JP3870074B2 - 画像表示装置および撮像装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示素子等に表示された原画を拡大表示させるヘッドマウントディスプレイやプロジェクタ等の画像表示装置に好適な表示光学系および撮像装置に好適な撮像光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CRTやLCD等の画像表示素子を用い、これらの表示素子に表示された画像を光学系を介して拡大表示させる頭部装着型の画像表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)が良く知られている。
【0003】
このヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置は、これらの装置を頭部に装着するため、特に装置全体の小型化、軽量化が要望されている。また、重量バランスや外観等を考慮すると、観察者の視軸方向に薄型であることが好ましい。さらに、表示される拡大像に迫力を持たせるために、できるだけ大きな拡大像が望まれている。
【0004】
図15には、従来の共軸凹面鏡を用いた画像表示装置を示している。同装置では、表示素子101に表示された画像からの光束をハーフミラー102で反射させ、凹面鏡103に入射させ、凹面鏡103で反射した光束をハーフミラー102を介して観察者の眼Eに導びいている。表示素子101に表示した画像は、凹面鏡103によって拡大した虚像として形成される。これにより、観察者は表示素子101に表示した画像の拡大虚像を観察することができる。
【0005】
また、例えば特開平7−333551号公報,特開平8−50256号公報,特開平8−160340号公報および特開平8−179238号公報等においては、画像を表示する画像表示素子としてのLCD(液晶)と、観察光学系としての薄型プリズムとを使用し、装置全体の薄型化を図った画像表示装置が提案されている。
【0006】
図16には、特開平7−333551号公報で提案されている画像表示装置を示している。この装置において、LCD111から発せられた光は、小型の偏心プリズム112の入射面113に入射する。そして、プリズム112に形成した曲率を有した全反射面114と反射面115との間で光束が折り畳まれ、その後、面114より偏心プリズム112から射出して観察者の眼Eに導かれる。これによって表示素子(LCD)111に表示された画像の虚像が形成され、この虚像を観察者が観察する。
【0007】
偏心プリズム112の反射面115は、偏心非回転対称面(アジムス角度により光学的パワーの異なる面であり、いわゆる自由曲面)で構成された偏心自由曲面より構成されている。
【0008】
図16に示す光学系のタイプは、図15に示した従来の共軸凹面鏡を用いたタイプに比べ、装置全体の薄型化および観察視野の広画角化が容易であるという特徴を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
近年、画像を表示する表示素子であるLCD等の高精細化が進み、従来と同程度の画素数を有しながらも従来より小型化されたLCD等が開発されている。このような小型化された画像表示素子を用いると、装置の小型化には有利になるものの、従来と同様の画角を達成するためには、光学系の倍率を上げる必要が生じる。
【0010】
このような状況に鑑みて、特開平10−153748号公報には、偏心プリズムとリレーレンズ系とを組み合わせ、リレーレンズ系により一旦中間像を形成してから表示素子に表示された画像を観察者に導く光学系が提案されている。これにより、図16に示すタイプの薄型という特徴を有しつつ、更なる倍率向上を果たし、LCDサイズに対して広画角化を図っている。
【0011】
また、この特開平10−153748号公報にて提案の光学系に比べて、更なる光学性能向上を図ったものとして、偏心プリズムの内部反射面を増加させ、偏心プリズムのみで中間像を形成し、その像を観察者に導くタイプや、第1の偏心プリズム光学系に第2の偏心プリズムを設けたタイプ等が、特開2000−066106号公報,特開2000−105338号公報,特開2000−131614号公報,特開2000−199853号公報,特開2000−227554号公報および特開2000−231060号公報等に提案されている。
【0012】
一般的に、一旦中間像を形成するタイプの光学系は光路長が長くなり、装置が大型化するという問題があるが、これらの各公報にて提案の光学系においても、透過作用と反射作用とを果たす兼用面を用いたり、光路を交差させたりする等の工夫により小型化を目指している。
【0013】
本発明は、小型の表示素子を用いつつ広表示画角を達成でき、しかも全体として小型の表示光学系、および小型で広撮影画角を達成できる撮像光学系を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本願第1の発明では、画像表示素子と、画像表示素子が形成する原画からの光を観察者の眼又は被投射面に導く表示光学系とを有する画像表示装置において、表示光学系は第1の光学系と第2の光学系とを有し、この第1の光学系は、少なくとも反射作用を有する第1の面、この第1の面で反射した原画からの光を再度第1の面に向けて反射する第2の面および原画からの光を透過して第1の光学系に入射させるとともに第2の面から第1の面に戻されて反射した光を反射して観察者の眼又は被投射面に導く第3の面を有し、第2の光学系は原画からの光を上記第3の面に導き、上記第3の面と第2の光学系の射出面とを空気間隔を空けて配置するとともに第1の面に再度入射した中心画角主光線はそのヒットポイント上での面の法線に対し、前回とは反対側に反射して進むようにし、第1の光学系内で原画の中間像を形成している。
【0015】
すなわち、第1の光学系において、第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を折り返すことにより、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できるようにしている。このため、小型の原画(画像表示素子に表示された画像等)を用いつつ広表示画角を達成でき、しかも第2の光学系を含む表示光学系全体として小型化を図ることが可能となる。
【0016】
そして、第1の光学系の第3の面と第2の光学系の射出面との間に空気間隔を設けることにより、光学面数を多く確保でき、光学設計の自由度を高くすることができるため、表示光学系としての光学性能の向上やさらなる小型化を図ることが可能となる。
【0017】
また、表示光学系(例えば、透明体)内で原画の中間像を形成させている。すなわち、小型の原画の中間結像面を拡大して表示する中間結像タイプとすることにより、レイアウトの自由度が増え、原画を大画面表示させることが可能となるとともに、光路長をかなり長くしても表示光学系を小型に構成することが可能である。
【0018】
また、第1の光学系および第2の光学系を構成する光学面を入射する光に対して偏心させることにより、さらなる薄型化を図ることが可能となり、光学面に曲率を持たせることで表示光学系における不要な面を取り除き、小型化を図ることが可能となる。さらに、光学面を回転非対称面(自由曲面)とすることにより、諸収差を良好に補正でき、複数の回転非対称面(自由曲面)を採用すると、原画のアスペクト比と表示画像のアスペクト比とを近いものにすることが可能となり、高品位な表示画像を得ることが可能となる。
【0019】
なお、この表示光学系は、観察者が頭部に装着して画像を観察するためのヘッドマウントディスプレイ(HMD)やスクリーン等の被投射面に画像を拡大投射する投射型画像表示装置(プロジェクタ)等の画像表示装置に好適である。
【0020】
また、本願第2の発明では、撮像素子と、被写体からの光を撮像素子の撮像面に導く撮像光学系とを有する撮像装置において、撮像光学系は第1の光学系と第2の光学系とを有し、この第1の光学系は、少なくとも反射作用を有する第1の面、この第1の面で反射した被写体からの光を再度第1の面に向けて反射する第2の面および被写体から第1の光学系に入射した光を反射するとともに第2の面から第1の面に戻されて反射した光を撮像面側に透過する第3の面を有し、第2の光学系は第3の面から射出した光を撮像面に導き、上記第3の面と第2の光学系の入射面とを空気間隔を空けて配置するとともに第1の面に再度入射した中心画角主光線はそのヒットポイント上での面の法線に対し、前回とは反対側に反射して進むようにし、第1の光学系内で被写体の中間像を形成している。
【0021】
すなわち、第1の光学系において、第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を折り返すことにより、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できるようにしている。このため、第2の光学系を含む撮像光学系全体として小型でありながらも広撮影画角を達成することが可能となる。
【0022】
そして、第1の光学系の第3の面と第2の光学系の入射面との間に空気間隔を設けることにより、光学面数を多く確保でき、光学設計の自由度を高くすることができるため、撮像光学系としての光学性能の向上やさらなる小型化を図ることが可能となる。
【0023】
また、撮像光学系(例えば、透明体)内で被写体の中間像を形成させている。すなわち、被写体の中間結像面を縮小して撮像面に導く中間結像タイプとすることにより、レイアウトの自由度が増え、広画角の被写体像を十分縮小して撮像面に導くことが可能となるとともに、光路長をかなり長くしても撮像光学系を小型に構成することが可能である。
【0024】
また、この撮像光学系を構成する光学面を光に対して偏心させることにより、さらなる薄型化を図ることが可能となり、光学面に曲率を持たせることで撮像光学系における不要な面を取り除き、小型化を図ることが可能となる。さらに、光学面を回転非対称面(自由曲面)とすることにより、諸収差を良好に補正でき、複数の回転非対称面(自由曲面)を採用すると、被写体のアスペクト比と撮影画像のアスペクト比とを近いものにすることが可能となり、高品位な撮影画像を得ることが可能となる。
【0025】
なお、この撮像光学系は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に好適である。
【0026】
また、第1および第2の発明において、透明体上に光学面を形成し、いずれかの光学面で光を全反射させるようにすることにより、長い光路長でも光量ロスを少なくすることが可能である。
【0027】
また、表示光学系および撮像光学系のいずれにおいても、光を反射して折り返す面を曲面とするとよい。折り返し反射面が平面であると、反射時に周辺画像の光線の方向を個々に制御できないため、光学系が大型化してしまう。折り返し反射面が回転非対称面であると、周辺画像の光線方向を自由に制御できるため、曲面の場合よりも更に小型化可能となる。
【0028】
さらに、第2の面(折り返し反射面)を第1および第2の面を有する光学素子とは別の反射部材とすることにより、表示光学系および撮像光学系の大きさに影響を与えずに光路中の有効面を増やすことができるため、設計の自由度を増加させ、光学性能の向上を図ることが可能となる。
【0029】
さらに、反射部材を透過面および反射面を有する裏面鏡とすることにより、透過面も光学面として使えるため、光学系の大きさに影響を与えずにさらに結像性能を向上させることができる。
【0030】
また、第1の光学系および第2の光学系を正のパワーとすることにより、光学系全体での正のパワーを分散させることができるため、収差補正が容易となり、結像性能を向上させることができる。
【0031】
なお、上記光学系は、言い換えれば、第1の面に最初に入射した中心画角主光線のヒットポイントにおける法線に対する反射角と、第2の面で反射されて第1の面に再度入射した中心画角主光線のヒットポイントにおける法線に対する反射角とが逆符号となるように構成されている。即ち、第1の面で反射された光を第2の面によって第1の面における最初の光の反射領域側(反射領域、反射領域付近あるいは反射領域寄りの領域)に戻すように反射することによって効果的に光路を重複させ、長い光路長を小型の光学系の中に納めることができるようにしている。
【0032】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態である表示光学系を示している。この表示光学系は、観察者の眼E側から画像表示素子(LCD等)10に向かって順に、全体として正の光学的パワー(1/焦点距離)を有する第1の光学系30と、全体として正の光学的パワーを有する第2の光学系20とを有して構成されている。
【0033】
本実施形態では、第1の光学系30および第2の光学系20のいずれも、内部がガラスやプラスチックなどの光学媒質で満たされた透明体(以下、それぞれ光学素子という)31,21上に光学面が形成されて構成されている。
【0034】
画像表示素子10にて変調され発せられた光は、第2の光学素子21に面21aから入射し、面21bで反射し、面21cを透過して第2の光学素子21を射出する。射出面21cから第2の光学素子21を射出した光は、面31a(第3の面)を透過して第1の光学素子31に入射する。
【0035】
入射面31aから第1の光学素子31に入射した光は、面31b(第1の面)で反射し、面31c(第2の面)でほぼ逆方向に折り返し反射し、面31bにおいて、そのヒットポイント上での面の法線に対し前回とは反対側に再反射し、面31aで反射し、面31bを透過して第1の光学素子31を射出し、観察者の眼Eに導かれる。なお、面31aにはハーフミラーコーティングが施されている。
【0036】
この図では、画像表示素子10から発した光束の例として、画像表示素子10の表示面中心を射出して表示光学系の射出瞳(観察者の眼Eの位置に相当)の中心に至る中心画角主光線を実線で示している。
【0037】
第1の光学素子31および第2の光学素子21を正の光学的パワーを有するように構成することにより、観察者は画像表示素子10上に表示された画像の拡大像を視認することが可能となる。
【0038】
図1に示すように、第1の光学素子31上の反射面を、中心画角主光線に対して偏心させて配置することにより、光路を斜めに折り畳み,第1の光学素子31の薄型化を実現している。
【0039】
この際、光学的パワーを有した面を偏心して配置することにより生じる偏心収差を補正するために、第1の光学素子31上の光学面のうち少なくとも1つの面をアジムス角度により光学的パワーの異なる回転非対称面(いわゆる自由曲面)で構成することが好ましい。
【0040】
特に、第1の光学素子31の全体としての正の光学的パワーのメインパワーを受け持つ、観察者の眼Eに向かって凹面(つまりは、第2の光学系20に向かって凸面)の形状を持った面31aを自由曲面で構成することが、収差補正上からも好ましい。
【0041】
さらに好ましくは、第1の光学素子31上の全ての光学面を自由曲面で構成することにより、さらに良好な光学性能を得ることができる。このとき、各回転非対称面を図の紙面断面を唯一の対称面とする紙面垂直方向に面対称な形状とすると、対称性のない場合に比較して加工および製作を容易にすることができるため、好ましい。
【0042】
第1の光学素子31において、光は面31a→面31b→面31c→面31b→面31a(→面31b)の順に各面を通り、面31cでの反射を境にそれまでの光路を逆にたどる。面31a→面31b→面31cまでの光路を往路と、面31c→面31b→面31aの光路を復路と呼び、これら往路と復路とにより往復光路が形成される。なお、面31cを折り返し反射面と呼ぶ。
【0043】
このように、面31cを折り返し反射面として第1の光学系30内で往復光路を形成することで、第1の光学素子31内で光路を重複させるように折り畳み、第1の光学素子31内のスペースを有効に利用し、光路長に対して第1の光学系30を小型化することができる。これにより、第2の光学系20を含む表示光学系全体も小型化することができる。
【0044】
ところで、往復光路を形成することによって第1の光学系30の小型化は図れるが、光学面を重複して利用するためにその設計の自由度が低下し、光学性能の低下や製造許容誤差の減少などが懸念される。
【0045】
しかし、本実施形態では、第1の光学素子31の入射面31aと第2の光学素子21の射出面21cとを空気層(空気間隔)を挟んで対向するように配置し、貼り合わせ面ではなく別々の面にすることによって、光学系の大きさに影響を与えずに光路中の光学有効面を増やし、設計の自由度を増加させ、光学性能の向上を実現している。
【0046】
また、面31aおよび面21cでの入射前後の媒質の屈折率差を大きく設定できるため、観察者の眼Eに向かって凹面の形状(第2の光学系20に向かって凸面の形状)を持った面31aおよび第1の光学系30に向かって凸の形状を持った面21cでの入射時の凸レンズ作用を、同じ光学的パワーを有しながらも小さな曲率で得ることができるため、収差の発生を抑えることができる。
【0047】
また、面31bでの反射を全反射とすると、光量ロスが少なくなり、好ましい。また、少なくとも面31bでの反射光束と射出光束とが共用する領域においては、反射光束が全反射するようにすると、反射光束の全てを全反射させる場合に対して設計の自由度を上げることができる。
【0048】
このように、透過作用と反射作用の両作用を有する光学面における反射を全反射とすることにより、光を効率良く利用することができる。
【0049】
また、図1に点線で示したように、画像表示素子10の画像表示面の中心より射出して表示光学系の射出瞳の両端に至る光線も、面31a→面31b→面31c→面31b→面31a(→面31b)と、中心画角主光線と同様の経路をたどる。この際、第1の光学系30の光路中で両端からの光線が交わっており、画像表示素子10上に表示された画像の中間像が形成されている。
【0050】
これにより、画像表示素子10の表示サイズに対する表示画角設定の自由度を向上させ、広画角化(高倍率表示)を可能にしている。また、中間像を略平行光として観察者の眼Eに導くいわゆる接眼光学系部分の収差補正を容易にするように、中間結像面は接眼光学系部分での像面湾曲、非点収差や歪曲収差の発生する状況に合わせて適宜湾曲したり非点隔差を有したり歪曲させたりするように形成されていてもよい。
【0051】
また、第1の光学素子31と第2の光学素子21を同じ屈折率の材料で形成することにより、これら光学素子31,21の製造が容易になる。
【0052】
以上のように表示光学系を構成することにより、画像表示素子10に表示された画像を良好な光学性能で、拡大像として表示する画像表示装置を提供することができる。
【0053】
また、表示光学系内で1回結像を行うことで画像表示素子10の表示サイズに対する表示画角設定の自由度を向上させて広画角化(高倍率表示)を可能にするとともに、これに伴い光路長が長くなるのを第1の光学素子31内に往復光路を形成することで光路を重複させ、表示光学系の全長を短く抑え、非常にコンパクトな表示光学系を構成できる。
【0054】
なお、本実施形態においては、中心画角主光線の面31cにおける折り返し反射が略垂直反射であるように描かれているが、本発明の表示光学系はこの構成に限るものではない。
【0055】
(第2実施形態)
図2および図3には、本発明の第2実施形態である表示光学系を示している。本実施形態の表示光学系を構成する第1の光学系30’,30”および第2の光学系20’,20”は、第1実施形態のものとは異なるものである。
【0056】
図2に示す表示光学系では、画像表示素子10から発せられた光は、面22aから第2の光学系20’を構成する光学素子(第2の光学素子)22に入射し、面22bで反射し、面22aで全反射し、面22cから第2の光学素子22を射出する。射出面22cから第2の光学系20’を射出した光は、面31aから第1の光学系30’を構成する透明体(第1の光学素子)31に入射する。
【0057】
入射面31aから第1の光学素子31に入射した光は、面31bで反射し、面31cで折り返し反射し、面31bで再反射し、面31aで反射して面31bから第1の光学素子31を射出し、観察者の眼Eに導かれる。
【0058】
また、図3に示す表示光学系では、画像表示素子10から発せられた光は、第2の光学系20”のレンズ23,24,25で屈折され、射出面25aから射出して第1の光学系30”の透明体(第1の光学素子)31に入射する。入射面31aから第1の光学素子31に入射した光は、面31bで反射し、面31cで折り返し反射し、面31bで再反射し、面31aで反射して面31bから第1の光学素子31を射出し、観察者の眼Eに導かれる。
【0059】
図2および図3に示した表示光学系では、ともに第1の光学系30’,30”において、面31a→面31b→面31c→面31b→面31a→面31bの往復光路が形成されている点は第1実施形態と同様である。
【0060】
但し、図2においては、面31bで反射した中心画角主光線は、面31cで入射光線に対して角度θをなして折り返し反射されて面31bの1回目の反射地点よりも低い位置で再反射される点が第1実施形態と異なる。
【0061】
また、図3においては、面31bで反射された中心画角主光線は、面31cで入射光線に対して角度θをなして折り返し反射されて面31bの1回目の反射地点よりも高い位置で再反射される点が第1実施形態と異なっている。
【0062】
このように、折り返し反射面31cの前後で光線が所定の角度θをなして入射・反射されてもよい。但し、角度θは、
|θ|<30°
を満たすことが好ましい。この条件を外れると、第1の光学素子31が大型化し、光学系全体を小型にすることが難しくなるため、好ましくない。
【0063】
また、第2の光学系20’は、図2に示したように反射面を用いて光路を折り畳むことにより、小さくすることができる。このとき、光学的パワーを有した面を偏心して配置することにより生じる偏心収差を補正するために、第2の光学系20’,20”を構成する光学面のうち少なくとも1つの面を偏心した回転非対称面で構成することが好ましい。
【0064】
また、収差補正に寄与する光学面を増やすために、第2の光学系を反射面を含む2つ以上の光学部材を用いて構成してもよい。
【0065】
さらに、図3に示すように、第2の光学系20”を屈折面のみで構成してもよく、特に凹レンズ24を用いることによって色収差の補正が容易となり、さらなる結像性能の向上が期待できる。
【0066】
また、屈折面を自由曲面や偏心した回転対称非球面で構成することにより、偏心収差の補正が容易となり、さらなる結像性能の向上が期待できる。
【0067】
(第3実施形態)
図4には、本発明の第3実施形態である表示光学系を示している。理解を容易にするために、第1の光学系は簡略化して示す。表示光学系としては、図1から図3に示した第2の光学系20(20’、20”)とそれぞれ組み合わせて構成してもよい。
【0068】
本実施形態の表示光学系は、観察者の眼E側から画像表示素子(LCD等)10に向かって順に、全体として正の光学的パワー(1/焦点距離)を有する第1の光学系130と、全体として正の光学的パワーを有する第2の光学系120とを有して構成されている。
【0069】
本実施形態では、第1の光学系130は、内部がガラスやプラスチックなどの光学媒質で満たされた透明体(第1の光学素子)32上に光学面が形成されて構成されている。
【0070】
画像表示素子10にて変調され発せられた光は、入射面20aから第2の光学系120に入射し、射出面20bから第2の光学系120を射出し、面32aから第1の光学素子32に入射する。
【0071】
入射面32a(第3の面)から第1の光学素子32に入射した光は、面32b(第1の面)で反射し、面32c(第2の面)で反射し、面32bの上部で折り返し反射し、面32cで再反射し、面32bにおいて、そのヒットポイント上での面の法線に対し前回とは反対側に再反射し、面32aで反射し、面32bを透過して透明体32を射出し、観察者の眼Eに導かれる。なお、面32aにはハーフミラーコーティングが施されている。
【0072】
第1の光学系130および第2の光学系120を正の光学的パワーを有するように構成することにより、観察者は画像表示素子10上に表示された画像の拡大像を視認することが可能となる。
【0073】
第1の光学素子32において、光は面32a→面32b→面32c→面32b→面32c→面32b→面32a(→面32b)の順に各面を通り、面32bでの反射を境にそれまでの光路を逆にたどる。
【0074】
このように、面32bを折り返し反射面として、第1の光学系130内で往復光路を形成することで、第1実施形態と同様に、光路長に対して第1の光学系130を小型化している。これにより、第2の光学系120を含む表示光学系全体も小型化することができる。
【0075】
また、第1の光学素子32上の光学面を回転非対称面で構成し、第2の光学系120の射出面20bと第1の光学系130の入射面32aとの間に空気層(空気間隔)を設けることにより、第1実施形態にて説明したのと同様に、光学性能の向上を実現している。
【0076】
(第4実施形態)
図5には、本発明の第4実施形態である表示光学系を示している。理解を容易にするために、第1の光学系は簡略化して示す。表示光学系としては、図1から図3に示した第2の光学系20(20’、20”)とそれぞれ組み合わせて構成してもよい。
【0077】
本実施形態の表示光学系は、観察者の眼E側から画像表示素子(LCD等)10に向かって順に、全体として正の光学的パワー(1/焦点距離)を有する第1の光学系230と、全体として正の光学的パワーを有する第2の光学系120とを有して構成されている。
【0078】
本実施形態では、第1の光学系230は、内部がガラスやプラスチックなどの光学媒質で満たされた透明体(光学素子)33と、反射ミラー部材34とから構成されている。
【0079】
画像表示素子10にて変調され発せられた光は、入射面20aから第2の光学系120に入射し、射出面20bから第2の光学系120を射出し、面33aから第1の光学系230の光学素子33に入射する。
【0080】
入射面33a(第3の面)から光学素子33(第1の光学系230)に入射した光は、面33b(第1の面)で反射し、面33cから光学素子33を射出し、反射ミラー部材34の反射面34a(第2の面)で折り返し反射し、再び面33cから光学素子33に入射して面33bにおいて、そのヒットポイント上での面の法線に対し前回とは反対側に再反射し、面33aで反射し、面33bを透過して光学素子33を射出し、観察者の眼Eに導かれる。なお、面33aにはハーフミラーコーティングが施されている。
【0081】
第2の光学系120を正の光学的パワーを有するように構成し、第1の光学系230を構成する光学面のうち少なくとも1つの面を曲面として第1の光学系230に正の光学的パワーを持たせることにより、観察者は画像表示素子10上に表示された画像の拡大像を視認することが可能となる。
【0082】
第1の光学系230において、光は面33a→面33b→面33c→面34a→面33c→面33b→面33a(→面33b)の順に各面を通り、面34aでの反射を境にそれまでの光路を逆にたどる。
【0083】
このように、面34aを折り返し反射面として第1の光学系230内で往復光路を形成することで、第1実施形態と同様に、光路長に対して第1の光学系230を小型化している。これにより、第2の光学系120を含む表示光学系全体も小型化することができる。
【0084】
また、第2の光学系120の射出面20bと第1の光学系230の入射面33aとの間に空気層(空気間隔)を設けることにより、第1実施形態で説明したのと同様に、光学性能の向上を実現している。
【0085】
さらに、本実施形態では、第1の光学系230において、折り返し反射面34aを含む反射ミラー部材34を、透明体33とは別部材とすることにより、光学系の大きさに影響を与えずに光路中の光学面数を増やし、設計の自由度を増加させ、光学性能の向上を実現している。
【0086】
(第5実施形態)
図6には、本発明の第5実施形態である表示光学系を示している。理解を容易にするために、第1の光学系は簡略化して示す。表示光学系としては、図1から図3に示した第2の光学系20(20’、20”)とそれぞれ組み合わせて構成してもよい。
【0087】
本実施形態の表示光学系は、観察者の眼E側から画像表示素子(LCD等)10に向かって順に、全体として正の光学的パワー(1/焦点距離)を有する第1の光学系330と、全体として正の光学的パワーを有する第2の光学系120とを有して構成されている。
【0088】
本実施形態では、第1の光学系330は、内部がガラスやプラスチックなどの光学媒質で満たされた透明体(光学素子)35と、反射ミラー部材36とから構成されている。
【0089】
画像表示素子10にて変調され発せられた光は、入射面20aより第2の光学系120に入射し、射出面20bより第2の光学系120を射出し、面35aから第1の光学系330の光学素子35に入射する。
【0090】
入射面35a(第3面)から光学素子35(第1の光学系330)に入射した光束は、面35bで反射し、面35c(第1の面)で反射し、面35bから光学素子35を射出して反射ミラー部材36の反射面36a(第2の面)で折り返し反射する。そして、面35bから再び光学素子35に入射し、面35cで再反射して面35bにおいて、そのヒットポイント上での面の法線に対し前回とは反対側に再反射し、さらに面35aで反射し、面35bを透過して光学素子35を射出し、観察者の眼Eに導かれる。なお、面35aにはハーフミラーコーティングが施されている。
【0091】
第2の光学系120を正の光学的パワーを有するように構成するとともに、第1の光学系330を構成する光学面のうち少なくとも1つの面を曲面として第1の光学系330に正の光学的パワーを持たせることにより、観察者は画像表示素子10上に表示された画像の拡大像を視認することが可能となる。
【0092】
第1の光学系330において、光は面35a→面35b→面35c→面35b→面36a→面35b→面35c→面35b→面35a(→面35b)の順に各面を通り、面36aでの折り返し反射を境にそれまでの光路を逆にたどる。
【0093】
このように、面36aを折り返し反射面として、第1の光学系330内で往復光路を形成することで、第1実施形態と同様に、光路長に対して第1の光学系330を小型化している。これにより、第2の光学系120を含む表示光学系全体も小型化することができる。
【0094】
また、第2の光学系120の射出面20bと第1の光学系330の入射面35aとの間に空気層(空気間隔)を設けることにより、第1実施形態にて説明したのと同じ理由により、光学性能の向上を実現している。
【0095】
さらに、本実施形態では、第1の光学系330において、折り返し反射面36aを含む反射ミラー部材36を、光学素子35とは別部材とすることにより、光学系の大きさに影響を与えずに光路中の光学面数を増やし、設計の自由度を増加させ、光学性能の向上を実現している。
【0096】
なお、上記第4実施形態(図5)および第5実施形態(図6)において、反射ミラー部材34,36の反射面34a,36aの形状は、結像作用面を増やすという観点から曲面であることが望ましい。さらに、これら反射面34a,36aを、偏心した回転非対称形状とすることにより、光学素子33,35で発生する偏心収差の補正に寄与させ、光学性能の向上を図ることができる。
【0097】
また、第4実施形態において、反射ミラー部材34を図7に示す変形例のように裏面鏡とすることにより、反射面34aだけでなく、透過面34bも光学面として使えるようになるため、光学系の大きさに影響を与えずにさらに結像性能を向上させることができる。
【0098】
また、図8に示す変形例のように、反射ミラー部材34を2つ以上の光学素子で構成することにより、色収差の補正が容易となり、さらなる結像性能の向上を図ることができる。
【0099】
これら図7,8に示した反射ミラー部材34’,34”の構成は、第5実施形態にて用いられる反射ミラー部材36について適用することができる。
【0100】
また、第4実施形態および第5実施形態において、第1実施形態と同様に、光学的パワーを有した面を偏心させて配置することにより生じる偏心収差を補正するために、第1の光学系230,330(光学素子33,35)を構成する面のうち少なくとも1つの面を回転非対称面で構成することが好ましい。
【0101】
以上説明した第3〜5実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1の光学系の光路中に、画像表示素子10の表示面の中間結像面を形成することにより、広画角化(高倍率表示)が可能となる。
【0102】
また、第1の光学系の光学素子において、透過作用と反射作用の両作用を有する面における反射を全反射とすることにより、光を効率良く利用することができる。
【0103】
さらに、第3〜5実施形態においても、中心画角主光線の折り返し反射面における折り返し反射は垂直反射に限られるものではなく、第2実施形態に示したように、折り返し反射面の前後で光線が所定の角度θをなして入射・反射されてもよい。
【0104】
以上の第3から第5実施形態のように表示光学系を構成することにより、画像表示素子10に表示された画像を良好な光学性能で、拡大像として表示する画像表示装置を提供することができる。
【0105】
また、表示光学系内で1回結像を行うことで、画像表示素子10の表示サイズに対する表示画角設定の自由度を向上させて広画角化(高倍率表示)を可能にするとともに、これに伴い光路長が長くなるのを第1の光学系内に往復光路を形成することで光路を重複させ、表示光学系の全長を短く抑え、非常にコンパクトな表示光学系を構成できる。
【0106】
(第6実施形態)
図9には、本発明の第6実施形態である表示光学系を示している。本実施形態の表示光学系は、観察者の眼E側から画像表示素子(LCD等)10に向かって順に、全体として正の光学的パワー(1/焦点距離)を有する第1の光学系430と、全体として正の光学的パワーを有する第2の光学系220とを有して構成されている。
【0107】
本実施形態では、第1の光学系430は、内部がガラスやプラスチックなどの光学媒質で満たされた透明体(第1の光学素子)37により構成され、第2の光学系220も、同様の光学媒質で満たされた透明体(第2の光学素子)26により構成されている。第1および第2の光学系内における光の進行経路は図2に示したものと同様である。
【0108】
本実施形態では、第1の光学素子37の入射面(第3の面)37aと第2の光学素子26の射出面26aとの間に空気層(空気間隔)を設けているが、第1の光学素子37と第2の光学素子26とを、第1の光学素子37の入射面37aと第2の光学素子26の射出面26a以外(光線有効範囲外)の部分で互いに接するように構成している。
【0109】
これにより、上記空気層の寸法誤差(製造誤差)を小さく抑えることができ、製造誤差に起因する光学性能の劣化を防止できる。
【0110】
また、以上説明した各実施形態の表示光学系と同様の光学系を、被写体からの光をCCD等の撮像素子の撮像面に導く撮像光学系としても利用することができる。
【0111】
例えば、第1実施形態に示した光学系を例にとると、被写体から第1の面(31b)を透過して第1の光学系30(第1の光学素子31)に入射した光を、第3の面(31a)で反射し、第1の面(31b)で反射し、第2の面(面31c)で反射して第1の面(31b)において、そのヒットポイント上での面の法線に対し前回とは反対側に再反射し、第3の面(31a)を透過させて第2の光学系20に導く。そして、面21cから第2の光学系20に入射した光を、面21bで反射し、面21aを透過させて画像表示素子10に代えて配置された撮像素子に到達させる。
【0112】
この場合も、表示光学系と同様に、第1の光学系30において、第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を折り畳むことができるので、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できる。このため、小型でありながらも広撮影画角を達成することができる。
【0113】
さらに、撮像光学系(例えば、第1の光学素子31)内で光を中間結像させるようにする、すなわち被写体の中間結像面を縮小して撮像面に導く中間結像タイプとすることにより、レイアウトの自由度が増え、広画角の被写体像を十分縮小して撮像面に導くことができるとともに、光路長をかなり長くしても撮像光学系を小型に構成することができる。
【0114】
なお、撮像光学系を構成する光学面を光に対して偏心させたり、光学面に曲率を持たせたり、光学面を回転非対称面(自由曲面)としたりすることによるメリットは表示光学系と同様である。
【0115】
以下、上記各実施形態の数値実施例について説明する。
【0116】
[数値実施例1]
図10には、図1に示した第1実施形態の数値実施例の光路断面図を示している。図中、30は第1の光学系であり、3つの光学面を有したプリズム形状の透明体(第1の光学素子)31により構成されている。S2,S4,S6は同一面、S3,S7は同一面であり、これら2面とS5はそれぞれ第1実施形態において説明した面31b,31a,31cに相当する。
【0117】
20は第2の光学系であり、ここではS8,S9,S10の3面を有した同一媒質からなる透明体(第2の光学素子)21により構成されている。これら3面はそれぞれ第1実施形態において説明した面21c,21b,21aに相当する。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0118】
本数値実施例において、S1からS10の光学面は回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。
【0119】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0120】
本数値実施例1の光学データを表1に示す。表1の光学データのうち最も左の項目SURFは面番号を示している。また、X,Y,ZおよびAは、第1面S1の中心を原点(0,0,0)とし、図中に示したy軸,z軸と紙面奥向きにx軸をとった座標系における各面の面頂点の位置(x,y,z)並びに図面上で反時計回り方向を正方向とするx軸回りの回転角度a(単位:度)である。
【0121】
Rは曲率半径である。TYPの項は面形状の種類を表し、SPHは球面であり、FFSは以下の式に従う回転非対称面である。
【0122】
【数1】
【0123】
TYPの欄でFFSの横に記された数値は、その面の形状が同表の下側に記載された非球面係数ci(i=1,2,3…)に対応する回転非対称形状であることを示している。
【0124】
Nd,νd(但し、表ではvdと記す)はそれぞれ、その面以降の媒質のd線波長での屈折率とアッベ数を示しており、屈折率Ndの符号の変化はその面で光が反射されることを示している。また、媒質が空気層の場合は、屈折率Ndのみを1.000として表示し、アッベ数νdは省略している。
【0125】
以上の表の項目は、以降の数値実施例においても同様である。
【0126】
【表1】
【0127】
表1から分かるように、画像表示面SIからの光はS10(面21a)から第2の光学素子21に入射し、S9(面21b)で反射し、S8(面21c)を透過して第2の光学素子21を射出する。第2の光学素子21の射出面(S8)から射出した光は、S7(面31a)を透過して第1の光学素子31(第1の光学系30)に入射し、S6(面31b)で反射し、S5(面31c)で折り返し反射し、S4(面31b)で再反射し、S3(面31a)で反射し、S2(面31b)を透過して第1の光学素子31を射出し、射出瞳S1に導かれる。観察者は射出瞳位置に眼を置くことにより、画像表示面の拡大像を観察することができる。
【0128】
本数値実施例1で長さのディメンジョンを有する数値をmmとして考えると、射出瞳径φ6mm、画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で、水平約50°,垂直約39°の画角で画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0129】
なお、本数値実施例の光学系を撮像光学系に利用してもよい。この場合、z軸負方向無限遠方の被写体からの光は、絞りS1を通過してS2から第1の光学素子31に入射し、S3,S4,S5,S6で反射してS7から第1の光学素子31を射出する。第1の光学素子31を射出した光は、第2の光学素子21に導かれ、S8,S9,S10を介して撮像面SI上に外界(被写体)像を結像する。
【0130】
[数値実施例2]
図11は図2に示した第2実施形態の数値実施例を示す光学断面図であり、光学データを表2に示す。
【0131】
図中、30’は第1の光学系であり、3つの光学面を有したプリズム形状の透明体(第1の光学素子)31により構成されている。S2,S4,S6は同一面、S3,S7は同一面であり、これら2面とS5はそれぞれ第2実施形態において説明した面31b,31a,31cに相当する。
【0132】
20’は第2の光学系であり、ここではS8,S9(S11と同一面),S10の3面を有した同一媒質からなる透明体(第2の光学素子)22により構成されている。これら3面はそれぞれ第1実施形態において説明した面22c,22a,22bに相当する。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0133】
本数値実施例において、S1からS11の光学面は回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。
【0134】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0135】
画像表示面SIからの光は、S11(面22a)から第2の光学素子22に入射し、S10(面22b)で反射し、S9(面22a)で反射し、S8(面22c)を透過して第2の光学素子22から射出する。第2の光学系20’の射出面(S8)から射出した光は、S7(面31a)を透過して第1の光学素子31(第1の光学系30’)に入射し、S6(面31b)で反射し、S5(面31c)で折り返し反射し、S4(面31b)で再反射し、S3(面31a)で反射し、S2(面31b)を透過して第1の光学素子31を射出し、射出瞳S1に導かれる。
【0136】
観察者は射出瞳位置に眼を置くことにより、画像表示面の拡大像を観察することができる。
【0137】
【表2】
【0138】
本数値実施例2は、長さのディメンジョンを有する数値をmmとして考えると、数値実施例1とほぼ同等の仕様の表示光学系となる。
【0139】
なお、本数値実施例の光学系を撮像光学系に利用してもよい。この場合、z軸負方向無限遠方の被写体からの光は、絞りS1を通過してS2から第1の光学素子31に入射し、S3,S4,S5,S6で反射してS7から第1の光学素子31を射出する。第1の光学素子31を射出した光は、第2の光学素子22に導かれ、S8,S9,S10,S11を介して撮像面SI上に外界(被写体)像を結像する。
【0140】
[数値実施例3]
図12は図4に示した第3実施形態の数値実施例を示す光学断面図であり、光学データを表3に示す。
【0141】
図中、130は第1の光学系であり、3つの光学面を有したプリズム形状の透明体(第1の光学素子)32により構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第3実施形態において説明した面32b,32a,32cに相当する。
【0142】
120は第2の光学系であり、ここではS10,S11,S12の3面を有した同一媒質からなる透明体(第2の光学素子)21により構成されている。これら3面は図1の第1実施形態において説明した面21c,21b,21aに相当する。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0143】
本数値実施例において、S1からS12の光学面は回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。
【0144】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0145】
画像表示面SIからの光は、S12(面21a)から第2の光学素子21に入射し,S11(面21b)で反射し、S10(面21c)を透過して第2の光学素子21から射出する。
【0146】
第2の光学素子21の射出面(S10)から射出した光は、S9(面32a)を透過して第1の光学素子32(第1の光学系130)に入射し、S8(面32b)で反射し、S7(面32c)で反射し、S6(面32b)で折り返し反射し、S5(面32c)で再反射し、S4(面32b)で反射し、S3(面32a)で反射し、S2(面32b)を透過して第1の光学素子32を射出し、射出瞳S1に導かれる。
【0147】
観察者は射出瞳位置に眼を置くことにより、画像表示面の拡大像を観察することができる。
【0148】
【表3】
【0149】
本数値実施例3は、長さのディメンジョンを有する数値をmmとして考えると、数値実施例1とほぼ同等の仕様の表示光学系となる。
【0150】
なお、本数値実施例の光学系を撮像光学系に利用してもよい。この場合、z軸負方向無限遠方の物点からの光は、絞りS1を通過して第1の光学素子32に導かれる。そして、S2から第1の光学素子32に入射し、S3で反射し、S4で反射し、S5で反射し、S6で折り返し反射した後、S7で反射し、S8で反射し、S9から第1の光学素子32を射出して第2の光学素子21に導かれる。第2の光学素子21に導かれた光は、S10,S11,S12を介して撮像面SIに結像する。
【0151】
[数値実施例4]
図13は図4に示した第3実施形態の他の数値実施例を示す光学断面図であり、光学データを表4に示す。
【0152】
図中、130は第1の光学系であり、3つの光学面を有したプリズム形状の透明体(第1の光学素子)32により構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第3実施形態において説明した面32b,32a,32cに相当する。
【0153】
20’は第2の光学系であり、ここではS10,S11(S13と同一面),S12の3面を有した同一媒質からなる透明体(第2の光学素子)22により構成されている。これら3面は図2の第2実施形態において説明した面22c,22a,22bに相当する。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0154】
本数値実施例において、S1からS13の光学面は回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。
【0155】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0156】
画像表示面SIからの光は、S13(面22a)から第2の光学素子22に入射し、S12(面22b)で反射し、S11(面22a)で反射し、S10(面22c)を透過して第2の光学素子22から射出する。
【0157】
第2の光学素子22の射出面(S10)から射出した光は、S9(面32a)を透過して第1の光学素子32(第1の光学系130)に入射し、S8(面32b)で反射し、S7(面32c)で反射し、S6(面32b)で折り返し反射し、S5(面32c)で再反射し、S4(面32b)で反射し、S3(面32a)で反射し、S2(面32b)を透過して第1の光学素子32を射出し、射出瞳S1に導かれる。
【0158】
観察者は射出瞳位置に眼を置くことにより、画像表示面の拡大像を観察することができる。
【0159】
【表4】
【0160】
本数値実施例4は、長さのディメンジョンを有する数値をmmとして考えると、数値実施例1とほぼ同等の仕様の表示光学系となる。
【0161】
なお、本数値実施例の光学系を撮像光学系に利用してもよい。この場合、z軸負方向無限遠方の物点からの光は、絞りS1を通過して第1の光学系130に導かれる。そして、S2から第1の光学素子32に入射し、S3で反射し、S4で反射し、S5で反射し、S6で折り返し反射した後、S7で反射し、S8で反射し、S9から第1の光学素子32を射出して第2の光学素子22に導かれる。第2の光学素子22に導かれた光は、S10,S11,S12,S13を介して撮像面SIに結像する。
【0162】
[数値実施例5]
図14は図6に示した第5実施形態の数値実施例を示す光学断面図であり、光学データを表5に示す。
【0163】
図中、330は第1の光学系であり、3つの光学面を有したプリズム形状の透明体(光学素子)35と、反射ミラー部材36とにより構成されている。S2,S4,S6,S8,S10は同一面、S3,S11は同一面、S5,S9は同一面であり、これら3面はそれぞれ第5実施形態において説明した面35b,35a,35cに相当する。また、S7は第5実施形態において説明した面36aに相当する。
【0164】
120は第2の光学系であり、ここではS12,S13の2面を有した同一媒質からなる透明体(第2の光学素子)22により構成されている。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0165】
本数値実施例において、S1からS13の光学面は回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。
【0166】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0167】
画像表示面SIからの光は、第2の光学系120のS13を通過してS12を射出し、S11(面35a)を透過して第1の光学系130の光学素子35に入射する。そして、S10(面35b)で反射し、S9(面35c)で反射し、S8(面35b)で屈折されつつ光学素子35を射出する。
【0168】
射出した光はS7(面36a)で折り返し反射し、S6(面35b)を透過して再び光学素子35に入射し、S5(面35c)で反射し、S4(面35b)で反射し、S3(面35a)で反射し、S2(面35b)を透過して光学素子35を射出し、射出瞳S1に導かれる。
【0169】
観察者は射出瞳位置に眼を置くことにより、画像表示面の拡大像を観察することができる。
【0170】
【表5】
【0171】
本数値実施例5は、長さのディメンジョンを有する数値をmmとして考えると、数値実施例1とほぼ同等の仕様の表示光学系となる。
【0172】
なお、本数値実施例の光学系を撮像光学系に利用してもよい。この場合、z軸負方向無限遠方の物点からの光は、絞りS1を通過して第1の光学系330に導かれる。そして、S2から第1の光学系330の光学素子35に入射し、S3で反射し、S4で反射し、S5で反射し、S6を透過して光学素子35から射出する。その後、光はS7(反射ミラー部材36)で折り返し反射した後、S8を透過して再び光学素子35に入射し、S9で反射し、S10で反射し、S11を透過して光学素子35を射出し、第2の光学系120に導かれる。第2の光学系120の光学素子22に導かれた光は、S12,S13を介してCCD等の撮像素子における撮像面SIに結像する。
【0173】
なお、以上説明した全ての実施形態において、第1の光学系を通過する光束の任意の光線をトレースしたとき、その光線は、第1の面における最初の(1回目)の反射と2回目の反射とで、一方の反射角を基準として他方では逆符号の反射角で反射するような光路をとっている。
【0174】
具体的には、例えば図1の紙面内において、1回目の反射(面31bでの反射)における反射角が正符号(反射光が法線の紙面内反時計周り方向に存在する場合)であれば、2回目の反射(面31bでの再反射)における反射角は負符号(反射光が法線の紙面内時計周り方向に存在する場合)となるような光路になっている。
【0175】
このような光路をとることによって、第1の面と第2の面との間で光束は略往復することになるので、第1の光学系内の空間を有効に利用して光路長を稼ぐことができる。しかも、光路長が長くとも小型の光学系が実現できる。
【0176】
【発明の効果】
以上説明したように、本願第1の発明によれば、第1の光学系において、第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を折り返すようにしているので、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できる。このため、小型の原画を用いつつ広表示画角を達成でき、しかも第2の光学系を含む表示光学系全体として小型化を図ることができる。
【0177】
そして、第1の光学系の第3の面と第2の光学系の射出面との間に空気間隔を設けることにより、光学面数を多く確保でき、光学設計の自由度を高くすることができるため、表示光学系としての光学性能の向上やさらなる小型化を図ることができる。
【0178】
なお、表示光学系(例えば、透明体)内で光を中間結像させるようにすれば、レイアウトの自由度が増え、原画を大画面表示させることができるとともに、光路長をかなり長くしても表示光学系を小型に構成することができる。
【0179】
また、本願第2の発明によれば、第1の光学系において、第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を折り返すようにしているので、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できる。このため、第2の光学系を含む撮像光学系全体として小型でありながらも広撮影画角を達成することができる。
【0180】
そして、第1の光学系の第3の面と第2の光学系の入射面との間に空気間隔を設けることにより、光学面数を多く確保でき、光学設計の自由度を高くすることができるため、撮像光学系としての光学性能の向上やさらなる小型化を図ることができる。
【0181】
なお、撮像光学系(例えば、透明体)内で光を中間結像させるようにすれば、レイアウトの自由度が増え、広画角の被写体像を十分縮小して撮像面に導くことができるとともに、光路長をかなり長くしても撮像光学系を小型に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である表示光学系の構成図。
【図2】本発明の第2実施形態である表示光学系(1)の構成図。
【図3】本発明の第2実施形態である表示光学系(2)の構成図。
【図4】本発明の第3実施形態である表示光学系の構成図。
【図5】本発明の第4実施形態である撮像光学系の構成図。
【図6】本発明の第5実施形態である表示光学系(1)の構成図。
【図7】上記第4実施形態である表示光学系の変形例の構成図。
【図8】上記第4実施形態である表示光学系の変形例の構成図。
【図9】本発明の第5実施形態である表示光学系の構成図。
【図10】本発明の数値実施例1の光学系断面図。
【図11】本発明の数値実施例2の光学系断面図。
【図12】本発明の数値実施例3の光学系断面図。
【図13】本発明の数値実施例4の光学系断面図。
【図14】本発明の数値実施例5の光学系断面図。
【図15】従来の表示光学系の構成図。
【図16】従来の表示光学系の構成図。
【符号の説明】
30,30’,30”,130,230,330,430 第1の光学系
20,20’,20”,120,220 第2の光学系
10 画像表示素子
Claims (17)
- 画像表示素子と、その画像表示素子が形成する原画からの光を観察者の眼又は被投射面に導く表示光学系とを有する画像表示装置であって、
前記表示光学系は、第1の光学系と第2の光学系とを有し、
該第1の光学系は、
少なくとも反射作用を有する第1の面、この第1の面で反射した前記原画からの光を再度前記第1の面に向けて反射する第2の面および前記原画からの光を透過して第1の光学系に入射させるとともに前記第2の面から前記第1の面に戻されて反射した光を反射して観察者の眼又は被投射面に導く第3の面を有し、
前記第2の光学系は、前記原画からの光を前記第3の面に導き、
前記第3の面と前記第2の光学系の射出面とが空気間隔を空けて配置されており、
かつ前記第1の面に再度入射した中心画角主光線はそのヒットポイント上での面の法線に対し、前回とは反対側に反射して進むと共に、
前記第1の光学系内で前記原画の中間像を形成することを特徴とする画像表示装置。 - 前記第1の光学系は、前記第3の面を透過して入射した光を、前記第1の面で反射し、前記第2の面で反射し、前記第1の面で反射し、前記第3の面で反射し、前記第1の面を透過させて観察者の眼又は被射面に導くことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
- 前記第1の光学系は、前記第3の面を透過して入射した光を、前記第1の面で反射し、前記第2の面で反射し、前記第1の面で反射し、前記第2の面で反射し、前記第1の面で反射し、前記第3の面で反射し、前記第1の面を透過させて観察者の眼又は被射面に導くことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
- 前記第1および第2の光学系のそれぞれが全体として正の光学的パワーを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第3の面と前記第2の光学系の射出面とが互いに他方に向かって凸となる面であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第1から第3の面のうち少なくとも1つが、曲率を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第1から第3の面のうち少なくとも1つが、入射する光線に対して偏心していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第1から第3の面のうち少なくとも1つが、回転非対称面であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第1から第3の面が透明体上に形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第1および第3の面が透明体上に形成されており、
前記第2の面が反射部材により構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像表示装置。 - 前記反射部材の反射面が、曲率を有し、かつ入射する光線に対して偏心していることを特徴とする請求項10に記載の画像表示装置。
- 前記透明体上に形成された面のいずれかで光が全反射することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第2の光学系の光学面が回転非対称面を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第2の光学系が、凹レンズを含むことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 前記第1および第2の光学系がそれぞれ透明体を含んで構成されており、
これら透明体が互いに同じ屈折率を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の画像表示装置。 - 前記第1の光学系の前記第3の面を有する光学部材と前記第2の光学系の前記射出面を有する光学部材とが、光線有効範囲外で接していることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の画像表示装置。
- 撮像素子と、被写体からの光をその撮像素子の撮像面に導く撮像光学系とを有する撮像装置であって、
前記撮像光学系は、第1の光学系と第2の光学系とを有し、
該第1の光学系は、
少なくとも反射作用を有する第1の面、この第1の面で反射した前記被写体からの光を再度前記第1の面に向けて反射する第2の面および前記被写体から第1の光学系に入射した光を反射するとともに前記第2の面から前記第1の面に戻されて反射した光を撮像面側に透過する第3の面を有し、
前記第2の光学系は、前記第3の面から射出した光を撮像面に導き、
前記第3の面と前記第2の光学系の入射面とが空気間隔を空けて配置されており、
かつ前記第1の面に再度入射した中心画角主光線はそのヒットポイント上での面の法線に対し、前回とは反対側に反射して進むと共に、
前記第1の光学系内で前記被写体の中間像を形成することを特徴とする撮像装置。
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