JP3876758B2 - H形鋼の熱間寸法・形状測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱間圧延H形鋼を製造する圧延ラインに設置するH形鋼の熱間寸法・形状測定装置の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くのH形鋼は、十分に高温のビレットを形鋼圧延機に掛けてH形鋼に塑性変形するところの熱間ロール圧延法で製造される。ビレットが高温であるため縦弾性係数が小さく、比較的小さな圧下力で容易にH形断面に変形することができるからである。
熱間圧延H形鋼は圧延により長大なビームとなるため、圧延機の出側に設けた鋸切断機で所定の長さに切断される。
【0003】
ところで、塑性変形させて得たH形鋼が所定の寸法若しくは形状であるか否かを圧延直後に調べ、その結果を圧延機にフィードバックすることは、H形鋼の大量生産には不可欠な処置である。
【0004】
従来は、ノギス、マイクロメータ、デプスゲージなどの測定具を持った作業員が鋸切断機の出口に待機し、鋸切断後のH形鋼の切断面に測定具を当てることで寸法や形状を測定していた。しかし、H形鋼はまだ熱く、作業環境の点で課題がある。加えて、人手の測定であるため個人差が出やすく、測定値の信頼性が低下する。更に、人手の測定であるため測定時間が長くなり、生産性が低下する要因となる。
【0005】
そこで、熱間圧延H形鋼の寸法・形状測定の自動化が必要となる。この要求に応えるために、例えば▲1▼特開平7−120226号公報「形鋼の寸法測定装置」や▲2▼特開平7−27518号公報「形鋼のオンライン形状測定装置」が提案された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼では、同公報の段落番号[0009]第6行〜第18行「前記レーザ変位計46(47も同様)は図6に示すように、半導体レーザ素子48から発振されるレーザ光を収束レンズ49で収束されてスリット49aを通して測定物体に照射し、その反射光をプリズム50、干渉フィルター51、レンズ52、ミラー53を介して一次元CCD素子54に照射し、その変位から距離を測定するようになっている。」の記載から、一次元CCD素子54上の光到達点から距離を割出すことを原理としたレーザ測定器を使用している。
【0007】
しかし、同公報の図6から明らかなように、距離の変化が大きいと、光到達点が一次元CCD素子54から外れるため、測定可能距離が限られる。これを避けるために一次元CCD素子54を大型化すると、測定器が大型となり好ましくない。加えて、公報の図10において、検出ヘッド17,18は、測定物から約40mm(公報段落番号[0012]下から2行目参照)の距離を置く。しかし、熱間H形鋼は長尺であるため曲りや反りりは40mmを遥に超える虞れがある。曲りや反りが大きければ、熱間H形鋼が検出ヘッド17,18に当り、検出ヘッド17,18の破損や故障を引起こすことになる。
【0008】
この様に、レーザ光をスリットで絞り、反射光を一次元CCD素子で受ける形式のレーザ測定器を使用した上記▲1▼の装置は、測定距離の変更に柔軟に対応できないことと、測定距離が著しく短いことの2つの課題があり、このことから、熱間H形鋼の寸法・形状測定には不向きであると言わざるを得ない。
【0009】
また、上記▲2▼は、同公報の図6に明記されている通りに、スリットレーザ光を採用しているため、一次元CCD素子を二次元CCD素子に替えたとしても、光到達点がCCD素子から外れる危険性は同じである。
【0010】
加えて、同公報の図5によれば、1個のコ字フレームに符号31,32U及び32Lの3個のレーザ距離計を取付けるため、この3個のレーザ距離計31,32U,32Lでは一方のフランジの外面は計測することができない。そこで、向きを変更したもう1個のコ字フレームを配置する必要があり、図5には2個のコ字フレームが示されている。
【0011】
H形鋼の上下左右をカバーするには4個のレーザ距離計31,32U,32L及び31があれば済むのに、図5では6個のレーザ距離計31,32U,32L,32U,32L及び31を配置しているので、2個のレーザ距離計32U,32Lが余分であると言える。加えて、コ字フレームが2個必要であるため装置のコンパクト化が難しくなる。
【0012】
この様に、レーザ光をスリットで絞り、反射光を二次元CCD素子で受ける形式のレーザ測定器を使用した上記▲2▼の装置は、測定距離の変更に柔軟に対応できないことと、測定距離が著しく短いことと、装置のコンパクト化が難しいことの3つの課題があり、このことから、熱間H形鋼の寸法・形状測定には不向きであると言わざるを得ない。
【0013】
そこで、本発明の目的は測定距離の大きく且つ距離変更に柔軟に対応でき、且つ装置のコンパクト化が容易な測定装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、検査対象物であるH形鋼を、ウェブが水平となるようにして通過させる開口を備えた口の字形フレームと、H形鋼のフランジやウェブまでの距離を測るために前記フレームの上枠部、下枠部、左右の縦枠部に各々設けた上部・下部・左部・右部光波距離計と、これらの光波距離計を上枠部、下枠部、左右の縦枠部に沿って各々移動させるために前記フレームに設けた上部・下部・左部・右部距離計移動機構と、移動中の光波距離計から受けた距離情報を寸法・形状情報に変換する信号変換部とからなるH形鋼の熱間寸法・形状測定装置において、
前記左部光波距離計は、H形鋼の左フランジ越しにウェブと右フランジとの交点を見ることができるように、水平な軸回りに回転可能に、前記左部距離計移動機構に設けられており、
前記右部光波距離計は、H形鋼の右フランジ越しにウェブと左フランジとの交点を見ることができるように、水平な軸回りに回転可能に、前記右部距離計移動機構に設けられていることを特徴とする。
【0015】
光波距離計は、原理は後述するが、検査対象物までの距離を十分に大きく設定することができ、距離の変化に柔軟に対応し、且つ十分にコンパクトである。信号変換部で距離情報を寸法・形状情報に変換することで、H形鋼の寸法や形状を計測することができ、この例えば寸法・形状情報はディスプレイに表示させることができる。
光波距離計を用いたので、H形鋼の熱間寸法・形状測定装置のコンパクト化を容易に達成することができる。
加えて、左部光波距離計は、H形鋼の左フランジ越しにウェブと右フランジとの交点を見ることができるようにしたので、この左部光波距離計で右フランジの内側面(左フランジと対向する面)までの距離を測ることができる。右部光波距離計も同様である。
【0016】
請求項2は、信号変換部に、測定開始を人為的に決める測定開始スイッチ手段を付設したことを特徴とする。
【0017】
測定開始スイッチ手段を付設したことにより、手動操作により測定を開始させることができる。信号変換部に自動計測ロジックを組込んでおけば、自動計測が可能であるから、自動計測と手動計測の双方を任意に実行することができ、使い勝手が良くなる。
【0018】
請求項3では、光波距離計及び距離計移動機構を備えた口の字形フレームは、鋸切断機の近傍に配置することを特徴とする。
【0019】
原則として、鋸切断はH形鋼を止めて実施する。口の字形フレームを鋸切断機の近傍に配置すれば、切断のための静止時間中に、同時並行して寸法・形状測定を実施することができ、寸法・形状測定作業に伴なうライン停止をゼロ若しくは最少に止めることができる。
【0020】
請求項4では、記信号変換部に寸法・形状情報を表示するディスプレイを接続し、このディスプレイは、口の字形フレームの近傍に配置する機側設置ディスプレイと、口の字形フレームから離れた遠隔地に配置する遠隔地設置ディスプレイとの少なくとも2台で構成することを特徴とする。
【0021】
遠隔地の具体例は、上流側の形鋼圧延機運転室や工程管理室であり、形鋼圧延機運転室に遠隔地設置ディスプレイを設ければ圧延機の運転に必要な情報を待ち時間なしにフィードバックさせることができ、同様に工程管理室に遠隔地設置ディスプレイを設ければ、圧延ラインが良好に運転されているか否かを待ち時間なしにフィードバックさせることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るH形鋼の熱間寸法・形状測定装置を備えた圧延ラインのレイアウト図であり、圧延ライン10には、素材を圧延温度まで加熱する加熱炉11と、素材を大まかに塑性成形する粗圧延機12と、粗圧延材をH形鋼に仕上げる仕上げ圧延機13と、本発明の熱間寸法・形状測定装置20と、熱間H形鋼を所定の長さに切断する鋸切断機15とからなる。熱間寸法・形状測定装置20は、鋸切断機15の直前に設置したが、鋸切断機15の直後に設けてもよい。
【0023】
図2は本発明に係るH形鋼の熱間寸法・形状測定装置の正面図であり、H形鋼の熱間寸法・形状測定装置20は、圧延ラインに直交して敷設したレール21上を走る車輪22・・・(・・・は複数個を示す。)及び走行用モータ23を備えた自走台車24と、この台車24に載せた口の字形フレーム25(口の字形フレーム25は上枠部26、下枠部27、左縦枠部28及び右縦枠部29からなる。)と、上枠部26に取付けた上部距離計移動機構30と、下枠部27に取付けた下部距離計移動機構31と、左縦枠部28に取付けた左部距離計移動機構32と、右縦枠部29に取付けた右部距離計移動機構33と、これらの距離計移動機構30〜33中のスライドベース34〜37に各々取付けた上部・下部・左部・右部光波距離計40〜43と、後述の図10で示す信号変換部45と、機側設置ディスプレイ46と、遠隔地設置ディスプレイ47と、測定開始スイッチ手段48と、からなる。
【0024】
図2において、上部距離計移動機構30は、例えば上枠部26に一対の支持ブロック51,51にて上枠部26に沿って取付けるねじ軸52と、このねじ軸52にナットのように取付けたスライドベース34と、このスライドベース34の空転を防止するガイドロッド53と、前記ねじ軸52を正確に回転させるサーボモータ54と、からなる。
【0025】
スライドベース34が上枠部26のどの位置にあるかは、ねじ軸52の回転数及び回転角で正確に決定することができるので、サーボモータ54を電気的に制御することで、スライドベース34に載せた上部光波距離計40の位置を精度よく検知し且つ位置を制御することができる。下部・右部・左部距離計移動機構31,32,33も同構成であるから、符号を流用し、各要素の説明は省略する。
【0026】
図から明らかなように、ねじ軸52を這わせる上で、口の字形フレーム25は最適である。口の字形フレーム25を構成する4つの枠26〜29がねじ軸5・・・の良好な支持体になるからである。
【0027】
図3は図2の3−3線断面図であり、ねじ軸52及びガイドロッド53により図面表裏方向に移動するスライドベース34に直接的に上部光波距離計40を取付けたことを示す。すなわち、ねじ軸52を回すことにより、スライドベース34並びに上部光波距離計40を図表裏方向へ移動することができ、ガイドロッド53はそのときのスライドベース34の回転を防止する。下部光波距離計も同様である。
【0028】
図4は図2の4−4線断面図であり、ねじ軸52及びガイドロッド53により図面表裏方向に移動するスライドベース36に、小さなサーボモータ56を介して左部光波距離計42を取付けたことを示す。サーボモータ56の作用により、左部光波距離計42は軸57回りを回転し得る。右部光波距離計も同様である。
【0029】
なお、長距離に対応する距離計としてはレーダが知られている。レーダはレーダ波を発射し、レーダ波が対象物に当って反射し、この反射波が到達するまでの時間を計測し、レーダ波の速度に時間の1/2を乗じることで、距離を求める。レーダ波の速度は光速と同じである。ところで、距離が数メートル程度では、前記時間が極めて小さな値となり、時間を正確に測定することは困難であり、そのための装置も高価で大掛かりなものとなる。
【0030】
そこで、数メートル程度の距離を測るのに適した光波距離計と称する、位相差検出型距離計が考えられる。
この位相差検出型の光波距離計の作動原理を説明する。ただし、理解を容易にするために、基礎的な原理を第1原理図で説明し、実用的な原理を第2原理図で説明する。
【0031】
図5(a),(b)は本発明で採用した光波距離計の第1原理図である。なお、光波距離計は、上部・下部・左部・右部光波距離計があるが、ここでは上部光波距離計40を代表例にして説明する。
(a)において、光波距離計40から比較的長い波長の光線58を発射してH形鋼70に当て、その反射光線59を光波距離計40で受光する。
このとき、光波距離計40からH形鋼70までの距離をL、光線58の波長をλ0(ただしλ0>L)とすれば、光線58はサインカーブを描きながら前進し、1サイクル未了のうちにH形鋼70に到達する。そして、反射光線59はH形鋼70からサインカーブを描きながら光波距離計40に戻る。
【0032】
光線58及び反射光線59に付した黒点は90゜毎に付した目印であり、これらの点があることによりサインカーブであることが分かるとともに、光線58と反射光線59との位相に差があることが分かる。
【0033】
光線58の始点Spと反射光線59の1サイクル終点Fpとの間に発生する位相差Δλ0は光波距離計40で計測することができる。発射した光線の波長λ0は既知であり、位相差Δλ0は計測で求まるから、求めるべき距離Lは、L=λ0−Δλ0で算出することができる。これが、位相差検出型と言われる所以である。
【0034】
例えば、光線58の周波数f0を50MHz、光速cを3×108m/sとすれば、一般式(周波数f=光速c/波長λ)から、λ0=c/f0=3×108/(50×106)=6mの計算により、波長λ0は6mとなり、数メートルの距離測定には適用できる。
【0035】
ここで光波距離計40の測定能(分解能)が1゜であると仮定する。上記例で波長λ0が6mであれば1゜当りの長さは16.7mm(16.7=6000÷360)となり、距離の測定精度が著しく低いことになる。
【0036】
(b)は比較的短い波長λ1の光線61を発射し、H形鋼70に当てその反射光線62を光波距離計で受光し、光線61の始点Spと反射光線62の1サイクル終点Fpとの間に発生する位相差Δλ1を計測する様子を示す。
【0037】
図から明らかなように、距離Lは、L=m・λ1−Δλ1の算式で求めることができる。ただし、mは距離L間に存在するサイクルの数である。このmは(a)で凡そ求めたLと人為的に定めたλ1とから容易に求めることができる。
ここでの光線の周波数f1は2420MHzとすれば、波長λ1は、λ1=光速c/周波数f1の算式により、124mm(124=3×108/(2420×106))となる。そして、1゜当りの長さは0.34mm(0.34=124÷360)となり、距離の測定精度は著しく高くなる。
【0038】
(b)のみでは、サイクル数mが求まらないので、(a)が必要となる。すなわち、位相差検出型光波距離計では、▲1▼測定対象距離より波長が大きな比較的波長の長い光線で凡その距離Lを測り、▲2▼比較的波長の短い光線で距離の測定精度を上げるという手続により、距離を求める。ただし、実用的には次の第2原理図を使用する。
【0039】
図6(a),(b)は本発明で採用した光波距離計の第2原理図である。
(a)は図5(b)と同じグラフであり、周波数f1は2420MHz、波長λ1は124mmである。
(b)は光線63及び反射光線64の周波数f2を2370MHzとし、波長λ2を126.5mmとした。
【0040】
ところで、互いに近似した2つの周波数f1,f2を用いると、差(f1−f2)に対応する長い波長(c/(f1−f2))の光線を用いたときと同様の作用・効果が得られることが知られている。上記例では、f1は2420MHz、f2は2370MHzであるから、差(f1−f2)は50MHzとなる。周波数が50MHzの光線は図5(a)で示したものと同じである。
【0041】
従って、図6において、例えば1秒毎に(a)、(b)を交互に実施することにより、図5(a),(b)と同様に、距離Lを精度よく計測することができる。
【0042】
光波距離計には、水晶発振器などの高周波発生機や可変周波数発生機などのデバイスを内蔵しなければならぬが、図5より図6を実現させる方がデバイスを揃えることができるなどの理由から、距離計の小型化や低コスト化が図れる。従って、図6がより実用的であると言える。しかし、図5であっても差支えない。
【0043】
以上の構成からなるH形鋼の熱間寸法・形状測定装置の作用を次に説明する。
図7(a)〜(c)は本発明に係る上部光波距離計の作用説明図である。
(a)において、上部光波距離計40を矢印▲1▼のごとく移動して、H形鋼70の左上隅71を検出する。
(b)において、上部光波距離計40を矢印▲2▼のごとく移動して、左フランジ72の上面73、ウェブ74の上面75及び右フランジ76の上面77までの距離を計測する。この距離情報をxy座標上の位置情報に変換する。
【0044】
(c)は変換した位置情報のグラフであり、左フランジの上面73とウェブの上面75と右フランジの上面77に相当する線をディスプレイに表示させることができる。
下部光波距離計は光線を上向きに発射する点を除けば、上部光波距離計40と同様であるから、説明を省略する。
【0045】
次に、左部光波距離計の作用を図8と図9とで説明する。
図8(a)〜(c)は本発明に係る左部光波距離計の作用説明図(その1)である。
(a)において、左部光波距離計42を矢印aのごとく水平に対して傾斜角がθ(角度θの決め方は後述)となるように傾ける。そして、光線が右フランジ76の上面内隅78に達するまで矢印bのごとく移動する。
【0046】
(b)において、矢印cのごとく左部光波距離計42を下降させることで、右フランジ76の上部内側面79までの距離を測る。ただし、測定値にcosθを乗じることで、補正処理を施す(以下同じ)。
【0047】
続いて矢印dのごとく左部光波距離計42を下降させることで、主として、左フランジ72の外側面81までの距離を測る。ここで、角度θは、光線が左フランジ72越しにウェブ74と右フランジ76との交点82を見ることができる角度に設定する。そうすれば、右フランジ76の上部内側面79までの距離を測ることができるからである。
【0048】
なお、光線を角度θだけ傾斜させたために、反射光線が左部光波距離計42に戻りにくくなるが、H形鋼70の表面は粗面であるため、乱反射が起こり、一部の反射光線が左部光波距離計42に戻るため、距離の計測が可能となる。
【0049】
(c)は左部光波距離計42で計測した距離情報をxy座標に変換し、この位置情報をグラフ化したものであり、右フランジの上部内側面79及び左フランジの外側面81に相当する線を表示させることができる。
【0050】
図9(a)〜(c)は本発明に係る左部光波距離計の作用説明図(その2)である。
(a)は図8(b)に続く作用図であり、左部光波距離計42を矢印eのごとく回転させ、光線が右フランジ76の下面内隅83に達するまで矢印fの通りに移動させる。
【0051】
(b)において、矢印gのごとく左部光波距離計42を上昇させることで、右フランジ76の下部内側面84までの距離を測る。続いて矢印hのごとく左部光波距離計42を上昇させることで、主として、左フランジ72の外側面81までの距離を測る。
【0052】
(c)は左部光波距離計42で計測した距離情報(図8(c)を含む。)をxy座標に変換し、この位置情報をグラフ化したものである。これに、右部光波距離計及び下部光波距離計からの位置情報を合せると、H形鋼の形状をディスプレイに表示させることができる。
【0053】
寸法及び形状は次の方法で確認することができる。
先ず、目視確認であるが、透明な板にH形鋼の輪郭線を印し、スケール目盛を付したテンプレートを準備し、このテンプレートをディスプレイに表示させたH形鋼像に重ねることで、像の形状及び寸法を読取ることができる。
また、自動的な確認は、H形鋼の輪郭線をxy座標化し、これに基づいて実測のxy座標からなる位置情報を比較することで評価する。
【0054】
図10は本発明に係るH形鋼の熱間寸法・形状測定のシステム構成図であり、システムは、検査対象物であるH形鋼70を通過させる開口85を備えた口の字形フレーム25と、H形鋼70のフランジ72,76やウェブ74までの距離を測るためにフレーム25の上枠部26、下枠部27、左右の縦枠部28,29に各々設けた4個の光波距離計40,41,42,43と、光波距離計40〜43から受けた距離情報を寸法・形状情報に変換する信号変換部45と、測定開始を人為的に決めために信号変換部45に付設した測定開始スイッチ手段48と、信号変換部45から受けた寸法・形状情報を画像化する機側設置ディスプレイ46と、口の字形フレーム25から離れた遠隔地に配置する遠隔地設置ディスプレイ47とからなる。なお、「機側」は「きそく」と読み、機側設置ディスプレイ46は、フレーム25の近傍に設けたディスプレイを意味する。
【0055】
寸法・形状測定作業は、信号変換部45に記憶させたプログラムにより自動的に開始させることができるとともに、測定開始スイッチ手段48を操作することにより、随時実施することができる。なお、測定開始スイッチ手段48は、図の様に独立して設ける他、キーボード86に置き換えることもできる。
【0056】
尚、距離計移動機構は、実施例ではねじ軸をサーボモータで回転させる機構としたが、ピニオン・ラック機構、リニヤーモータ機構であってもよく、要は光波距離計を高速で停止精度よく移動できるものであれば、種類は問わない。
【0057】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、H形鋼の熱間における寸法及び形状測定に光波距離計を用いた。光波距離計は、検査対象物までの距離を十分に大きく設定することができ、距離の変化に柔軟に対応し、且つ十分にコンパクトである。信号変換部で距離情報を寸法・形状情報に変換することで、H形鋼の寸法や形状を計測することができ、例えばディスプレイに表示させることができる。
光波距離計を用いたので、H形鋼の熱間寸法・形状測定装置のコンパクト化を容易に達成することができる。
加えて、左部光波距離計は、H形鋼の左フランジ越しにウェブと右フランジとの交点を見ることができるようにしたので、この左部光波距離計で右フランジの内側面(左フランジと対向する面)までの距離を測ることができる。右部光波距離計も同様である。
【0058】
請求項2は、信号変換部に、測定開始を人為的に決める測定開始スイッチ手段を付設したことを特徴とし、測定開始スイッチ手段を付設したことにより、手動操作により測定を開始させることができる。信号変換部に自動計測ロジックを組込んでおけば、自動計測が可能であるから、自動計測と手動計測の双方を任意に実行することができ、使い勝手が良くなる。
【0059】
請求項3では、光波距離計及び距離計移動機構を備えた口の字形フレームは、鋸切断機の近傍に配置することを特徴とする。口の字形フレームを鋸切断機の近傍に配置したので、切断のための静止時間中に、同時並行して寸法・形状測定を実施することができ、寸法・形状測定作業に伴なうライン停止をゼロ若しくは最少に止めることができる。
【0060】
請求項4では、信号変換部に寸法・形状情報を表示するディスプレイを接続し、このディスプレイは、口の字形フレームの近傍に配置する機側設置ディスプレイと、口の字形フレームから離れた遠隔地に配置する遠隔地設置ディスプレイとの少なくとも2台で構成することを特徴とする。遠隔地の具体例は、上流側の形鋼圧延機運転室や工程管理室であり、形鋼圧延機運転室に遠隔地設置ディスプレイを設ければ圧延機の運転に必要な情報を待ち時間なしにフィードバックさせることができ、同様に工程管理室に遠隔地設置ディスプレイを設ければ、圧延ラインが良好に運転されているか否かを待ち時間なしにフィードバックさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るH形鋼の熱間寸法・形状測定装置を備えた圧延ラインのレイアウト図
【図2】本発明に係るH形鋼の熱間寸法・形状測定装置の正面図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】本発明で採用した光波距離計の第1原理図
【図6】本発明で採用した光波距離計の第2原理図
【図7】本発明に係る上部光波距離計の作用説明図
【図8】本発明に係る左部光波距離計の作用説明図(その1)
【図9】本発明に係る左部光波距離計の作用説明図(その2)
【図10】本発明に係るH形鋼の熱間寸法・形状測定のシステム構成図
【符号の説明】
20…H形鋼の熱間寸法・形状測定装置、25…口の字形フレーム、26…上枠部、27…下枠部、28…左縦枠部、29…右縦枠部、30…上部距離計移動機構、31…下部距離計移動機構、32…左部距離計移動機構、33…右部距離計移動機構、40…上部光波距離計、41…下部光波距離計、42…左部光波距離計、43…右部光波距離計、45…信号変換部、46…機側設置ディスプレイ、47…遠隔地設置ディスプレイ、48…測定開始スイッチ手段、70…H形鋼、72…左フランジ、74…ウェブ、76…右フランジ、85…口の字形フレームに備えた開口。
Claims (4)
- 検査対象物であるH形鋼を、ウェブが水平となるようにして通過させる開口を備えた口の字形フレームと、H形鋼のフランジやウェブまでの距離を測るために前記フレームの上枠部、下枠部、左右の縦枠部に各々設けた上部・下部・左部・右部光波距離計と、これらの光波距離計を上枠部、下枠部、左右の縦枠部に沿って各々移動させるために前記フレームに設けた上部・下部・左部・右部距離計移動機構と、移動中の光波距離計から受けた距離情報を寸法・形状情報に変換する信号変換部とからなるH形鋼の熱間寸法・形状測定装置において、
前記左部光波距離計は、H形鋼の左フランジ越しにウェブと右フランジとの交点を見ることができるように、水平な軸回りに回転可能に、前記左部距離計移動機構に設けられており、
前記右部光波距離計は、H形鋼の右フランジ越しにウェブと左フランジとの交点を見ることができるように、水平な軸回りに回転可能に、前記右部距離計移動機構に設けられていることを特徴とするH形鋼の熱間寸法・形状測定装置。 - 前記信号変換部に、測定開始を人為的に決める測定開始スイッチ手段を付設したことを特徴とする請求項1記載のH形鋼の熱間寸法・形状測定装置。
- 前記光波距離計及び距離計移動機構を備えた口の字形フレームは、鋸切断機の近傍に配置することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のH形鋼の熱間寸法・形状測定装置。
- 前記信号変換部に寸法・形状情報を表示するディスプレイを接続し、このディスプレイは、口の字形フレームの近傍に配置する機側設置ディスプレイと、口の字形フレームから離れた遠隔地に配置する遠隔地設置ディスプレイとの少なくとも2台で構成することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のH形鋼の熱間寸法・形状測定装置。
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