JP3872323B2 - Co−Ni−Ga系ホイスラー型磁性形状記憶合金およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外的磁気エネルギー付与に伴う磁気誘起マルテンサイト相変態を起こし、巨大な磁気歪みを発現できるCo−Ni−Ga系ホイスラー型磁性形状記憶合金および該合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械構造物に組み込まれている部材として、移動(歪み)と力(応力)を発生できる機能性材料は、固体アクチュエータと呼ばれ、その材料としては、圧電材料、磁歪材料、形状記憶材料、電気粘性流体等があり、アクチュエータ機能発現には、いずれの場合も結晶構造の相変態現象と、その際の物理化学的諸量(パラメータ)と機械力学的なエネルギー変換作用がかかわっている。
【0003】
磁歪材料としては、Ni,Co等の単体金属、Fe−Al合金、フェライトが従来用いられてきたが、1980年代に入り、超磁歪材料と称され、磁歪定数が従来のものより桁違いに大きい希土類合金が出現した。この希土類合金としてはTb−Fe,Te−Ni−Fe、Te−Co−Fe,Dy−Fe,Pr−Co等各種の合金が知られており、代表的なTb0.27〜0.30Dy0.7〜0.73Fe1.9〜2合金では飽和磁歪量は1500〜2000ppmを示す。
【0004】
これまでの本発明者らの研究成果(松本、古屋、増本:日本金属学会報第32巻第7号、505〜507頁)から、形状記憶効果は、材料の結晶異方性に強く影響されており、液体急冷凝固法により微細柱状結晶化させたTiNiCu系形状記憶合金で、大きな変態歪みが得られることもわかっている。
【0005】
形状記憶合金では、数%(5〜8%)にも及ぶ大きな変形(歪み量)が得られるが、これら形状記憶効果は、応力下での熱弾性型マルテンサイト相変態に伴う原子集団(剪断型双結晶)の連携的再配列運動で発生する。しかしながら、温度変化による形状記憶現象を発現させる場合は、熱的な加熱と冷却の制御が必要になる。その場合、特に、試料からの熱放散で律速される冷却時の遅い応答性が問題になり、薄膜化させても、5〜10kHz程度が最大で、繰り返し作動の場合は、これが欠点となって実用化への障害となってきている。
【0006】
上記問題に対して、最近、形状記憶相変態現象を熱ではなく、磁気的に制御して大きな磁歪と高速応答性を得ようとする試みがなされている。米国、ロシア、北欧諸国等で磁気的機能を兼ね備えている形状記憶合金の探索が始まってきた。これは、外的磁気エネルギー付与で形状記憶効果の現象を起こす原因となっているマルテンサイト変態(双晶変形)を誘起、移動、さらには再配列させようとする試みである。その磁歪発現機構(メカニズム)を、従来の磁区(磁気ドメイン)移動とその内部磁気モーメント回転により発生する強磁性体での磁歪発生機構と比較して模式図として、図1に示す。
【0007】
Ni2MnGaは、磁場や電場で結晶状態が変化し、作動時間を高速化できる形状記憶合金として1997年に発表されて注目されている(「工業材料」1997年11月号、108〜111頁、特開平10-259438号公報、特表平11-509368号公報)。Ni2MnGa合金は単結晶で約6%(60000ppm)の巨大磁歪が発現することが報告されているが、材料作製などのコストが高く実用化するには難しい。
【0008】
また、従来、ホイスラー型合金の強磁性薄膜や薄板はほとんど得られていない。規則格子を作るためには、溶解後、規則−不規則相転移温度直下の高温(数100℃)で十分に長時間アニール処理を行う必要がある。アニール処理をしなければアモルファスとなってしまい強磁性を喪失してしまい、アニール処理をした場合には大きな結晶粒が成長しやすく、材料が大きな脆性をもってしまう。そのため、Ni2MnGaをはじめホイスラー型合金を形状記憶材料に利用しやすい薄板(薄帯)に加工するのは極めて困難であった。
【0009】
故に、多結晶体での巨大磁歪は発現はしておらず、その一方で規則化熱処理を行えば磁化は向上するが、大きな脆性を持ちやすくなる。この大きな障害を抱えながらも、通常の生活環境温度でコスト的にも容易に薄板(薄帯)化できる加工技術の開発、そして構造的に単結晶に近くて脆性の問題をクリアできるホイスラー型磁性形状記憶合金の開発という2つの難しい要求を両立させるための探求が長く続けられてきた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
形状記憶相変態現象の磁気的制御が可能になれば、外的磁場付与により、通常の磁区回転による磁歪発現メカニズムよりも1オーダ以上大きな歪みを発現でき、かつ、加熱法よりもずっと早い応答性問題を克服できることになる。このような磁気応答巨大磁歪型形状記憶合金を開発することで、形状記憶合金系センサ、アクチュエータの新分野を拓くことができ、多機能インテリジェント材料として広い用途が期待されている。
【0011】
【問題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決できる大磁歪現象を呈する合金の開発研究を鋭意進めたところ、Co−Ni−Ga系組成によって形状記憶特性および磁歪特性に優れ、Ni2MnGa合金に比べてはるかに延性に優れたホイスラー型合金が得られることを発見した。
【0012】
すなわち、本発明は、溶湯を電磁浮遊溶解急冷凝固させることにより製造された40〜300ミクロンの厚さの薄帯または直径30〜200ミクロンの細線であり、急冷凝固させたままでホイスラー型規則格子が形成され、急冷凝固させたままで平均結晶粒径が10μm以下の柱状結晶粒の集合体からなる金属組織を有し 原子組成比がCo2Ni1+xGa1−x(x=−0.2〜+0.2)で示され、熱処理なしで強磁性を示し、磁場によりマルテンサイト双晶相変態が誘起され、該相変態に伴う磁歪が、その材料での飽和磁場強さまでで100με(ストレイン)以上であることを特徴とするCo−Ni−Ga系ホイスラー型磁性形状記憶合金である。
【0013】
また、本発明は、上記の磁性形状記憶合金からなることを特徴とする磁歪材料である。
【0014】
また、本発明は、原子組成比がCo 50 Ni 25 Ga 25 であり、曲げ延性試験において180°の曲げ角度でも破断しない延性を有する薄帯からなることを特徴とする上記の磁歪材料である。
【0015】
さらに、本発明は、金属の溶湯を急冷用ロールに連続的に供給して電磁浮遊溶解急冷凝固させることにより薄帯または細線を製造する方法において、合金原料をロールの上方に設けた原料溶解用の第一の電磁誘導コイルを用いて浮遊溶解させるとともに、溶湯溜りから滴下する溶湯流を原料溶解用の電磁誘導コイルの下部に位置する第二の電磁誘導コイルにより絞り込んで細い定常流とし、溶湯吹き出しノズルを使用しないで急冷凝固用ロールに連続的に供給することを特徴とする上記のCo−Ni−Ga系ホイスラー型磁性形状記憶合金を製造する方法である。また、本発明は、上記の方法で得られた薄帯または細線を焼鈍することを特徴とする上記のCo−Ni−Ga系ホイスラー型磁性形状記憶合金を製造する方法である。
【0016】
本発明のホイスラー型磁性形状記憶合金は、急冷凝固されたままでホイスラー型規則格子が形成されることを特徴とし、平均結晶粒径が10μm以下の柱状結晶粒の集合体からなる金属組織を有する。このホイスラー型磁性形状記憶合金は、磁気誘起型相変態(正方晶から立方晶)に伴う磁歪が飽和磁場レベルで100με以上である。
【0017】
また、本発明において、上記急冷凝固の方法として、本発明者らが先に発明した電磁浮遊溶解急冷凝固法(特開平11-90584号公報)を適用することができる。この方法は、合金原料をロールの上方に設けた原料溶解用の第一の電磁誘導コイルを用いて浮遊溶解させるとともに、溶湯溜りから滴下する溶湯流を原料溶解用の電磁誘導コイルの下部に位置する第二の電磁誘導コイルにより絞り込んで細い定常流とし、溶湯吹き出しノズルを使用しないで急冷用ロールに連続的に供給する方法である。
【0018】
この際、図3に、「急冷結晶方位−組織制御合金」として模式的に示すように、急冷凝固により製造した薄板の厚さ方向に長く伸びてそろった、微細単結晶粒の集合体からなる金属組織で、大きな結晶方向性(異方性)を有する柱状結晶を形成するように溶湯冷却速度を選択することが望ましい。一般的には、急冷凝固結晶粒が約10μm以下になるように微細化して、材料基地の強度向上も行うことが有効である。
【0019】
また、上記の方法で得られた急冷凝固材は、熱処理なしで強磁性を示し、巨大磁歪を発現する磁性形状記憶合金であり、同じ強磁性ホイスラー型合金であるNi2MnGa合金が強磁性の機能を発現するために熱処理が不可欠で、そのため、脆くなる問題を克服している。
【0020】
また、上記の方法で得られた急冷凝固材を短時間焼鈍することによって、急冷時に導入されたミクロ的な内部歪みを除去し、ある程度の弱い再結晶過程を起こさせて、非平衡不安定界面相を減らし、かつ結晶異方性(配向性)を強めさせることにより、さらに磁歪特性のみならず形状記憶特性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
外部磁場エネルギー−付与により、ある種の強磁性形状記憶合金では、その磁気エネルギーにより、マルテンサイト双晶(バリアント)界面が外部磁場方向に移動し、再整列することが起き得る。このような場合は、大きな磁気誘起型の相変態に伴う大歪が発現でき、特に、その材料での結晶磁気異方性エネルギー(Uk)が、双晶界面移動エネルギー(Et)よりも同等か、もしくは大きい場合にこのような現象が起こりえることになる。
【0022】
Uk(結晶磁気異方性エネルギー)>Et(双晶界面移動再配列エネルギー)+W(材料から外部へなす仕事量)
【0023】
さらに、磁気異方性エネルギーは、ある特定の結晶の方位に沿った磁化方向で強められるので、その強磁性材料でのある特定方向への結晶方位制御も、磁性形状記憶合金での材料設計には重要になる。
【0024】
普通、ホイスラー型合金はA2BC(原子数比A:B:C=2:1:1)の組成比で表され、代表的なものとしてCu2AlMnが知られているが、強磁性形状記憶合金としてNi2MnGaが知られている。これまでの報告によると、上記のNi2MnGaホイスラー−合金は電子濃度比(Electrons/Atoms )が7.5〜8.0付近に存在している。しかし、他のCo2NiGa系およびNi2CoGa系合金の電子濃度比も同じような7.3〜8.2に存在し、そのマルテンサイト開始変態温度と電子濃度比は図2に示すように、Ni2MnGaと同じ直線関係上にあることが分かった。そこで、本発明者は、Co2NiGa系の延性向上にも着目して、その好ましい組成範囲を見いだした。
【0025】
本発明の合金は、原子組成比がCo2Ni1+xGa1−x(x=−0.2〜+0.2)で示される。ホイスラー型合金はA2BCで表される金属間化合物であるので構成元素の原子組成比は整数値をとり、化学量論組成である。しかし、完全な整数比をとらなくても結晶構造などの相を特徴づける物性がほぼ同一になっている場合があり、本発明の合金ではx=−0.2〜+0.2の範囲であれば同一の相と見なしうる。
【0026】
本発明の合金の薄帯は、後述するように曲げ延性試験において優れた曲げ延性を示し、特に原子組成比がCo2NiGaの合金では180°の曲げ角度でも破断しない。よって、Ni2MnGa合金に存在する脆性の問題を解消できる。
【0027】
本発明の方法において使用する「電磁浮遊溶解急冷凝固法」の方法を、図3の模式図を用いて説明する。単ロールの急冷凝固用の高速回転ロールの上方に配置した高周波電磁コイルの上方より連続的に供給されるランダム方位の多結晶帯である合金インゴットを、該高周波電磁コイル内で電磁浮遊溶解させて、そこに浮遊溶解した溶湯溜りを作る。該電磁コイルは、らせん状に巻かれている。電磁誘導コイルからは原料を定常的に供給できるとともに、液の流動状態が時間によって変化しない流れとする。
【0028】
電磁コイルに電流を流し、合金インゴットを上方より電磁コイル内に供給すると、電磁コイルに流れる電流が作るローレンツ力F(磁束方向B)により、電磁コイルの内側の金属原料に上方への電磁浮遊力Wが作用し、かつ高周波電磁誘導加熱(うず電流)効果により、合金インゴットは加熱溶解されたままで電磁コイルの中央部に浮遊した溶湯溜りとして保持され、さらに、うず電流により撹拌されて均質・高純度化される。
【0029】
合金インゴットの溶解量を次第に増量させると電磁浮遊力Wより浮遊した溶湯溜りの重さが勝り、また、溶湯自身の表面張力や粘性との関連性で溶湯は、電磁コイルの下方に滴下していくが、滴下する溶湯は電磁コイルの作用により細かく絞り込まれ、長い定常流として回転急冷ロールの所定箇所に流下する。急冷凝固された薄帯または細線は横方向に進行する。
【0030】
流下した溶湯は急冷用回転ロール上で急冷凝固させて組織制御を行ない、材料の高性能、高機能化を計ることができる。図3の右側の模式図は、ランダム方位の多結晶である合金インゴットが急冷凝固により異方性の組織制御合金となる様子を示している。図3のHは、磁場、熱量、Lは元の長さ、ΔLは、変体の伸び、ひずみ(磁歪、形状記憶変化)を示している。この方法によれば40〜300ミクロン厚さの薄帯や直径30〜200ミクロン程度の細線を製造できる。
【0031】
【実施例】
以下に本発明の実施例および比較例につき説明する。
〈試料の作成〉
高純度のコバルト、ニッケルおよびガリウムを所定の合金濃度の割合で混合し、(1)Co50Ni25Ga25,(2)Co50Ni22.5Ga27.5,(3)Co50Ni21.25Ga28.75,(4)Co50Ni20.86Ga29.14の4つの合金のボタン状インゴットを作成した。また、インゴットの一部を切り出し、縦横約7mm、厚さ1mmの試料を作成しこれをバルク試料とした。さらに、合金インゴット6gをアルゴン雰囲気中で、電磁浮遊溶解急冷凝固法により、単ロールを用いて、凝固速度(ロール速度31.4m/s)で、厚さ60〜90μm、幅5mmの薄帯を作成した。
【0032】
〈結晶構造解析〉
バルク試料および薄帯試料の結晶構造は、プレート状のままCukα 1線を用いてX線回折を行い、ホイスラー型合金であることが確認された。得られたX線回折のデータを図4に示す。図4から、2θ=43°に現れる{220}ピークが2本に分離していることから、ホイスラー型正方晶であり、マルテンサイト相が存在することが確認される。さらに、薄帯における{200}ピークの分離がバルク試料より著しいことから急冷凝固法がマルテンサイト相形成に有効に作用することがわかる。
【0033】
〈曲げ延性試験〉
NiMnGa合金において問題となっている試料の脆性について調べるために上記の急冷凝固法により作成された4つの薄帯試料において曲げ延性試験を行った。試験の方法は図5に示されているように、試料を0°〜180°まで曲げていき試料が破断するかどうかを調べた。急冷凝固薄帯試料の曲げ延性試験結果を表1に示す。試料はGaの含有量が増えると低角で破断するが、NiMnGa試料に存在する脆性の問題は、全く解消されている。
【0034】
【表】
【0035】
〈磁化測定〉
各試料の磁気特性は振動試料型磁力計(VSM)を用い最大印加磁場(Hmax)=5kOeとし、磁化−印加磁場曲線(M-Hループ)を測定することにより行われた。得られたM−Hループを図6に示す。図6は、Co50Ni21.25ga28.75のバルク試料と急冷薄帯試料のθ=0°と90°方向別のM−Hループである。ここでθは、図8(b)に示すように印加磁場方向と薄帯平面との間の角度を表す。両試料のθ=0°方向におけるM−Hループは5kOeで飽和し、約45emu/gの磁化を持ち、強磁性体であることがわかる。
【0036】
さらに、図6の測定より求めたバルク試料と急冷薄帯試料に対する方向別の保磁力Hcの値を図7に示す。バルク試料の保磁力は方向に依らず等方的で、ランダム方位結晶材料であるのに対し、急冷試料の保磁力はθ=70°〜80°で約1400Oeもの保磁力を示し、この方向に極めて強い結晶異方性をもっていることを示している。この現象は他の4種類の合金薄帯でも現れた。
【0037】
〈磁歪測定〉
磁歪の測定は、まず、大気中、室温(293K)で8kOeまでの磁場中で試料表面に貼付した歪ゲージを用いて行なった。測定中、試料はアクリルの棒状ホルダーに固定され、磁場中心にくるように上部架台より吊下げられた。また急冷試料は試料作製時の長手方向(RD方向)を回転軸として固定し、Bulk試料は平面内の1方向を回転軸として固定し、それぞれ試料面に対し垂直な方向(厚さ方向)に印加された時の測定方向をθ=90°と定義している。
【0038】
磁場発生装置はJOEL(株)製を用いて行なった。使用条件は、磁極間隔30mmで使用し、60V−30Aで8kOeの磁場を得る。供給電圧は、定電圧装置を用い、電流は手動により設定した値を供給する。図8 (b)に印加磁場の方向θを示す。図8(a−1)と(a−2)はそれぞれCo50Ni21.25Ga28.75のBulkk試料および急冷薄帯試料における磁歪の方向依存性を示すグラフである。
【0039】
図8 (a-1)のBulk試料(等方的でランダム方位結晶材料)の磁歪はθ=0°方向で25ppmと小さいのに比べて、図8 (a-2)の急冷薄帯試料の磁歪は、θ=80°で最大磁歪90ppmが出現し、強い結晶異方性があることがわかる。この結果は、図7に示す保磁力の方向依存性とほぼ一致し、急冷凝固法により生じた強い結晶異方性によりマルテンサイト双晶界面が一方向に移動しやすいことを示す。
【0040】
図9はM−Hループの測定よりもとめられた磁化の強さと磁歪の関係を示す。同じ磁化の強さに対する磁歪量は、バルク試料に比べ急冷薄帯が5〜10倍以上の大きな磁歪現象を誘起できる。
【0041】
〈磁歪の温度依存性〉
形状記憶(回復)効果を発現するCoGa系合金でのマルテンサイト双晶の発生・移動・消滅を伴う相変態温度を挟む各温度での磁歪測定を行なうために、熱電対を歪ゲージ貼り付け部の近傍に固定し、温度一定制御下での磁歪を測定した。試料の温度制御はジュワー瓶の中の液体窒素と銅製の試料台に巻かれたヒータ電流を調節することにより行われた。図10における磁場の印加方向は、室温で大きな磁歪の現れたθ=50°に固定された。
【0042】
図10は3種類の急冷薄帯の磁歪の温度依存性を示す。この図は、350K付近でピークを示し、磁歪は大きくなる。さらに、約150K以下の温度で−100ppmを遥かに越える大きな磁歪を示し、8kOeの印加磁場でも、まだ飽和しない。また150Kの磁歪量を比較するとGa量の減少に比例して増加し、150Kよりも低温領域では、磁場によりマルテンサイト双晶界面の移動が活発化する相変態が存在している。故に、140K以下の温度で8kOe以上の印加磁場の条件下では、さらに大きい巨大磁歪が得られる可能性がある。
【0043】
さらに、Gaの含有量が減少すると共に、磁歪のピークが現れる温度が上昇する傾向がみられる。これより、現段階では140K以下の低温で磁歪のピークが現れているが、Gaの含有量を調節することにより室温近傍で巨大磁歪を発生させることが可能となる。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、NiGa系やCoGa系の形状記憶合金の中で、従来からの加熱で形状回復を起こす熱弾性型と同様に、外部磁気エネルギーにより磁気誘起マルテンサイト双晶の発生やその界面の移動により、大きな磁歪現象を起こし得るホイスラー型合金である。
【0045】これは、従来の磁歪材料〔Ni、希土類タフェノールD等〕での磁化過程終盤期での磁区回転機構とは異なるメカニズムで磁場中変形が誘起されるわけで、理論的には強磁場中では感熱型形状記憶合金のように数%の回復ひずみも予測されるが、現段階でも、ここでのホイスラー型合金でランダム方位結晶材料よりも6〜10倍程度の大幅な磁歪量増大が発見された。
【0046】
これにより、感温型〔形状記憶合金系〕センサ・アクチュエータのネックとなっていた、遅い応答性(せいぜい5Hz)よりもずっと早く、高速(〜20kHz)で応答できる巨大磁歪アクチュエータが実現できることになり、高性能磁気センサや非接触型磁気アクチュエータ等のホイスラー型磁性記憶合金という新素材を提供するものである。大変形磁歪材料としての、宇宙構造物位置制御、エンジンバルブ制御、精度位置決めセンサ、微小機械部品制御、生体内非接触マイクロマシン、高周波弾性波振動子、ソナーなど非破壊検査などへの応用材料として著しい技術革新をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合金の磁歪発現メカニズムの模式図である。
【図2】本発明の合金の電子濃度比に対するマルテンサイト変態開始温度の変化を示すグラフである。
【図3】本発明の合金の製造方法に用いられる電磁浮遊溶解急冷凝固法の模式図である。
【図4】実施例により得られた急冷凝固薄帯のX線回折スペクトルである。
【図5】実施例により得られた急冷凝固薄帯の曲げ延性試験概略図である。
【図6】実施例により得られた急冷薄帯と比較例のバルク試料との磁気曲線方向依存を示すグラフである。
【図7】実施例により得られた急冷薄帯と比較例のバルク試料との保磁力の方向依存性を示すグラフである。
【図8】実施例により得られた急冷薄帯と比較例のバルク試料とのの方向依存性を示すグラフである。
【図9】実施例により得られた急冷薄帯と比較例のバルク試料との磁歪の磁化依存を示すグラフである。
【図10】実施例により得られた急冷薄帯の磁歪の温度依存性を示すグラフである。
Claims (5)
- 溶湯を電磁浮遊溶解急冷凝固させることにより製造された40〜300ミクロンの厚さの薄帯または直径30〜200ミクロンの細線であり、急冷凝固させたままでホイスラー型規則格子が形成され、急冷凝固させたままで平均結晶粒径が10μm以下の柱状結晶粒の集合体からなる金属組織を有し 原子組成比がCo2Ni1+xGa1−x(x=−0.2〜+0.2)で示され、熱処理なしで強磁性を示し、磁場によりマルテンサイト双晶相変態が誘起され、前記双晶相変態に伴う磁歪が、その材料での飽和磁場強さまでで100με(ストレイン)以上であることを特徴とするCo−Ni−Ga系ホイスラー型磁性形状記憶合金。
- 請求項1記載の磁性形状記憶合金からなることを特徴とする磁歪材料。
- 原子組成比がCo50Ni25Ga25であり、曲げ延性試験において180°の曲げ角度でも破断しない延性を有する薄帯からなることを特徴とする請求項2記載の磁歪材料。
- 金属の溶湯を急冷用ロールに連続的に供給して電磁浮遊溶解急冷凝固させることにより薄帯または細線を製造する方法において、合金原料をロールの上方に設けた原料溶解用の第一の電磁誘導コイルを用いて浮遊溶解させるとともに、溶湯溜りから滴下する溶湯流を原料溶解用の電磁誘導コイルの下部に位置する第二の電磁誘導コイルにより絞り込んで細い定常流とし、溶湯吹き出しノズルを使用しないで急冷凝固用ロールに連続的に供給することを特徴とする請求項1記載の磁性形状記憶合金を製造する方法。
- 請求項4記載の方法で得られた薄帯または細線を焼鈍することを特徴とする請求項1に記載の磁性形状記憶合金を製造する方法。
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