JP3871227B2 - 帯電防止剤及びそれを含む帯電防止性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は帯電防止剤及びそれを含む帯電防止性樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、合成樹脂に良好な帯電防止効果を付与することができると共に、合成樹脂に内部添加して成形した時に、成形後直ちに効果を発揮することのできる帯電防止剤と、それを含む帯電防止性オレフィン系樹脂組成物及び帯電防止性スチレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、合成樹脂はフィルム、シート、繊維等として種々の分野に広く利用されているが、これら合成樹脂製品は優れた絶縁性を有する反面、静電気が発生して帯電し易い。合成樹脂が帯電するとフィルム、シート等にあっては汚れが付着し易く製品の外観を低下させ、繊維においてはその製造時に繊維同士が反発して紡糸が困難となる欠点がある。さらに帯電した静電気が放電すると、合成繊維製の衣服等を着用している時に人体が不快な衝撃を受ける、溶剤を扱う現場においては火災、爆発等の危険を生じる他、近年の目覚ましく普及してきたOA機器、FA機器に誤動作を生じたり、IC、LSIの不良、破損する原因となる等が大きな問題となっている。
【0003】
このため従来より合成樹脂用の種々の帯電防止剤が検討されている。帯電防止剤は使用する方法により、合成樹脂の表面に塗布する外部処理型と、合成樹脂の内部に練り込む内部添加型に分けられる。これらのうち、外部処理型は洗濯等により除去されて効果の持続性を図り難いのに対し、内部添加型は表面の帯電防止剤が除去されても、合成樹脂内部の帯電防止剤が樹脂の表面に移行(ブリードアウト)し、性能の回復が期待でき、効果を長期間持続させるためには内部添加型が望まれる。内部添加型の帯電防止剤としては、例えば、(1)N−ヒドロキシアルキルアルカノールアミン(特公昭47−10726号、特開昭48−88135号)、(2)N,Nビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミンや(3)アルキルモノエタノールアミド(特開昭62−143956号)を用いる方法が知られているが、これらはいずれも効果の持続性、耐久性に乏しく、これらの欠点を改善するために種々の方法が提案されている。つまり(4)N,Nビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、高級アルコール及び、脂肪酸モノグリセリドを併用する方法(特開昭62−295936号、特開平2−80488号)、(5)脂肪酸ジエタノールアミドにグリセリン脂肪酸を併用する方法(特開昭61−78854号、特開平2−289634号)さらに(6)脂肪酸ジエタノールアミド又はその酸化エチレン付加体にグリセリン脂肪酸エステルを併用する方法(特開昭62−54736号)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の内部添加型帯電防止剤は、帯電防止効果の持続性、回復性にはある程度の効果を発揮し得るものの、その回復性の効果が洗浄後数時間経過してから現れるもので、いずれも初期効果、特に成形直後の効果が乏しいものであった。一般的に工程を省力化するために、合成樹脂を成形した後、連続してあるいはすぐに接着加工、印刷加工等の二次加工を行っている。ここに用いる帯電防止剤が成形直後の効果の乏しいものであると、二次加工時にいたるまでの帯電による埃付着を防止することができず、接着不良や印刷不良を生じたり、さらには最終製品の外観を損ねる等の問題がある。また成形直後の効果を発現させる為に内部添加型帯電防止剤の添加量を増やすと、過剰のブリードアウトを生じて経時で表面性状が悪化したり、表面での配向が崩れて性能が低下する等の問題点があった。従来の内部添加型帯電防止剤による方法は、これらの問題点を防止するために、一旦成形してから二次加工にいたるまでに、成形したものをさらに塗布型帯電防止剤により処理したり、あるいは樹脂内部の帯電防止剤がブリードアウトするまで調湿調温した環境下に長時間おく、いわゆるテンパリングの操作を必要とするもので、作業工程が増え、加工に長時間を要するものとなり、成形直後の帯電防止効果に優れる内部添加型帯電防止剤の出現が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の点に着目して行ったもので、従来の帯電防止剤の初期効果並びに持続性、耐久性を損なわず、成形後直ちに帯電防止効果を発揮する帯電防止剤と、それを含む帯電防止性オレフィン系樹脂組成物及び帯電防止性スチレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アルカノールアミンの脂肪酸エステルとアルカノールアミンの脂肪酸アミドとを、特定の比で用いることにより、合成樹脂との相溶性に優れ、内部添加して用いると、成形直後の帯電防止効果に優れ、しかもその効果を合成樹脂に長期間安定して付与することができ、さらにオレフィン樹脂及びスチレン樹脂に適することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、A:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンより選ばれたアルカノールアミンと炭素数8〜18の脂肪酸とのエステル(以下これを「Aのエステル」と称することもある。)と、B:アルカノールアミンと炭素数8〜18の脂肪酸とのアミド(以下これを「Bのアミド」と称することもある。)とを、A:B=1:99〜20:80の重量比で用いる帯電防止剤であり、さらに該帯電防止剤を0.03〜1重量%含有する帯電防止性オレフィン系樹脂組成物、及び該帯電防止剤を0.5〜3重量%含有する帯電防止性スチレン系樹脂組成物である。
【0008】
上記Aのエステル又はBのアミドに用いるアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−2−ヒドロキシ−1,1ジメチルエチルアミン、エチルエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、イソプロピルエタノールアミン等が挙げられ、中でもモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等を用いることが好ましい。
【0009】
上記Aのエステル又はBのアミドに用いる脂肪酸は、その炭素数が8〜18の範囲のものが好ましく、Aのエステル又はBのアミドに用いる脂肪酸の炭素数が8未満であると、合成樹脂に内部添加した時に、ブリードアウト性に優れるものの、揮散したり表面での配向性が悪くなり帯電防止効果が低下する、あるいは金型を汚染する、印刷適性が低下する、フィルム状に成形したものでは重なり合った部分がくっつき合ってブロッキングを起こす畏れがあり好ましくない。また脂肪酸の炭素数が18を越えるものでは、基本的な性能が悪いと共にブリードアウト性が悪くなり帯電防止効果を発揮することができ難く好ましくない。脂肪酸のアルキル基は飽和もしくは不飽和又は直鎖もしくは分岐鎖のいずれであってもよい。
【0010】
上記脂肪酸としては、例えばカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、これらの脂肪酸は単独でもまた2種以上併用しても良い。
【0011】
本発明の帯電防止剤は、AのエステルとBのアミドとを併用することにより、それぞれ単独で用いた時よりも、合成樹脂に良好な帯電防止効果を付与することができると共に、成形直後の効果に優れる。Aのエステルと、Bのアミドとを用いる量は重量比にて、A:B=1:99〜20:80が好ましい。AのエステルとBのアミドとの重量比は、Aが1未満でBが99を越えると成形直後の効果が不十分となり、またAが20を越えBが80未満であると合成樹脂の耐熱性を低下したり、成形品の表面性状の悪化、成形品の着色等の問題を生じ、それぞれ好ましくない。
【0012】
本発明の帯電防止剤は上記化合物Aのエステル及びBのアミドを併用したものをそのまま、もしくはこれを主成分とし、更に必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で高級アルコール、脂肪酸モノグリセライド等の他の帯電防止剤成分やブロッキング防止剤、酸化防止剤、滑剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0013】
本発明の帯電防止剤は合成樹脂の内部添加型に適しており、合成樹脂に練り込んで用いることが好ましい。帯電防止剤を合成樹脂に練り込む方法としては、常法に従って行うことができ、例えば押出成形、射出成形、圧縮成形、ロール成形等の通常の成形方法が挙げられる。合成樹脂に練り込む帯電防止剤の量は、合成樹脂に対し0.05〜3重量%が、最も帯電防止効果の持続性、速効性、耐久性に優れ好ましい。練り込む帯電防止剤の量が合成樹脂に対して0.05重量%未満であると十分な帯電防止効果を得ることができず、また3重量%を越えると樹脂の物性を変化させるおそれがあり好ましくない。
【0014】
本発明の帯電防止剤の適する合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン、アイオノマー樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ABS樹脂、PS樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、エチレン酢ビ共重合樹脂、エチレン塩ビ共重合樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、あるいはこれらの共重合樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられ、これらの合成樹脂に本発明の帯電防止剤を練り込んだ後、フィルム、シート、成形品、繊維等として合成樹脂製品を得、これらに良好な帯電防止効果を付与することができる。
【0015】
本発明の帯電防止剤は、これらの合成樹脂に良好な帯電防止効果を付与することができるが、なかでも特に低密度ポリスチレン、高密度ポリスチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、及びABS樹脂、PS樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂に内部添加したときに、従来の帯電防止剤では得られない、成形直後に優れた帯電防止効果を有する帯電防止性樹脂組成物が得られる。
【0016】
オレフィン系樹脂に含有せしめる本発明の帯電防止剤の量は0.03〜1重量%が好ましく、得られる帯電防止性オレフィン系樹脂組成物は成形直後より優れた帯電防止性を発揮し、かつその効果を長時間持続する。含有せしめる帯電防止剤の量が0.03重量%未満では、帯電防止効果そのものが得られず、1重量%を越えると成形時に樹脂の分解や着色を促進したり、得られる成形品の表面性状が悪化したりして好ましくない。
【0017】
スチレン系樹脂に含有せしめる本発明の帯電防止剤の量は0.5〜3重量%が好ましく、得られる帯電防止性スチレン系樹脂組成物は成形直後より優れた帯電防止性を発揮し、かつその効果を長時間持続する。含有せしめる帯電防止剤の量が0.5重量%未満では帯電防止効果そのものが得られず、3重量%を越えると成形時に樹脂の分解や着色を促進したり、得られる成形品の表面性状が悪化したりして好ましくない。
【0018】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されない。以下「%」は「重量%」を表す。
【0019】
実施例及び比較例に用いたAのエステル及びBのアミドの種類及びその略称を以下に示す。
【0020】
・Aのエステル
A−1:モノエタノールアミンカプロン酸エステル
A−2:モノエタノールアミンラウリン酸エステル
A−3:ジエタノールアミンモノミリスチン酸エステル
A−4:アミノエチルエタノールアミンオレイン酸エステル
A−5:トリエタノールアミンモノステアリン酸エステル
A−6:モノエタノールアミンベヘン酸エステル
【0021】
・Bのアミド
B−1:モノエタノールアミンカプロン酸アミド
B−2:モノエタノールアミンラウリン酸アミド
B−3:モノエタノールアミンミリスチン酸アミド
B−4:ジエタノールアミンオレイン酸アミド
B−5:アミノエチルエタノールアミンモノステアリン酸アミド
B−6:モノエタノールアミンベヘン酸アミド
【0022】
【実施例】
実施例1〜4、比較例1〜7
表1に示すAのエステル及びBのアミドを用い、表1に示す比に配合したものを帯電防止剤として用い、ポリプロピレン樹脂(以下「PP樹脂」と記す。)に対し0.5重量%加え、均一に混合後、押出成形機にて帯電防止剤を配合したペレットを作製した。次にこれを射出成形機にて220〜240℃で、厚さ2.5mmのプレートに成形したものをテストピースとし、RH40%、25℃で、成形後10分、1時間、及び1〜30日間調湿したものの表面抵抗及び半減期を測定し、さらにテストピースの着色度(着色の有無)を目視にて評価した(実施例1〜4、比較例1〜7)。実施例及び比較例に用いた帯電防止剤の組成及び性能試験結果を表1に、各試験方法を以下に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
・表面抵抗・・・JIS K 6911に準じて測定した。測定条件は40%RH、25℃で行った。
・半減期の測定・・JIS L 1090に準じて測定した。測定条件は40%RH、25℃で行った。
【0025】
実施例5〜8、比較例8〜14
表2に示すAのエステル及びBのアミドを用い、表2に示す比に配合したものを帯電防止剤として用い、ABS樹脂に対し1.0重量%加え、均一に混合後、押出成形機にて帯電防止剤を配合したペレットを作製した。次にこれを射出成形機にて220〜240℃で、厚さ2.5mmのプレートに成形したものをテストピースとし、RH40%、25℃で成形した後、10分後、1時間後、及び1〜30日間調湿したものの表面抵抗、半減期及び着色度を測定した(実施例5〜8、比較例8〜14)。実施例及び比較例に用いた帯電防止剤の組成及び性能試験結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
実施例9〜14、参考例1〜2
AのエステルとBのアミドを実施例2に用いたと同様に配合した帯電防止剤を用い、表3に示す合成樹脂に表3に示す添加量を加え、均一に混合後、押出成形機にて帯電防止剤を配合したペレットを作製した。次にこれを射出成形機にて220〜240℃で、厚さ2.5mmのプレートに成形したものを帯電防止性樹脂組成物とし、RH40%、25℃で、成形後10分後、1時間後、及び1〜30日間調湿したものの表面抵抗、半減期及び着色度を測定した(実施例9〜14、参考例1〜2)。実施例、参考例に用いた帯電防止性樹脂組成物の組成及び性能試験結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明の帯電防止剤は、アルカノールアミンの脂肪酸エステルと、アルカノールアミンの脂肪酸アミドとを特定の比にて配合したものを合成樹脂の内部添加型帯電防止剤として用いるもので、合成樹脂との相溶性に優れ、合成樹脂に長期間安定した帯電防止効果を付与すると共に、特に成形直後に優れた帯電防止効果を発揮し、該帯電防止剤をオレフィン樹脂またはスチレン樹脂に含有せしめることにより、従来の帯電防止剤では達成できなかった帯電防止効果を有するオレフィン系樹脂組成物又はスチレン系樹脂組成物を提供することができる等の効果を発揮する。
Claims (3)
- A:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンより選ばれたアルカノールアミンと炭素数8〜18の脂肪酸とのエステルと、B:アルカノールアミンと炭素数8〜18の脂肪酸とのアミドとを、A:B=1:99〜20:80の重量比で用いることを特徴とする帯電防止剤。
- 請求項1に記載の帯電防止剤を0.03〜1重量%含有することを特徴とする帯電防止性オレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1に記載の帯電防止剤を0.5〜3重量%含有することを特徴とする帯電防止性スチレン系樹脂組成物。
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JP33182594A JP3871227B2 (ja) | 1994-12-09 | 1994-12-09 | 帯電防止剤及びそれを含む帯電防止性樹脂組成物 |
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