JP3869558B2 - 美白に好適な皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧料などに好適な皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
色白の美しい肌は、古来より全人が希望してきたことであり、この様な肌を得るために数々の努力が為されてきた。この中で、色の白さ、言い換えれば色の黒さの原因が、メラノサイトで生成されるメラニンであることが明らかにされた。このメラニンの量の多少により、肌の色が黒くなったり白くなったりすることも解明された。このメラニンの生合成には、チロシナーゼやチロシナーゼ関連蛋白質群と呼ばれる蛋白が関与していることも既に知られていることである。又、この様な酵素等の働きを阻害し色白を具現化するための素材や化粧料が開発され、かなりの程度は色を白くすることが可能になってきた。しかしながら、色黒とメラニンの生合成の関係についてこれらからでは説明しきれない因子が残っており、又、色黒について、その種類によってメラニンの生合成の関係因子が異なっていることもおぼろげながら知られるようになってきた。しかしながら、従来より、比較的効果が高いとされているメラニン産生抑制剤であっても、その効果が発現しない人が存在することも既に良く知られていることである。この理由としては、メラニン産生に関与する因子が多く、これの差違によって、メラニン産生抑制剤が効果を発揮したりしなかったりするものであると考えられている。この様な因子とメラニン産生のメカニズムは解明されきっているとは言えず、従って、種々の種類の新規のメラニン産生抑制剤を探し出すことが望まれているのが現状と言わざるを得ない。
【0003】
一方、後記一般式(I)に表される化合物は、既に文献公知の化合物であるが、これらを皮膚外用剤に含有させることも、これらの化合物がメラニン産生抑制作用を有していることも全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、新規のメラニン産生抑制剤を見いだし、メラニン産生抑制作用を有する化粧料などの皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】
この様な状況に鑑み、本発明者らは新規のメラニン産生抑制剤を求め鋭意研究を重ねた結果、後記一般式(I)に表される化合物に、その様な作用を見いだした。更に、皮膚外用剤への応用研究を重ねた結果、かかる化合物を含有する皮膚外用剤が、メラニン産生抑制作用に起因する美白効果を有していることを見いだし発明を完成させるに至った。以下、本発明について実施の形態を中心に詳細に説明を加える。
【0006】
【化3】
一般式(I)
【0007】
【発明の実施の形態】
(1)本発明のメラニン産生抑制剤
本発明のメラニン産生抑制剤は、上記一般式(I)に表される化合物からなる。一般式(I)に表される化合物は様々な立体異性体が存在するが、これらの中では、化学構造式1に表される[1S−(1α,1aα,7α,7aα,7bα)]−1a,2,3,5,6,7,7a,7bオクタヒドロ−1,7,7a−トリメチル−シクロプロパ[a]ナフタレン−1−カルボキシアルデヒドが特に好ましい。これは優れたメラニン産生抑制作用を有するからである。この様な構造を有する化合物は、天然物として植物体などに多く含まれているので、植物体の抽出物を精製して得ることもできる。例えば、化学構造式1に表される化合物であれば、ウマノスズクサやマルバウマノスズクサ等のウマノスズクサ科の植物体中に多く含まれていることを、本発明者らは見いだしている。これらの植物体にメタノールなどの溶媒を加え、室温であれば数日、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、濾過した後濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法で精製すれば得ることが出来る。本発明では、これら何れの方法で製造された一般式(I)に表される化合物であってもメラニン産生抑制剤として使用できる。これらの化合物は何れも優れた安全性とメラニン産生抑制作用とを有する。
【0008】
<製造例1>ウマノスズクサの植物体500gに100%メタノールを5l加えて、3時間加熱還流し、冷却後ノルマルヘキサン5lを加え、液液抽出を行い、ノルマルヘキサン層を取り、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ノルマルヘキサン:酢酸エチル=100:0→80:20)で精製し、[1S−(1α,1aα,7α,7aα,7bα)]−1a,2,3,5,6,7,7a,7bオクタヒドロ−1,7,7a−トリメチル−シクロプロパ[a]ナフタレン−1−カルボキシアルデヒド(化学構造式1)を得た。構造はNMRによって確認した。
【0009】
【化5】
化学構造式1
【0010】
(2)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、上記一般式(I)に表される化合物から選ばれる1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする。上記一般式(I)に表される化合物は優れた安全性とメラニン産生抑制作用を有しているため、本発明の皮膚外用剤は、化粧料として好適であり、中でも美白用の化粧料として特に好適である。ここで、本発明で言う皮膚外用剤とは、皮膚上に投与する形態の組成物の総称であって、皮膚外用医薬組成物、医薬部外品、化粧料、皮膚洗浄料、浴用剤などを総括して意味する言葉である。本発明の皮膚外用剤において、一般式(I)に表される化合物の好ましい含有量は、総量で0.01〜10重量%であり、更に好ましくは0.05〜1重量%である。一般式(I)に表される化合物で、本発明の皮膚外用剤に特に好ましく含有されるものは、[1S−(1α,1aα,7α,7aα,7bα)]−1a,2,3,5,6,7,7a,7bオクタヒドロ−1,7,7a−トリメチル−シクロプロパ[a]ナフタレン−1−カルボキシアルデヒド(化学構造式1)である。
【0011】
本発明では、上記必須成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される、任意成分を含有することが出来る。かかる任意成分としては、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が好ましく例示できる。勿論、既にメラニン産生抑制作用が知られている、ビタンミンCとその誘導体、ハイドロキノンとその誘導体、レゾルシノールとその誘導体等を含有することも可能である。本発明の皮膚外用剤は上記必須成分と任意成分とを常法に従って処理することにより得ることが出来る。
【0012】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定を受けないことは言うまでもない。
【0013】
<実施例1>
メラニン産生抑制作用
上記化学構造式1で表される化合物1について、メラニン産生抑制作用をマウスメラノーマB−16F1細胞を用いて、メラニン産生抑制作用を調べた。即ち、プラスチック培養フラスコ(25cm2)内の10%FBS加RPMI−1640培地に2×105個のマウスメラノーマB−16 F1細胞を播種し、5%炭酸ガス加気流中37℃で培養した。播種24時間後、最終濃度1×10-3(W/V)%となるように、上記メラニン産生抑制剤をDMSOに溶解させて加え、更に2日間培養した。この際、DMSOは最終濃度で0.2%を越えないように注意した。培養終了後、培地を除き、燐酸緩衝生理食塩水液で洗浄後、トリプシン処理し細胞を剥離させ、遠心分離により細胞を回収し、細胞数より細胞毒性を、細胞の色よりメラニン産生抑制作用を判定した。判定基準は細胞毒性が、++:検体無添加(対照)に比し著しく少ない、+:対照に比し明らかに少ない、±:対照に比しやや少ない、−:対照に比し同程度であり、メラニン産生抑制作用は、++:対照に比し著しく白い、+:対照に比し明らかに白い、±:対照に比しやや白い、−:対照同程度に黒いであった。結果を表1に示す。これより、本発明のメラニン産生抑制剤は細胞毒性が低いにもかかわらずメラニン産生抑制作用に優れることがわかる。
【0014】
【表1】
【0015】
<実施例2>
以下に示す処方に従って、本発明の化粧料を作成した。即ち、処方成分を室温で攪拌溶解し、本発明の化粧料である化粧水を得た。
化学構造式1 1 重量部
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5重量部
エタノール 10 重量部
グリセリン 5 重量部
水 83.5重量部
【0016】
<実施例3>
以下に示す処方に従って、本発明の化粧料を作成した。即ち、処方成分を室温で攪拌溶解し、本発明の化粧料である化粧水を得た。
化学構造式1 0.1重量部
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5重量部
エタノール 10 重量部
グリセリン 5 重量部
水 84.4重量部
【0017】
<実施例4>
以下に示す処方に従って、本発明の化粧料を作成した。即ち、処方成分を室温で攪拌溶解し、本発明の化粧料である化粧水を得た。
化学構造式1 0.01重量部ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5重量部
エタノール 10 重量部
グリセリン 5 重量部
水 84.39重量部
【0018】
<実施例5>
以下に示す処方に従って、本発明のクリームを作成した。即ち、イの成分を良く混練りした後、80℃に加熱し、ロ、ハを予め80℃に予熱しておき、イにロを加え希釈し、これにハを徐々に加え乳化し、攪拌冷却しクリームを得た。
イ
トリグリセリンジイソステアレート 5 重量部
マルチトール70%水溶液 5 重量部
グリセリン 3 重量部
1,3−ブタンジオール 5 重量部
化学構造式1 0.7重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
ロ
流動パラフィン 15 重量部
マイクロクリスタリンワックス 3 重量部
ネオペンチルグリコールジイソオクタネート 5 重量部
カルナウバワックス 2 重量部
ハ
水 56 重量部
【0019】
<実施例6>
上記実施例2〜5の各化粧料を被験者1名の上腕内側部の1cm×1cmの部位に塗布した後、1時間後にふき取り、予め測定した最小紅斑照射量の2倍の線量の紫外線(線源BLBランプ及びSEランプ)を照射し、照射後1週間に黒化度を++:対照に比し著しく白い、+:対照に比し明らかに白い、±:対照に比しやや白いの基準で判定した。尚、対照はサンプルを投与せずに紫外線照射のみを行った。結果を表2に示す。これより本発明の皮膚外用剤である化粧料は、美白作用の内、肌が黒くなるのを予防する作用に優れることがわかる。
【0020】
【表2】
【0021】
<実施例7>
上記実施例3の化粧水を用いて、実使用試験を行い美白効果を確かめた。即ち、色黒に悩むパネラー1群10名、4群計40名を用い、実施例3の化粧水、実施例3の化粧水の化学構造式1の化合物をビタミンCナトリウム塩に置換した比較例1、実施例3の化粧水の化学構造式1の化合物をアルブチンに置換した比較例2、実施例3の化粧水の化学構造式1の化合物を水に置換した対照例の4群で、朝晩1日2回、2カ月連続使用してもらい、色黒の改善の印象を++:すばらしい改善、+:明らかな改善、±:やや改善、−:改善せずのランクに分けてアンケートで答えてもらった。結果を表3に出現例数として示す。これより、本発明の化粧料は美白作用に優れることがわかる。
【0022】
【表3】
【0023】
<実施例8>
下記に示す処方に従って、色素異常症の治療用の軟膏を作成した。即ち、処方成分を良く混練りし、軟膏を得た。
白色ワセリン 90 重量部
化学構造式1 10 重量部
【0024】
<実施例9>
下記に示す処方に従って、美白用の浴用剤を作成した。即ち、処方成分を良くヘンシェルミキサーで混合した後、0.9mm丸穴スクリーンを装着したパルベラーザーで粉砕し、浴用剤を得た。
硫酸ナトリウム 90 重量部
化学構造式1 10 重量部
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、新規のメラニン産生抑制作用を有する化粧料などの皮膚外用剤を提供することができる。
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