピン14を介したコイルバネ18bによる固定力を超えると、各ピン14が各突条13aを乗り越えようとしてさらに前進する。すると、フラットワッシャ17bが前進してフラットワッシャ17aに当接し、フラットワッシャ17aを段状突起31,31・・から離反させるため、インターナルギヤ13には、コイルバネ18bに加えて、コイルバネ18aによる付勢力が新たに加わり、これがクラッチ作動トルクとなる。よって、スピンドル6からインターナルギヤ13に伝わる負荷が、コイルバネ18a,18bによる固定力を越えると、インターナルギヤ13は各ピン14に各突条13aを乗り越えさせて空転し、スピンドル6へのトルク伝達を遮断する。なお、このクラッチが働くトルクの上限は、チェンジリング19の回動操作によってスプリングホルダ16を軸方向にネジ送りし、コイルバネ18aの付勢力を変更することで調整可能となっている。
【0017】
このように上記形態のドライバドリル1によれば、後退位置のインターナルギヤ13側のフラットワッシャ17bと、コイルバネ18a側のフラットワッシャ17aとの間に所定の間隔Sが形成されるようにフラットワッシャ17aの後端位置を設定して、インターナルギヤ13が前進位置で回転しようとする際にはコイルバネ18aの付勢力がインターナルギヤ13へ伝達可能としたことで、コイルバネ18aの付勢力は、クラッチモードの場合にのみモード切替リング21に加わる構造となる。よって、クラッチ作動トルクの大小にかかわらず、ドリルモードとクラッチモード間のモード切替操作がコイルバネ18bのみによる一定の負荷で容易に行え、モード切替に係る操作性が良好となる。
【0018】
なお、上記形態では、フラットワッシャ17a,17bの間に設定する間隔Sを、インターナルギヤ13の進退動のストロークより僅かに大きく設定しているが、このストロークと同じかそれよりも小さくして、インターナルギヤ13の前進位置或いはその直前でフラットワッシャ17a,17bが当接するようにしても良い。
また、インターナルギヤ13とコイルバネ18aとの間に、ピン14やフラットワッシャ17a,17bを介在させているが、これらの部品はなくすこともできる。さらに、コイルバネ18aやフラットワッシャ17aの後端位置を規制する段状突起31は、コイルバネ18bがなければピン14の外周側に設けても良い。
【0019】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、ハウジング内に、後退位置のインターナルギヤ側と弾性部材側との間に所定の間隔が形成されるように弾性部材側の後端位置を規制する規制部を設けて、後退位置のインターナルギヤへは所定の間隔によって弾性部材の付勢力の伝達を遮断し、インターナルギヤが前進位置で回転しようとする際には所定の間隔の解消によって弾性部材の付勢力がインターナルギヤへ伝達可能としたことで、弾性部材の付勢力は、クラッチモードの場合にのみモード切替部材に加わる構造となる。よって、クラッチ作動トルクの大小にかかわらず、ドリルモードとクラッチモード間のモード切替操作が容易に行え、モード切替に係る操作性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドライバドリルの一部縦断面図である。
【図2】モード切替レバー部分を前方から見た横断面説明図である。
【図3】従来のドライバドリルの一部縦断面図である。
【符号の説明】
1・・ドライバドリル、2・・ハウジング、5・・ギヤアッセンブリ、6・・スピンドル、8・・第1ギヤケース、9・・第2ギヤケース、13・・インターナルギヤ、17a,17b・・フラットワッシャ、18a,18b・・コイルバネ、21・・モード切替リング、22・・案内突起、23・・案内凹部、24・・モード切替レバー、29,30・・噛み合い歯、31・・段状突起。
Claims (1)
- ハウジング内でスピンドルの前段に配された遊星歯車減速機構のうちの1のインターナルギヤを回動可能且つ軸方向へ移動可能に設け、前記インターナルギヤとハウジングとの間に、前記インターナルギヤの後退位置で互いに噛合可能な噛み合い歯を夫々形成すると共に、前記ハウジングの外部からの操作によって、前記インターナルギヤを前記後退位置と、前記噛み合い歯同士が離反する前進位置との間で進退動させるモード切替部材を設け、前記インターナルギヤの前方に、前記インターナルギヤを後方へ付勢する弾性部材を設けたドライバドリルであって、
前記ハウジング内に、前記後退位置のインターナルギヤ側と前記弾性部材側との間に所定の間隔が形成されるように前記弾性部材側の後端位置を規制する規制部を設けて、前記後退位置のインターナルギヤへは前記所定の間隔によって前記弾性部材の付勢力の伝達を遮断し、前記インターナルギヤが前進位置で回転しようとする際には前記所定の間隔の解消によって前記弾性部材の付勢力が前記インターナルギヤへ伝達可能としたことを特徴とするドライバドリル。
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