JP3870072B2 - 画像表示装置および撮像装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示素子等に表示された原画を拡大表示させるヘッドマウントディスプレイやプロジェクタ等の画像表示装置に好適な表示光学系および撮像装置に好適な撮像光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CRTやLCD等の画像表示素子を用い、これらの表示素子に表示された画像を光学系を介して拡大表示させる頭部装着型の画像表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)が良く知られている。
【0003】
このヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置は、これらの装置を頭部に装着するため、特に装置全体の小型化、軽量化が要望されている。また、重量バランスや外観等を考慮すると、観察者の視軸方向に薄型であることが好ましい。さらに、表示される拡大像に迫力を持たせるために、できるだけ大きな拡大像が望まれている。
【0004】
図16には、従来の共軸凹面鏡を用いた画像表示装置を示している。同装置では、表示素子101に表示された画像からの光束をハーフミラー102で反射させ、凹面鏡103に入射させ、凹面鏡103で反射した光束をハーフミラー102を介して観察者の眼Eに導びいている。表示素子101に表示した画像は、凹面鏡103によって拡大した虚像として形成される。これにより、観察者は表示素子101に表示した画像の拡大虚像を観察することができる。
【0005】
また、例えば特開平7−333551号公報,特開平8−50256号公報,特開平8−160340号公報および特開平8−179238号公報等においては、画像を表示する画像表示素子としてのLCD(液晶)と、観察光学系としての薄型プリズムとを使用し、装置全体の薄型化を図った画像表示装置が提案されている。
【0006】
図17には、特開平7−333551号公報で提案されている画像表示装置を示している。この装置において、LCD111から発せられた光は、小型の偏心プリズム112の入射面113に入射する。そして、プリズム112に形成した曲率を有した全反射面114と反射面115との間で光束が折り畳まれ、その後、面114より偏心プリズム112から射出して観察者の眼Eに導かれる。これによって表示素子(LCD)111に表示された画像の虚像が形成され、この虚像を観察者が観察する。
【0007】
偏心プリズム112の反射面115は、偏心非回転対称面(アジムス角度により光学的パワーの異なる面であり、いわゆる自由曲面)で構成された偏心自由曲面より構成されている。
【0008】
図17に示す光学系のタイプは、図16に示した従来の共軸凹面鏡を用いたタイプに比べ、装置全体の薄型化および観察視野の広画角化が容易であるという特徴を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
近年、画像を表示する表示素子であるLCD等の高精細化が進み、従来と同程度の画素数を有しながらも従来より小型化されたLCD等が開発されている。このような小型化された画像表示素子を用いると、装置の小型化には有利になるものの、従来と同様の画角を達成するためには、光学系の倍率を上げる必要が生じる。
【0010】
このような状況に鑑みて、特開平10−153748号公報には、偏心プリズムとリレーレンズ系とを組み合わせ、リレーレンズ系により一旦中間像を形成してから表示素子に表示された画像を観察者に導く光学系が提案されている。これにより、図17に示すタイプの薄型という特徴を有しつつ、更なる倍率向上を果たし、LCDサイズに対して広画角化を図っている。
【0011】
また、この特開平10−153748号公報にて提案の光学系に比べて、更なる光学性能向上を図ったものとして、偏心プリズムの内部反射面を増加させ、偏心プリズムのみで中間像を形成し、その像を観察者に導くタイプや、第1の偏心プリズム光学系に第2の偏心プリズムを設けたタイプ等が、特開2000−066106号公報,特開2000−105338号公報,特開2000−131614号公報,特開2000−199853号公報,特開2000−227554号公報および特開2000−231060号公報等に提案されている。
【0012】
一般的に、一旦中間像を形成するタイプの光学系は光路長が長くなり、装置が大型化するという問題があるが、これらの各公報にて提案の光学系においても、透過作用と反射作用とを果たす兼用面を用いたり、光路を交差させたりする等の工夫により小型化を目指している。
【0013】
本発明は、小型の表示素子を用いつつ表示広画角を達成でき、しかも全体として小型の表示光学系、および小型で撮影広画角を達成できる撮像光学系を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本願第1の発明では、画像表示素子と、画像表示素子が形成する原画からの光を観察者の眼又は被投射面に導く表示光学系とを有する画像表示装置において、表示光学系は、光学面である第1、第2および第3の面を設け、原画から第3の面を透過して入射した光を、第1の面で反射し、第2の面で反射し、第1の面で反射し、第2の面で反射し、第1の面で反射し、第3の面で反射し、第1の面を透過させて観察者の眼又は被投射面に導くと共に、表示光学系内で原画の中間像を形成するようにしている。
【0015】
すなわち、第1および第2の面の間での2回の往復を含めて第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を重複させることにより、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できるようにしている。このため、小型の原画(画像表示素子に表示された画像等)を用いつつ表示広画角を達成でき、しかも全体として小型の表示光学系(表示光学系を含む画像表示装置)を実現することが可能となる。
【0016】
また、第1の面から光束が射出する射出範囲内における光束の反射を内部全反射とする事で,光利用効率を高めることが可能となる。
【0017】
なお、第1および第3の面に透過作用と反射作用を持たせることで、光学面数を少なくすることができ、より小型化を図ることが可能となる。
【0018】
また、表示光学系(例えば、透明体)内で原画の中間像を形成させるようにするとよい。すなわち、小型の原画の中間結像面を拡大して表示する中間結像タイプとすることにより、レイアウトの自由度が増え、原画を大画面表示させることが可能となるとともに、光路長をかなり長くしても表示光学系を小型に構成することが可能である。
【0019】
また、この表示光学系を構成する光学面を光線に対して偏心させることにより、さらなる薄型化を図ることが可能となり、光学面に曲率を持たせることで表示光学系における不要な面を取り除き、小型化を図ることが可能となる。さらに、光学面を回転非対称面(自由曲面)とすることにより、諸収差を良好に補正でき、原画のアスペクト比と表示画像のアスペクト比とを近いものにすることが可能となり、高品位な表示画像を得ることが可能となる。
【0020】
なお、この表示光学系は、観察者が頭部に装着して画像を観察するためのヘッドマウントディスプレイ(HMD)やスクリーン等の被投射面に画像を拡大投射する投射型画像表示装置(プロジェクタ)等の画像表示装置に好適である。
【0021】
また、本願第2の発明では、撮像素子と、被写体からの光を撮像素子の撮像面に導く撮像光学系とを有する撮像装置において、撮像光学系は、光学面である第1、第2および第3の面を設け、被写体から第1の面を透過して入射した光を、第3の面で反射し、第1の面で反射し、第2の面で反射し、第1の面で反射し、第2の面で反射し、第1の面で反射し、第3の面を透過させて撮像面に導くと共に、撮像光学系内で被写体の中間像を形成するようにしている。
【0022】
すなわち、第1および第2の面の間での2回の往復を含めて第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を重複させることにより、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できるようにしている。このため、小型でありながらも撮影広画角を達成することが可能となる。
【0023】
また、第1の面を光束が入射する入射範囲内における光束の反射を内部全反射とすることで、光利用効率を高めることができる。
【0024】
なお、第1および第3の面に透過作用と反射作用を持たせることで、光学面数を少なくすることができ、より小型化を図ることが可能となる。
【0025】
なお、撮像光学系(例えば、透明体)内で被写体の中間像を形成させるようにするとよい。すなわち、被写体の中間結像面を縮小して撮像面に導く中間結像タイプとすることにより、レイアウトの自由度が増え、広画角の被写体像を十分縮小して撮像面に導くことが可能となるとともに、光路長をかなり長くしても撮像光学系(撮像光学系を含む撮像装置)を小型に構成することが可能である。
【0026】
また、この撮像光学系を構成する光学面を光線に対して偏心させることにより、さらなる薄型化を図ることが可能となり、光学面に曲率を持たせることで撮像光学系における不要な面を取り除き、小型化を図ることが可能となる。さらに、光学面を回転非対称面(自由曲面)とすることにより、諸収差を良好に補正でき、自由曲面を複数面使用すると被写体のアスペクト比と撮影画像のアスペクト比とを近いものにすることが可能となり、高品位な撮影画像を得ることが可能となる。
【0027】
なお、この撮像光学系は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に好適である。
【0028】
また、第1および第2の発明において、透明体上に光学面を形成し、いずれかの光学面で光線を内部全反射させるようにすることにより、長い光路長でも光量損失を少なくすることが可能である。
【0029】
また、表示光学系および撮像光学系のいずれにおいても、光線を反射して折り返す面を曲面とするとよい。折り返し反射面が平面であると、反射時に周辺画像の光線の方向を個々に制御できないため、光学系が大型化してしまう。折り返し反射面が回転非対称面であると、周辺画像の光線方向を自由に制御できるため、曲面の場合よりも更に小型化可能となる。
【0030】
ここで、折り返し反射面に、金属ミラーコーティングをして光量損失をできるだけ少なくすることが望ましい。
【0031】
また、第1および第2の発明において、第2の面で反射した中心画角主光線が第1の面で角度θをなして折り返し反射される場合、この折り返し反射面に入射する中心画角主光線と反射光線とのなす角度θは、
|θ|<30° …(1)
を満たすことが好ましい。この式(1)の条件を外れると、光学系が大型化する。
【0032】
また、第1の発明において第1の面から最初に第2の面に入射する中心画角主光線とその反射光線とのなす角度βは、
20°<|β|<75° …(3)
を満たすことが好ましく、さらに、第1の面から2回目に第2の面に入射する中心画角主光線とその反射光線とのなす角度αは、
25°<|α|<85° …(2)
を満たすことが好ましい。これらの式(2),(3)の条件を外れると、光学系が大型化する。
【0033】
同じく、第2の発明において第1の面から最初に第2の面に入射する中心画角主光線とその反射光線とのなす角度αは、
25°<|α|<85° …(2)
を満たすことが好ましく、さらに,第1の面から第2の面に入射する中心画角主光線とその反射光線とのなす角度βは、
20°<|β|<75° …(3)
を満たすことが好ましい。これらの式(2),(3)の条件を外れると、光学系が大型化する。
【0034】
なお、上記光学系において、第1の面に最初に入射した中心画角主光線のヒットポイントにおける法線に対する反射角と、第2の面で反射されて第1の面に再度入射した中心画角主光線のヒットポイントにおける法線に対する反射角とが逆符号となるように構成するとよい。即ち、第1の面で反射された光を第2の面によって第1の面における最初の光の反射領域側(反射領域、反射領域付近あるいは反射領域寄りの領域)に戻すように反射することによって効果的に光路を重複させ、長い光路長を小型の光学系の中に納めることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態である光学系(以下、第1の光学系と称す)を示している。この第1の光学系1は、3つの光学面を有して構成されており、面A(第1の面),面B(第3の面)はともに透過面および反射面として作用する透過反射兼用面であり、面C(第2の面)は反射面である。
【0036】
面Aの一部(上部)と面Cには反射膜が形成されており、面Bには半透過反射膜(ハーフミラー)が形成されている。
【0037】
面Aの上部は光束が面Aを射出する面領域を含まない面Aの一部のことであり、面Aの下部とは折り返し反射作用を持つ面領域を含まない面の一部のことである。
【0038】
なお、反射膜およびハーフミラーは金属膜によるものが好ましい。金属膜は分光反射率特性がフラットで色が目立ちにくく、偏向方向が異なる光に対する反射率の差がほとんどないためである。
【0039】
図2には、図1に示した第1の光学系1を画像表示装置に用いる際の表示光学系全体の構成を示している。
【0040】
図中、1は屈折率が1より大きい透明媒質で満たされた透明体上に3つの光学面A,B,Cが形成されてなる第1の光学系(以下、第1の光学素子1ともいう)である。2は第2の光学系、3は画像を表示する画像表示素子(LCD等)である。本実施形態においては、面Bは画像表示素子3からの光の入射面および反射面として作用し、面Aは反射面および射出面として作用し、面Cは反射面として作用する。
【0041】
画像表示素子3により変調された光は、第2の光学系2を介して第1の光学素子1に導かれる。面Bから第1の光学素子1に入射した光は、面Aで反射した後、面Cで反射し、面Aの上部に導かれる。そして、面Aで折り返し反射した後、面Cで再び反射し、面Aにおける最初の光の反射領域付近(最初の反射領域側)に戻されて反射し、次に面Bで反射して面Aに向かい、面Aを透過して第1の光学素子1を射出し、射出瞳Sに到達する。
【0042】
この図では、画像表示素子3から発した光の例として、画像表示素子3の表示面中心を射出し、射出瞳Sの中心に至る中心画角主光線を示している。
【0043】
本実施形態においては、射出瞳Sの位置付近に観察者が眼を置くことにより、画像表示素子3上に表示された画像の拡大像を視認することが可能となる。
【0044】
また、第1の光学系1において、光は、面B(透過)→面A(反射)→面C(反射)→面A(折り返し反射)→面C(再反射)→面A(再反射)→面B(反射)(→面A(透過))の順で各面を通過し、面Aでの折り返し反射を境に最終反射面Bに至るまでそれまでの光路を逆にたどる。
【0045】
ここでは、面B→面A→面C→面Aまでを往路と、面A→面C→面A→面Bの光路を復路と称し、往路と復路を合わせて往復光路と呼ぶ。また、往路と復路を分ける面Aにおける反射を折り返し反射と呼び、この折り返し反射作用を持つ面Aの一部の範囲を折り返し反射面と呼ぶ。
【0046】
このように面Aに折り返し反射面としての作用を持たせ、第1の光学素子1内で往路と復路をほぼ重複させることにより、長い光路を小型の第1の光学素子1内に収めることができる。これにより、表示光学系全体をも小型化している。なお、面Aでの折り返し反射は反射膜によるものである。
【0047】
また、画像表示素子3からの光線は最終反射面Bでの反射によって往復光路を抜け、画像表示素子3側には行かず、眼球側に導かれる。
【0048】
さらに、図3に点線で示したように、画像表示素子3の画像表示面の端を出て射出瞳Sの中心に到る光(最大画角主光線)は、中心画角主光線と同様に、第2の光学系2を経て第1の光学素子1に導かれ、B面入射→A面反射→C面反射→A面折り返し反射→C面再反射→A面再反射→B面反射→A面射出の順に通過して射出瞳Sの中心に導かれる。
【0049】
また、図4に鎖線で示したように、画像表示素子3の画像表示面の中心より射出して射出瞳Sの両端に到る光線も、中心画角主光線と同様に、第2の光学系2を経て第1の光学素子1に導かれ、B面入射→A面反射→C面反射→A面折り返し反射→C面再反射→A面再反射→B面反射→A面射出の順に通過して射出瞳Sの両端に導かれる。
【0050】
この際、第1の光学素子1内で両端からの光線が交わっており、画像表示素子3上に表示された画像の中間像が形成されている。第1の光学素子1内に中間像を形成することで、第2の光学系2の曲率を弱めてもコンパクトな構成とすることができ、第2の光学系2における余計な収差発生を抑え、第2の光学系2の複雑化を防止できる。
【0051】
なお、図4においては、C面再反射→A面再反射の間に中間像が形成されているが、必ずしもこの位置に中間結像位置がある必要はなく、第1の光学素子1内に形成されていればよい。
【0052】
また、中間像を略平行光として射出瞳Sに導くいわゆる接眼光学系部分の収差補正を容易にするために、中間結像面は接眼光学系部分での像面湾曲や非点収差の発生する状況に合わせて適宜湾曲したり非点隔差を有したりするように形成されていてもよい。
【0053】
図4においては、最終反射面である面Bと面Aでの再反射面および射出面として作用している箇所とが接眼光学系部分にあたり、第1の光学系1でのそれ以外の部分と第2の光学系2とがリレー光学系に該当している。
【0054】
本実施形態において、最終反射面として作用するときの面Bは、射出面として作用するときの面Aに対して非常に強い曲率を有した凹面鏡となっており、接眼光学系部分の主パワーを担っている。従って、凹面鏡面Bでは偏心収差の発生が大きく、接眼光学系としての面A,面Bのみでは収差を完全に補正することは困難であり、リレー光学系部分が接眼光学系での収差をキャンセルするような形の中間結像面ができるように中間像を形成することで、最終的な像観察における画質を向上させることが可能になる。
【0055】
以上説明した構成においては、第1の光学系1は、少なくとも面B,Cを曲面で構成することが好ましい。これにより、結像ないし収差補正に寄与しない面を少なくすることで、光学系全体に必要な光学面数を削減でき、製造コスト削減の効果が期待できる。更に望ましくは、面A,B,Cをそれぞれ曲面で構成することで、結像ないし収差補正に寄与しない面を省くことができ、更なる製造コスト削減の効果が得られる。
【0056】
また、第1の光学系1の面B,Cと面Aの一部(下部)の領域は、最終的に射出瞳Sに導かれる有効光束がそれぞれの面で反射する際の反射光束を構成する任意の光線に対して傾いた面として構成され、折り返し反射面である面Aまでの往路、即ち面B→面A→面C→面Aの光路と、この面A以降の復路である面A→面C→面A→面Bの光路とを、ともに折り畳んだ構成として第1の光学系1を薄型にしている。
【0057】
即ち、面B,Cと面Aの一部(下部)の領域は反射光束を構成する任意の光線に対して偏心した曲面であり、偏心収差が発生する。従って、第1の光学系1の少なくとも1面に、回転非対称な形状の面(いわゆる自由曲面)を用いて、偏心収差の発生を極力抑えることが望ましい。
【0058】
特に面Bは面Aに対してパワーの強い曲面であるため、面Bを回転非対称な形状として偏心収差の発生を抑制することが好ましい。
【0059】
更に好ましくは、第1の光学系1を構成する3つの面A,B,Cの全てを回転非対称形状とすることで、偏心収差補正の自由度が増し、良好な画質での画像表示が可能になる。このとき、各回転非対称面を図の紙面断面を唯一の対称面とする紙面垂直方向に面対称な形状とすると、対称性のない場合に比較して加工および製作を容易にすることができるため、好ましい。
【0060】
また、面Aでの折り返し反射以外の反射を第1の光学素子1内での全反射とすると、光量ロスが少なくなり好ましい。少なくとも面Aでの反射光束と射出光束とが共用する領域においては、反射光束が全反射するようにすると、反射光束の全てを全反射とする場合に対して設計の自由度を上げつつ同程度の明るさを確保できる。
【0061】
以上のように光学系を構成することにより、画像表示素子3に表示された画像を、良好な光学性能で拡大像として表示する画像表示装置が提供可能となる。
【0062】
また、第1の光学系1内で1回中間結像を行うことで、画像表示素子3の表示サイズに対する表示画角設定の自由度を向上させて広画角化(高倍率表示)を可能にするとともに、それに伴い光路長が長くなるのを第1の光学系1内に往復光路を形成することで、長い光路長の往復光路を重複するよう折り畳んで第1の光学系1の全長を短く抑え、非常にコンパクトな表示光学系を構成できる。
【0063】
(第2実施形態)
図5には、本発明の第2実施形態である撮像光学系を示している。図中の1は図1に示したものと同様の第1の光学系(第1の光学素子)であり、2は第2の光学系、4は撮像素子である。
【0064】
Sは第1の光学系1および第2の光学系2からなる撮像光学系の入射瞳であり、この位置に絞りを置いて不要光の入射を防いでいる。
【0065】
本実施形態において、第1の光学系1の面A(第1の面)は被写体からの光の入射面および反射面として作用し、面B(第3の面)は反射面および射出面として作用し、面C(第2の面)は反射面としてのみ作用する。
【0066】
絞りSを通過した被写体からの光は、第1の光学素子1に面Aから入射し、面Bで反射し、面Aで反射し、面Cで反射し、面Aの一部(上部)である折り返し反射作用領域で折り返し反射して再び面Cに導かれる。そして、面Cで再び反射した後、面Aにおける最初の光の反射領域付近(最初の反射領域側)に戻されて反射し、面Bを透過して第1の光学素子1を射出する。ここで、面B,Cおよび面Aの一部(下部)はそれぞれの面での反射光束を構成する任意の光線に対して偏心している。
【0067】
第1の光学素子1を射出した光は、第2の光学系2を通過して撮像素子4に到達する。この際、所望の外界(被写体)からの光は撮像素子4の撮像面上に結像し、これにより、外界像の撮像を行うことができる。
【0068】
以上のように撮像光学系を構成することにより、被写体を撮像素子4に良好な光学性能で結像させる撮像装置を提供することができる。
【0069】
また、第1の光学素子1内で1回中間結像させることで、撮像素子4のサイズに対して撮影画角の自由度を向上させて広画角化を可能にし、これに伴い光路長が長くなるのを第1の光学素子1内で往路と復路をほぼ重複させることにより、第1の光学系1の全長を短く抑え、非常にコンパクトな撮像光学系を実現している。
【0070】
以上説明した第1および第2実施形態においては、中心画角主光線(表示光学系においては画像表示素子の表示面中心から射出瞳S中心に至る光線であり、撮像光学系においては入射瞳中心を通り撮像素子の撮像面中心に至る光線である)の面Aにおける折り返し反射が略垂直反射であるように描かれているが、本発明の光学系はこの構成に限るものではない。
【0071】
(第3実施形態)
図6および図7にはそれぞれ、第1実施形態とは異なる第1の光学系を用いた第3実施形態である表示光学系の構成を示している。これらの図に示した第1の光学系1’,1”では、中心画角主光線の光路が第1実施形態のものと異なっている。
【0072】
図6および図7ともに、B面入射→A面反射→C面反射→A面折り返し反射→C面再反射→A面再反射→B面反射→A面射出の光路が形成されている点は第1実施形態の第1の光学系1と同様である。
【0073】
但し、図6の第1の光学系1’では、面Cで反射した中心画角主光線が最初に面Aで角度θをなして折り返し反射されて、面Aでの先の反射地点よりも高い位置(但し、最初の光の反射領域寄りの領域)で再反射される点が第1実施形態と異なる。
【0074】
また、図7の第1の光学系1”では、面Cで反射した中心画角主光線が最初に面Aで角度θをなして折り返し反射されて、面Aでの先の反射地点よりも低い位置(但し、最初の光の反射領域寄りの領域)で再反射される点が第1実施形態と異なる。
【0075】
このように折り返し反射面Aの前後で光が所定角度θをなして入射・反射されてもよい。但し、角度θは、
|θ|<30° …(1)
を満たすことが好ましい。
【0076】
この式(1)の条件を外れると、第1の光学系が大型化し、表示光学系全体を小型にすることが難しくなるため、好ましくない。
【0077】
さらに、図6および図7において、面Aで反射して最初に面Cに入射する中心画角主光線は面Cで角度αをなして反射され、折り返し反射面Aで角度θをなして折り返し反射され、2回目に面Cに入射すると角度βをなして再反射される。このとき、角度αとβはそれぞれ、
25°<|α|<85° …(2)
20°<|β|<75° …(3)
を満たすことが好ましい。
【0078】
上記式(2)の条件を外れると、第1の光学系が大型化し、表示光学系全体を小型化することが難しくなる。また、式(3)の条件から外れた場合も同様に第1の光学系が大型化し、表示光学系全体を小型化することが難しくなる。
【0079】
なお、本実施形態では、第1の光学系を有する表示光学系について説明したが、第2実施形態に示したような撮像光学系にも本実施形態と同様の考え方を適用することができる。
【0080】
次に、これまでの実施形態の数値実施例について説明する。まず、数値実施例の説明に入る前に、各数値実施例で使用される母線断面、子線断面、ローカル母線断面、ローカル子線断面の定義について説明する。
【0081】
偏心系に対応していない従来系の定義では、各面頂点座標系で表され,z軸を光軸とすると、yz断面が従来の母線断面(メリジオナル断面)、xz断面が子線断面(サジタル断面)となる。
【0082】
本実施形態の光学系は偏心系であるので、偏心系に対応したローカル母線断面、ローカル子線断面を新たに定義する。
【0083】
中心画角主光線(表示光学系においては表示素子の画像中心から表示光学系の射出瞳中心に至る光線であり、撮像光学系においては撮像光学系の入射瞳中心を通り撮像素子の画像中心に至る光線である)と各面とのヒットポイント上で、中心画角主光線の入射光と射出光を含む面をローカル母線断面とし、ヒットポイントを含みローカル母線断面と垂直で、各面頂点座標系の子線断面(通常の子線断面)と平行な面をローカル子線断面として定義する。
【0084】
各面における中心画角主光線のヒットポイント上近傍の曲率を計算し、各面の中心画角主光線に対するローカル母線断面の曲率半径ry,ローカル子線断面の曲率半径rxを定義する。
【0085】
さらに、該当する面の前後の屈折率をそれぞれnd,nd’とし、
fy=ry/(nd’−nd)
で与えられるfyをローカル母線断面焦点距離、
fx=rx/(nd’−nd)
で与えられるfxをローカル子線断面焦点距離と定義する。
【0086】
また、該当する面の中心画角主光線とのヒットポイントと次の面に中心画角主光線のヒットポイント間の距離(中心画角主光線上の距離で空気換算なしの値)を面間隔dと定義する。
【0087】
ここで、第1の光学系において、光が面B入射→面A反射→面C反射→面A折り返し反射→面C再反射→面A再反射→面B反射→面A射出という光路をたどる場合の中心画角主光線の各面におけるヒットポイント上のうち中心画角主光線が面A上で折り返し反射する際のfyをfyaとし、中心画角主光線が面C上で再反射する際のfyをfycとすると、
|fyc/fya|≦4 …(4)
なる条件を満たすことが望ましい。
【0088】
この(4)式の上限を超えると、光が面Aにおいて反射および再反射するとき(折り返し反射を除く)の全反射と、面Aにおける折り返し反射ができなくなる。
【0089】
[数値実施例1]
図8は、数値実施例1を示す光学断面図である。図中の1は第1の光学系であり、3つの光学面を有した透明体(以下、第1の光学素子1ともいう)から構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第1〜第3実施形態にて説明した面A,B,Cに相当する。
【0090】
2は第2の光学系であり、ここではS10,S11の2つの面からなる凸レンズである。また、折り返し反射面A(S6)と面Cには反射膜が形成されている。
SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0091】
本数値実施例において、S2,S4,S6,S8の光学面は平面であり、またS3,S5,S7,S9からS11までの光学面は全て回転非対称面で形成されている。そして、これら3面は紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。
【0092】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0093】
本数値実施例1の光学データを表1に、中心画角主光線に対するローカルデータを表9に示す。
【0094】
ここで、表1の光学データの見方を説明する。表1の光学データのうち最も左の項目SURFは面番号を示している。また、X,Y,ZおよびAは、第1面S1の中心を原点(0,0,0)とし、図中に示したy軸,z軸と紙面奥向きにx軸をとった座標系における各面の面頂点の位置(x,y,z)並びに図面上で反時計回り方向を正方向とするx軸回りの回転角度a(単位:度)である。
【0095】
Rは曲率半径である。FFSの項は面形状の種類を表し、SPHは球面であり、FFS(数字)は以下の式に従う回転非対称面である。
【0096】
【数1】
【0097】
FFSの欄に記された数字は、その面の形状が同表の下側に記載された非球面係数kおよびci(i=2,3…)に対応する回転非対称形状であることを示している。ただし、記載されていないciの値は0である.
Nd,νd(但し、表ではvdと記す)はそれぞれ、その面以降の媒質のd線波長での屈折率とアッベ数を示しており、屈折率Ndの符号の変化はその面で光が反射されることを示している。また、媒質が空気層の場合は、屈折率Ndのみを1.000として表示し、アッベ数νdは省略している。
【0098】
また、折り返し反射面での中心画角主光線の入射光線と反射光線とのなす角度θの絶対値を|θ|として、面C(S5)で中心画角主光線が反射する際の角度βの絶対値を|β|として、面C(S7)で中心画角主光線が反射する際の角度αの絶対値を|α|として記載している。
【0099】
【表1】
【0100】
次に、表9のローカルデータの見方を説明する。左の項目から、SURFは面番号、ryは中心画角光線が各面でヒットポイントする時のローカル母線断面焦の曲率半径、rxはローカル子線断面の曲率半径、fyはローカル母線断面焦点距離、fxはローカル母線断面焦点距離、dは該当する面と次面の面間隔(中心画角主光線上の距離で空気換算なしの値)、nはそれぞれその面以降の媒質のd線波長での屈折率を表している。
【0101】
ここで、第1の光学系において、光が面B入射→面A反射→面C反射→面A折り返し反射→面C再反射→面A再反射→面B反射→面A射出という光路をたどる場合の中心画角主光線の各面におけるヒットポイント上のうち、面A(S6)上で折り返し反射する際のローカル母線断面焦点距離をfyaとし、中心画角主光線が面C(S5)上で再反射する際のローカル母線断面焦点距離をfycとした場合の比の絶対値を、
|fyc/fya|
として記載している。
【0102】
以上の光学データおよびローカルデータの表の項目は、以降の数値実施例においても同様である。
【0103】
表1から分かるように、画像表示面SIからの光はS11から第2の光学系2の凸レンズに入射し、S10から射出して第1の光学素子1に向かう。第1の光学素子1に向かった光は、S9(面B)から第1の光学素子1に入射し、S8(面A)で反射し、S7(面C)で反射し、その後S6(面A−折り返し反射面)で反射し、S5(面C)で反射し、S4(面A)で反射し、S3(面B)で反射してS2から第1の光学素子1を射出し、射出瞳S1(S)に導かれる。
【0104】
本数値実施例の長さのディメンジョンを有する数値をmmとして考えると、射出瞳径φ10mm,画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で水平画角50°の画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0105】
なお、本数値実施例の光学系を撮像光学系に利用してもよい。この場合、z軸負方向無限遠方の物点からの光は、絞りS1を通過して第1の光学素子1に導かれる。そして、S2(面A)から第1の光学素子1に入射し、S3(面B)で反射し、S4(面A)で反射し、S5(面C)で反射し、S6(面A―折り返し反射面)で反射した後、S7(面B)で反射し、S8(面A)で反射し、S9(B面)から第1の光学素子1を射出して第2の光学系2の凸レンズに導かれる。凸レンズに導かれた光束は、S10から凸レンズに入射し、S11から射出して撮像面SIに結像する。
【0106】
ここで、S6(面A−折り返し反射面)で反射する光束は全反射を起こさないため、少なくともS6で光束が反射する部分には反射膜を形成しておく。但し、第1の光学系1の面Aから射出する光束の射出範囲(この数値実施例ではS2の範囲)には反射膜を形成しておらず、S2から射出する光束の妨げにならない。
【0107】
また、S4,S8で反射する光束のうち面Aから射出する光束の射出範囲で反射する光束は全反射するため、光量の損失は少ない。
【0108】
さらに、面C(この数値実施例ではS5,S7)で反射する光束も全反射を起こさないため、面Cには反射膜を形成しておく。S6面における反射膜の形成と面Cにおける反射膜の形成については以降の実施例でも同様である。
【0109】
[数値実施例2]
図9は、数値実施例2を示す光学断面図である。図中の1は第1の光学系であり、3つの光学面を有した透明体(以下、第1の光学素子1ともいう)から構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第1〜第3実施形態にて説明した面A,B,Cに相当する。
【0110】
2は第2の光学系であり、ここでは3つの光学面S10,S11,S12を同一媒質で満たされた透明体(光学素子)から構成される。
【0111】
本数値実施例においては、S2からS12までの光学面は全て回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。また、S6と面Cには反射膜が形成されている。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0112】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0113】
画像表示面SIからの光は、S12から第2の光学系2の光学素子に入射し、S11で反射し、S10から射出して第1の光学素子1に向かう。第1の光学素子1に入射してから射出するまでの光路は数値実施例1と同様である。
【0114】
本数値実施例2の光学データを表2に、中心画角主光線に対するローカルデータを表10に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
この数値実施例2では、射出瞳径φ10mm,画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で水平画角50°の画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0117】
また、本数値実施例は、数値実施例1と同様に、撮像光学系としても利用できる。
【0118】
[数値実施例3]
図10は、数値実施例3を示す光学断面図である。図中の1は第1の光学系であり、3つの光学面を有した透明体(以下、第1の光学素子1ともいう)から構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第1〜第3実施形態にて説明した面A,B,Cに相当する。
【0119】
2は第2の光学系であり、ここでは3つの光学面S9,S10,S11を同一媒質で満たされた透明体から構成される。第1の光学系1の透明体と第2の光学系2の透明体はS9において接合されている。
【0120】
本数値実施例においては、S2からS11までの光学面は全て回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。また、S6と面Cには反射膜が形成されている。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0121】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0122】
画像表示面SIからの光は、S11から第2の光学系2の透明体に入射し、S10で反射し、S9から第1の光学素子1に入射する。第1の光学素子1への光束の入射位置は、数値実施例2に比べて面Bの下側からになる。なお、第1の光学素子1に入射してから射出するまでの光路は数値実施例1と同様である。
【0123】
本数値実施例3の光学データを表3に、中心画角主光線に対するローカルデータを表11に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
本数値実施例3では、射出瞳径φ7mm,画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で水平画角50°の画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0126】
また、本数値実施例は、数値実施例1と同様に、撮像光学系としても利用できる。
【0127】
[数値実施例4]
図11は、数値実施例4を示す光学断面図である。図中の1は第1の光学系であり、3つの光学面を有した透明体(以下、第1の光学素子1ともいう)から構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第1〜第3実施形態にて説明した面A,B,Cに相当する。
【0128】
2は第2の光学系であり、ここでは3つの光学面S10,S11(S13と同一面),S12を同一媒質で満たされた透明体(光学素子)から構成される。
【0129】
本数値実施例においては、S2からS12(S13)までの光学面は全て回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。また、S6と面Cには反射膜が形成されている。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0130】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0131】
画像表示面SIからの光は、S13から第2の光学系2の光学素子に入射し、S12,S11で反射し、S10から射出して第1の光学素子1に向かう。第1の光学素子1に入射してから射出するまでの光路は数値実施例1と同様である。
【0132】
ここで、第2の光学系2の透明体の透過面および反射面の作用を有する光学面では、少なくとも透過光束領域内での反射は全反射である。また、この光学面の反射光束は全て全反射でも構わない。このように光を全反射させることにより、第2の光学系2での光量の損失がなくなる。
【0133】
本数値実施例では、数値実施例2と比べて、第1の光学系1の面Aと面Cの肉厚(z軸方向の透明体の長さ。以下同じ)が厚くなり、また、面Aと面Bの肉厚も厚くなるため、全体的に第1の光学系1が大型化している。
【0134】
本数値実施例4の光学データを表4に、中心画角主光線に対するローカルデータを表12に示す。
【0135】
【表4】
【0136】
本数値実施例4では、射出瞳径φ10mm,画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で水平画角50°の画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0137】
また、本数値実施例は、数値実施例1と同様に、撮像光学系としても利用できる。
【0138】
[数値実施例5]
図12は、数値実施例5を示す光学断面図である。図中の1は第1の光学系であり、3つの光学面を有した透明体(以下、第1の光学素子1ともいう)から構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第1〜第3実施形態にて説明した面A,B,Cに相当する。
【0139】
2は第2の光学系であり、ここでは3つの光学面S10,S11,S12を同一媒質で満たされた透明体(光学素子)から構成される。
【0140】
本数値実施例においては、S2からS12までの光学面は全て回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。また、S6と面Cには反射膜が形成されている。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0141】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0142】
画像表示面SIからの光は、S12から第2の光学系2の光学素子に入射し、S11で反射し、S10から射出して第1の光学素子1に向かう。第1の光学素子1に入射してから射出するまでの光路は数値実施例1と同様である。
【0143】
この数値実施例5は、数値実施例2と比べて、第1の光学系1の面Aと面Bとの肉厚が薄くなっており、全体的に第1の光学系1がz軸方向に薄型化している。
【0144】
本数値実施例5の光学データを表5に、中心画角主光線に対するローカルデータを表13に示す。
【0145】
【表5】
【0146】
本数値実施例5では、射出瞳径φ10mm,画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で水平画角50°の画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0147】
また、本数値実施例は、数値実施例1と同様に、撮像光学系としても利用できる。
【0148】
[数値実施例6]
図13は、数値実施例6を示す光学断面図である。図中の1は第1の光学系であり、3つの光学面を有した透明体(以下、第1の光学素子1ともいう)から構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第1〜第3実施形態にて説明した面A,B,Cに相当する。
【0149】
2は第2の光学系であり、ここでは3つの光学面S10,S11,S12を同一媒質で満たされた透明体(光学素子)から構成される。
【0150】
本数値実施例においては、S2からS12までの光学面は全て回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。また、S6と面Cには反射膜が形成されている。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0151】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0152】
画像表示面SIからの光は、S12から第2の光学系2の光学素子に入射し、S11で反射し、S10から射出して第1の光学素子1に向かう。第1の光学素子1に入射してから射出するまでの光路は数値実施例1と同様である。
【0153】
この数値実施例6は、数値実施例2と比べて、第1の光学素子1の大きさは肉厚および高さ(y軸方向におけるプリズムの長さ)共にほぼ同等であるが、面Aと面Cの中心画角主光線上での各ヒットポイントの曲率は、数値実施例2の面Aと面Cの中心画角主光線上での各ヒットポイントの曲率に比べてそれぞれ逆符号になっている。
【0154】
本数値実施例6の光学データを表6に、中心画角主光線に対するローカルデータを表14に示す。
【0155】
【表6】
【0156】
本数値実施例6では、射出瞳径φ12mm,画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で水平画角50°の画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0157】
また、本数値実施例は、数値実施例1と同様に、撮像光学系としても利用できる。
【0158】
[数値実施例7]
図14は、数値実施例7を示す光学断面図である。図中の1は第1の光学系であり、3つの光学面を有した透明体(以下、第1の光学素子1ともいう)から構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第1〜第3実施形態にて説明した面A,B,Cに相当する。
【0159】
2は第2の光学系であり、ここでは3つの光学面S9,S10,S11(S12と同一面)を同一媒質で満たされた透明体(光学素子)から構成される。第1の光学素子1と第2の光学系2の光学素子はS9において接合されている。
【0160】
本数値実施例においては、S2からS11までの光学面は全て回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。また、S6と面Cには反射膜が形成されている。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0161】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0162】
画像表示面SIからの光は、S12から第2の光学系2の光学素子に入射し、S11,S10で2回反射し、S9を通過して第1の光学素子1に向かう。第1の光学素子1に入射してから射出するまでの光路は数値実施例1と同様である。
【0163】
この数値実施例7の第1の光学系1における面Aと面Cの中心画角主光線上での各ヒットポイントの曲率は、数値実施例2の面Aと面Cの中心画角主光線上での各ヒットポイントの曲率に比べてそれぞれ逆符号となっており、この点は数値実施例6と同じである。
【0164】
なお、第2の光学系2における透過および反射の両作用を有する光学面では、反射については全反射するため、光量の損失が無い。また、第1の光学系1の大きさは、数値実施例6のものよりも小さくなっており、数値実施例5と同等の大きさである。
【0165】
本数値実施例7の光学データを表7に、中心画角主光線に対するローカルデータを表15に示す。
【0166】
【表7】
【0167】
本数値実施例7では、射出瞳径φ4mm,画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で水平画角50°の画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0168】
また、本数値実施例は、数値実施例1と同様に、撮像光学系としても利用できる。
【0169】
[数値実施例8]
図15は、数値実施例8を示す光学断面図である。図中の1は第1の光学系であり、3つの光学面を有した透明体(以下、第1の光学素子1ともいう)から構成されている。S2,S4,S6,S8は同一面、S3,S9は同一面、S5,S7は同一面であり、これら3面はそれぞれ第1〜第3実施形態にて説明した面A,B,Cに相当する。
【0170】
2は第2の光学系であり、ここでは3つの光学面S10,S11(S13と同一面),S12を同一媒質で満たされた透明体(光学素子)から構成される。
【0171】
本数値実施例においては、S2からS13までの光学面は全て回転非対称面であり、紙面(yz断面)を唯一の対称面として持つ面対称形状をしている。また、S6と面Cには反射膜が形成されている。SIは画像表示面、S1は表示光学系の射出瞳Sである。
【0172】
なお、図中のx,y,zは観察者の視軸方向をz軸,紙面内でz軸に垂直な方向をy軸,紙面に垂直な方向をx軸とした座標系定義である。
【0173】
画像表示面SIからの光は、S13から第2の光学系2の光学素子に入射し、S12,S11で2回反射し、S10から射出して第1の光学素子1に向かう。第1の光学素子1に入射してから射出するまでの光路は数値実施例1と同様である。
【0174】
この数値実施例8では、第1の光学系1の面Aと面Cの中心画角主光線上での各ヒットポイントの曲率は、数値実施例2の面Aと面Cの中心画角主光線上での各ヒットポイントの曲率に比べて両者とも強くなっている。
【0175】
なお、第2の光学系2における透過および反射の両作用を有する光学面では、反射については全反射するため、光量の損失が少ない。第1の光学系1の大きさは、数値実施例3のものと同等の大きさである。
【0176】
本数値実施例8の光学データを表8に、中心画角主光線に対するローカルデータを表16に示す。
【0177】
【表8】
【0178】
この数値実施例では、射出瞳径φ10mm,画像表示サイズ10mm×7.5mm程度で水平画角50°の画像をz軸の正方向無限遠方に表示する表示光学系となる。
【0179】
また、本数値実施例は、数値実施例1と同様に、撮像光学系としても利用できる。
【0180】
なお、以上説明した全ての実施形態において、第1の光学系を通過する光束の任意の光線をトレースしたとき、その光線は、第1の面における最初の(1回目)の反射と2回目の反射とで、一方の反射角を基準として他方では逆符号の反射角で反射するような光路をとっている。
【0181】
具体的には、例えば図2の紙面内において、1回目の反射(A面反射)における反射角が正符号(反射光が法線の紙面内反時計周り方向に存在する場合)であれば、2回目の反射(A面再反射)における反射角は負符号(反射光が法線の紙面内時計周り方向に存在する場合)となるような光路になっている。
【0182】
このような光路をとることによって、第1の面と第2の面との間で光束は略往復することになるので、第1の光学系内の空間の有効に利用して光路長を稼ぐことができる。しかも、光路長が長くとも小型の光学系が実現できる。
【0183】
また、以上説明した各実施形態では、第1の光学系が、3つの光学面A,B,Cを有した透明体により構成される場合について説明したが、本発明は、上記3つの光学面のうちいずれか又は全てがミラー部材によって構成される場合にも適用できる。
【0184】
【表9】
【0185】
【表10】
【0186】
【表11】
【0187】
【表12】
【0188】
【表13】
【0189】
【表14】
【0190】
【表15】
【0191】
【表16】
【0192】
【発明の効果】
以上説明したように、本願第1の発明によれば、第1および第2の面の間での2回の往復を含めて第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を重複させるようにしているので、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できる。このため、小型の原画を用いつつ表示広画角を達成でき、しかも全体として小型の表示光学系を実現することができる。
【0193】
また、第1および第3の面に透過作用と反射作用を持たせるようにすれば、光学面数を少なくすることができ、より表示光学系の小型化を図ることができる。
【0194】
なお、表示光学系内で光を中間結像させるようにすれば、レイアウトの自由度が増え、原画を大画面表示させることができるとともに、光路長をかなり長くしても表示光学系を小型に構成することができる。
【0195】
また、本願第2の発明によれば、第1および第2の面の間での2回の往復を含めて第1、第2および第3の面の間で光を略往復させて光路を重複させるようにしているので、小型の光学系でありながらも光路長を長く確保できる。このため、小型でありながらも撮影広画角を達成することができる。
【0196】
また、第1の面および第3の面に透過作用と反射作用を持たるようにすれば、光学面数を少なくすることができ、より撮像光学系の小型化を図ることができる。
【0197】
なお、撮像光学系内で光を中間結像させるようにすれば、レイアウトの自由度が増え、広画角の被写体像を十分縮小して撮像面に導くことができるとともに、光路長をかなり長くしても撮像光学系を小型に構成することができる。
【0198】
また、第1および第2の発明において、(1)〜(3)式を満足するようにすれば、光学系が大型化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である表示光学系に用いられる第1の光学系の構成図。
【図2】上記表示光学系の構成図。
【図3】上記表示光学系の構成図。
【図4】上記表示光学系の構成図。
【図5】本発明の第2実施形態である撮像光学系の構成図。
【図6】本発明の第3実施形態である表示光学系(1)の構成図。
【図7】本発明の第3実施形態である表示光学系(2)の構成図。
【図8】本発明の数値実施例1の光学断面図。
【図9】本発明の数値実施例2の光学断面図。
【図10】本発明の数値実施例3の光学断面図。
【図11】本発明の数値実施例4の光学断面図。
【図12】本発明の数値実施例5の光学断面図。
【図13】本発明の数値実施例6の光学断面図。
【図14】本発明の数値実施例7の光学断面図。
【図15】本発明の数値実施例8の光学断面図。
【図16】従来の表示光学系の構成図。
【図17】従来の表示光学系の構成図。
【符号の説明】
1,1’,1” 第1の光学系
2 第2の光学系
3 画像表示素子
4 撮像素子
Claims (10)
- 画像表示素子と、その画像表示素子が形成する原画からの光を観察者の眼又は被投射面に導く表示光学系とを有する画像表示装置であって、
前記表示光学系は、光学面である第1、第2および第3の面を有し、
原画から前記第3の面を透過して入射した光を、前記第1の面で反射し、前記第2の面で反射し、前記第1の面で反射し、前記第2の面で反射し、前記第1の面で反射し、前記第3の面で反射し、前記第1の面を透過させて観察者の眼又は被投射面に導くと共に、
この表示光学系内で前記原画の中間像を形成することを特徴とする画像表示装置。 - この表示光学系が透明体を用いて構成されており、前記透明体内で前記原画の中間像を形成することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
- 前記第1から第3の面のうち少なくとも1つが、入射する光線に対して偏心していることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
- 前記第1から第3の面のうち少なくとも1つが、曲率を有することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
- 前記第1から第3の面のうち少なくとも1つが、回転非対称面であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
- この表示光学系が透明体を用いて構成されており、
前記透明体上に形成された光学面のいずれかで光線が全反射することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。 - 前記第2の面から最初に前記第1の面に入射する中心画角主光線とその反射光線とのなす角度θが、
|θ|<30°
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。 - 前記第1の面から最初に前記第2の面に入射する中心画角主光線とその反射光線とのなす角度αが、
25°<|α|<85°
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。 - 前記第1の面から2回目に前記第2の面に入射する主光線とその反射主光線とのなす角度βが、
20°<|β|<75°
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。 - 撮像素子と、被写体からの光をその撮像素子の撮像面に導く撮像光学系とを有する撮像装置であって、
前記撮像光学系は、光学面である第1、第2および第3の面を有し、
被写体から前記第1の面を透過して入射した光を、前記第3の面で反射し、前記第1の面で反射し、前記第2の面で反射し、前記第1の面で反射し、前記第2の面で反射し、前記第1の面で反射し、前記第3の面を透過させて撮像面に導くと共に、
この撮像光学系内で前記被写体の中間像を形成することを特徴とする撮像装置。
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