JP3869713B2 - 紙葉類識別装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙幣や有価証券、投票券などの紙葉類の識別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述した識別装置の従来のものとして、紙葉類に印刷されている図柄、文字または模様等を光学手段により検出し、紙葉類の真偽判定や金種判定を行うものが知られている。この装置は、紙葉類を搬送させつつその紙葉類に対して光を照射し、紙葉類からの反射光または透過光の強弱変化をパターンとして検出し、その検出パターンが、一定の許容範囲内にある複数の紙葉類を用いて同様に検出して予め決めた幅を有する基準パターンの幅内に入っているか否かを判定することにより行うよう構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の識別装置による場合には、照射光の光強度変動や紙幣の汚れ等によって透過光または反射光のレベルが変動すると、検出パターンが部分的に大きな変動が生じて誤識別の発生や識別不能になるという問題があった。
【0004】
一方、このような誤識別の発生や識別不能を防止すべく、基準パターンの幅を広げると、今度は識別精度が低下して偽造券を識別する能力が低下するという不都合があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、識別中に照射光に光強度変動や紙葉類に汚れ等があっても、紙葉類を確実に識別することができる紙葉類識別装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の紙葉類識別装置は、搬送通路を搬送される被識別対象用紙葉類に光を照射して、その反射光または透過光を受光素子で検出した信号による検出データと、予め前記搬送通路に少なくとも被識別対象用紙葉類に相当する基準用紙葉類を搬送させて同様に得られた基準データとに基づき前記被識別対象用紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置において、前記受光素子の出力信号を所定の時間間隔でサンプリングし、サンプリングした信号をデジタル信号に変換する手段と、前記検出データおよび前記基準データを、相前後するサンプリングタイミングにおけるデジタル信号の差または比として求める検出手段と、該検出手段が求めた前記検出データおよび前記基準データを時系列に記憶するデータ記憶回路と、前記基準データと前記検出データとを比較して前記被識別対象用紙葉類の識別を行う識別手段とを具備し、前記識別手段は、前記データ記憶回路に共に時系列に記憶された前記基準データおよび前記検出データのうち少なくとも一方の読み出し先頭番地のシフト量を順次変更指定するシフト手段と、該データ記憶回路から基準データと検出データの各々を先頭番地より順番に読み出して順次両データの差の絶対値を加算演算することを、前記シフト手段によるシフト量の指定の都度行う演算手段と、該演算手段による演算結果を各シフト量毎に記憶する一致度記憶手段と、該一致度記憶手段に記憶された演算結果から最小値を求める最小値演算手段と、予め識別基準レベルが設定されており、この識別基準レベルと、上記最小値演算手段により求められた最小値とを比較し、前記最小値が前記識別基準レベルより小さい場合に前記被識別対象用紙葉類を前記基準用紙葉類に相当するものと判定し、前記最小値が前記識別基準レベル以上の場合に前記基準用紙葉類とは異なるものと判定する手段とを備え、前記最小値演算手段は、前記一致度記憶手段に記憶された演算結果の最小とみなされる値と、その前後の値と、予めこれに設定された所定の関数式とにより補間計算を行って真の最小値を算出し、この算出値を前記最小値とすることを特徴とする。
【0007】
ここで、被識別対象用紙葉類に相当する基準用紙葉類とは、例えば被識別対象用紙葉類が日本の千円紙幣である場合に、同様の日本の千円紙幣のうちで汚れの無いもの或いはほぼ均一に少し汚れているもの、或いは折り目の無いまたは浅いものなどである。また、識別基準レベルとは、経験的に求められた値などが採用される。
【0008】
この紙葉類識別装置による場合には、搬送通路に被識別対象用紙葉類を搬送させると、検出手段により相前後するサンプリングタイミングにおけるデジタル信号の差または比である検出データが求められ、その求められた検出データがデータ記憶回路に時系列に記憶される。これよりも先に、搬送通路に少なくとも被識別対象用紙葉類に相当する基準用紙葉類を搬送させ、前同様にして求められた基準データをデータ記憶回路に時系列に記憶させておく。続いて、識別手段は、求められた検出データと予め求めている基準データとを比較して被識別対象用紙葉類が基準用紙葉類と同一のものであるか否かの識別、例えば基準用紙葉類が日本の1000円紙幣である場合にそれと同一のものであるか否かの識別(被識別対象用紙葉類の真偽の識別を含む)を行う。このとき、被識別対象用紙葉類の識別に用いられる検出データおよび基準データが、相前後するサンプリングタイミングにおけるデジタル信号の差または比であるので、紙葉類への照射光の光強度変動や紙葉類に汚れ等があっても、それにより受ける影響を抑えて紙葉類を確実に識別することが可能になる。
また、この構成による場合には、演算手段がデータ記憶回路から基準データと検出データの各々を読み出す際の先頭番地を、シフト手段がシフトするため、被識別対象用紙葉類において印刷パターンの位置ずれが存在していても、搬送誤差等に影響されること無く、被識別対象用紙葉類の識別を高精度に行い得るという効果がある。また、基準データと検出データの差の絶対値を加算演算した値を用いるので、検出データの基準データに対する変化量を数値で定量的に表すことができる。更に、判定の為の識別基準レベルを連続して変えることで、容易に判定精度の調整を行うことができるというメリットがある。
更に、この構成による場合には、補間処理を行う事で、サンプリングのピッチ以下の精度で被識別対象用紙葉類の識別を行うことが可能になる。
【0014】
本発明の紙葉類識別装置において、前記被識別対象用紙葉類に相当する基準用紙葉類の他に、該基準用紙葉類と異なる別種の基準用紙葉類を、前記搬送通路に搬送し、その搬送により前記検出手段が求めた基準データも用いて識別を行う構成とすることができる。この場合は、最小値が各基準データ毎に求められるが、そのうちで最も小さい値を最小値(実施形態では真の最小値と呼ぶ)として識別を行えばよい。
【0015】
ここで、基準用紙葉類と異なる別種の基準用紙葉類とは、例えば基準用紙葉類が日本の千円紙幣のとき、これとは金額が異なる日本の二千円紙幣、五千円紙幣、一万円紙幣や、外国の任意の金額の紙幣(特に、前記日本の紙幣と紛らわしい図柄のもの)等が相当する。
【0016】
この構成による場合には、被識別対象用紙葉類が基準用紙葉類と同一のものでないと識別されるときに、その被識別対象用紙葉類が別種の基準用紙葉類と同一のものであるとの識別、例えば何円の紙幣であるとの識別が可能になる。
【0017】
本発明の紙葉類識別装置において、前記識別手段は、前記データ記憶回路に共に時系列に記憶された前記基準データおよび前記検出データのうち少なくとも一方の読み出し先頭番地のシフト量を順次変更指定するシフト手段と、該データ記憶回路から基準データと検出データの各々を先頭番地より順番に読み出して順次両データの差の絶対値を加算演算することを、前記シフト手段によるシフト量の指定の都度行う演算手段と、該演算手段による演算結果を各シフト量毎に記憶する一致度記憶手段と、該一致度記憶手段に記憶された演算結果の最小とみなされる値、その前後の値、および予め設定された所定の関数式により補間計算を行って真の最小値を算出し、この算出値を前記最小値とし、前記最小値が予め決められた識別基準レベルより小さい場合に前記被識別対象用紙葉類を前記基準用紙葉類に相当するものと判定する手段とを具備する構成とすることができる。
【0018】
この構成にあっては、補間計算を行う事で、サンプリングのピッチ以下の精度で被識別対象用紙葉類の識別を行い、これにより得られた真の最小値が予め決められた識別基準レベルより小さい場合に識別対象用紙葉類が基準用紙葉類に相当するものと判定されるので、識別基準レベルを適正な値に設定しておくことで判定精度が向上することとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る紙葉類識別装置を、紙幣の識別に適用した構成例の紙幣搬送通路部分を示す平面図である。
【0021】
この紙葉類識別装置(以下、単に識別装置という。)は、搬送ベルト8、9により被識別対象用紙幣1を右方向へ搬送する紙幣搬送通路2を有し、紙幣搬送通路2の入口には、被識別対象用紙幣(以下、単に紙幣という。)1が紙幣搬送通路2に挿入された事を検出する挿入検出用センサ3、4が配置されている。また、挿入検出用センサ3、4の搬送方向側には、通路幅方向の中央部に識別検査部7が配置され、識別検査部7の入側端を挟む位置に、紙幣1が識別検査部7に到達したことを検知する為の紙幣搬入検出用センサ5A、6Aが、識別検査部7の出側端を挟む位置に、紙幣1が識別検査部7を通過したことを検知する為の紙幣搬出検出用センサ5B、6Bがそれぞれ配置されている。これらセンサ3、4、5A、6A、5Bおよび6Bは、反射型のホト・リフレクターや、透過型のホト・センサが用いられる。また、紙幣搬送通路2における紙幣1が搬送ベルト8、9により搬送され始める位置に、紙幣1の搬送に伴って回転するローラ(図示せず)の回転量を検出する回転量検出センサ、例えばロータリーエンコーダ17が設けられている。
【0022】
図2は識別装置の回路構成の全体を示すブロック図である。
【0023】
前記識別検査部7は、前記紙幣搬送通路2を搬送される紙幣1にスポット光を照射する、例えばLED等の光源14と、光源14から照射された光の紙幣1からの反射光を受光する位置に配置された、例えばホトダイオード等の受光素子15とを備える。受光素子15の出力端には測光回路16が接続され、測光回路16は受光素子15の出力を増幅処理してCPU30へ出力する。
【0024】
CPU30は、ROM11に書き込まれているプログラムに従って、入出力ポートを介する各種データのやり取り、RAM12とのデータのやり取りを行うとともに、測光回路16の増幅レベル制御、測光回路16から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(アナログ/デジタル)変換処理、測光回路16からの測定データに基づく演算処理、およびこの演算処理を予め決められたアルゴリズムに従って処理して紙幣の金種判別および使用不可の紙幣判別を行うとともに、その結果等を表示装置20に出力し、また識別装置全体のシーケンス制御を行ったり、モータ制御回路18へ制御信号を与える。
【0025】
上記モータ制御回路18は、搬送ベルト8、9の駆動を行う搬送モータ19を制御する。また、CPU30には、前記ロータリーエンコーダ17から回転量に関する信号が入力される。
【0026】
図3は本実施形態の要部である紙幣の識別を実行する回路部分(CPU)の構成を示すブロック図である。
【0027】
CPU30は、測光回路16から出力されたアナログ信号(測定データ)をデジタル信号に変換するA/D変換部31と、測光回路16へこれがサンプリングする時間を指定するためのサンプリングパルスを与えるサンプリングパルス発生手段32と、A/D変換部31からの相前後するサンプリング時間での2つの信号の差を求める検出手段としての差分処理部33と、識別手段34とを有する。なお、サンプリングパルス発生手段32が発生するサンプリングパルスの出力ピッチは、任意の値に調整可能である。
【0028】
前記A/D変換部31からの出力信号(測定データ)は、RAM12に与えられ、差分処理部33はRAM12に記憶された相前後するサンプリング時間での2つの測定データをRAM12から読み出して両測定データの差を求め、その差分処理後の信号をRAM12に出力する。
【0029】
RAM12は、A/D変換部31からの出力信号と、上記差分処理部33による差分処理後の信号とを時系列的に記憶する。このRAM12には、これら信号の他に、複数の基準紙幣、例えば基準A紙幣、基準B紙幣、基準C紙幣を予め識別装置に搬送して同様に得られたA/D変換部31からの出力信号および差分処理部33による差分処理後の信号が記憶されている。これら差分処理後の各信号は、読み出し先頭番地が指定されている。なお、基準A紙幣は、例えば被識別対象用紙幣1が日本の千円であれば、それと同様の日本の千円紙幣であり、基準B紙幣は基準A紙幣と異なる別種の日本の5千円で、基準C紙幣も基準B紙幣および基準A紙幣と異なる別種の日本の一万円であり、各基準紙幣は、汚れの無いもの或いはほぼ均一に少し汚れているもの、または折り目の浅いものなど、複数枚の紙幣を測定し、それらの測定データを平均したものが基準データとして記憶されている。
【0030】
識別手段34は、シフト部35、演算部36、一致度記憶部37、最小値演算部38及び判定部39を備える。これらシフト部35〜判定部39の構成については、後述する。
【0031】
図4は、本実施形態の識別装置における識別内容を示すフローチャートである。
【0032】
まず、最初に識別装置の電源をオンして動作をスタートすると(ステップS0)、CPU30はROM11に格納されているプログラムの実行を開始し、各種のカウンタ、レジスタやフラッグのクリアー及び初期化を行い、動作準備状態に入る(ステップS1)。
【0033】
その後、紙幣挿入口に配置された挿入検出用センサ3、4の出力を監視する(ステップS2)。そして、挿入検出用センサ3、4が、識別装置に紙幣1が挿入されたことを検知すると、CPU30はその出力変化を検出してステップS3へと移行する。なお、上記挿入検出用センサ3、4の出力が変化しない場合にはステップS2を繰り返し実行して挿入検出用センサ3、4の出力を監視する。
【0034】
ステップS3では、CPU30はモータ制御回路18を制御して搬送モータ19を正転させて、搬送ベルト8、9を駆動して紙幣1を識別装置内部へと搬送せしめる。その後、紙幣搬入検出用センサ5A、6Aの出力変化を検出すると(ステップS4)、紙幣1が識別検査部7の入側にまで到達したと判断してステップS5へと移行する。
【0035】
ステップS5では受光素子15の出力を測光回路16で処理した信号を、A/D変換部31でA/D変換してRAM12へ格納する。なお、測光回路16はサンプリングパルス発生手段32から出力されるサンプリングパルスのタイミングで受光素子15の出力をCPUに取り込み、A/D変換後所定のメモリー(RAM)番地に格納する。
【0036】
続いて、紙幣搬出検出用センサ5B、6Bにより紙幣1が識別検査部7の出側端を通過したか否かを検出し(ステップS6)、未だ通過していない場合にはステップS5に戻って、受光素子15の出力を前同様にしてRAM12に順番に格納する。
【0037】
図5は、上述したステップS5において、搬送する紙幣1に光を照射してその反射光を測定したデータの一例を示す。横軸に時間を、縦軸に受光素子の出力をそれぞれとっている。時刻P1は紙幣1の先端がセンサ5A、6Aに到達した時点であり、時刻P2は紙幣1の後端がセンサ5B、6Bを通過した時を表している。そして、P1とP2の間を所定の間隔でサンプリングしてA/D変換した測定データがRAM12にサンプリングの順番に格納される。このとき、P1の一番サンプリング時間の早い測定データがRAM12に読み出し先頭番地として格納される。また、これと同様のサンプリング数の前記基準A紙幣、基準B紙幣および基準C紙幣の各測定データもRAM12に同様にして予め格納されている。
【0038】
一方、ステップS6で、紙幣1が識別検査部7を通過、つまり紙幣1のサンプリングが終了したと判断されたときには、ステップS7へと移行し、CPU30はモータ制御回路18を制御して搬送モータ19を停止し、ステップS8へと移行する。
【0039】
ステップS8では、CPU30は上記A/D変換されたデータと予めRAM12に記憶された基準データとを後述する所定のアルゴリズムに従って相関演算を行い、その結果を表示装置20へと出力して終了する(ステップS9〜10)。
【0040】
次に、図6〜図8のフローチャートに基づいてCPU30の演算内容について詳細に説明する。
【0041】
まず、相関演算を開始すると(ステップS11)、最初にステップS12で以下の差分処理を行う。即ち、時刻tでの識別検査部7の出力をサンプリングした測定データ値をVtとし、続く時刻(t+1)でのサンプリングした測定データ値をVt+1とすると、差分処理部33は2つのサンプリング値をRAM12から読み出して両サンプリング値の差(δV=Vt+1−Vt)を求め、各サンプリング毎の差分処理後のデータ(δV)を検出データとしてRAM12に番地順に記憶させる。なお、RAM12には、同様に差分処理して得られた前記基準A紙幣、基準B紙幣および基準C紙幣の各基準データも予め番地順に記憶されている。上述の差分処理は、光源からの照射光の光強度変動や紙幣の汚れ等の影響を除去して、紙幣に印刷された細かな模様や文字のみを有効に検出する為である。
【0042】
図9は、図5のデータを上述のようにして差分処理した結果を示す。横軸に時間を、縦軸に差分処理後の検出データ(δV)をそれぞれとっている。
【0043】
次に、演算部36は、予めRAM12に格納されている差分処理後の基準A紙幣の基準データと差分処理後の前記検出データ(δV)とをその読み出し先頭番地より順次読み出す(ステップS13)。
【0044】
続いて、ステップS14に進み、演算部36は、前記基準A紙幣の基準データと検出データと下記(1)式とに基づき以下のようにシフト演算を行う。
【0045】
【数1】
【0046】
但し、ak:差分処理後のデータ(δV)を表し、サフィックスkはサンプリング開始のP1(サンプリング開始点P1でサンプリングした最初のデータの番号を1とし、以下2番目にサンプリングしたデータの番号を2、・・・とする。)から数えてk番目のサンプリングデータと(k+1)番目のサンプリングデータとを差分処理したデータを示す。即ち、k番目のサンプリングデータをVk、(k+1)番目のサンプリングデータをVk+1とすると、ak=Vk−Vk+1 で表される。
【0047】
bk+j-1:基準紙幣の差分処理後のデータを表し、サフィックスkは同様に取り込んだデータの番号を表し、jはシフト量(j=1、2、・・・、m)を表す。即ち、jを1、2、・・・というように変化することによりデータの番地を1つずつシフトすることができる。これにより、検出データに対して基準データを相対的にずらしながら演算を行うことができる。bkは、akと同様に、bk=SVk−SVk+1 で表される。ここで、SVkは基準データのk番目のデータを、SVk+1は(k+1)番目のデータを表す。
【0048】
m:最大シフト量
n:基準データのサンプリング数(基準データの数に等しい数)
このシフト演算に際し、シフト部35は、まず検出データの格納番地を固定した状態で、シフト量jをj=1、2、・・・と代えながら基準A紙幣の基準データと比較する。即ち、最初にj=1とし、P(1)を下記(2)式により算出する。
【0049】
【数2】
【0050】
これは、検出データの差分データakと基準データの差分データbkとを各々最初の番地より順次読み出し(k=1からnまで)、その差の絶対値の和を算出している。
【0051】
次に、j=2として、P(2)を下記(3)式により算出する。
【0052】
【数3】
【0053】
これは、検出データの差分データakに対して、基準データの差分データの番地を1つずらしてbk+1(2番目の番地)より読み出し、その差の絶対値の和を算出している。即ち、検出データの差分データに対して基準データの番地を1つずらして(シフトして)同様に演算を行っている。なお、データを1つずらして2番目のデータより読み出すことにより、データの数が一つ不足することになるが、その分検出データの数を1つ減らす(k=1よりn−1とすることで検出データの差分データの数を1つ減らしている)ことによりこれに対処している。
【0054】
以下、同様にして基準データの番地を1つずつずらしながら検出データとの比較を行う。これを図10を参考にして説明すると、図10Aの(イ)は、j=1の状態で、各k=1よりnまでのデータを同一のスケール上に示したグラフである。図10Aの(ロ)は、j=2の状態を示していて、検出データに対して基準データを1つ分ずらして示したもので(図で基準データ全体を1データ分左側にシフト)、検出データのk=1から(n−1)に対して基準データのk=2からnまでが対応していることを示している。また、図10Bの(ハ)はj=3の状態を示していて、検出データに対して基準データを2つ分ずらして示したもので(図で基準データ全体を2データ分左側にシフトして描いている)、検出データのk=1から(n−2)に対して基準データのk=3からnまでが対応していることを示している。図10Bの(ニ)についても同様である。
【0055】
上記操作をj=mまで繰り返し行い、演算結果を順次所定のメモリー(RAM)に格納する。なお、mは最大シフト量を表す整数で、基準データと検出データとの最大ずれ量を予め実験により調べておいた値が設定してある。これは、通常の使用態様において生起される最大ずれ量に相当する量であり、必要以上にずれた状態で2つのデータが一致しても、それは正常ではないと判断して、そのような場合を計算対象から除外することも1つの目的である。
【0056】
続いて、シフト量j=mのとき(最大シフト量のとき)において、k=1〜(n−m+1)のそれぞれにおける基準A紙幣の基準データ(シフト前のbk+m-1)と検出データ(ak)との差の(n−m+1)個の絶対値の和を、下記(4)式に基づいて演算する。
【0057】
【数4】
【0058】
以上、検出データに対して基準データを図10で1データ分ずつ左側にずらしながら差の絶対値を算出する処理を行ったが、次に右側にずらしながら同様の処理を行う。これは、検出データが基準データに対してどちらの方向にずれているか不明なため、両方にずらしながら2つのデータが最もよく一致している所を探すためである。そのために、今度は、基準データの格納番地を固定した状態で、検出データの格納番地を1つずつシフトしながら同様の処理を行う。即ち、式(1)の代わりに、下記(5)式を用い、j=2、・・・、mという具合にデータを1つずつずらしながら演算を行う。
【0059】
【数5】
【0060】
但し、m:最大シフト量
n:基準データのサンプリング数(基準データの数に等しい数)
なお、j=1が除いてあるのは、j=1の場合は、式(1)で既に計算済みであるので、省略したためである。
【0061】
このシフト演算に際し、シフト部35は、まず基準データの格納番地を固定した状態で、シフト量jをj=2、3、・・・、mと変えながら検出データと比較する。即ち、最初にj=2として、P′(2)を下記(6)式により算出する。
【0062】
【数6】
【0063】
これは、bkに対して基準データの差分データの格納番地を1つずらしてak+1より読み出し、その差の絶対値の和を算出している。なお、データを1つずらして2番目のデータより読み出すことによりデータの数が1つ不足することになるが、その分基準データの数を1つ減らす(k=1よりn−1までのデータを選択することで、データ数を1つ減らしている)ことによりこれに対処しているのは前述と同じである。
【0064】
以下、同様にして検出データの番地を1つずつずらしながら基準データと比較する。これを図11を参考にして説明すると、図11(ホ)は、j=2の時を示していて、基準データに対して検出データを1つ分ずらした状態を示したもので(図で検出データ全体を1データ分左側にシフト)、基準データのk=1から(n−1)に対して検出データのk=2からnまでが対応していることを示している。また図11(ヘ)は、j=3の時を示していて、基準データに対して検出データを2つ分ずらした状態を示したもので(図で検出データ全体を2データ分左側にシフト)、基準データのk=1から(n−2)に対して検出データのk=3からnまでが対応していることを示している。このようにして基準データまたは検出データの一方の読み出しスタート番地を固定した状態で、他方のデータを読み出すスタート番地を1つずつずらしながら、読み出した双方のデータを、その読み出しスタート番地より順次比較(差を算出)することで、一方のデータに対して他方のデータを相対的に前後にシフトした状態を作り、2つのデータが最もよく一致する点を見つけるようにしてある。
【0065】
下記(7)式は、シフト量j=3のときの演算式を示す。
【0066】
【数7】
【0067】
続いて、同様にしてシフト量j=4、5・・・(m−1)のときにおいて、k=1〜(n−j+1)のそれぞれにおける基準A紙幣の基準データ(bk)と検出データ(シフト前のak+j-1)との差の絶対値の和を、各シフト量毎に順次演算する。なお、絶対値の和の数はシフト量jに応じて変化する。
【0068】
続いて、シフト量j=mのとき(最大シフト量のとき)において、k=1〜(n−m+1)に関する基準A紙幣の基準データの(bk)と検出データ(シフト前のak+m-1)との差の(n−m+1)個の絶対値の和を、下記(8)式に基づいて演算する。
【0069】
【数8】
【0070】
なお、これら算出値P(1)、P(2)〜P(m)及びP′(2)、P′(3)〜P′(m)は、算出される都度前記一致度記憶部37に記憶される。
【0071】
図10Aの(イ)と(ロ)および図10Bの(ハ)と(ニ)は、検出データを固定し、基準データをシフトする場合のグラフであり、図10における(イ)から(ニ)は、前述した如く、検出データ(差分データ)に対して基準データ(差分データ)を相対的に1データずつ図で左側にずらしながら2つのデータの比較を行う過程を示したグラフで、実線は検出データを、一点鎖線は基準データを示している。検出データは、図9でP1からP2の間にサンプリングされ、所定のメモリーに格納されている差分データをそのスタート番地より順次読み出したものであり、横軸が読み出した差分データの番地に相当し、左端が読み出しスタート番地(P1)を、右端が取り込んだ最終データの番地(P2)に相当している。縦軸は、差分データの値を示しており、+側は差分データの値がプラスを、−側は差分データの値がマイナスであることを示している。
【0072】
図10Aの(イ)は、予め測定され、所定のメモリーに格納されている基準データをその最初の番地より順次読み出して、同じグラフ上にプロットしたものであり、左端が最初の番地を、右端が最終の番地である。ここで、基準データは、前述したように予め複数枚の基準となる紙幣をこの識別装置に通してその画像データを平均したものを差分処理したものであり、通常は、基準紙幣と測定紙幣が同一種類であるとすると、この状態でこれら2つのデータは最も良く一致するはずであるが、前述した理由により必ずしも基準データと検出データとが図上でぴたりと重ならない場合も考えられる。この場合は、測定した紙幣が本当は基準紙幣と同じ紙幣であるにも関わらず、結果として異なる紙幣または偽造紙幣と判定されることになって不都合である。これを回避するために、2つのデータが一致しているか否かを識別するための許容範囲を広くすると、結果として識別性能が低下し、巧妙に作られた偽造紙幣を本物と誤識別することになる。これが今までの状況であった。
【0073】
本発明においては、識別性能を低下すること無く、2つのデータが一致しているか否かを精度よく測定することが目的であって、そのために2つのデータを相対的にずらしながら比較を行うようにしてある。即ち、図10Aの(ロ)に示す如く、検出データの読み出し手順は変えないで、基準データの読み出し手順を変えることにより、即ち、基準データの読み出し開始番地を1つずらして2番目の番地より読み出すことで(最初の番地のデータは無視する)、検出データに対して基準データを左側に1データ分ずらして比較を行う。図10Bの(ハ)は、基準データの読み出し開始番地を2つずらして3番目の番地より読み出すことで(最初の2つのデータは無視する)、検出データに対して基準データを左側に2データ分ずらして比較を行う。図10Bの(ニ)についても同様で、検出データに対して基準データを左側に3データ分ずらして比較を行う。以下同様にして、最大mデータ分ずらしながら比較を行うようにしてある。なお、シフトすることによって比較すべきデータの数が減少するので、比較対象のデータの数をそれに合わせて減少するようにして、データの整合性をとるようにしてある。
【0074】
図11は、検出データに対して基準データを反対側(図で右側)にずらす過程を示したグラフである。ここでは、右側にずらすために、基準データの読み出し手順を固定しておいて、即ちデータが格納されている最初の番地より順番に読み出し、検出データの読み出し番地を順次1つずつ変えながらデータを読み出し、基準データと比較を行うようにしてある。図11(ホ)は、検出データの読み出し開始番地を1つずらして2番目の番地より読み出した場合を、図11(ヘ)は、検出データの読み出し開始番地を2つずらして3番目の番地より読み出した場合を示している。このようにして検出データに対して相対的に基準データを図で右側に1つずつずらしながら比較を行うようにしてある。
【0075】
そして、ステップS14でかかるシフト演算が終了すると、ステップS15に進み、ここで前記最小値演算部38は以下のようにして最小値を検出し、その値をPMとする。
【0076】
図12(イ)に、被識別対象用紙幣1が基準A紙幣と同じものである場合において、P(j)およびP′(j)のうちの最小値近傍とシフト量との関係を示す。なお、横軸はシフト量を、縦軸は一致度(V)をとっている。
【0077】
この図12(イ)より、P(1)〜P(m)及びP′(2)〜P′(m)のうちで、例えばP(3)が最小であると理解され、この値P(3)で基準データと検出データが最も良く一致していると認められ、この値P(3)を最小値PMとする。また、最小値PM(P(3))と、その前で隣り合うPM−1(P(2))とを結ぶ線分の傾き、および最小値PM(P(3))と、その後で隣り合うPM+1(P(4))とを結ぶ線分の傾きが急激に変化していることが理解される。
【0078】
一方、図12(ロ)に、被識別対象用紙幣1が基準A紙幣でなく基準B紙幣と同じものである場合において、P(j)およびP′(j)のうちの最小値近傍とシフト量との関係を示す。なお、横軸はシフト量を、縦軸は一致度(V)をとっている。
【0079】
この図12(ロ)より、図12(イ)に較べて2つの基準データと検出データの一致度を示すP(j)またはP′(j)の値の相対的変化が少ない上、例えば最小値(P(3))の値(一点鎖線にて示す)も図12(イ)に較べて高めであることが理解できる。
【0080】
このようにして読み出しP1から1番地目のデータをシフトしながらP(j)およびP′(j)の最小値PMを検出するのは、搬送モータの回転スピードや搬送機構のスリップ等の影響により取り込んだ紙幣のデータが前後するのを補正して検出する第1の目的と、上記した様にP(j)およびP′(j)値の変化の様子を加味して識別紙幣のパターンと基準紙幣のパターンの一致度を評価することで、検出精度の向上を図る第2の目的を達成するためである。
【0081】
次に、最小値演算部38は、検出された最小値PMの位置が、図12のグラフの端部または端部付近にあるか否かを判定する(ステップS16)。この判定は、最小点PMが端部または端部付近にあると、上記した正確な評価が行えなくなること、またシフト量が一定値以上の場合には、比較するデータの個数がそれだけ少なくなってデータの信頼性が悪くなること、搬送途中で何らかの異常が発生した可能性があること等の理由に基づいて行っており、最小点PMが端部または端部付近にある場合には識別を行わない方が良いからである。
【0082】
そして、ステップS16での上記判定結果がNoの時には、ステップS161に移行して最小値演算部38は識別不良であることを示すフラッグAFを1に設定してステップS20に移行する。
【0083】
一方、ステップS16で最小値PMが端部または端部近辺に無いと判定されると、ステップS17に移行して、最小値演算部38は上記最小値PM(P(3))とこれに近い前後の複数点、例えば3点(P(1)、P(2)、P(4))の値を決定し、これらの値のうちで最小値PMとこれの前後の2値PM−1(P(2))とPM+1(P(4))を用いて、(PM−1)−PMと(PM+1)−PM、つまりP(2)−P(3)とP(4)−P(3)とを求め、それらの減算値が予め設定された一定値k1よりも大きいか否かを判定する(ステップS18)。上記一定値k1は、図12に示した各点P(2)とP(3)の間、P(4)とP(3)の間の傾きに相当する値(実際には縦軸である一致度の開き具合)として用いられ、経験的に設定される。
【0084】
そして、ステップS18で、2つの減算値が一定値k1よりも大きい場合にはステップS19へと、それ以外の場合にはステップS181ヘと移行する。
【0085】
ステップS19ではステップS15で求められた最小値PMを真の最小値Vm1としてステップS20へと移行する。
【0086】
一方、ステップS181へ移行した場合には、最小値演算部38はP(1)とP(2)の差(P(1)−P(2))と、P(4)とP(3)の差(P(4)−P(3))とを演算し、それらの減算値が共に一定値k2以上の場合はステップS182に移行する。そうでない場合は信頼性が低いと判断してステップS161ヘと移行して、識別不良であることを示すフラグAFを1に設定する。上記一定値k2は、前記一定値k1と同様の値として用いられ、経験的に設定される。
【0087】
ステップS182において、P(1)−P(2)及びP(4)−P(3)が一定値k2以上である場合には、最小値演算部38はデータの信頼性が高いと判定し、最小とみなされる値(P(3))と、これに近い前後の複数点、この例では3点、つまり計4点P(1)、P(2)、P(3)、P(4)と下記(9)式とを用いて補間計算を行い、図13に示す真の最小値Vm1を求め、ステップS20へと移行する。
【0088】
Vm1(Vm2、Vm3)
=D[2P(2)−(P(1)+P(3))]+P(3) …(9)
但し、D=K1/(K1+K2)
K1=P(4)−P(3)
K2=P(1)−P(2)
なお、上記Vm1は基準A紙幣に対する真の最小値、上記Vm2は基準B紙幣に対する真の最小値、上記Vm3は基準C紙幣に対する真の最小値である。
【0089】
以上のように、基準A紙幣の基準データを用いた相関演算が終了すると、ステップS20〜26に進み、前同様にして基準B紙幣の基準データを用いた相関演算を行う。即ち、ステップS13と同様に、基準B紙幣の基準データを読み出し、以下ステップS14〜S19(またはS182、S161)までのルーチンと同様にして検出データと基準B紙幣の基準データとの相関演算を行い、同様にして最小値Vm2を求めるか、或いは識別不良であることを示すフラグBFを1に設定する(ステップS20〜26、S231、S251、S252)。なお、S252に進む場合は、前記(9)式を用いた補間計算により真の最小値Vm2を算出する。
【0090】
次いで、基準B紙幣の基準データを用いた相関演算が終了すると、ステップS27からステップS34の前までが実行され、前同様にして基準C紙幣の基準データを用いた相関演算を行う。即ち、ステップS13と同様に、基準C紙幣の基準データを読み出し、以下ステップS14〜S19(またはS182、S161)までのルーチンと同様にして検出データと基準C紙幣の基準データとの相関演算を行い、同様にして最小値Vm3を求めるか、或いは識別不良であることを示すフラグCFを1に設定する(ステップS27〜33、S301、S321、S322)。なお、S322に進む場合は、前記(9)式を用いた補間計算により真の最小値Vm3を算出する。
【0091】
続いて、ステップS34に進み、ここで判定部39は識別不良であることを示すフラグAF、BF、CFをチェックして、これらの値が1で無い時にはステップS35でVm1、Vm2、Vm3のうちで最小値のものを選択し、その値をVmと置いてステップS36へと移行して、Vmが一定の小さな値である識別基準レベルεよりも小さいか否かを判定する。上記識別基準レベルεは、経験的に決定される値が用いられる。
【0092】
一方、ステップS34で判定部39はフラグAF、BF、CFが全て1と判定された時には全ての基準紙幣と合致しなかった、または識別不良と判定してステップS341へ移行してNGフラグを立ててステップS38へと移行する。また、ステップS36でVmの値が識別基準レベルεよりも大きい場合も同様にして、判定部39は3種類の基準A〜C紙幣との一致度が低いと判定してステップS341へと移行してNGフラグを立てる。
【0093】
ステップS36でVmの値が識別基準レベルεよりも小さい場合には、ステップS37へと移行し、ここで判定部39は最小値Vmを与えた金種を示すフラグを立て、メインルーチンヘ戻る(ステップS38)。
【0094】
したがって、本実施形態による場合には、紙幣搬送通路2に被識別対象用紙幣1を搬送させて求められた検出データと予め求めている基準データとを比較して被識別対象用紙幣1の識別を行うとき、被識別対象用紙幣1の識別に用いられる検出データおよび基準データが、相前後するサンプリングタイミングにおけるデジタル信号の差であるので、被識別対象用紙幣1への照射光の光強度の変動や紙幣に汚れがあっても、それらの変動は比較的低周波であるので、上記差分処理を行うことでその変動分が除去され、比較的高い空間周波数(二次元フーリエ変換に関するもの)で変化する紙幣の画像データのみを有効に抽出することが可能になる。
【0095】
また、本実施形態による場合には、演算部36がRAM12から基準データと検出データの各々を読み出す際の先頭番地を、シフト部35がシフトするため、被識別対象用紙幣1に印刷パターンの位置ずれが存在していても、搬送誤差等に影響されること無く、被識別対象用紙幣1の識別を高精度に行い得るという効果がある。また、基準データと検出データの差の絶対値を加算演算した値を用いるので、検出データの基準データに対する変化量を数値で定量的に表すことができる。更に、判定の為の識別基準レベルεを連続して変えることで、容易に判定精度の調整を行うことができるというメリットがある。
【0096】
また、本実施形態による場合には、最小値演算部38が、一定の場合に、つまりP(1)−P(2)>k2、P(4)−P(3)>k2の場合に、一致度記憶部37に記憶された演算結果の最小とみなされる値と、その前後の値と、予めこれに設定された前記(9)式とにより補間計算を行って算出した算出値を真の最小値Vm1等とする構成としているので、サンプリングのピッチ以下の精度で被識別対象用紙幣1の識別を行うことが可能になる。そして、真の最小値Vm1等が予め決められた識別基準レベルεより小さい場合に、被識別対象用紙幣1を該当する金額紙幣と判定するので、識別基準レベルεを適正な値に設定しておくことで判定精度を向上させ得る。
【0097】
また、本実施形態による場合には、基準A紙幣(日本の千円紙幣)だけでなく、これとは別種の基準B紙幣(日本の五千円紙幣)と基準C紙幣(日本の一万円紙幣)に関する基準データをも用いて識別を行うので、識別装置に実際に挿入された被識別対象用紙幣1が日本の千円紙幣でなく日本の五千円紙幣であるとき、基準A紙幣と同一のものでないと識別されるときに、その被識別対象用紙幣1が別種の基準B紙幣と同一のものであるとの識別が可能になる。
【0098】
なお、上述した実施形態では、説明の都合で基準紙幣を、日本における千円紙幣、五千円紙幣、一万円紙幣の3種類としたが、本発明はこれに限らず、これらの他の日本における二千円紙幣を含む4種類のうちの任意の1または2以上としてもよく、或いは、外国の任意の金額の紙幣、特に日本の紙幣と紛らわしい図柄のものなどを含むようにしてもよく、或いは外国の任意の金額の紙幣のみとしてもよい。そして、これら紙幣の基準データをRAM12に持たせるようにしてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、最小値PMの前後の点としてPMを含む4点を用いて一定値k1及びk2との比較を行っているが、本発明はこれに限らない。例えば、最小値PMの前後の点として5点以上を用いてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、本発明の目的である紙幣への照射光の光強度変動や紙幣に汚れ等があっても、それにより受ける影響を確実に抑えて紙幣を確実に識別することができるように、相前後するサンプリングタイミングのデータの差を求める差分処理を行うようにしているが、本発明はこれに限らず、相前後するサンプリングタイミングのデータの比を求め、この比の値により識別するようにしてもよい。なお、この場合には、検出手段としての前記差分処理部33に替えて、比を算出する検出手段を用いることとなる。
【0101】
また、上述した実施形態ではシフト部35により読み出し先頭番号を後側にシフトさせるようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、読み出し先頭番号が検出データや基準データの前後端の途中である場合には、前側にシフトさせるようにしてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、紙幣を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限らず、他の紙葉類、例えば有価証券や投票券などの識別にも同様に適用することができる。
【0103】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明による場合には、搬送通路に被識別対象用紙葉類を搬送させて求められた検出データと予め求めている基準データとを比較して被識別対象用紙葉類が基準用紙葉類と同一のものであるか否かの識別を行うとき、被識別対象用紙葉類の識別に用いられる検出データおよび基準データが、相前後するサンプリングタイミングにおけるデジタル信号の差または比であるので、照射光の光強度変動や紙葉類の汚れ等の影響を抑えた高精度の識別が可能になる。また、演算手段がデータ記憶回路から基準データと検出データの各々を読み出す際の先頭番地を、シフト手段がシフトするため、被識別対象用紙葉類において印刷パターンの位置ずれが存在していても、搬送誤差等に影響されること無く、被識別対象用紙葉類の識別を高精度に行い得るという効果がある。加えて、基準データと検出データの差の絶対値を加算演算した値を用いるので、検出データの基準データに対する変化量を数値で定量的に表すことができ、判定の為の識別基準レベルを連続して変えることで、容易に判定精度の調整を行うことができるというメリットがある。更に、補間処理を行う事で、サンプリングのピッチ以下の精度で被識別対象用紙葉類の識別を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る紙葉類識別装置を、紙幣の識別に適用した構成例の紙幣搬送通路部分を示す平面図である。
【図2】本実施形態に係る紙葉類識別装置の回路構成の全体を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の要部である紙幣の識別を実行する回路部分(CPU)の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態の識別装置における識別内容を示すフローチャートである。
【図5】搬送する紙幣に光を照射してその反射光を測定したデータの一例を示すグラフである。
【図6】本実施形態の識別装置における演算内容を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6の続きの演算内容を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7の続きの演算内容を説明するためのフローチャートである。
【図9】図5のデータを差分処理した結果を示すグラフである。
【図10(A)】検出データと基準データの2つの波形の一致度を説明するためのシフトデータのグラフである。
【図10(B)】検出データと基準データの2つの波形の一致度を説明するためのシフトデータのグラフである。
【図11】検出データと基準データの2つの波形の一致度を説明するためのシフトデータのグラフである。
【図12】(イ)及び(ロ)は共にシフト量と一致度との関係を示したグラフである。
【図13】補間計算を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1 紙幣
2 紙幣搬送通路
3、4 挿入検出用センサ
5、6 センサ
7 識別検査部
11 ROM
12 RAM
14 光源
15 受光素子
30 CPU
31 A/D変換部
32 サンプリングパルス発生手段
33 差分処理部(検出手段)
34 識別手段
35 シフト部
36 演算部
37 一致度記憶部
38 最小値演算部
39 判定部
Claims (3)
- 搬送通路を搬送される被識別対象用紙葉類に光を照射して、その反射光または透過光を受光素子で検出した信号による検出データと、予め前記搬送通路に少なくとも被識別対象用紙葉類に相当する基準用紙葉類を搬送させて同様に得られた基準データとに基づき前記被識別対象用紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置において、
前記受光素子の出力信号を所定の時間間隔でサンプリングし、サンプリングした信号をデジタル信号に変換する手段と、
前記検出データおよび前記基準データを、相前後するサンプリングタイミングにおけるデジタル信号の差または比として求める検出手段と、
該検出手段が求めた前記検出データおよび前記基準データを時系列に記憶するデータ記憶回路と、
前記基準データと前記検出データとを比較して前記被識別対象用紙葉類の識別を行う識別手段とを具備し、
前記識別手段は、
前記データ記憶回路に共に時系列に記憶された前記基準データおよび前記検出データのうち少なくとも一方の読み出し先頭番地のシフト量を順次変更指定するシフト手段と、
該データ記憶回路から基準データと検出データの各々を先頭番地より順番に読み出して順次両データの差の絶対値を加算演算することを、前記シフト手段によるシフト量の指定の都度行う演算手段と、
該演算手段による演算結果を各シフト量毎に記憶する一致度記憶手段と、
該一致度記憶手段に記憶された演算結果から最小値を求める最小値演算手段と、
予め識別基準レベルが設定されており、この識別基準レベルと、上記最小値演算手段により求められた最小値とを比較し、前記最小値が前記識別基準レベルより小さい場合に前記被識別対象用紙葉類を前記基準用紙葉類に相当するものと判定し、前記最小値が前記識別基準レベル以上の場合に前記基準用紙葉類とは異なるものと判定する手段とを備え、
前記最小値演算手段は、前記一致度記憶手段に記憶された演算結果の最小とみなされる値と、その前後の値と、予めこれに設定された所定の関数式とにより補間計算を行って真の最小値を算出し、この算出値を前記最小値とすることを特徴とする紙葉類識別装置。 - 前記被識別対象用紙葉類に相当する基準用紙葉類の他に、該基準用紙葉類と異なる別種の基準用紙葉類を、前記搬送通路に搬送し、その搬送により前記検出手段が求めた基準データも用いて識別を行うことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類識別装置。
- 前記識別手段は、
前記データ記憶回路に共に時系列に記憶された前記基準データおよび前記検出データのうち少なくとも一方の読み出し先頭番地のシフト量を順次変更指定するシフト手段と、
該データ記憶回路から基準データと検出データの各々を先頭番地より順番に読み出して順次両データの差の絶対値を加算演算することを、前記シフト手段によるシフト量の指定の都度行う演算手段と、
該演算手段による演算結果を各シフト量毎に記憶する一致度記憶手段と、
該一致度記憶手段に記憶された演算結果の最小とみなされる値、その前後の値、および予め設定された所定の関数式により補間計算を行って真の最小値を算出し、この算出値を前記最小値とし、前記最小値が予め決められた識別基準レベルより小さい場合に前記識別対象用紙葉類を前記基準用紙葉類に相当するものと判定する手段とを具備することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類識別装置。
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