JP3870989B2 - 歯科用真空混練器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は歯科用真空撹拌混練器に係り、特にその撹拌翼に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、歯科用真空撹拌混練器における撹拌翼にて、材料を撹拌・練和する場合、
▲1▼、材料の貫通穴が小さく、粘度の比較的大きな材料は穴をスムーズに通り抜けず、撹拌効率が悪く、また材料の吹き上げを生じたりすることがありさらに、清掃時手指が入る大きさがなく清掃しにくいことがあった。
▲2▼、撹拌容器の内周面と撹拌翼周縁部との隙間が広く、撹拌翼の遠心力によって撹拌容器の内周面に押し付けられた材料が、その隙間に停滞し練りむらが発生することがあった。
▲3▼、撹拌翼からの遠心力で下方から上方に押し出された材料が内周面に沿って移動し、撹拌翼の返し片下面の折り返し部分の量が一定以上になると、材料は撹拌翼の下方に排出されず、上記折り返し部分に溜まるか、または折り返し片の上部を越えて撹拌容器の内周面に付着する結果、練りむらとして残ることがあった。
なお、前記材料の撹拌容器内の量は、通常撹拌翼の高さの3分の2以下の量である。
【0003】
【発明が解決するための手段】
本発明者は上記に鑑み、鋭意研究の結果以下の手段によりこれらの課題を解決した。
(1)歯科における印象材、石膏模型用石膏材料あるいはリン酸塩系埋没材等の歯科用混練材料を調製するための歯科用真空混練器において、
撹拌・混練される被混練材料を収容する容器内に、その内周面に沿って、1mm以下の僅かな間隙を隔てて撹拌翼周縁部が配設された左右一対の撹拌翼を備えた撹拌具を内装し、かつその撹拌翼にはその面積の70〜80%を占める、指先が挿入できる大きさの複数の貫通穴を、左右翼に略1/2段ずつずらして段違いに交互に設け、さらに前記各貫通穴間の仕切体横側延長線上の撹拌翼周縁部に円弧状の窪み部を設け、そしてさらに各撹拌翼の上端に返し片を水平線より上向きに突設してなることを特徴とする歯科用真空混練器。
(2)各撹拌翼の上方に設けられる貫通穴が、上端の直下部にまで形設されていることを特徴とする(1)項に記載の歯科用真空混練器。
(3)撹拌翼が合成樹脂製のものであることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の歯科用真空混練器。
【0004】
【発明の実施の形態】
本発明の歯科用真空混練器の構造及び作用を図に基づいて説明する。
【0005】
【実施例】
図1は本発明の歯科用真空混練器の外観図である。
図において、1は混練器、2は撹拌器、3は真空ゲージ、4は作業時間設定タイマー、5はパワースイッチ、6は撹拌翼を示す。
図2は 図1の容器カバーを外した内部の配置外観斜視図である。
図において、7は撹拌翼回転用モータ、8は真空吸引部を示す。
図3は図2の撹拌器部の説明図である。
図において、9は吸着部、10は撹拌容器、11は撹拌翼シャフト、12は撹拌容器蓋、13は容器排気孔、14はカップリングギヤ部、15は撹拌機シャフト、16は吸気管フィルター、17は吸気管、を示す。
【0006】
まず、歯科用真空混練器の概要を説明する。
周知のように、歯科における印象材、技工用の模型用石膏あるいはリン酸塩系埋没材を水又は混合液を加えて撹拌・練和する場合、前記型材料に空気が混入されている時は品質が悪化するため、材料を撹拌する過程で排気する。
図1〜図3において、前記材料を撹拌容器2の中に入れ、撹拌容器蓋12を被せ、この蓋12の表面よりでている撹拌翼シャフト11を、混練器1の筺体下面に設けられた吸着部9の中央の撹拌機シャフト15に、カップリングギヤ部14によって係合させるように、撹拌容器蓋12の上面を吸着部9に当接し、パワースイッチ5を操作すると、エジェクター真空発生器(図示せず)の真空吸引部8より、吸気管17及び吸気管フィルター16を介して撹拌容器10内の空気は、撹拌容器蓋12の容器排気孔13を通って前記真空発生器に吸引され、撹拌容器10は撹拌容器蓋12ごと吸着部9に吸着保持される。
従って、予め回転速度を設定し、作業時間設定タイマー4を所要時間に合わせておき、撹拌翼回転用モータ7を作動させると、前記材料を空気を除去しながら撹拌できる。
また、上記吸引の真空度は真空ゲージ3によって表示され、設定時間が終了すると真空発生器は停止し、撹拌容器10は吸着部9より離脱される。
【0007】
次ぎに、前記に述べた歯科用真空混練器における材料の撹拌・練和を行う撹拌部の撹拌容器と撹拌翼の構造と作用について説明する。
先に従来の撹拌容器と撹拌翼の構造と作用を図に基づいて述べる。
図5は、従来の撹拌部の外観図である。
図において、26は従来の撹拌翼を示す。
図6は、従来の撹拌翼の詳細図で、
(イ)図は正面図、(ロ)図は平面図、(ハ)図は(ロ)図の返し部の仰角図、(ニ)図は撹拌容器内周面と撹拌翼周縁部との隙間(近接距離)の拡大図である。
図において、27は材料の貫通穴、28は返し片、29は返し片の仰角、30は撹拌容器内周面と撹拌翼周縁部との隙間(近接距離)を示す。
図7は図6(ロ)のB−B′矢視図の撹拌翼と、材料と、撹拌翼返し部及び撹拌容器内周面との関係を示す説明図、である。
図において31は材料、31′は練りむら、32は折り返し部、33は材料の上方移動方向矢印、34は材料の下方移動方向矢印、35は返し片上面を示す。
【0008】
図6に示したように、撹拌翼26の貫通穴27は左右交互に段違いに配設されており、この穴で交互に材料を切り撹拌を行う。
穴の形状は同一の楕円形であり、楕円の径は手指の約半値幅でまた、左右最上段の貫通穴は、返し片28の下端の折り返し部32より離れて設けられていた。
しかし、上記の配置により、
▲1▼、図5及び図6の(イ)図に示したように、上記材料貫通穴27の径が小さいため粘度の比較的大きな材料は穴をスムーズに通り抜けず、撹拌効率が悪かった。
また、上記のため材料31が吹き上げを生じたりすることがありさらに、貫通穴27に清掃時手指が入る大きさがないため、清掃しにくいことがあった。
▲2▼、図5及び図6の(ニ)図に示したように、撹拌容器10の内周面と撹拌翼26の周縁部との隙間30が広く、材料31が該隙間30を通過する際に圧縮されることで得られる練和効果が低減すると共に、撹拌翼26の遠心力によって撹拌容器10の内周面に押し付けられた材料31が、その隙間30に停滞し練りむらが発生する(図7)ことがあった。
▲3▼、また、図7に示したように、撹拌翼26からの遠心力で下方から上方に押し出された材料31が前記撹拌容器10の内周面に沿って移動して、撹拌翼の返し部下面の折り返し部32への付着が一定量以上になると、材料31は、撹拌翼貫通穴27を通って材料の下方移動方向矢印34のように下に排出されにくくなり、上記の折り返し部32に溜まるかあるいは、折り返し片35の上部を越えて上方移動方向矢印33のように移動し、撹拌容器10の壁面に付着する。
その結果、図の撹拌翼26と撹拌容器10の内周面との間に、クロスハッチで示した練りむら31′のように、材料31は各所に練りむらとして残ることがあった。
【0009】
次に、本発明の撹拌容器と撹拌翼の構造と作用を図に基づいて説明する。
図3は、本発明の撹拌部分の外観図である。
図4は、本発明の撹拌翼の詳細図で、
(イ)図は正面図、(ロ)図は平面図、(ハ)図は(イ)図の側面図、(ニ)図は(ロ)図の返し部の仰角図、(ホ)図は撹拌容器内周面と撹拌翼周縁部との隙間(近接距離)及び窪み部の配置拡大図である。
図において、18は左上部の貫通穴、18′は貫通穴上下の仕切体、19は右上部の貫通穴、19′は貫通穴の仕切体、20〜22は中央及び下部の貫通穴、20′、21′は中央及び下部の貫通穴の仕切体、23は撹拌翼周縁部の窪み部、24は返し片、24′は返し片の仰角、25は容器内周面と撹拌翼周縁部との隙間を示す。
【0010】
図3及び図4の(イ)図に示したように、
撹拌材料容器10内の撹拌翼6が、左右交互に略1/2段ずつづらして段違いに配設された左上部の材料貫通穴18及び右上部の材料貫通穴19を、それぞれ左上端の返し部24及び右上端の返し部24の直下に設け、また、撹拌翼6の中央及び下部には複数個の貫通穴20〜22を設け、前記各穴の縦径は指先が入る大きさとした。前記各貫通穴の総面積は撹拌翼6の面積の70〜80%を占める。
前記返し片24の直下に貫通穴18及び19を設けたことで、返し片24で受け止めた材料は停滞せず撹拌翼6の回転により返し片24の下面反対側に貫通穴18及び19を通って落下し、返し片24の上面に付着する材料はみられない。
また、中央部及び下部の貫通穴20〜22も前記指先が入る大きさに拡大されており、このため、粘度の比較的大きな材料も貫通穴をスムーズに通り抜ける事ができ、撹拌効率が向上した。
さらに、上記のため材料の吹き上げが生じにくくなると共に、貫通穴18〜22は清掃時、前記指先が入るため、清掃がし易くなった。
【0011】
次に図4の(ホ)図に示したように、撹拌翼6の周縁部と、撹拌材料容器10の内周面との隙間25が、1mm以下になるように設定したため、該隙間25にある材料に対して、撹拌翼6の周縁部と、撹拌材料容器10の内周面間の摩擦が増大し、撹拌翼6からの遠心力で下方から上方に押し出された材料が撹拌容器10の内周面に沿って移動することが押さえられる。
ただし、単に隙間を小さくしただけでは、粘度を有する材料が通過しにくく、練り込みの効果が低減することがあるため、図4の(イ)図及び(ホ)図に示したように撹拌翼6周縁部の、前記材料貫通穴18〜22の上下の中間位置に、左右段違いに窪み部23を設けた。
このため、材料は上記の窪み部23によって隙間25を通過でき、練り残しを少なくすると共に、材料が窪み部23を通過する際に材料を圧縮し、練り込み効果が得られる。
【0012】
一方、撹拌翼6の遠心力により撹拌容器10の内周面に材料が一定厚の層を形成し、この層は前記内周面の摩擦力と、材料の粘性によって保持され、他の材料と混り合うことなく、最終的に練りむらとして見つかるが、これをなくすには、前記の層になんらかの外力を与えその材料に流動性を持たせて、前記内周面より引き離すようにすればよい。 前記の窪み部23は、この外力を発生させる。
即ち、前記容器10の内周面の摩擦力と粘性によって保持された材料に対して、撹拌翼6の回転により、前記左右段違いに設けてある窪み部23と、平面とが交互にくることによって、その微小箇所で圧力変動を生じさせ、前記材料の内周面での保持力を低減させる。
さらに、回転翼6の回転力や遠心力による材料の上昇力などの外力との相互作用によって、前記材料が付着保持されている層を容器10の内周面より剥離し、他の物質と混合し易くすることができる。
以上説明した構造と作用により、本発明の混練器においては、従来みられた材料の練りむらが解消され、高品質の型材を取得することができる。
また、撹拌翼の材質は、従来は防錆金属であったが、本発明では合成樹脂(デルリン、フッ素樹脂等)を採用し、多少弾力性を持たせると共に、製作コストの低減を図っている。
【0013】
【発明の効果】
本願発明によれば、下記のような優れた効果を発揮する。
1、本発明の請求項1の発明によれば
被混練材料を収容する容器内に、その内周面に沿って、1mm以下の僅かな間隙を隔てて撹拌翼周縁部が配設された左右一対の撹拌翼を備えた撹拌具を内装し、かつその撹拌翼にはその面積の70〜80%を占め、指先が挿入できる大きさの複数の貫通穴を、左右翼に略1/2段ずつずらして段違いに交互に設け、また、各貫通穴間の仕切体横側延長線上の撹拌翼周縁部に円弧状の窪み部を設け、さらに各撹拌翼の上端に返し片を水平線より上向きに突設した構造とし、
上記の窪み部を設けたことにより、材料は窪み部を通って隙間を通過し易くなり、練り残しを少なくすると共に、材料が窪み部を通過する際に材料を圧縮し、練り込み効果が得られる。
さらに、窪み部は、容器の内周面の摩擦力と粘性により容器の内周面に保持された材料に対して、撹拌翼の回転によって窪み部と平面が交互にくることで、その微小箇所で圧力変動を生じさせ、材料の内周面の保持力を低減させる外力を発生させており、回転翼の回転力や遠心力による材料の上昇力などの外力との相互作用によって、容器の内周面に保持された材料を剥離し、他の物質と混合し易くした。
そして、前記貫通穴は指先が挿入できるので、粘度の比較的大きな材料も貫通穴をスムーズに通り抜ける事ができ、撹拌効率が向上するとともに、吹き上げが生じにくくなり、さらに、清掃時指先による清掃がし易くなった。
また、容器内周面と撹拌翼周縁部との僅かな間隙が、1mm以下であるため、隙間にある材料に対して、撹拌翼周縁部と撹拌材料容器の内周面の摩擦が増大し、材料の撹拌翼上方への移動が押さえられる。
【0014】
2、請求項2の発明によれば、
撹拌翼の上方に設けられる貫通穴が、上端返し片の直下部にまで形設されているため、返し片で受け止めたられた材料は停滞せず、返し片下面より撹拌翼の反対面に落下し、返し片上面及び撹拌機周縁部の上方に材料が付着しない。
3、請求項3の発明によれば、
撹拌翼が合成樹脂製のものであるため、多少弾力性があり撹拌・練和をスムーズに行うことができまた、製作コストの低減を図ることができる。
以上述べたように、本発明の混練器においては、従来みられた材料の練りむらが解消され、高品質の型材を取得することができるため、作業効率の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の歯科用真空混練器の外観図。
【図2】図1の容器カバーを外した内部の配置外観斜視図。
【図3】図2の撹拌部の説明図。
【図4】本発明の撹拌翼の詳細図。
【図5】従来の撹拌部分の外観図。
【図6】従来の撹拌翼の詳細図。
【図7】図6(ロ)図のB−B′矢視図の撹拌翼と、材料と、撹拌翼返し部及び撹拌容器内周面との関係を示す説明図。
【符号の説明】
1:真空混練器 2:撹拌器
3:真空ゲージ 4:作業時間設定タイマー
5:パワースイッチ 6:撹拌翼
7:撹拌翼回転用モータ 8:真空吸引部
9:吸着部 10:撹拌容器
11:撹拌翼シャフト 12:撹拌容器蓋
13:容器排気孔 14:カップリングギヤ部
15:撹拌機シャフト 16:吸気管フィルター
17:吸気管 18:左上部の貫通穴
18′:貫通穴間の仕切体 19:右上部の貫通穴
19′:貫通穴間の仕切体 20〜22:中央及び下部の貫通穴
20′、21′貫通穴間の仕切体 23:撹拌翼周縁部の窪み部
24:返し片 24′:返し片の仰角
25:内周面と撹拌翼周縁部との隙間 26:従来の撹拌翼
27:材料の貫通穴 28:返し片
29:返し片の仰角 30:内周面と撹拌翼周縁部との隙間
31:材料 31′:練りむら
32:折り返し部 33:材料の上方移動方向矢印
34:材料の下方移動方向矢印 35:返し片上面
Claims (3)
- 歯科における印象材、石膏模型用石膏材料あるいはリン酸塩系埋没材等の歯科用混練材料を調製するための歯科用真空混練器において、
撹拌・混練される被混練材料を収容する容器内に、その内周面に沿って、1mm以下の僅かな間隙を隔てて撹拌翼周縁部が配設された左右一対の撹拌翼を備えた撹拌具を内装し、かつその撹拌翼にはその面積の70〜80%を占める、指先が挿入できる大きさの複数の貫通穴を、左右翼に略1/2段ずつずらして段違いに交互に設け、さらに前記各貫通穴間の仕切体横側延長線上の撹拌翼周縁部に円弧状の窪み部を設け、そしてさらに各撹拌翼の上端に返し片を水平線より上向きに突設してなることを特徴とする歯科用真空混練器。 - 各撹拌翼の上方に設けられる貫通穴が、上端の直下部にまで形設されていることを特徴とする請求項1記載の歯科用真空混練器。
- 撹拌翼が合成樹脂製のものであることを特徴とする請求項1又は2記載の歯科用真空混練器。
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