JP3869223B2 - スクータ型車両の点火コイル配置構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクータ型二輪車の点火コイル配置構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクータ型二輪車の点火コイル配置構造として、例えば特開2000−310174号公報「スイング式パワーユニットの点火コイルユニット取付構造」が知られている。
上記技術は、同公報の図1及び図2によれば、車体フレーム11側の揺動軸92廻りにスイング式パワーユニット21をスイング可能に取付け、このスイング式パワーユニット21のエンジン22前方に点火コイルユニット25を取付けたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、車両が大排気量を有するスクータ型車両である場合には、エンジンの発熱量が大きく、このエンジン周りを車体カバーで覆うため、上記のスイング式パワーユニットの点火コイルユニット取付構造では、エンジンで発生する熱で点火コイル廻りが高温となる虞れがある。
また、点火コイル自体も発熱をするものであり、点火コイル自体の発熱をも考慮する必要に迫られる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、エンジンの熱的影響を受けにくく、点火コイル自体から発生する熱を効率よく逃がすことのできるスクータ型車両の点火コイル配置構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1のスクータ型車両の点火コイル配置構造は、低床式フロアを有するスクータ型車両において、フロアの後部にエンジンを配置し、フロアの前部下部にエンジン用点火コイルを配置したことを特徴とする。
【0006】
例えば、車両が大排気量を有するスクータ型車両である場合には、エンジンの発熱量が大きく、このエンジン周りを車体カバーで覆う構造をとるため、十分な熱的配慮が必要である。
そこで、フロアの後部にエンジンを配置し、フロアの前部下部にエンジン用点火コイルを配置することで、エンジン用点火コイルをエンジンから離し、エンジンの熱的影響を受けないようにする。
この結果、エンジン用点火コイルの寿命を延ばすことができる。
また、フロアの前部下部にエンジン用点火コイルを配置することで、低床式フロアの下方のスペースの有効利用を図る。
【0007】
請求項2は、フロア前方にエンジン冷却用ラジエータを配置し、このエンジン冷却用ラジエータより前にエンジン用点火コイルを配置したことを特徴とする。フロア前方にエンジン冷却用ラジエータを配置し、このエンジン冷却用ラジエータより前にエンジン用点火コイルを配置することで、ラジエータからの排風の熱的影響を受けないようにするとともにエンジン用点火コイル自体で発生する熱を放熱できるようにする。
【0008】
請求項3は、エンジン冷却用ラジエータをフロア前方に配置し、このエンジンからエンジン冷却用ラジエータへ冷却水を戻す戻し管を車幅中央から左寄り又は右寄りに通し、車幅中央に対し戻し管と反対側の位置にエンジン用点火コイルを配置したことを特徴とする。
車幅中央に対し戻し管と反対側の位置にエンジン用点火コイルを配置することで、エンジン用点火コイルが戻し管からの熱的影響を受けないようにできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従う。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0010】
図1は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の左側外観図であり、スクータ型車両としての自動二輪車10は、低床式フロア25を有する車両であることを示す。
自動二輪車10の車体フレーム全体を覆う車体カバー20は、後述する車体フレームの前部並びに前輪の上部を覆うフロントカウル21と、フロントカウル21の上部開口を覆うアッパカバー22と、フロントカウル21の後部を覆うインナカバー23と、インナカバー23の後端から後方へ延ばし車体フレームの長手中央を覆うセンタカバー24と、センタカバー24の下端外縁から外方へ延し運転者の足を載せる低床式フロア25と、低床式フロア25の外縁から下方へ延ばしたフロアスカート26と、センタカバー24から後方へ延ばし車体フレームの後側部を覆うリヤサイドカバー27と、リヤサイドカバー27の後端から後方へ延ばし車体フレームの後部を覆うリヤカバー28と、からなる。
【0011】
フロントカウル21は、上部に透明のウインドスクリーン31を備える。インナカバー23は、運転者の脚部前部を覆うレッグシールド91を備える。
さらに自動二輪車10は、車体前部にハンドル203を備えるとともに、車体後部にシート208及びステップホルダ300を備える。
【0012】
ハンドル203は、グリップ203a,203aを比較的高くするとともに後方へ引いた形状である。このハンドル203をハンドルカバー101で覆うようにした。ハンドルカバー101は、ハンドル203の左右の下部を覆う下部ハンドルカバー102と、ハンドル203の上部を覆う上部ハンドルカバー103とからなる。
【0013】
シート208は、運転者が座るシート前部208aと乗員が座るシート後部208bとからなるダブルシートである。ステップホルダ300は、センタカバー24の後部に隣接して配置したものであり、乗員が足を載せるピリオンステップ(乗員用ステップ)310を格納・露出可能に取付けたものである。
図中、261はヘッドランプ、262はウインカ、263,263はミラー、264はフロントフェンダ、265はシートロック用錠、266はリヤエアスポイラ、267はテールランプ、268はリヤフェンダ、269はサブスタンド、320はメインスタンドである。
なお、271,272はマスタシリンダであり、ブレーキレバー273,274の操作によって制動用液圧を発生するものである。
【0014】
図2は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の右側外観図であり、フロントカウル21の上部に且つウインドスクリーン31の後方にメータパネル92を備えたことを示す。以上の説明から明らかなように、車体前部にウインドスクリーン31、レッグシールド91及びメータパネル92を備えることができる。
さらにこの図は、自動二輪車10の右側にも、ピリオンステップ310を備えるステップホルダ300を配置したことを示す。275は排気用消音器である。
【0015】
図3は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の側面断面図であり、自動二輪車10を左側方から見たものである。
自動二輪車10は、車体フレーム110と、車体フレーム110のヘッドパイプ111に左右スイング可能に取付けたフロントフォーク201と、フロントフォーク201に取付けた前輪202と、フロントフォーク201に連結した上記ハンドル203と、車体フレーム110の後部に取付けたエンジン211と、エンジン211とは独立してエンジン211のクランク軸を中心に上下スイング可能な動力伝達機構212と、動力伝達機構212の後部に取付けた後輪205と、車体フレーム110に動力伝達機構212の後端部を懸架したリヤクッションユニット206と、車体フレーム110の後部上部に取付けた収納ボックス207と、収納ボックス207の上に配置し開閉可能に取付けた上記シート208とを、主要構成としたスクータ型車両である。
【0016】
フロントフォーク201は、ヘッドパイプ111の下方に配置した門型のフォークである。このフロントフォーク201の上部並びにヘッドパイプ111をフロントカウル21で覆うようにした。
エンジン211は、左右2つのシリンダヘッド215を前上方へ向けて若干傾斜し、略水平配置した水冷式2気筒エンジンである。
動力伝達機構212は、エンジン211の動力を後輪205に伝達するようにした、遠心クラッチ付きベルトコンバータ無段変速機である。
【0017】
収納ボックス207は、前後に2個のヘルメットHf,Hrを収納することができるように、車体前後方向に細長いボックスであり、下部ボックス207aとこの下部ボックス207aの後上部に重ね合わせた上部ボックス207bとからなる。
図中、281は収納ボックス207の側方に配置されたエアクリーナ、282はコネクティングチューブ、283は収納ボックス207の前方に配置されたエアチャンバ、284はスロットルバルブ、285はインレットパイプ、286はバッテリである。
【0018】
図4は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した車体フレームの斜視図であり、車体フレーム110は、ヘッドパイプ111に連なるフロントフレーム112と、フロントフレーム112の後部から後方へ延した左右一対のリヤフレーム115,115とを、溶接にて結合したダブルクレードル型の一体フレームである。ヘッドパイプ111はカウルステー用ブラケット111aを備える。
【0019】
フロントフレーム112は、ヘッドパイプ111から後下方へ左右一対のアッパフレーム113,113を垂下させ、これら一対のアッパフレーム113,113の下方で、ヘッドパイプ111から下方へ左右一対のダウンチューブ114,114を垂下させ、これら一対のダウンチューブ114,114の下端を後方へ延ばして一対のアッパフレーム113,113の下端に結合するとともに、さらに、後上方へ延したものである。このような構成のフロントフレーム112であるから、一対のアッパフレーム113,113及び一対のダウンチューブ114,114で囲んだ、側面視略三角形状の空間部Sp1を設けることができる。
【0020】
左のリヤフレーム115の前端と右のリヤフレーム115の前端との間に、正面視門型の第1クロスメンバ121を掛け渡し、左のアッパフレーム113の下端と右のアッパフレーム113の下端との間に、第2クロスメンバ122を掛け渡し、この第2クロスメンバ122の車幅中央位置に、エンジン用第1ブラケット123を結合する。
【0021】
左のダウンチューブ114における水平部分の後端部と右のダウンチューブ114における水平部分の後端部との間に、第3クロスメンバ124を掛け渡し、この第3クロスメンバ124の車幅中央位置に、エンジン用第2ブラケット125を結合し、左右のダウンチューブ114,114の後端に左右のエンジン用第3ブラケット126,126を結合する。
【0022】
左右一対のリヤフレーム115,115は、一端を左右一対のアッパフレーム113,113の長手途中に結合するとともに、他端を後方へ延した、縦長断面形状の部材である。ここで、「縦長断面形状」とは、横寸法に比べて縦寸法が大きい断面形状のものを言う。具体的には、リヤフレーム115,115は縦長矩形断面の角パイプからなる。
【0023】
車体フレーム構造は、左右一対のリヤフレーム115,115間に、3個のクロスメンバ131〜133を着脱可能に掛け渡したことを特徴とする。具体的には、左右のリヤフレーム115,115間に、前部リヤクロスメンバ131、中部リヤクロスメンバ132及び後部リヤクロスメンバ133を、前からこの順に掛け渡したものである。
これら3個のクロスメンバ131〜133は、リヤフレーム115,115の上面に重ねてボルト止めする。角パイプのリヤフレーム115,115であるから、3個のクロスメンバ131〜133を載せた状態で取付けることは容易である。
【0024】
前部リヤクロスメンバ131は正面視門型の部材であり、左右の起立部分から前方へ平面視で後開放U字状ステー131aを延し、このU字状ステー131aの前端にシートヒンジ支持部131bを結合するとともに、U字状ステー131aの前端から前方へ延長部材131cを延し、この延長部材131cの前端に第1クロスメンバ121をボルト止めする。中部リヤクロスメンバ132はバー状の部材であり、後部リヤクロスメンバ133は平面視で前開放U字状の部材である。
【0025】
さらに左右のリヤフレーム115,115の後部に、左右のクッション用ブラケット134,134を結合し、左右のリヤフレーム115,115の後部間に、正面視略U字状の後下部リヤクロスメンバ135を掛け渡し、この後下部リヤクロスメンバ135に、左右の搬送用フック136,136を結合する。
【0026】
そしてこの図は、上記車体フレーム110に左右一対のフロア支持ステー141,141及びアンダフレーム143を着脱可能に取付けるとともに、複数の頭付きピン144・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)を取付けたことを示す。
詳しく述べると、左右のフロア支持ステー141,141は、低床式フロア25(図1参照)を支持する部材であって、左右のダウンチューブ114,114のブラケット145,145,146,146にボルト止めする部材である。
右のフロア支持ステー141は、前端下部にステー142を介してエンジン用点火コイル226を、ボルト227,227によって着脱可能に取付けた部材である。ダウンチューブ114の下部に取付けた点火コイル226は、低床式フロア25よりも下位に配置することになる。
【0027】
アンダフレーム143は、左右のダウンチューブ114,114の水平部分間に吊り下げるように掛け渡した部材であって、ダウンチューブ114,114のブラケット146,146,147,147にボルト止めするものである。
このようなアンダフレーム143は、ダウンチューブ114,114の水平部分に沿って延びた左右のサイドメンバ143a,143aと、サイドメンバ143a,143aの長手中央部間に掛け渡した中央クロスメンバ143bと、サイドメンバ143a,143aの後端間に掛け渡した後部クロスメンバ143cとからなる。148は、後述する燃料タンク用遮熱板を掛け止めるフックである。
【0028】
頭付きピン144・・・は、後述する燃料タンク用遮熱板を掛け止める部材であり、左右のアッパフレーム113,113並びに左右のダウンチューブ114,114の外側部及び第1クロスメンバ121の前部左右に、計6個設ける。図中、151はフロントクロスメンバ、152,152,153はステーである。
【0029】
図5は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した車体フレームにエンジン、動力伝達機構及びシート搭載した左側面図であり、フロントフレーム112の後方に且つ一対のリヤフレーム115,115の下方に、エンジン211及び動力伝達機構212を配置し、フロントフレーム112と左右のリヤフレーム115,115(この図では左のみ示す。以下同じ。)との接続部分の近傍に、エンジン211を取付けるようにしたことを示す。
【0030】
具体的には、フロントフレーム112の後部で、一対のアッパフレーム113,113、一対のダウンチューブ114,114及び一対のリヤフレーム115,115で囲んだ、側面視略三角形状の空間部Sp2を設け、この空間部Sp2にエンジン211のシリンダヘッド215並びにヘッドカバー216を配置し、エンジン用第1ブラケット123にエンジン211の前部下部を取付け、エンジン用第2ブラケット125にエンジン211の後部下部を取付け、エンジン用第3ブラケット126,126にエンジン211の後部上部を取付ける。前部・中部リヤクロスメンバ131,132は、エンジン211の上方に配置する。
【0031】
さらにこの図は、(1)左右のクッション用ブラケット134,134に左右のリヤクッションユニット206,206を介して動力伝達機構212の後端部を懸架したこと、(2)前部リヤクロスメンバ131が、開閉式シート208のシートヒンジ208cを支持する部材を兼ねたことを示す。このようにして、リヤフレーム115,115でリヤクッションユニット206,206並びにシート208を支持することができる。
【0032】
図6は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の前部下部の側面断面図であり、自動二輪車10を左側方から見たものであって、想像線にて示す低床式フロア25の後部にエンジン211を配置し、フロア25の前部にエンジン冷却用ラジエータ221を配置し、フロア25の前部下部に点火コイル226を配置し、エンジン211とラジエータ221との間に燃料タンク230を配置したことを示す。
すなわち、ラジエータ221は、エンジン211より前に且つ左右のダウンチューブ114,114(この図では左のみ示す。以下同じ。)の前に配置したものである。
【0033】
エンジン211からラジエータ221へ冷却液を戻す戻し管222は、車幅中央から左寄り(図の手前側)に通したホースである。具体的には、エンジン211の液戻し口に接続した戻し管222は、左のダウンチューブ114の水平部分並びにその前部の垂下部分に沿って延び、ラジエータ221の上部ヘッダ221aに接続する。
【0034】
一方、ラジエータ221からエンジン211へ冷却液を供給する供給管223は、車幅中央から右寄り(図の向う側)に通したホースである。具体的には、ラジエータ221の下部ヘッダ221bに接続した供給管223は、右のダウンチューブ114(図の向う側)の水平部分に沿って後方へ延び、エンジン211の液入口に接続する。224はラジエータ用ファンである。
【0035】
点火コイル226は、車幅中央に対し戻し管222と反対側の右の位置(図の向う側)に且つラジエータ221より前に配置したことを特徴とする。
このようにして、点火コイル226を(1)エンジン211からの熱影響を受けない位置で、(2)ラジエータ221からの排風の熱影響を受けない位置で、(3)戻し管222からの熱影響を受けない位置に配置することができる。
【0036】
すなわち、本発明に係るクータ型車両の点火コイル配置構造は、低床式フロア25を有するスクータ型車両において、フロア25の後部にエンジン211を配置し、フロア211の前部下部にエンジン用点火コイル226を配置したものであると言える。
【0037】
例えば、車両が大排気量を有するスクータ型車両である場合には、エンジンの発熱量が大きく、このエンジン周りを車体カバーで覆う構造をとるため、十分な熱的配慮が必要である。
そこで、フロア25の後部にエンジン211を配置し、フロア25の前部下部に点火コイル226を配置することで、点火コイル226をエンジン211から離し、エンジン211の熱的影響を受けないようにする。
この結果、エンジン用点火コイル226の寿命を延ばすことができる。
また、フロア25の前部下部にエンジン用点火コイル266を配置することで、低床式フロア25の下方のスペースの有効利用を図ることができる。
【0038】
また、本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造は、フロア25前方にエンジン冷却用ラジエータ221を配置し、このエンジン冷却用ラジエータ221より前にエンジン用点火コイル226を配置したものであると言える
フロア25前方にエンジン冷却用ラジエータ211を配置し、このエンジン冷却用ラジエータ221より前にエンジン用点火コイル226を、ラジエータ221からの排風の熱的影響を受けないようにできるとともにエンジン用点火コイル226自体で発生する熱を放熱できる。
【0039】
さらに、本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造は、エンジン冷却用ラジエータ221をフロア25前方に配置し、このエンジン211からエンジン冷却用ラジエータ221へ冷却水を戻す戻し管222を車幅中央から左寄り又は右寄りに通し、車幅中央に対し戻し管222と反対側の位置にエンジン用点火コイル226を配置したものであるとも言える。
車幅中央に対し戻し管222と反対側の位置にエンジン用点火コイル226を配置することで、エンジン用点火コイル226が戻し管222からの熱的影響を受けないようにできる。
【0040】
燃料タンク230は、左右一対のアッパフレーム113,113及び左右一対のダウンチューブ114,114で囲んだ側面視略三角形状の空間部Sp1に配置する。このような燃料タンク230は、空間部Sp1を有効利用して配置するために、この図に示すように車体側方から見たときに、アッパフレーム113,113及びダウンチューブ114,114に沿って前上が先細り状になった容器である。さらに燃料タンク230は容量を増すために、下部をダウンチューブ114,114よりも下方へ延す。ダウンチューブ114,114よりも下方へ延びた燃料タンク230の下部を、着脱可能なアンダフレーム143で覆うことにより、燃料タンク230を保護することができる。
車体フレーム110の下方から空間部Sp1へ燃料タンク230を挿入して取付けた後に、車体フレーム110にアンダフレーム143を取付けることになる。
【0041】
図7は本発明係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の燃料タンク周りの斜視図である。
燃料タンク230は、前下半分のタンク下半部231と後上半分のタンク上半部232とを重ね合わせてフランジ233部分を結合することで一体化した容器であり、傾斜した上面230aに給油口234、ブリーザ用サブタンク235及び燃料供給ポンプ236を備える。具体的には、燃料タンク230の上部に、ブリーザ用サブタンク235、給油口234及び燃料供給ポンプ236を前上から後下方へこの順に配置する。
【0042】
フランジ233は、上部中央部に1個の取付け孔233aを有するとともに、下部の左右に2個の取付け孔233b(この図では左の1個のみ示す。)を有する。給油口234は、密閉型キャップ237を備える。ブリーザ用サブタンク235は、燃料タンク230内に連通した小容器である。
【0043】
燃料タンクの遮熱構造は、エンジン211、戻し管222及び供給管223(図6参照)からの熱影響を防止するための遮熱板を、符号241,242,243,243にて示す4個の部材に分割し、これら分割した遮熱板241,242,243,243を燃料タンク230の前面、後面、左面及び右面に配置したものである。
分割した遮熱板241,242,243,243なので、エンジン211やラジエータ221からの熱影響の度合いを勘案するとともに、燃料タンク230の各面の形状に合せて、任意に且つ最小限の大きさに留めることができる。この結果、各遮熱板241,242,243,243は比較的小型になり、製造も極めて容易になる。しかも成形用金型が小さくてすみ、材料も少なくてすむので、安価に製造することができる。
【0044】
燃料タンク230の前面を覆う前部遮熱板241は、正面から見たときに概ね矩形状を呈する、硬質樹脂等の樹脂製シートである。樹脂製シートからなる前部遮熱板241なので形状が極めて簡素なものであり、より安価に製造することができる。
【0045】
燃料タンク230の後面を覆う後部遮熱板242は概ね矩形状のラバー製シートであって、上部に左右2個の引掛け孔242a,242aを有するとともに、下部に1個の引掛け孔242bを有する。
燃料タンク230における左面の下半部及び右面の下半部を覆う左・右遮熱板243,243は、上部に2個の引掛け孔243a,243aを有するラバー製シートである。左・右遮熱板243,243は、燃料タンク230と戻し管222及び供給管223(図6参照)との間に配設されている。このようにして、戻し管222及び供給管223の熱が燃料タンク230に伝わらないようにしている。
このように後部遮熱板242及び左・右遮熱板243,243は、ラバー製シートなので自在に変形可能であり、燃料タンク230周りのスペースに合せて自由に配置することができる。しかも、燃料タンク230周りの狭いスペースを有効利用して、簡単に配置することができる。さらには、シートからなる後部遮熱板242及び左・右遮熱板243,243なので、形状が極めて簡素なものであり、より安価に製造することができる。
【0046】
ここで一旦図6に戻って説明を続ける。
前部遮熱板241は、ヘッドパイプ111から下方へ垂下したダウンチューブ114と燃料タンク230との間に配置し、フロントクロスメンバ151に着脱可能に取付けることで、ラジエータ221の導風ガイドを兼ねる部材である。このため、前部遮熱板241の上端はラジエータ221の上部側へ湾曲し、前部遮熱板241の下端はラジエータ221の下まで延びる。
このように、前部遮熱板241をダウンチューブ114と燃料タンク230との間に配置するので、前部遮熱板241をダウンチューブ230に簡単に取付けることができる。従って、前部遮熱板241の取付け作業性がよい。
【0047】
後部遮熱板242は、上部を頭付きピン144に掛け止めるとともに、下部をフック148に掛け止めることで、車体フレーム110に着脱可能に取付けることができる。
また、左・右遮熱板243,243(この図では左のみ示す。)は、上部を頭付きピン144・・・に掛け止めることで、車体フレーム110に着脱可能に取付けることができる。
【0048】
以上の説明から明らかなように、分割した遮熱板241,242,243,243であるから、車体フレーム110(車体)に燃料タンク230を取付けた後に各遮熱板241,242,243,243を自由に車体フレーム110に取付けることができ、取付け作業性がよい。
【0049】
この図は、ラジエータ221の前をフロントロアカバー93で覆うとともに、ラジエータ221及び燃料タンク230の下をアンダーカバー94で覆うようにしたことを示す。
フロントロアカバー93は、アンダーカバー94の前端まで延びるとともに、前面に複数のラジエータ用導風口93a・・・を備える。
アンダーカバー94は、ラジエータ221の排風を外部へ排出するために、ファン224の下方に排風口94aを備える。排風口94aは、斜め後を向いた多数のルーバ(整流板)94b・・・を備える。
【0050】
さらにこの図は、給油口234を通じて燃料タンク230へ燃料を供給するときに開ける給油用リッド330、及び、エンジン211の点火プラグ(図示せず)を点検するときに開ける点検用リッド360を、車体カバー20に備えたことを示す。
【0051】
図8は図6の8矢視図であり、車体フレーム110に燃料タンク230を取付けた構造を示す。
車体フレーム110は、左右のステー152,152間に上部ブラケット154を掛け渡し、左右のダウンチューブ114,114に下部ブラケット155,155を取付けたものである。上部ブラケット154に燃料タンク230のフランジ233の上部をボルト止めするとともに、下部ブラケット155,155にフランジ233の下部をボルト止めすることで、車体フレーム110に燃料タンク230を着脱可能に取付けることができる。なお、フランジ233の上部は上部ブラケット154にきつくボルト止めしたものである。
【0052】
図9は図8の9−9線断面図であり、下部ブラケット155にフランジ233の下部をゴムブッシュ156を介してボルト・ナット157にて取付けることで、ラバーマウントしたことを示す。158はカラーである。
【0053】
図10は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の正面断面図であり、(1)車体フレーム110並びに燃料タンク230を、センタカバー24と左右のフロア25,25と左右のフロアスカート26,26とアンダカバー94とによって覆ったこと、及び(2)左右のダウンチューブ114,114にフロア支持ステー141,141を介してフロア25,25をボルト止めしたことを示す。
【0054】
上述のように、頭付きピン144・・・に掛け止めた左・右遮熱板243,243は、燃料タンク230の側方に沿って垂下し、燃料タンク230の側面とダウンチューブ114,114との間の隙間を通って延びる。このように、左・右遮熱板243,243の上部を車体フレーム110に掛け止めるだけなので、取付けは簡単である。
左・右遮熱板243,243の上部は、アッパフレーム113,113の外面に取付けられ、その下部はダウンチューブ114,114や戻し管222、供給管223の内側に配設されている。従って、戻し管222及び供給管223の熱が燃料タンク230に及ばないようにすることができる。
【0055】
図11は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車のラジエータ周りの作用図であり、ラジエータ221の後方にあるファン224は、ラジエータ221の前方から風を吸引する。このため、外気は冷却風(車両走行時の走行風を含む)Fcとなってラジエータ用導風口93a・・・へ入り、冷却風通路を流れてラジエータ221に入る。
【0056】
ラジエータ221を通った熱気(排風熱気)Fhはファン224から吐出され、導風ガイドを兼ねる前部遮熱板241によって案内されて下方へ流れを変え、アンダーカバー94の排風口94aから外部へ流出する。
ラジエータ221を通った熱気Fhの向きを前部遮熱板241にて変えるので、ラジエータ221の後方にあるエンジン211や燃料タンク230への熱気Fhの影響を防止することができる。また、前部遮熱板241が導風ガイドを兼ねるので、別異の導風ガイドを設ける必要はない。
【0057】
図12は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の燃料タンクの模式図であり、燃料タンク230に給油口234の周りを囲うトレー251を備え、このトレー251に燃料排出用ホース(ドレンホース)252の一端252aを接続し、燃料排出用ホース252の他端252bを大気に開放したことを示す。
上述のように、ブリーザ用サブタンク235は燃料タンク230内に連通している。ブリーザ用サブタンク235には、ブリーザ用ホース253の一端253aを接続し、ブリーザ用ホース253の他端を二股状に分岐させる。254はブリーザ用ホース253の他端を分岐させるT継手である。
【0058】
図13は本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の燃料タンクの給油口周りの背面断面図であり、トレー251は、平坦な底251aに上下貫通した筒部251bを一体に形成した、燃料受け皿である。筒部251bを給油口234に挿入するとともに、底251aの上下両面をセンタカバー24の給油部分に設けた凹部24aの底24bと燃料タンク230の上面230aとによって挟み込むことで、トレー251を取付けることができる。従って、トレー251を取付けるためのボルト等の部材が不要であり、取付けも容易である。24cは給油口貫通孔である。
【0059】
図14は本発明に係る自動二輪車のピリオンステップを採用した自動二輪車の燃料タンクの右側外観図であり、トレー251は後下方へ延びる排出口251cを備える。この排出口251cに燃料排出用ホース252の一端252aを接続し、この燃料排出用ホース252を右のアッパフレーム113に沿って垂下し、アンダカバー94の後部右端の部分まで延し、他端252bを下に向ける。
燃料タンク230へ給油している最中に、給油口234の周辺にこぼれた燃料をトレー251で受け、燃料排出用ホース252を介して外部に排出することができる。従って、こぼれた燃料で燃料タンクの外面が濡れる心配はない。
【0060】
一方、ブリーザ用サブタンク235は右側方へ延びるブリーザ口235aを備える。このブリーザ口235aにブリーザ用ホース253の一端253aを接続し、このブリーザ用ホース253を燃料タンク230の右側面に沿って後下方へ垂下させる。
すなわちブリーザ用ホース253を、燃料タンク230を正面から見たときに、燃料タンク230に沿って、アッパフレーム113とダウンチューブ114との間を通し、アンダカバー94の後部右端の部分まで延した後に、二股状に分岐させる。
分岐した一方の他端253bは、アンダカバー94の後部左端の部分まで延びて、大気に開放し、分岐した他方の他端253cは、燃料タンク230の後面に沿って一旦上方へ延び、さらに、左のアッパフレーム113に沿って後方へ延びて、大気に開放する。従って、2つの他端253b,253cのうちの一方が詰った場合であっても、残りの他方によってブリーザ機能を確保できる。
【0061】
尚、実施の形態では図6において、点火コイル226は車幅中央に対し戻し管222と反対側の位置に配置したものであればよく、例えば戻し管222を車幅中央から右寄りに通した場合には、左寄りに配置したものであればよい。
【0062】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、低床式フロアを有するスクータ型車両において、フロアの後部にエンジンを配置し、フロアの前部下部にエンジン用点火コイルを配置したので、エンジン用点火コイルをエンジンから離すことができ、エンジンの熱的影響を受けないようにできる。この結果、エンジン用点火コイルの寿命を延ばすことができる。
また、フロアの前部下部にエンジン用点火コイルを配置することで、低床式フロアの下方のスペースの有効利用を図ることができる。
【0063】
請求項2では、フロア前方にエンジン冷却用ラジエータを配置し、このエンジン冷却用ラジエータより前にエンジン用点火コイルを配置したので、ラジエータからの排風の熱的影響を受けないようにできるとともにエンジン用点火コイル自体で発生する熱を放熱できる。
【0064】
請求項3では、エンジン冷却用ラジエータをフロア前方に配置し、このエンジンからエンジン冷却用ラジエータへ冷却水を戻す戻し管を車幅中央から左寄り又は右寄りに通し、車幅中央に対し戻し管と反対側の位置にエンジン用点火コイルを配置したので、エンジン用点火コイルを戻し管からの熱的影響を受けないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の左側外観図
【図2】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の右側外観図
【図3】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の側面断面図
【図4】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した車体フレームの斜視図
【図5】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した車体フレームにエンジン、動力伝達機構及びシート搭載した左側面図
【図6】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の前部下部の側面断面図
【図7】本発明係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の燃料タンク周りの斜視図
【図8】図6の8矢視図
【図9】図8の9−9線断面図
【図10】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の正面断面図
【図11】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車のラジエータ周りの作用図
【図12】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の燃料タンクの模式図
【図13】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の燃料タンクの給油口周りの背面断面図
【図14】本発明に係るスクータ型車両の点火コイル配置構造を採用した自動二輪車の燃料タンクの右側外観図
【符号の説明】
10…スクータ型車両(自動二輪車)、25…低床式フロア、211…エンジン、221…ラジエータ、222…戻し管、226…点火コイル。
Claims (3)
- 低床式フロアを有するスクータ型車両において、前記フロアの後部にエンジンを配置し、前記フロアの前部下部にエンジン用点火コイルを配置したことを特徴とするスクータ型車両の点火コイル配置構造。
- 前記フロア前方にエンジン冷却用ラジエータを配置し、このエンジン冷却用ラジエータより前に前記エンジン用点火コイルを配置したことを特徴とする請求項1記載のスクータ型車両の点火コイル配置構造。
- 前記エンジン冷却用ラジエータを前記フロア前方に配置し、このエンジンから前記エンジン冷却用ラジエータへ冷却水を戻す戻し管を車幅中央から左寄り又は右寄りに通し、車幅中央に対し戻し管と反対側の位置に前記エンジン用点火コイルを配置したことを特徴とする請求項1記載のスクータ型車両の点火コイル配置構造。
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