JP3880212B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、文字や画像などの記録方法の一つとして、記録ヘッドのノズルから吐出させたインクを記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法が行われている。このインクジェット記録方法において、印字品位向上のために様々な手法が取り入れられている。その手法の一つとして、インクの調製により記録に適した浸透性を持たせたインクを使用することが挙げられる。すなわち、文字や線画等の記録濃度向上やシャープな画像形成を目的として、記録媒体である記録紙への浸透速度が遅く記録媒体表面に付着する量が多いインクを用いる技術や、定着速度を高めるため記録紙に対する浸透速度の速いインクを用いる技術が知られている。
【0003】
通常、浸透速度が遅いインクは記録紙の表面上に乗った状態で残る量が多いため、「上乗せ系インク」と称されている。また、浸透速度が速いインクは「超浸透性インク」と称されている。
【0004】
浸透性の高い超浸透性インクを用いた場合、図46(a)に示すように、記録媒体上に滴下されたインク滴51は、記録媒体52の表面上に残留するインク量が少なく、記録媒体52に付着後直ちに記録媒体内部に浸透していく。また、その記録紙への浸透速度は高く、その浸透性や記録媒体52の材質によっては記録媒体52の裏面近くに至るまで深く浸透する。
【0005】
これに対し、浸透性の低い上乗せ系インクを用いた場合、図46(b)に示すように、記録媒体52の表面上に凸状に残留した状態でインクの溶剤等の成分が蒸発しやすいため、記録媒体52上に滴下されたインク滴53は記録媒体52の厚み方向に浸透する量が少ない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
超浸透性インクを用いる場合、記録紙表面上に着弾したインクが速く浸透し、記録紙表面で他のインクと混ざることが少ないため、異色との境界部における滲みが発生しにくいという利点がある。しかしながら、インクが記録媒体に深く浸透し広い範囲に拡散するため、顔料や染料の色素成分が分散してしまうとともに、記録媒体に対して入射した光が記録媒体表面から深い位置で反射するようになるため、記録された画像の濃度が低くなってしまう。さらに、平面的に見た場合にも、インク滴51の周囲に広く拡散して記録ドットのサイズが大きくなり過ぎたり、ドットの外周にヒゲ上のにじみ(フェザリング)が発生して輪郭が不鮮明な画像となってしまうという問題がある。
【0007】
上乗せ系インクを用いる場合、表面上に残るインクの量が多いため、記録濃度が高く、また単一のドットで見ると記録媒体中に拡散するインクの量が超浸透性インクに比べて非常に少ないため、シャープな画像を記録することができるという利点がある。しかしながら、記録紙への浸透速度が遅く、記録紙表面上に残ったインクが定着するまでに必要な時間も長くなるため、近接する位置に他のインク滴が付着した場合、両インク滴間でインクが流れ出てしまい、異なる色同士においてはその境界部に滲みが発生し、結果として画質を劣化させてしまうという問題がある。また、記録紙表面が他の記録紙やペン等で擦られた場合、記録紙表面に固着したインクが剥がれたり、ラインマーカーなどのペンを用いて上書きした際にインクが溶け出して記録紙表面で滲むといった問題があり、耐擦過性に劣るという問題もあった。
【0008】
従来は、両インクの特性に基づいて、黒色は浸透性の低いインクを用い、それ以外の色については浸透性の高いインクを用いることが一般的であった。すなわち、微細な線や点が明確に視認される必要があって見易さが要求される文字や線画を記録する場合に黒色が用いられることが多いため、黒色のインクとして記録濃度が高く輪郭が鮮明に記録できる上乗せ系インクが用いられていた。また、文字や微細な線や点を記録されることが少なく、互いに異なる色のドットが隣接して記録されることが多いカラー画像の記録には、異色の境界に滲みが発生しにくく、境界を明確に記録することができる超浸透性インクが用いられていた。
【0009】
しかし、このように主に記録される画像の特徴に応じ、黒色と他の色とで浸透性の異なるインクを用いて記録を行ったとしても、図46(c)に示すように、浸透性の低いインクの黒ドット54と、浸透性の高いインクのカラードット55とが隣接した場合、隣接したドット間にインクが流れ出て記録品質が低下してしまう問題が発生してしまう。黒インク側では、インク滴が記録媒体表面上で凸状となって残るインクが境界部56からカラーインク側に流れ出してしまい、カラーインク側に流れ出た分だけ黒インク側の境界部56の濃度が低下し、黒インクのドットの輪郭の濃度が低下して白っぽく不鮮明な画像となってしまう現象が発生する。また、カラーインクのドットにおいても境界部56に黒インクが混入し、輪郭が不鮮明となってしまう。このように、浸透性の異なるインク同士が隣接した場合、境界部56にブリードが発生して記録品質が劣化してしまう問題は避けられなかった。
【0010】
なお、黒インク吐出後に長時間放置することにより、浸透性の低いインクであってもブリードを生じない程度に記録媒体に定着させることが可能である。しかし、黒インクの吐出とカラーインクの吐出との間に長い時間差を設ける必要があり、スループットが低下するため、高速の記録に適さないため実用的ではなかった。また、定着速度を高めるため、記録装置に設けたヒータにより記録媒体を加熱する技術が知られている。例えば、記録媒体の記録面の裏側から、記録ヘッドによる記録位置に対応する位置にヒータを設け、記録紙の表面に付着したインク滴の水分を蒸発させることにより、定着速度を高めることができることが知られている。しかしながらこの方法では、高温でインクを加熱した場合はインク中の水分が蒸発するときに水蒸気が発生するため、水蒸気が記録装置内部に付着して水滴となって記録媒体に影響を及ぼしたり、記録装置の制御回路や電源回路への悪影響を与えるなどの問題点があった。そこで、水蒸気を装置外部に排出する排気手段を設けることも考えられるが、特別な装置を付加するため装置のコストが上がったり、装置の電源容量を増やす必要が生じるため、実用的ではない。また、ヒータによって記録媒体を高温で加熱する場合、使用者の安全性を十分考慮する必要もある。
【0011】
また、浸透性にかかわる問題を緩和するために、特殊な加工を施した専用紙を記録媒体として使用することも考えられるが、コストや使用者の利便性を考慮すると、特殊な専用紙よりも普通紙を使用することが望ましい。
【0012】
以上のように、浸透性の高いいわゆる超浸透性インクによると、境界の滲みを低減することが可能であるが、記録濃度が低下した不鮮明な画像となってしまう。また、浸透性の低いいわゆる上乗せ系インクを用いた場合、記録濃度が高くシャープな画像を記録することが可能であるが、定着に要する時間が長く、インク滴同士の滲みの問題や耐擦過性が低いといった問題があった。黒色に上乗せ系インクを用いるとともにカラー画像を超浸透性インクを用いるよう構成した場合でも、黒インクのドットと他のカラーインクのドットとが隣接した場合、そのインク滴同士の滲みによるブリードの問題が発生してしまうという問題があった。
【0013】
次に本発明者らが本発明を完成するに至った経緯は次の通りである。
【0014】
まず、従来のインクジェット記録用インクとしては前述の非浸透系(上乗せ系)のインクが多く使用されていた。このインクは文字品位は良いものであるが定着が遅いという問題があった。また、カラー記録においては色間の境界にじみの発生という新たな問題も発生した。そこで定着性の向上や色間の境界にじみを防止するためヒーターを用いて加熱する方法が考えられた。しかしながらヒーターを使用したとしてもインク中に含まれる水分の蒸発が多量に発生するという問題や高コスト化の問題があった。そこでヒーターを使用せずにインクの定着性を向上させようとして超浸透系のインクを用いることとした。これにより定着性の向上と境界にじみの低減が実現した。ところが本発明者らがこのような技術の流れを分析したところ、超浸透系のインクを用いると超浸透性を有するが故に濃度が出にくいという抜けがあることに気付くに至った。そこで本発明者らはさらに鋭意研究した結果、半浸透性のインクを用い、これに熱を作用させることで定着性を向上し、境界にじみを低減させることができるとともに濃度も向上させることができるという新たな知見を得て本発明を完成するに至った。
【0015】
そこで本発明の目的は、定着性の向上及び記録濃度の向上と、異色のインク滴同士の境界のにじみの低減という、従来のインクでは得ることができなかった三つの特性を両立して前記問題点を解決するとともに、耐擦過性に優れた画像の形成が可能なインクジェット記録方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録方法は、ブラックインクとカラーインクを吐出するための記録ヘッドと、記録媒体の少なくとも一部を加熱する加熱手段とを有する記録装置におけるインクジェット記録方法であって、記録媒体に対して、記録ヘッドからブラックインクおよびカラーインクを吐出して記録を行う記録工程と、加熱手段により記録媒体を加熱する加熱工程とを有し、加熱工程による加熱は、記録媒体上の、ブラックインクが吐出された領域およびカラーインクが吐出された領域に対して実行され、ブラックインクとカラーインクの各々は、ブリストウ法で求められる普通紙に対するインク吸収係数Ka(ml・m-2・msec-1/2)が1.0〜5.0であり、且つエチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの含有割合が0.2〜0.7%であり、エチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの含有割合を、ブラックインクよりもカラーインクの方が高くすることで、前記ブラックインクのインク吸収係数Kaよりも前記カラーインクのインク吸収係数Kaを高く設定していることを特徴とする。これによって、境界にじみを生じにくく、かつ表示が不鮮明になることを防げる。
【0020】
加熱工程を行うことによる、記録工程において吐出されたブラックインクおよびカラーインクの記録媒体内部での浸透位置は、加熱工程を行わない場合に比べ記録媒体表面に近い位置である。記録工程は、加熱工程による加熱前に記録ヘッドからブラックインクおよびカラーインクを吐出する第1の記録工程と、加熱工程による所定時間の加熱後に記録ヘッドからインクを吐出する第2の記録工程とを含む。
【0021】
第2の記録工程は、第1の記録工程により吐出されたブラックインクおよび/またはカラーインクが形成する記録ドットと少なくとも一部が重なり合う位置にインクの吐出を行う。
【0022】
そして、第1の記録工程と第2の記録工程は、記録されるべき画像を構成する記録ドットを形成するにあたり、第1の記録工程と第2の記録工程とにより相補的となるようにブラックインクおよび/またはカラーインクを吐出して記録ドットを形成する。
【0023】
前記第1の記録工程と前記第2の記録工程は、記録されるべき画像を構成する記録ドットを、それぞれ互いに相補的となる千鳥状のパターンで間引いて記録を行う場合がある。
【0024】
または、前記第1の記録工程と前記第2の記録工程は、記録されるべき画像を構成する記録ドットを、所定方向に沿って所定ドットおきに間引いたパターンで記録を行う場合もある。
【0025】
第2の記録工程は、第1の記録工程により吐出されたブラックインクおよび/またはカラーインクが記録媒体内部へ浸透している間にブラックインクおよび/またはカラーインクの吐出を行う。
【0026】
前記記録装置は、記録ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを主走査方向に沿って走査する走査手段とを有し、前記キャリッジの走査中に前記記録ヘッドによる記録動作を行うシリアルタイプの記録装置であって、前記加熱手段は、前記キャリッジの走査によって前記記録ヘッドが移動して記録を行う領域を、前記記録媒体の記録面と反対の面から加熱するように設けられる。
【0027】
前記第1の記録工程と前記第2の記録工程とは、それぞれ異なる主走査時に行われてもよい。
【0029】
前記加熱手段は、前記記録ヘッドによる記録領域に位置する前記記録媒体を支持するプラテン部材の一部として設けられる場合がある。
【0030】
前記加熱手段はセラミックヒータであってもよい。
【0031】
前記記録装置は、前記記録媒体を送り方向に搬送する搬送手段を有するとともに、前記記録ヘッドが前記記録媒体の前記送り方向と異なる方向の全域に対して記録可能なフルラインヘッドであるフルラインタイプの記録装置であってもよい。
【0032】
その場合、前記記録ヘッドは、前記記録媒体の送り方向に沿って複数配置されてもよい。
【0033】
前記加熱手段は、前記記録ヘッドに対して前記搬送手段による送り方向に沿って異なる位置であって前記複数の記録ヘッドの間に設けられ、前記記録媒体の送り方向と直交する幅方向の全域に対して加熱が可能に構成される。
【0034】
ブラックインクおよびカラーインクは分散剤を含まない自己分散型顔料を含んでいてもよい。
【0036】
ブラックインクおよび/またはカラーインクの各々は、水におけるエチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの臨界ミセル濃度(c.m.c.)よりも低い割合でエチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを含有するインクであってもよい。
さらに、ブラックインクおよびカラーインクの各々が、エチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの含有割合が0.35〜0.5%であると、より好ましい。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明の技術的思想ならびに原理について項分けして詳細に説明する。
【0038】
(1)ヒータによる浸透制御
図1は、浸透性を有するインク滴2を記録媒体である記録紙1上に吐出してドットを形成した場合の、ヒータ3の有無によるインク滴の浸透状態の違いを説明する図である。ここでは記録媒体として一般に広く用いられる普通紙を使用した例を説明する。
【0039】
図1(a)は記録紙1に対してインク滴2が吐出された状態を示し、本図において図中の左右に示した両インク滴は、同じ浸透性で同じ吐出量である。記録紙1上に吐出されたインク滴2は、記録紙1の表面に衝突し、所定の大きさに広がって記録紙1の表面に付着する。図1(b)は、記録紙1の表面上に付着したインク滴2aの状態を模式的に示す図である。記録紙1の表面上に付着したインク滴2aは直ちに記録紙1への浸透を開始する。図1(c)はインク滴2が記録紙1に浸透した状態を示す図であり、2bはヒータ3を用いないで記録した場合のインク滴2の浸透状態を示し、2cはヒータ3を用いて記録を行った場合のインク滴2の浸透状態を示している。また、インク滴2cの周囲に示した破線2b’は、インク滴2bが非加熱で放置された場合に記録紙1に浸透可能な範囲を示す。
【0040】
図1に示す例では、インク滴2は記録紙1上にインクが凸状に残留することがない程度の高い浸透性を有するインクからなる。図1(c)に示すように、ヒータを用いないで記録を行った場合、インク滴2bは記録紙1の厚さ方向の深さd0まで浸透する。しかしながら、ヒータ3により記録紙1を加熱することにより、インク中の溶剤等の水分を蒸発させることができ、インク滴2cの浸透を記録紙1の厚さ方向の深さd1に抑えることができる。図1(c)に示すように、ヒータ3の加熱によりインク滴の浸透が制御される要因の一つとしては、水分の蒸発によるインクの粘度の増加が挙げられるが、更に大きい要因として考えられるものに、紙の表面部でのインクの膨潤が促進されていることが考えられる。
【0041】
このように、ヒータ3による加熱を行うことにより、インク滴の浸透を抑え記録紙1の厚さ方向の深さd1で浸透を停止させることができた。
【0042】
本件発明は、半浸透性インクを使用して記録を行う場合に画質を向上させた点を特徴とするものであるが、以下に半浸透性インクを用いた場合における現象の詳細なメカニズムについて推論ではあるが図50(紙の断面方向に見た状態の図)を参照しながら説明する。
【0043】
まず、図50(a)は紙に向ってインク滴が飛翔している様子を示す。図50(b)はインク滴が紙に着弾した状態を示す。このときインクは紙上でインク滴径の約2倍の径の円柱状となる。図50(c)は紙の表面部でインクが比較的速い浸透性を有しているために比較的速い速度で紙の繊維に膨潤していく様子を示している。ここで紙の裏面からヒーターにより付与される熱の作用により膨潤速度が促進され、かつインクの蒸発も促進される。図50(d)はインクが紙の内部に浸透した状態を示す図であるが、インクの主に水分の蒸発により次のステップの繊維間の毛管現象であるところの浸透が起こりにくくなる。よって紙の深さ方向にインクが浸透しにくくなる。また浸透が抑えられることによって繊維間の毛管現象で発生するフェザリングは発生しづらくなる。この結果、紙の表面の20μm以内に多くの色剤がトラップされるため、上乗せ系のインクと同様にOD値が高いものとなる。
【0044】
なお、加熱にあたっては、多大な水蒸気が発生しない程度にヒータ3の加熱温度や加熱時間などの条件を設定することが望ましい。
【0045】
次に、本実施形態におけるインクの組成と浸透性、浸透速度について説明する。本実施形態において使用したインクの成分の一例を以下に示す。
1.Y(イエロー)
C.I.ダイレクトイエロー86 3部
グリセリン 5部
チオジグリコール 5部
尿素 5部
アセチレノール EH(川研ケミカル) 1部
水 残部
2.M(マゼンタ)
C.I.アシッドレッド289 3部
グリセリン 5部
チオジグリコール 5部
尿素 5部
アセチレノール EH(川研ケミカル) 1部
水 残部
3.C(シアン)
C.I.ダイレクトブルー199 3部
グリセリン 5部
チオジグリコール 5部
尿素 5部
アセチレノール EH(川研ケミカル) 1部
水 残部
4.Bk(黒)
C.I.ダイレクトブラック 3部
グリセリン 5部
チオジグリコール 5部
尿素 5部
アセチレノール EH(川研ケミカル) 1部
水 残部
上記のインクにおいて、Bkインクについては上記構成中のアセチレノールの含有割合を調整して実験を行った。また、CMYのインクについては、アセチレノールEHを1%加えることにより浸透性を向上させている。
【0046】
このように本例におけるインクは、染料または顔料と、水と、溶剤としてのグリセリン、チオジグリコール、尿素などと、非イオン界面活性剤であるアセチレノール(アセチレノールは川研ファインケミカル社の商品名;アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加したものであり、エチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(ethylene oxide-2,4,7,9-tetramethyl-5-decyne-4,7-diol)で表される)とが混合されたものである。以下、便宜上、上記非イオン界面活性剤をアセチレノールという。
【0047】
インクの浸透性を1m2当たりのインク量Vで表すと、時間tにおけるV(単位はml/m2=μm)は次に示すようなブリストウ式により表されることが知られている。
【0048】
V=Vr+Ka(t−tw)1/2
ただし、t>tw
インク滴が記録紙表面上に滴下した直後は、インク滴は記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体の表面の粗さの部分)に吸収されるのがほとんどで記録媒体内部へはほとんど浸透していない。その間の時間がtw(濡れ時間:wet time)、その間の凹凸部への吸収量がVrである。インク滴の滴下後の経過時間がtwを越えると、超えた時間(t−tw)の2分の1乗に比例して浸透量Vが増加する。その時の比例係数がKaである。
【0049】
アセチレノールが0%、0.2%、0.35%、0.7%、1%の場合について、時間t(msec)の2分の1乗に対するインクの浸透量Vとの関係を、図3(a)に示す。また、時間tとインクの浸透量Vとの関係を図3(b)に示す。図3(a)および図3(b)から明らかなように、アセチレノールの含有割合が多いほど、経過時間に対するインクの浸透量が多く、浸透性が高いといえる。なお、図4に示す結果を得た実験は、64g/m2、厚さ約80μm、空隙率約50%の記録紙を用いて行ったものである。濡れ時間として現れる屈曲点(左側の黒丸で示す)までの時間はアセチレノールの含有量が多いほど短くなり、また、アセチレノールの含有割合が高いほど浸透性が高いという傾向が図3のグラフに表れている。アセチレノールが混合されていない(含有割合が0%)インクの場合、浸透性が低く、前述の上乗せ系インクとしての性質を持つ。また、アセチレノールが1%の含有割合で混合されている場合、短時間で記録紙1内部に浸透する性質を持ち、前述の超浸透性インクとしての性質を持つ。
【0050】
以上のことを図3及び図48を参照しながら説明する。
【0051】
まず熱を作用させない場合を考えてみる。まず紙にインク滴が着弾すると、最初のごく短かい時間に紙の繊維にインクが吸着され膨潤が生じる。その後、繊維間の毛管現象による浸透が始まる。ここで、複写機等の事務機に使用されるいわゆる普通紙にはにじみを防止するためにサイズ剤が含有されているため、仲々浸透が始まらず、いわゆる濡れ時間tw(wet time)が存在する。図3において同一線上の2つの黒丸のうち左側のものをtwとして示す。そして浸透が始まっても上記のサイズ剤によりインクの紙に対する濡れ性は上がらず、いわゆる上乗せ系のインクでは比較的ゆっくりと浸透していき、ある時点で今度は紙の繊維自体に急速に膨潤を開始していく。そのときの時間が上乗せ系のインクでは約400〜500msec程度である。この時点をts(swelling time)とする。図3において同一線上の2つの黒丸のうち右側のものをtsとして示す。ここでアセチレノールのような界面活性剤をインクに含有させるとインクの紙に対する濡れ性が向上するため、濡れ時間が早くなり、かつその膨潤(紙の繊維へのインクの吸着)速度も速くなる。そして次のステップの浸透速度も速くなり、その後この浸透とともに急激に紙の繊維に膨潤していく。そしてアセチレノール量の増加とともにtw,tsが短かくなっていき、1%ではほぼ零となる。ここでアセチレノール量が0.2〜0.3%のあたりから、アセチレノール量が増加するにしたがいtwとtsとが接近してくる。これらの関係をアセチレノール量に対するtw,tsの関係として図48に示す。ところで前述の浸透速度係数Kaとして表したものは、ts以後の吸液の傾きをとったものである。このようにtwとtsとが接近している半浸透系のインクでは、上乗せ系のインクと比べれば吸液速度が速いのであるがtsまでは比較的ゆっくりとした吸液速度であり、この期間にインク及び紙に対して熱を作用させることで膨潤速度を促進させ、毛管現象としての浸透速度を低下させると考えられる。このとき、インクの全体量を少なくしておけば、より浸透を抑制することが可能となり、紙の表面近傍に色材を確保できることとなる。
【0052】
尚、必要な熱量としては膨潤期間内に相当量のインクを浸透しにくいレベルまで蒸発させる量であればよいと考えられる。
【0053】
図2は、アセチレノールの含有割合に対するインクの浸透速度の比例係数Ka値を示すグラフである。Ka値は、ブリストウ法(bristow method)による液体の動的浸透性試験装置S(東洋精機製作所製)を用いて測定した。本実験では、記録紙として、電子写真方式を用いた複写機やLBP(Laser Beam Printer)と、インクジェット記録方式を用いたプリンタの双方に使える記録紙である、キヤノン株式会社のPB用紙を用いた。また、キヤノン株式会社の電子写真用記録用紙であるPPC用紙に対しても、ほぼ同様の結果を得ることができた。
【0054】
図2を参照するとわかるように、比例係数Kaはアセチレノールの含有割合によって変わるので、インクの浸透速度は実質的にアセチレノールの含有割合によって決まることになる。
【0055】
次に、図1に示したような記録紙を加熱するヒータが有る場合と無い場合とについて、1パスで印字したときのインクの浸透性の違いに応じた印字結果の状態を図4に示す。インクの浸透性の調整は、アセチレノールの含有割合を調整することによって行った。
【0056】
図4において縦軸は画像濃度(OD)または異色境界にじみに関する良好性、顔料インクにおける耐擦過性/即時耐水性を示し、横軸がアセチレノールの含有割合を示している。ここで、異色境界にじみとは、異なる色のドットを隣接して記録した場合のにじみの状態を意味し、例えばベタ黒の画像とカラー画像との境界において目視によって判断してにじみの発生が少ないほど良好であることを示す。また、耐擦過性とは、記録後の印字結果に他の記録紙等が接触したり擦過したりすることに対する良好性を意味し、即時耐水性とは記録直後の耐水性を意味するものである。
【0057】
図4から、ヒータの有無に係わらず浸透性が高くなるほど画像濃度(OD)が低下し、異色境界にじみに関する良好性、および耐擦過性、即時耐水性のいずれもが向上することがわかる。これは、先に示したインクの浸透性の違いによる性質そのものを表している。また、ヒータの有無に応じた記録画像品位に着目してみると、ヒータによって画像濃度、異色境界にじみに関する良好性のいずれも向上していることがわかる。特に、画像濃度に着目してみると、アセチレノールの含有割合が増加するに従ってヒータの有無に応じた画像濃度の差が大きくなっていることがわかる。また、異色境界にじみに関する良好性についてみると、アセチレノールの含有割合が0.4%前後で、ヒータの有無に伴い良好性に大きな差が発生していることがわかる。
【0058】
このような効果は、ある程度浸透性の高いインクを用いることにより、記録紙に付着したインクは直ちに記録紙内部へ浸透を開始するものの、ヒータによる加熱によって紙の内部でのインクの浸透が抑えられることにより、記録紙内部であっても記録紙表面から浅い範囲でインクが定着されることによるものである。
【0059】
従って、本実施形態によると、浸透性の面では高い浸透速度が得られるとともに、また、画像濃度の面では、記録紙内部の表面に近い位置でインクを定着できるため高い画像濃度を得ることができる。また、インクは記録紙内部へ浸透しているため、記録紙表面上にインクが凸状になって残る量が極めて少なく、耐擦過性に優れ、記録直後の耐水性も良好となり、記録画像をマーカーペン等で上書きしたとしても、インクの溶け出しによる記録画像の劣化が発生しにくくなる。
【0060】
図4に示す結果より、1パス(記録ヘッドの1回の主走査)で行う場合、アセチレノールの含有割合を約0.2〜0.7%、好ましくは約0.35%〜0.50%程度に調整することにより、記録画像濃度と境界にじみの良好性の双方において記録に適した画像の形成が可能となることがわかる。なお、上記範囲内において、記録画像濃度を高めることに重点を置く場合、アセチレノールの含有割合の低いインクを用い、境界にじみに対する良好性を向上させることに重点を置く場合は、アセチレノールの含有割合の高いインクを用いることで、所望の記録画像を記録することができる。例えば、高い記録濃度が要求される黒画像を記録する黒インクについては、上記範囲内でアセチレノールの含有割合が比較的低いインクを用い、混色して記録されることの多いカラーインクについては、上記範囲内でアセチレノールの含有割合が比較的高いインクを用いる構成とすることが効果的である。
【0061】
次に、本発明の実施形態における、記録媒体に対する浸透性を異ならせたインク系それぞれの成分および特性の目安を以下の表に示す。
【0062】
【表1】
Figure 0003880212
上記の表では、「上乗せ系インク」、「半浸透性インク」、「高浸透性インク」のそれぞれについて、Ka値、アセチレノール含有量(%)、表面張力(dyne/cm)を示している。
【0063】
上記表におけるKa値は、前述のごとくブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置S(東洋精機製作所製)を用いて測定したものである。実験に用いた記録紙としては、電子写真方式を用いた複写機やLBPと、インクジェット記録方式を用いたプリンタの双方に使える記録紙である、キヤノン株式会社のPB用紙を用いた。また、キヤノン株式会社の電子写真用記録用紙であるPPC用紙に対しても、同様の結果を得ることができた。
【0064】
ここで、「半浸透性インク」として規定される系のインクは、前述の実験例により、ヒータを用いた構成において良好な結果が得られた範囲(0.2〜0.7重量%)のアセチレノールを含有するインクである。
【0065】
ここで、界面活性剤を液体に含有させる場合の条件として、その液体における界面活性剤の臨界ミセル濃度(c.m.c.)があることが知られている。上述したインクに含有されるアセチレノールは界面活性剤の一種であり、同様にアセチレノールにおいても液体に応じて臨界ミセル濃度(c.m.c.)が存在する。
【0066】
図47は水に対するアセチレノールの含有割合を調整した場合の表面張力を示すグラフであり、このグラフから水に対するアセチレノールの臨界ミセル濃度(c.m.c.)が約0.7%であることがわかる。このことと上記表を対応させると、本願発明の実施形態で説明する「半浸透性インク」は、水におけるアセチレノールの臨界ミセル濃度(c.m.c.)よりも低い割合でアセチレノールを含有するインクがあることがわかる。
【0067】
本発明は、上記の表1で示される半浸透性インクを用い、ヒータによる加熱制御を行って記録動作を行うことにより、インク滴の浸透を記録紙表面から浅い位置に抑えることができ、結果として画像濃度を高くできるとともに異色境界にじみに対する良好性を向上できることを見出したことにある。また、本発明は、半浸透性インクを用い、ヒータによる加熱制御を行って記録動作を行う場合に、2つのインク滴を所定の時間差を隔てて重ね記録を行うことにより、より多くのインク滴を記録紙表面から浅い位置に浸透させた状態で定着することができ、また、多くのインク滴を吐出して記録を行った場合に問題となる異色境界にじみの問題についても良好な結果を得られることを見出したことに特徴を有するものである。
【0068】
次に、ヒータによる加熱制御を行って記録動作を行う場合の、記録方式に応じた効果について、各種記録方式を例に挙げて説明する。
【0069】
(2)記録方式に応じたインクの浸透の制御
先の説明では、ヒータを用いて記録紙を加熱することによりインクの記録紙への浸透を抑え、記録濃度と境界にじみの良好性を向上させる構成について説明したが、次に、ヒータを用いて加熱を行った状態で複数のインク滴を吐出して記録を行う場合における効果を、様々な記録方式についてそれぞれ説明する。
【0070】
(分割印字方式)
少量のインク滴を複数回吐出することにより所定量のインクを得る記録方式について説明する。
【0071】
図5(a)、図5(b)は、1滴の吐出量が約40plのインク滴を吐出した状態、およびインク滴が記録紙1の表面に衝突して付着した状態を模式的に示す図である。また、図5(c)、図5(d)は、1滴の吐出量が約20plのインク滴2’を2個連続して吐出した状態、およびインク滴が記録紙1の表面に衝突して付着した状態を模式的に示す図である。ここで、図5(c)に示される2つのインク滴はあまり時間差を置くことなく吐出した状態を示すものであり、例えば、本図の例では約50msecの時間差で2つのインク滴2が吐出された状態を示すものとする。また、インクは、前述したようにアセチレノールの含有率を約0.2から0.7%、より好ましくは約0.35%から0.5%程度に調整したものを用いたものとする。また、いずれの場合もヒータ3によって記録紙を加熱した状態でインク滴を吐出し、インク滴の記録紙の厚さ方向に対する浸透を抑える制御を行った。
【0072】
図5(d)に示すように、2つのインク滴が吐出される時間間隔が短くても、先に記録紙表面に付着したインク滴は2cに示すように浸透を開始している。
図5(b)と図5(d)を比較するとわかるように、40plのインク滴を1回で吐出した場合と、20plの吐出量で2回に分けて吐出した場合とでは、記録紙表面にインク滴が衝突して付着した状態の高さ(h1、h2)が異なる。インク滴が記録紙表面に付着した直後の高さが高いほど、記録紙の厚さ方向への浸透の深さが深くなる。記録画像の濃度を高めるには記録紙の厚さ方向に浸透する深さを小さくすることが望ましく、図5(b)、図5(d)を比較してみると、同量のインク滴で画像を形成する場合、複数回に分けて記録した方が記録紙への浸透の深さを少なくすることができることがわかる。
【0073】
次に、上記のようなインク吐出量と記録紙の表面に付着したインク滴の高さとの関係が生じる理由について詳細に説明する。
【0074】
図6(a)はインク吐出量Vd(pl)に対する記録紙に衝突あるいは付着した後のインク滴の高さを説明するための表である。図6(b)、図6(c)は図6(a)の表の各項目を説明する図である。図6(b)は吐出量Vdのインク滴2が吐出された状態を示し、そのインク滴がほぼ球形の状態における半径をr(Vd=4πr3/3)とする。図6(c)はインク滴が記録紙表面上に付着した直後の状態を示し、Rは付着した直後のインク滴の半径を示している。ここで、rおよびRの単位はμmであり、また、吐出されたインク滴が記録紙に衝突した場合に従来のインクジェット記録方式においてほぼ成り立つところの約2倍の径となるものとし、R=2rとして計算した。また、記録紙に衝突して付着した直後のインク滴をドット径として見た場合の面積をS(S=πR2)、その高さをh(h=Vd/S)で表している。
【0075】
図6(a)において、AF(エリアファクター)は、360dpi(dotsper inches)の解像度で記録を行う場合、1ドット位置に対するインク滴が占める割合を表している。つまり、360dpiで記録する各画素を、1辺が約70.5μmの格子状とすると、その面積は約4970.25μm2である。AFは、1画素の面積に対するインク滴の面積が占める割合をパーセントで表している(AF=S×100/4970.25)。このAFの値が大きくなるほど隣接する画素のインク滴との距離が小さくなり、この値が100を越える場合は、記録紙に付着したインク滴が隣接する画素位置にまで到達することになる。
【0076】
図6(a)の表によると、吐出量を40plとして吐出した場合にインク滴が記録紙に付着した直後の高さは約7.1μmであり、吐出量が20plの場合は5.6μmである。インク滴の浸透は記録紙に付着した直後の高さが影響し、ほぼインク滴の高さが記録紙内部への浸透の深さとなる。そのため、40plのインクを1回の吐出で記録した場合と、20plのインク滴で2回に分けて記録した場合とでは、そのインク滴の浸透の深さは後者の方が浅くなる。前述のように、記録紙表面の浅い位置でインクを定着した方が記録濃度を高くすることができるため、40plのインク滴を吐出して記録を行うよりも、20plのインク滴により2回に分けて記録を行った方が記録濃度を高くすることができる。
【0077】
上述のように、ヒータにより記録紙を加熱した状態でインク滴を吐出して記録を行う構成において、さらに、同量のインクを少ない吐出量により複数回に分けて記録を行うことで、記録濃度をより高めることができる。
【0078】
(重ね打ち印字方式)
上述した分割印字による効果は、同一位置に複数回インク滴を吐出して記録を行う構成においても得られるものであり、それについて図7および図8を用いて説明する。図7は複数のインク滴を時間差をおくことなく連続して吐出した例を示すもので、図7(a)は2つのインク滴が吐出された状態を示し、図7(b)は2つのインク滴が記録紙1の表面上に付着した状態を模式的に示している。
【0079】
2つのインク滴が極めて短い時間差、例えば10msで吐出された場合、先に吐出されたインク滴が記録紙1の内部に浸透するよりも前に、後に吐出されるインク滴が記録紙1の表面に到達する。その場合、2つのインク滴が記録紙1の表面に付着した直後は、図7(b)に示すように、記録紙表面上に2つのインク滴が重なった状態で付着することになる。従って、付着したインク滴の高さも高くなり、結果として記録紙内部へ浸透する深さも深くなる。
【0080】
これに対して、2つのインク滴を十分な時間差、例えば約1秒をおいて同じ位置に記録した場合の例を図8に示す。図8(a)は先に吐出されるインク滴の状態を示す。吐出されたインク滴は、図8(b)に示すように、後のインク滴が吐出されるよりも前に記録紙内部に浸透する。その状態で図8(c)に示すように、後のインク滴が吐出されると、図8(d)に示すように記録紙内部への浸透の深さがそれ以上深くなることはなく、2つのインク滴の浸透を記録紙表面から浅い位置に抑えることができる。
【0081】
従って、複数のインク滴を同じ位置に重ねて記録する場合、複数のインク滴を吐出する時間間隔を十分におくことで、インク滴の浸透を記録紙表面から浅い位置に抑えることができ、記録濃度を高めることができる。
【0082】
このような、十分な時間差をおいて重ね打ちを行う効果は、ヒータを設けない構成によっても得られるものであるが、ヒータを設けてインク滴の記録紙の深さ方向への浸透を抑えるようにすることで浸透性の高いインクを用いても記録濃度を高くすることができるため、インク滴が記録紙内部へ浸透する速度を高めることができ、重ね打ちを行う時間間隔を短くしても十分な記録濃度を得ることができる。
【0083】
(小液滴による記録方式)
次に、1インク滴でエリアファクターが100%以上となる格子上に対して、吐出量の小さなインク滴を複数吐出することによって、さらなる効果が得られることを説明する。
【0084】
先に説明した分割印字方式は、ある程度の時間差をおいた例であるが、本例においては、吐出量の小さな液滴をほぼ同時に吐出して記録を行ったとしても、ヒータを用いることにより効果が得られることを説明する。
【0085】
図9(a)は吐出量が100plのインク滴を吐出した例を示す図である。101は100plのインク滴でエリアファクターが100%以上となる画素の格子を表すものであり、102はそのインク滴で形成されるドットを表している。また、103、104は同量のインク滴が記録紙上に付着した直後の状態を、記録紙の断面方向から見た状態を表している。
【0086】
図9(b)は100plのインクを25plのインク滴を4滴吐出した例を示す図である。101は図9(a)の格子と同サイズの格子を示し、110は25plのインク滴によって形成されるドットを表している。また、111、112、113は同量のインク滴が記録紙上に付着した直後の状態を表している。
【0087】
図6(a)に示した表によると、吐出量が100plの場合のドット径w1(R×2)は約115.2μm、記録紙に付着した直後の高さは約9.6μmとなる。また吐出量が25plの場合は、ドット径w2は約72.4μm、その高さは約6.1μmとなる。
【0088】
このように、一つのインク滴でエリアファクターが100%となる画素上に、吐出量の小さなインク滴を複数吐出してエリアファクターを100%以上にするよう構成することにより、記録紙表面上に付着した直後のインク滴の高さを低くすることができ、ヒータによる加熱の効果も加わって記録紙内部への浸透の深さが浅くなり、記録濃度を高めるとともに境界にじみに関する良好性も向上する。
【0089】
(複数回の記録で画像を完成させる方式)
次に、所定の記録画像を記録する際に、複数回の記録に分けて記録を行う方式について説明する。
【0090】
図10は、1回の記録により所定の画像のエリアファクターを100%として記録を行う例を説明する図である。図10(a)は、ヒータ3による加熱を行い、記録紙1上に複数のインク滴2を吐出する状態を表している。また、図10(b)は吐出された複数のインク滴が記録紙の表面上に付着した直後の状態を示しており、インク滴は2eに示すようにh5で示す高さまで盛り上がった状態で付着し、図中の矢印で示すように記録紙内部へ浸透を開始する。図10(c)は、図10(b)で示したインク2eが記録紙内部へ浸透した状態を示し、ヒータによってインクの浸透が抑えられるものの、深さd2までインクが浸透した状態(2f)でインクが定着する。
【0091】
図11は、所定の記録画像を2回に分けた記録によって形成する方式を説明する図である。図11(a)は、図10(a)と比べると、インク滴2のうち互いに隣接しないインク滴のみを吐出した状態を示す図である。吐出されたインク滴は、図11(a)中に点線2gで示すように付着して記録紙1内部へ浸透を開始する。インク滴2が記録紙の表面に付着した直後の高さはh6で表される。図11(b)は、図11(a)で吐出されたインク滴が、記録紙内部へ浸透した状態(2h)を示す図であり、ヒータ3によって浸透が抑えられて深さd3まで浸透した状態を示している。図11(c)は、図11(a)でインク滴を吐出してから所定時間経過後に、図11(a)で吐出されなかったインク滴を吐出した状態を表す図である。本図においても、互いに隣接した位置に記録されないインク滴のみが吐出されている状態を表している。吐出されたインク滴2は、図11(a)と同様に、点線2g’に示すように記録紙1の表面に付着し、記録紙内部へ浸透を開始する。インク滴が記録紙1に付着した直後の高さは、先の図11(a)と同様にh6である。
【0092】
図11(d)は、図11(a)、図11(c)の2回に分けて吐出されたインク滴2が記録紙1の内部へ浸透した状態(2h’)を示す図であり、ヒータ3によって浸透が抑えられて深さd3まで浸透した状態を示している。ここで、図10で示したように1回の記録でインク滴を吐出して記録した場合と、図11で示したように複数回に分けて記録を行った場合とでは、それぞれのインクが浸透する深さ(d2、d3)が異なる。それは、図10のように隣接した位置に吐出されるインク滴を1回の記録で全て吐出した場合、隣接したインク滴同士が重複するため、その重複部分によって記録紙1に付着したインク滴の高さが高くなってしまい、結果として記録紙の厚さ方向の深い位置までインクが浸透してしまうためである。これに対して、図11で示したように、複数回に分けて全てのインク滴を吐出するよう構成した場合、隣接する位置に吐出されるインク滴同士が重複することがなく、インク滴が記録紙の表面に付着した直後の高さを低くすることができ、結果としてインクが記録媒体内部へ浸透する深さを浅くすることができ、記録濃度を高くすることができる。
【0093】
(3)顔料インクによる記録
本発明は、染料インクのみならず顔料インクにおいても有効に適用可能なものであり、顔料インクを用いた場合、染料インクを用いた場合とは異なる現象により更なる効果が得られるものである。そこで、顔料インクを用いる構成においてヒータで加熱を行うことによる効果を説明する。
【0094】
図12(a)は、ヒータを用いずに浸透性の顔料インクを記録紙1に対して吐出を行った後のインクの浸透状態と、紙面上に形成されたドットの状態を表す図である。
【0095】
記録紙1上に吐出されたインク滴は、131に示すように記録紙1の内部に深さd4まで浸透した状態で定着する。インク中の顔料は、インクの溶剤が記録紙1の内部および記録紙の表面上に浸透することにより、溶剤とともに記録紙1の内部および記録紙の表面の広い範囲に分散する。その結果、記録紙1の内部の深い位置まで顔料が浸透するため記録濃度が低下してしまう。また、記録紙1の表面では、ドット132に示すように、その浸透性のためにフェザリングが発生した状態となり、単一のドット自体の形状が悪化した状態となって記録されて記録品位が低下したものとなってしまう。
【0096】
これに対して、図12(b)は、ヒータを用いて記録紙1を加熱した状態で顔料インクによるインク滴を記録紙1に対して吐出した後のインクの浸透状態と、紙面上に形成されたドットの状態を表す図である。ヒータを用いて記録紙を加熱して記録を行う構成において、分散剤の入っていない自己分散型顔料インクを用いた場合、加熱によって紙に浸透したインクの水分が蒸発して顔料濃度が上がり、インクの溶媒に対して分散しづらくなる。その結果、インクが記録紙内部の厚さ方向に浸透する深さをd5に抑えることができ、前述の例と同様に記録品位を向上させることができる。
【0097】
図12(b)において、記録紙1上に吐出されたインク滴は、記録紙1の表面上に付着した後、記録紙1の内部へ浸透を開始する。ここで、ヒータ3により加熱を行うことにより、紙中の水分が蒸発することによってインク中の顔料濃度が上がり、インクの溶媒に対して分散しづらくなり、顔料インクは溶剤とともに記録紙内部の深い位置135まで浸透しなくなる。また、記録紙の表面から見ると、顔料粒子は溶剤と共に記録紙内へ浸透しているため、記録紙の表面上には顔料粒子がほぼ残っていない状態で定着する。その結果、ヒータによりインクが記録紙1の内部への浸透する深さをd5に抑えることができ、記録濃度が高くなる。さらに、インク滴は記録紙内部へ浸透しているため、耐擦過性、即時耐水性の面においても高い効果が得られる。
【0098】
また、記録紙表面で見たドット134についても、ヒータを用いない構成で形成したドットに比べドットのエッジ部におけるフェザリングの発生を抑えることができ、よりシャープなドットを形成することができる。これは、記録紙1の表面に付着したインク滴のうち、エッジ部に位置するインクの方がヒータの加熱の影響を受けやすく、水分の蒸発が多くかつ早く生じるためによるものと考えられる。
【0099】
(4)複数のインク滴を重ねて記録する場合の時間差による違い
次に、ヒータを用いて記録媒体を加熱してインクの浸透を制御する構成において、複数のインク滴を重ねて記録する場合の、重ねて記録する時間間隔の違いに応じた効果の差異について説明する。
【0100】
本例に適用した記録装置の一例について、その斜視図を図13に示す。記録媒体である記録紙(普通紙)1は、給紙部5から挿入されて印字部6を経て排紙される。本例では記録紙として一般に広く用いられ、安価な普通紙を用いている。印字部6にはキャリッジ7に搭載された記録ヘッド8が設けられ、記録ヘッド8は図示しない駆動手段によりガイドレール9に沿って往復移動可能に構成される。記録ヘッド8は、黒インクを吐出する黒吐出部K1、K2と、シアンインクを吐出するシアン吐出部C,マゼンタインクを吐出するマゼンタ吐出部M、イエローインクを吐出するイエロー吐出部Yとを有しており、不図示のインクタンクからインクが供給され、各吐出部はインク吐出手段に駆動信号が供給されることにより、それぞれ対応した色のインクの吐出を行う。各吐出部に対向する位置の、キャリッジ7の移動範囲の全域にわたってセラミックヒータ10が設けられている。本例ではインク吐出手段として、インクに熱エネルギーを印加する電気熱変換素子を備えており、熱エネルギーによってインク中に気泡を発生させ、その発泡時の圧力を利用してインクの吐出を行う、いわゆるバブルジェット方式を採用している。記録ヘッド8は360dpiの解像度を持ち、ノズルの駆動周波数は7.2KHzに設定され、キャリッジ7は約1.5秒で走査範囲を1往復するよう構成されている。
【0101】
(記録間隔が短い場合の例)
まず、重ねて記録するインク滴の時間間隔が短い場合の記録結果について、実験結果を例に説明する。
【0102】
本実験では、図13に示した記録装置の黒吐出部K1、K2による重ね記録を、キャリッジの同一走査時に行った。K1、K2による記録の時間間隔は約50msecと比較的短い時間間隔である。またカラーインク吐出部C、M、Yによる記録は、黒吐出部K1、K2による記録走査に続く記録走査時に行った。インクの浸透性と記録画像濃度の関係を、ヒータ10による加熱温度を異ならせた場合について、図14、図15に示す。図14は、加熱手段としてセラミックヒータへの加熱電圧を28V、20V、0Vとした場合について、それぞれアセチレノールの含有割合を調整した場合の実験結果を示すグラフである。また、図15は、加熱手段であるヒータの電力値(ワッテージ)とOD値との関係を、インク中のアセチレノールの含有率が0%、0.4%、1.0%の場合について示している。尚、ヒータへの印加電圧を高くした方がヒータによる加熱温度が高くなり、印加電圧が0Vの場合はヒータによる加熱を行わない場合を示している。
【0103】
図14において、縦軸は記録画像濃度を示すOD値(反射光学濃度)であり、横軸はアセチレノールの含有率である。また、図15において、縦軸は記録画像濃度を示すOD値(反射光学濃度)であり、横軸は加熱手段であるヒータの電力値(ワッテージ)を示している。
【0104】
アセチレノールの含有率が0%のインクの場合、OD値が高く鮮明に見えるが、前述のように記録媒体の表面上に凸状に残留する量が多く、隣接して異なる色のインク滴が吐出されるとインクの流れ込みを生じて境界にじみや白もやなどのブリードが発生しやすくなる。このような問題点を解決するためには、隣接するインクを吐出する前に十分な時間放置する必要があり、スループットを低下させてしまう。また、アセチレノールの含有率を増加させるとインクの浸透性を高めることができ、記録紙の表面上に凸状に残留することなくインクを浸透させることができるが、OD値が低下して不鮮明な画像となってしまう。本例では、アセチレノールの含有率を約0.4%程度とすることにより、比較的OD値が高く、境界にじみに対しても良好な記録画像を形成できた。
【0105】
また、図16は、ヒータを用いた場合とヒータを用いない場合とでODの差がどの程度違うかを説明する図である。図16は図14に示した結果に基づくグラフであり、ヒータへの加熱電圧が20Vのときと0V(ヒータを用いない場合)のときの濃度差と、ヒータへの加熱電圧が28Vのときと0V(ヒータを用いない場合)のときの濃度差とを、アセチレノールの含有割合に対応させてグラフで示している。
【0106】
図14、図15及び図16に示す結果より、ヒータの加熱温度を高くした方がOD値をより高くでき、また、アセチレノールを含有させて浸透性を高めたインクであっても、ヒータによる加熱温度を高めることで、浸透性の低いインクとほぼ同等の記録画像濃度まで濃度を高めることができることがわかる。
【0107】
(記録間隔を長くして重ねて記録を行った場合の例)
次に、重ねて記録するインク滴の時間間隔を長くした場合の記録結果について、実験結果を例に説明する。
【0108】
本実験では、図13に示した記録装置を用い、キャリッジ7の最初の記録走査時に黒吐出部K1、K2のいずれかにより記録を行い、キャリッジ7が走査範囲を1往復した後のキャリッジの走査において、黒吐出部K1、K2のいずれかにより重ね記録を行った例を説明する。
【0109】
本実験では、キャリッジの2回の走査に分けて行う重ね記録の時間間隔は約1.5秒と比較的長い時間間隔となる。また、カラーインク吐出部C、M、Yによる記録は、黒の吐出部の2回目の記録走査時に行った。
【0110】
実験結果を図17、図18に示す。図17は、加熱手段としてセラミックヒータへの加熱電圧を28V、20V、0Vとした場合について、それぞれアセチレノールの含有割合を調整した場合の実験結果を示すグラフである。また、図18は、加熱手段であるヒータの電力値(ワッテージ)とOD値との関係を、インク中のアセチレノールの含有率が0%、0.4%、1.0%の場合について示している。本実験例でも、先の実験例と同様に、アセチレノールの含有率を約0.4%程度とすることにより、比較的OD値が高く、境界にじみに対しても良好な記録画像を形成できた。
【0111】
また、図19は、ヒータを用いた場合とヒータを用いない場合とでODの差がどの程度違うかを説明する図である。図19は図17に示した結果に基づくグラフであり、ヒータへの加熱電圧が20Vのときと0V(ヒータを用いない場合)のときの濃度差と、ヒータへの加熱電圧が28Vのときと0V(ヒータを用いない場合)のときの濃度差とを、アセチレノールの含有割合に対応させてグラフで示している。
【0112】
図19を見ると、ヒータへの加熱電圧が28Vの場合、アセチレノールの含有割合が0.2〜0.7%、特に0.3〜0.7%のときに、ヒータを用いない場合との濃度差が大きくなり、高濃度の画像を形成できることがわかる。
【0113】
図17、図18及び図19に示す結果より、ヒータの加熱温度を高くした方がOD値をより高くでき、また、アセチレノールを含有させて浸透性を高めたインクであっても、ヒータによる加熱温度を高めることで、浸透性の低いインクとほぼ同等の記録画像濃度まで濃度を高めることができることがわかる。
【0114】
また、先に説明した図14、図15に示す実験結果と比較した場合、インク中のアセチレノールの含有率とヒータの加熱温度、ヒータのワッテージなどの条件を一致させて比較すると、図17、図18に示した実験結果の方が、より高い記録濃度を達成できることがわかる。
【0115】
また、図16と図19の結果を比較しても、複数のインク滴を重ねて記録する時間間隔をある程度長く設定することにより、ヒータによる加熱の効果をより良く得ることができ、記録濃度を高くすることができることがわかる。
【0116】
また、他のカラーインクによる画像の境界に発生するインクのにじみについても、比較的浸透性の高いインクを用いることと、ヒータによるインクの記録紙内部への浸透を抑える効果により、にじみの発生を抑えることができる。
【0117】
ここで、黒インクによる記録とカラーインクによる記録との時間間隔に応じた境界のにじみの発生を検討すると、図14、図15に示した例では黒インクによる記録とカラーインクによる記録との時間間隔が比較的長いため、境界におけるにじみの発生を抑えることができた。また図17、図18に示した例では、ヒータを用いた加熱の効果により黒インクによる画像とカラーインクによる画像の境界のにじみは抑えられるものの、2回目の記録走査時の黒インクによる記録とカラーインクによる記録とが同一走査時に行われるため、図14、図15に示した例に比べれば若干にじみの発生が確認された。
【0118】
上述のことから、黒インクによる画像の画像濃度を高めるためには黒の吐出部K1、K2による記録の時間間隔を長くし、黒インクによる画像とカラーインクによる画像の境界のにじみをより抑えるためには、黒インクによる記録とカラーインクによる記録の時間間隔を長くすることが好ましいことがわかる。
【0119】
以上のことから、複数のインク滴を重ねて記録することにより記録濃度を高くしようとした場合、重ねて記録を行う時間間隔をある程度長く設定することにより、より記録濃度を高くできるといえる。その設定時間としては、実験例に挙げたようにキャリッジが1往復する時間とすれば単一の黒吐出部で2回記録する構成も採用し得るため、図2に示した記録装置のように黒インクを吐出する黒吐出部を複数設けることなく、一般に知られるような各インク色に対応した吐出部が一つずつ設けられる構成においても適用可能である。
【0120】
また、記録紙の幅方向の全域に対応した長さを有する記録ヘッドを用いたフルラインタイプの記録装置が一般に知られているが、このフルラインタイプの記録装置においては記録紙の搬送速度が記録速度に対応する。そのため、複数の記録ヘッドを記録紙の搬送方向に沿って並置したフルラインタイプの記録装置においては、重ねて記録を行う時間間隔を調整する構成として、記録ヘッド間の距離を時間間隔に応じた距離としたり、記録紙の搬送速度を時間間隔に応じた速度とする構成などがある。以下、フルラインタイプの記録装置を例に説明する。
【0121】
図20はフルラインタイプの記録装置の構成を示す概略側面図である。この記録装置は、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録方式を採用するもので、フルマルチタイプの記録ヘッドを図中矢印Aに沿った方向に複数並置して多色の記録が可能に構成されるものである。この図に示す構成では、黒のインクを吐出する記録ヘッドK1、K2とイエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクにそれぞれ対応する記録ヘッドC,M,Yが搬送ベルト181に対向するよう設けられている。各記録ヘッドは、記録領域の全幅にわたって吐出口が並設されているフルラインタイプの記録ヘッドである。各記録ヘッドには、それぞれ吐出口ごとに不図示の電気熱変換体を内蔵し、この電気熱変換体を通電することによって発熱して膜沸騰を生じ、不図示のインク液路内に気泡を形成し、そしてこの気泡の成長によりインク液滴を吐出させるものである。各記録ヘッドは、図示紙面に垂直方向に、すなわち記録媒体の搬送方向に垂直に、多数の吐出口が一列に並ぶように設けられている。また、記録紙を搬送する搬送ベルト181はエンドレスのベルトであり、2個のローラ182,183によって図示矢印A方向に回転自在に保持されている。なお記録媒体である記録紙は、一対のレジストローラ184によって同期をとって搬送ベルト181に送り込まれ、記録ヘッドからのインク吐出によって記録され、ストッカ185上に排出される。さらに186は記録紙を搬送ベルト181に送り込むためのガイドである。
【0122】
また、記録紙の加熱を行うためのヒータとして、記録ヘッドK1とK2との間、および記録ヘッドK2と記録ヘッドCとの間に、ハロゲンランプヒータ187a、187bを設けている。図13に示す構成では、加熱手段としてセラミックヒータを用いた構成を説明したが、本発明に適用可能な加熱手段としては、記録紙の記録面の裏側から加熱を行うヒータに限られるものではなく、図20に示したハロゲンランプヒータによっても好適に採用し得るものである。特に、フルラインタイプの記録装置においては、記録紙が搬送ベルト上に載置されて搬送されるため、記録紙の裏面にヒータを設ける構成とすると装置が複雑になるため、図20に示すような記録面側から加熱を行うタイプのヒータを用いることが好ましい。本図においては、記録ヘッドK1とK2の間、および記録ヘッドK2とCの間に設けられるヒータの数を1つとしているが、ヒータ自体の発熱量に応じて、複数配置する構成であってもよい。
【0123】
図20に示す装置の構成においては、黒のインクを吐出する2つの記録ヘッドK1とK2との距離をL0としている。この距離を、装置に設定される搬送速度で記録紙が搬送される時間に基づいて決定することにより、黒インクを吐出する記録ヘッドK1とK2で記録する時間間隔が決まる。つまり、前述のように記録ヘッドK1で記録した後、続く記録ヘッドK2で重ねて記録を行うまでの時間間隔を1.5秒とする場合、記録紙が1.5秒間で搬送される長さに距離L0を設定すればよい。また、図20に示した構成においては、黒インクを吐出する記録ヘッドK2とシアンインクを吐出する記録ヘッドCとの距離L1を距離L0とほぼ同じ距離に設定し、記録ヘッドK2で記録された後、続く記録ヘッドCで記録されるまでの時間間隔をおくように構成している。この構成によれば、記録ヘッドK2で吐出されたインク滴がある程度記録紙内部へ浸透した状態で続く記録ヘッドCによる記録が行われるため、異色インクによる画像の境界のにじみを低減し、良好な画像を記録することができる。
【0124】
【実施例】
以下、本発明を適用可能な記録装置を例に挙げ、本発明の実施例として、具体的な記録シーケンスについて説明する。
【0125】
図21はカラープリンタ部の概略構成を示したものである。本構成はいわゆるシリアル方式を採用するもので、記録ヘッドを図中に示すX方向(主走査方向)に走査しながら記録を行い、記録媒体であるプリント紙707は図中に示すY方向(副走査方向)に搬送される。この図において、701はヘッドカートリッジである。これらは、4色のカラーインク、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)がそれぞれ詰め込まれたインクタンクと、702のマルチノズルヘッドより構成されている。
【0126】
図22は、図21に示すマルチノズルヘッド702に配列されるマルチノズルの様子をZ方向から示したものである。図22において、801はマルチヘッド702上に配列されるマルチノズルである。図22に示す例ではマルチノズル801がY軸に沿って平行に配列されているが、例えば図のXY平面上に多少の傾きを持った構成であっても良い。この場合には、ヘッドが進行方向Xに進んで行くのに対し、各ノズルは傾きに応じてタイミングをずらしながらプリントを行っていくことになる。
【0127】
再び図21を参照すると、703は搬送ローラであり、704の補助ローラとともにプリント紙707を抑えながら図の矢印の方向に回転し、プリント紙707をY方向に随時送っていく。また705は給送ローラであり、プリント紙の給紙を行うとともに、703、704と同様、プリント紙707を抑える役割も果たす。706は4つのインクカートリッジを支持し、プリントとともにこれらを移動させるキャリッジである。これはプリントしていないとき、あるいはマルチヘッドの回復作業などを行うときには図の点線で示した位置のホームポジション(h)に待機するように構成されている。プリント開始前、ホームポジションにあるキャリッジ706は、プリントが開始されると、図21に示すX方向に移動しながら、マルチノズルヘッド702上のn個のマルチノズル801により、紙面上に幅Dのプリントを行う。一般的なシリアル方式の記録装置では、この様な主走査方向のプリントと、プリント紙の副走査方向への搬送とを繰り返すことにより、一紙面上のプリントを完成させる。
【0128】
図21において、710はヒータであり、マルチノズルヘッド702に対向する位置に配置される。プリント動作時は、マルチノズルヘッド702とヒータ710の間にプリント紙707が搬送され、ヒータ710はプリント紙707をプリント面の反対側から加熱する。また、ヒータ710は、マルチノズルヘッド702の主走査による記録領域に対応する範囲のプリント紙を加熱できるよう配置されている。
【0129】
図23(a)は、図21に示した記録装置を模式的に示したものである。図23(b)は1回目の主走査による記録を示すもので、ヘッドカートリッジ701はX方向に走査し、ブラックのヘッドカートリッジKのみを使用して、主走査方向に沿った記録領域290に対してプリントを行う。図23(c)は、2回目の主走査による記録を示すもので、図23(b)でプリントした後、プリント紙707の搬送は行わず、イエロー(Y),マゼンタ(M)、シアン(C)のヘッドカートリッジを用いて、主走査方向に沿った記録領域291に対してプリントを行う。
【0130】
図23(b)に示した領域290と図23(c)に示した領域291とは同一の領域であり、本例では同一の領域に対して、ブラックによる記録と、ブラックを除く他の色による記録とを、それぞれ別の主走査により行う。
【0131】
ブラックによる記録が行われた後、キャリッジがリターンして次の主走査が開始されるまでの間、ブラックで記録された領域はヒータ710によって定着が進行する。この間の定着のプロセスは先に説明した通りであり、インクの浸透が抑えられ、続く他の色による記録走査が行われても、ブラックによる画像と他の色による画像とが影響し合うことなく、高画質化が達成される。
【0132】
また、図24(a)もまた、図21に示した記録装置を模式的に示したものである。図24(b)は1回目の主走査による記録を示すもので、ヘッドカートリッジ701をX方向に走査し、ブラックのヘッドカートリッジKのみを使用して、主走査方向に沿った記録領域301に対してプリントを行う。図24(c)は2回目の主走査による記録を示すもので、1回目の主走査の後プリント紙707の搬送は行わず、1回目の主走査と同様にヘッドカートリッジ701をX方向に走査し、ブラックのヘッドカートリッジKのみを使用して、主走査方向に沿った記録領域302に対してプリントを行う。
【0133】
図24(d)は、3回目の主走査による記録を示すもので、図24(b)、(c)に示す2回の主走査でプリントした後、プリント紙707の搬送は行わず、イエロー(Y),マゼンタ(M)、シアン(C)のヘッドカートリッジを用いて、主走査方向に沿った記録領域291に対してプリントを行う。図24に示した効果に加え、ブラックの濃度を高くすることができるという効果がある。
【0134】
(第1の実施例)
図23、24に概略を示したような記録方法の実施例について、さらに詳細に説明する。まず第1の実施例について説明する。なお、図面中では、インクの色にかかわらず、インク滴が1滴形成された状態をハッチングで、2滴のインク滴が重ねて形成された状態をクロスハッチングで、3滴のインク滴が重ねて形成された状態を縦横の格子模様でそれぞれ示している。
【0135】
キャリッジ7の1回目の走査時に黒インクを黒吐出部K1、K2から普通紙1に向けて吐出し、第1のインク滴11a、11b(図25(a)参照)を形成する。走査完了後、記録ヘッド8からインク吐出を行うことなくキャリッジ7が逆方向に走査し、元の位置に復帰する。続いて、キャリッジ7の2回目の走査が行われ、この時に黒インクを黒吐出部K1、K2から再び普通紙1に向けて第2のインク滴を吐出し、黒色記録用ドット14(図25(b)参照)を形成する。走査完了後、記録ヘッド8からインク吐出を行うことなくキャリッジ7が逆方向に走査し再び元の位置に復帰する。さらに、キャリッジ7の3回目の走査が行われ、カラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー)を各吐出部C、M、Yから普通紙1に向けて適宜に吐出し、第3のインク滴を吐出しカラー記録用ドット15(図25(c)参照)を形成する。走査完了後、記録ヘッド8からインク吐出を行うことなくキャリッジ7が逆方向に走査し元の位置に復帰して、1ラインの印字が完了する。なお、この間セラミックヒータ10は常に作動し、普通紙1を加熱し続けている。
【0136】
したがって、普通紙1のある1点をとってみると、図26に示すように、まず黒吐出部K1、K2による吐出が行われ、それからキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。この加熱により第1のインク滴11a、11bの普通紙1への浸透が制御され、非加熱時と比べて浸透深さが抑制される。そこへ再び黒吐出部K1、K2による吐出が行われ、第1のインク滴11a、11bと重なるように第2のインク滴が形成される。それから、再びキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。こうして、図25(b)に示すように、第1のインク滴と第2のインク滴とにより黒色の記録用ドット14が構成される。そこで、吐出部C、M、Yからカラーインクが吐出され、この黒色の記録用ドット14と隣接するカラー記録用ドット15(第3のインク滴により構成)が形成される。その後、少なくともキャリッジ7が往復する1.5秒の間は加熱される。なお、カラー記録用ドット15の形成に関しては、所望の色を得るために、吐出部C、M、Yの任意の組合せによるインク吐出が行われ、単数または複数のインク滴によって形成される。
【0137】
以上の動作によると、吐出部C、M、Yからカラーインクが吐出するまでに、第1のインク滴11a、11bは3秒間、第2のインク滴は1.5秒間加熱される。これにより、各インク滴は浸透深さが抑制され、普通紙1の厚み方向においては表面近傍にインクが集中し、色素成分があまり分散しない。そして、普通紙1に入射した光は比較的表面に近い位置で反射するため、鮮明である。また、このインクは浸透性を有するものであるため、インクが普通紙1の表面上に凸状に残留することはなく、隣接するカラー記録用ドット15側に流れ込んでブリードを生じることはない。加熱してインク中の水分を蒸発させることによりインクの粘度を上げ境界にじみなどのブリードを起こりにくくし、またインク中の溶媒を蒸発させることによって色素の溶媒に対する溶解性を低下させて色素を紙に対して吸着し易くするという効果も有している。
【0138】
このように、本実施例によると、記録媒体である普通紙1の表面上に凸状に残らないという浸透性インク特有の挙動が見られるとともに、インクが表面から浅い位置に密集するという非浸透性インクと同様の挙動も示し、鮮明な記録が可能であり、かつブリードが防げるという両タイプのインクの長所を両立できる。
【0139】
なお、インク吐出後1.5秒後に次のインク吐出が行われる時点では、先に吐出したインク滴の普通紙1への浸透が継続中であっても、完了していてもいずれでも構わない。
【0140】
(第2の実施例)
図27は、本発明の第2の実施例を示す説明図である。これは、キャリッジ7の2回目の走査時に2回目の黒インク吐出とカラーインク吐出とを同時に行う方法である。
【0141】
すなわち、普通紙1のある1点をとってみると、まず黒吐出部K1、K2による吐出が行われ、それからキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。この加熱により黒インク滴16a、16bの普通紙1への浸透が制御され、浸透深さが抑制される。そこで、再度のキャリッジ走査が行われ、黒吐出部K1、K2による2回目の黒インク吐出と、吐出部C、M、Yによるカラーインク吐出とが行われ、黒インク滴からなる黒色の記録用ドット18と、隣接するカラー記録用ドット19とが形成される。その後、やはりキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。
【0142】
本実施例は、キャリッジの2回目の走査時に黒インク滴が形成されるとともにカラー記録用ドット19が形成される点のみが第1の実施例と異なっており、その他の工程等については第1の実施例と同様である。ここで2回目の黒の記録とカラーの記録が同一スキャンで行われるが、黒インクの浸透性によってカラーが記録される前に黒インクはほぼ紙中に浸透しているためブリードは生じにくい。そして、色の鮮明な記録が可能で、かつブリードを生じにくいという第1の実施例と同様の効果を達成できる。
【0143】
(第3の実施例)
図28は、本発明の第3の実施例を示す説明図である。これは、黒インクの重ね打ちは行わない方法である。
【0144】
すなわち、普通紙1のある1点をとってみると、まず黒吐出部K1、K2による吐出が行われ、それからキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。この加熱により黒インク滴20a、20bの普通紙1への浸透が制御され、浸透深さが抑制される。そこで、吐出部C、M、Yからカラーインクが吐出され、黒インク滴20a、20bからなる黒色の記録用ドット21と隣接するカラー記録用ドット22が形成される。その後、やはりキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。
【0145】
本実施例は、キャリッジの1回目の走査時の2個の黒インク滴20a、20bにより黒色の記録用ドット21が形成されている点のみが第1の実施例と異なっており、その他の工程等については第1の実施例と同様である。そして、色の鮮明な記録が可能で、かつブリードを生じにくいという第1の実施例と同様の効果を達成できる。
【0146】
(第4の実施例)
図29は、本発明の第4の実施例を示す説明図である。これは、単一の黒吐出部K3を有する記録ヘッド(図示せず)を用いている。
【0147】
普通紙1のある1点をとってみると、まず黒吐出部K3からの吐出により黒インク滴23が形成され、それからキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。そこへ再び黒吐出部K3による黒インク滴の吐出が行われる。それから、再びキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。こうして、黒インク滴により1個の黒色の記録用ドット25が構成される。ついで、吐出部C、M、Yからカラーインクが吐出され、この黒色の記録用ドット25と隣接するカラー記録用ドット26が形成される。その後、やはりキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。
【0148】
(第5の実施例)
図30は、本発明の第5の実施例を示す説明図である。これは、第4の実施例と同じ記録ヘッド(図示せず)を用い、2回目の黒インク吐出と同時にカラーインク吐出を行う方法である。
【0149】
普通紙1のある1点をとってみると、まず黒吐出部K3からの吐出により黒インク滴27が形成され、それからキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。そこで再びキャリッジ7が走査され、黒吐出部K3により黒インク滴が形成され、黒インク滴により1個の黒色の記録用ドット29が構成される。それと同時に、吐出部C、M、Yからカラーインクが吐出され、カラー記録用ドット30が形成される。その後、少なくともキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。
【0150】
(第6の実施例)
図31は、本発明の第6の実施例を示す説明図である。これは、第4の実施例と同じ記録ヘッド(図示せず)を用い、黒インク滴の重ね打ちを行わない方法である。
【0151】
普通紙1のある1点をとってみると、黒吐出部K3による吐出が行われ、キャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。それから吐出部C、M、Yからカラーインクが吐出され、黒色記録用ドット31と隣接するカラー記録用ドット32が形成される。その後、少なくともキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。
【0152】
(第7の実施例)
図32は、本発明の第7の実施例を示す説明図である。これは、第4の実施例と同じ記録ヘッド(図示せず)を用いる方法であり、普通紙1のある1点をとってみると、黒吐出部Kによる吐出が行われ黒色記録用ドット33が形成され、キャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。同様に、キャリッジ7を走査して吐出部Cによりカラーインク滴(シアン)が形成された後キャリッジ7を元の位置に復帰させ、キャリッジ7が往復する1.5秒間加熱される。続いて、キャリッジ7を走査して吐出部Mによりカラーインク滴(マゼンタ)が形成され、キャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱され、さらに、キャリッジ7を走査して吐出部Yによりカラーインク滴(イエロー)が形成され、少なくともキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。このように3回に分けて吐出された各色のインク滴によりカラー記録用ドット35が形成される。
【0153】
(第8の実施例)
図33は、本発明の第8の実施例を示す説明図である。これは、第7の実施例と対照的な方法であり、普通紙1のある1点をとってみると、キャリッジの1回目の走査時に、黒吐出部K3および吐出部C、M、Yにより、黒色の記録用ドット36とカラー記録用ドット37とが同時に形成される。そして、これらは少なくともキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。
【0154】
(第9の実施例)
図34は、本発明の第9の実施例を示す説明図である。これは、黒インク吐出部が2つ設けられた記録装置(図13参照)を用いており、普通紙1のある1点をとってみると、キャリッジの1回目の走査時に、黒吐出部K1、K2および吐出部C、M、Yにより、黒色の記録用ドット38とカラー記録用ドット39とが同時に形成される。そして、これらは少なくともキャリッジ7が往復する1.5秒の間加熱される。
【0155】
以上の説明においては、浸透性の黒インクについてインク滴吐出後に加熱して浸透深さを制御することについて詳細に述べたが、カラーインクについても同様に、インク滴吐出後に加熱され浸透深さが制御されることにより、鮮明さの向上および境界にじみ等のブリードの防止という効果が得られる。
【0156】
前記全ての実施例では、カラーインクは超浸透性のインクを用い吐出を1回のみ行っているが、アセチレノールが0.4%程度の半浸透性インクをカラーインクとしても用いるようにすると、より効果的である。また、カラーインクを複数回のインク吐出で重ね打ちするようにしてもよい。その場合、カラー吐出部C、M、Yによるインク吐出後に僅かに位置をずらして再度カラー吐出部C、M、Yによるインク吐出を行うか、図35に示すように、複数の(本例では2つずつの)カラー吐出部C1、C2、M1、M2、Y1、Y2を備えた記録ヘッド40を有するインクジェット記録装置を使用すると、キャリッジの走査回数を増やすことなく行える。また、前記実施例にて説明した工程の後に、再度キャリッジ7を走査しつつ吐出部C、M、Yからカラーインクを吐出し、その後キャリッジ7を元の位置に戻す一連の工程を追加するようにしてもよい。
【0157】
前記各実施例において、主走査方向(キャリッジの移動方向)について記録用ドット1つを形成するのにインク滴吐出を1回行う場合は、1ノズルからの1回の吐出で約50plのインクを吐出する。インク滴吐出を2回行う場合には、1ノズルからの1回の吐出で20〜30plのインクを吐出して、50pl前後の記録用ドットを形成する。なお、黒インクの吐出ヘッドをK1、K2の2つ設け、記録用ドット1つに対し4回の吐出が行われる場合、このとき1個の記録用ドットのインク量は100pl前後である。
【0158】
記録用ドット1つに対し行われる複数回のインク吐出は、全く同じ位置に重ね打ちしても、千鳥状やインターレース状に僅かに位置をずらして行ってもよい。後者の場合、例えば360×360dpiの記録用ドットを得るために、実際には720×360dpiのインク吐出を行うことになる。複数回のインク吐出のインク滴の大きさは異なっていても(例えば小インク滴の上に大インク滴を形成したり、大インク滴の上に小インク滴を形成したりしても)よい。ただし、インク滴の大きさを変えたり、吐出位置を僅かにずらしたりする場合も、吐出されたインク滴の少なくとも一部は重なり合うようにすることが望ましい。
【0159】
前記各実施例は、各色の吐出ヘッドが普通紙1の搬送方向に対して垂直方向すなわち主走査方向に1列に横並びに並べて配設してあるが、各色の吐出ヘッドを普通紙1の搬送方向すなわち副走査方向に縦並びとして2列、または3列など複数列にしてもよい。たとえば、1列目(1パス目)に黒吐出ヘッドを、2列目(2パス目)にカラー吐出ヘッドをそれぞれ設け、互いに独立して移動可能に構成してもよい。この場合、2列目(2パス目)にもう1つの黒吐出ヘッドを設けてもよい。
【0160】
また、カラー吐出ヘッドも分割し、2列目にC、3列目にM、4列目にYという風に配設してもよい。その場合、セラミックヒータは、全列に対向するように設けても、いずれかの列に対向する位置にのみ設けてもよい。
【0161】
以上の説明は、記録ヘッドが搭載されたキャリッジが記録媒体の搬送方向に直角に往復移動するシリアルタイプに関するものであるが、記録媒体の全幅に沿って多数の吐出部(ノズル)が配列されたいわゆるフルラインタイプの記録ヘッドを用いる場合にも、本発明は適用可能である。
【0162】
(第10の実施例)
その例として、図36に示す本発明の第10の実施例について以下に説明する。これは、第1の黒吐出ヘッド41と、第2の黒吐出ヘッド42と、カラー吐出ヘッド43a、43b、43cとが間隔をおいて配置されている。各吐出ヘッド41、42、43a、43b、43cは、すべて記録媒体である普通紙1の全幅に沿って多数のノズルが配列されており、普通紙1はこの吐出ヘッドに垂直に(矢印方向に)搬送される。そして、各吐出ヘッドは間隔をあけて設けてあり、この間隔に加熱手段であるセラミックヒータ44が配設してある。そして、この間隔だけ普通紙が搬送されるのにかかる時間(例えば1.5秒)が、ある1点においてインク滴が吐出されてから次のインク滴が吐出されるまでの時間である。本実施例によると、記録媒体である普通紙1のある1点について考えると、図29R> 9に示す第4の実施例と実質的に同様な処理が施される。なお、吐出ヘッド41、42の直下(点線部)にも位置するようにセラミックヒータ44を設けてもよい。また、カラーインクを吐出した後にも加熱するようにセラミックヒータ45を設けると、より効果的である。
【0163】
(第11の実施例)
図37に示す本発明の第11の実施例は、前記第10の実施例から黒吐出ヘッドを1つ省略した構成である。すなわち、黒吐出ヘッド46と、カラー吐出ヘッド47a、47b、47cとが間隔をおいて配置されており、記録媒体である普通紙1のある1点について考えると、図31に示す第6の実施例と実質的に同様な処理が施される。黒吐出ヘッド46の直下(点線部)やカラー吐出ヘッド47a、47b、47cの後にも位置するようにセラミックヒータ48を設けることもできる。
【0164】
このように、インク吐出点に対応してフルラインヘッドを配設し、インク吐出の所望の時間間隔と普通紙1の搬送速度に応じてフルラインヘッド間にスペースをあけ、そのスペースに加熱手段を設けることにより、シリアルタイプの記録ヘッドを用いた実施例にそれぞれ対応して実質的に同様な処理を施す記録装置が構成できる。
【0165】
なお、図38に示すように、前記各実施例のセラミックヒータHは断熱材49に覆われていることが好ましい。また、セラミックヒータHに代えて、図20に示すようなハロゲンランプヒータ187a、187bや、その他の様々な加熱手段を用いることができる。なお、セラミックヒータを用いた構成およびハロゲンランプヒータを用いた構成のいずれも、シリアルタイプ、フルラインタイプのいずれにも適用可能である。
【0166】
(第12の実施例)
第1の実施例等では、例えば図25(b)に示す2回の主走査によりブラックの画像の記録を行う例を示した。先に示した例では、ブラックの画像を2回記録することにより、ブラックの濃度を高くでき、ブラックの定着性を高め、隣接して記録されるドット同士のインクの干渉を抑え、ブラックの画像を2回の主走査で完成されるよう、それぞれの主走査で間引いて記録を行ってもよい。
【0167】
図39は、画像を間引いて記録を行い、2回の主走査記録で相補的となるよう記録を行う例を説明する図である。702はヘッドを模式的に示したもので、801はヘッドに配列されるノズルを示している。説明の簡略化のため、本図ではヘッドに8個のノズルを配列した構成を示している。
【0168】
図39(a)は、ヘッドと、そのヘッドによる記録位置を示す図であり、ヘッドから吐出されるインク滴により、図39(a)の格子の交点にドットが形成される。図39(b)、図39(c)は、それぞれ間引いて記録を行う際のドット位置の例を示すものである。図39(b)、図39(c)は、チェッカーパターン状にドットを間引いた例であり、それぞれ間引く位置が異なっている。図39(b)、図39(c)で間引かれて記録されたパターンは互いに相補的なパターンであるため、それぞれのパターンで間引いて同じ位置に記録を行うことで、記録画像が完成される。
【0169】
図面ではそれぞれの走査で記録されるドットをわかりやすくするため、図39(b)では記録されるドット位置を斜線を記入した円で示しており、また図39(c)では斜線を施していない円で示している。
【0170】
このようなパターンにより間引き記録を行い、2回の主走査により画像をプリントする方式を、第1の実施例のようなブラックの記録(図25(a)、図25(b)に示すような主走査記録)に適用することにより、1回の主走査により記録されるドット数を少なくすることができるため、紙面上に吐出されるインク量を少なくでき、一層定着性に優れ、また、隣接するドット同士のインク滴による干渉を低減でき、高画質化が達成される。
【0171】
なお、図39中に示した円は、ドット位置を簡略的に示したものであり、実際に紙面上に形成されるドットのサイズを表すものではない。また、間引かれるパターンはこれに限られるものではない。
【0172】
(第13の実施例)
次に、マルチスキャン記録方式に対応した第13の実施例について説明する。インクジェット記録方式において複数のノズルを配列したマルチノズルヘッドを用いる場合、マルチヘッド製作工程差に生じるわずかなノズル単位のばらつきが原因となって、各ノズルのインクの吐出量や吐出方向の向きに影響を及ぼし、プリント画像に濃度ムラが発生してしまうことがある。このような濃度ムラを低減させるため、複数回の主走査(スキャン)により画像を完成させる方式として、マルチスキャンと呼ばれる記録方式がある。
【0173】
マルチスキャンの具体例を図40を参照して説明する。図40(a)において、702はマルチノズルヘッドであり、前述した図35のものと同様であり、説明の簡略化のため8個のマルチノズル801によって構成されているものとする。また、本図では、各ノズル801から吐出されるインク滴802(以下、「ドロップレット」ともいう)の状態をわかりやすくするため、マルチノズルヘッド702を側面から確認した状態を概略的に示している。また、適用される記録装置は、前述した図21に示したシリアルタイプの記録装置であり、その詳細な説明は省略する。ヘッド702より吐出されたインク滴802は、図40に示すように、各ノズルから吐出されるインク滴が全て揃った吐出量で、揃った方向にインクが吐出されるのが理想である。この様に吐出が行われれば、図40(b)に示したように紙面上に揃った大きさのドットが正常な位置に着弾され、図40(c)に示すように全体的にも濃度ムラの無い一様な画像が得られるのである。
【0174】
しかし、実際には先にも述べたようにノズル1つ1つにはそれぞれバラツキがあり、そのまま上記と同じようにプリントをしてしまうと、図41(a)に示したようにそれぞれのノズルより吐出されるインクドロップの大きさおよび向きにバラツキが生じ、紙面上においては図41(b)に示すように着弾される。この図によれば、ヘッド主走査方向に対し、周期的にエリアファクター100%を満たせない白紙の部分が存在したり、また逆に必要以上にドットが重なり合ったり、あるいはこの図中央に見られる様な白筋が発生したりしている。このような状態で着弾されたドットの集まりはノズル並び方向に対し、図41(c)に示した濃度分布となり、結果的には、通常人間の目でみた限りで、これらの現象が濃度ムラとして感知される。
【0175】
次に、このような濃度ムラ対策として提案されているマルチスキャン方式を、図42および図43を参照して説明する。
【0176】
この方法によると図42および図43で示したプリント領域を完成させるのにマルチノズルヘッド702を3回スキャンしているが、その半分の4画素単位の領域は2パスで完成している。この場合マルチヘッドの8ノズルは、上4ノズルと、下4ノズルのグループに分けられる。1ノズルが1回のスキャンでプリントするドットは、規定の画像データを、ある所定の画像データ配列に従い、約半分に間引いたものである。そして2回目のスキャン時に残りの半分の画像データへドットを埋め込み、4画素単位領域のプリントを完成させる。以上のようなプリント法を以下分割プリント法と称す。このような分割プリント法を行えば、図41で用いたプリントヘッドと等しいものを使用しても、各ノズル固有のプリント画像への影響が半減されるので、プリントされた画像は図42(b)、図43(b)に示すようになり、図41(b)に見るような黒筋や白筋が余り目立たなくなる。従って濃度ムラも図42(c)に示すように、図41の場合と比べかなり緩和される。
【0177】
(第14の実施例)
次に、インク液滴のサイズを変更可能なインクジェット記録ヘッドを用いた、本発明の第14の実施例について説明する。
【0178】
従来、吐出するインク液滴のサイズを変更可能とし、大小のサイズの異なるインク滴を吐出することにより、階調記録を達成する技術が知られている。その手法としては、例えば、インクに熱エネルギーを印加して気泡を発生させてインクの吐出を行わせる方式においては、ノズル内に複数のヒータを設け、複数のヒータの駆動を制御することにより、大小のサイズの異なるインク滴を吐出する技術がある。この技術によれば、複数のヒータのうち所定の一つのヒータのみを駆動して吐出量の少ないインク滴を吐出して小さなドットを形成でき、複数のヒータを全部駆動することにより吐出量の大きいインク滴を吐出して大きなドットを形成できる。
【0179】
このように、インク液滴のサイズの異なるインクを吐出可能な記録ヘッドを用い、2回の主走査記録で画像を形成する例を図44に示している。702はヘッドを模式的に示したもので、801はヘッドに配列されるノズルを示している。説明の簡略化のため、本図ではヘッドに8個のノズルを配列した構成を示している。
【0180】
図44(a)は、ヘッドと、そのヘッドによる記録位置を示す図であり、ヘッドから吐出されるインク滴により、図44(a)の格子の交点にドットが形成される。図44(b)、図44(c)は、それぞれ別の主走査で記録を行うドットの配置の例を示すものである。図44(b)は、チェッカーパターン状にドットを間引いた位置にドットサイズの大きいドット360を記録するとともに、ドット360で記録されない位置にドットサイズの小さいドット361を記録した例を示す。ドット360とドット361は互いに相補的となるパターンで記録されている。また、図44(c)についても同様に、ドット360がドットサイズの大きいドットを示し、ドット361がドットサイズの小さいドットを示しており、それぞれのドットは図44(b)とは逆のパターンにより間引かれた位置に記録された状態を示している。従って、ドットサイズの大きいドット360に着目してみると2回の記録走査(図44(b)、図44(c))によって相補的となるよう記録され、ドットサイズの小さいドット361についても2回の記録走査で相補的となるよう記録される。
【0181】
本発明のヒータを用いて記録紙内部へのインクの浸透を抑制する技術に対して、上述のような記録方式を適用すれば、1回の主走査により記録紙面上に吐出されるインクの量が抑えられ、また、ドットサイズの大きいドットとドットサイズの小さいドットとが交互に吐出されるため1回の主走査で記録されるドットのエリアファクター低くできるため、一層定着性に優れて濃度低下の問題を解決した記録画像を形成することができる。
【0182】
また、本発明に適用される記録シーケンスは図44に示した例に限らず、例えば図45に示すようなパターンで記録する構成であってもよい。図45は、図44と同様に、上述したドットサイズの異なるインク滴を吐出可能な記録ヘッドを用い、2回の主走査記録で画像を形成する例を説明する図である。
【0183】
図45(a)、図45(b)は、それぞれ別の主走査で記録を行うドットの配置の例を示すものである。図45に示す例は、図44に示した例とはドットサイズの大きいドットとドットサイズの小さいドットを配置するパターンが異なるものである。図45に示す例では、ドットサイズの大きいドット370と、ドットサイズの小さいドット371とが、ノズル801の配列方向にそって交互に記録されるパターンに従って記録される。
【0184】
図45に示すような記録シーケンスにおいても、本発明のヒータを用いて記録紙内部へのインクの浸透を抑制する技術に適用することにより、1回の主走査により記録紙面上に吐出されるインクの量が抑えられ、一層定着性に優れて濃度低下の問題を解決した記録画像を形成することができる。
【0185】
また、上述の説明では、各ノズルに設けた複数のヒータの駆動によってドットサイズの異なるインク滴を吐出する方式を例に挙げたが、各ノズルそれぞれに単一の吐出手段を設け、その吐出手段を駆動する信号を制御することによりドットサイズを変更可能な構成においても、本発明は適用し得るものである。
【0186】
(第15の実施例)
次にインクとして、染料等の着色剤の濃度を通常のインクの1/3〜1/6に薄め、染料濃度としては0.3〜1.2%とした淡インクを用いて本発明の記録方法を実行する例について説明する。本発明によれば浸透性インクの浸透をヒータの熱により抑制するため、例えば1/3の濃度の淡インクを使用した場合、重ね打ちを行わずに単ドットの低デューティ(100%以下)で印字した場合、横方向ににじんで広がる量が少なくなりドット径が小さくなる。この結果、図49に示すようにハイライト部のOD(optical density)が低下し、粒状感が低減する。一方、高デューティ(100%より大で300%以下)の印字では淡インクの重ね打ちを行うので、約1秒間の重ね打ち間隔による効果とも相まって図49に示すようにODが高くなり、普通紙においてもベタ部のODが高くかつ非常に階調性の高い印字が可能となる。
【0187】
また、本実施例においては淡インクを3回の主走査により最大3回まで重ね打ちすることができる。それはヒータの加熱によりインク中の水分が蒸発するため普通紙であってもインクを十分許容することが可能となるからである。また、インクが半浸透性であるため、定着性が良好であるとともにベタ部のODが高くなる。
【0188】
尚、淡インク中の非イオン界面活性剤であるアセチレノールの含有量は0.2〜0.7%が好ましく、0.3〜0.5%とするのがより好ましい。尚、上記実施例においては淡インク同士の重ね打ちについて説明したが、濃インクと淡インクを組合せて記録を行うようにしてもよい。
【0189】
次に本発明の技術思想に関する更なる展開について以下に説明する。
【0190】
黒インクのみを用いた記録に関しては、その装置の記録速度及び画像濃度に応じて浸透の調整を行えばよく、記録速度を優先させるのであれば次の頁が排出されたときに裏写りしない程度の定着時間の範囲内におさまるように本発明における半浸透性インクの浸透性の高いインクを使うのが好ましい。逆に画像濃度を優先するのであれば半浸透性インクの浸透性は低い方が好ましい。この技術思想の範囲内でより好ましい効果を出す為のヒータの条件としては図15や図18に示したように10w・secの電力が画像に作用すれば好ましいものである。また、本発明をカラープリンタに応用した場合、異色境界にじみを重視すれば黒インクは本発明の技術思想内で半浸透性インクの範囲での浸透性を高くするのが好ましく、カラーインクは例えばアセチレノール量を1%として、より浸透性の高いものにしてもよいが、さらに画像品位を向上させるためにはカラーインクも本発明の技術思想の範囲内でインクの浸透性を小さくするのが好ましい。このとき、記録画像をマルチパスにより分割記録して行う場合にはヒータ条件は電力を小さくすることが可能であり、より高濃度で高画質の記録が得られるので好ましい。尚、上述の複数の実施例のうち、少なくとも2つの実施例の組合せについても本発明の範囲に含まれるものである。
【0191】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によると、記録媒体表面上にはインクが凸状に残留しないため、複数のインク滴間の境界にじみや白もやなどのブリードが低減できる。さらに、加熱することによってインクの浸透深さを抑制したので、記録媒体に入射した光は表面から浅い位置で反射されて鮮明に見え、かつ色素成分があまり分散せず鮮明であり、ヒゲ状のにじみ(フェザリング)の発生も防止できる。さらに、記録用ドットを複数回のインク吐出によって形成する場合には、浸透時間の短縮化と印字品質の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の技術的思想を示す説明図である。
【図2】本発明において用いるインクのアセチレノールの含有割合と係数Kaの関係図である。
【図3】本発明において用いるインクの浸透速度を示す説明図である。
【図4】本発明において用いるインクの浸透性(アセチレノールの含有割合)と様々な印字特性との関係図である。
【図5】本発明のインクジェット記録方法の分割印字方式におけるインク滴形成状態を示す説明図である。
【図6】分割印字方式におけるインク滴形状を示す図表および説明図である。
【図7】インクジェット記録方法の重ね打ち印字方式におけるインク滴形成状態を示す説明図である。
【図8】インクジェット記録方法の好適な重ね打ち印字方式におけるインク滴形成状態を示す説明図である。
【図9】インクジェット記録方法の小液滴印字方式におけるインク滴形成状態を示す説明図である。
【図10】インクジェット記録方法の複数回記録印字方式におけるインク滴形成状態を示す説明図である。
【図11】インクジェット記録方法の好適な複数回記録印字方式におけるインク滴形成状態を示す説明図である。
【図12】インクジェット記録方法の顔料含有インク滴形成状態を示す説明図である。
【図13】本発明において用いられる記録装置の一例の斜視図である。
【図14】記録間隔の短い複数回記録におけるアセチレノール含有率とOD値との関係図である。
【図15】記録間隔の短い複数回記録における電力値とOD値との関係図である。
【図16】記録間隔の短い複数回記録におけるアセチレノール含有率と、加熱時と被加熱時のOD値の差との関係図である。
【図17】記録間隔の長い複数回記録におけるアセチレノール含有率とOD値との関係図である。
【図18】記録間隔の長い複数回記録における電力値とOD値との関係図である。
【図19】記録間隔の長い複数回記録におけるアセチレノール含有率と、加熱時と被加熱時のOD値の差との関係図である。
【図20】フルラインタイプのインクジェット記録装置の構成を示す概略図である。
【図21】シリアルタイプのインクジェット記録装置の構成を示す概略図である。
【図22】図19のインクジェット記録装置のヘッド構成を示す概略図である。
【図23】図19のインクジェット記録装置による印字状態を示す説明図である。
【図24】図19のインクジェット記録装置によるもう一つの印字状態を示す説明図である。
【図25】本発明のインクジェット記録方法の第1の実施例におけるインク滴形成状態を示す説明図である。
【図26】第1の実施例を示す説明図である。
【図27】第2の実施例を示す説明図である。
【図28】第3の実施例を示す説明図である。
【図29】第4の実施例を示す説明図である。
【図30】第5の実施例を示す説明図である。
【図31】第6の実施例を示す説明図である。
【図32】第7の実施例を示す説明図である。
【図33】第8の実施例を示す説明図である。
【図34】第9の実施例を示す説明図である。
【図35】本発明において用いられる記録装置のもう一つの例の斜視図である。
【図36】第10の実施例を示す説明図である。
【図37】第11の実施例を示す説明図である。
【図38】加熱手段であるセラミックヒータの断面図である。
【図39】第12の実施例を示す説明図である。
【図40】第13の実施例を示す説明図である。
【図41】印字不良状態の一例を示す説明図である。
【図42】好適な分割印字方法を示す説明図である。
【図43】好適な分割印字方法のもう一つの例を示す説明図である。
【図44】第14の実施例を示す説明図である。
【図45】第14の実施例の変更例を示す説明図である。
【図46】従来のインクジェット記録方法におけるインク滴形成状態を示す説明図である。
【図47】インクのアセチレノール含有率と表面張力との関係図である。
【図48】インクのアセチレノール含有量に対するtw,tsの関係を示した図である。
【図49】第15の実施例を示す説明図である。
【図50】半浸透性インクを用いた場合の現象のメカニズムについての説明図である。
【符号の説明】
1 普通紙(記録媒体)
2 第1のインク滴
3 ヒータ
5 給紙部
6 印字部
7 キャリッジ
8、40 記録ヘッド
9 ガイドレール
10、44、45、48 セラミックヒータ(加熱手段)
11a、11b 第1のインク滴
14、18、21、25、29、31、33、36、38 黒色記録用ドット
15、19、22、26、30、32、35、37、39 カラー記録用ドット
16a、16b、20a、20b、23、27 黒インク滴
41 第1の黒吐出ヘッド
42 第2の黒吐出ヘッド
43a、43b、43c、47a、47b、47c カラー吐出ヘッド
46 黒吐出ヘッド
101 格子
102、110、132、134 ドット
103、104、111、112、113、131、133 インク滴
181 搬送ベルト
182、183 ローラ
184 レジストローラ
185 ストッカ
186 ガイド
187a、187b ハロゲンランプヒータ
290、291、301、302、303 記録領域
360、361、370、371 ドット
701 ヘッドカートリッジ
702 マルチノズルヘッド
703 搬送ローラ
704 補助ローラ
705 給送ローラ
706 キャリッジ
707 プリント紙
710 ヒータ
801 マルチノズル
802 インク滴
K1、K2、K3 黒吐出部
C、C1、C2 シアン吐出部
M、M1、M2 マゼンタ吐出部
Y、Y1、Y2 イエロー吐出部
H セラミックヒータ
P 記録ヘッド

Claims (14)

  1. ブラックインクとカラーインクを吐出するための記録ヘッドと、記録媒体の少なくとも一部を加熱する加熱手段とを有する記録装置におけるインクジェット記録方法であって、
    前記記録媒体に対して、前記記録ヘッドから前記ブラックインクおよび前記カラーインクを吐出して記録を行う記録工程と、
    前記加熱手段により前記記録媒体を加熱する加熱工程とを有し、
    前記加熱工程による加熱は、前記記録媒体上の、前記ブラックインクが吐出された領域および前記カラーインクが吐出された領域に対して実行され、
    前記ブラックインクと前記カラーインクの各々は、ブリストウ法で求められる普通紙に対するインク吸収係数Ka(ml・m-2・msec-1/2)が1.0〜5.0であり、且つエチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの含有割合が0.2〜0.7%であり、
    前記エチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの含有割合を、前記ブラックインクよりも前記カラーインクの方が高くすることで、前記ブラックインクのインク吸収係数Kaよりも前記カラーインクのインク吸収係数Kaを高く設定している
    ことを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記加熱工程を行うことによる、前記記録工程において吐出された前記ブラックインクおよび前記カラーインクの前記記録媒体内部での浸透位置は、前記加熱工程を行わない場合に比べ前記記録媒体表面に近い位置であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記記録工程は、前記加熱工程による加熱前に前記記録ヘッドから前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクを吐出する第1の記録工程と、前記加熱工程による所定時間の加熱後に前記記録ヘッドから前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクを吐出する第2の記録工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第2の記録工程は、前記第1の記録工程により吐出された前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクが形成する記録ドットと少なくとも一部が重なり合う位置に、前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクの吐出を行うことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記第1の記録工程と前記第2の記録工程は、記録されるべき画像を構成する記録ドットを形成するにあたり、前記第1の記録工程と前記第2の記録工程とにより相補的となるように前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクを吐出して前記記録ドットを形成することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記第2の記録工程は、前記第1の記録工程により吐出された前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクが記録媒体内部へ浸透している間に、前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクの吐出を行うことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記記録装置は、前記記録ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを主走査方向に沿って走査する走査手段とを有し、前記キャリッジの走査中に前記記録ヘッドによる記録動作を行うシリアルタイプの記録装置であり、
    前記加熱手段は、前記キャリッジの走査によって前記記録ヘッドが移動して記録を行う領域を、前記記録媒体の記録面と反対の面から加熱するよう設けられることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記記録工程は、前記加熱工程による加熱前に前記記録ヘッドから前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクを吐出する第1の記録工程と、前記加熱工程による所定時間の加熱後に前記記録ヘッドから前記ブラックインクおよび/または前記カラーインクを吐出する第2の記録工程とを含み、
    前記第1の記録工程と前記第2の記録工程とは、それぞれ異なる主走査時に行われるこ とを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記加熱手段は、前記記録ヘッドによる記録領域に位置する前記記録媒体を支持するプラテン部材の一部として設けられることを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記記録装置は、前記記録媒体を送り方向に搬送する搬送手段を有するとともに、前記記録ヘッドが前記記録媒体の前記送り方向と異なる方向の全域に対して記録可能なフルラインヘッドであるフルラインタイプの記録装置であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記加熱手段は、前記記録ヘッドに対して前記搬送手段による送り方向に沿って異なる位置であって前記複数の記録ヘッドの間に設けられ、前記記録媒体の送り方向と直交する幅方向の全域に対して加熱可能に構成されていることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記ブラックインクおよび前記カラーインクは、分散剤を含まない自己分散型顔料を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記ブラックインクおよび前記カラーインクの各々は、水におけるエチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの臨界ミセル濃度(c.m.c.)よりも低い割合でエチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを含有する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  14. 前記ブラックインクおよび前記カラーインクの各々は、前記エチレンオキサイド−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの含有割合が0.35〜0.5%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
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