JP3875189B2 - ハウリング抑制装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願に係る発明は、ハウリングを抑制するためのハウリング抑制装置に関し、特に、適応ノッチフィルタを用いて効果的にハウリングを抑制することのできるハウリング抑制装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
音響装置が設置された拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)においてハウリングが発生する場合があり、このハウリングを適応ノッチフィルタを用いて抑制するための、図5のような構成の装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5の装置では、マイクロホン141の出力信号が適応ノッチフィルタ114に入力される。拡声空間において発生するハウリングは周期性信号として表れるが、適応ノッチフィルタ114は、マイクロホン141の出力信号から周期性信号を検出することができる。
【0004】
適応ノッチフィルタ114はマイクロホンから141の出力信号を入力して、適応アルゴリズムを動作させつつ、適応アリゴリズムにおいて係数を収束させてゆく。係数が収束した時点で適応ノッチフィルタ114が出力する周期性信号の情報は、ハウリング周波数の周波数情報である可能性が極めて高い。
【0005】
適応ノッチフィルタ114は周波数情報をハウリング判定部116に送出する。ハウリング判定部116はこの情報から、この周波数の信号成分が除去されるように、ディップフィルタ115に除去周波数を設定する。これにより、マイクロホン141の出力信号からハウリング周波数の信号成分がディップフィルタ115で除去されてから、スピーカ143で拡声される。よって、ハウリングは抑制される。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−285986号公報(第3頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図5のような装置では、適応ノッチフィルタ114からの周波数情報が一定しない場合がある。
【0008】
ハウリング判定部116は、適応ノッチフィルタ114から一定時間毎に周波数情報を受け取る(サンプリングする)。ハウリング判定部116がある時点でサンプリングした情報に基づいて知ることが出来る周波数と、前回のサンプリングで得た情報に基づく周波数との偏差が一定値以内であり、また、前回のサンプリングで検出した周波数と一定偏差値以内に収まるようなサンプリングが所定回数連続すると、ハウリング判定部116は適応ノッチフィルタ114からの周波数情報がハウリングによるものであると判定する。
【0009】
しかし、拡声空間において複数の周波数でハウリングが発生している場合には、適応ノッチフィルタ114からの周波数情報が一定しないことがある。つまり、前回のサンプリングで検出した周波数と一定偏差値以内に収まるようなサンプリングがなかなか連続しないのである。かかる場合にはハウリング周波数を推定することができず、有効なハウリング抑制ができない。
【0010】
本願発明は、適応ノッチフィルタからの周波数情報を一定させることによりハウリング周波数の推定を容易にして、ハウリングを有効に抑制することができるような、ハウリング抑制装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この出願発明に係るハウリング抑制装置は、信号入力部と、ディップフィルタと、適応ノッチフィルタと、前段フィルタと、制御手段と、切換手段とを備え、該ディップフィルタは、該信号入力部からの信号を入力可能であり、該ディップフィルタは、任意の周波数を除去周波数とするように設定可能であり、該前段フィルタが、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ 又は バンドパスフィルタであり、該切換手段は第1状態と第2状態とに設定可能であり、その設定状態によって該適応ノッチフィルタへ入力される信号を切り換えることができ、該切換手段が該第1状態に設定されたとき、該信号入力部から入力された信号が、該前段フィルタを通過することなく該適応ノッチフィルタに入力され、該切換手段が該第2状態に設定されたとき、該信号入力部から入力された信号が、該前段フィルタを通過してから該適応ノッチフィルタに入力され、該制御手段は、該切換手段を該第1状態に設定したとき、または、該切換手段を該第2状態に設定したときに、該適応ノッチフィルタが出力する周期性信号の情報に基づき所定の推定基準によってハウリング周波数を推定し、この推定したハウリング周波数を該ディップフィルタに除去周波数として設定する(請求項1)。
【0014】
かかる構成によると、拡声空間において複数の周波数でハウリングが発生している場合であっても、切換手段の第2状態において、前段フィルタで一部周波数がカットされた信号が適応ノッチフィルタに供給された状態となる。その結果、適応ノッチフィルタには一のみの、若しくは、複数ではあってもより少数のハウリング周波数の信号成分が供給されることとなり、適応ノッチフィルタからの周波数情報が一定しやすくなった状態で、ハウリング周波数の推定がなされる。そして、この推定されたハウリング周波数を除去周波数としてディップフィルタに設定すると、その周波数でのハウリングが抑制される。そして、切換手段を第1状態にして残りのハウリング周波数を推定することも可能となる。
【0015】
上記ハウリング抑制装置において、該制御手段が該切換手段の設定状態を該第1状態と該第2状態とに交互に切り換えるように構成してもよい(請求項2)
【0016】
かかる構成によれば、適応ノッチフィルタに供給される信号に含まれる周波数成分が切換手段の状態の切り換えによって変化し、その度に新たに発生するハウリング周波数を推定でき、この新たに推定された除去周波数でディップフィルタの除去周波数を更新してゆくこともできる。
【0017】
上記ハウリング抑制装置において、該制御手段が所定時間毎に該切換手段の設定状態を該第1状態と該第2状態とに切り換えるように構成してもよい(請求項3)
【0018】
また上記課題を解決するために、この出願発明に係るもう一つのハウリング抑制装置は、信号入力部と、ディップフィルタと、複数の適応ノッチフィルタと、該複数の適応ノッチフィルタに対応した複数の前段フィルタと、制御手段とを備え、該ディップフィルタは該信号入力部からの信号を入力可能であり、該ディップフィルタは、任意の周波数を除去周波数とするように設定可能であり、該前段フィルタの各々が、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ 又は バンドパスフィルタであり、該前段フィルタの各々は、該信号入力部からの信号を通過させてからその信号を対応する該適応ノッチフィルタに送出し、該制御手段は、各適応ノッチフィルタが出力する周期性信号の情報に基づき所定の推定基準によってハウリング周波数を推定し、この推定したハウリング周波数を該ディップフィルタに除去周波数として設定する(請求項4)
【0019】
かかる構成によれば、拡声空間において複数の周波数においてハウリングが発生している場合であっても、各前段フィルタの作用によって、そのうちの一部周波数範囲のみが対応する適応ノッチフィルタに供給される。各適応ノッチフィルタには一のみの、若しくは、複数ではあってもより少数のハウリング周波数の信号成分が供給されることとなり、各適応ノッチフィルタからの周波数情報が一定しやすくなる。
【0020】
上記ハウリング抑制装置が、該複数の前段フィルタの少なくとも一の前段フィルタにおいて、通過周波数範囲が時間的に変化するように構成されていてもよい(請求項5)
【0021】
かかる構成によれば、前段フィルタの通過周波数範囲が時間的に変化するので、その後段の適応ノッチフィルタに供給される信号に含まれる周波数成分が時間的に変化する。よってある時点では適応ノッチフィルタからの周波数情報が一定しなくても、別の時点では適応ノッチフィルタからの周波数情報が一定する状態が得られることが期待できる。
【0022】
上記ハウリング抑制装置において、推定すべきハウリング周波数の周波数帯域によって該推定基準が異なるように構成してもよい(請求項6)
【0023】
適応ノッチフィルタからの情報に基づいて制御手段がハウリング周波数を推定するために要する時間は周波数帯域によって異なる。周波数帯域によって推定基準を異なるようにして、各帯域毎になるべく短時間でハウリング周波数の推定を行うようにすることができる。
【0024】
上記ハウリング抑制装置において、該ディップフィルタが処理した信号を出力する信号出力部と、信号のレベルを圧縮するコンプレッサと、該信号入力部に入力される信号のレベルを検出する検出手段とを備え、該コンプレッサは該信号入力部と該信号出力部との間に設けられ、該検出手段によって検出された信号のレベルが所定時間連続して所定値を超えたときに、該コンプレッサが圧縮処理を実行するように構成してもよい(請求項7)
【0025】
発生したハウリングが成長する速さは種々であるが、制御手段によるハウリング周波数の推定、ディップフィルタへの除去周波数の設定が速やかにできない場合には、発生したハウリングが成長してしまうことがある。該検出手段によって信号レベルを検出してコンプレッサで入力信号を圧縮するようにすると、かかる事態を回避することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
この出願発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本願発明の一実施形態たるハウリング抑制装置10の概略ブロック図である。このハウリング抑制装置10は、拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)40に設置されたスピーカ43とマイクロホン41とに接続されている(スピーカ43にはアンプ42を介して接続されている)。ハウリング抑制装置10は、マイクロホン41の出力信号を入力して、アンプ42へ出力信号を送出する。これにより、マイクロホン41への音声がスピーカ43から拡声される。ハウリング抑制装置10はこの拡声空間40において生ずるハウリングを抑制するために設けられている。
【0028】
ハウリング抑制装置10は、信号入力部たる入力端子11と、ディップフィルタ15と、信号出力部たる出力端子19と、適応ノッチフィルタ14と、前段フィルタ13と、切換手段たる切換スイッチ12と、制御手段たる制御部16とを備えている。
【0029】
入力端子11には、マイクロホン41からの出力信号が入力される。入力端子11に入力された信号は、ディップフィルタ15と切換スイッチ12とに送出される。
【0030】
ディップフィルタ15は、除去周波数を設定して特定周波数の成分を除去することができる。より詳細に説明すると、ディップフィルタ15には振幅周波数特性上においてディップとなる中心周波数(除去周波数)、ディップの深さ(ゲイン)、ディップ幅を独立して設定することができる。ディップフィルタ15には一の除去周波数のみ設定することももできるし、複数の除去周波数を設定することもできる。このディップフィルタ15はデジタルフィルタとして構成されているので、係数の設定しだいで任意の周波数を除去するように構成できる。ディップフィルタ15には、その係数をいかに設定するかによって、所定数までの(例えば5まで)の除去周波数を設定することができる。ディップフィルタの係数の設定は制御部16によってなされる。
【0031】
切換スイッチ12は、1入力2出力型のスイッチである。切換スイッチ12の可動子12dが第1出力端子12aに設定されると、入力端子12cから入力されたマイクロホン41の出力信号は、前段フィルタ13を通過することなく、適応ノッチフィルタ14に入力される。切換スイッチ12の可動子12dが第2出力端子12bに設定されると、入力端子12cから入力されたマイクロホン41の出力信号は、前段フィルタ13を通過してから、適応ノッチフィルタ14に入力される。可動子12dが第1出力端子12aに設定された状態が、切換スイッチ12の第1状態であり、可動子12dが第2出力端子12bに設定された状態が、切換スイッチ12の第2状態である。
【0032】
前段フィルタ13はハイパスフィルタである。このハイパスフィルターのカットオフ周波数は1kHzである。
【0033】
前段フィルタ13は、切換スイッチ12の第2出力端子12bからの信号を入力し、カットオフ周波数以下の低域の信号成分をカットして出力する。
【0034】
適応ノッチフィルタ14は、入力された信号から周期性信号を検出する機能を有する。いわゆる「適応ノッチフィルタ」とは、雑音、エコー、ハウリング等を統計的な推定を用いて検出する適応フィルタのアプリケーションの一つであり、音声等の単発性信号・持続性広帯域信号に重畳した正弦波などライン・スペクトルを持つ雑音を分離除去するのに有効であることが知られている。この適応ノッチフィルタ14は、入力された信号に含まれる周期性雑音成分(正弦波雑音成分)の周波数情報を出力することができる。
【0035】
制御部16は、適応ノッチフィルタ14が検出した周期性雑音成分の周波数情報を受け取ることができ、また、ディップフィルタ15の係数を設定することにより、ディップフィルタ15に除去周波数を設定することができる。また制御部16は、切換スイッチ12の状態を第1状態または第2状態に設定することができる。さらに制御部16は、記憶手段としてのバッファを備え、また、演算機能を有する。よって、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報に基づき、種々の判断・推定をすることもできる。
【0036】
ディップフィルタ15は、入力端子11に入力された信号を入力する。ディップフィルタに除去周波数が設定されると、入力された信号からその周波数(除去周波数)の信号成分を除去し、出力端子19を介してアンプ42に出力信号を送出する。アンプ42はディップフィルタ15からの信号を入力し、電力増幅してスピーカ43に送出し、スピーカ43はその信号を拡声する。
【0037】
次に、このハウリング抑制装置10の基本的な動作を説明する。
【0038】
拡声空間40にマイクロホン41やスピーカ43が設置された状態で、ハウリング抑制装置10を起動する。起動時、切換スイッチ12は第1状態(可動子12dが第1出力端子12aに設定された状態)に設定されている。また、ディップフィルタ15には何らの除去周波数も設定されておらず、マイクロホン41の出力信号がそのままアンプ42に送出され、スピーカ43から拡声される。また、マイクロホン41の出力信号は、切換スイッチ12を介して適応ノッチフィルタ14にも入力される。適応ノッチフィルタ14は、この入力信号に含まれる周期性雑音成分(正弦波雑音成分)の周波数情報を出力する。制御部16はこの周波数情報を一定時間(時間As)毎に読み込む(サンプリング周期Asでサンプリングする)。
【0039】
そして制御部16はサンプリング毎に次のような判断・処理を行う。つまり、制御部16は、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数と、前回のサンプリングで得た情報に基づく周波数との偏差が一定値(D1)以内であれば、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数を、制御部16の有するバッファに保存する。現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数と、前回のサンプリングで得た情報に基づく周波数との偏差が一定値(D1)以内でなければ、バッファには何らのデータも保存されない。制御部16はこのような判断・処理を、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報をサンプリングする毎に行う。
【0040】
そして、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数をバッファに保存するという処理が、所定サンプリング回数(N1回)連続した場合は、次に、バッファに格納された直近のN1回分の周波数のうちの、M1回目の周波数とM2回目の周波数との偏差を算出する。算出された偏差が所定値(D2)以内であれば、バッファに格納されている直近のN2回分の周波数からその平均値を算出する。なお、N2はN1以下の自然数である。制御部16は、この平均値(直近N2回の平均周波数)をハウリング周波数であると推定し、この周波数を除去周波数としてディップフィルタ15に設定する。
【0041】
ディップフィルタ15に除去周波数が設定されると、拡声空間40においてこの周波数でのハウリングが抑制されるが、一般に、ある周波数でのハウリングが抑制されると他の周波数でのハウリングが発生することが多い。
【0042】
前述したような判断・処理によって制御部16がさらに他のハウリング周波数を推定することができたときは、制御部16はさらにこの周波数を除去周波数してディップフィルタ15に設定する。
【0043】
そして、ハウリング抑制装置10が起動されてから所定時間(例えば1秒間)経過すると、制御部16によって、切換スイッチ12は第2状態(可動子12dが第2出力端子12bに設定された状態)に切り換えられる。この状態(切換スイッチ12が第2状態に設定された状態)では、マイクロホン41の出力信号は、前段フィルタ13を介して適応ノッチフィルタ14に入力される。前段フィルタ13は前述したようにハイパスフィルタであるから、マイクロホン41の出力信号のうちの高域の信号成分のみが適応ノッチフィルタ14に入力される。
【0044】
この状態(切換スイッチ12が第2状態に設定された状態)においても、制御部16は、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報を一定時間(時間As)毎に読み込み(サンプリング周期Asでサンプリングし)、前述したと同様の判断・処理を行う。つまり制御部16は、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数と、前回のサンプリングで得た情報に基づく周波数との偏差が一定値(D1)以内であれば、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数を、制御部16の有するバッファに保存し、一定値(D1)以内でなければバッファには何らのデータも保存しない。そして、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数をバッファに保存するという処理が、所定サンプリング回数(N1回)連続し、バッファに格納されたM1回目の周波数とM2回目の周波数との偏差が所定値(D2)以内であれば、バッファに格納されている直近のN2回分の周波数から平均値を算出し、この平均値をハウリング周波数と推定し、この周波数を除去周波数としてディップフィルタ15に設定する。
【0045】
そして、切換スイッチ12が第2状態に切り換えられてから、所定時間(例えば1秒間)経過すると、制御部16は切換スイッチ12を再び第1状態に切り換え、前述したと同様の判断・処理を行う。以降、切換スイッチ12は所定時間(例えば1秒間)毎に状態の切り換え(第1状態から第2状態への、もしくは、第2状態から第1状態への切り換え)がなされ、制御部16によって前述のような判断・処理が繰り返される。
【0046】
ディップフィルタ15へ設定することのできる除去周波数の数は一定数に(例えば5に)限られている。適応ノッチフィルタ14が次々にハウリング周波数を推定しゆき、推定されたハウリング周波数の総数が5を越えた場合は、ディップフィルタ15に以前設定した除去周波数を解除しつつ、新たな除去周波数を設定してゆくとよい。
【0047】
このとき、以前に設定した除去周波数の内のいずれを解除するかは、種々の方法によって決定することができる。例えば、最も前に設定された除去周波数から解除するようにしてもよいし、所定周波数(例えばハイパスフィルタのカットオフ周波数に一致する1kHz)以下の除去周波数はなるべく解除しないようにしてもよい。
【0048】
特に、所定周波数以下の除去周波数をなるべく解除しないようにすることには、一定の効果がある。つまり、低域周波数で発生するハウリングは、その空間の持つ特性によるものであって、状況によって頻繁に変化するものではないと考えられるからである。低域周波数で発生するハウリングは、例えば、マイクロホン41や話者(マイクロホン41を使用する者)の若干の位置変動には不感である。よって、所定周波数以下の低域の周波数を、ディップフィルタ15の除去周波数として一旦設定したときには、これを更新しないようにする方がよい場合が多い。
【0049】
逆に、ディップフィルタ15に設定した所定周波数を越える除去周波数は、制御部16が新たに推定したハウリング周波数によって更新して行く方がよい。所定周波数を越える高域周波数で発生するハウリングは、状況変化(例えば、マイクロホン41や話者(マイクロホン41を使用する者)の若干の位置変動)によって、突発的に発生することが多いからである。
【0050】
なお、制御部16が新たに推定したハウリング周波数が、すでにディップフィルタ15に設定している除去周波数に近接する場合は、推定したハウリング周波数を新たな除去周波数としてディップフィルタに設定することなく、すでに設定されている除去周波数においてゲインをさらに下げたりディップ幅を広げるようにしてもよい。
【0051】
以上、ハウリング抑制装置10の基本的な動作を説明した。
【0052】
次に、拡声空間40において複数の周波数でのハウリングが発生する場合の、ハウリング抑制装置10の動作を説明する。
【0053】
図1のように拡声空間40にマイクロホン41やスピーカ43が設置された状態で、複数の周波数でのハウリングが発生するものとする。例えば、200Hzと2kHzにおいてハウリングが発生するものとする。
【0054】
この状態でハウリング抑制装置10を起動する。起動時、切換スイッチ12は第1状態に設定されており、ディップフィルタ15には何らの除去周波数も設定されていない。
【0055】
マイクロホンへ41は200Hzと2kHzのハウリング音が入力されて、その信号(マイクロホン41の出力信号)が適応ノッチフィルタ14に入力される。適応ノッチフィルタ14は、この入力信号に含まれる周期性雑音成分(正弦波雑音成分)の周波数情報を出力する。制御部16は、この出力信号を一定時間(時間As)毎に読み込む(サンプリング周期Asでサンプリングする)。前述の説明から理解されるように、制御部16が所定サンプリング回数だけ連続して比較的一定した周波数情報を適応ノッチフィルタ14から読み込んだときは、その周波数情報からハウリング周波数を推定することができる。しかし、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定しないときには、制御部16はハウリング周波数を推定することができない。適応ノッチフィルタ14に入力される周期性雑音が複数の周波数の成分を含むとき、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定しないことがある。今、適応ノッチフィルタ14に入力される周期性雑音が200Hzと2kHzの周波数の成分を含むため、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定しないとする。すると制御部16は、一定した周波数情報を所定サンプリング回数だけ連続して読み込むことができなくなり、ハウリング周波数を推定することができない。
【0056】
しかし、ハウリング抑制装置10が起動されてから所定時間(例えば1秒間)が経過すると、切換スイッチ12は第2状態に切り換えられる。そうすると、前段フィルタ13によってカットオフ周波数(例えば1kHz)以下の周波数成分がカットされて、2kHzの周波数成分のみを周期性雑音成分(正弦波雑音成分)とする信号が適応ノッチフィルタ14に入力される。よって、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定し、制御部16は周波数2kHzをハウリング周波数として推定することができる。制御部16が周波数2kHzをハウリング周波数として推定すると、制御部16はこの周波数2kHzを除去周波数としてディップフィルタ15に設定する。そうすると、拡声空間において2kHzのハウリングが抑制される。
【0057】
切換スイッチ12が第2状態に切り換えられてから所定時間(例えば1秒間)が経過すると、切換スイッチ12は再度第1状態に切り換えられる。拡声空間40において2kHzのハウリング音が抑制されているので、マイクロホン41へ入力されるハウリング音は200Hzのもののみである。そしてその信号(マイクロホン41の出力信号)が適応ノッチフィルタ14に入力される。適応ノッチフィルタ14への入力信号に含まれる周期性雑音成分(正弦波雑音成分)は200Hzの成分のみであるから、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定し、制御部16は周波数200Hzをハウリング周波数として推定することができる。制御部16が周波数200Hzをハウリング周波数として推定すると、制御部16はこの周波数200Hzを除去周波数としてディップフィルタ15に設定する。そうすると、拡声空間40において200Hzのハウリングも抑制される。このように、拡声空間40において当初発生していた200Hzと2kHzのハウリング音が抑制される。
【0058】
以降、切換スイッチ12は、所定時間(例えば1秒間)毎に、制御部16によってその状態を切り換えられ、制御部16は次々に新たに発生するハウリング周波数を推定し、これらハウリングを抑制すべく、ディップフィルタ15の除去周波数を設定・更新してゆく。
【0059】
以上の説明では、拡声空間40において、200Hzと2kHzの2の周波数でハウリングが生ずる場合を説明したが、図1のハウリング抑制装置10は2の周波数でのハウリングにのみ効果を奏するのではなく、拡声空間40において3以上の周波数でハウリングが発生する場合にも効果を奏する。つまり、適応ノッチフィルタ14に入力される信号に含まれる周期性雑音の周波数成分の数が少ないほど、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定化しやすいのであるが、適応ノッチフィルタ14に入力される信号に含まれる周期性雑音の周波数成分の数が2以上であっても、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定化することもある。
【0060】
適応ノッチフィルタ14に入力される信号に含まれる周期性雑音の周波数成分の数が多いほど、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定化しにくくなるので、図1のハウリング抑制装置10では、適応ノッチフィルタ14に入力される信号からこのうちのいくつかを除くことにより、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報を一定させようとしているのである。
【0061】
また、図1のハウリング抑制装置10では、前段フィルタ13としてハイパスフィルタを用いたが、前段フィルタ13は、ハイパスフィルタではなくローパスフィルタであっても良いし、バンドパスフィルタであってもよい。要は、ある周波数範囲の信号成分を除くことによってその周波数範囲に含まれるハウリングの信号成分を除き、残りの周波数範囲におけるハウリング周波数を推定しやすくすればよいのである。
【0062】
また上記のハウリング抑制装置10の制御、判断、推定において用いた数値As,N1,N2,D1,D2,M1 および M2 は、ハウリング抑制装置10が起動される前に予め決めておいた数値であるが、これら数値は、推定しようとするハウリング周波数の属する周波数帯域に応じて異なるように決めることもできる。つまり、周波数帯域によって異なる推定基準を設けるのである。例えば、高域の周波数と低域の周波数とで同じ精度でハウリング周波数を推定しようとすると、一般的には低域周波数におけるハウリングの方が、その周波数推定に多くの時間を要する。よって、ハウリング周波数推定のための推定基準を低域周波数を基準にして決定すると、高域周波数においてはハウリング周波数推定のために必要以上に時間を使うことになる。かかる事態を回避するために、例えば、偏差D1や回数N1の値が周波数帯域によって異なるように設定してもよい。
【0063】
ハウリング抑制装置10は、ある周波数でハウリングが発生してもこのハウリング周波数を推定してディップフィルタ15でこの周波数の信号成分を除去してハウリングを抑制しようとするものであるが、ハウリング周波数をなかなか推定できない場合は発生したハウリングが成長し続ける事態も生じうる。かかる事態を回避するには、入力端子11に入力される信号のレベルを検出する検出手段を設け、さらに、入力端子11と出力端子19との間に信号のレベルを圧縮するコンプレッサを設け、検出手段によって検出された信号レベルが所定時間連続して所定値を超えるか否かを制御部16が判断するようにし、所定時間連続して所定値を超えた場合に制御部16がコンプレッサを起動させて圧縮処理を実行するようにするとよい。図2は、このように構成されたハウリング抑制装置10Bの概略ブロック図である。符号17で示すものが検出手段であり、符号18で示すものがコンプレッサである。このようにすると、ある周波数でハウリングが発生しても、そのハウリングが成長する過程のいずれか適宜の時点にコンプレッサ18が作動し、ハウリングが成長し続けることを防止できる。コンプレッサ18はディップフィルタ15と出力端子19との間に設けることもできるし、入力端子11とディップフィルタ15との間に設けることもできる。
【0064】
以上、図1,図2のハウリング抑制装置について説明した。
【0065】
次に、図3を参照しながら本願発明のもう一つの実施形態を説明する。
【0066】
図3は、本願発明の一実施形態たるハウリング抑制装置20の概略ブロック図である。このハウリング抑制装置20は、拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)40に設置されたスピーカ43とマイクロホン41とに接続されている。ハウリング抑制装置20は、マイクロホン41の出力信号を入力して、アンプ42へ出力信号を送出する。これにより、マイクロホン41への音声がスピーカ43から拡声される。ハウリング抑制装置20はこの拡声空間40において生ずるハウリングを抑制するために設けられている。
【0067】
ハウリング抑制装置20は、信号入力部たる入力端子11と、ディップフィルタ15と、信号出力部たる出力端子19と、2の適応ノッチフィルタ14と、2の前段フィルタ23A,23Bと、制御手段たる制御部16とを備えている。
【0068】
入力端子11には、マイクロホン41の出力信号が入力される。入力端子11に入力された信号は、ディップフィルタ15と各前段フィルタ23A,23Bとに送出される。
【0069】
前段フィルタ23Aはハイパスフィルタである。このハイパスフィルタのカットオフ周波数は1kHzである。前段フィルタ23Aは、入力端子11からの信号を入力し、カットオフ周波数以下の低域の信号成分をカットして出力する。その出力信号(前段フィルタ23Aの出力信号)は後段の適応ノッチフィルタ14に入力される。
【0070】
前段フィルタ23Bはローパスフィルタである。このローパスフィルタのカットオフ周波数は1kHzである。前段フィルタ23Bは、入力端子11からの信号を入力し、カットオフ周波数以上の高域の信号成分をカットして出力する。その出力信号(前段フィルタ23Bの出力信号)は後段の適応ノッチフィルタ14に入力される。
【0071】
ディップフィルタ15および適応ノッチフィルタ14の構成は、図1のハウリング抑制装置10におけるディップフィルタ15、適応ノッチフィルタ14の構成と同一である。
【0072】
制御部16は、各適応ノッチフィルタ14が検出した周期性雑音成分の周波数情報を受け取ることができ、また、ディップフィルタ15の係数を設定することにより、ディップフィルタの除去周波数を設定することができる。制御部16は、記憶手段としてのバッファを備え、また、演算機能を有する。よって、適応ノッチフィルタからの周波数情報に基づき、種々の判断をすることもできる。
【0073】
次に、このハウリング抑制装置20の動作を説明する。
【0074】
拡声空間40にマイクロホン41やスピーカ43が設置された状態で、ハウリング抑制装置20を起動する。起動時、ディップフィルタ15には何らの除去周波数も設定されておらず、マイクロホン41からの出力信号がそのままアンプ42に送出され、スピーカ43から拡声される。また、マイクロホン41の出力信号は、各前段フィルタ23A,23Bを介して各適応ノッチフィルタ14に入力される。各適応ノッチフィルタ14は入力信号に含まれる周期性雑音成分(正弦波雑音成分)の周波数情報を出力する。制御部16は、各適応ノッチフィルタ14からの出力信号を一定時間(時間As)毎に読み込む(サンプリング周期Asでサンプリングする)。
【0075】
制御部16は各適応ノッチフィルタ14からサンプリングした周波数情報に基づいて、図1のハウリング抑制装置における制御部16と同様の判断・処理を行う。つまり、制御部16(図3のハウリング抑制装置20の制御部16)は、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数と、前回のサンプリングで得た情報に基づく周波数との偏差が一定値(D1)以内であれば、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数を、制御部16の有するバッファに保存する。現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数と、前回のサンプリングで得た情報に基づく周波数との偏差が一定値(D1)以内でなければ、バッファには何らのデータも保存されない。制御部16はこのような判断・処理を、適応ノッチフィルタ14からの周波数情報をサンプリングする毎に行う。
【0076】
そして、現時点でサンプリングした周波数情報に基づいて知ることが出来る周波数をバッファに保存するという処理が、所定サンプリング回数(N1回)連続すると、次に、バッファに格納されたM1回目の周波数とM2回目の周波数との偏差を算出する。算出された偏差が所定値(D2)以内であれば、バッファに格納されている直近のN2回分の周波数の平均値をハウリング周波数であると推定し、この周波数を除去周波数としてディップフィルタ15に設定する。
【0077】
制御部16は、前段フィルタ23Aの後段の適応ノッチフィルタ14からの周波数情報に基づいて高域周波数におけるハウリング周波数を推定でき、前段フィルタ23Bの後段の適応ノッチフィルタ14からの周波数情報に基づいて低域周波数におけるハウリング周波数を推定できる。
【0078】
制御部16は、各適応ノッチフィルタ14からの周波数情報に基づいて推定したハウリング周波数を除去周波数としてディップフィルタ15に設定する。これにより、ハウリングが抑制される。またこれら周波数(ディップフィルタ15に除去周波数として設定された周波数)でのハウリングが抑制されて他の周波数での新たなハウリングが発生すると、制御部16はさらにこの新たなハウリング周波数を推定し、この新たな周波数を除去周波数とするようにディップフィルタ15の周波数特性を設定・更新してゆく。
【0079】
ディップフィルタ15の除去周波数の更新において、以前に設定した除去周波数の内のいずれを解除するかは種々の方法によって決定することができ、例えば、最も前に設定された除去周波数から解除するようにしてもよいし、所定周波数(例えば1kHz)以下の除去周波数はなるべく解除しないようにしてもよい。
【0080】
また、制御部16が新たに推定したハウリング周波数が、すでにディップフィルタ15に設定した除去周波数に近い場合は、推定したハウリング周波数を新たな除去周波数としてディップフィルタ15に設定することなく、すでに設定されている除去周波数においてゲインをさらに下げたりディップ幅を広げるようにしてもよい。
【0081】
図3のハウリング抑制装置20では、拡声空間40において複数の周波数(例えば、200Hzと2kHzの周波数)でのハウリングが発生するとしても、各適応ノッチフィルタ14には、単一の周波数成分のみを周期性雑音成分(正弦波雑音成分)とする信号が入力されるので、各適応ノッチフィルタ14が出力する周波数情報は一定化しやすい。つまり、前段フィルタ23Aの後段の適応ノッチフィルタ14には2kHzの周波数成分のみを周期性雑音成分(正弦波雑音成分)とする信号が入力され、前段フィルタ23Bの後段の適応ノッチフィルタ14には200Hzの周波数成分のみを周期性雑音成分(正弦波雑音成分)とする信号が入力される。各適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定し、制御部16は周波数200Hzおよび周波数2kHzをハウリング周波数として推定することができる。制御部16は周波数200Hzと周波数2kHzとを除去周波数としてディップフィルタ15に設定する。そうすると、拡声空間40において200Hzのハウリングと2kHzのハウリングが抑制される。
【0082】
また、推定しようとするハウリング周波数の周波数帯域によって異なる推定基準を設けるようにしてもよい。
【0083】
また、ハウリング成長防止のために、入力端子11に入力される信号のレベルを検出する検出手段を設け、さらに、入力端子11と出力端子19との間に信号のレベルを圧縮するコンプレッサを設け、検出手段によって検出された信号レベルが所定時間連続して所定値を超えるか否かを制御部16が判断するようにし、所定時間連続して所定値を超えた場合に制御部16がコンプレッサを起動させて圧縮処理を実行するようにしてもよい。
【0084】
以上、図3のハウリング抑制装置について説明した。
【0085】
次に、図4を参照しながら本願発明のさらにもう一つの実施形態を説明する。
【0086】
図4は、本願発明の一実施形態たるハウリング抑制装置30の概略ブロック図である。このハウリング抑制装置30は、拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)40に設置されたスピーカ43とマイクロホン41とに接続されている。ハウリング抑制装置30は、マイクロホン41の出力信号を入力して、アンプ42へ出力信号を送出する。これにより、マイクロホン41への音声がスピーカ43から拡声される。ハウリング抑制装置30はこの拡声空間40において生ずるハウリングを抑制するために設けられている。
【0087】
ハウリング抑制装置30は、信号入力部たる入力端子11と、ディップフィルタ15と、信号出力部たる出力端子19と、N台の適応ノッチフィルタ14と、N台の前段フィルタB1,B2,・・・,BNと、制御手段たる制御部16とを備えている。
【0088】
入力端子11には、マイクロホン41の出力信号が入力される。入力端子11に入力された信号は、ディップフィルタ15と各前段フィルタB1,B2,・・・,BNとに送出される。
【0089】
各前段フィルタB1,B2,・・・,BNは、それぞれバンドパスフィルタである。各前段フィルタB1,B2,・・・,BNの通過周波数範囲はそれぞれ異なる。例えば、前段フィルタB1の通過周波数範囲を32Hzを中心とする1オクターブの帯域幅に、前段フィルタB2の通過周波数範囲を65Hzを中心とする1オクターブの帯域幅に、・・・、前段フィルタBNの通過周波数範囲を16kHzを中心とする1オクターブの帯域幅にするというように、各前段フィルタB1,B2,・・・,BNの帯域幅を1オクターブの帯域幅とし、全ての前段フィルタB1,B2,・・・,BNによって通過される総合の周波数帯域によって、可聴周波数範囲の全域がカバーされるようにしてもよい。
【0090】
さらに前段フィルタB1,B2,・・・,BNのうちの全部または一部が、通過させる周波数帯域の中心周波数や帯域幅を時間的に変化させるものであってもよい。中心周波数と帯域幅のいずれかを変化させてもよいし、両方を変化させてもよい。例えば、前段フィルタB2の通過周波数範囲において、中心周波数が65Hzを中心として時間的に昇降し、しかも帯域幅が1オクターブを中心として時間的に広がったり狭まったりするようにしてもよい。かかる前段フィルタの特性の変化は、前段フィルタが他の装置等からの何らの制御をも受けることなく生じさせるものであってもよいし、例えば制御部16からの制御信号を受けて変化が生ずるようなものであってもよい。
【0091】
各前段フィルタB1,B2,・・・,BNの後段には、それぞれの前段フィルタB1,B2,・・・,BNに対応して適応ノッチフィルタ14が接続されている。
【0092】
ディップフィルタ15および適応ノッチフィルタ14の構成は、図1のハウリング抑制装置10における、ディップフィルタ15、適応ノッチフィルタ14の構成と同一である。
【0093】
制御部16は、各適応ノッチフィルタ14が検出した周期性雑音成分の周波数情報を受け取ることができ、また、ディップフィルタ15の係数を設定することにより、ディップフィルタ15に除去周波数を設定することができる。制御部16は、記憶手段としてのバッファを備え、また、演算機能を有する。よって、各適応ノッチフィルタ14からの周波数情報に基づき、種々の判断をすることもできる。
【0094】
図4のハウリング抑制装置30では、拡声空間40において複数の周波数でのハウリングが発生するとしても、各適応ノッチフィルタ14には、より少ない数の周波数成分を周期性雑音成分(正弦波雑音成分)とする信号が入力されるので、各適応ノッチフィルタ14が出力する周波数情報は一定化しやすい。よって、制御部16はハウリング周波数を推定することができる。制御部16は推定したハウリング周波数を除去周波数してディップフィルタ15に設定する。そうすると、拡声空間40においてハウリングが抑制される。
【0095】
先に、前段フィルタB1,B2,・・・,BNのうちの全部または一部が、通過させる周波数範囲の中心周波数や帯域幅を時間的に変化させるものであってもよいことを述べた。図4のハウリング抑制装置30では、マイクロホン41の出力信号を複数の前段フィルタ(バンドパスフィルタ)B1,B2,・・・,BNで複数の帯域に分割し、分割された各帯域に応じて適応ノッチフィルタ14を設けている。これにより、複数の周波数においてハウリングが発生する場合にも、その周波数の推定が可能となるように構成されている。しかし、複数の帯域に分割しただけでは、なおもハウリング周波数を推定できない場合もある。かかる場合に前段フィルタB1,B2,・・・,BNの通過周波数範囲を時間的に変化させることが有効となる場合がある。
【0096】
つまり、マイクロホン41の出力信号を複数の帯域に分割したとしても、分割されたある帯域において複数の周波数でハウリングが生じており、対応する適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定しないという事態も起こりうる。かかる場合にその前段フィルタ(バンドパスフィルタ)B1,B2,・・・,BNの通過周波数範囲が変化すると、ハウリング周波数の一つがその通過周波数範囲外のものとなり、これにより対応する適応ノッチフィルタ14からの周波数情報が一定する場合がある。
【0097】
また、推定しようとするハウリング周波数の周波数帯域によって異なる推定基準を設けるようにしてもよい。
【0098】
また、ハウリング成長防止のために、入力端子11に入力される信号のレベルを検出する検出手段を設け、さらに、入力端子11と出力端子19との間に信号のレベルを圧縮するコンプレッサを設け、検出手段によって検出された信号レベルが所定時間連続して所定値を超えるか否かを制御部16が判断するようにし、所定時間連続して所定値を超えた場合に制御部16がコンプレッサを起動させて入力信号を圧縮するようにしてもよい。
【0099】
以上、図4のハウリング抑制装置30について説明した。
【0100】
以上、図1〜4に基づいて、本願のハウリング抑制装置の実施形態を説明した。上記実施形態では、ディップフィルタ15はデジタルフィルタによって構成されているが、ディップフィルタ15をアナログフィルタによって構成してもよい。また、前段フィルタとしてのローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタも、ディジタルフィルタで構成してもよいし、アナログフィルタで構成してもよい。
【0101】
【発明の効果】
本願発明は、以上説明したような形態で実施され、適応ノッチフィルタからの周波数情報を一定させることによりハウリング周波数の推定を容易にして、ハウリングを有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態たるハウリング抑制装置の概略ブロック図である。
【図2】本願発明の一実施形態たるハウリング抑制装置の概略ブロック図である。
【図3】本願発明の一実施形態たるハウリング抑制装置の概略ブロック図である。
【図4】本願発明の一実施形態たるハウリング抑制装置の概略ブロック図である。
【図5】従来のハウリング抑制装置の概略ブロック図である。
【符号の説明】
10,10B,20,30 ハウリング抑制装置
11 入力端子
12 切換スイッチ
13,23A,23B,B1,B2,・・・,BN 前段フィルタ
14 適応ノッチフィルタ
15 ディップフィルタ
16 制御部
17 検出手段
18 コンプレッサ
19 出力端子
40 拡声空間
41 マイクロホン
42 アンプ
43 スピーカ

Claims (7)

  1. 信号入力部と、ディップフィルタと、適応ノッチフィルタと、前段フィルタと、制御手段と、切換手段とを備え、
    該ディップフィルタは、該信号入力部からの信号を入力可能であり、
    該ディップフィルタは、任意の周波数を除去周波数とするように設定可能であり、
    該前段フィルタが、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ 又は バンドパスフィルタであり、
    該切換手段は第1状態と第2状態とに設定可能であり、その設定状態によって該適応ノッチフィルタへ入力される信号を切り換えることができ、
    該切換手段が該第1状態に設定されたとき、該信号入力部から入力された信号が、該前段フィルタを通過することなく該適応ノッチフィルタに入力され、
    該切換手段が該第2状態に設定されたとき、該信号入力部から入力された信号が、該前段フィルタを通過してから該適応ノッチフィルタに入力され、
    該制御手段は、該切換手段を該第1状態に設定したとき、または、該切換手段を該第2状態に設定したときに、該適応ノッチフィルタが出力する周期性信号の情報に基づき所定の推定基準によってハウリング周波数を推定し、この推定したハウリング周波数を該ディップフィルタに除去周波数として設定する、ハウリング抑制装置。
  2. 該制御手段が該切換手段の設定状態を該第1状態と該第2状態とに交互に切り換える、請求項1記載の、ハウリング抑制装置。
  3. 該制御手段が所定時間毎に該切換手段の設定状態を該第1状態と該第2状態とに切り換える、請求項2記載の、ハウリング抑制装置。
  4. 信号入力部と、ディップフィルタと、複数の適応ノッチフィルタと、該複数の適応ノッチフィルタに対応した複数の前段フィルタと、制御手段とを備え、
    該ディップフィルタは該信号入力部からの信号を入力可能であり、
    該ディップフィルタは、任意の周波数を除去周波数とするように設定可能であり、
    該前段フィルタの各々が、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ 又は バンドパスフィルタであり、
    該前段フィルタの各々は、該信号入力部からの信号を通過させてからその信号を対応する該適応ノッチフィルタに送出し、
    該制御手段は、各適応ノッチフィルタが出力する周期性信号の情報に基づき所定の推定基準によってハウリング周波数を推定し、この推定したハウリング周波数を該ディップフィルタに除去周波数として設定する、ハウリング抑制装置。
  5. 該複数の前段フィルタの少なくとも一の前段フィルタにおいて、通過周波数範囲が時間的に変化する、請求項4記載のハウリング抑制装置。
  6. 推定すべきハウリング周波数の周波数帯域によって該推定基準が異なる、請求項1乃至5のいずれか一の項に記載のハウリング抑制装置。
  7. 該ディップフィルタが処理した信号を出力する信号出力部と、信号のレベルを圧縮するコンプレッサと、該信号入力部に入力される信号のレベルを検出する検出手段とを備え、
    該コンプレッサは該信号入力部と該信号出力部との間に設けられ、
    該検出手段によって検出された信号のレベルが所定時間連続して所定値を超えたときに、
    該コンプレッサが圧縮処理を実行する、請求項1乃至6のいずれか一の項に記載のハウリング抑制装置。
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