JP3879342B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関し、特にリーン運転においてエンジンから排出されるHC,CO,NOxを高効率に浄化する排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンにおいては燃費向上と排気低減が主要な課題である。近年、ポンプ損失を低減するために空燃比をリーンで運転し燃費向上を図るリーンバーンエンジンが主流になりつつある。一方、HC,CO,NOxすべての排気成分を低減する手段としては、それぞれを無害な物質へと転換する三元触媒をエンジンの排気管に設置する排気システムが従来から用いられている。三元触媒内でHC,COをH2O,CO2にNOxをN2 にそれぞれ高効率に酸化還元するためには酸化剤であるNOxと還元剤であるHC,COの比が化学量論的にバランスがとれている状態すなわち理論空燃比であることが望ましい。リーンバーンエンジンにおいては空燃比を理論空燃比より希薄側で運転するため、排気中の酸素が過剰となり三元触媒内においてNOxがN2 に還元されることなく排出される。この問題を解決するために、特開平8−4522 号では多気筒機関のうち一つの気筒をリッチ運転し、残りの気筒はリーン運転を行い、リッチ気筒の排気管にNOxをNH3 に転換する触媒(以下NH3 生成触媒と呼称)を備え、リッチ気筒とリーン気筒の集合部の下流に触媒(以下脱硝触媒と呼称)を備え、NH3 とリーン気筒からのNOxを反応させ、N2 に転換する排気浄化システムが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この排気浄化システムでは脱硝触媒内のNH3 とNOxの量的バランスが崩れると、NH3あるいはNOxが転換されず排気悪化の原因となる。特開平8−4522号においてはリッチ気筒とNH3 生成触媒との間に酸素センサを配し、酸素センサの出力に基づいてリッチ気筒の空燃比を制御し、リッチ気筒の噴射量から所定の割合に減量した燃料量をリーン気筒に噴射することで脱硝触媒入口のNH3 とNOxの量的バランスを保つ方式を提案している。一方、この排気浄化システムではNH3 生成触媒あるいは脱硝触媒の特性変化,運転条件あるいは外部環境の変化による排気成分比の変化、さらには酸素センサの特性変化を原因として、脱硝触媒入口のNH3 とNOxの量的バランスが崩れることが考えられる。しかしながらこの方式ではリッチ気筒,リーン気筒の空燃比を予め定められた割合に従って制御するだけであり、上記原因による脱硝触媒下流の排気悪化に対応することは困難である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、多気筒で構成されるエンジンを有する内燃機関の排気浄化装置であって、
少なくとも一つの気筒は空燃比をリッチに運転する手段と、
残りの気筒は空燃比をリーンに運転する手段と、
該リッチ気筒からの排気をNH3 に転換する触媒と、
該残りのリーン気筒からのNOxと前記NH3 に転換する触媒からのNH3 とからN2 を生成する触媒と、
前記N2 を生成する触媒の下流に排気成分を検出するセンサと、
該センサ出力値に基づいて前記エンジンの運転状態を、前記リッチ運転をする気筒と前記リーン運転をする気筒とを独立して制御する手段と、
前記N 2 を生成する触媒の上流もしくは下流に三元触媒もしくは酸化触媒もしくは NOx を吸着あるいは吸蔵する触媒を備えると共に
前記三元触媒を前記N 2 を生成する触媒の上流に配し、リーン運転時は前記センサの出力が所定範囲内になるようにエンジンのリッチ気筒の空燃比を制御し、理論空燃比運転時は前記センサの出力が所定範囲内になるようにエンジンの全気筒の空燃比を制御する手段を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置により解決される。
【0005】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図13は本発明の一実施例を示すシステム図である。4気筒で構成されるエンジン13において、1番気筒35,2番気筒36,3番気筒37はリーン運転許可時リーン運転を行う。4番気筒38はリーン運転許可時リッチ運転を行う。リーン運転不許可時は全気筒の空燃比を理論空燃比で運転を行う。外部からの空気はエアクリーナ14を通過し、吸気マニホールド15を経て各気筒の燃焼室内に流入する。リーン燃焼を行う気筒の流入空気量は電子スロットル16により調節され、リッチ燃焼を行う気筒の流入空気量は電子スロットル17により調節される。エアフロセンサ18では流入空気量が検出される。クランク角センサ19では、クランク軸の回転角1度毎に信号が出力される。水温センサ20はエンジンの冷却水温度を検出する。エアフロセンサ14,電子スロットル16,17に取り付けられた開度センサ21,22,クランク角センサ19,水温センサ20それぞれの信号はエンジンコントロールユニット(ECU)23に送られ、これらセンサ出力からエンジンの運転状態を得て、空気量,燃料噴射量,点火時期の主要な操作量が最適に演算される。エンジンコントロールユニット23内で演算された燃料噴射量は開弁パルス信号に変換され、気筒毎の燃焼室内に設置された燃料噴射弁24〜27に送られる。またコントロールユニット23で演算された点火時期に基づいて駆動信号が点火プラグ28〜31に送られる。燃焼室内は図14に表す。燃焼室内に噴射された燃料は吸気マニホールド15からの空気と混合気を形成する。混合気は点火プラグ28〜31で発生される火花により爆発し、その際発生するエネルギーがエンジンの動力源となる。1番気筒から3番気筒の排気は排気マニホールド39に排出される。4番気筒の排気は排気マニホールド40に排出される。排気マニホールド40にはNH3 生成触媒32が取り付けられている。1番気筒から3番気筒までの排気管と4番気筒の排気管はNH3 生成触媒32の下流で合流し、その下流には脱硝触媒33が取り付けられている。脱硝触媒33の下流にはNOxセンサ34が取り付けられている。リーン運転許可時は1番気筒から3番気筒まではリーン運転を行い、4番気筒はリッチ運転を行う。NH3 生成触媒から生成されるNH3 とリーン気筒から排出されるNOxは脱硝触媒33にてN2 に転換される。例えば、NH3 の量がNOxをN2 に転換するに十分でない場合は、NOxが脱硝触媒33にて転換されずに排出されるので、排出NOxはNOxセンサ34で検出されることになる。NOxセンサ34の信号はコントロールユニット23に入力され、その値に基づいてコントロールユニット内で後述の排気最適制御の操作量演算が行われる。
【0006】
図16はエンジンコントロールユニット(ECU)23の内部を示したものである。ECU23内にはNOxセンサ,電子スロットル開度センサ,エアフロセンサ,エンジン回転数センサ,水温センサの各センサ出力値が入力され、入力回路41にて雑音除去等の信号処理を行った後、入出力ポート42に送られる。入力ポートの値はRAM43に保管され、CPU44内で演算処理される。演算処理の内容を記述した制御プログラムはROM45に予め書き込まれている。制御プログラムに従って演算された各アクチュエータ作動量を表す値はRAM43に保管された後、出力ポートに送られる。電子スロットル16,電子スロットル17の各目標開度に基づいた信号が入出力ポート42から駆動回路48,駆動回路49に送られ、電子スロットル内のモータを駆動するための電流が制御される。点火プラグの作動信号は点火出力回路内の一次側コイルの通流時はONとなり、非通流時はOFFとなるON・OFF信号がセットされる。点火時期はONからOFFになる時である。出力ポートにセットされた点火プラグ用の信号は点火信号出力回路46で燃焼に必要な十分なエネルギーに増幅され点火プラグに供給される。また燃料噴射弁の駆動信号は開弁時ON,閉弁時OFFとなるON・OFF信号がセットされ、燃料噴射弁駆動回路47で燃料噴射弁を開くに十分なエネルギーに増幅され燃料噴射弁に送られる。燃料噴射量はエアフロセンサ18およびエンジン回転数センサ19の各出力値から例えば下式で示されるような1気筒あたりの基本燃料噴射量を演算する。
【0007】
TIn=TPHIn・K・(QAn/N)
ここに
TIn:n番気筒の基本燃料噴射量
K:燃料噴射量調整係数
TPHIn:n番気筒の目標当量比
QAn:n番気筒に流入する空気量
N:回転数
であり、燃料噴射量調整係数Kは理論空燃比を実現するTInとなるよう燃料噴射弁の特性等を考慮して与える。したがって目標当量比TPHIn=1のとき、n番気筒の空燃比は理論空燃比で運転される。このTPHInの具体的な演算方法を以下に示す。図16は各気筒の燃料噴射量および電子スロットル開度の制御ブロック図である。以下に各ブロックの処理内容を説明する。
【0008】
(1)標準空気量演算部(図17)
本制御においては目標トルクと目標空燃比を実現する各気筒の空気量を制御し、その空気量に基づいて燃料量を制御する構成とする。標準空気量演算部ではアクセル開度と回転数から理論空燃比下で目標トルクを実現する1気筒当たりの空気量を演算する。具体的には図17に示されるように、エンジンの性能に基づいて、予めROM上のマップに設定しておくのがよい。ここにAPO,NDATA,TPSTDはそれぞれアクセル開度,回転数,標準空気量を表す。
【0009】
(2)#1〜#3目標当量比演算部(図18)
#1〜#3目標当量比演算部では、リーン燃焼を行う1,2,3番気筒の目標当量比を演算する。具体的にはAPOとNDATAで決められる運転領域毎に最適な当量比を予めROM上にマップに設定しておきオンライン参照して得るものとする。ここにTPHI_Aは該目標当量比を表す。最適な当量比は燃焼の安定性,燃費,排気等から決定するのがよい。
【0010】
(3)#4目標当量比演算部(図19)
#4目標当量比演算部では、リッチ燃焼を行う4番気筒の目標当量比を演算する。具体的にはAPOとNDATAで決められる運転領域毎に最適な当量比と予めROM上のマップに設定しておきオンライン参照して得るものとする。ここのTPHI_Bは該最適当量比を表す。最適な当量比は、リーン気筒から排出されるNOxとのマスバランスによって決められる。排気システムの特性変化による最適空燃比の変化は後述の排気最適化補正係数で補正する。
【0011】
(4)#1〜#3目標空気量演算部(図20)
ここでは1,2,3番気筒の目標空気量を演算する。具体的には標準空気量TPSTDに該気筒の目標酸素過剰率1/TPHI_Aを乗じて得るものとする。ここにTTP_Aは該目標空気量とする。
【0012】
(5)#4目標空気量演算部(図21)
ここでは4番気筒の目標空気量を演算する。具体的には標準空気量TPSTDに該気筒の目標酸素過剰率1/TPHI_Bを乗じて得るものとする。ここにTTP_Bは該目標空気量とする。
【0013】
(6)#1〜#3目標スロットル開度演算部(図22)
ここでは1,2,3番気筒の空気量を調節する電子スロットル16の目標開度を演算する。具体的には目標空気量TTP_Aと回転数NDATAからマップ参照して得るものとする。ここにTTVO_Aは該目標スロットル開度である。マップ値は予めスロットル16およびエンジンの仕様から決めるのがよい。
【0014】
(7)#4目標スロットル開度演算部(図23)
ここでは4番気筒の空気量を調節する電子スロットル17の目標開度を演算する。具体的には目標空気量TTP_Bと回転数NDATAからマップ参照して得るものとする。ここにTTVO_Bは該目標スロットル開度である。マップ値は予めスロットル17およびエンジンの仕様から決めるのがよい。
【0015】
(8)#1〜#3スロットル制御部(図24)
ここではスロットル16の開度を制御する。目標開度TTVO_Aに開度センサ出力21から得られる実開度TVO_Aを高応答に精度良く制御する手法はいくつか知られているが、ここではPID制御を用いるものとする。PID制御以外の手法用いることも可能である。
【0016】
(9)#4スロットル制御部(図25)
ここではスロットル17の開度を制御する。目標開度TTVO_Bに開度センサ出力22から得られる実開度TVO_Bに制御する手法としては同様にPID制御とする。
【0017】
(10)実空気量演算部(図26)
ここではエンジンに流入する空気量を演算する。具体的にはエアフロセンサ14の出力を変換して実空気量を得るものとする。変換にはエアフロセンサ出力特性を設定したROM上のテーブルを用いるものとする。ここにQAは実空気量を表す。
【0018】
(11)#1〜#3空気量演算部(図27)
ここでは1番気筒,2番気筒および3番気筒へ流入する総空気量を演算する。具体的には実空気量QAと目標当量比TPHI_A,TPHI_Bから空気分配比にしたがって演算するものとする。演算式は図17に示す。ここにQA_Aは該空気量を表す。
【0019】
(12)#4空気量演算部(図28)
ここでは4番気筒へ流入する空気量を演算する。具体的には実空気量QAからQA_Aを引いた値とする。ここにQA_Bは該空気量を表す。
【0020】
(13)#1〜#3燃料噴射量演算部(図29)
ここでは1,2,3番気筒の燃料噴射量を演算する。具体的な式は図29に示す。ここにTI1〜TI3は該気筒の燃料噴射量を表す。またKはTPHI_A=1のとき、理論空燃比相当の燃料を噴射するように調節される値で、燃料噴射弁24〜27の特性に基づいて決められる。
【0021】
(14)#4燃料噴射量演算部(図30)
ここでは1番気筒の燃料噴射量を演算する。具体的な式は図30に示す。ここにTI4は該気筒の燃料噴射量を表す。PHIHOSは次に説明する排気最適化補正係数である。
【0022】
(15)排気最適化補正係数演算部(図31)
ここでは脱硝触媒33下流のNOxセンサ34の出力に基づいて排気最適化補正係数の演算を行う。ここに
NOXOUT:NOxセンサ34の出力。
【0023】
NOXNG:NOx悪化を判定するしきい値。
【0024】
RHOS:リッチシフト割合。
【0025】
PHIHOS:排気最適化補正係数。
【0026】
を表す。脱硝触媒33の下流のNOx量はNOXNG以下の値となるよう目標当量比TPHI_Bを設定するが、何らかの理由で排気システムに特性変化が発生したとき以下の方法で排気を抑制する。脱硝触媒33の下流のNOx量であるNOXOUTがNOXNGより大きくなったとき、NH3 生成触媒からのNH3 量を増加させるべく4番気筒の空燃比をリッチにする。具体的にはRHOSで定められる所定割合でPHIHOSを増加させる。PHIHOSは図30に示されるように4番気筒の燃料噴射量に乗じられる。NOXOUT<NOXNGになればリッチシフトを停止し、PHIHOSはその値を維持する。過剰なリッチシフトを防止するためにPHIHOSにはリミッタを設けるものとする。NOXNGは経験的に決めるのがよい。
【0027】
(実施例2)
本実施例では実施例1のシステムにおいて4番気筒の排気管にリニア空燃比センサ52を追加した場合のシステムについて説明する。具体的には図32の示すとおりである。図33は制御ブロック図である。基本的な構成は実施例1と同じであるが、排気最適化補正係数演算部は図34に示すとおりである。ここに
NOXOUT:NOxセンサ34の出力。
【0028】
NOXNG:NOx悪化を判定するしきい値。
【0029】
RHOS:リッチシフト割合。
【0030】
PHIHOS0:排気最適化目標当量比補正係数。
【0031】
TPHI_B:目標当量比。
【0032】
TPHIHOS_B:補正後目標当量比。
【0033】
AFOUT:A/Fセンサ52出力。
【0034】
RPHI:実当量比。AFOUTから変換して得る。
【0035】
PHIHOS:空燃比F/B補正係数。
【0036】
である。
【0037】
通常時すなわちNOXOUT≦NOXNGの時、PHIHOSは4番気筒の当量比はA/Fセンサ52の出力に基づいてTPHI_Bとなるように制御される。NOXOUT>NOXNGすなわち脱硝触媒33の下流NOxが悪化したときは4番気筒の空燃比をリッチにすべく、4番気筒の目標当量比TPHI_Bをリッチ側に変化させるPHIHOS0をRHOSの割合で増加させる。
【0038】
また、本実施例では空気量の演算を実施例1の手法を踏襲したが、A/Fセンサ出力値と4番気筒燃料噴射量から4番気筒空気量を高精度演算することも可能であることを付言しておく。
【0039】
(実施例3)
本実施例では実施例2のシステムにおいて脱硝触媒の上流に三元触媒を設置した場合のリーン制御および理論空燃比制御について説明する。実施例1,2では、リーン運転のみについて説明したが、実際には領域によっては理論空燃比で運転することが考えられる。本実施例では理論空燃比運転時における排気最適制御について述べる。図35は本実施例におけるシステム図である。脱硝触媒33の上流に三元触媒53を取り付ける。図36は本実施例における制御ブロック図である。基本的な構成は実施例1と同じであるが、排気最適化係数を全気筒に反映させる構成となっている。TPHI_A,TPHI_Bの値は理論空燃比相当値とする。前述したように全気筒ストイキ運転時、NOxセンサ34出力と理論空燃比との関係は図10のようになる。これは図9に示される三元触媒の浄化特性によるものである。このことからセンサ出力に基づいて、図10に示される制御範囲となるようエンジンの空燃比を制御すれば、排気は最適化される。具体的には図31に示されるブロック図で可能となる。すなわち空燃比が理論空燃比がリーン側へシフトしたときはNOxが増加するのでNOxセンサ34で検出される。このとき全気筒の空燃比をリッチシフトすべくPHIHOSをROHOSの割合で増加させる。ただし、過剰なリッチシフトを防ぐべくPHIHOSにはリミッタを設ける。
【0040】
またTPHI_A,TPHI_Bの値を理論空燃比よりややリーン側へ設定することでリッチ側へ理論空燃比制御する方式あるいはTPHI_A,TPHI_Bの値を理論空燃比よりややリッチ側へ設定することでリーン側へ理論空燃比制御する方式も考えられることを付言しておく。
以上のように、本発明では脱硝触媒下流の排気を確実に低減し得る排気浄化システムを提案するものである。具体的には請求項1においては図1に示すように脱硝触媒2の下流に排気成分を検出する排気センサ3を少なくとも一つ配し、センサ3の出力値に基づいて制御装置4でエンジン運転状態をF/B制御し、脱硝触媒2下流の排気を常時最適にする排気制御システムである。本システムでは脱硝触媒下流の排気成分が最適となるようにエンジン運転状態をF/B制御するので、前述した種々の排気制御システムの特性変化に対応し、常時脱硝触媒下流の排気を最適化することが可能となる。たとえば、請求項2では脱硝触媒下流にNOxセンサを備えることで、NOx排出量を検出しNOx排出量が最小となるようエンジンの運転状態をF/B制御する排気制御システムが考えられる。この場合、請求項3,請求項4に記載のようにエンジンの運転状態としてリッチ気筒の空燃比,点火時期あるいはリーン気筒の空燃比,点火時期等を制御対象とすることが考えられる。より詳細には脱硝触媒下流のNOxが多量に検出された時は、NH 3 生成触媒からのNH 3 を増加させるべくリッチ気筒の空燃比をよりリッチに制御するシステムが考えられる。図3では操作量を燃料噴射量とした排気制御システムの構成を表している。図4では操作量を空気量とした排気制御システムの構成を表しており、リーン気筒とリッチ気筒間のトルク段差を避けるため、空気量は独立に制御するようリッチ気筒用とリーン気筒用と独立に空気量制御バルブを備える構成となる。また、請求項5においては図2のようにリッチ気筒の排気管に空燃比センサ9を配し、脱硝触媒下流排気センサ3の出力値とでエンジンの運転状態を制御する。例えば、図5に示すように通常はセンサ9の出力値に基づいてリッチ気筒の空燃比をF/B制御するが、排気センサ3から脱硝触媒下流の排気が悪化したことが検出された場合は、F/B制御に関するパラメータを変化させ、脱硝触媒下流の排気の最適化を図る。パラメータとしては、たとえばリッチ気筒の空燃比F/B制御の目標空燃比等が考えられ、脱硝触媒下流のNOxが増加したときはリッチ気筒の目標空燃比をリッチにする等が考えられる。センサ9としては図11,図12に示される特性を持つO 2 センサ、A/Fセンサが考えられる。図5では操作量を燃料噴射量としているが図6のようにリッチ気筒の空気量としてもよい。請求項6においては、HC,COを酸化するために、脱硝触媒の上流もしくは下流に三元触媒もしくは酸化触媒もしくはNOx触媒を備えることでより排気を低減する排気制御システムを提案している。特に脱硝触媒の上流に三元触媒を備える構成においては、エンジンの全気筒をストイキ運転する場合、脱硝触媒下流のセンサで理論空燃比制御が可能である。すなわち、脱硝触媒下流にNOxセンサを取り付けた構成では、全気筒ストイキ運転時、センサ出力と理論空燃比との関係は図10のようになる。これは図9に示される三元触媒の浄化特性によるものである。このことからセンサ出力に基づいて、図10に示される制御範囲となるようエンジンの空燃比を制御すれば、排気は最適化される。脱硝触媒下流センサは図11,図12に示される特性を持つO 2 センサ,A/Fセンサとしても同様の効果が得られるものである。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば脱硝触媒下流のセンサ出力値に基づいてエンジンの運転状態を制御するので、排気制御システムの特性変化に対応し、常時脱硝触媒下流の排気を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的な構成を表した図である。
【図2】本発明の構成においてリッチ気筒の排気管に排気センサを取り付けた場合のシステム図である。
【図3】本発明の構成において燃料噴射弁を用いて空燃比を制御する場合のシステム図である。
【図4】本発明の構成において電子スロットルを用いて空燃比を制御する場合のシステム図である。
【図5】本発明の構成においてリッチ気筒の排気管に排気センサを取り付け、燃料噴射弁を用いて空燃比を制御する場合のシステム図である。
【図6】本発明の構成においてリッチ気筒の排気管に排気センサを取り付け、電子スロットルを用いて空燃比を制御する場合のシステム図である。
【図7】本発明において触媒2の下流に酸化触媒,三元触媒,NOx触媒を具備した場合のシステム図である。
【図8】本発明において触媒2の上流に酸化触媒,三元触媒,NOx触媒を具備した場合のシステム図である。
【図9】三元触媒の特性を表した図である。
【図10】NOxセンサの特性を表した図である。
【図11】O2 センサの特性を表した図である。
【図12】A/Fセンサの特性を表した図である。
【図13】実施例1におけるシステム図である。
【図14】実施例1における気筒内部を表した図である。
【図15】実施例1におけるECU23の内部処理を表した図である。
【図16】実施例1におけるエンジン制御方法を表したブロック図である。
【図17】実施例1における標準空気量演算部のブロック図である。
【図18】実施例1における#1〜#3目標当量比演算部を示す図。
【図19】実施例1における#4目標当量比演算部を示す図。
【図20】実施例1における#1〜#3目標空気量演算部を示す図。
【図21】実施例1における#4目標空気量演算部を示す図。
【図22】実施例1における#1〜#3目標スロットル開度演算部を示す図。
【図23】実施例1における#4目標スロットル開度演算部を示す図。
【図24】実施例1における#1〜#3スロットル制御部を示す図。
【図25】実施例1における#4スロットル制御部を示す図。
【図26】実施例1における実空気量演算部を示す図。
【図27】実施例1における#1〜#3空気量演算部を示す図。
【図28】実施例1における#4空気量演算部を示す図。
【図29】実施例1における#1〜#3燃料噴射量演算部を示す図。
【図30】実施例1における#4燃料噴射量演算部を示す図。
【図31】実施例1における排気最適化補正係数演算部を示す図。
【図32】実施例2におけるシステム図である。
【図33】実施例2におけるエンジン制御方法を表したブロック図である。
【図34】実施例2における排気最適化補正係数演算部を示す図。
【図35】実施例3におけるシステム図である。
【図36】実施例3におけるエンジン制御方法を表したブロック図である。
【符号の説明】
1…NH3 を生成する触媒、2…NH3 とNOxをN2 に転換する触媒、3…触媒2の下流の排気成分を検出する排気センサ、4…エンジンの運転状態を制御する装置、5,13…エンジン、6…燃料噴射弁、7,8,16,17…電子スロットル、9…触媒1の上流の排気成分を検出する排気センサ、10…リッチ気筒空燃比F/B制御装置、11…リッチ気筒目標空燃比調節装置、12…三元触媒もしくは酸化触媒もしくはNOx触媒、14…エアクリーナ、15…吸気マニホールド、18…エアフロセンサ、19…クランク角センサ、20…水温センサ、21,22…開度センサ、23…エンジンコントロールユニット(ECU)、24…1番気筒燃料噴射弁、25…2番気筒燃料噴射弁、26…3番気筒燃料噴射弁、27…4番気筒燃料噴射弁、28…1番気筒点火プラグ、29…2番気筒点火プラグ、30…3番気筒点火プラグ、31…4番気筒点火プラグ、32…NH3 生成触媒、33…脱硝触媒、34…NOxセンサ、35…1番気筒、36…2番気筒、37…3番気筒、38…4番気筒、39,40…排気マニホールド、41…アクセルペダル、42…アクセル開度センサ、43…入力回路、44…入出力ポート、45…RAM、46…CPU、47…ROM、48…点火信号出力回路、49…燃料噴射弁駆動回路、50,51…電子スロットル駆動回路、52…A/Fセンサ、53…三元触媒。
Claims (1)
- 多気筒で構成されるエンジンを有する内燃機関の排気浄化装置であって、
少なくとも一つの気筒は空燃比をリッチに運転する手段と、
残りの気筒は空燃比をリーンに運転する手段と、
該リッチ気筒からの排気をNH3 に転換する触媒と、
該残りのリーン気筒からのNOxと前記NH3 に転換する触媒からのNH3 とからN2 を生成する触媒と、
前記N2 を生成する触媒の下流に排気成分を検出するセンサと、
該センサ出力値に基づいて前記エンジンの運転状態を、前記リッチ運転をする気筒と前記リーン運転をする気筒とを独立して制御する手段と、
前記N 2 を生成する触媒の上流もしくは下流に三元触媒もしくは酸化触媒もしくは NOx を吸着あるいは吸蔵する触媒を備えると共に
前記三元触媒を前記N 2 を生成する触媒の上流に配し、リーン運転時は前記センサの出力が所定範囲内になるようにエンジンのリッチ気筒の空燃比を制御し、理論空燃比運転時は前記センサの出力が所定範囲内になるようにエンジンの全気筒の空燃比を制御する手段を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
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