JP3867224B2 - 回転慣性力緩衝器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は回転慣性力緩衝器に関し、更に詳細には、回転トルク測定器の使用時に生ずる回転慣性力を緩衝除去する緩衝器において、該緩衝器に内蔵したコイルバネに入力されたエネルギーが蓄積されるために、該入力の停止時に該エネルギーが放出されて回転工具等を破損したり、使用者に不快な反動を与えたりする弊害があるので、反転時のエネルギーの放出を阻止する機構を設けることで前記不都合を回避するようにした提案に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
各種工業製品の大量組立ライン等において、ビスやナット等の締付け作業における時間短縮や労働者の負担軽減を計るために、図4に示すような電動ドライバーやエアードライバー等の回転工具10が好適に使用されている。これらの回転工具10は、組立製品や取付け部品の破損を防止するために、常に一定の力で締付けが行なわれるよう調整する必要がある。すなわちこの調整とは、当該の回転工具10に予め設定した基準トルク値と、該回転工具10のビット12から出力される実際の回転トルクとを回転トルク測定器により比較し、該回転トルクが前記基準トルク値内に納まるよう追い込む作業をいう。
【0003】
この回転トルクの測定に際しては、従来より図5に示す如き回転トルク測定器14(トルクテスター)が一般に使用されている。この回転トルク測定器14は、そのケース16における上部パネル面に、測定値をデジタル表示する液晶ディスプレイ部18、被測定物である回転工具10の出力軸であるビット12(図4)を受ける入力部となる特殊形状のソケット20、パワースイッチ22、較正用ツマミ24その他リセットボタンスイッチ26等が配設されている。また前記ケース16内には、ストレンゲージの如き歪み計や、該歪み計からの信号を測定値に変換する電気回路等(何れも図示せず)が収納されている。
【0004】
この回転トルク測定器14を使用して、前記回転工具10の回転トルクを測定する場合は、図6に示す構成に係る回転慣性力緩衝器28が使用されている。この回転慣性力緩衝器28は、出願人の別途特許出願中(特願平10−34109号)に係るものであって、回転工具10の出力軸12より出力される回転トルクの中から高速回転により蓄積された回転慣性力を緩衝除去(吸収除去)し、正味の回転トルクだけが得られるようにしたものである。すなわちこの緩衝器28は、中空の筒体30と、該筒体30の上部に中心線に沿って軸受け32を介して配設される第1シャンク34と、該筒体30の内部に配設されるコイルバネ36と、該筒体30の下部に固定され前記中心線に沿って延出する第2シャンク38とから基本的に構成されている。そしてコイルバネ36の一端部は第1シャンク34に嵌合されると共に、その他端部は前記筒体30の底部に穿設した通孔30aに挿入固定されている。
【0005】
前記第1シャンク34の上端部には、図6に示すように、電動ドライバー等の回転工具10の出力軸であるビット12の係合を許容するボルト状頭部40が設けられている。また前記筒体30の下部から延出する第2シャンク38は、図5に示す回転トルク測定器14の前記ソケット20に着脱自在に嵌合させ得るようになっている。
【0006】
この緩衝器28を使用する場合は、前記の第2シャンク38を回転トルク測定器14のソケット20に嵌合させた後に、第1シャンク34のボルト頭部40に回転工具10のビット12を係合させる。そして回転工具10を回転させると、該工具の出力は緩衝器28を経て前記ソケット20に伝達され、その測定値がディスプレイ部18にデジタル表示される。この測定値は、前記ビット12の回転に伴ってコイルバネ20が巻回されて変形することにより、回転慣性力が緩衝除去された正味の回転トルクとしての数値である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した緩衝器は、回転トルク測定器14により例えば電動ドライバー10からの出力トルクを測定する際に、これに伴って発生する回転慣性力を有効に緩衝除去し、実際のネジ締めに近い状態での特性が再現できるので、正確な測定値が得られる点で優れている。しかし反面で回転慣性力緩衝器は、外来の回転慣性力を前記コイルバネ20の巻き込みにより吸収するものであるため、トルク測定が終了した時点で該コイルバネ20には大きな回転エネルギーが蓄積されている。従ってコイルバネ20に蓄積されたエネルギーは、トルク測定の終了によりフリー状態となった電動ドライバー10に反力(反対方向の回転力)として一挙に放出される。この反力は極めて大きいので、電動ドライバー10やビット12を破損したり、使用者の手首等の人体に不快な衝撃を与える等の欠点がある。
【0008】
【発明の目的】
この発明は、従来の技術に内在している前記欠点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、回転慣性力緩衝器を介して回転トルク測定器でトルク測定を行なった後に、該緩衝器に内蔵したコイルバネが反転するのを阻止して、回転工具が破損したり使用者に不快な反動が戻ったりするのを防止し得る手段を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、初期の目的を好適に達成するため本発明は、回転工具の出力軸と、これから出力される回転トルクを測定する測定器の入力部との間に介在させて、当該トルクの測定時に発生する回転慣性力を緩衝する緩衝器において、 前記出力軸からの出力を受ける受容部を一端に備え、他端にコイルバネの一端部が取付けられる取付部を備えた第1回転軸と、
内部に挿通される前記第1回転軸に前記出力軸の回転方向への回転だけを許容し、反対方向への回転は阻止するようにした反転阻止手段と、
前記回転トルク測定器の入力部への着脱自在な連結部を一端に備え、他端に前記コイルバネの他端部が取付けられる取付部を備えた第2回転軸と、
前記反転阻止手段が一端部に取付けられると共に、他端部に前記第2回転軸が回転自在に取付けられて、内部に前記コイルバネが収納される筒状本体とからなり、
前記コイルバネの一端部を第1回転軸の取付部に取付けると共に、該コイルバネの他端部を第2回転軸の取付部に取付けることで、前記回転トルクの測定終了時における該コイルバネの反転を前記反転阻止手段により阻止し得るよう構成したことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る回転慣性力緩衝器につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、好適な実施例に係る回転慣性力緩衝器42の分解斜視図であって、この緩衝器42は上方に開放する筒状本体44を備え、この筒状本体44の内部には図示形状のコイルバネ46が、その中心軸線を該筒状本体44の軸線に整列させて収納されるようになっている。前記筒状本体44の上方開口部には、図2に示すように、円盤状蓋体48が密接に被着されてビス等で固定し得るようになっている。前記円盤状蓋体48の中心には軸受50が設けられ、この軸受50に第1回転軸52が回転自在に挿通されている。
【0011】
この第1回転軸52に関して、前記円盤状蓋体48から外方へ僅かに突出する一端部は、図4に示した電動ドライバー10のビット12からの回転出力を受ける受容部54を備えている。前記受容部54は、具体的には前記出力軸たるビット12が着脱自在に係合されるボルト頭部として構成され、図示例ではプラスのすり割りが形成されている。この受容部54は、各種の型式のビット12を係合させ得るように、例えば第1回転軸52の一端部にネジ込みにより交換自在としておくのが好ましい。また第1回転軸52に関して、前記円盤状蓋体48の内部に臨む他端部は、前記コイルバネ46の一端部46aが取付けられる取付部56を備えている。この取付部56は、図1に示すように、下方に開口する嵌合用すり割り部として形成され、このすり割り部56にコイルバネ46の一端部46aを嵌合させるようになっている。
【0012】
前記円盤状蓋体48の内部には、図2に示すように、前記第1回転軸52の内挿を許容する反転阻止手段58が、前記軸受50と軸心を整列させて配設されている。この反転阻止手段58として好適には一方向クラッチが採用されるが、それ以外にも例えばラチェットの如く一方向への回転はフリーに許容するが、反対方向への回転は確実に阻止する手段であってもよい。従って図示例では、反転阻止手段として一方向クラッチを使用した場合について説明する。
【0013】
この一方向クラッチ58は、前記回転工具10の出力軸(ビット)12がトルク測定のため回転する方向への回転だけを許容し、反対方向への回転は阻止するようになっている。一方向クラッチ58の機構には各種あるが、図3に示すようなシェル形のローラクラッチが推奨される。このクラッチ機構は、ハウジング70の通孔内周に波形の薄鋼板72を配設すると共に、該通孔に同心的に挿通した回転軸74と前記波形の薄鋼板72との間にローラ列76を介在させるよう構成したものである。この薄鋼板72の波形面は、所謂くさび面として機能するものであり、クラッチ内部に組込んだスプリング(図示せず)の力によって前記ローラ列76を押圧するようになっている。そして前記ハウジング70と回転軸74との相対回転によって、前記ローラ列76は薄鋼板72のくさび面から解放されることで、他方に対するハウジング70または回転軸74の一方向への回転を許容する。但し、シェル形のローラクラッチは1つの推奨例に過ぎず、設計その他の仕様が許すものであれば、一方向クラッチ58として他にも種々の型式のものを使用することができる。
【0014】
前記筒状本体44の底部中心には、図1および図2に示すように、軸受60を介して第2回転軸62が回転自在に配設され、その中心軸線を該筒状本体44の軸線に整列させている。この第2回転軸62は、筒状本体44の底部から外方へ延出する側の一端部に、前記回転トルク測定器14の入力部20に着脱自在に連結される連結部64を備えている。また第2回転軸62に関して、筒状本体44の内部に臨ませている側の他端には、前記コイルバネ46の他端部46bが取付けられる取付部66を備えている。この取付部66は、図1に示すように、上方に開口する嵌合用すり割り部として形成され、このすり割り部56にコイルバネ46の他端部46bを嵌合させるようになっている。従って図2に示すように、コイルバネ46の一端部46aを第1回転軸52の取付部56に嵌合させて取付けると共に、該コイルバネ46の他端部46bを第2回転軸62の取付部66嵌合させて取付けることで、第1回転軸52および第2回転軸62は該コイルバネ46を介して相互に連結される。
【0015】
【実施例の作用】
次に、このように構成した実施例に係る回転慣性力緩衝器42の作用につき説明する。緩衝器42の第2回転軸62における連結部64を、図5で説明した回転トルク測定器14の入力部(ソケット)20に嵌合させた後、第1回転軸52の受容部(ボルト頭部)54に回転工具(ドライバー)10の出力部(ビット)12を係合させる。そして回転工具10を回転させると、該工具の出力は緩衝器42を経て前記ソケット20に伝達され、その測定値がディスプレイ部18にデジタル表示される。このとき前記ビット12の回転に伴ってコイルバネ46が巻回されて変形し、これにより回転慣性力が緩衝除去されることは在来の回転慣性力緩衝器と同じである。
【0016】
先に述べた如く回転慣性力緩衝器では、そのトルク測定が終了した時点で内蔵のコイルバネ46には大きな回転エネルギーが蓄積されている。このため従来の回転慣性力緩衝器では、コイルバネに蓄積されたエネルギーは、トルク測定の終了によりフリー状態となった回転工具に反力として一挙に放出される弊害があった。しかるに実施例に係る回転慣性力緩衝器42では、前記コイルバネ46が反力を第1回転軸52に伝達しょうとしても、該コイルバネ46は一方向クラッチ58の作用下に反対方向への回転が阻止される。従って第1回転軸52も、トルク測定時に回転した方向と反対の方向への回転を阻止されるので、前記反力の一挙放出により回転工具10を破損したり、使用者に不快な衝撃を与えたりすることがない。
【0017】
なおトルク測定が終了した時点では、先に述べた如く前記コイルバネ46に大きなエネルギーが蓄積されているので、このエネルギーを円滑かつ安全に放出しなければらない。このとき図示の実施例では、回転慣性力緩衝器42に一方向クラッチ58を使用しているから、該緩衝器42に対する前記ビット12からの入力が断たれると、該一方向クラッチ58がコイルバネ46に対して逆方向への回転を許容することになる。すなわち前記コイルバネ46の反転は、一方向クラッチ58→円盤状蓋体48→筒状本体44と伝達され、該筒状本体44を自由回転させることで蓄積されたエネルギーを放出することになる。従ってこの場合も、蓄積エネルギーの放出により回転工具10を破損したり、使用者に不快な衝撃を与えたりすることはない。
【0018】
【ラチェットを使用する変形例について】
図示例に係る回転慣性力緩衝器では、反転阻止手段として一方向クラッチを使用するものであったが、これに代えて例えばパウル(爪部)とセレーション(山形歯部)とからなるラチェットを使用するようにしてもよい。この場合も、第2回転軸62の連結部64を、トルク測定器14のソケット20に嵌合させた後、第1回転軸52の受容部54に前記ビット12を係合させ、電動ドライバー10を回転させると、その出力は前記ラチェットを経て前記ソケット20に伝達され、測定値がディスプレイ部18にデジタル表示される。そして前述の如くコイルバネ46が反力を第1回転軸52に伝達しょうとしても、該コイルバネ46はラチェットの作用下に逆方向への回転が阻止され、従って前記反力の放出により回転工具10を破損したり、使用者に衝撃を与えたりすることがない。
【0019】
このラチェットを反転阻止手段として使用する場合は、回転トルク測定の終了後に、回転慣性力緩衝器42の連結部64をトルク測定器14のソケット20から取外せば、前記第2回転軸62は回転自在となっているから、前記コイルバネ46に蓄積されたエネルギーはこの第2回転軸62を回転させることで放出される。このとき第2回転軸62は、回転トルク測定器14のソケット20から外れており、しかも第2回転軸62の回転は回転工具10や使用者に伝達されるものではないから極めて安全である。
【0020】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明に係る回転慣性力緩衝器によれば、反転阻止手段を内装しているので、回転トルク測定器でトルク測定を行なった後に、該緩衝器に内蔵のコイルバネが反転するのを有効に阻止することができる。従って回転工具が破損したり、使用者に不快な反動が戻ったりするのを有効に防止し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る回転慣性力緩衝器の分解斜視図である。
【図2】実施例に係る回転慣性力緩衝器の縦断面図である。
【図3】実施例に係る回転慣性力緩衝器に使用される一方向クラッチの説明図である。
【図4】ボルトやナット等の締付け作業に使用される回転工具の一例としての電動ドライバーの斜視図である。
【図5】一般的な回転トルク測定器の斜視図である。
【図6】従来技術に係る回転慣性力緩衝器を一部断面で示す斜視図である。
【符号の説明】
10 回転工具(電動ドライバー)
12 出力軸(ビット)
14 回転トルク測定器
20 入力部(ソケット)
42 回転慣性力緩衝器
44 筒状本体
46 コイルバネ
46a コイルバネの一端部
46b コイルバネの他端部
52 第1回転軸
54 受容部
56 取付部
58 反転阻止手段(一方向クラッチ,ラチェット)
62 第2回転軸
64 連結部
66 取付部
Claims (5)
- 回転工具(10)の出力軸(12)と、これから出力される回転トルクを測定する測定器(14)の入力部(20)との間に介在させて、当該トルクの測定時に発生する回転慣性力を緩衝する緩衝器(42)において、
前記出力軸(12)からの出力を受ける受容部(54)を一端に備え、他端にコイルバネ(46)の一端部(46a)が取付けられる取付部(56)を備えた第1回転軸(52)と、
内部に挿通される前記第1回転軸(52)に前記出力軸(12)の回転方向への回転だけを許容し、反対方向への回転は阻止するようにした反転阻止手段(58)と、
前記回転トルク測定器(14)の入力部(20)への着脱自在な連結部(64)を一端に備え、他端に前記コイルバネ(46)の他端部(46b)が取付けられる取付部(66)を備えた第2回転軸(62)と、
前記反転阻止手段(58)が一端部に取付けられると共に、他端部に前記第2回転軸(62)が回転自在に取付けられ、内部に前記コイルバネ(46)が収納される筒状本体(44)とからなり、
前記コイルバネ(46)の一端部(46a)を第1回転軸(52)の取付部(56)に取付けると共に、該コイルバネ(46)の他端部(46b)を第2回転軸(62)の取付部(66)に取付けることで、前記回転トルクの測定終了時における該コイルバネ(46)の反転を前記反転阻止手段(58)により阻止し得るよう構成した
ことを特徴とする回転慣性力緩衝器。 - 前記反転阻止手段(58)は一方向クラッチであって、この一方向クラッチ(58)としてローラクラッチが採用される請求項1記載の回転慣性力緩衝器。
- 前記反転阻止手段(58)としてラチェットが採用される請求項1記載の回転慣性力緩衝器。
- 前記反転阻止手段(58)は、前記回転工具(10)が回転トルクの測定のため回転させられる方向へのみ前記第1回転軸(52)の回転を許容し、この回転方向と反対方向への回転は阻止するようになっている請求項1〜3の何れかに記載の回転慣性力緩衝器。
- 前記回転工具(10)は電動ドライバーであり、前記受容部(54)は前記出力軸(12)たるビットが着脱自在に係合されるボルト頭部である請求項1記載の回転慣性力緩衝器。
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