JP3870150B2 - 眼科測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼科測定装置に係り、特に、複数のハルトマン画像を処理して被検眼の光学特性を求める眼科測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、医学用に用いられる光学機器は、特に、眼科では、眼の屈折、調節等の眼機能、眼球内部の検査を行う光学特性測定装置として普及している。例えば、被検眼の屈折力と角膜形状とを求めるフォトレフラクトメータという装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、受光部からのハルトマン像を取得し、ハルトマン板と受光部との距離及び座標等に基づいてゼルニケ係数を算出し、このゼルニケ係数に基づいて被検眼の波面を算出し、測定データ、測定結果に対応する画像データ、数値データを表示する光学特性測定装置が記載されている。また、被検眼の眼底に投影されたターゲット像の画像データから球面屈折度、乱視度、乱視軸角度等を測定する装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。なお、これらの各種検査の測定結果は、例えば、検査対象となる患者の被検眼がどのような測定条件下に置かれていたかが重要となる。
【特許文献1】
特願2000−351796
【特許文献2】
特許2580215号
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の被検眼の収差を測定する測定装置では、眼の屈折率、屈折力又は収差等の眼特性の分布に大きな隔たりがある場合において、測定ができない場合があった。このような大きな隔たりは、例えば、病気、怪我、手術等が原因で生じることがある。
【0004】
本発明は、以上の点に鑑み、屈折率、屈折力又は収差等の眼特性の分布に大きな隔たりがある等、一様な調整では測定が不可能な眼に対しても測定が可能な眼科測定装置を提供することを目的とする。また、本発明は、解析に必要な点像データが得られるように自動調整してハルトマン像を取得し、取得したハルトマン像を組み合わせ光学特性を求める装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の解決手段によると、
第1波長の光束を発する第1光源を有し、該第1光源からの第1照明光束で被検眼眼底付近に集光する様に照明するための第1照明光学系と、
被検眼眼底から反射した反射光束を少なくとも17本のビームに変換する第1変換部材及び該第1変換部材で変換された複数の光束を第1信号として受光する第1受光部を有し、該反射光束を上記第1受光部に導く第1受光光学系と、
上記第1照明光学系の集光位置を移動させる第1移動手段と、
上記第1受光部及び上記第1変換部材を光学的に移動させる第2移動手段と、
上記第1受光部からの第1信号を組み合わせることで、被検眼の光学特性の測定が可能となるまで、複数の測定条件における第1信号を測定するように、上記第1及び第2移動手段によって上記第1照明光学系及び上記第1受光光学系の位置を調整する調整部と、
上記調整部における調整の過程で、複数の測定条件における上記第1受光部から得られた第1信号を組み合わせて被検眼の光学特性を求める演算部と
を備える眼科測定装置が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
1.眼科測定装置の構成
図1は、本発明に関する眼科測定装置の概略光学系150を示す図である。
眼科測定装置の光学系150は、例えば、対象物である被検眼60の光学特性を測定する装置であって、第1照明光学系10と、第1受光光学系20と、第2受光光学系30と、共通光学系40と、調整用光学系50と、第2照明光学系70と、第3照明光学系75と、屈折力測定用の照明光学系80と、屈折力測定用の受光光学系90と、第1移動手段110及び第2移動手段120とを備える。なお、被検眼60については、図中、網膜61、角膜62が示されている。
【0007】
第1照明光学系10は、例えば、第1波長の光束を発するための第1光源部11と、集光レンズ12とを備え、第1光源部11からの光束(第1照明光束)で被検眼60の網膜(眼底)61上の微小な領域を、その照明条件を適宜設定できるように照明するためのものである。第1照明光学系10は、第1移動手段110によって集光位置を移動、及び/又は集光状態を変化させることができる。
【0008】
また、第1光源部11から発せられる第1照明光束の第1波長は、一例として、赤外域の波長(例えば、780nm)である。第1光源部11は、空間コヒーレンスが大きく、時間コヒーレンスが小さいものが望ましい。ここでは、第1光源部11は、例えば、スーパールミネッセンスダイオード(SLD)であって、輝度の高い点光源を得ることができる。なお、第1光源部11は、SLDに限られるものではなく、例えば、空間コヒーレンス、時間コヒーレンスが大きいレーザー等であっても、回転拡散板等を挿入し、適度に時間コヒーレンスを下げることで、利用することができる。さらに、空間コヒーレンス、時間コヒーレンスが小さいLEDであっても、光量さえ十分であれば、例えば、光路の光源の位置にピンホール等を挿入することで、利用することができる。
【0009】
第1受光光学系20は、例えば、コリメートレンズ21と、被検眼60の網膜61から反射して戻ってくる光束(第1光束)の一部を、少なくとも、17本のビームに変換する変換部材であるハルトマン板22と、このハルトマン板22で変換された複数のビームを受光するための第1受光部23とを備え、第1光束を第1受光部23に導くためのものである。第1受光光学系20は、ハルトマン板22で変換されたビームが第1受光部23に集光するように第2移動手段120によって移動させることができる。また、ここでは、第1受光部23は、リードアウトノイズの少ないCCDが採用されているが、CCDとしては、例えば、一般的な低ノイズタイプ、測定用の1000×1000素子の冷却CCD等、適宜のタイプのものを適用することができる。第1受光部23で受光された信号(第1受光信号)は、例えば、眼球波面収差を求めるために使用される。
【0010】
第1移動手段110は、第1照明光学系を移動させるもので、例えば、モータなどによって駆動される。第1移動手段110によって、第1照明光学系を移動させることで、第1照明光学系からの第1照明光束の集光状態を調節することができる。
【0011】
第2移動手段120は、第1受光光学系を移動させるもので、例えば、モータなどによって駆動される。第2移動手段120によって、第1受光光学系を移動させることで、ハルトマン板22で変換されたビームが第1受光部23に集光するように調節することができる。なお、第1移動手段110及び第2移動手段120の移動手段としては適宜の装置・方法を用いることができる。また、本実施の形態では、第1移動手段110と第2移動手段120は、連動して駆動する以外に、個々に独立して駆動可能になっている。なお、これら移動手段によって自動的に測定を行う以外に、操作者の操作(マニュアル操作)により、第1移動手段110と第2移動手段120を駆動可能であってもよい。
【0012】
第2照明光学系70は、第2波長の光束を発するための第2光源72と、プラチドリング71を備える。なお、第2光源72を省略することもできる。図2に、プラチドリング71の構成図の一例を示す。プラチドリング(PLACIDO’S DISC)71は、図2のように、複数の同心輪帯からなるパターンの指標を投影するためのものである。なお、複数の同心輪帯からなるパターンの指標は、所定のパターンの指標の一例であり、他の適宜のパターンを用いることができる。そして、後述するアライメント調整が完了した後、複数の同心輪帯からなるパターンの指標を投影することができる。
【0013】
第3照明光学系75は、例えば、後述するアライメント調整を主に行うものであって、第3波長の光束を発するための第3光源部31と、集光レンズ32と、ビームスプリッター33を備える。
【0014】
第2受光光学系30は、集光レンズ34、第2受光部35を備える。第2受光光学系30は、第2照明光学系70から照明されたプラチドリング71のパターンが、被検眼60の前眼部又は角膜62から反射して戻ってくる光束(第2光束)を、第2受光部35に導く。また、第3光源部31から発せられ被検眼60の角膜62から反射し、戻ってくる光束(第3光束)を第2受光部35に導くこともできる。また、第4光源部51により照明された前眼部像を第2受光部35により得ることができる。なお、第2光源72、第3光源部31、第4光源部51から発せられる光束の第2波長、第3波長、第4波長は、例えば、第1波長(ここでは、780nm)と異なると共に、長い波長を選択できる(例えば、940nm)。また、第2受光部35で受光された信号は、例えば、アライメント調整や角膜波面収差を求めるために使用される。
【0015】
共通光学系40は、第1照明光学系10から発せられる光束の光軸上に配され、第1及び第2照明光学系10及び70、第1及び第2受光光学系20及び30、第3照明光学系75等に共通に含まれ得るものであり、例えば、アフォーカルレンズ42と、ビームスプリッター43、45と、集光レンズ44とを備える。また、ビームスプリッター43は、第3光源部31の波長を被検眼60に送光(反射)し、被検眼60の角膜62から反射して戻ってくる第2光束と第3光束を反射し、一方、第1光源部11の波長を透過するようなミラー(例えば、ダイクロイックミラー)で形成される。ビームスプリッター45は、第1光源部11からの光束を被検眼60に送光(反射)し、被検眼60の網膜61から反射して戻ってくる第1光束を、透過するようなミラー(例えば、偏光ビームスプリッター)で形成される。このビームスプリッター43、45によって、第1、第2及び第3光束が、互いに他方の光学系に入りノイズとなることがない。
【0016】
調整用光学系50は、例えば、作動距離調整を主に行うものであって、第5光源部55と、集光レンズ52、53と、第3受光部54を備える。作動距離調整は、例えば、第5光源部55から射出された光軸付近の平行な光束を、被検眼60に向けて照射すると共に、この被検眼60から反射された光を、集光レンズ52、53を介して第3受光部54で受光することにより行われる。また、被検眼60が適正な作動距離にある場合、第3受光部54の光軸上に、第5光源部55からのスポット像が形成される。一方、被検眼60が適正な作動距離から前後に外れた場合、第5光源部55からのスポット像は、第3受光部54の光軸より上又は下に形成される。なお、第3受光部54は、第5光源部55、光軸、第3受光部54を含む面内での光束位置の変化を検出できればいいので、例えば、この面内に配された1次元CCD、ポジションセンシングデバイス(PSD)等を適用できる。
【0017】
屈折力測定用の照明光学系80は、屈折力測定用光源81、コリメートレンズ82、屈折力測定用のリング状絞り83、リレーレンズ84、リング状絞り85、ビームスプリッター87を備える。屈折力測定用光源81から発した照明光束は、コリメートレンズ82により平行光束となり、屈折力測定用のリング状パターン83を照明する。照明された屈折力測定用のリング状絞り83からの光束は、リレーレンズ84により平行となり瞳と共役なリング状絞り85、リレーレンズ86を通過し、ビームスプリッター87を介して第1照明光学系10の光軸と重なり、共通光学系40を介して被検眼60の網膜61上を照明する。この屈折力測定用のリング状絞り83は、正視の被検眼の測定の際に被検眼眼底と共役な位置関係とされる。
【0018】
屈折力測定用の受光光学系90は、ビームスプリッター91、リレーレンズ92、屈折力測定用受光部93を備える。リング照明された被検眼60の網膜61からの反射光束は、共通光学系40を介して、ビームスプリッター91に達し、ここで反射され、リレーレンズ92で集光された後、屈折力測定用受光部93で屈折力測定用受光信号として受光される。網膜上で投影された屈折力測定用のリング状パターン像を示す屈折力測定用受光信号は、電気系の演算部に送られる。
【0019】
屈折力測定用受光部93は、好ましくは2次元センサーで形成される。演算部210では、屈折力測定用受光信号に基づき網膜上で投影された屈折力測定用のリング状パターン像から、被検眼60の屈折力を求める。
【0020】
次に、アライメント調整について説明する。アライメント調整は、主に、第2受光光学系30及び第3照明光学系75により実施される。
【0021】
まず、第3光源部31からの光束は、集光レンズ32、ビームスプリッター33、43、アフォーカルレンズ42を介して、対象物である被検眼60を平行な光束で照明する。被検眼60の角膜62で反射した反射光束は、あたかも角膜62の曲率半径の1/2の点から射出したような発散光束として射出される。この発散光束は、アフォーカルレンズ42、ビームスプリッター43、33及び集光レンズ34を介して、第2受光部35にスポット像として受光される。
【0022】
ここで、この第2受光部35上のスポット像が光軸上から外れている場合、眼光学特性測定装置本体を、上下左右に移動調整し、スポット像を光軸上と一致させる。このように、スポット像が光軸上と一致すると、アライメント調整は完了する。なお、アライメント調整は、被検眼60の角膜62を第4光源部51により照明し、この照明により得られた被検眼60の像が第2受光部35上に形成されるので、この像を利用して瞳中心が光軸と一致するようにしてもよい。
【0023】
次に、第1照明光学系10と第1受光光学系20との位置関係を概略的に説明する。
第1受光光学系20には、ビームスプリッター45が挿入されており、このビームスプリッター45によって、第1照明光学系10からの光は、被検眼60に送光されると共に、被検眼60からの反射光は、透過される。第1受光光学系20に含まれる第1受光部23は、変換部材であるハルトマン板22を通過した光を受光し、受光信号を生成する。
【0024】
また、第1光源部11と被検眼60の網膜61とは、共役な関係を形成している。被検眼60の網膜61と第1受光部23とは、共役である。また、ハルトマン板22と被検眼60の瞳孔とは、共役な関係を形成している。さらに、第1受光光学系20では、瞳孔とハルトマン板22は略共役な関係を形成している。すなわち、アフォーカルレンズ42の前側焦点は、瞳孔と略一致している。
【0025】
また、レンズ12は、光源11の拡散光を平行光に変換する。絞り14は、眼の瞳及びハルトマンプレート21と光学的に共役の位置にある。絞り14は、径がハルトマンプレート21の有効範囲より小さく、いわゆるシングルパスの収差計測(受光側だけに目の収差が影響する方法)が成り立つ様になっている。レンズ13は、上記を満たすために、実光線の眼底共役点を前側焦点位置に、さらに、眼の瞳との共役関係を満たすために、後側焦点位置が絞り14と一致するように配置されている。
【0026】
また、光線15は、光線24とビームスプリッター45で共通光路になった後は、近軸的には、光線24と同じ進み方をする。但し、シングルパス測定のときは、それぞれの光線の径は違い、光線15のビーム径は、光線24に比べ、かなり細く設定される。具体的には、光線15のビーム径は、例えば、眼の瞳位置で1mm程度、光線24のビーム径は、7mm程度になることもある(なお、図中、光線15のビームスプリッター45から眼底61までは省略している)。
【0027】
つぎに、変換部材であるハルトマン板22について説明する。
第1受光光学系20に含まれるハルトマン板22は、反射光束を複数のビームに変換する波面変換部材である。ここでは、ハルトマン板22には、光軸と直交する面内に配された複数のマイクロフレネルレンズが適用されている。また、一般に、測定対象部(被検眼60)について、被検眼60の球面成分、3次の非点収差、その他の高次収差までも測定するには、被検眼60を介した少なくとも17本のビームで測定する必要がある。
【0028】
また、マイクロフレネルレンズは、光学素子であって、例えば、波長ごとの高さピッチの輪帯と、集光点と平行な出射に最適化されたブレーズとを備える。ここでのマイクロフレネルレンズは、例えば、半導体微細加工技術を応用した8レベルの光路長差を施したもので、高い集光率(例えば、98%)を達成している。
【0029】
また、被検眼60の網膜61からの反射光は、アフォーカルレンズ42、コリメートレンズ21を通過し、ハルトマン板22を介して、第1受光部23上に集光する。したがって、ハルトマン板22は、反射光束を少なくとも、17本以上のビームに変換する波面変換部材を備える。
【0030】
図3は、本発明に関する眼光学特性測定装置の概略電気系200を示すブロック図である。眼科測定装置に関する電気系200は、例えば、演算部210と、制御部220と、表示部230と、メモリ240と、第1駆動部250及び第2駆動部260と、入力部270とを備える。
【0031】
演算部210は、第1受光部23から得られる受光信号▲4▼、第2受光部35から得られる受光信号▲7▼、第3受光部54から得られる受光信号(10)、屈折力測定用受光部93から得られる受光信号(12)を入力し、全波面収差、ゼルニケ係数、屈折力等を演算する。さらに、演算部210は、入力部270から所望の設定、指示、データ等の入力信号を入力する。また、演算部210は、角膜波面収差、収差係数、空間周波数の伝達特性を表す指標である白色光MTF(Modulation Transfer Function)、点像の強度分布PSF(Point Spread Function)の中心強度を、無収差光学系の場合に得られるPSFの中心強度で割ることにより求められるStrehl比、患者の視力を検査するために適宜の視力に応じた大きさを有するランドルト環のパターン等を演算する。また、このような演算結果に応じた信号を、電気駆動系の全体の制御を行う制御部220と、表示部230と、メモリ240とにそれぞれ出力する。
【0032】
さらに、演算部210は、調整部211を備える。調整部211は、測定可能なハルトマン像が得られるように、第1及び第2移動手段110及び120により、第1照明光学系10及び第1受光光学系20の位置を調整する。
【0033】
制御部220は、演算部210からの制御信号に基づいて、第1光源部11及び屈折力測定用光源81の点灯、消灯を制御したり、第1駆動部250及び第2駆動部260を制御するものであり、例えば、演算部210での演算結果に応じた信号に基づいて、第1光源部11に対して信号▲1▼を出力し、プラチドリング71に対して信号▲5▼を出力し、第3光源部31に対して信号▲6▼を出力し、第4光源部51に対して信号▲8▼を出力し、第5光源部55に対して信号▲9▼を出力し、屈折力測定用光源81に対して信号(11)を出力し、さらに、第1駆動部250及び第2駆動部260に対して信号を出力する。
【0034】
第1駆動部250は、例えば、演算部210に入力された第1受光部23からの受光信号▲4▼、又は、入力部270から入力された移動信号に基づいて、第1照明光学系10全体を光軸方向に移動させて集光位置を移動、及び/又は集光状態を変化させるものであり、第1移動手段110に対して信号▲2▼を出力すると共に、この移動手段を駆動する。これにより、第1駆動部250は、第1照明光学系10の移動、調節を行うことができる。
【0035】
第2駆動部260は、例えば、演算部210に入力された第1受光部23からの受光信号▲4▼、又は、入力部270から入力された入力信号に基づいて、第1受光光学系20全体を光軸方向に移動させるものであり、第2移動手段120に対して信号▲3▼を出力すると共に、この移動手段を駆動する。これにより、第2駆動部260は、第1受光光学系20の移動、調節を行うことができる。
【0036】
入力部270は、所望の設定、指示、データ等の各種入力信号を入力するための、スイッチ、ボタン、キーボード、ポインティングデバイス等を備える。例えば、入力部270は、モード切替スイッチ271を備える。モード切替スイッチ271は、第1照明光学系10及び第1受光光学系20を連動させて移動する連動モードと個々に独立して移動する独立モードを切り替えるスイッチである。また、自動調整による測定とマニュアル調整による測定を切り替える操作切替スイッチ、測定開始ボタン、第1照明光学系10又は第1受光光学系20を+方向、―方向へ移動させる移動スイッチを備えてもよい。
【0037】
次に、ゼルニケ解析について説明する。一般に知られているゼルニケ多項式からゼルニケ係数Ci 2j−iを算出する方法について説明する。ゼルニケ係数Ci 2j−iは、例えば、ハルトマン板22を介して第1受光部23で得られた光束の傾き角に基づいて被検眼60の光学特性を把握するための重要なパラメータである。
被検眼60の波面収差W(X,Y)は、ゼルニケ係数Ci 2j−i、ゼルニケ多項式Zi 2j−iを用いて次式で表される。
【0038】
【数1】
【0039】
ただし、(X,Y)はハルトマン板22の縦横の座標である。また、上式において、nは解析次数である。
【0040】
また、波面収差W(X,Y)は、第1受光部23の縦横の座標を(x、y)、ハルトマン板22と第1受光部23の距離をf、第1受光部23で受光される点像の移動距離を(△x、△y)とすると、次式の関係が成り立つ。
【0041】
【数2】
【0042】
ここで、ゼルニケ多項式Zn mは、以下の数式3で表され、具体的には、図17、18に示される。ただし、n、mは、図17、18においてそれぞれi、2j−iに対応する。
【0043】
【数3】
【0044】
なお、ゼルニケ係数Ci 2j−iは、以下の数式4で表される自乗誤差を最小にすることにより具体的な値を得ることができる。
【0045】
【数4】
【0046】
ただし、W(X、Y):波面収差、(X、Y):ハルトマン板座標、(△x、△y):第1受光部23で受光される点像の移動距離、f:ハルトマン板22と第1受光部23との距離である。
演算部210は、ゼルニケ係数Ci 2j−iを算出し、これを用いて球面収差、コマ収差、非点収差等の眼光学特性を求める。
【0047】
2.照明光学系及び受光光学系の位置ずれの影響
次に、第1照明光学系10(投影側)及び第1受光光学系20(受光側)のディオプター値がずれた場合における、ハルトマン像への影響について説明する。
【0048】
図4は、投影側及び受光側に位置ずれがない場合のハルトマン像の図である。第1照明光学系10から発した光束が、被検眼60の眼底61で反射して、第1受光部23に集光した場合、すなわち投影側及び受光側に位置ずれがない場合のハルトマン像である。
【0049】
図5は、投影側及び受光側の位置ずれによるハルトマン像への影響の説明図である。以下、図5を参照して図6及び図7に示すハルトマン像について説明する。
【0050】
図6は、投影側の位置ずれ発生時のハルトマン像の図である。図4の状態から、投影側のみが+5ディオプター(+5D)ずれた場合のハルトマン像を図6(a)に示す。投影側が+方向にずれると、図5(a)の破線に示すように、第1照明光学系10から発した光束は、中心軸の外側から内側方向へ入射されるため、被検眼60の眼底61の前方で集光する。眼底61では集光していない光束を反射するため、反射した光束を第1受光部23で受光すると、受光信号の点像はぼけ、受光信号の受光レベル(光量)は小さくなる。
【0051】
一方、図4の状態から、投影側のみが−5ディオプター(−5D)ずれた場合のハルトマン像を図6(b)に示す。投影側が−方向にずれると、図5(a)の実線に示すように、第1照明光学系10から発した光束が中心軸の内側から外側方向へ入射されるため、被検眼60の眼底61の後方で集光するような光束になる。投影側が+方向にずれた場合と同様に、眼底61では集光していない光束を反射するため、反射した光束を第1受光部23で受光すると、受光信号の点像はぼけ、受光信号の受光レベルは小さくなる。
【0052】
このように、投影側は、第1受光部23で受光する受光信号の点像の受光レベルに関係する。つまり、投影側を移動することで点像をぼかしたりシャープにしたりすることができる。受光レベルを大きくするには、+方向又は―方向のうち受光レベルが大きくなる方向へ投影側を移動する。自動調整では、演算部210が、第1受光部23の受光信号に基づき、点像の受光レベルが大きくなるように第1照明光学系10を移動させることにより、投影側のディオプター値を調整している。
【0053】
図7は、受光側の位置ずれ発生時のハルトマン像の図である。図4の状態から、受光側のみが+5Dずれていた場合のハルトマン像を図7(a)に示す。受光側が+方向にずれると、図5(b)の破線に示すように、眼底61で反射した光束がハルトマン板22に対して垂直ではなく、中心軸の外側から内側方向に入射するため、中心軸よりに集光し、第1受光部へ達する。第1受光部23で受光される点像は、全体的に中心軸よりに集まり、図7(a)のように点像間隔が小さい像となる。
【0054】
一方、図4の状態から、受光側のみが−5Dずれていた場合のハルトマン像を図7(b)に示す。受光側が−方向にずれると、図5(b)の実線に示すように、眼底61で反射した光束がハルトマン板22に対して垂直ではなく、中心軸の内側から外側方向に入射するため、中心軸から離れて集光する。第1受光部23で受光される点像は、全体として中心軸から離れ、図7(b)のように点像間隔が大きい像となる。
【0055】
このように、受光側は、第1受光部23で受光する受光信号の点像の点像間隔に関係する。つまり、点像間隔が小さい場合は、受光側を―方向に動かすことで、点像間隔が大きい場合は、受光側を+方向に動かすことで適切なディオプター値に修正ができる。自動調整では、演算部210が第1受光部23の受光信号に基づき、点像間隔が所定の間隔になるように第1受光光学系側を移動させることにより、受光側のディオプター値を調整している。なお、本実施の形態では、第1照明光学系10と第1受光光学系20は、独立して移動可能な構成となっており、点像レベルと点像間隔を独立して調整できる。
【0056】
図8は、眼の屈折率、屈折力又は収差等の眼特性の分布に大きな隔たりがある場合の測定された点像の一例を示した図である。図8(a)は、最初の測定において中心付近のエリアが測定可能エリアとなっているが、周辺部分は測定不能エリアとなっている例である。このような場合、調整部211は、測定不能エリアが測定可能となるように調整する。図8(b)は、第1受光光学系20を−方向に移動させた図であり、中心部は測定不能エリアとなってしまっているが、周辺部が測定可能エリアとして検出できることを示している。その結果、図8(a)の中心部のデータと、図8(b)の周辺部のデータを組み合わせることにより、全体の測定が可能となる。
【0057】
3.データフォーマット
図9は、メモリ240に記憶される測定データ及び推測データの記憶フォーマットである。図9(a)は、測定データの記憶フォーマットであり、例えば、複数の測定条件で測定したデータを識別するデータ識別子に対応して、測定条件及び測定結果が記憶される。測定条件は、調整部211によって調整された第1照明光学系10(投影側)及び第1受光光学系20(受光側)の位置に対応するディオプター値(D値)を含む。また、測定結果には、例えば、複数に分割されたハルトマン像の各エリアに関連付けられているエリア識別子と対応して、演算部210によって判断される測定可能なエリアか、測定不能なエリアかを示す測定可能識別情報、及び、第1受光部23からの信号に基づく測定値(例えば、点像座標)が記憶される。
【0058】
図9(b)は、推測データの記録フォーマットであり、例えば、データ識別子に対応して、推測結果等が記憶される。推測結果は、エリア識別子に対応した、測定可能識別情報、及び、測定した条件と異なる条件で測定した場合の結果を測定値に基づいて推測した推測値(例えば、点像座標)を含む。なお、データ識別子及びエリア識別子は、数字、文字、記号等の適宜のものを用いることができる。また、これらデータフォーマットは適宜の形態をとることができる。
【0059】
4.フローチャート
図10は、複数のハルトマン画像を組み合わせて被検眼60の光学特性を求めるフローチャートである。
まず、演算部210は、プリセットとして連動モードである場合、第1照明光学系10と第1受光光学系20を連動して移動させる連動モードを選択し、アライメント調整をする(S101)。
【0060】
次に、演算部210は、屈折力測定用照明光学系80を介して屈折力測定用のリング状パターン83を被検眼60の網膜62に照明し、網膜62から反射した反射光束を屈折力測定用受光部93で受光し、受光した屈折力測定用受光信号に基づき、被検眼60の屈折力を求める(S103)。屈折力を求める演算に関しては特許第2580215号(特許文献2)に開示されているので、ここではその詳細を省略する。
【0061】
演算部210は、屈折力の測定結果が得られたかを判断する(S105)。演算部210は、例えば、屈折力の演算に必要な所定のデータ数が得られたか等の条件により屈折力の測定結果が得られたかを判断しても良い。なお、これ以外にも、適宜の条件を用いることができる。演算部210は、屈折力測定結果が得られた場合(S105)、求められた屈折力の球面度数成分に見合った位置に、第1照明光学系10及び第1受光光学系20を連動して移動させる(S107)。一方、演算部210は、屈折力測定結果が得られなかった場合(S105)、ステップS109へ移る。なお、演算部210は、屈折力測定結果が得られなかった場合、ステップS113の独立モード自動調整へ移ってもよい。
【0062】
次に、演算部210は、第1受光部23から第1受光信号を入力し、入力した第1受光信号に基づいて点像の密度分布を検出する(S109)。例えば、第1受光部23で受光可能な範囲が予め適宜の数のエリアに分割され、演算部210は、各エリアに存在する点像を第1受光信号の座標等から判断し、その数を検出して点像密度を求めても良い。なお、密度の算出は適宜の方法を取ることができる。
【0063】
また、予め分割されたエリアを用いる以外に、第1受光部23からの第1受光信号に従って、演算部210は、エリアの分割を行ってもよい。例えば、演算部210は、第1受光信号から、上下左右の端の点像座標を検出して、点像の分布範囲を求め、この分布範囲を適宜の数に分割することもできる。分割の方法は、例えば、上下の幅を4分割、左右の幅を4分割し、全体を16分割する方法や、分布範囲の中央を中心とする同心円状のエリアに分割する方法の他、適宜の方法・分割数を取ることができる。分割されたエリアは、エリア番号等のエリア識別子と対応付けがされる。なお、エリア識別子には、数字、文字、記号等、適宜のものを用いることができる。
【0064】
演算部210は、メモリ240から予め定められた密度の所定の範囲を読み出し、各エリアの点像の密度が所定の範囲外であれば測定不能エリアと判断し、所定の範囲内であれば測定可能エリアと判断する。所定の範囲は、例えば、正視の被検眼60を0ディオプター(0D)の位置で測定した場合の点像密度をd1とした時、d1/10以上かつ5×d1以下等とすることができる。なお、所定の範囲は、これ以外にも適宜の範囲を用いてよい。また、演算部210は、点像密度に基づいて測定可能エリアを判断する以外に、点像の極大値に基づいて測定可能エリアを判断してもよい。この場合、演算部210は、第1受光信号に基づき各点象レベルの極大値を求め、メモリ240から予め定められた点像レベルの所定の範囲を読み出し、点像レベルの極大値が所定の範囲内の場合、測定可能エリアと判断し、所定の範囲外の場合、測定不能エリアと判断することができる。
【0065】
また、演算部210は、適宜のタイミングで、第1受光信号を入力する時の第1照明光学系10及び第1受光光学系20の位置に見合うディオプター値(測定条件)と、入力した第1受光信号に基づく点像の座標(測定値)をデータ識別子(例えば、データ番号)と対応させてメモリ240の測定データに記憶することができる。なお、演算部210は、測定値をエリア毎にエリア識別子と対応させて記憶するようにしてもよい。さらに、演算部210は、メモリ240に、測定可能か、測定不能かを示す測定可能識別情報を、該当するエリア識別子に対応して記憶することができる。
【0066】
演算部210は、第1受光部23での受光可能な範囲全体が測定可能エリアであるかを判断する(S111)。すなわち、演算部210は、ステップS109における各エリアが測定可能エリアであるかの判断に基づき、又は、メモリ240に記憶されている測定データの測定可能識別情報に基づき、受光可能な範囲全体が測定可能エリアで覆われていると判断した場合、ステップS117へ進み、被検眼60の光学特性を求める。一方、演算部210は、全体が測定可能エリアで覆われてないと判断した場合、ステップS113へ進む。なお、演算部210は、判断条件として、全体が測定可能エリアであるかを判断する代わりに、例えば、得られた点像が所定数以上あるか等の判断を行っても良い。その場合、点像が所定数以上ある場合、ステップS117へ進み、点像が所定数以上ない場合、ステップS113へ進む。さらに、判断条件として、演算部210は、点像密度が所定の範囲であり、且つ、点像が所定数以上あるかの判断を行っても良い。
【0067】
演算部210は、独立モード自動調整処理を行う(S113)。演算部210は、独立モード自動調整処理において、測定不能エリアの点像に基づいて第1照明光学系10及び第1受光光学系20を調整し、測定に必要なハルトマン像を取得する。独立モード自動調整処理の詳細な説明は後述する。
【0068】
また、演算部210は、取り込んだ1つ又は複数の第1受光信号に基づき合成点像を求める合成点像作成処理を行う(S115)。演算部210は、第1受光信号又は合成点像に基づいてゼルニケ解析を行い、ゼルニケ係数を算出する(S117)。
【0069】
次に、演算部210は、第1受光信号に基づき光学特性の演算処理を行う(S119)。ここで光学特性とは、例えば、収差、眼屈折力等、適宜の眼特性である。演算部210は、第1受光信号については、ハルトマン波面センサーの測定原理によって光学特性を計算する。第1受光信号によって得られるのは眼球光学系の波面収差(眼球波面収差)である。さらに、演算部210は、測定されたハルトマン像、眼球波面収差等の光学特性を表示部230に表示する(S121)。
【0070】
また、演算部210は、ステップS117からS121の代わりに又は並行して第2受光部35により前眼部像についての第2受光信号の取り込み、角膜で発生する波面収差(角膜波面収差)、角膜形状等の光学特性を計算しても良い。演算部210は、第2受光信号の取り込み後、角膜頂点反射の輝点にほぼ同心に写っているリング像の位置を画像処理の手法を使って解析する。リングの位置は、例えば円周上360度にわたって、256点程度取得される。また、演算部210は、リングの位置から角膜の傾斜を計算する。また、演算部210は、角膜の傾きから角膜の高さを計算して、角膜を光学レンズと同様に扱うことにより光学特性を計算する。第2受光信号によって得られるのは角膜で発生する波面収差(角膜波面収差)である。演算部210は、計算された角膜波面収差、角膜形状等を表示部230に表示する。さらに、演算部210は、白色光MTF、Strehl比、ランドルト環のパターン等を演算し、表示部230に表示させても良い。
演算部210は、測定を続ける場合ステップS101に戻り、続けない場合は終了する(S123)。
【0071】
図11は、独立モード自動調整処理のフローチャートである。まず、演算部210は、メモリ240の測定データの測定可能識別情報を参照し、測定不能エリアの中から、第1照明光学系10及び第1受光光学系20を移動することにより測定可能エリアとなるように調整する、調整エリアを指定する(S200)。
【0072】
次に、演算部210は、第1受光部23から第1受光信号を読み取り、読み取った第1受光信号に基づき、調整エリアにおける各点像の間隔を検出し、点像間隔の平均を求める(S201)。演算部210は、メモリ240から予め設定された所定の間隔を読み出し、調整エリアの平均点像間隔と比較する。演算部210は、調整エリアの平均点像間隔が予め設定された所定の間隔よりも小さい場合(S203)、第2駆動部260に対して第1受光光学系20(受光部側)を−方向に移動させる信号を出力し、ステップS201の処理に戻る(S205)。
【0073】
演算部210は、調整エリアの平均点像間隔が所定の間隔よりも大きい場合(S207)、第2駆動部260に対して第1受光光学系20を+方向に移動させる信号を出力し、ステップS201の処理に戻る(S209)。第2駆動部260は、演算部210から信号を入力し、入力した信号に従って、第2移動手段120を駆動する。また、演算部210は、調整エリアの平均点像間隔が所定の間隔の場合、ステップS211の処理へ移る。なお、点像間隔と所定の間隔の比較は、ステップS201で検出した各点像間隔の平均以外にも、最小値、最大値、合計等の適宜の値を用いても良い。また、点像間隔に基づいて受光部側の調整を行う以外に、点像密度に基づいて調整を行っても良い。この場合、演算部210は、第1受光信号に基づき調整エリアの点像密度を求め、さらに、メモリ240から予め設定された所定の密度範囲を読み出す。演算部210は、点像密度が所定範囲よりも大きい場合、受光部側を−方向に移動させる信号を出力し、点像密度が所定範囲よりも小さい場合、受光部側を+方向に移動させる信号を出力する。
【0074】
次に、演算部210は、第1受光部23から第1受光信号を読み取り、読み取った第1受光信号に基づいて点像レベルを検出し、調整エリアの点像レベルの平均を求める(S211)。演算部210は、メモリ240から予め定められた所定レベルを読み出し、調整エリアの平均点像レベルが、所定レベルよりも大きいか判断する(S213)。なお、点像レベルと所定レベルの比較は、ステップS211で検出した個々の点像レベルの平均以外にも、最小値、最大値、合計等の適宜の値を用いても良い。演算部210は、調整エリアの平均点像レベルが所定レベルよりも小さい場合(S213)、第1駆動部250に対して第1照明光学系10(投影側)を移動させる信号を出力し、ステップS211の処理へ戻る(S215)。第1照明光学系10の移動方向は、任意の方向に移動させて点像レベルが大きくなるか判断し、点像レベルが大きくなる方向に移動させてもよい。また、演算部210は、点像レベルが極大となるように第1照明光学系10を移動させても良い。第1駆動部250は、演算部210から信号を入力し、入力した信号に従って、第1移動手段110によって第1照明光学系10を移動させる。一方、演算部210は、調整エリアの平均点像レベルが所定レベルよりも大きい場合(S213)、ステップS217の処理へ進む。
【0075】
演算部210は、第1受光部23から第1受光信号を入力し、投影側及び受光側の位置に見合うディオプター値(測定条件)と入力した第1受光信号に基づく点像の座標(測定値)を、データ識別子に対応させてメモリ240の測定データに記憶する(S217)。なお、演算部210は、測定値を、エリア毎にエリア識別子に対応させて記憶するようにしてもよい。
【0076】
演算部210は、入力した第1受光信号の点像の密度分布を求め、調整エリアが測定可能かを判断する(S219)。測定可能かの判断は、ステップ109と同様とすることができる。さらに、演算部210は、他のエリアについても測定可能エリアか判断する。なお、演算部210は、メモリ240に記憶されている測定データの測定可能識別情報を参照し、測定不能エリアについてのみ測定可能かを判断してもよい。演算部210は、測定可能か、測定不能かを示す測定可能識別情報を、データ識別子及び各エリアのエリア識別子と対応させてメモリ240の測定データに記憶する。
【0077】
演算部210は、さらに、メモリ240の測定可能識別情報を参照し、測定可能な点像座標が得られていないエリアが存在するか判断する(S221)。演算部210は、測定不能なエリアがあると判断した場合、ステップS200へ戻り、一方、測定不能エリアがない場合、独立モード自動調整処理を終了し、ステップS115の処理へ移る。
【0078】
図12は、合成点像作成処理のフローチャートである。以下2つの測定データから合成点像を作成する方法について述べるが、3つ以上についても同様にして合成点像を作成することができる。まず、演算部210は、メモリ240に記憶されている測定データの測定条件から、測定したディオプター値を順次読み出し、ディオプター値の平均(2つの測定データの場合は、中央ディオプター値となる)を求める(S301)。例えば、演算部210は、ディオプター値の平均を測定条件として測定した場合の点像座標を推測し、推測した点像座標を組み合わせて合成点像を作成する。また、ディオプター値の平均の算出には、投影側、受光側の両方を用いてもよいし、いずれかを用いても良い。なお、平均ディオプター値に限らず、適宜のディオプター値を用い、点像座標を推測することもできる。
【0079】
演算部210は、メモリ240に記憶されている測定データから、測定条件及び測定値を読み出す(S303)。さらに演算部210は、瞳孔半径及びハルトマン板22と第1受光部23との距離をメモリ240又は入力部270から入力し、平均ディオプター値、すなわち測定したディオプター値以外の他の測定条件での点像座標の推測値を求める(S305)。以下に点像座標の推測について述べる。
【0080】
例えば、ハルトマン像を複数画面取得後、それぞれから検出できた点像の重心位置から、測定したディオプター値以外の他の測定条件(例えば、取得したディオプター値の中央値の位置)での点像の重心位置を推測することができる。第1受光部23の画像から点像の移動量を求め、i番目の点像の移動量を△xi、△yiとする。この移動量と波面収差は,以下の偏微分方程式によって関係付けられる。
【0081】
【数5】
(f:ハルトマン板22と第1受光部23の距離)
【0082】
ここで,波面Wをゼルニケ多項式Zi 2j−iを使った展開であらわすと、次式のようになる。
【0083】
【数6】
【0084】
また、ディオプター位置の変更により、波面Wはディオプターに対応するゼルニケ係数C2 0のみが変化する。この変化分のみ点像の重心位置が移動すると考えられる。
【0085】
測定したディオプター位置での点像の重心位置(Xi1、Yi1)、推測(解析)するディオプター位置での点像の重心位置(Xi、Yi)、移動量を△Xi1、△Yi1、ゼルニケ係数変化量を△(C2 0)’、ハルトマン板22と第1受光部23の距離をFとすると、次式の関係が成り立つ。
【0086】
【数7】
【0087】
また、ディオプター変化量△S1からゼルニケ係数△(C2 0)’を算出する式は、次式で表される。
【0088】
【数8】
【0089】
ただし、rは、瞳孔半径(mm)である。また、ゼルニケ多項式Z2 0は、図18から次式で表される。
【0090】
【数9】
【0091】
よって、推測するディオプター位置における点像の重心位置(Xia、Yia)は、推測に用いる測定したディオプター値aでの点像の重心位置を(Xi1a、Yi1a)とすると、次式で表すことができる。
【0092】
【数10】
【0093】
同様にして、他の測定データからも、点像の重心位置を推測することが可能である。例えば、推測(解析)するディオプター位置での点像の重心位置(Xib、Yib)は、推測に用いる測定したディオプター位置bでの点像の重心位置を(Xi2b、Yi2b)、ディオプター変化量を△S2とすると、同様に次式で表される。
【0094】
【数11】
【0095】
これらを組み合わせて得られる重心位置を基に波面Wを算出することで、複数画面で得られた重心位置を加味した結果を得られる。例えば、2画面のハルトマン画像においてi=1〜100、位置aで測定可能な点像がi=1〜50、位置bにおいて測定可能な点像がi=51〜100である場合には、
【0096】
【数12】
【0097】
で合成点像の重心位置が求められる。
【0098】
演算部210は、数式10を用いて推測値を算出し(S305)、求めた推測値を、データ識別子及びエリア識別子と対応して、メモリ240の推測データに記憶する(S307)。
【0099】
また、演算部210は、メモリ240に記憶されている測定データの、該当するデータ識別子に対応する測定可能識別情報を参照し、測定可能なエリアを判別する。なお、演算部210は、測定可能識別情報を、推測データの該当するデータ識別子及び各エリア識別子に対応して、記憶しても良い。さらに、演算部210は、推測データの中から、測定可能なエリアに属する点像の推測値を抽出し、抽出した推定値をメモリ240の合成点像データに記憶する(S309)。なお、既に、推定値が記憶されているエリアについては、記憶しなくても良いし、上書きに記憶しても良い。
【0100】
次に、演算部210は、合成点像データが解析可能なデータであるかを判断する(S311)。例えば、演算部210は、合成点像データに、全てのエリアについてのデータが記憶されているか、又は、合成点像データが所定の点像数以上あるか等によって判断できる。なお、判断基準は適宜のものを用いてよい。演算部210は、合成点像データが解析可能な場合、合成点像作成処理を終了してステップS117へ移り、一方、解析可能でない場合、ステップS303へ戻り、他の測定値からの推測値を求める。
【0101】
なお、データの記憶フォーマット及び合成点像の作成手順は、上述以外にも適宜の方法を取ることができる。例えば、測定データから全ての推定データを先に求めても良いし、合成点像の作成に用いる測定データができるだけ少なくなるように測定データを選択してもよい。
【0102】
図13は、独立モード自動調整処理の第1の変形例である。図13の変形例は、図11における点像レベルに基づく投影側の移動(S211〜S215)と点像間隔に基づく受光部側の移動(S201〜S209)の順序が逆になっているフローチャートである。各ステップの処理は図11と同様であるので、図11と同様の符号を付し、説明は省略する。
【0103】
図14は、独立モード自動調整処理の第2の変形例である。図14に示す変形例では、独立モードにより調整する前に、連動モードによって投影側及び受光側を連動して調整する。特に、測定可能エリアと測定不能エリアの眼特性が大きく異なる場合等に有効である。
【0104】
まず、演算部は、ステップS200の処理を実行する。処理の詳細は、上述と同様であるので省略する。次に、演算部210は、ハルトマン像についての第1受光信号を低ノイズのCCD等の第1受光部23を使って取り込む(S251)。演算部210は、入力した第1受光信号について、受光信号レベルの平均を求める。
【0105】
演算部210は、メモリ240から所定信号レベルを読み込み、受光信号レベルの平均が所定の信号レベルより大きいかを判断する(S253)。なお、所定信号レベルは、予め設定され、メモリ240に記憶されている。なお、受光信号レベルの平均を用いる以外にも、最小値、最大値、合計等の適宜の値を用いても良い。
【0106】
演算部210は、平均受光信号レベルが所定の信号レベルより小さい場合(S253)、自動的に又は入力部270からの指示により第1駆動部250及び第2駆動部260に、第1照明光学系10及び第1受光光学系20を連動して移動させる移動信号を出力し、ステップS251の処理へ戻る(S255)。第1駆動部250及び第2駆動部260は、演算部210から移動信号を入力し、入力した信号に従って、第1移動手段110及び第2移動手段120によって、第1照明光学系10及び第1受光光学系20を連動して移動させる。また、演算部210は、第1受光部23からの信号レベルが極大となるように、第1照明光学系10及び第1受光光学系20を移動しても良い。
【0107】
一方、演算部210は、平均受光信号レベルが所定の信号レベルより大きい場合(S253)、ステップS201〜ステップS221の処理を実行する。各処理の詳細については、図11と同様であるので、図11と同様の符号を付し、説明は省略する。
【0108】
図15は、独立モード自動調整処理の第3の変形例である。図15に示す変形例は、図14における点像レベルに基づく投影側の調整(S211〜S215)と点像間隔に基づく受光部側の調整(S201〜S209)の順序が逆になっている。各ステップの処理は図14と同様であるので、図14と同様の符号を付し、説明は省略する。
【0109】
図16は、複数のハルトマン画像を組み合わせて被検眼60の光学特性を求めるフローチャートの変形例である。図16に示す変形例では、演算部210は、第1受光部23からの第1受光信号の信号レベルに基づき第1照明光学系10及び第1受光光学系20を調整し、そのときのハルトマン像から点像の密度を検出する。
【0110】
各ステップ処理については図10及び図14の同じ符号のステップと同様であるので省略する。ただし、ステップS253において、演算部210は、平均受光信号レベルが所定の信号レベルより大きい場合、ステップS109の処理へ移る。
【0111】
【発明の効果】
本発明によると、屈折率、屈折力又は収差の分布に大きな隔たりがある等、従来の一様な調整では測定が不可能な眼に対しても測定が可能な眼科測定装置が提供される。また、本発明によると、必要な点像データが得られるように自動調整してハルトマン像を自動的に取得し、取得したハルトマン像を組み合わせ光学特性を求める装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関する眼科測定装置の概略光学系を示す図。
【図2】プラチドリングの構成図。
【図3】本発明に関する眼科測定装置の概略電気系を示すブロック図。
【図4】投影側及び受光側に位置ずれがない場合のハルトマン像。
【図5】投影側及び受光側の位置ずれによるハルトマン像への影響の説明図。
【図6】投影側の位置ずれ発生時のハルトマン像。
【図7】受光側の位置ずれ発生時のハルトマン像。
【図8】眼特性の分布に大きな隔たりがある場合の測定された点像の図。
【図9】測定データ及び推測データの記憶フォーマット。
【図10】ハルトマン画像を組み合わせて被検眼の光学特性を求めるフローチャート。
【図11】独立モード自動調整処理のフローチャート。
【図12】合成点像作成処理のフローチャート。
【図13】独立モード自動調整処理の第1の変形例。
【図14】独立モード自動調整処理の第2の変形例。
【図15】独立モード自動調整処理の第3の変形例。
【図16】ハルトマン画像を組み合わせて被検眼の光学特性を求めるフローチャートの変形例。
【図17】ゼルニケ多項式(1)。
【図18】ゼルニケ多項式(2)。
【符号の説明】
10 第1照明光学系
11、72、31、51、55 第1〜5光源部
12、32、34、44、52、53 集光レンズ
20 第1受光光学系20
21 コリメートレンズ
22 ハルトマン板22
23、35、54 第1〜3受光部
30 第2受光光学系
33、43、45 ビームスプリッター
40 共通光学系
42 アフォーカルレンズ
50 調整用光学系
60 被検眼
70 第2照明光学系
71 プラチドリング
75 第3照明光学系
80 屈折力測定用照明系
90 屈折力測定用受光光学系
100 眼科測定装置の光学系
110 第1移動手段
120 第2移動手段
150 眼科測定装置の光学系の変形例
200 眼科測定装置の電気系
210 演算部
220 制御部
230 表示部
240 メモリ
250 第1駆動部
260 第2駆動部
270 入力部
271 モード切替スイッチ
Claims (7)
- 第1波長の光束を発する第1光源を有し、該第1光源からの第1照明光束で被検眼眼底付近に集光する様に照明するための第1照明光学系と、
被検眼眼底から反射した反射光束を少なくとも17本のビームに変換する第1変換部材及び該第1変換部材で変換された複数の光束を第1信号として受光する第1受光部を有し、該反射光束を上記第1受光部に導く第1受光光学系と、
上記第1照明光学系の集光位置を移動させる第1移動手段と、
上記第1受光部及び上記第1変換部材を光学的に移動させる第2移動手段と、
上記第1受光部からの第1信号を組み合わせることで、被検眼の光学特性の測定が可能となるまで、複数の測定条件における第1信号を測定するように、上記第1及び第2移動手段によって上記第1照明光学系及び上記第1受光光学系の位置を調整する調整部と、
上記調整部における調整の過程で、複数の測定条件における上記第1受光部から得られた第1信号を組み合わせて被検眼の光学特性を求める演算部と
を備え、
上記演算部は、上記第1受光部からの第1信号から点像の密度又は間隔を求め、点像密度又は間隔が所定範囲内のエリアを測定可能エリア、点像密度又は間隔が所定範囲外のエリアを測定不能エリアと判断し、
上記調整部は、測定不能エリアの点像密度又は間隔が所定の範囲に含まれるように上記第1及び第2移動手段を制御するように構成されている眼科測定装置。 - 第1波長の光束を発する第1光源を有し、該第1光源からの第1照明光束で被検眼眼底付近に集光する様に照明するための第1照明光学系と、
被検眼眼底から反射した反射光束を少なくとも17本のビームに変換する第1変換部材及び該第1変換部材で変換された複数の光束を第1信号として受光する第1受光部を有し、該反射光束を上記第1受光部に導く第1受光光学系と、
上記第1照明光学系の集光位置を移動させる第1移動手段と、
上記第1受光部及び上記第1変換部材を光学的に移動させる第2移動手段と、
上記第1受光部からの第1信号を組み合わせることで、被検眼の光学特性の測定が可能となるまで、複数の測定条件における第1信号を測定するように、上記第1及び第2移動手段によって上記第1照明光学系及び上記第1受光光学系の位置を調整する調整部と、
上記調整部における調整の過程で、複数の測定条件における上記第1受光部から得られた第1信号を組み合わせて被検眼の光学特性を求める演算部と
を備え、
上記演算部は、上記第1受光部から得られた第1信号に基づき各点像レベルの極大値を求め、極大値が所定範囲内のエリアを測定可能エリア、極大値が所定範囲外のエリアを測定不能エリアと判断し、
上記調整部は、測定不能エリアの各点像レベルの極大値が所定の範囲に含まれるように上記第1及び第2移動手段を制御するように構成されている眼科測定装置。 - 上記演算部は、複数の測定条件における上記第1受光部で得られた光束の傾き角データを組み合わせて、それに基づいてゼルニケ解析を行い、被検眼の光学特性を求めるように構成されている請求項1又は2に記載の眼科測定装置。
- 上記演算部は、上記調整部における調整の過程で測定した複数の測定条件に従って、該複数の測定条件と異なる他の測定条件を設定し、設定した他の測定条件において測定した場合の点像データを上記第1受光部で得られた第1信号に基づいて推測し、推測したデータを組み合わせるように構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の眼科測定装置。
- 上記調整部は、上記第1受光部における第1信号に基づく点像密度が所定範囲より大きい又は点像間隔が所定範囲より狭い領域がある場合にはマイナス側へ、点像密度が所定範囲より小さい又は点像間隔が所定範囲より広い領域がある場合にはプラス側へ、上記第2移動手段によって上記第1受光光学系の位置を調整するように構成されている請求項1に記載の眼科測定装置。
- 屈折力測定のためのパターンを被検眼網膜に照射する屈折力測定用照明光学系と、
上記屈折力測定用照明光学系により被検眼網膜に投影されたパターン像を受光する屈折力測定用受光光学系とをさらに備え、
上記演算部は、さらに、上記屈折力測定用受光光学系により受光されたパターン像から屈折力を求め、
上記調整部は、屈折力に基づいて、上記第1及び第2移動手段により、上記第1照明光学系及び上記第1受光光学系を移動させるように構成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の眼科測定装置。 - さらに、上記第1移動手段と上記第2移動手段との移動動作を連動させる連動モードと、別個独立に制御可能な独立モードとに切り替え可能とするモード切替部を備え、
上記演算部は、各モードにおける調整の過程で、複数の測定条件における第1受光部で得られた第1信号を組み合わせて、被検眼の光学特性を求めるように構成されている請求項1乃至6のいずれかに記載の眼科測定装置。
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