JP3872355B2 - ポリイミド系樹脂溶液、その硬化物及びフレキシブルキャリアパッケージの製造方法 - Google Patents

ポリイミド系樹脂溶液、その硬化物及びフレキシブルキャリアパッケージの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド系樹脂溶液及びその硬化物に関するものであり、詳しくは、プリント基板等配線部品の層間絶縁膜や表面保護膜、あるいは半導体パッケージ用ダイボンディング剤、液状封止樹脂、その他電子材料用耐熱接着剤などに利用可能なポリイミド系樹脂溶液組成物及びその硬化物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体パッケージにおける実装技術として、例えば液晶駆動用の半導体接続方法に用いられるTAB(Tape Automated Bonding)接続方式に代表されるように、回路加工された銅張積層板を半導体と接続してエポキシ樹脂により封止する方法が知られている。そして、プリント配線板の絶縁保護膜として、ポリイミド系樹脂ワニスを塗布、硬化させる方法も上記手法の1つとして知られている。このとき用いられる絶縁保護材料に求められる特性としては、電気特性、耐熱性、耐溶剤性、耐湿性あるいは接着性等が挙げられるが、中でも封止樹脂との接着においてはその接着が不十分であると、絶縁不良や回路の断線等の問題が生じるため、重要視される特性のひとつである。しかしながら、一般的に封止樹脂との接着を向上させた場合、絶縁保護材料の他の特性への影響が生じ、これを回避するのが困難であった。
【0003】
例えば、封止樹脂との接着を向上させる方法として、ポリイミドの平均分子量を低下させることで、有機溶剤への溶解性を上げ、封止樹脂との接着性を向上させる手法が挙げられるが、同時に耐溶剤性の低下や耐熱性の低下が避けられない。従って、材料の特性を低下させずに封止樹脂との接着性を獲得する技術が必要であった。
【0004】
ところで、イミダゾール化合物はエポキシ樹脂の硬化促進剤として一般的に知られている。イミダゾール化合物を配合することで、エポキシ樹脂の硬化性が向上し、低温での硬化が可能となる。また、イミダゾール化合物は、酸無水物とエポキシとの付加反応を促進させる効果があることも知られており、酸無水物を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂との反応促進剤として用いられる場合がある。ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂及びイミダゾール化合物からなる組成溶液に関しては特開平6−157874号公報に開示されている。ここでは、保護膜とプリント配線版上の銅との密着性の向上により、スズメッキ液が銅と保護膜の隙間にもぐり込むという問題を解決することを目的としており、封止樹脂との接着性を改良するという目的を有するものではないだけでなく、この組成物はイミダゾール化合物を均一に溶解した通常の溶液であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はプリント基板用の絶縁保護膜において、耐溶剤性、耐熱性、印刷性、電気特性等の諸特性を変えることなく封止樹脂との接着力を向上させることができるポリイミド系樹脂溶液及びその硬化物を提供することを目的とする。また、ポリイミド系樹脂溶液組成物を用いてフレキシブルキャリアパッケージを製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み検討を重ねた結果、ポリイミド系樹脂溶液に用いるイミダゾール化合物に特定のものを使用し、その分散形態を制御することで上記課題が解決し得ることを見出し本発明を解決するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリイミド系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及びイミダゾール化合物(C)を有機溶媒中に溶解、分散してなるポリイミド系樹脂溶液において、融点が180℃以下のイミダゾール化合物(C)がエポキシ樹脂(B)100重量部に対して0.1〜10重量部配合されており、かつ樹脂溶液中にその1/3以上が個体粒子として分散されていることを特徴とするポリイミド系樹脂溶液である。
【0008】
ここで、イミダゾール化合物(C)としては、下記一般式(I)で示される化合物が好ましいものとして例示される。
【化2】
Figure 0003872355
(式中、R1は炭素数1〜20のアルキル基又は芳香族基を示し、R2は水素、メチル基又はベンジル基を示し、R3及びR4は独立に水素又はメチル基を示す)
【0009】
また、ポリイミド系樹脂(A)が、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分を重縮合させてなるイミド部位(a1)とアミック酸部位(a2)とを有するポリイミド系樹脂であること、イミド部位(a1)とアミック酸部位(a2)のモル比が、(a1)/(a2)=30/70〜99/1の範囲であること、又はエポキシ樹脂のエポキシ当量が100〜1000の範囲であり、かつ2官能以上のエポキシ樹脂であることが好ましい。
また、本発明は、前記ポリイミド系樹脂溶液を加熱、乾燥、硬化して得られるポリイミド系樹脂硬化物である。
【0010】
更に、本発明は、フレキシブルキャリアパッケージの製造方法において、
(1)配線回路を有するフレキシブル基板上に請求項1記載のポリイミド系樹脂溶液を塗布する塗布工程、
(2)塗布したポリイミド系樹脂溶液を加熱して乾燥、硬化させる硬化工程、
(3)ポリイミド系樹脂硬化物層を有するフレキシブル基板に半導体素子を配置する配置工程、及び
(4)配置した半導体素子を封止樹脂を用いて封止する封止工程、を有し、かつ封止工程における封止温度(T2)は、イミダゾール化合物の融点(Tm)及び硬化工程における硬化温度(T1)よりも高い温度とし、また、封止工程において封止樹脂とポリイミド系樹脂硬化物の少なくとも一部が接触を伴うように封止を行うことを特徴とするフレキシブルキャリアパッケージの製造方法である。ここで、封止温度(T2)>融点(Tm)>硬化温度(T1)の関係を満たすことが好ましい。
【0011】
本発明のポリイミド系樹脂溶液は、ポリイミド系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及びイミダゾール化合物(C)を有機溶媒中に溶解、分散してなるポリイミド系樹脂溶液である。ポリイミド系樹脂(A)としては、イミド部位、アミック酸部位又はその両者を有する樹脂がある。しかし、イミド部位のみを有する樹脂である場合は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基等が有効量存在する。ポリイミド系樹脂溶液中の樹脂成分としては、ポリイミド系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)が含まれるが、ポリイミド系樹脂(A)が樹脂成分の50重量%以上であることが好ましい。樹脂成分は、有機溶媒中に溶解又は分散していてもよいが、溶解していることが望ましい。イミダゾール化合物(C)は、少なくともその1/3が溶解せず固形分として樹脂溶液中に存在する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用するポリイミド系樹脂とは、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重縮合させてなるポリイミド樹脂や、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重縮合させてなるイミド部位とアミック酸部位とを持つポリイミドアミック酸樹脂や、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重縮合させてなるポリアミック酸樹脂が代表的であるが、硬化後に繰返し単位中にイミド結合を有する樹脂であればよい。
【0013】
ポリイミド系樹脂の原料を構成する芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されるものではないが、例を挙げると、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
また、これらは単独で又は2種以上混合して用いることができる。これらのなかでも特に4,4'-オキシジフタル酸二無水物が、前記ポリイミド系樹脂の、有機溶媒に対する溶解性、耐熱性などに優れているので好適である。
【0015】
ポリイミド系樹脂の原料を構成するジアミン成分としては、公知のものを使用することができる。例えば、後記するシロキサンジアミンを芳香族ジアミンやその他のジアミン成分を使用することができる。
【0016】
本発明のポリイミド系樹脂溶液で使用するポリイミド系樹脂(A)としては、イミド部位(a1)とアミック酸部位(a2)の両者を持つポリイミド系樹脂を用いることが好ましく、この場合には、イミド部位(a1)を形成するジアミン成分には、シロキサンジアミンを、アミック酸部位(a2)を形成するジアミン成分には芳香族ジアミンやその他のジアミン成分を使用することがよい。
そして、イミド部位(a1)とアミック酸部位(a2)の割合又はイミド部位(a1)を構成するジアミンとアミック酸部位(a2)を構成するジアミンのモル比は、(a1)/(a2)=30/70〜99/1、好ましくは50/50〜90/10の範囲内であることがよい。
【0017】
シロキサンジアミンとしては、一般式(II)で示されるジアミンが好ましく挙げられる。
【化3】
Figure 0003872355
(式中、R5及びR6は2価の炭化水素基を、R7〜R10は炭素数1〜6の炭化水素基を、nは平均繰り返し単位1〜30を示す)
ここで、式中R5及びR6は二価の炭化水素基であればよいが、好ましい炭素数は2〜6であり、より好ましくは炭素数3〜5のアルキレン基又はフェニレン基である。更に、R7〜R10は、炭素数1〜6の炭化水素基を示し、メチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基が好ましい。そして、平均繰り返し単位nの好ましい範囲は1〜20、更には1〜12である。平均繰り返し単位nが12以上であると耐薬品性が低くなる、また回路パターンとの密着性が悪くなるので好ましくない。
【0018】
シロキサンジアミンの具体的化合物の例としてはω,ω'-ビス(2-アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、ω,ω'-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、ω,ω'-ビス(4-アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、ω,ω'-ビス(3-アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、ω,ω'-ビス(3-アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサンなどが挙げられる。
【0019】
アミック酸部位(a2)を形成する芳香族ジアミンは、特に限定されるものではないが、例を挙げると、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレン-ジアミン、p-フェニレン-ジアミン、4,4'-ジアミノ-ジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノ-ジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノ-ジフェニルエタン、3,3'-ジアミノ-ジフェニルエタン、4,4'-ジアミノ-ジフェニルメタン、3,3'-ジアミノ-ジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノ-ジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノ-ジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノ-ジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノ-ジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノ-ジフェニルエーテル、3,3-ジアミノ-ジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3'-ジアミノ-ビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノ-ビフェニル、3,3'-ジメトキシ-ベンジジン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-アミノ-シクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノ-ペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノ-ナフタレン、2,6-ジアミノ-ナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノ-トルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレン-ジアミン、p-キシリレン-ジアミン、2,6-ジアミノ-ピリジン、2,5-ジアミノ-ピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0020】
また、エポキシ樹脂に対して反応性官能基を有する芳香族ジアミンを芳香族ジアミンの一部として使用することも有利であり、かかる芳香族ジアミンとしては、2,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、4,4'-(3,3'-ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル、4,4'-(2,2'-ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル、2,2'-ビス(3-アミノ-4-ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4'-(3,3'-ジカルボキシ)ジアミノビフェニル、3,3'-ジカルボキシ-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。
これらのジアミンは単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0021】
本発明で使用するエポキシ樹脂は、ポリイミド系樹脂との混合が可能であれば、特に限定されるものではない。使用されるエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が100〜1000程度である液状又は粉末状のエポキシ樹脂が好ましく、例を挙げると、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4'-ビフェノール、2,2'-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等のフェノール類、あるいは、トリス−(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、又は、テトラブロモビスフェノールA、ブロモフェノールノボラック等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化合物がある。更にこれらは、1種又はそれ以上を混合して用いることができる。エポキシ当量が100未満であると硬化した場合にフレキシブル配線板が反りやすく、1000を超えるとポリイミド系樹脂やポリイミドアミック酸樹脂との反応性が低下する。
【0022】
本発明において、エポキシ樹脂の使用量は、ポリイミド系樹脂100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部である。使用量が多すぎると組成物がゲル化したり、硬化物の膜の弾性率が高くなる。少なすぎると、耐薬品性が悪くなるので上記範囲が好ましい。
【0023】
本発明においては、イミダゾール化合物を必須の添加成分として使用する。使用されるイミダゾール化合物は融点が180℃以下の範囲にあるか、上記一般式(I)で示されるものであることがよい。イミダゾール化合物の融点の好ましい範囲は50〜180℃の範囲である。融点がこの範囲にあることで後記するフレキシブルパッケージの製法に適した樹脂組成物となり、封止樹脂との良好な接着性を示すものとなる。最も好ましいイミダゾール化合物は、一般式(I)で示され、融点が50〜180℃の範囲にあるものである。
【0024】
好ましいイミダゾール化合物を例示すると、2‐メチルイミダゾール、2‐ウンデシルイミダゾール、2‐へプタデシルイミダゾール、2‐フェニルイミダゾール、2‐ドデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、必要に応じてこれらを混合して使用しても良い。
【0025】
イミダゾール化合物の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが必要であり、3〜7重量部であることが好ましい。使用量が多すぎると組成物の粘度上昇が著しく保存安定性が悪くなり、少なすぎると封止樹脂との接着が十分でないので上記範囲が好ましい。
【0026】
本発明において用いられる有機溶媒は特に限定されるものではないが、樹脂成分を均一に溶解可能なものならば、一種類あるいは二種類以上を併用した混合溶媒であっても差し支えない。例えば、フェノール系溶媒、アミド系溶媒(ピロリドン系溶媒、アセトアミド系溶媒など)、オキサン系溶媒(ジオキサン、トリオキサンなど)、ケトン系溶媒(シクロヘキサノンなど)、グライム系溶媒(メチルジグライム、メチルトリグライムなど)などがある。また必要に応じて、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒やヘキサン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒を適宜混合し使用することもできる。
【0027】
本発明において、ポリイミド系樹脂の合成反応に使用される有機溶媒は特に限定されるものではないが、前記の有機極性溶媒を挙げることができ、反応時間の短縮、溶媒散逸の問題により、沸点150℃以上のものがよく、特に200℃以上である有機極性溶媒(例えばメチルトリグライムなど)が最も好ましい。
【0028】
本発明のポリイミド系樹脂溶液において、イミダゾール化合物はその溶液中に固体粒子として分散されていることが必要である。すなわち、イミダゾール化合物は、封止樹脂との接着のための有効量が固体粒子と存在していればよく、添加した量のすべてを固体粒子として存在させる必要はない。このことは、イミダゾール化合物の2/3程度までの量のイミダゾール化合物の溶解を許容するものである。添加量に対して2/3以上の量が溶解してしまうと封止樹脂との接着力は低下する傾向にあるので、1/3以上、特には1/2以上を固体粒子として存在させることが望ましい。
【0029】
本発明のポリイミド系樹脂溶液において、その溶液中にイミダゾール化合物を固体粒子として存在させるには、使用するイミダゾール化合物に対する有機溶媒の種類、使用するポリイミドの構造、溶液中の樹脂成分とイミダゾール化合物や他の添加剤の濃度を適宜調整することで可能となる。本発明においては、添加イミダゾールの1/3以上を固体粒子として存在させるため、イミダゾール固体粒子を一定濃度以上の樹脂溶液へ添加、混合する方法が好ましい。好ましい樹脂濃度は25%以上、更に好ましくは45%以上である。固形分濃度が低いと、イミダゾール固体粒子の溶解量が多く、添加イミダゾールのほとんどが溶解してしまう可能性がある。また、イミダゾール化合物は樹脂中の溶媒量に対して1重量%以上となるように添加することが好ましい。
【0030】
本発明においては、上記各成分の他に、必要に応じて従来より公知の硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、顔料、チクソトロピー性付与剤、消泡剤等を適宜配合してもよい。
なお、ポリイミド系樹脂溶液中の樹脂成分(ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、その他の樹脂及び重合等により樹脂となる成分)の主成分はポリイミド系樹脂であり、樹脂成分中の50重量%以上、好ましくは70重量%以上であることがよい。イミダゾール化合物の配合量はポリイミド系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲が好ましい。
【0031】
本発明のポリイミド系樹脂溶液は、フレキシブルキャリアパッケージの製造に適しており、本発明はその製造方法も包含する。
すなわち、本発明のフレキシブルキャリアパッケージの製造方法は、(1)ポリイミド系樹脂溶液を塗布する工程(塗布工程)、(2)これを加熱により硬化させる工程(硬化工程)、(3)これに半導体素子を配置する工程(配置工程)、及び(4)半導体素子を封止する工程(封止工程)を含み、原則としてこの順序で行われる。ここで、硬化工程での硬化温度(T1)は、後の封止工程における封止温度(T2)よりも低い温度とし、また、封止温度は、イミダゾール化合物の融点(Tm)よりも高い温度であり、更に、封止工程に際しては、封止樹脂とポリイミド系樹脂硬化物の少なくとも一部が接触を伴うように封止を行う。
【0032】
塗布工程で使用されるポリイミド系樹脂溶液は、上記したポリイミド系樹脂溶液である。すなわち上記(A)〜(C)成分を含有し、その樹脂溶液組成物中にがイミダゾール化合物固体粒子として分散しているものである。ここで、イミダゾール化合物の融点は50〜180℃の範囲にあるか、前記一般式(I)で表される特定の構造を有するものである。
【0033】
使用されるイミダゾール化合物は、後の封止工程での封止温度(T2)に応じて、選定することが好ましい。封止温度(T2)は通常150〜180℃の範囲であり、イミダゾール化合物としては、その融点が封止温度(T2)よりも低いものを使用することが望まれる。
【0034】
ポリイミド系樹脂溶液組成物が塗布されるフレキシブル基板は、配線回路が形成されているものを用い、塗布方法は公知の方法を任意に採用することができる。塗布されたポリイミド系樹脂溶液組成物は、任意に予備乾燥され、硬化される。ここで、硬化温度(T1)は後の封止温度(T2)よりも低いことが必要である。この要件を満たさないと、封止樹脂との接着力が小さくなる。硬化温度(T1)はイミダゾール化合物の融点(Tm)よりも低いことが望ましい。好ましい硬化温度の範囲は、110〜130℃の範囲である。
【0035】
配線基板上に硬化したポリイミド系樹脂を形成した後、任意の位置に半導体素子が配置される。半導体装置の配置は、公知の方法で行うことができる。配置された半導体素子は封止樹脂で封止される。封止樹脂は、前記したポリイミド系樹脂より高い温度で硬化される樹脂が好ましい。封止は通常、150〜180℃の範囲で行われ、封止温度(T2)は、イミダゾール化合物の融点(Tm)よりも高い温度とすることで、配線保護膜や絶縁膜を形成するポリイミド形樹脂の硬化物との接着力を良好なものとすることができる。このことから、封止樹脂とポリイミド系樹脂硬化物の少なくとも一部は接触を伴うように封止される。封止樹脂は、エポキシ樹脂を含むものであることが好ましく、必要によりフィラー、その他の樹脂、溶剤、硬化剤等の添加剤を配合することができる。本発明の製造方法によれば、固形物として存在するイミダゾール化合物の一部は、硬化工程では溶融せず、未反応のまま残る。そして、封止工程でこのイミダゾールが溶融し、ポリイミド系樹脂硬化物のエポキシ樹脂又は封止樹脂中のエポキシ樹脂と反応して接着力を高めると想定される。
【0036】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されないことは勿論である。
なお、本実施例に用いた略号は以下の化合物を示す。
PSX:ω,ω'-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(シロキサユニット数n=8)
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
ODPA:3,3',4,4'-オキシジフタル酸二無水物
2PZ:2-フェニルイミダゾール
2MZ:2-メチルイミダゾール
C11Z:2-ウンデシルイミダゾール
C17Z:2-ヘプタデシルイミダゾール
2PHZ:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール
2P4MHZ:2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシルメチルイミダゾール
2MA−OK:2,4-ジアミノ-6-[2'メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-sトリアジンのイソシアヌル酸付加物
【0037】
また、実施例中の各種特性の測定方法、条件を以下に示す。
[封止樹脂との剥離強度測定]
各実施例で得た樹脂溶液を銅張積層板SC−18−50−00WE(新日鐵化学社製)の銅箔面に乾燥後約20μmの厚みとなるよう塗膜し、熱風オーブンにて80℃−15分、120℃−1時間熱処理した。次に、封止樹脂を塗膜樹脂上に流延し、熱風オーブンにて150℃−1時間の熱処理で硬化させた。これを10mm幅に裁断し、引張試験機にて銅張積層板側を引き剥がしたときの180度方向の剥離強度を常温で測定した(引張り速度20mm/分)。
【0038】
[アセトン可溶分測定]
各実施例で得た樹脂溶液をテフロン(R)離形処理アルミ基材(厚み50μm)に塗膜し、熱風オーブンにて80℃−15分、120℃−1時間熱処理を行い膜厚約50μmのフィルムを得た。得られたフィルムを室温にて30分間アセトン中に浸漬させた後の重量減少よりアセトン可溶分を求めた。
[半田耐熱測定]
各実施例で得た樹脂溶液を銅張積層板SC−18−50−00WE(新日鐵化学社製)の銅箔面に乾燥後約20μmの厚みとなるよう塗膜し、熱風オーブンにて80℃−15分、120℃−1時間熱処理した。これを3cm角に裁断し、260℃の半田浴に1分間浸漬させた後の樹脂皮膜の表面状態を目視で確認した。
【0039】
[フレキシブルパッケージ作成評価]
各実施例で得たポリイミド系樹脂溶液を、乾燥後の厚みが10μmとなるようにフレキシブル基板の回路面に回路端子が露出するようスクリーン印刷し、熱風オーブンにて80℃−15分、120℃−1時間熱処理し硬化させた。この回路基板の端子上に重なるように10mm×10mmのシリコンチップを配置し、パルスヒートボンダーにて480℃−1秒の条件で加熱圧着した。次に、この回路基板上のシリコンチップにフェノールノボラック型液状エポキシ系の封止樹脂の塗膜又は充填層を形成させるが、このときシリコンチップ全体が被覆されると同時に当該加熱硬化物の一部が被覆されるように封止樹脂を配置する。これを熱風オーブンにて150℃−1時間熱処理し、フレキシブルパッケージを得た。得られたパッケージを折りたたんだ時の、封止端部の剥がれの有無を確認した。
【0040】
合成例1:
撹拌器、窒素導入管を備えたディーンスターク型の反応器に、ODPA62.11g(0.2002モル)とトリグライム120gを仕込み、窒素雰囲気下において、PSX120g(0.1567モル)を滴下ロートを用いて添加し、室温にて約2時間撹拌した。続いて、この反応溶液を窒素雰囲気下において190℃に加熱して、縮合水を除去しながら15時間加熱攪拌した。次いで、この反応溶液を室温まで冷却し、BAPP17.89g(0.0436モル)及びトリグライム120gを加え、この反応溶液を窒素雰囲気下室温にて約2時間撹拌し、固形分濃度45重量部のシロキサンポリイミドアミック酸共重合樹脂溶液を得た。
【0041】
実施例1
合成例1で得たポリイミドアミック酸共重合樹脂溶液100gに多官能エポキシEPPN−502H13.5g(30重量部)及び2PZ0.9g(2重量部)を添加し、十分攪拌して分散させて樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液のイミダゾール固体粒子量を確認するため、開口径10μmのSUSメッシュによるろ過を行ったところ、メッシュを通過しなかったイミダゾール固体粒子の重量は0.5gであった。すなわち溶解せずに固体粒子として存在するイミダゾール化合物の残存量は56%であった。
【0042】
実施例2〜4
使用するイミダゾール化合物の種類を変えたこと以外は実施例1と同様に行って樹脂溶液を得た。
実施例1と同様に樹脂溶液中のイミダゾール化合物の固体粒子量を確認したところ、実施例2では56%、実施例3では67%、実施例4では78%であった。
【0043】
比較例1
合成例1で得たポリイミドアミック酸共重合樹脂溶液100gに多官能エポキシEPPN−502H13.5g(30重量部)を添加しイミダゾール化合物は添加せず、十分攪拌して分散させ樹脂溶液を得た。
比較例2〜4
使用するイミダゾール化合物の種類を変えたこと以外は実施例1と同様に行っ行って樹脂溶液を得た。
【0044】
実施例1〜4及び比較例1〜4のIC封止樹脂との剥離強度、アセトン可溶分、半田耐熱性及びフレキシブルパッケージ作成評価の結果を表1に示す。なお、半田耐熱性は、いずれの実施例及び比較例において、変化なしの結果であった。
【0045】
【表1】
Figure 0003872355
【0046】
【発明の効果】
本発明のポリイミド系樹脂溶液物は、高い耐溶剤性ならびに耐湿信頼性を保持しつつ封止樹脂との接着性を向上させる特徴を有する。従って、本発明の樹脂溶液は、硬化後の耐溶剤性、耐湿信頼性等の高い被膜耐性を有しながら、特に封止樹脂との接着性に関して優れた特性を得ることができる点で、プリント配線板等の絶縁膜や表面保護膜等の用途に用いることができ、これらの中でも、特に半導体パッケージにおける絶縁保護材料に好適である。

Claims (8)

  1. ポリイミド系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及びイミダゾール化合物(C)を有機溶媒中に溶解、分散してなるポリイミド系樹脂溶液において、融点が180℃以下のイミダゾール化合物(C)がエポキシ樹脂(B)100重量部に対して0.1〜10重量部配合されており、かつ樹脂溶液中にその1/3以上が個体粒子として分散されていることを特徴とするポリイミド系樹脂溶液。
  2. ポリイミド系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び下記一般式(I)で示されるイミダゾール化合物(C)を有機溶媒中に溶解、分散してなるポリイミド系樹脂溶液において、イミダゾール化合物(C)がエポキシ樹脂(B)100重量部に対して0.1〜10重量部配合されており、かつ樹脂溶液中にその1/3以上が個体粒子として分散されていることを特徴とするポリイミド系樹脂溶液。
    Figure 0003872355
    (式中、R1は炭素数1〜20のアルキル基又は芳香族基を示し、R2は水素、メチル基又はベンジル基を示し、R3及びR4は独立に水素又はメチル基を示す)
  3. ポリイミド系樹脂(A)が、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分を重縮合させてなるイミド部位(a1)とアミック酸部位(a2)とを有するポリイミド系樹脂である請求項1又は2記載のポリイミド系樹脂溶液。
  4. イミド部位(a1)とアミック酸部位(a2)のモル比が、(a1)/(a2)=30/70〜99/1の範囲である請求項3記載のポリイミド系樹脂溶液。
  5. エポキシ樹脂のエポキシ当量が100〜1000の範囲であり、かつ2官能以上のエポキシ樹脂である請求項1〜4いずれか記載のポリイミド系樹脂溶液。
  6. 請求項1〜5いずれか記載のポリイミド系樹脂溶液を加熱、乾燥、硬化して得られるポリイミド系樹脂硬化物。
  7. フレキシブルキャリアパッケージの製造方法において、
    (1)配線回路を有するフレキシブル基板上に請求項1記載のポリイミド系樹脂溶液を塗布する塗布工程、
    (2)塗布したポリイミド系樹脂溶液を加熱して乾燥、硬化させる硬化工程、
    (3)ポリイミド系樹脂硬化物層を有するフレキシブル基板に半導体素子を配置する配置工程、及び
    (4)配置した半導体素子を封止樹脂を用いて封止する封止工程、
    を有し、かつ封止工程における封止温度(T2)は、イミダゾール化合物の融点(Tm)及び硬化工程における硬化温度(T1)よりも高い温度とし、また、封止工程において封止樹脂とポリイミド系樹脂硬化物の少なくとも一部が接触を伴うように封止を行うことを特徴とするフレキシブルキャリアパッケージの製造方法。
  8. イミダゾール化合物の融点TmがT1<Tm<T2の関係にある請求項7記載のフレキシブルキャリアパッケージの製造方法。
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