JP3870459B2 - 量子細線の製造方法 - Google Patents
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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン基板の表面にシリコン細線を成長させることによりシリコン量子細線を形成する量子細線の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
量子細線は、そのナノメータサイズの効果によってバルクとは異なった新しい物性を得ることができる。例えば、シリコン(Si)量子細線は、図5に示したように、細線径が小さくなるに従ってバンドギャップが大きくなる。しかもバルクでは間接遷移型バンドギャップを持っている材料が、直接遷移型バンドギャップを持った材料に変化する。これにより、シリコン量子細線では、励起された電子−正孔の再結合発光効率は著しく増加し、発光波長も短波長側にシフトして可視光発光が可能になる。
【0003】
このような物性を得ることができるシリコン量子細線は、従来、シリコン基板を電子ビームリソグラフィなどの方法を用いてエッチングすることにより製造されていた。しかし、この方法では広い領域にわたって形状のそろったシリコン量子細線を集積して製造することが難しい。
【0004】
そこで、VLS(Vapor−Liquid−Solid)法(E. I. Givargizov, J.Vac.Sci.Techno.B11(2), p.449参照)を用いてシリコン基板に直接シリコン量子細線を多数成長させる方法が提案されている。これは、シリコン基板に金(Au)を蒸着してシリコン基板の表面にシリコンと金との溶融合金滴を形成した後、シリコンの原料ガスを供給しつつ加熱してシリコン量子細線を成長させる方法である(Wagner et al., Appl. Phys. Lett. 4, no. 5, 89 (1964), Givargizov, J. Cryst. Growth, 31, 20 (1975) 参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法で成長させたシリコン量子細線の直径は10〜100nm程度であり、この太さでは充分な量子効果を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、直径が小さく充分な量子効果を有する量子細線の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る量子細線の製造方法は、シリコン基板の上にシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属を蒸着する蒸着工程と、金属を蒸着したシリコン基板をシリコン原料ガス含有雰囲気中において加熱し金属を触媒としてシリコン原料ガスを分解しシリコン基板の表面にシリコン細線を成長させる細線成長工程と、成長させたシリコン細線を酸化して表層部に酸化膜を形成すると共に中心部にシリコン量子細線を形成する酸化工程と、シリコン細線の先端の金属を除去する金属除去工程と、シリコン細線の表層部の酸化膜を除去する酸化膜除去工程とを含むものである。
【0008】
本発明に係る量子細線の製造方法では、まず、シリコン基板の上にシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属を蒸着し、そののち、シリコン原料ガス含有雰囲気中において加熱する。これにより、シリコン基板の上に蒸着した金属が凝集してシリコンと金属との溶融合金滴を形成すると共に、この溶融化合物合金滴においてシリコン原料ガスの分解反応が選択的に起こりシリコン基板の上にシリコン細線が成長する。次いで、このシリコン細線を酸化し表層部に酸化膜を形成する。これにより、シリコン細線の中心部に直径が小さいシリコン量子細線が形成される。従って、シリコン細線の先端の金属と表層部の酸化膜を適宜除去することにより、直径が小さいシリコン量子細線が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1および図2は本発明の一実施の形態に係る量子細線の製造方法を表すものである。この実施の形態においては、まず、図1(a)に示したように、例えば比抵抗が0.4〜4Ωcmの(111)シリコン(Si)基板11を図示しない真空容器内に挿入して、例えば5×10-8Torrの真空度において1000℃で加熱し表面の清浄化を行う。
【0011】
次いで、図1(b)に示したように、このシリコン基板11を450℃以上に加熱し、表面にシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属である金(Au)12を例えば0.6nm蒸着する(蒸着工程)。シリコン基板11の加熱は、例えばシリコン基板11の長軸に沿って直流電流を流して行い、好ましくは、450℃以上650℃以下で加熱する。また、金12の蒸着は、例えばタングステン(W)フィラメントを用いて行う。これにより、金12はシリコン基板11の表面のシリコンを一部溶解し、凝集して、図1(c)に示したように、溶融合金滴12aを形成する。
【0012】
なお、この蒸着工程において蒸着する金12の厚さを0.6nmと薄くしているのは、溶融合金滴12aの大きさを小さくすることにより後述する細線成長工程で成長させるシリコン細線13(図1(d)参照)の太さを細くするためである。
【0013】
続いて、図1(d)に示したように、シリコン基板11を450℃以上(好ましくは450℃以上650℃以下)に加熱しながら、例えばシラン(SiH4 )ガスをシリコン原料ガスとして図示しない真空容器内に導入する(細線成長工程)。導入するシランガスの量は、例えば図示しない真空容器内におけるシランガスの圧力が0.5Torr未満となるように調節する。なお、好ましくは、0.15Torr以下となるように調節する。
【0014】
これにより、シランガスは、溶融合金滴12aを触媒として式1に示した分解反応により分解しシリコンを生ずる。溶融合金滴12aのないシリコン基板11の表面11aにおいては、シランガスの分解反応が起こらない。
【式1】
SiH4 →Si+2H2
【0015】
シランガスから分解したシリコンは溶融合金滴12aの中に拡散し、溶融合金滴12aとシリコン基板11との界面にエピタキシャル結合する。これにより、図1(d)に示したように、直径が約10〜100nmのシリコン細線13がシリコン基板11の上に成長する。このシリコン細線13の直径は、溶融合金滴12aの直径により決定される。
【0016】
このようにして成長させたシリコン細線13の一例についてSEM(ScanningElectron Microscope ;走査電子顕微鏡)写真を図3に示す。なお、この写真ではシリコン基板11に対して斜め上方から撮像している。このシリコン細線13は、加熱温度を500℃,シランガスの圧力を10mTorrとして約1時間成長させたものである。このように、直径が約100nmのシリコン細線13がシリコン基板11に対してほぼ垂直に成長している。
【0017】
なお、この細線成長工程においてシランガスをシリコン原料ガスとして用いているのは、図3に示したように太さが長さ方向において均一のシリコン細線13を成長させることができると共に、他のシリコン原料ガスに比べて直径が十分に小さいシリコン細線13を得ることができるからである。
【0018】
また、この細線成長工程においてシリコン基板11の加熱温度を450℃以上,シランガスの圧力を0.5Torr未満としているのは、加熱温度が450℃未満あるいはシランガスの圧力が0.5Torr以上ではシリコン細線13がシリコン基板11に対して垂直に成長せずに屈曲してしまい、図3に示したような良好な形状のシリコン細線13を得ることができないからである。
【0019】
更に、この細線成長工程においてシリコン基板11の加熱温度を好ましくは650℃以下としているのは、650℃より高い温度ではシリコン細線13の直径が太くなり、十分に細いシリコン細線13を得ることができないからである。
【0020】
このようにシリコン細線13を成長させたのち、図2(a)に示したように、35℃の王水(HNO3 :HCl=1:3)に1分間浸漬してシリコン細線13の先端の合金滴12a(すなわちシリコン基板11の表面に蒸着した金)をエッチングし除去する(金属除去工程)。これにより、シリコン基板11の表面にシリコン細線13のみが残存した状態となる。
【0021】
そののち、図2(b)に示したように、このシリコン細線13が成長されたシリコン基板11を例えば酸素(O2 )ガスの圧力が500Torrの酸素ガス含有雰囲気中において700℃の温度で適宜な時間加熱する(酸化工程)。これにより、シリコン細線13およびシリコン基板11の表層部には酸化膜13a,11bが形成され、シリコン細線13の中心部には酸化膜13aの分だけシリコン細線13よりも直径が小さく例えば10nm未満の直径のシリコン量子細線13bが形成される。
【0022】
シリコン細線13を酸化したのち、図2(c)に示したように、HF(50%)に室温で1分間浸漬してシリコン細線13の表層部の酸化膜13aおよびシリコン基板11の表層部の酸化膜11bをエッチングし除去する(酸化膜除去工程)。これにより、シリコン基板11の表面にシリコン量子細線13bのみが残存した状態となり、直径が十分に小さいシリコン量子細線13bが得られる。
【0023】
なお、このシリコン量子細線13bの一例についてTEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)写真を図4に示す。図4(a)は酸化する前のシリコン細線13のTEM明視像、図4(b)は酸化工程を経た後のシリコン量子細線13b(Siコア部分)のTEM暗視像を示す。このシリコン量子細線13bは、直径が約25nmのシリコン細線13を500Torrの酸素ガス雰囲気中において700℃の温度で1時間加熱して形成したものである。このように、直径が約15nmと十分に小さく良好な形状のシリコン量子細線13bが形成されている。
【0024】
このように本実施の形態に係る量子細線の製造方法によれば、シリコン基板11の表面に溶融合金滴12aを形成しそれを触媒としてシリコン原料ガスを分解してシリコン基板の上にシリコン細線13を成長させたのちそのシリコン細線13の表層部を酸化するようにしたので、直径が十分に小さく十分な量子効果を得ることができるシリコン量子細線13bを形成できる。
【0025】
また、この量子細線の製造方法によれば、蒸着工程において金12を0.6nmと薄い厚さで蒸着するようにしたので、溶融合金滴12aの大きさを小さくすることができ、直径が十分に小さいシリコン細線13を成長させることができる。すなわち、直径が小さいシリコン量子細線13bを形成することができる。
【0026】
更に、この量子細線の製造方法によれば、細線成長工程においてシリコン原料ガスとしてシランガスを用いるようにしたので、直径が十分に小さく太さが長さ方向に均一なシリコン細線13を成長させることができる。すなわち、直径が小さく良好な形状のシリコン量子細線13bを得ることができる。
【0027】
加えて、この量子細線の製造方法によれば、細線成長工程において0.5Torr未満のシランガス雰囲気中で450℃以上に加熱するようにしたので、シリコン基板11に対してほぼ垂直なシリコン細線13を成長させることができる。すなわち、良好な形状のシリコン量子細線13bを得ることができる。
【0028】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態においては、蒸着工程でシリコン基板11を加熱しながら金12を蒸着し蒸着と同時にシリコン基板11の表面に溶融合金滴12aを形成するようにしたが、シリコン基板11に金12を蒸着したのちシランガスを含む雰囲気中において加熱して溶融合金滴12aを形成するようにしてもよく、シリコン基板11に金12を蒸着したのちシランガスを導入する前に加熱して溶融合金滴12aを形成するようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施の形態においては、蒸着工程でシリコン基板11の表面に金12を0.6nmの厚さで蒸着し溶融合金滴12aの大きさを小さくするようにしたが、金12の厚さが5nm以下であれば溶融合金滴12aの大きさを上記実施の形態と同様に十分小さくすることができる。
【0030】
更に、上記実施の形態においては、蒸着工程でシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属として金12を用いるようにしたが、金12に代えて例えば白金(Pt),銀(Ag),スズ(Sn)等を用いるようにしてもよい。この場合も、金12と同様に、加熱されることによりシリコンを一部溶解して凝集し、シリコン基板11の表面に溶融合金滴を形成する。また、これらの金属も、金と同様に、5nm以下の厚さで蒸着することにより、溶融合金滴の大きさを上記実施の形態と同様に十分小さくすることができる。
【0031】
加えて、上記実施の形態においては、細線成長工程でシランガスを直接図示しない真空容器内に導入するようにしたが、シランガスをヘリウム(He)ガスやアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスで希釈して真空容器内に導入するようにしてもよい。
【0032】
更にまた、上記実施の形態においては、細線成長工程でシリコンの原料ガスとしてシランガスを用いるようにしたが、シランガスに代えてジシラン(Si2 H6 )ガスまたはトリシラン(Si3 H8 )ガスを用いるようにしてもよく、あるいはシランガス,ジシランガスおよびトリシランガスのうちの少なくとも2種以上を混合した混合ガスを用いるようにしてもよい。これらの場合も、シランガスと同様の条件で直径が十分に小さく良好な形状のシリコン細線を成長させることができる。
【0033】
加えてまた、これらのシランガス,ジシランガスあるいはトリシランガスに限らず、水素(H2 )ガスで希釈した塩化珪素(SiCl4 )ガスなど分解反応によりシリコンを生成し得るガスであればシリコンの原料ガスとして用いることができる。その場合のガス圧や加熱温度はガスの種類に合わせて適宜決定する。
【0034】
更にまた、上記実施の形態においては、シリコン細線13を成長させた細線成長工程の次に合金滴12aを除去し、そののちシリコン細線13を酸化するようにしたが、細線成長工程に続いてシリコン細線13を酸化し、そののち合金滴12aを除去するようにしてもよい。また、この際、化合物合金滴12aの除去と酸化部13aの除去はいずれを先に行ってもよい。
【0035】
加えてまた、上記実施の形態においては、酸化工程でシリコン細線13を例えば酸素ガスの圧力が500Torrの酸素含有雰囲気中で700℃に加熱するようにしたが、これらの酸化の条件はシリコン細線13の太さに応じて適宜決定される。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る量子細線の製造方法によれば、シリコン基板の上に触媒となる金属を蒸着してシリコン基板の上にシリコン細線を成長させたのちこのシリコン細線の表層部を酸化するようにしたので、直径が十分に小さいシリコン量子細線を形成することができる。よって、十分な量子効果を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る量子細線の製造方法の各工程を表す断面図である。
【図2】図1に続く各工程を表す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る方法によって成長させたシリコン細線を撮像したSEM写真である。
【図4】本発明の実施の形態に係る方法によって形成したシリコン量子細線を撮像したTEM写真である。
【図5】シリコン量子細線の直径とバンドギャップとの関係を表す関係図である。
【符号の説明】
11…シリコン基板、12…金(触媒となる金属)、12a…溶融合金滴、13…シリコン細線、13a…酸化膜、13b…シリコン量子細線
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン基板の表面にシリコン細線を成長させることによりシリコン量子細線を形成する量子細線の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
量子細線は、そのナノメータサイズの効果によってバルクとは異なった新しい物性を得ることができる。例えば、シリコン(Si)量子細線は、図5に示したように、細線径が小さくなるに従ってバンドギャップが大きくなる。しかもバルクでは間接遷移型バンドギャップを持っている材料が、直接遷移型バンドギャップを持った材料に変化する。これにより、シリコン量子細線では、励起された電子−正孔の再結合発光効率は著しく増加し、発光波長も短波長側にシフトして可視光発光が可能になる。
【0003】
このような物性を得ることができるシリコン量子細線は、従来、シリコン基板を電子ビームリソグラフィなどの方法を用いてエッチングすることにより製造されていた。しかし、この方法では広い領域にわたって形状のそろったシリコン量子細線を集積して製造することが難しい。
【0004】
そこで、VLS(Vapor−Liquid−Solid)法(E. I. Givargizov, J.Vac.Sci.Techno.B11(2), p.449参照)を用いてシリコン基板に直接シリコン量子細線を多数成長させる方法が提案されている。これは、シリコン基板に金(Au)を蒸着してシリコン基板の表面にシリコンと金との溶融合金滴を形成した後、シリコンの原料ガスを供給しつつ加熱してシリコン量子細線を成長させる方法である(Wagner et al., Appl. Phys. Lett. 4, no. 5, 89 (1964), Givargizov, J. Cryst. Growth, 31, 20 (1975) 参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法で成長させたシリコン量子細線の直径は10〜100nm程度であり、この太さでは充分な量子効果を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、直径が小さく充分な量子効果を有する量子細線の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る量子細線の製造方法は、シリコン基板の上にシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属を蒸着する蒸着工程と、金属を蒸着したシリコン基板をシリコン原料ガス含有雰囲気中において加熱し金属を触媒としてシリコン原料ガスを分解しシリコン基板の表面にシリコン細線を成長させる細線成長工程と、成長させたシリコン細線を酸化して表層部に酸化膜を形成すると共に中心部にシリコン量子細線を形成する酸化工程と、シリコン細線の先端の金属を除去する金属除去工程と、シリコン細線の表層部の酸化膜を除去する酸化膜除去工程とを含むものである。
【0008】
本発明に係る量子細線の製造方法では、まず、シリコン基板の上にシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属を蒸着し、そののち、シリコン原料ガス含有雰囲気中において加熱する。これにより、シリコン基板の上に蒸着した金属が凝集してシリコンと金属との溶融合金滴を形成すると共に、この溶融化合物合金滴においてシリコン原料ガスの分解反応が選択的に起こりシリコン基板の上にシリコン細線が成長する。次いで、このシリコン細線を酸化し表層部に酸化膜を形成する。これにより、シリコン細線の中心部に直径が小さいシリコン量子細線が形成される。従って、シリコン細線の先端の金属と表層部の酸化膜を適宜除去することにより、直径が小さいシリコン量子細線が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1および図2は本発明の一実施の形態に係る量子細線の製造方法を表すものである。この実施の形態においては、まず、図1(a)に示したように、例えば比抵抗が0.4〜4Ωcmの(111)シリコン(Si)基板11を図示しない真空容器内に挿入して、例えば5×10-8Torrの真空度において1000℃で加熱し表面の清浄化を行う。
【0011】
次いで、図1(b)に示したように、このシリコン基板11を450℃以上に加熱し、表面にシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属である金(Au)12を例えば0.6nm蒸着する(蒸着工程)。シリコン基板11の加熱は、例えばシリコン基板11の長軸に沿って直流電流を流して行い、好ましくは、450℃以上650℃以下で加熱する。また、金12の蒸着は、例えばタングステン(W)フィラメントを用いて行う。これにより、金12はシリコン基板11の表面のシリコンを一部溶解し、凝集して、図1(c)に示したように、溶融合金滴12aを形成する。
【0012】
なお、この蒸着工程において蒸着する金12の厚さを0.6nmと薄くしているのは、溶融合金滴12aの大きさを小さくすることにより後述する細線成長工程で成長させるシリコン細線13(図1(d)参照)の太さを細くするためである。
【0013】
続いて、図1(d)に示したように、シリコン基板11を450℃以上(好ましくは450℃以上650℃以下)に加熱しながら、例えばシラン(SiH4 )ガスをシリコン原料ガスとして図示しない真空容器内に導入する(細線成長工程)。導入するシランガスの量は、例えば図示しない真空容器内におけるシランガスの圧力が0.5Torr未満となるように調節する。なお、好ましくは、0.15Torr以下となるように調節する。
【0014】
これにより、シランガスは、溶融合金滴12aを触媒として式1に示した分解反応により分解しシリコンを生ずる。溶融合金滴12aのないシリコン基板11の表面11aにおいては、シランガスの分解反応が起こらない。
【式1】
SiH4 →Si+2H2
【0015】
シランガスから分解したシリコンは溶融合金滴12aの中に拡散し、溶融合金滴12aとシリコン基板11との界面にエピタキシャル結合する。これにより、図1(d)に示したように、直径が約10〜100nmのシリコン細線13がシリコン基板11の上に成長する。このシリコン細線13の直径は、溶融合金滴12aの直径により決定される。
【0016】
このようにして成長させたシリコン細線13の一例についてSEM(ScanningElectron Microscope ;走査電子顕微鏡)写真を図3に示す。なお、この写真ではシリコン基板11に対して斜め上方から撮像している。このシリコン細線13は、加熱温度を500℃,シランガスの圧力を10mTorrとして約1時間成長させたものである。このように、直径が約100nmのシリコン細線13がシリコン基板11に対してほぼ垂直に成長している。
【0017】
なお、この細線成長工程においてシランガスをシリコン原料ガスとして用いているのは、図3に示したように太さが長さ方向において均一のシリコン細線13を成長させることができると共に、他のシリコン原料ガスに比べて直径が十分に小さいシリコン細線13を得ることができるからである。
【0018】
また、この細線成長工程においてシリコン基板11の加熱温度を450℃以上,シランガスの圧力を0.5Torr未満としているのは、加熱温度が450℃未満あるいはシランガスの圧力が0.5Torr以上ではシリコン細線13がシリコン基板11に対して垂直に成長せずに屈曲してしまい、図3に示したような良好な形状のシリコン細線13を得ることができないからである。
【0019】
更に、この細線成長工程においてシリコン基板11の加熱温度を好ましくは650℃以下としているのは、650℃より高い温度ではシリコン細線13の直径が太くなり、十分に細いシリコン細線13を得ることができないからである。
【0020】
このようにシリコン細線13を成長させたのち、図2(a)に示したように、35℃の王水(HNO3 :HCl=1:3)に1分間浸漬してシリコン細線13の先端の合金滴12a(すなわちシリコン基板11の表面に蒸着した金)をエッチングし除去する(金属除去工程)。これにより、シリコン基板11の表面にシリコン細線13のみが残存した状態となる。
【0021】
そののち、図2(b)に示したように、このシリコン細線13が成長されたシリコン基板11を例えば酸素(O2 )ガスの圧力が500Torrの酸素ガス含有雰囲気中において700℃の温度で適宜な時間加熱する(酸化工程)。これにより、シリコン細線13およびシリコン基板11の表層部には酸化膜13a,11bが形成され、シリコン細線13の中心部には酸化膜13aの分だけシリコン細線13よりも直径が小さく例えば10nm未満の直径のシリコン量子細線13bが形成される。
【0022】
シリコン細線13を酸化したのち、図2(c)に示したように、HF(50%)に室温で1分間浸漬してシリコン細線13の表層部の酸化膜13aおよびシリコン基板11の表層部の酸化膜11bをエッチングし除去する(酸化膜除去工程)。これにより、シリコン基板11の表面にシリコン量子細線13bのみが残存した状態となり、直径が十分に小さいシリコン量子細線13bが得られる。
【0023】
なお、このシリコン量子細線13bの一例についてTEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)写真を図4に示す。図4(a)は酸化する前のシリコン細線13のTEM明視像、図4(b)は酸化工程を経た後のシリコン量子細線13b(Siコア部分)のTEM暗視像を示す。このシリコン量子細線13bは、直径が約25nmのシリコン細線13を500Torrの酸素ガス雰囲気中において700℃の温度で1時間加熱して形成したものである。このように、直径が約15nmと十分に小さく良好な形状のシリコン量子細線13bが形成されている。
【0024】
このように本実施の形態に係る量子細線の製造方法によれば、シリコン基板11の表面に溶融合金滴12aを形成しそれを触媒としてシリコン原料ガスを分解してシリコン基板の上にシリコン細線13を成長させたのちそのシリコン細線13の表層部を酸化するようにしたので、直径が十分に小さく十分な量子効果を得ることができるシリコン量子細線13bを形成できる。
【0025】
また、この量子細線の製造方法によれば、蒸着工程において金12を0.6nmと薄い厚さで蒸着するようにしたので、溶融合金滴12aの大きさを小さくすることができ、直径が十分に小さいシリコン細線13を成長させることができる。すなわち、直径が小さいシリコン量子細線13bを形成することができる。
【0026】
更に、この量子細線の製造方法によれば、細線成長工程においてシリコン原料ガスとしてシランガスを用いるようにしたので、直径が十分に小さく太さが長さ方向に均一なシリコン細線13を成長させることができる。すなわち、直径が小さく良好な形状のシリコン量子細線13bを得ることができる。
【0027】
加えて、この量子細線の製造方法によれば、細線成長工程において0.5Torr未満のシランガス雰囲気中で450℃以上に加熱するようにしたので、シリコン基板11に対してほぼ垂直なシリコン細線13を成長させることができる。すなわち、良好な形状のシリコン量子細線13bを得ることができる。
【0028】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態においては、蒸着工程でシリコン基板11を加熱しながら金12を蒸着し蒸着と同時にシリコン基板11の表面に溶融合金滴12aを形成するようにしたが、シリコン基板11に金12を蒸着したのちシランガスを含む雰囲気中において加熱して溶融合金滴12aを形成するようにしてもよく、シリコン基板11に金12を蒸着したのちシランガスを導入する前に加熱して溶融合金滴12aを形成するようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施の形態においては、蒸着工程でシリコン基板11の表面に金12を0.6nmの厚さで蒸着し溶融合金滴12aの大きさを小さくするようにしたが、金12の厚さが5nm以下であれば溶融合金滴12aの大きさを上記実施の形態と同様に十分小さくすることができる。
【0030】
更に、上記実施の形態においては、蒸着工程でシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属として金12を用いるようにしたが、金12に代えて例えば白金(Pt),銀(Ag),スズ(Sn)等を用いるようにしてもよい。この場合も、金12と同様に、加熱されることによりシリコンを一部溶解して凝集し、シリコン基板11の表面に溶融合金滴を形成する。また、これらの金属も、金と同様に、5nm以下の厚さで蒸着することにより、溶融合金滴の大きさを上記実施の形態と同様に十分小さくすることができる。
【0031】
加えて、上記実施の形態においては、細線成長工程でシランガスを直接図示しない真空容器内に導入するようにしたが、シランガスをヘリウム(He)ガスやアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスで希釈して真空容器内に導入するようにしてもよい。
【0032】
更にまた、上記実施の形態においては、細線成長工程でシリコンの原料ガスとしてシランガスを用いるようにしたが、シランガスに代えてジシラン(Si2 H6 )ガスまたはトリシラン(Si3 H8 )ガスを用いるようにしてもよく、あるいはシランガス,ジシランガスおよびトリシランガスのうちの少なくとも2種以上を混合した混合ガスを用いるようにしてもよい。これらの場合も、シランガスと同様の条件で直径が十分に小さく良好な形状のシリコン細線を成長させることができる。
【0033】
加えてまた、これらのシランガス,ジシランガスあるいはトリシランガスに限らず、水素(H2 )ガスで希釈した塩化珪素(SiCl4 )ガスなど分解反応によりシリコンを生成し得るガスであればシリコンの原料ガスとして用いることができる。その場合のガス圧や加熱温度はガスの種類に合わせて適宜決定する。
【0034】
更にまた、上記実施の形態においては、シリコン細線13を成長させた細線成長工程の次に合金滴12aを除去し、そののちシリコン細線13を酸化するようにしたが、細線成長工程に続いてシリコン細線13を酸化し、そののち合金滴12aを除去するようにしてもよい。また、この際、化合物合金滴12aの除去と酸化部13aの除去はいずれを先に行ってもよい。
【0035】
加えてまた、上記実施の形態においては、酸化工程でシリコン細線13を例えば酸素ガスの圧力が500Torrの酸素含有雰囲気中で700℃に加熱するようにしたが、これらの酸化の条件はシリコン細線13の太さに応じて適宜決定される。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る量子細線の製造方法によれば、シリコン基板の上に触媒となる金属を蒸着してシリコン基板の上にシリコン細線を成長させたのちこのシリコン細線の表層部を酸化するようにしたので、直径が十分に小さいシリコン量子細線を形成することができる。よって、十分な量子効果を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る量子細線の製造方法の各工程を表す断面図である。
【図2】図1に続く各工程を表す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る方法によって成長させたシリコン細線を撮像したSEM写真である。
【図4】本発明の実施の形態に係る方法によって形成したシリコン量子細線を撮像したTEM写真である。
【図5】シリコン量子細線の直径とバンドギャップとの関係を表す関係図である。
【符号の説明】
11…シリコン基板、12…金(触媒となる金属)、12a…溶融合金滴、13…シリコン細線、13a…酸化膜、13b…シリコン量子細線
Claims (5)
- シリコン基板の上にシリコン原料ガスの分解反応において触媒となる金属を蒸着する蒸着工程と、
金属を蒸着したシリコン基板をシリコン原料ガス含有雰囲気中において加熱し金属を触媒としてシリコン原料ガスを分解しシリコン基板の表面にシリコン細線を成長させる細線成長工程と、
成長させたシリコン細線を酸化して表層部に酸化膜を形成すると共に中心部にシリコン量子細線を形成する酸化工程と、
シリコン細線の先端の金属を除去する金属除去工程と、
シリコン細線の表層部の酸化膜を除去する酸化膜除去工程と
を含むことを特徴とする量子細線の製造方法。 - 前記蒸着工程では、金属を5nm以下の厚さで蒸着することを特徴とする請求項1記載の量子細線の製造方法。
- 前記蒸着工程では、金を蒸着することを特徴とする請求項1記載の量子細線の製造方法。
- 前記細線成長工程では、シランガス,ジシランガスあるいはトリシランガスのいずれか少なくとも1種をシリコン原料ガスとして用いることを特徴とする請求項1記載の量子細線の製造方法。
- 前記細線成長工程では、圧力が0.5Torr未満のシリコン原料ガスを含む雰囲気中において450℃以上の温度で加熱することを特徴とする請求項3記載の量子細線の製造方法。
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