JP3872151B2 - 水冷式エンジンの冷却装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は、冷却液通路を2つの異なる冷却系に分割した水冷式エンジンの冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンの冷却に際し、冷却通路をシリンダヘッド側を冷却する通路とシリンダブロック側を冷却する通路とに分割し、シリンダヘッド側を低温で冷却し、シリンダブロック側を高温で冷却するいわゆる2系統冷却装置についての提案が数多くなされている。
【0003】
これは、吸気ポートと動弁系とを有するシリンダヘッド側の冷却温度を低く保つことにより、混合気温度を低くして燃料の充填効率を向上させるとともにノッキングを抑制し、さらに、潤滑油の温度を低くし運転領域のほとんどが境界潤滑状態であることから動弁系のフリクションを低減する一方、クランク,ピストン系を有するシリンダブロックの冷却温度を高く保つことにより、クランク,ピストン系の潤滑を向上させてフリクションを低減するためである。
【0004】
例えば、特開昭63−88215号公報、特開昭62−247112号公報には、2個のラジエータと2個のウォータポンプとを用いて、シリンダヘッドを冷却する冷却通路とシリンダブロックを冷却する冷却通路とをそれぞれ独立して形成する技術が示されている。
【0005】
また、特開昭59−215915号公報には1個のラジエータと2個のウォータポンプとを用いて、シリンダヘッドを冷却する冷却通路とシリンダブロックを冷却する冷却通路とをそれぞれ独立して形成する技術が示されている。
【0006】
さらに、特開昭58−162716号公報、特開昭57−97014号公報、特開昭59−213918号公報には1個のラジエータと1個のウォータポンプとを用い、上記ウォータポンプからの冷却通路を分岐して、シリンダヘッドを冷却する冷却通路とシリンダヘッドを冷却する冷却通路とをそれぞれ独立して形成する技術が示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開昭63−88215号公報、上記特開昭62−247112号公報に示される技術のように2個のラジエータと2個のウォータポンプとを用いることは、冷却装置の構造を複雑にし、コストの高騰につながる。さらに、本出願人の実験によれば、クランク,ピストン系のフリクション低減をより効果的にするためにはシリンダブロック側の冷却温度は100℃〜110℃の高温であることが望ましという実験結果を得ているが、上記特開昭63−88215号公報に示される技術おいては、シリンダブロック側の冷却温度の上限を100℃としており、効果的なフリクション低減を望めない虞がある。
【0008】
また、上記特開昭59−215915号公報に示される技術のように2個のウォータポンプを用いることにおいても、上記特開昭63−88215号公報、上記特開昭62−247112号公報に示される技術よりは冷却装置の構造が簡素化されるものの、未だその構造は複雑であり、コストの高騰につながる。
【0009】
上記特開昭58−162716号公報、上記特開昭59−213918号公報、上記特開昭57−97014号公報に示されている冷却装置の構造は簡単であるが、上記特開昭58−162716号公報、上記特開昭59−213918号公報に示される技術では、上記特開昭63−88215号公報の技術同様、シリンダブロック側の冷却温度の上限を100℃としており、クランク,ピストン系のフリクション低減をより効果的に行うことが困難となる虞がある。さらに、上記特開昭58−162716号公報、上記特開昭57−97014号公報に示される技術では、冷態始動時などのシリンダブロック側の冷却液温度が低いときは、冷却液温度を早期に目標温度まで上昇させるためにシリンダブロック冷却通路を流れる冷却液の流れを遮断しているが、水流が存在しないとシリンダブロックと冷却液との間での熱伝達が極端に悪くなり、局部的に加熱された部分は核沸騰を起こし、発生した気泡により冷却通路内の圧力が急上昇しシール部分を損傷する等の虞がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされてもので、簡単な構造で、核沸騰を起こすことなく、しかもシリンダブロック側の冷却温度が100℃以上をも可能として効果的にフリクション低減を行うことのできる水冷式エンジンの冷却装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は、エンジン本体を冷却する冷却液通路を、シリンダヘッド側を低温で冷却する第1の冷却液通路とシリンダブロック側を高温で冷却する第2の冷却液通路との2つの系に分岐する水冷式エンジンの冷却装置において、上記第1の冷却液通路下流とラジエータに形成された第1の冷却液入口とを第1の戻り通路を介して連通し、上記第2の冷却液通路下流と上記ラジエータに形成された第2の冷却液入口とを第2の戻り通路を介して連通し、上記第2の戻り通路の途中に所定の温度で開閉するサーモスタットバルブを介装し、上記第2の戻り通路の上記サーモスタットバルブ上流側と上記第1の戻り通路とをリーク通路を介して連通したものである。
【0012】
すなわち、請求項1記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は、上記第1の冷却液通路からの冷却液と上記第2の冷却液通路からの冷却液とを異なる戻り通路を介して上記ラジエータに送ることにより、上記各冷却液通路を流れる冷却液温度の差別化を容易にする。また、たとえ上記第2の冷却液通路下流のサーモスタットバルブが閉弁しているときであっても、リーク通路を介して、上記第2の冷却液通路内で核沸騰が生じないための最低限の流量を確保する。
【0013】
請求項2記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は、請求項1記載の水冷式エンジンの冷却装置において、上記第1の冷却液入口は上記ラジエータの下側に偏倚した場所に形成され、上記第2の冷却液入口は上記ラジエータの上側に偏倚した場所に形成されていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項2記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は請求項1記載の水冷式エンジンの冷却装置において、燃焼室を冷却し、しかも低い温度である上記第1の冷却液通路からの冷却液を上記ラジエータの下側に送り、一方、シリンダライナなどを冷却し、しかも高い設定温度である上記第2の冷却液通路からの冷却液を上記ラジエータの上側に送り冷却することで、夫々の設定温度の冷却液を効率よく冷却する。
【0015】
請求項3記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は、請求項1または請求項2記載の水冷式エンジンの冷却装置において、上記ラジエータの冷却ファンを上記ラジエータの背面の下側に偏倚した位置に配設したものである。
【0016】
すなわち、請求項3記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は請求項1または請求項2記載の水冷式エンジンの冷却装置において、上記ラジエータの背面の下側に偏倚した位置に配設された冷却ファンによって、上記第2の冷却液通路から上記ラジエータに送られる冷却液よりも上記第1の冷却液通路から上記ラジエータに送られる冷却液の方をより強力に冷却する。
【0017】
請求項4記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の水冷式エンジンの冷却装置において、上記エンジン本体を冷却する上記第1の冷却液通路と上記第2の冷却液通路とを上記シリンダブロック内で分岐したものである。
【0018】
すなわち、請求項4記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の水冷式エンジンの冷却装置において、上記第1の冷却液通路と上記第2の冷却液通路とを上記シリンダブロック内で分岐して、上記第1の冷却液通路を上記シリンダブロック途中までシフトすることにより、上記第1の冷却液通路でシリンダヘッド部分だけを冷却するのではなく、シリンダヘッドからシリンダブロック途中までにかけて形成される燃焼室全体をも低温で冷却可能とし、混合気の充填効率を向上させる。
【0019】
請求項5記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の水冷式エンジンの冷却装置において、冷却液温度を検出する冷却液温度センサを上記第1の冷却液通路から流出する冷却液と上記第2の冷却液通路から流出し上記リーク通路を通過する冷却液とが合流する場所に臨ませ、上記ラジエータの冷却ファンを上記冷却液温度センサで検出される冷却液温度が上記第1の冷却液通路の設定温度以上且つ上記第2の冷却液通路の設定温度以下の所定温度で作動するよう制御するものである。
【0020】
すなわち、請求項5記載の本発明による水冷式エンジンの冷却装置は請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の水冷式エンジンの冷却装置において、上記温度センサにより、上記第1の冷却液通路から流出した冷却液と上記第2の冷却液通路から流出し上記リーク通路を通過した冷却液とが合流する場所の冷却液温度を検出して、この冷却液温度によって上記冷却ファンの作動制御を行うことにより、1つの冷却液温度センサで2種類の異なる液温に対処して上記冷却ファンの作動制御を行う。
【0021】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2に本発明の第1の実施の形態を示す。
【0022】
図1において符号1は水平対向エンジン本体であり、符号2はラジエータである。
【0023】
上記エンジン本体1は、このエンジン本体1の左右のシリンダブロック3,4の外側に、ヘッドガスケット5,6を介してシリンダヘッド7,8が取り付けられている。
【0024】
上記シリンダブロック3,4にはシリンダライナ9,10が水平に設けられ、その周囲には、冷却液通路11,12が形成されている。
【0025】
さらに、上記冷却液通路11,12には、上記シリンダブロック3,4下側の一側に開口する冷却液流入口13,14が形成されるとともに、上記シリンダブロック3,4上側の一側に開口する冷却液吐出口15,16が形成されている。
【0026】
上記シリンダヘッド7,8には、上記シリンダブロック3,4側に開口する冷却液通路17,18が形成され、さらに、上記冷却液通路17,18には、上記シリンダヘッド7,8上側の一側に開口する冷却液吐出口19,20が形成されている。
【0027】
そして、上記冷却液通路11,12と上記冷却液通路17,18とは、上記ヘッドガスケット5,6に形成された連通口21,22によって連通されている。
【0028】
上記冷却液流入口13,14から流入した冷却液は、これらの連通口21,22の手前で分岐して、上記冷却液通路11,12を流通する系と、上記冷却液通路17,18を流通する系とを形成するようになっている。
【0029】
上記ラジエータ2は、例えば図示しない温度センサ等から検出される冷却液温度を基に動作する電動式の冷却ファン2aを有する周知のラジエータであり、このラジエータ2には、冷却液出口2bと冷却液入口2cとが形成されている。
【0030】
上記冷却液出口2bは、所定の温度(第1の設定温度TSW1)以下で閉弁する第1のサーモスタットバルブ24が途中に介装された冷却液通路23によってウォータポンプ25に接続されており、このウォータポンプ25は途中で左右に略等しく分岐する冷却液通路26によって上記冷却液流入口13,14に連通されている。
【0031】
上記冷却液流入口13,14から流入し上記冷却液通路11,12を流通した冷却液をシリンダブロック3,4外に排出する上記冷却液吐出口15,16は、これらの冷却液吐出口から吐出される冷却液が合流する冷却液通路27を介して冷却液戻り通路29に連通されており、さらにこの冷却液戻り通路29は上記ラジエータ2の冷却液入口2cに接続されている。
【0032】
上記戻り通路29には、所定の温度(第2の設定温度TSW2)以下でこの冷却液戻り通路29の途中を閉弁し、上記吐出口15,16からの冷却液の流れを遮断する第2のサーモスタットバルブ28が介装されている。
【0033】
さらに、上記戻り通路29には、上記第2のサーモスタットバルブ28によって冷却液が遮断されたときであっても、上記第2のサーモスタットバルブ28をバイパスし所定の量だけ冷却液をリークするリーク通路32が設けられている。
【0034】
尚、上記リーク通路32を流れる冷却液の流量は、上記第2のサーモスタットバルブ28が上記戻り通路29を遮断したとき、上記冷却液通路11,12中の冷却液が停滞し核沸騰を起こさないために最低限の流れを作り出す流量であり、予め実験などによって求められている。
【0035】
一方、上記冷却液流入口13,14から流入した後、上記連通口21,22を通過して上記冷却液通路17,18を流通した冷却液を吐出する上記冷却液吐出口19,20は、これらの冷却液吐出口19,20から流出した冷却液が合流する冷却液通路33を介して連通されると共に、上記冷却液戻り通路29の上記第2のサーモスタットバルブ28下流側に連通されている。
【0036】
さらに、上記冷却液通路33は、上記第1のサーモスタットバルブ24が閉じたとき、上記冷却液吐出口15,16,19,20から吐出する冷却液を上記ラジエータ2を介さずに上記ウォータポンプ25に連通するバイパス通路34に接続されている。
【0037】
ここで、本発明による第1の実施の形態では、例えばエチレングルコール(沸点=197℃)等の水よりも高沸点な液体を冷却液として用いる。
【0038】
尚、上記第1の設定温度TWS1とは、上記第1のサーモスタットバルブ24がこの第1の設定温度TSW1で開閉することにより上記冷却液通路17,18を流れる冷却液が所定の温度(例えば、60℃)に保たれるよう設定された温度であり、上記第2の設定温度とは、上記第2のサーモスタットバルブ28がこの第2の設定温度TSW2で開閉することにより上記冷却液通路11,12を流れる冷却液が所定の温度(例えば、110℃)に保たれるよう設定された温度であって、これらの第1の設定温度TSW1、第2の設定温度TSW2は予め実験などにより求められている。勿論、上記第1の設定温度TSW1と上記第2の設定温度TSW2との関係は、TSW1<TSW2である。
【0039】
以上の構成による本発明の第1の実施の形態の動作について以下に説明する。
【0040】
エンジン1始動後、第1のサーモスタットバルブ24,第2のサーモスタットバルブ28の温度が第1の設定温度TSW1以下の低温であるときは、第1のサーモスタットバルブ24,第2のサーモスタットバルブ28は閉じており、上記第1のサーモスタットバルブ24は冷却液通路23の途中を遮断するとともに、上記第2のサーモスタットバルブ28は冷却液戻り通路29の途中を遮断している。
【0041】
このとき、上記ウォータポンプ25から圧出された冷却液は、冷却液通路26で左右に等しく分配された後、冷却液流入口13,14を通って冷却液通路11,12に送られる。
【0042】
上記冷却液流入口13に送られた冷却液は、ヘッドガスケット5に形成された連通口21の手前で分岐し、上記冷却液通路11を通過して冷却液吐出口15から吐出される冷却液の流れと、冷却液通路17を通過して冷却液吐出口19から吐出される冷却液の流れとを生成するが、このとき、上記第2のサーモスタットバルブ28が閉じているため、そのほとんどは冷却液吐出口19から吐出される。
【0043】
同様に、上記冷却液流入口14に送られた冷却液は、連通口22の手前で上記冷却液通路12側と冷却液通路18側とに分岐するが、そのほとんどは上記冷却液通路18を通過した後冷却液吐出口20から吐出される。
【0044】
その後、上記冷却液吐出口19,20から吐出された冷却液は、冷却液通路33、バイパス通路34、冷却液通路23の上記第1のサーモスタットバルブ24下流側を通過した後上記ウォータポンプ25に戻る。
【0045】
一方、上記冷却液吐出口15,16から吐出された冷却液は、冷却液通路27、リーク通路32を通過した後、上記冷却液通路33で上記冷却液吐出口19,20から吐出された冷却液と合流し、上記ウォータポンプ25に戻る(以上の冷却液の流れは図2参照)。
【0046】
このように上記第1のサーモスタットバルブ24,第2のサーモスタットバルブ28が上記第1の設定温度TSW1以下の冷態時には両者共閉弁状態にあり、冷却液はラジエータ2を循環しないため、冷却液の熱損失が少なく、早期に温度上昇が図れ暖機が速やかに行われる。
【0047】
また、上記第2のサーモスタットバルブ28が閉じているときにも上記リーク通路32によって上記冷却液通路11,12内の冷却液の最低限の流れは確保されているので、上記冷却液通路11,12内で冷却液が停滞し部分的に温度が上昇し核沸騰を起こすことがなく、冷却液通路内の圧力の上昇を有効に回避することができるため、上記ヘッドガスケット5,6等を破損等から保護することができる。
【0048】
そして、上記第1のサーモスタットバルブ24の温度が上昇して上記第1の設定温度TSW1を越え、上記第1のサーモスタットバルブ24が開弁すると、上記冷却液吐出口19,20から吐出された冷却液は上記冷却液通路33を流通した後、上記バイパス通路34と冷却液戻り通路29とに分岐する。
【0049】
上記バイパス通路34に流れ込んだ冷却液はそのまま上記ウォータポンプ25に流れ、一方、冷却液戻り通路29に流れ込んだ冷却液は上記ラジエータ2に流れ込み冷却された後上記ウォータポンプ25に流れる。
【0050】
一方上記冷却液吐出口15,16から吐出された冷却液は、上記冷却液通路27を介して上記リーク通路32に流れた後、上記冷却液吐出口19,20からの冷却液と合流する。
【0051】
尚、上記第1のサーモスタットバルブ24の温度が上記第1の設定温度TSW1を越えた後、再び、上記第1の設定温度TSW1以下となったときは閉弁する。
【0052】
そのため、上記第1のサーモスタットバルブ24の温度が上記第1の設定温度TSW1付近にあるときは、上記第1のサーモスタットバルブ24が開閉し、上記冷却液通路17,18を流れる冷却液が上記ラジエータ2によって適宜冷却されるので、上記冷却液通路17,18の冷却液温度は常に60℃近辺に保たれる。一方、上記第2のサーモスタットバルブ28は閉じたままなので、上記冷却液通路11,12中の冷却液は加熱され続ける。
【0053】
その後、上記第2のサーモスタットバルブ28の温度が第2の設定温度TSW2を越え、上記第2のサーモスタットバルブ28が開弁すると上記連通口21,22の手前で上記冷却液通路11,12側と上記冷却液通路17,18側とに分岐される冷却液の流量の割合が変化し、上記冷却液通路11,12を流れる冷却液の流量が増加して上記冷却液通路11,12に冷たい冷却液が流れ込む。
【0054】
そして、上記冷却液吐出口15,16から吐出される冷却液は、上記第2のサーモスタットバルブ28を通過した後分岐され、分岐された一方の冷却液は上記バイパス通路34を通過して上記ウォータポンプ25に流れ、他方は上記冷却液戻り通路29を通過して上記ラジエータ2に流入し、このラジエータ2で冷却された後、上記ウォータポンプ25に流れる(図1参照)。
【0055】
尚、上記第2のサーモスタットバルブ28の温度が上記第2の設定温度TSW2を越えた後、再び、上記第2の設定温度TSW2以下となったときは閉弁する。
【0056】
そのため、上記第2のサーモスタットバルブ28は、その温度が上記第2の設定温度TSW2付近で適宜開閉するので上記冷却液通路11,12の冷却液温度は常に110℃付近に保たれる。
【0057】
勿論、このときも上記第1のサーモスタットバルブ24は適宜開閉しており上記冷却液通路17,18の冷却液温度は60℃付近に保たれている。
【0058】
このように、本実施の形態では、冷却液通路11,12と冷却液通路17,18とを単一のラジエータとウォータポンプとに連接して冷却系を形成したので、エンジンを高温側と低温側とで冷却する2系統冷却装置を簡単な構造で構成することができる。
【0059】
さらに、高温側の冷却液温度を制御する上記第2のサーモスタットバルブ28に並設して、リーク通路32を設けたことにより、上記第2のサーモスタットバルブ28が完全に閉じたときであっても、冷却液が核沸騰を起こさないための最低限の流れを確保し、また、冷却液に高沸点の液体(例えばエチレングルコール等)を使用したので、たとえ高温側の冷却液通路11,12の設定温度を100℃以上の高温に設定しても冷却液を核沸騰させることなく暖機し、維持することができる。
【0060】
尚、本実施の形態では、上記冷却液通路11,12の冷却液温度を110℃に設定し、上記冷却液通路17,18の冷却液温度を60℃としたが、上記冷却液通路11,12,17,18の冷却液温度はこれらに限らない。
【0061】
また、冷却液として用いる物質もエチレングルコールに限ることはなく、沸点が100℃以上で冷却液として使用できるものであればよい。
【0062】
また、冷却液通路を2系統に分割してエンジンを冷却するものであれば、エンジンの形状は水平対向式に限らず、また気筒数も何気筒あっても良い。
【0063】
図3に本発明の第2の実施の形態を示す。
本実施の形態では、前記第1の実施の形態で採用した連通口21,22の位置をよりウォータポンプ25側に近づけたもので、連通口42によって前記第1の実施の形態で採用した冷却液通路11が、冷却液通路11aと冷却液通路11bとに、連通口43によって前記第1の実施の形態で採用した冷却液通路12が、冷却液通路12aと冷却液通路12bとに分割されている。
【0064】
尚、上記連通口42,43は、上記冷却液流入口13,14の近傍に集合して形成された連通口であり、上記冷却液流入口13,14から流入した冷却液は、これらの連通口42,43で、上記冷却液通路11a,12a側と、上記冷却液通路11b,12b側とに分岐されるようになっている。
【0065】
さらに、本実施の形態では、ヘッドガスケット5,6に、前記第1の実施の形態で採用した連通口21,22に代えて、連通口48,49が複数形成されており、これらの連通口によって、冷却液通路17と上記冷却液通路11aと、及び、冷却液通路18と上記冷却液通路12aとが連通され、それぞれ一体の冷却系となっている(以下、上記冷却液通路17と上記冷却液通路11aとで形成された一体の冷却系を冷却液通路44と呼び、上記冷却液通路18と上記冷却液通路12aとで形成された一体の冷却系を冷却液通路45と呼ぶ)。
【0066】
さらに、本実施の形態では、前記第1の実施の形態で採用した冷却液吐出口19,20に代えて、冷却液吐出口46,47がシリンダブロック3,4に形成されており、上記冷却液吐出口46,47によって、上記冷却液通路44,45と冷却液通路33とが連通されている。
【0067】
以上の構成により本実施の形態では、上記冷却液流入口13,14から流入した冷却液は、上記連通口42,43で上記冷却液通路11b,12b側と上記冷却液通路44,45側とに分岐され、上記冷却液通路11b,12bを流通した冷却液は冷却液吐出口15,16から冷却液通路27に流出し、一方、上記冷却液通路44,45を流通した冷却液は、上記冷却液吐出口46,47から冷却液通路33に流出するようになっている。
【0068】
本実施の形態における第1のサーモスタットバルブ24,第2のサーモスタットバルブ28の温度変化に伴う動作、及び、上記第1のサーモスタットバルブ24,第2の第2のサーモスタットバルブ28の動作に伴う冷却液の流れについては、前記第1の実施の形態と略同様である。
【0069】
本実施の形態では、前記第1の実施の形態で得られる作用効果に加え、冷却液通路11a,12aと冷却液通路17,18とで形成される冷却液通路44,45によって燃焼室全体を低温で冷却して混合気の充填効率をより向上させることができるという効果が得られる。
【0070】
図4、図5に本発明の第3の実施の形態を示す。
本実施の形態では、ラジエータの構造と冷却液戻り通路との構成が前記第2の実施の形態と異なる。
【0071】
先ず、図5に本実施の形態で採用するラジエータ50の構成について示す。図5に示すとおり、本実施の形態ではラジエータ50の一方の側面の中央よりやや下側に偏倚した位置に第1の冷却液入口51が形成されているとともに上側に偏倚した位置に第2の冷却液入口52が形成されている。また、上記ラジエータ50の他方の側面の下側に偏倚した場所には冷却液出口53が形成されており、上記冷却液入口51,52と上記冷却液入口53とは、上記ラジエータ50の両側面間に複数形成されたウォータチューブ56によって連通されている。
【0072】
さらに、上記ラジエータ50の背面の下側に偏倚した場所には、例えば図示しない温度センサ等によって検出された冷却液温度等を基に制御される電動式の冷却ファン54,55が並列に配設されている。
【0073】
図4に示すとおり、本実施の形態では、前記第2の実施の形態で採用した冷却液戻り通路29が、第1の冷却液戻り通路57と第2の冷却液戻り通路58とに分割されている。
【0074】
そして、上記第2の冷却液戻り通路58は、サーモスタットバルブ28と上記第2の冷却液入口52とを連通し、上記第1の冷却液戻り通路57は、冷却液通路33、リーク通路32と上記第1の冷却液入口51とを連通している。
【0075】
また、上記冷却液出口53は第1のサーモスタットバルブ24に接続されている。
【0076】
本実施の形態における第1のサーモスタットバルブ24,第2のサーモスタットバルブ28の温度変化に伴う動作については、前記第2の実施の形態と略同様である。
【0077】
また、本実施の形態における上記第1のサーモスタットバルブ24,第2のサーモスタットバルブ28の各開閉状態においての冷却液の循環経路は前記第2の実施の形態と略同じであるが、前記第2の実施の形態ではラジエータ2に流入する冷却液は全て冷却液戻り通路29を通って供給されるのに対し、本実施の形態では、前述の構成からも明らかなように、冷却液通路11b,12bからの冷却液であって第2のサーモスタットバルブ28を通過する冷却液は、第2の冷却液戻り通路58を通って第2の冷却液入口52からラジエータ50に供給され、上記冷却液通路11b,12bからの冷却液であってリーク通路32を通過する冷却液と冷却液通路44,45からの冷却液とは、第1の冷却液戻り通路57を通って第1の冷却液入口51からラジエータ50に供給される点が異なる。
【0078】
このように、本実施の形態では、異なる2つの冷却液戻り通路を設け、異なる温度で制御される冷却液を、各冷却液通路からの吐出直後に合流させないまま上記ラジエータ50に送ることで、上記冷却液通路11b,12bと上記冷却液通路44,45との冷却温度の差別化を容易に実現することができる。
【0079】
また、燃焼室を冷却し、しかも低い設定温度である上記冷却液通路44,45からの冷却液は、第1の冷却液入口51から上記ラジエータ50の下側に送り、上記ラジエータ50の下側に偏倚して設けられている冷却ファン54,55によって強力に冷却し、一方、シリンダライナなどを冷却し、しかも高い設定温度である上記冷却液通路11b,12bからの冷却液は、第2の冷却液入口52から上記ラジエータ50の上側に送り冷却するので、夫々の設定温度の冷却液を効率よく冷却することができる。
【0080】
図6〜図8に本発明の第4の実施の形態を示す。
本実施の形態は、前記第3の実施の形態に示した水冷式エンジンの冷却装置において、ラジエータ50を冷却する冷却ファン54,55の通電制御を以下に示す制御装置によって後述するタイミングで行うものである。
【0081】
図7において、符号61は制御装置であり、キースイッチ62を介してバッテリ63に接続されているとともに、データ線を介して冷却液温度センサ60に接続されている。
【0082】
さらに、上記制御装置61はリレースイッチRY1,RY2に接続されており、上記リレースイッチRY1,RY2は、上記冷却液温度センサ60で検出される温度データを基に上記制御装置61によってON、OFF制御される。
【0083】
また、上記バッテリ63と上記冷却ファン54,55とは、上記リレースイッチRY1,RY2を介して接続されている。
【0084】
尚、上記冷却液温度センサ60は、前記第3の実施の形態に示した水冷式エンジンの冷却装置で採用した第1の冷却液戻り通路57上であって、この第1の冷却液戻り通路57とリーク通路32との合流地点付近に臨まされており、冷却液通路44,45から流出した冷却液と、リーク通路32を介して冷却液通路11b,12bから流出した冷却液とが合流した直後の冷却液温度を温度データとして検出する温度センサである(図6参照)。
【0085】
以下、上記制御装置61による、上記リレースイッチRY1,RY2のON、OFF制御について図8のフローチャートに従って説明する。
【0086】
キースイッチ62をONして、バッテリ63から制御装置61に電源が投入されると、上記制御装置61には、冷却液温度センサ60で検出された第1の冷却液戻り通路57の冷却液温度を示す温度データが入力される。
【0087】
上記制御装置61では上記冷却液温度センサ60からの温度信号に基づき冷却液戻り通路57の冷却液温度TWを算出し、この算出された冷却液温度TWは図8に示す冷却ファン通電制御ルーチンにおいて読み込まれる。
【0088】
上記冷却ファン通電制御ルーチンでは、ステップS1で上記冷却液温度TWを読み込み予め設定した基準値TWSRAと比較する。そして、上記冷却液温度TWが上記基準値TWSRA以上のときはステップS2,S3に進み、上記リレースイッチRY1,RY2をOFFし、ルーチンを抜ける。
【0089】
一方、上記ステップS1で上記冷却液温度TWが上記基準値TWSRAよりも小さいときはステップS4,S5に進み、上記リレースイッチRY1,RY2をONした後、ルーチンを抜ける。
【0090】
上記リレースイッチRY1,RY2がOFFされると上記冷却ファン54,55が停止する。一方、上記リレースイッチRY1,RY2がONされると上記冷却ファン54,55が動作し、これらの冷却ファンからの送風によって上記ラジエータ50内の冷却液が強制冷却される。
【0091】
尚、上記基準値TWSRAは、冷却通路44,45を流れる冷却液の設定温度以上、冷却通路11b,12bを流れる冷却液の設定温度以下の温度範囲内での所定の温度に設定される。
【0092】
上述のようにON、OFF制御される上記冷却ファン54,55とサーモスタットバルブ24,28との関係を以下に説明する。
【0093】
上記冷却液通路44,45の冷却液温度が設定値(例えば60℃)を超えると、サーモスタットバルブ24が開弁し、第1の冷却液戻り通路57に液流が生じる。すると、上記第1の冷却液戻り通路57に、リーク通路32からの高温な冷却液と上記冷却液通路44,45からの冷却液とが混合された冷却液が多量に流れ込む。
【0094】
このとき上記冷却液温度センサ60で検出される冷却液の温度は、上記冷却液通路44,45で設定される冷却液温度(60℃)よりも高温であり、上記基準値TWSRAで示される温度に達している。そのため、上記サーモスタットバルブ24の開弁と略同時に上記冷却ファン54,55がONされ、上記第1の冷却液戻り通路57を流れる冷却液はラジエータ50で冷却される。
【0095】
その後、上記ラジエータ50で冷却された冷却液が上記冷却液通路44,45を循環すると、上記冷却液温度センサ60で検出される温度は、上記基準値TWSRAで示される温度よりも低くなり、上記冷却ファン54,55はOFFされる。
このとき、勿論、上記サーモスタットバルブ24は閉弁する。
【0096】
一方、上記冷却液通路11b,12bの冷却液温度が設定値(例えば110℃)付近まで上昇すると、上記リーク通路32を通過する高温な冷却液の熱拡散によって上記冷却液温度センサ60付近の冷却液温度が上昇する。そして、この冷却液温度が上記基準値TWSRAで示される温度よりも高い温度となると、上記冷却ファン54,55がONし、上記ラジエータ内の冷却液の冷却を開始する。
【0097】
また、このとき、たとえ上記冷却液通路44,45を流れる冷却液が低温(60℃以下)であっても上記リーク通路32からの高温な冷却液が加わることにより、上記バイパス通路34を流れる冷却液は上記サーモスタットバルブ24開弁温度以上の高温となり開弁する。
【0098】
その後、上記冷却液通路11b,12bの冷却液温度が設定値(110℃)を越えると、上記サーモスタットバルブ28が開弁し高温な冷却液が上記ラジエータ50に流れ込むが、この時点で上記ラジエータ50内の冷却液は上記冷却ファン54,55によって予め冷却されているので、上記冷却液通路44,45に循環する冷却液はたちどころに冷却される。
【0099】
上記ラジエータ50で冷却された冷却液が上記冷却液通路11b,12bを循環すると上記冷却液温度センサ60で検出される温度は、上記基準値TWSRAで示される温度よりも低くなり、上記冷却ファン54,55はOFFされる。勿論、このとき上記サーモスタットバルブ24,28は閉弁する。
【0100】
このように、本実施の形態では、1つの冷却液温度センサ60で2種類の異なる液温に対処して上記冷却ファン54,55のON、OFF制御を行うことができる。
【0101】
また、本実施の形態では、上記冷却ファン54,55の動作開始温度は、上記第2のサーモスタットバルブ28の開弁前であり、上記第2のサーモスタットバルブ28開弁時には上記冷却ファン54,55によって上記ラジエータ50は冷却されて冷却能力が高まっているので、速やかに冷却液通路11a,12aを冷却することができる。すなわち、上記第2のサーモスタットバルブ28の開弁時間が短時間で上記冷却液通路11a,12aの冷却液を熱交換することができるので、上記第2のサーモスタットバルブ28が開弁したとき、上記冷却液通路11a,12aから流出される高温な冷却液による低温な冷却液(冷却液通路44,45を流れる冷却液)に対する熱拡散を最小限にとどめることができる。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ラジエータ、ウォータポンプを各1個備えた簡単な構造で2系統冷却装置を実現することができる。また、第2のサーモスタットバルブとリーク通路とを並設し、冷却液に沸点が100℃以上の高沸点なものを積極的に用いたので、たとえ上記第2のサーモスタットバルブが閉弁しているときであっても、核沸騰を引き起こすことなくシリンダブロック側の冷却液温度を容易に100℃以上に保つことができ、その結果効果的にフリクションの低減を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷却装置のブロック図(第1の実施の形態)
【図2】冷却装置のブロック図(第1の実施の形態)
【図3】冷却装置のブロック図(第2の実施の形態)
【図4】冷却装置のブロック図(第3の実施の形態)
【図5】第3の実施の形態によるラジエータの構成図
【図6】冷却装置のブロック図(第4の実施の形態)
【図7】制御装置の回路接続図
【図8】冷却ファン通電制御ルーチン
【符号の説明】
1 エンジン本体
2 ラジエータ
3,4 シリンダブロック
7,8 シリンダヘッド
11,12 冷却液通路(第2の冷却液通路)
17,18 冷却液通路(第1の冷却液通路)
28 第2のサーモスタットバルブ
29 冷却液戻り通路
32 リーク通路
Claims (5)
- エンジン本体を冷却する冷却液通路を、シリンダヘッド側を低温で冷却する第1の冷却液通路とシリンダブロック側を高温で冷却する第2の冷却液通路との2つの系に分岐する水冷式エンジンの冷却装置において、
上記第1の冷却液通路下流とラジエータに形成された第1の冷却液入口とを第1の戻り通路を介して連通し、
上記第2の冷却液通路下流と上記ラジエータに形成された第2の冷却液入口とを第2の戻り通路を介して連通し、
上記第2の戻り通路の途中に所定の温度で開閉するサーモスタットバルブを介装し、
上記第2の戻り通路の上記サーモスタットバルブ上流側と上記第1の戻り通路とをリーク通路を介して連通したことを特徴とする水冷式エンジンの冷却装置。 - 上記第1の冷却液入口は上記ラジエータの下側に偏倚した場所に形成され、
上記第2の冷却液入口は上記ラジエータの上側に偏倚した場所に形成されていることを特徴とする請求項1記載の水冷式エンジンの冷却装置。 - 上記ラジエータの冷却ファンを上記ラジエータの背面の下側に偏倚した位置に配設したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の水冷式エンジンの冷却装置。
- 上記エンジン本体を冷却する上記第1の冷却液通路と上記第2の冷却液通路とを上記シリンダブロック内で分岐したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の水冷式エンジンの冷却装置。
- 冷却液温度を検出する冷却液温度センサを上記第1の冷却液通路から流出する冷却液と上記第2の冷却液通路から流出し上記リーク通路を通過する冷却液とが合流する場所に臨ませ、
上記ラジエータの冷却ファンを上記冷却液温度センサで検出される冷却液温度が上記第1の冷却液通路の設定温度以上且つ上記第2の冷却液通路の設定温度以下の所定温度で作動するよう制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の水冷式エンジンの冷却装置。
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