JP3881140B2 - ハブユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、車輪が装着されるハブユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のハブユニットの基本構成は、本発明の実施形態の説明に引用した図1に示すようになっている。図中、1はハブユニット、2はハブホイール、3は複列外向きアンギュラ玉軸受、4はドライブシャフト、6はディスクブレーキ装置のディスクロータ、7はシャフトケースである。
【0003】
なお、ディスクロータ6は、ハブホイール2のフランジ12の外端面に対してあてがわれた状態で、フランジ12の円周数カ所に設けられる貫通孔13に貫通状態で非分離に嵌入されるボルト14により、固定される。
【0004】
そもそも、ディスクロータ6は、ハブユニット1をドライブシャフト4に対して取り付けた後で取り付けるために、フランジ12の貫通孔13に対してボルト14を予め取り付けておかなくてはならないし、また、ハブユニット1単品を取り扱う段階において、前述したボルト14が脱落すると困るので、ボルト14を貫通孔13に対して非分離に取り付けるようにしている。
【0005】
従来では、前述したボルト14を貫通孔13に対して非分離するために、貫通孔13の内周面を円形にしていて、ボルト14のねじ軸部において頭部側の領域にのみセレーションを形成しており、図10に示すように、ボルト14のセレーションを、貫通孔13の円形内周面に対して塑性変形により食い込ませるように嵌入装着する形態になっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、要するに、圧入によりボルト14のセレーションを貫通孔13に対して塑性変形させて食い込ませることにより、ボルト14を貫通孔13に対して非分離としているために、塑性変形により流動する肉部がフランジ12の外端面に対して膨出する現象が発生する。
【0007】
このような膨出部分がフランジ12の外端面に存在すると、このフランジ12に対してディスクロータ6を密着させることができなくなるので、ディスクロータ6が傾いてしまうおそれがあり、ディスクロータ6とブレーキパッド8との隙間が径方向で不均一となる他、甚だしい場合にはディスクロータ6の一部がブレーキパッド8に対して当接したままになって、ブレーキパッド8が偏摩耗するなど、ブレーキの効きが悪くなってしまう。
【0008】
このような実状に鑑み、本発明は、ハブユニットにおいて、ハブホイールに対するディスクロータの取付性を良好にできるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のハブユニットは、ハブホイールの径方向外向きのフランジの外端面にディスクブレーキ装置のディスクロータがあてがわれた状態で前記フランジの円周数カ所に設けられ内周面にセレーション歯が予め形成された貫通孔にねじ軸の頭部側に前記セレーション歯と係合するセレーション溝が予め形成されたボルトが嵌入されることにより固定されるハブユニットであって、前記ボルトのセレーション溝の断面を台形状とし、前記貫通孔のセレーションの歯の断面を三角形状とし、前記貫通孔のセレーションの歯先における半径寸法R1を、前記ボルトのセレーションの溝底における半径寸法r1よりも小さく設定し、また、前記貫通孔のセレーションの溝底における半径寸法R2を、前記ボルトのセレーションの歯先における半径寸法r2と同じかあるいは大きく設定している。
【0012】
以上、本発明では、フランジの貫通孔にもセレーションを設け、貫通孔に対してボルトをセレーション嵌合となる形態にさせており、しかも、セレーション嵌合の形態についても、一方のセレーションを他方に対して僅かに食い込ませるような形態にしているだけであるから、貫通孔に対してボルトを嵌入しても、塑性変形による肉部の流動が少なくて済み、フランジの外端面への膨出量を極力少なくできる。これにより、ボルトを非分離としたフランジの外端面に対してディスクロータを密着させることが可能となる
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1ないし図4に本発明の参考形態を示している。ここでは、駆動輪側に用いられるハブユニットを例に挙げる。図1は、ハブユニットを示す縦断側面図、図2は、フランジの貫通孔およびボルトを示す上半分の拡大断面図、図3は、フランジの貫通孔にボルトを装着した状態の一部断面図、図4は、フランジの貫通孔にセレーションを形成するときの手順を示す工程図である。
【0017】
図例のハブユニット1は、ハブホイール2と、複列外向きアンギュラ玉軸受3とを有している。
【0018】
ハブホイール2は、中空状の軸部11の一方軸端寄りに径方向外向きのフランジ12を設けた形状である。
【0019】
複列外向きアンギュラ玉軸受3は、ハブホイール2の軸部11の小径外周面11aに外嵌される単一軌道を有する内輪21と、二列の軌道溝を有する単一の外輪22と、二列で配設される複数の玉23と、二つの冠形保持器24,25とを備えており、前述のハブホイール2の軸部11の大径外周面11bを一方内輪とする構成になっている。
【0020】
そして、ハブホイール2の軸部11には、複列外向きアンギュラ玉軸受3が外装されている。
【0021】
また、このハブホイール2の内周にドライブシャフト4がスプライン嵌合されてナット5により一体化される。
【0022】
ハブホイール2のフランジ12には、ディスクブレーキ装置のディスクロータ6および図示しない車輪が取り付けられる。
【0023】
軸受3の外輪22の外周には、径方向外向きのフランジ26が設けられており、このフランジ26を介してシャフトケース7に非回転に取り付けられる。
【0024】
なお、ディスクロータ6は、ハブホイール2のフランジ12の外端面に対してあてがわれた状態で、フランジ12の円周数カ所に設けられる貫通孔13に貫通状態で非分離に嵌入されるボルト14により、固定される。
【0025】
この参考形態では、ハブホイール2のフランジ12の貫通孔13に対するボルト14の取り付け形態に特徴がある。
【0026】
すなわち、図2に示すように、フランジ12の貫通孔13の内周面に、ボルト14のセレーションと合致するセレーションが形成されている。この貫通孔13のセレーションの歯数は、ボルト14のセレーションの歯数と同数に設定されており、両セレーションの歯と溝が1対1の関係で噛合する。
【0027】
しかも、図3に示すように、貫通孔13のセレーションの歯をボルト14のセレーションの溝とほぼ同じ大きさかあるいはわずかに大きく設定することにより、両セレーションの歯面どうしが密接あるいは僅かな食い込み代を持つ状態で嵌合する関係に設定されている。これにより、貫通孔13からボルト14が簡単に抜け出ずに保持されることになる。ちなみに、前記食い込み代は、貫通孔13のセレーションの歯とボルト14のセレーションの歯との周方向での重なり幅を0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下に設定することにより、規定することができる。
【0028】
次に、上述したような貫通孔13に対するセレーションの形成方法について説明する。
【0029】
まず、図4(a)に示すように、フランジ12の貫通孔13を穿設してから、図4(b)に示すように、貫通孔13に対してパンチング治具40を用いてセレーションを打刻形成し、この後、図4(c)に示すように、フランジ12の外端面に対して旋削などの機械加工を施す。この方法であれば、セレーションを形成するときに、塑性変形に伴い流動する肉部13aがフランジ12の外端面に対して膨出するけれども、この膨出した肉部13aがセレーション加工の後の機械加工によって除去されることになる。これにより、フランジ12の外端面の平滑性が確保されることになる。
【0030】
このようにして形成した貫通孔13に対してボルト14を圧入により嵌入装着させる。
【0031】
このとき、上述しているように、フランジ12の貫通孔13にセレーションを設け、貫通孔13に対してボルト14をセレーション嵌合となる形態にさせているうえ、セレーション嵌合の形態についても、貫通孔13のセレーションをボルト14のセレーションに対して僅かに食い込ませるような形態にしているだけであるから、塑性変形による肉部13aの流動をほとんど無くせて、フランジ12の外端面への前記肉部13aの膨出をほとんど無くすことができる。これにより、ボルト14を非分離としたフランジ12の外端面に対してディスクロータ6を密着させることが可能になる。したがって、ディスクロータ6が従来例のように傾くことを防止できるようになるから、ディスクロータ6とブレーキパッド8との隙間を径方向で均一にできて、ブレーキ性能を安定に発揮させることができる。
【0032】
上記参考形態において、例えば図5や図6に示すように、一方のセレーションの歯数を他方のセレーションに対して整数倍となる関係に設定することができる。図5では、ボルト14のセレーションの歯数を1/2に間引いて溝ピッチを大きくすることにより、貫通孔13のセレーションの歯数をボルト14のセレーションの歯数の2倍とする形態を示しており、貫通孔13のセレーションの歯がボルト14のセレーションの溝に対して2対1の関係で噛合するようになっている。また、図6では、貫通孔13のセレーションの歯数を1/2に間引いて溝ピッチを大きくすることにより、ボルト14のセレーションの歯数を貫通孔13のセレーションの歯数の2倍とする形態を示しており、貫通孔13のセレーションの溝に対してボルト14のセレーションの歯が1対2の関係で噛合するようになっている。この場合、貫通孔13にボルト14を嵌入装着するときに、両セレーションの歯の位相が合致する確率が高くなるので、位相がずれた状態で嵌入装着してしまう状況が発生しにくくなる。そのため、貫通孔13のセレーションに対してボルト14のセレーションを位相合わせした状態で装着する煩わしさから解放されることになり、ボルト14の装着をオートメーション化することが可能となるなど、生産性の向上に貢献できる。
上記参考形態では、貫通孔13のセレーションおよびボルト14のセレーションの歯形状について、断面ほぼ台形状になったものを例示しているが、図7に示す本発明の実施形態は、断面ほぼ三角形状になったものとしている。この場合、両セレーションの歯と溝の食い込み形態について、図7に示すように、一方セレーションの谷底に他方セレーションの歯先を食い込ませるようにしてもよい。図7では、貫通孔13のセレーションの歯先における半径寸法R1を、ボルト14のセレーションの溝底における半径寸法r1よりも僅かに小さく設定し、また、貫通孔13のセレーションの溝底における半径寸法R2を、ボルト14のセレーションの歯先における半径寸法r2と同じかあるいは僅かに大きく設定している。一方、図8は、本発明の参考形態であり、貫通孔13のセレーションの歯先における半径寸法R1を、ボルト14のセレーションの溝底における半径r1と同じか僅かに大きく設定し、また、貫通孔13のセレーションの溝底における半径寸法R2を、ボルト14のセレーションの歯先における半径寸法r2よりも僅かに小さく設定している。ちなみに、上記実施形態の前記食い込み代は、一方セレーションの歯先と他方セレーションの溝底との重なり幅を0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下に設定することにより、規定することができる。
記実施形態では、ボルト14そのものが、大量生産される既製品であることを考慮して、セレーションの食い込み代の管理について、貫通孔13のセレーションの寸法を調整する形態にしているが、ボルト14のセレーションの寸法や歯数を調整する形態にしてもよい。
記実施形態では、駆動輪のハブユニット1を例に挙げたが、例えば図9に示すような従動輪用のハブユニット1としたり、あるいは図示しないが自動車などのスライドドアのガイドローラやその他の軸受装置全般としたりすることができる。
【0033】
【発明の効果】
請求項1の発明では、フランジの貫通孔にもセレーションを設け、貫通孔に対してボルトをセレーション嵌合となる形態にさせており、しかも、セレーション嵌合との形態についても、一方のセレーションを他方に対して僅かに食い込ませるような形態にしているだけであるから、貫通孔に対してボルトを嵌入しても、塑性変形による肉部の流動が少なくて済み、フランジの外端面への膨出量を極力少なくできる。これにより、フランジの外端面に対してディスクロータを密着させることが可能になり、ディスクロータが従来例のように傾くことを防止できるようになるから、ディスクロータとブレーキパッドとの隙間を径方向で均一にでてきて、ブレーキ性能を安定に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考形態の駆動輪用ハブユニットを示す縦断側面図
【図2】図1においてフランジの貫通孔およびボルトを示す上半分の拡大断面図
【図3】図2のフランジの貫通孔にボルトを装着した状態の一部断面図
【図4】フランジの貫通孔にセレーションを形成するときの手順を示す工程図
【図5】フランジの貫通孔およびボルトのセレーションの他の例にかかり、図2に対応する図
【図6】フランジの貫通孔およびボルトのセレーションの他の例にかかり、図2に対応する図
【図7】本発明の実施形態を示すフランジの貫通孔およびボルトのセレーションであって、図3に対応する図
【図8】フランジの貫通孔およびボルトのセレーションの他の例にかかり、図3に対応する図
【図9】本発明が適用可能な従動輪用のハブユニットを示す縦断側面図
【図10】従来例のフランジの貫通孔とボルトとの嵌入状態を示す要部の断面図
【符号の説明】
1 ハブユニット
2 ハブホイール
3 ドライブシャフト
6 ディスクロータ
11 ハブホイールの軸部
12 ハブホイールのフランジ
13 フランジの貫通孔
14 ボルト

Claims (1)

  1. ハブホイールの径方向外向きのフランジの外端面にディスクブレーキ装置のディスクロータがあてがわれた状態で前記フランジの円周数カ所に設けられ内周面にセレーション歯が予め形成された貫通孔にねじ軸の頭部側に前記セレーション歯と係合するセレーション溝が予め形成されたボルトが嵌入されることにより固定されるハブユニットであって、
    前記ボルトのセレーション溝の断面を台形状とし、前記貫通孔のセレーションの歯の断面を三角形状とし、前記貫通孔のセレーションの歯先における半径寸法R1を、前記ボルトのセレーションの溝底における半径寸法r1よりも小さく設定し、また、前記貫通孔のセレーションの溝底における半径寸法R2を、前記ボルトのセレーションの歯先における半径寸法r2と同じかあるいは大きく設定した、ことを特徴とするハブユニット。
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