JP3876788B2 - エンジンの燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの燃料噴射制御装置、特に、走行性の確保を目的とする主噴射の他に、騒音の抑制及びNOxの低減を目的とする前噴射や、パティキュレートフィルタの強制再生を目的とする後噴射が実行可能に構成されたエンジンの燃料噴射制御装置に関し、内燃機関の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ディーゼルエンジンでは、インジェクタは複数の気筒の各々に対応して設けられ、気筒内燃焼室に燃料を直接噴射する。燃料タンクからインジェクタへの燃料供給経路上に燃料ポンプとコモンレールとが配設され、ポンプからコモンレールに燃料が圧送される。コモンレールは複数のインジェクタに接続され、ポンプから圧送された燃料の圧力を蓄積して、これをインジェクタの開弁時に該インジェクタに供給する。供給された燃料はインジェクタの噴口から噴射される。このときのインジェクタの開弁期間(燃料噴射期間)を制御することにより燃料噴射量が制御できる。またインジェクタの開弁時期を制御することにより燃料噴射時期(燃料噴射開始時刻)が制御できる。このようなインジェクタの制御と併せて、コモンレール内の燃料圧力(燃料噴射圧)を制御することによってもまた燃料噴射量が制御できる。通常は、エンジン回転数やエンジン負荷といったエンジンの運転状態に基づいて、燃料噴射量や燃料噴射時期あるいは燃料噴射圧といった燃料の噴射態様をインジェクタ毎に設定する。そして、その設定した噴射態様が実現するように、各インジェクタに対するパルス信号を制御したり燃料ポンプの駆動を制御する。
【0003】
車両の走行性を確保するための主噴射は圧縮行程の上死点近傍で行われるのが通例である。この主噴射と併せて、例えば高負荷・高回転領域を除き、主噴射に先立って吸気行程下死点近傍から圧縮行程中に燃料を噴射する前噴射が行われることがある。前噴射の目的は、騒音の抑制及びNOxの低減である。つまり、燃料を主噴射よりも早いタイミングで前噴射すると、燃料と空気とが予混合され、徐々に火種ができて予備熱が生成し、主噴射で噴射された燃料が燃え易い環境が得られる。その結果、専らノッキングに起因する騒音が抑制されると共に、燃焼温度が過度に高くならず、NOxの低減も図られるのである。
【0004】
一方、ディーゼルエンジン等の排ガス中にはパティキュレートと称される排気微粒子が含まれている。そのため、これを捕獲するフィルタが排気通路に備えられる。このパティキュレートフィルタは、代表的にはアルミナ等のセラミック繊維の不織布でなり、燃焼室から排出される排気微粒子を捕獲する。しかし時間の経過と共に排気微粒子の堆積量が増え、フィルタが目詰まりを起こすので、その対策が講じられる。すなわち、例えばフィルタの上流及び下流に圧力センサを配置し、フィルタの前後差圧あるいは前後圧力比が所定値以上となったときに、堆積量が所定量以上となり、フィルタが目詰まり状態になったと判定して、パティキュレートフィルタを加熱するのである。フィルタを加熱すると、捕獲した排気微粒子が焼却除去され、パティキュレートフィルタが強制再生される。
【0005】
ここで、フィルタを加熱する方法として、主噴射より後の膨張行程から膨張行程下死点近傍において燃料を噴射する後噴射が行われることがある。つまり、燃料を主噴射よりも遅いタイミングで後噴射すると、未燃の炭化水素成分が排気通路に吐き出され、該排気通路においてパティキュレートフィルタの上流に配置されている酸化触媒によって上記未燃成分が酸化除去つまり燃焼される。その結果、排気温度が上昇し、高温の排ガスがパティキュレートフィルタに流れ込んで該フィルタが昇温され、排気微粒子が燃焼除去されるのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、主噴射の他に、その前後で種々の目的のためにいくつもの燃料噴射が行われると、噴射態様が多様化し、1のインジェクタにおけるいずれかの燃料噴射時期と、他のインジェクタにおけるいずれかの燃料噴射時期とが重なり合う(干渉し合う)ようなことが起こり得る。すなわち、主噴射だけが行われていれば、たとえ燃料噴射順序が隣り合う気筒間であっても、クランク角にして180°の隔たりがあるから、主噴射の噴射時期同士が重なるような事態はまず発生しない。しかし、主噴射に追加して前噴射が行われると、先行する気筒の主噴射と後続する気筒の前噴射とが時期的に重なるようなことが起こり得る。さらに、後噴射が追加して行われると、そのような噴射時期の重なりの頻度が一層高くなる。すなわち、先行する気筒の後噴射と後続する気筒の前噴射との重なりや、先行する気筒の後噴射と後続する気筒の主噴射との重なり等、重なりのパターンが増加するのである。このように、複数のインジェクタ間で燃料噴射時期が重なると、その複数のインジェクタの噴口が同時に開くので、コモンレール内の燃料圧力が予想以上に変動(低下)する。よって、各インジェクタにおいて、噴射圧が不足し、狙いの噴射量が得られず、その結果、重なり合った各噴射の目的が満足に達成されなくなる。
【0007】
もっとも、すべてのインジェクタを1つのコモンレールに接続せずに、例えば4気筒であれば、2つのコモンレールにそれぞれインジェクタを2つづつ接続することも可能である。そのような技術として、特開平7−54731号公報は、噴射圧力波の影響が次に噴射する気筒に現れないように、噴射順序が隣り合わない気筒同士を共通のコモンレールに接続することを教示する。併せて、逆止弁を使って、一方のコモンレール内の影響が他方のコモンレール内に伝達しないようにする構造を開示する。
【0008】
しかし、エンジンのレイアウト上、どうしても、共通するコモンレールにすべてのインジェクタを接続しなければならない場合がある。また、複数のコモンレールを備えたとしても、どうしても、噴射順序が隣り合う気筒同士を共通するコモンレールに接続しなければならない場合もある。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑み、共通するコモンレールに接続された複数のインジェクタ間で燃料噴射時期の重なりが予測されるときの新規な対処法を提供するものである。以下、その他の課題を含め本発明を詳しく説明する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、複数の気筒の各々に対応して設けられた燃料噴射手段と、これらの燃料噴射手段に接続され、該燃料噴射手段に供給する燃料の圧力を蓄積する蓄圧手段と、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、該検出手段の検出結果に基づいて、燃料噴射手段毎に、燃料噴射量、燃料噴射時期及び燃料噴射圧を設定する噴射態様設定手段と、該設定手段で設定された噴射態様が実現するように、燃料噴射手段と蓄圧手段との少なくともいずれか1を制御する燃料噴射制御手段とを有するエンジンの燃料噴射制御装置であって、上記噴射態様設定手段で設定された燃料噴射時期が、共通する蓄圧手段に接続された燃料噴射手段間で重なることが予測されるときは、その重なりを回避又は重なり度合いを軽減するように、上記噴射態様設定手段で設定された噴射態様を変更する噴射態様変更手段を備え、上記燃料噴射制御手段は、上記重なりが予測されるときは、上記変更手段で変更された噴射態様が実現するように、燃料噴射手段と蓄圧手段との少なくともいずれか1を制御するように構成されており、上記噴射態様設定手段は、燃料噴射手段毎に、第1の燃料噴射とそれに続く第2の燃料噴射とさらにそれに続く第3の燃料噴射とを設定し、第2の燃料噴射は、圧縮行程上死点近傍で燃料を噴射する主噴射であり、第1の燃料噴射は、上記主噴射に先立って吸気行程下死点近傍から圧縮行程中に燃料を噴射する前噴射であって燃料は複数回に分割噴射され、第3の燃料噴射は、上記主噴射より後の膨張行程から膨張行程下死点近傍において燃料を噴射する後噴射であり、上記噴射態様変更手段は、燃料噴射順序が隣り合う気筒間で第1の燃料噴射時期と第2の燃料噴射時期とが重なることが予測されるとき、または燃料噴射順序が隣り合う気筒間で第1の燃料噴射時期と第3の燃料噴射時期とが重なることが予測されるときは、第1の燃料噴射の噴射態様を変更すると共に、第1の燃料噴射の噴射態様を変更するに際し、分割噴射の一部の回の燃料噴射を停止するときは、分割噴射の他の回の燃料噴射量を増量することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、エンジンの運転状態に基づいて、燃料噴射手段毎に、燃料噴射量や燃料噴射時期あるいは燃料噴射圧といった燃料の噴射態様を設定した結果、共通する蓄圧手段に接続した相異なる燃料噴射手段間で燃料噴射時期が重なると予測される場合は、その重なりを回避するように、あるいは重なりの度合いを軽減するように、いったん設定した上記噴射態様を変更する。そして、その変更した噴射態様が実現するように燃料噴射手段や蓄圧手段を制御する。したがって、複数の燃料噴射手段が同時に燃料を噴射することがなくなるので、あるいは複数の燃料噴射手段が同時に燃料を噴射する期間が短くなるので、蓄圧手段内の燃料圧力の変動・低下が抑制される。その結果、各燃料噴射手段において、エンジンの運転状態に応じた適切な噴射圧が確保され、狙いの噴射量が得られて、各燃料噴射の目的が満足に達成される。
【0020】
また、この発明によれば、各燃料噴射手段について、燃料噴射が1つではなく、相前後して行われる第1、第2、第3の3つの燃料噴射が設定された場合の対応策が具体化される。
【0022】
また、この発明によれば、第1、第2、第3の燃料噴射の内容がそれぞれ具体化される。それによれば、第1噴射は、騒音抑制とNOx低減とを目的とする前噴射であり、第2噴射は、走行性確保を目的とする主噴射であり、第3噴射は、パティキュレートフィルタの強制再生処理を目的とする後噴射である。
【0024】
また、この発明によれば、第1噴射、すなわち前噴射が複数回の分割噴射とされるので、この第1噴射(より具体的には第1噴射のいずれかの回の燃料噴射)と、他の第2、第3噴射との重なりの可能性が一層高くなる。
【0028】
また、この発明では、第1噴射(前噴射)と第2噴射(主噴射)との重なりが予測される場合、または第1噴射(前噴射)と第3噴射(後噴射)との重なりが予測される場合に、前噴射の噴射態様を変更して、その重なりを回避又は重なり度合いを軽減するようにする。前者の場合、主噴射の目的、すなわち走行性確保が優先的に維持される。後者の場合、後噴射の目的、すなわちパティキュレートフィルタの強制再生処理が優先的に維持される。
【0040】
また、この発明によれば、他の噴射との重なりを回避又は軽減するために、複数回の分割噴射である前噴射の噴射態様を変更するに際し、その一部の回の燃料噴射を停止するような場合は、他の回の燃料噴射量を増量するから、全体として必要な前噴射量が補償され、結果的に、前噴射の目的も可及的に維持される。
【0043】
【発明の実施の形態】
本実施形態においては、本発明は、図1に示すディーゼルエンジン1に適用されている。このエンジン1は、4気筒エンジンであって、エンジン本体2のシリンダボア内を上下動するピストン3が4つ備えられている(図1には1つのみ図示)。エンジン本体2のシリンダヘッドには気筒毎にインジェクタ4が備えられている。よってインジェクタ4は計4つある。各インジェクタ4はそれぞれピストン3が画成する気筒内燃焼室に燃料を直接噴射する。図外の燃料タンクとインジェクタ4との間の燃料供給経路上に燃料ポンプ5及びコモンレール6が配設されている(同経路上の矢印は燃料の流れを示す)。燃料ポンプ5は燃料タンクからコモンレール6に燃料を圧送し、コモンレール6は圧送された燃料を蓄積する。インジェクタ4が開弁すると、コモンレール6に蓄積された燃料がインジェクタ4の噴口から噴射される。このとき、後にさらに詳しく述べるように、インジェクタ4の開弁期間(噴射期間)やコモンレール6内の燃料圧力(噴射圧)を制御することにより燃料噴射量が制御可能である。また、インジェクタ4の開弁時期を制御することにより燃料噴射時期が制御可能である。なお、図1には、コモンレール6は単一で、この単一のコモンレール6に4つのインジェクタ4…4がすべて接続されているように描かれているが、本実施形態では、実際には、コモンレール6は2つあり、各コモンレール6にインジェクタ4が2つづつ接続されている。
【0044】
吸気通路10には、上流側から順に、エアクリーナ11、エアフロメータ12、過給機のコンプレッサ13、インタークーラ14、吸気量を調節するスロットル弁15、吸気温センサ16、吸気圧センサ17、そして吸気弁18が備えられている。排気通路20には、上流側から順に、排気弁21、過給機のタービン22、第1排気温センサ23、酸化触媒24、第2排気温センサ25、上流側圧力センサ26、排ガス中の排気微粒子を捕獲するパティキュレートフィルタ27、下流側圧力センサ28、そして第3排気温センサ29が備えられている。排気通路20の比較的上流部と吸気通路10の比較的下流部との間にEGR通路30が配設され、該通路30上に排気還流量を調節するEGR弁31が備えられている。その他、エンジン本体2のクランクケースにはエンジン回転数センサ41が、またシリンダブロックには水温センサ42が設けられている。コモンレール6にはコモンレール6内の燃料圧力を検出するコモンレール圧センサ43が設けられている。車室にはアクセルペダル44の踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ45が設けられている。
【0045】
このエンジン1のコントロールユニット(ECU)50は、上記各センサで検出される吸気量、吸気温、吸気圧、酸化触媒24に流入する排気温、パティキュレートフィルタ27に流入する排気温、パティキュレートフィルタ27から出た後の排気温、パティキュレートフィルタ27を挟む上流側圧力及び下流側圧力、エンジン回転数、冷却水温、コモンレール6内の燃料圧力、並びにエンジン負荷(アクセル開度)等に基づいて、インジェクタ4及び燃料ポンプ5に制御信号を出力する。
【0046】
ECU50による燃料噴射制御の基本動作はおよそ次のようである。ECU50は、エンジン負荷とエンジン回転数とから求められる基本燃料噴射量を冷却水温や吸気温等で補正して目標燃料噴射量Qを算出する。次いで、ECU50は、図2に示すような特性(ECU50のメモリに予め格納されている)を参照し、排気温度、エンジン回転数及びエンジン負荷の少なくとも1つに基づいて、前噴射を実行するか否かを判定する。ここで、前噴射とは、周知のように、圧縮行程の上死点近傍で燃料を噴射する主噴射に先立って、吸気行程の下死点近傍から圧縮行程中に燃料を噴射することをいう。前噴射の目的は、専らノッキングに起因する騒音の抑制、及び過度に高い燃焼温度に起因するNOxの低減である。またECU50は、前噴射を実行する場合は、同じく図2に示すような特性を参照し、排気温度、エンジン回転数及びエンジン負荷の少なくとも1つに基づいて、前噴射の分割噴射回数を設定する。
【0047】
ここで、図2に示したように、高負荷・高回転領域では前噴射は実行されない。すなわち、上記算出した目標燃料噴射量Qの全量が1度に主噴射で噴射される。これは、高負荷・高回転領域では騒音問題よりも出力確保が重要だからである。これに対し、低負荷・低回転領域ほど前噴射の分割噴射回数が増加する。前噴射回数が増加するに従い、目標燃料噴射量Qのうちの主噴射で噴射される燃料噴射量が低減し、また火種がより早い時期からできて、これにより前噴射の目的がよりよく達成される。これは、低負荷・低回転領域ほど静粛性が増し、騒音問題が目立ってくるからである。
【0048】
参考までに、図3に前噴射の代表的な噴射パターンを示した。横軸はクランク角であって圧縮上死点を0°とした。図3(a)に示すように、1段噴射では圧縮上死点前60°以内に1度だけ前噴射される。これに対し、図3(b)に示すように、2段噴射では圧縮上死点前60°以前にも1度前噴射される。さらに、図3(c)に示すように、3段噴射では圧縮上死点前60°付近においても1度前噴射される。
【0049】
なお、上記排気温度としては、第1〜第3排気温センサ23,25,29のいずれか1あるいは2以上の検出結果を利用することができる。これらの排気温センサ23,25,29で検出される排気温度はパティキュレートフィルタ27の温度に関連する。ただし、パティキュレートフィルタ27の直上流にあり、該フィルタ27に流入する排気温を検出する第2排気温センサ25の検出結果が最も該フィルタ27の温度に近似する。
【0050】
ECU50は、上記の基本的な燃料噴射制御の他、後噴射を実行する。ここで、後噴射とは、圧縮行程の上死点近傍で燃料を噴射する主噴射より後の膨張行程から膨張行程下死点近傍において燃料を噴射することをいう。後噴射の目的は、後噴射で生成した未燃の炭化水素成分を酸化触媒24によって排気通路20内で燃焼させることにより、パティキュレートフィルタ27を加熱・昇温し、該フィルタに堆積した排気微粒子を燃焼除去して、該フィルタ27を強制的に再生処理することである。その場合、ECU50は、図4に示すような特性(ECU50のメモリに予め格納されている)を参照し、排気温度(前述したようにパティキュレートフィルタ27の温度関連値である)、エンジン回転数及びエンジン負荷の少なくとも1つに基づいて、後噴射を実行するか否かを判定する。またECU50は、後噴射を実行する場合は、同じく図4に示すような特性を参照し、排気温度、エンジン回転数及びエンジン負荷の少なくとも1つに基づいて、後噴射の分割噴射回数を設定する。
【0051】
ここで、図4に示したように、高負荷・高回転領域及び低負荷・低回転領域ではいずれも後噴射は実行されない。これは、およそ次のような理由による。すなわち、堆積した排気微粒子を燃焼除去するためには、パティキュレートフィルタ27ないし排ガスを600℃以上に昇温させなければならないといわれている。高負荷・高回転領域では主噴射を行うだけで排気温度が600℃以上に到達し、後噴射する必要がないのである。一方、低負荷・低回転領域では主噴射を行うだけでは排気温度は200℃程度しかない。このようにもともとの排気温度が低過ぎるから、たとえ酸化触媒24で未燃成分を燃焼しても、パティキュレートフィルタ27に流れ込む排ガスの温度が600℃以上に上昇することがない。すなわち、低負荷・低回転領域ではいくら後噴射を実行してもその目的が達成されないのである。
【0052】
また、後噴射実行領域において、低負荷・低回転領域ほど後噴射の分割噴射回数が増加する。これは、前述したように、低負荷・低回転領域ほどもともとの排気温度が低くなる傾向にあるから、その排気温度をなるべく高くした状態で酸化触媒24に送り込もうとするためである。すなわち、噴射回数を増やすと、1段目の噴射が進角して主噴射に近づき、それに伴い一部が燃焼室内で燃焼して(ただし、走行性・走行出力に影響を及ぼさない限度内でする)、排気温度が上昇するのである。
【0053】
ECU50は、パティキュレートフィルタ27に堆積する排気微粒子の堆積量が所定量以上となったときに、該フィルタ27が目詰まり状態になったと判定して、該フィルタ27を加熱するための後噴射を実行する。ただし、上記のように、運転状態が図4に示す後噴射実行領域にあることを条件とする。また、排気微粒子の堆積量は、パティキュレートフィルタ27を挟む上流側圧力と下流側圧力との差圧あるいは圧力比で代用する。すなわち該差圧や圧力比が所定値以上となったときに堆積量が所定量以上となったと判断する。
【0054】
図5に示すように、このエンジン1では、吸気・圧縮・膨張・排気の各行程が、第1気筒(♯1)、第3気筒(♯3)、第4気筒(♯4)、第2気筒(♯2)の順に実行される。よって、原則的には、♯1−♯3,♯3−♯4,♯4−♯2及び♯2−♯1間で、燃料噴射順序が隣り合い、その際に、先行する気筒の主噴射あるいは後噴射と、後続する気筒の前噴射あるいは主噴射との間で、噴射時期の重なり及び噴射圧の変動・低下が問題となる。しかし、本実施形態では、前述したように、コモンレール6が2つ備えられ、各コモンレール6にインジェクタ4が2つづつ接続されている。特に、♯1のインジェクタ4と♯3のインジェクタ4とが一方の共通するコモンレール6に接続され、♯4のインジェクタ4と♯2のインジェクタ4とがもう一方の共通するコモンレール6に接続されている。したがって、♯3−♯4及び♯2−♯1間では、たとえ噴射時期が重なっても、相当するインジェクタ4,4が相異なるコモンレール6,6に別々に接続されているから、噴射圧の変動・低下の問題は発生しない。すなわち、共通するコモンレール6に接続された、♯1−♯3及び♯4−♯2間で、噴射時期の重なり及び噴射圧の変動・低下が実質的に問題となる。
【0055】
図6(a),(b)は、ある一般的な燃料噴射のタイムチャートである。ただし横軸はクランク角CAである。斜線を施した領域が燃料噴射量Qを表す。燃料噴射量Qは、一般に、燃料噴射圧Pとインジェクタ4の開弁期間(燃料噴射期間)Tとで決まる。ここで燃料噴射圧Pはコモンレール6内の燃料圧力で代用される。つまり燃料噴射量Qはインジェクタ4及び燃料ポンプ5の少なくともいずれか一方を制御することにより調整できる。燃料噴射量Qが与えられると、そのときのコモンレール6内の燃料圧力Pに依存してインジェクタ4の開弁期間Tが決定する。例えば燃料噴射圧Pを固定して燃料噴射期間Tを長くすれば燃料噴射量Qは多くなる。また例えば燃料噴射期間Tを固定して燃料噴射圧Pを低くすれば燃料噴射量Qは少なくなる。もちろん、ある一定の燃料噴射量Qを維持するために、燃料噴射圧P及び燃料噴射期間Tの両方を同時に制御してもよい。図6(b)は、そのように噴射圧P及び噴射期間Tの両方を同時に制御して、図6(a)と同じ燃料噴射量Qを維持する場合の例である。すなわち、燃料噴射圧はP1からP2に高くなり、燃料噴射期間はT1からT2に短くなっている。
【0056】
図6(a),(b)では、インジェクタ4はそれぞれクランク角CA=θsで開いて燃料噴射が開始され、クランク角CA=θeで閉じて燃料噴射が終了される(燃料噴射期間T1,T2)。本実施形態では、ECU50は、上記燃料噴射開始時刻θsを燃料噴射時期の制御信号としてインジェクタ4に出力する。
【0057】
ECU50は、共通するコモンレール6に接続され、燃料噴射順序が隣り合う、♯1−♯3間あるいは♯4−♯2間で、燃料噴射時期の重なりが予測されるときは、その重なりを回避又は重なり度合いを軽減するように、燃料噴射量Qの変更、燃料噴射時期θsの変更、及び燃料噴射圧Pの変更の少なくともいずれか1を実行する。例えば燃料噴射量Qを減量すると、燃料噴射期間Tが短くなり、燃料噴射終了時刻θeが進角することによって、他の後続の噴射との重なりが回避又は軽減できる。なお、燃料噴射量Qの変更には、燃料噴射量Qをゼロにすること、すなわち燃料噴射の停止を含む。この場合は燃料噴射期間Tがなくなり、重なり合いが懸念される他の噴射が先行する噴射であろうが後続の噴射であろうが、噴射時期の重なり合いが完全に回避できる。
【0058】
また例えば燃料噴射時期θsを遅くすると、燃料噴射開始時刻が遅角することによって、他の先行する噴射との重なりが回避又は軽減できる。これら燃料噴射量Qの変更及び燃料噴射時期θsの変更はいずれもインジェクタ4を制御することで達成される。
【0059】
また例えば燃料噴射圧Pを高くすると、一定量Qの燃料を噴射するために、燃料噴射期間Tが短くなり、燃料噴射終了時刻θeが進角することによって、他の後続の噴射との重なりが回避又は軽減できる。この燃料噴射圧Pの変更は燃料ポンプ5を制御することで達成される。
【0060】
いずれの場合も、♯1−♯3間あるいは♯4−♯2間で同時に燃料噴射されることがなくなるので、あるいは同時に燃料噴射されるオーバーラップ期間が短くなるので、コモンレール6内の燃料圧力の変動・低下が抑制される。その結果、各インジェクタ4において、エンジン1の運転状態に応じた適切な噴射圧Pが確保され、狙いの燃料噴射量Qが得られて、各燃料噴射の目的が満足に達成される。
【0061】
その場合、上記のように、燃料噴射量Qの変更は、燃料噴射終了時刻θeの進角又は遅角に直接的に関与し、燃料噴射時期の変更は、燃料噴射開始時刻θsの進角又は遅角に直接的に関与し、そして燃料噴射圧Pの変更は、燃料噴射終了時刻θeの進角又は遅角に間接的に関与する。したがって、これらをいろいろに組み合わせて様々な形に燃料噴射態様を変更することができる。例えば、単に、先行する噴射との重なりを回避又は軽減するために燃料噴射開始時刻θsを遅角したり、逆に、単に、後続の噴射との重なりを回避又は軽減するために燃料噴射終了時刻θeを進角したりするだけでなく、燃料噴射開始時刻θsの遅角と燃料噴射終了時刻θeの進角とを同時に行って、遅角したことの影響あるいは進角したことの影響を最小限に抑制することもできる。かつ、これらに加えて、燃料噴射圧Pを増減制御することにより、燃料噴射量Qを一定量に保つこともできる。
【0062】
以下、♯1−♯3間を例にして、前噴射・主噴射・後噴射の重なりの組合せと、その対応策とを個別具体的に説明する。まず、図7〜図10は、前噴射と主噴射との重なりが予測される場合の事例を示す。すなわち、図7に示すように、燃料噴射順序が隣り合う第1気筒と第3気筒との間で、符号A,Bで示すように、先行の第1気筒の主噴射イの時期と、後続の第3気筒の前噴射アの時期(より詳しくは、3段に分割した1段目の噴射の時期)との重なりが予測されている。
【0063】
図8は、その場合の対策として、上記重なりを回避又は重なり度合いを軽減するように、後続の第3気筒の前噴射アの態様を変更することを例示する。特に、符号B1で示すように、主噴射イとの重なり合いが予測される1段目の燃料噴射量(前述のQ)をゼロにしている(燃料噴射を停止している)。先行の第1気筒の主噴射イの態様は変更されないから、該主噴射イの目的、すなわち走行性確保が確実・優先的に維持される。
【0064】
この場合、図9(a),(b)に示すように、前噴射アの他の2段目・3段目の噴射量を増量することが好ましい。もともと噴射すべきであった前噴射量が全量補償され、結果的に、前噴射アの目的も可及的に維持されるようになるからである。なお、図9(a)は、符号B2で示すように、2段目・3段目を均等に増量した場合を例示し、図9(b)は、符号B3で示すように、2段目だけを偏って増量させた場合を例示する。もちろん3段目だけを偏って増量させてもよい。
【0065】
図10は、他の対策例として、先行の第1気筒の主噴射イの態様を変更することを例示する。特に、符号A4で示すように、該主噴射イの燃料噴射時期(前述のθs)を進角している。後続の第3気筒の前噴射アの態様は変更されないから、該前噴射アの目的、すなわち騒音抑制とNOx低減とが確実・優先的に維持される。なお、主噴射イの噴射時期の進角移動に限度がある場合は、図10に符号B4で示したように、第3気筒の前噴射ア(1段目だけでもよいし、3段まとめてでもよい)の燃料噴射時期を遅角してもよい。
【0066】
次に、図11〜図17は、前噴射と後噴射との重なりが予測される場合の事例を示す。すなわち、図11に示すように、燃料噴射順序が隣り合う第1気筒と第3気筒との間で、符号C,Dで示すように、先行の第1気筒の後噴射ウの時期(より詳しくは、2段に分割した2段目の噴射の時期)と、後続の第3気筒の前噴射アの時期(より詳しくは、3段に分割した1段目の噴射の時期)との重なりが予測されている。
【0067】
図12は、その場合の対策として、上記重なりを回避又は重なり度合いを軽減するように、後続の第3気筒の前噴射アの態様を変更することを例示する。特に、符号D1で示すように、後噴射ウとの重なり合いが予測される1段目の燃料噴射を停止している。先行の第1気筒の後噴射ウの態様は変更されないから、該後噴射ウの目的、すなわちパティキュレートフィルタ27の強制再生処理が確実・優先的に維持される。この場合、前述の図9に準じて、前噴射アの他の2段目・3段目の噴射量を増量してもよい。
【0068】
図13は、他の対策例として、同じく第3気筒の前噴射アの態様を変更するが、符号D2で示すように、該前噴射アの燃料噴射時期を遅角することを例示している。この場合、後噴射ウとの重なり合いが予測される1段目の燃料噴射時期だけを遅角してもよいし、図例のように3段まとめて遅角してもよい。
【0069】
図14は、さらに他の対策例として、符号D3で示すように、後噴射ウとの重なり合いが予測される1段目の燃料噴射時期だけを遅角しつつ、該1段目の燃料噴射圧(前述のP)を高めて、その燃料噴射期間(前述のT)を狭め、これにより、その燃料噴射終了時刻(前述のθe)を進角することを例示している。その結果、後噴射ウとの重なりを回避又は軽減するために遅角した第3気筒の前噴射アの1段目と遅角しなかった2段目との間の時間的間隔が著しく短くならない。
【0070】
図15は、さらに他の対策例として、先行の第1気筒の後噴射ウの態様を変更することを例示する。特に、符号C4で示すように、前噴射アと重なり合いが予測される2段目の燃料噴射を停止している。後続の第3気筒の前噴射アの態様は変更されないから、該前噴射アの目的は確実・優先的に維持される。
【0071】
この場合、図16に符号C5で示すように、後噴射ウの他の1段目の噴射量を増量することが好ましい。もともと噴射すべきであった後噴射量が全量補償され、結果的に、後噴射ウの目的も可及的に維持されるようになるからである。なお、本実施形態では、後噴射ウは2回の分割噴射であるから、1段目を増量する他ないが、例えば前噴射アのように3回の分割噴射であれば、前述の図9(a)に準じて、1段目・2段目を均等に増量したり、図9(b)に準じて、いずれか一方だけを偏って増量させてもよい。
【0072】
図17は、さらに他の対策例として、同じく第1気筒の後噴射ウの態様を変更するが、符号C6で示すように、前噴射アとの重なり合いが予測される2段目の燃料噴射圧(P)を高めて、その燃料噴射期間(T)を狭め、これにより、その燃料噴射終了時刻(θe)を進角することを例示している。なお、噴射圧(P)の上昇だけでは燃料噴射終了時刻(θe)の進角移動に限度がある場合は、図17に示したように、併せて、該2段目の燃料噴射時期(θs)を進角してもよい。
【0073】
次に、図18〜図20は、後噴射と主噴射との重なりが予測される場合の事例を示す。すなわち、図18に示すように、燃料噴射順序が隣り合う第1気筒と第3気筒との間で、符号E,Fで示すように、先行の第1気筒の後噴射Eの時期(より詳しくは、2段に分割した2段目の噴射の時期)と、後続の第3気筒の主噴射イの時期との重なりが予測されている。
【0074】
図19は、その場合の対策として、上記重なりを回避又は重なり度合いを軽減するように、先行の第1気筒の後噴射ウの態様を変更することを例示する。特に、符号E1で示すように、主噴射イとの重なり合いが予測される2段目の燃料噴射時期を進角している。後続の第3気筒の主噴射イの態様は変更されないから、該主噴射イの目的は確実に維持される。また、図19は、他の対策例として、上記重なりを回避又は重なり度合いを軽減するように、後続の第3気筒の主噴射イの態様を変更することも併せて例示する。特に、符号F1で示すように、後噴射ウとの重なり合いが予測される主噴射イの燃料噴射時期を遅角している。この場合は、先行の第1気筒の後噴射ウの態様は変更されないから、該後噴射ウの目的は確実に維持される。もちろん、図19に併せて示したように、第1気筒の後噴射ウの進角と、第3気筒の主噴射イの遅角とを同時に行ってもよい。
【0075】
図20は、他の対策例として、同じく第1気筒の後噴射ウの態様を変更するが、符号E2で示すように、主噴射イとの重なり合いが予測される2段目の燃料噴射圧(P)を高めて、その燃料噴射期間(T)を狭め、これにより、燃料噴射終了時刻(θe)を進角することを例示している。なお、噴射圧(P)の上昇だけでは燃料噴射終了時刻(θe)の進角に限界がある場合は、併せて、該2段目の燃料噴射時期(θs)を進角してもよい。
【0076】
ECU50が行う以上の燃料噴射制御動作をフローチャートで示すとおよそ図21のようになる。すなわち、ステップS1で、各種信号を読み込んだ後、ステップS2で、エンジン1の運転状態に基づいて、燃料噴射量Q、燃料噴射時期θs及び燃料噴射圧Pを含む燃料噴射態様を各インジェクタ4毎に設定する。このとき燃料噴射終了時期θeも併せて設定される。より具体的には、燃料噴射終了時期θeは、燃料噴射開始時期θsに、燃料噴射期間T(前述したように燃料噴射量Qと燃料噴射圧Pとに依存して決まる)を加算することにより設定される。つまり、燃料噴射終了時期θeは、その設定の1例として、燃料噴射時期θsと、燃料噴射量Qと、燃料噴射圧Pとから設定される。また、前述したように、図2に示した特性に応じて、主噴射に追加して前噴射を行うか否かを決定する。前噴射を行う場合は、その噴射回数も併せて設定する。さらに、図4に示した特性に基づいて、後噴射を追加して行うか否かを決定する。後噴射を行う場合は、その噴射回数も併せて設定する。その場合、後噴射は、図4の特性のみならず、前述したように、パティキュレートフィルタ27に堆積する排気微粒子の堆積量によっても実行するか否かが決定される。そして、上記図2及び図4の特性は、排気温度(パティキュレートフィルタ27の温度関連値)や、エンジン回転数、あるいはエンジン負荷等をパラメータとして設定されている。したがって、各インジェクタ4の噴射態様は、これらの、パティキュレートフィルタ27の排気微粒子の堆積量、該フィルタ27の温度関連値、エンジン回転数、及びエンジン負荷の少なくともいずれか1により、前噴射及び後噴射の分割噴射回数も含め、総合的に設定される。
【0077】
図22は、前噴射回数がゼロ(前噴射なし)から3段まで、及び後噴射回数がゼロ(後噴射なし)から2段までの組合せで得られる各噴射態様を(i)〜(xii)の12に区分して表したテーブルである。前述の図7〜図20までの具体例は、第1気筒のインジェクタ4及び第3気筒のインジェクタ4とも噴射態様(xii)が設定された場合であった。なお、前噴射なしと後噴射なしとの組合せである噴射態様(i)が両インジェクタ4,4に設定されたときは、主噴射のみの実行であるから、燃料噴射時期の重なりの問題はまず起こらない。しかし、図22に斜線で囲ったように、いずれか一方のインジェクタ4に噴射態様(ii)〜(xii)のいずれかが設定されると、燃料噴射時期の重なりの頻度はさておき、該重なりの可能性が発生する。ECU50は、重なりが予測されるこれらの噴射態様(ii)〜(xii)を予めメモリに格納している。すなわち、図22に示すテーブルは、前噴射回数及び後噴射回数と、燃料噴射時期の重なりの可能性の有無との関係を予め記憶したテーブルである。
【0078】
図21に戻り、ステップS3で、共通するコモンレール6に接続され、燃料噴射順序が隣り合う気筒のインジェクタ4,4間で燃料噴射時期の重なりが予測されるか否かを判定し(その詳しい予測動作は後述する)、その結果、重なりが予測されるときは、その重なりを回避又は重なり度合いを軽減するように、いったん設定した噴射態様を変更する。つまり、燃料噴射量Qの変更、燃料噴射時期θsの変更、及び燃料噴射圧Pの変更の少なくともいずれか1を実行することにより、前述の図7〜図20を参照して説明したような対応策を個別具体的に講じるのである。
【0079】
ここで、少なくとも前噴射、後噴射、又は前噴射と後噴射とが設定された場合において、先に噴射が行われる気筒(先行の気筒)のいずれかの燃料噴射と、次に噴射が行われる気筒(後続の気筒)のいずれかの燃料噴射とが重なるかどうかの予測をする簡易的な方法として例えば次のようなものがある。1つ目は、図23に示すように、先行の気筒において最後に行われる燃料噴射(それが主噴射であるか、後噴射であるか、後噴射の分割噴射であるか等の種類は問わない)の噴射開始時刻(すなわち燃料噴射時期あるいは燃料噴射開始クランク角)θs1と、後続の気筒において最初に行われる燃料噴射(それが主噴射であるか、前噴射であるか、前噴射の分割噴射であるか等の種類は問わない)の噴射開始時刻θs2とが、所定値δ以内で近接しているときに、重なりを予測する方法である。すなわち、数1に示すように、先行気筒の最遅噴射開始時刻θs1と、後続気筒の最早噴射開始時刻θs2との偏差の絶対値が所定値δ以下のときに、重なりの可能性があると予測する。
【0080】
【数1】
【0081】
2つ目は、上記図22に示したようなテーブルやマップを利用する方法である。例えば、ステップS2で実際に設定した前噴射回数及び後噴射回数を、図22のテーブル(前述したように、前噴射回数及び後噴射回数と、燃料噴射時期の重なりの可能性の有無との関係を予め記憶したテーブル)に当てはめて、燃料噴射時期の重なりを予測するのである。ここでは、上記図22に従えば、比較的多くの組合せパターン(ii)〜(xii)で重なりが予測されるが、例えばエンジン1の仕様や設定に依存して記憶内容を適宜変更することが可能である。1例として、噴射回数の多い領域(例えば(ix)〜(xii))のみで重なりが予測されるとしてもよい((ix)〜(xii)の領域のみを斜線で囲う)。
【0082】
再び図21に戻り、そして、ステップS4で、重なりを回避又は軽減する対応策を講じた噴射態様に従って燃料噴射を実行する。つまり、インジェクタ4及び燃料ポンプ5の少なくともいずれか1を制御する。
【0083】
次に、図24を参照して、燃料噴射態様の初期設定−噴射時期の重なりの予測−該重なりを回避又は軽減するための燃料噴射態様の変更から、該噴射態様の変更を実際の燃料噴射に反映するまでの具体的動作の1例を説明する。これは、上記図21のステップS2〜S3〜S4の動作に該当する。例えば、いま、図24に示すように、前噴射3段と主噴射とが行われているとする。前述したように、このエンジン1では、吸気・圧縮・膨張・排気の各行程が、第2気筒(♯2)、第1気筒(♯1)、第3気筒(♯3)、第4気筒(♯4)、第2気筒(♯2)、…の順に実行される。エンジン1の運転状態の変化に伴い、後噴射2段を実行する必要が生じたとする。その結果、先行する気筒の後噴射と、それに続く気筒の前噴射とが時期的に重なることが予測された。そこで、図例では、前噴射1段目をカットすることで対処している。
【0084】
このとき、図24に矢印で示したように、各気筒で実行される前・主・後の各噴射の態様は、第1気筒の圧縮行程上死点で算出設定される(算出設定時期)。このとき、併せて、燃料噴射時期の重なりが予測される。また、併せて、その重なりが予測されるときは、該重なりを回避又は軽減するように噴射態様の変更がなされる。そして、このように初期設定と重なりの予測とを経て変更がなされた各気筒における前・主・後の各噴射態様は、上記算出設定時期の直後の第3気筒での燃料噴射から実際の反映が開始される。そして、この実際の燃料噴射への反映は、次のサイクルの第1気筒での燃料噴射まで続く。そして、その次の第1気筒での燃料噴射の実行中における圧縮行程上死点で、再び次の燃料噴射態様が算出設定される。
【0085】
次に、図25以下を参照して、上記ステップS3で実行する、燃料噴射時期の重なりの可能性を詳細に予測する方法を説明する。すなわち、一般に、図25に示すように、2つの気筒のうちの先行気筒の噴射開始時刻(噴射開始クランク角)をw、噴射終了時刻(噴射終了クランク角)をxとし、後続気筒の噴射開始時刻(噴射開始クランク角)をy、噴射終了時刻(噴射終了クランク角)をzとする。図25(a)に実線及び破線で示すように、後続気筒の噴射開始時刻yが、先行気筒の噴射終了時刻xより遅い限りは、両噴射時期が重なることがない。一方、図25(b)に実線及び破線で示すように、後続気筒の噴射開始時刻yが、先行気筒の噴射終了時刻xより早く、かつ後続気筒の噴射終了時刻zが、先行気筒の噴射開始時刻wより遅いときは、両噴射時期が重なることになる。そして、図25(c)に実線及び破線で示すように、後続気筒の噴射終了時刻zが、先行気筒の噴射開始時刻wより早い限りは、両噴射時期が重なることがない。これらの事柄を基礎として、すべての先行気筒の噴射と後続気筒の噴射との間で、噴射開始時刻と噴射終了時刻との関係を調べることにより、噴射時期の重なりの可能性が詳細に予測できる。
【0086】
図26は、図21のステップS3の詳しい動作内容の1例を示すフローチャートである。まずステップS11,S12,S15で、主噴射以外に前噴射及び/又は後噴射があるか否かを判定する。前述したように、前噴射も後噴射も設定されない主噴射のみの場合は、ステップS13で、重なりの可能性は無いと判定する(図22の噴射態様(i)に相当する)。これに対し、後噴射のみ設定された場合は、ステップS14で、各後噴射と後続気筒の主噴射との重なりの可能性を予測する(同、噴射態様(ii),(iii)に相当する)。一方、前噴射のみ設定された場合は、ステップS16で、各前噴射と先行気筒の主噴射との重なりの可能性を予測する(同、噴射態様(iv),(vii),(x)に相当する)。そして、前噴射も後噴射も設定された場合は、ステップS17で、各後噴射と後続気筒の主噴射との重なりの可能性(前述の図18〜図20の場合に相当する)、各前噴射と先行気筒の主噴射との重なりの可能性(前述の図7〜図10の場合に相当する)、及び各後噴射と後続気筒の各前噴射との重なりの可能性(前述の図11〜図17の場合に相当する)を予測する(同、噴射態様(v),(vi),(viii),(ix),(xi),(xii)に相当する)。
【0087】
ステップS14はさらに図27に示すようなルーティンを含む。ここでは、先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との重なりを予測するのであるが、図28に示すように、特に先行気筒を主体にして考える。すなわち、先行気筒(図例では♯1)の圧縮上死点におけるクランク角を0°とし、後続気筒(図例では♯3)の圧縮上死点におけるクランク角を180°として考える。したがって、先行気筒の後噴射の噴射開始クランク角a,a´、及び噴射終了クランク角b,b´に対し、後続気筒の主噴射の噴射開始クランク角c及び噴射終了クランク角dは、それぞれ先行気筒の主噴射の噴射開始クランク角及び噴射終了クランク角に180°を加算した値として表される。
【0088】
まずステップS21で、後噴射のそれぞれに噴射時期の早いものから順に番号付けをする(Nri)。ここで、「i」は、1から、後噴射の分割回数nまでの整数である。ステップS22で、最初は「i」を1とし、ステップS23で、「i」が後噴射回数nを超えていないことを確認する。そして、ステップS24,S25,S27で、先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との間で、噴射開始時刻と噴射終了時刻との関係が、前述の図25(a),(b),(c)のいずれに該当するかを調べる。
【0089】
先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(図25の符号xに相当する)が、後続気筒の主噴射の噴射終了クランク角d(同、符号zに相当する)より遅く、かつ、先行気筒の後噴射Nriの噴射開始クランク角a,a´(同、符号wに相当する)が、後続気筒の主噴射の噴射終了クランク角d(z)より早いときは、前述の図25(b)に該当するから、ステップS26で、重なりの可能性は有ると判定する。
【0090】
また、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の主噴射の噴射終了クランク角d(z)より遅く、かつ、先行気筒の後噴射Nriの噴射開始クランク角a,a´(w)が、後続気筒の主噴射の噴射終了クランク角d(z)より遅いときは、前述の図25(c)に該当するから、ステップS28で、重なりの可能性は無いと判定する。
【0091】
一方、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の主噴射の噴射終了クランク角d(z)より早く、かつ、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の主噴射の噴射開始クランク角c(図25の符号yに相当する)より早いときは、前述の図25(a)に該当するから、ステップS28で、重なりの可能性は無いと判定する。
【0092】
また、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の主噴射の噴射終了クランク角d(z)より早く、かつ、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の主噴射の噴射開始クランク角c(y)より遅いときは、前述の図25(b)に該当するから、ステップS26で、重なりの可能性は有ると判定する。
【0093】
以上の動作をすべての後噴射について行う。すなわち、ステップS29で、「i」を1づつ加算していき、ステップS23で、「i」が後噴射回数nを超えたときにリターンとなる。それまでは、ステップS24〜S28を繰り返す。
【0094】
以上に準じて、ステップS16はさらに図29に示すようなルーティンを含む。ここでは、先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との重なりを予測するのであるが、図30に示すように、特に後続気筒を主体にして考える。すなわち、後続気筒(図例では♯3)の圧縮上死点におけるクランク角を0°とし、先行気筒(図例では♯1)の圧縮上死点におけるクランク角をマイナス180°として考える。したがって、後続気筒の前噴射の噴射開始クランク角c,c´,c´´、及び噴射終了クランク角d,d´,d´´に対し、先行気筒の主噴射の噴射開始クランク角a及び噴射終了クランク角bは、それぞれ後続気筒の主噴射の噴射開始クランク角及び噴射終了クランク角に180°を減算した値として表される。
【0095】
まずステップS31で、前噴射のそれぞれに噴射時期の早いものから順に番号付けをする(Nfj)。ここで、「j」は、1から、前噴射の分割回数mまでの整数である。ステップS32で、最初は「j」を1とし、ステップS33で、「j」が前噴射回数mを超えていないことを確認する。そして、ステップS34,S35,S37で、先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との間で、噴射開始時刻と噴射終了時刻との関係が、前述の図25(a),(b),(c)のいずれに該当するかを調べる。
【0096】
後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角d,d´,d´´(図25の符号zに相当する)が、先行気筒の主噴射の噴射終了クランク角b(同、符号xに相当する)より遅く、かつ、後続気筒の前噴射Nfjの噴射開始クランク角c,c´,c´´(同、符号yに相当する)が、先行気筒の主噴射の噴射終了クランク角b(x)より早いときは、前述の図25(b)に該当するから、ステップS36で、重なりの可能性は有ると判定する。
【0097】
また、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角d,d´,d´´(z)が、先行気筒の主噴射の噴射終了クランク角b(x)より遅く、かつ、後続気筒の前噴射Nfjの噴射開始クランク角c,c´,c´´(y)が、先行気筒の主噴射の噴射終了クランク角b(x)より遅いときは、前述の図25(a)に該当するから、ステップS38で、重なりの可能性は無いと判定する。
【0098】
一方、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角d,d´,d´´(z)が、先行気筒の主噴射の噴射終了クランク角b(x)より早く、かつ、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角d,d´,d´´(z)が、先行気筒の主噴射の噴射開始クランク角a(図25の符号wに相当する)より早いときは、前述の図25(c)に該当するから、ステップS38で、重なりの可能性は無いと判定する。
【0099】
また、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角d,d´,d´´(z)が、先行気筒の主噴射の噴射終了クランク角b(x)より早く、かつ、後続気筒の後噴射Nfjの噴射終了クランク角d,d´,d´´(z)が、先行気筒の主噴射の噴射開始クランク角a(w)より遅いときは、前述の図25(b)に該当するから、ステップS36で、重なりの可能性は有ると判定する。
【0100】
以上の動作をすべての前噴射について行う。すなわち、ステップS39で、「j」を1づつ加算していき、ステップS33で、「j」が前噴射回数mを超えたときにリターンとなる。それまでは、ステップS34〜S38を繰り返す。
【0101】
以上に準じて、ステップS17はさらに図31〜図33に示すようなルーティンを含む。ここでは、先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との重なり、先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との重なり、及び先行気筒の後噴射と後続気筒の前噴射との重なりを予測するのであるが、図34に示すように、先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との重なり、及び先行気筒の後噴射と後続気筒の前噴射との重なりについては、ステップS14と同様、特に先行気筒を主体にして考え、一方、先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との重なりについては、ステップS16と同様、特に後続気筒を主体にして考える。
【0102】
まずステップS41〜S49は、先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との重なり予測動作であるが、前述のステップS14で実行する図27のステップS21〜S29と内容的に同じであるので、詳しい説明は省略する。ただし、ステップS43で、「i」が後噴射回数nを超えたときは、ステップS51に進む。
【0103】
次のステップS51〜S59は、先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との重なり予測動作であるが、前述のステップS16で実行する図29のステップS31〜S39と内容的に同じであるので、詳しい説明は省略する。ただし、ステップS53で、「j」が前噴射回数mを超えたときは、ステップS61に進む。
【0104】
次のステップS61〜S71は、先行気筒の後噴射と後続気筒の前噴射との重なり予測動作である。まずステップS61で、最初は「i」を1とし、ステップS62で、「i」が後噴射回数nを超えていないことを確認する。そして、ステップS63で、最初は「j」を1としたうえで、ステップS64,S65,S67で、先行気筒の後噴射と後続気筒の前噴射との間で、噴射開始時刻と噴射終了時刻との関係が、前述の図25(a),(b),(c)のいずれに該当するかを調べる。
【0105】
先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(図25の符号xに相当する)が、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角f,f´,f´´(同、符号zに相当する)より遅く、かつ、先行気筒の後噴射Nriの噴射開始クランク角a,a´(同、符号wに相当する)が、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角f,f´,f´´(z)より早いときは、前述の図25(b)に該当するから、ステップS66で、重なりの可能性は有ると判定する。
【0106】
また、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角f,f´,f´´(z)より遅く、かつ、先行気筒の後噴射Nriの噴射開始クランク角a,a´(w)が、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角f,f´,f´´(z)より遅いときは、前述の図25(c)に該当するから、ステップS68で、重なりの可能性は無いと判定する。
【0107】
一方、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角f,f´,f´´(z)より早く、かつ、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の前噴射Nfjの噴射開始クランク角e,e´,e´´(図25の符号yに相当する)より早いときは、前述の図25(a)に該当するから、ステップS68で、重なりの可能性は無いと判定する。
【0108】
また、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の前噴射Nfjの噴射終了クランク角f,f´,f´´(z)より早く、かつ、先行気筒の後噴射Nriの噴射終了クランク角b,b´(x)が、後続気筒の前噴射Nfjの噴射開始クランク角e,e´,e´´(y)より遅いときは、前述の図25(b)に該当するから、ステップS66で、重なりの可能性は有ると判定する。
【0109】
以上の動作をすべての後噴射及び前噴射について行う。すなわち、ステップS69で、「j」を1づつ加算していき、ステップS70で、「j」が前噴射回数mを超えたときは、ステップS71で、「i」を1づつ加算していき、ステップS62で、「i」が後噴射回数nを超えたときにリターンとなる。それまでは、ステップS64〜S68を繰り返す。
【0110】
なお、以上の実施形態においては、専ら♯1−♯3間を例にして説明したが、本発明は、♯4−♯2間についても同様に適用できる。また、以上の実施形態においては、2つのコモンレール6,6にインジェクタ4がそれぞれ2つづつ接続されている場合を例にして説明したが、本発明は、単一のコモンレール6に複数のインジェクタ4…4がすべて接続されている場合にも同様に適用できる。また、前述の図7〜図20を参照して直接説明した対応策以外にも、噴射量Q、噴射時期θs、噴射圧Pの調整の各手法をいろいろに組み合わせて重なりの回避・軽減を行えばよい。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、複数の燃料噴射手段が同時に燃料を噴射することがなくなるので、あるいは複数の燃料噴射手段が同時に燃料を噴射する期間が短くなるので、蓄圧手段内の燃料圧力の変動・低下が抑制され、その結果、各燃料噴射手段において、エンジンの運転状態に応じた適切な噴射圧が確保され、狙いの噴射量が得られて、各燃料噴射の目的が満足に達成される。
【0115】
また、この発明によれば、各燃料噴射手段について、燃料噴射が1つではなく、相前後して行われる第1、第2、第3の3つの燃料噴射が設定された場合の対応策が具体化される。
【0116】
また、この発明によれば、第1の燃料噴射は前噴射、第2の燃料噴射は主噴射、第3の燃料噴射は後噴射にそれぞれ特定される。
【0117】
また、この発明によれば、前噴射が複数回の分割噴射とされるので、他の主噴射や後噴射との重なりの可能性が高くなる。
【0119】
また、この発明によれば、第1噴射(前噴射)と第2噴射(主噴射)との重なりが予測される場合、または第1噴射(前噴射)と第3噴射(後噴射)との重なりが予測される場合に、前噴射の噴射態様を変更して、その重なりを回避又は重なり度合いを軽減するようにする。前者の場合、主噴射の目的、すなわち走行性確保が優先的に維持される。後者の場合、後噴射の目的、すなわちパティキュレートフィルタの強制再生処理が優先的に維持される。
【0125】
また、この発明によれば、他の噴射との重なりを回避又は軽減するために、複数回の分割噴射である前噴射の噴射態様を変更するに際し、その一部の回の燃料噴射を停止するような場合は、他の回の燃料噴射量を増量するから、全体として必要な前噴射量が補償され、結果的に、前噴射の目的も可及的に維持される。
【0127】
以上のように、本発明によれば、共通するコモンレールに接続された複数のインジェクタ間で燃料噴射時期の重なり合いが予測されるときの良好な対処法が提供される。本発明は、走行性の確保を目的とする主噴射の他に、騒音の抑制及びNOxの低減を目的とする前噴射や、パティキュレートフィルタの強制再生を目的とする後噴射が実行可能に構成されたエンジン一般への幅広い産業上の利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るエンジンのシステム構成図である。
【図2】 上記エンジンの燃料噴射制御(特に前噴射を実行するか否かの判定及び前噴射回数の設定)で用いる特性図である。
【図3】 上記前噴射の代表的な噴射パターンを示すタイムチャートであって、(a)は1段噴射、(b)は2段噴射、(c)は3段噴射を示す。
【図4】 上記エンジンの燃料噴射制御(特に後噴射を実行するか否かの判定及び後噴射回数の設定)で用いる特性図である。
【図5】 燃料噴射順序が隣り合う気筒を示す行程図である。
【図6】 燃料噴射量Q、燃料噴射時期(燃料噴射開始時刻)θs、燃料噴射終了時刻θe、燃料噴射期間T、燃料噴射圧Pの相互関係を示すタイムチャートであって、(a)は燃料噴射期間が長く燃料噴射圧が低い場合、(b)は燃料噴射期間が短く燃料噴射圧が高い場合を示す。
【図7】 先行の第1気筒の主噴射と後続の第3気筒の前噴射とが重なる場合のタイムチャートである。
【図8】 上記重なりを回避又は軽減するために第3気筒の前噴射の態様を変更した場合のタイムチャートである。
【図9】 (a),(b)とも第3気筒の前噴射の態様を変更した場合のさらに好ましい例を示すタイムチャートである。
【図10】 上記重なりを回避又は軽減するために第1気筒の主噴射の態様及び第3気筒の前噴射の態様をそれぞれ変更した場合のタイムチャートである。
【図11】 先行の第1気筒の後噴射と後続の第3気筒の前噴射とが重なる場合のタイムチャートである。
【図12】 上記重なりを回避又は軽減するために第3気筒の前噴射の態様を変更した場合のタイムチャートである。
【図13】 同じく第3気筒の前噴射の態様を変更した場合のタイムチャートである。
【図14】 同じく第3気筒の前噴射の態様を変更した場合のタイムチャートである。
【図15】 上記重なりを回避又は軽減するために第1気筒の後噴射の態様を変更した場合のタイムチャートである。
【図16】 第1気筒の後噴射の態様を変更した場合のさらに好ましい例を示すタイムチャートである。
【図17】 同じく第1気筒の後噴射の態様を変更した場合のタイムチャートである。
【図18】 先行の第1気筒の後噴射と後続の第3気筒の主噴射とが重なる場合のタイムチャートである。
【図19】 上記重なりを回避又は軽減するために第1気筒の後噴射の態様及び第3気筒の主噴射の態様をそれぞれ変更した場合のタイムチャートである。
【図20】 上記重なりを回避又は軽減するために第1気筒の後噴射の態様を変更した場合のタイムチャートである。
【図21】 ECUが行う燃料噴射制御動作の1例を示すフローチャートである。
【図22】 各インジェクタに設定される噴射態様を(i)〜(xii)の12に区分したテーブルである。
【図23】 噴射時期の重なりを簡易に予測する方法の説明図である。
【図24】 燃料噴射態様の初期設定−噴射時期の重なりの予測−重なりを回避又は軽減するための燃料噴射態様の変更から、該噴射態様の変更を実際の燃料噴射に反映するまでの具体的動作の1例を示すタイムチャートである。
【図25】 噴射時期の重なりを詳細に予測する方法の説明図である。
【図26】 噴射時期の重なりを詳細に予測する動作の1例を示すフローチャートである。
【図27】 上記予測動作において先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との重なりを予測するサブフローである。
【図28】 同じく先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との重なりを予測する場合のタイムチャートである。
【図29】 上記予測動作において先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との重なりを予測するサブフローである。
【図30】 同じく先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との重なりを予測する場合のタイムチャートである。
【図31】 上記予測動作において先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との重なり、先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との重なり、及び先行気筒の後噴射と後続気筒の前噴射との重なりを予測するサブフローの前半部分である。
【図32】 同じく中盤部分である
【図33】 同じく後半部分である。
【図34】 同じく先行気筒の後噴射と後続気筒の主噴射との重なり、先行気筒の主噴射と後続気筒の前噴射との重なり、及び先行気筒の後噴射と後続気筒の前噴射との重なりを予測する場合のタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
4 インジェクタ(燃料噴射手段)
5 燃料ポンプ(蓄圧手段)
6 コモンレール(蓄圧手段)
23,25,29 排気温センサ(運転状態検出手段)
26,28 圧力センサ(運転状態検出手段)
27 パティキュレートフィルタ
41 エンジン回転数センサ(運転状態検出手段)
45 アクセル開度センサ(運転状態検出手段)
50 コントロールユニット(噴射態様設定手段、燃料噴射制御手段、噴射態様変更手段)
Claims (1)
- 複数の気筒の各々に対応して設けられた燃料噴射手段と、これらの燃料噴射手段に接続され、該燃料噴射手段に供給する燃料の圧力を蓄積する蓄圧手段と、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、該検出手段の検出結果に基づいて、燃料噴射手段毎に、燃料噴射量、燃料噴射時期及び燃料噴射圧を設定する噴射態様設定手段と、該設定手段で設定された噴射態様が実現するように、燃料噴射手段と蓄圧手段との少なくともいずれか1を制御する燃料噴射制御手段とを有するエンジンの燃料噴射制御装置であって、上記噴射態様設定手段で設定された燃料噴射時期が、共通する蓄圧手段に接続された燃料噴射手段間で重なることが予測されるときは、その重なりを回避又は重なり度合いを軽減するように、上記噴射態様設定手段で設定された噴射態様を変更する噴射態様変更手段を備え、上記燃料噴射制御手段は、上記重なりが予測されるときは、上記変更手段で変更された噴射態様が実現するように、燃料噴射手段と蓄圧手段との少なくともいずれか1を制御するように構成されており、
上記噴射態様設定手段は、燃料噴射手段毎に、第1の燃料噴射とそれに続く第2の燃料噴射とさらにそれに続く第3の燃料噴射とを設定し、
第2の燃料噴射は、圧縮行程上死点近傍で燃料を噴射する主噴射であり、第1の燃料噴射は、上記主噴射に先立って吸気行程下死点近傍から圧縮行程中に燃料を噴射する前噴射であって燃料は複数回に分割噴射され、第3の燃料噴射は、上記主噴射より後の膨張行程から膨張行程下死点近傍において燃料を噴射する後噴射であり、
上記噴射態様変更手段は、燃料噴射順序が隣り合う気筒間で第1の燃料噴射時期と第2の燃料噴射時期とが重なることが予測されるとき、または燃料噴射順序が隣り合う気筒間で第1の燃料噴射時期と第3の燃料噴射時期とが重なることが予測されるときは、第1の燃料噴射の噴射態様を変更すると共に、第1の燃料噴射の噴射態様を変更するに際し、分割噴射の一部の回の燃料噴射を停止するときは、分割噴射の他の回の燃料噴射量を増量することを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。
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