JP3866138B2 - バックル装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両等に用いられるシートベルトのバックル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用シートベルトでは、乗員が装着したウエビングを車体側に固定するためにバックル装置が用いられる。
【0003】
バックル装置は、車体側に設けられたバックル本体と、ウエビング側に設けられたタングプレートとを備えており、そのタングプレートがバックル本体に係合離脱自在とされている。
【0004】
バックル本体は、概略的に、前記タングプレートを係合保持するフック部材と、前記フック部材によるタングプレートの係合保持状態を維持するロックバーとを備えている。
【0005】
前記ロックバーは、所定の係合保持位置と係合保持解除位置との間で移動自在とされている。そして、フック部材がタングプレートに係合保持した状態で、該ロックバーが係合保持位置に移動してフック部材に当接する。これにより、フック部材の係合保持状態が維持される構成となっている。
【0006】
また、バックル本体に設けられたレリースボタンの押込み操作に連動して、前記ロックバーが係合保持解除位置に移動し、これにより前記フック部材による係合保持状態が解除される。そして、タングプレートがバックル本体から離脱する構成となっている。
【0007】
ところで、このようなバックル装置では、プリテンショナー装置等の作動によりバックル本体に大きな加速度が加わると、慣性力によりロックバーが係合保持解除位置に慣性移動し、タングプレートがバックル本体から離脱する恐れがある。
【0008】
これを防止するための従来機構として、例えば、実用新案登録第2585540号公報に開示のものがある。
【0009】
この公報に開示のバックル装置では、前記ロックバーに移動抑止のための慣性体を設けている。そして、バックル本体に大きな加速力が加わると、前記慣性体に作用する慣性力により前記ロックバーを慣性回動させて、ロックバーを所定の切欠凹部に係合させ、該ロックバーの係合保持解除位置への移動を阻止するようにしている。
【0010】
なお、通常状態では、前記ロックバーは、前述の慣性力によるロックバーの慣性回動を妨げない程度の抵抗力で板バネ等の抵抗手段により、前記切欠凹部に係合しない姿勢へと付勢されている。これにより、大きな加速度が加わらない通常の離脱動作時においては、ロックバーが円滑に係合保持解除位置に移動するようにしている。
【0011】
その他、タングプレートの離脱を防止する構成を採用した従来のバックル装置として、特開2001−46117公報や特開2001−46118公報に開示のものがある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のバックル装置では、通常の離脱時には、ロックバーが円滑に係合保持解除位置に移動でき、かつ、バックル本体に大きな加速力が加わった非常時には、ロックバーが係合保持解除位置に向けて移動するより前に切欠凹部に係合保持される必要がある。
【0013】
従って、従来のバックル装置では、移動抑止のための慣性体による慣性力や抵抗手段による抵抗手段による抵抗力につき、微妙なバランス設定が必要であり、慣性体や抵抗手段等の設計が困難である。
【0014】
そこで、この発明の課題は、慣性体を設けることなく、バックル本体に大きな加速力が加わった際に、タングプレートの離脱を防止できるバックル装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、請求項1記載の発明は、タングプレートと、前記タングプレートが挿脱されるバックル本体とを備えたバックル装置であって、前記バックル本体は、基板部とこの基板部の両側部に立設された一対の側板部を有し前記両側板部間に前記タングプレートが挿脱自在とされると共に前記両側板部に前記タングプレートの挿脱方向に沿って長孔が形成された基体と、前記両側板部間に挿入されたタングプレートに係合可能な係合位置と前記タングプレートとの係合を解除可能な係合解除位置との間で揺動自在に配設され、前記タングプレートの挿入により前記係合位置に揺動して前記タングプレートに係合すると共に、前記係合解除位置に向けて常時付勢されるフック部材と、前記各長孔にその長手方向に沿って移動自在に挿通保持された両端部を有する長尺形状に形成され、前記係合位置に揺動した前記フック部材に当接して前記フック部材が前記タングプレートに係合する状態を保持する係合保持位置と、前記フック部材が前記係合位置から前記係合解除位置に揺動するのを許容する係合保持解除位置との間で移動自在に配設されると共に、前記係合保持位置に向けて常時付勢されるロックバーと、前記ロックバーを前記係合保持位置から前記係合保持解除位置に向けて移動させるレリースボタンと、を備え、前記基体に前記ロックバーが前記係合保持位置から前記係合保持解除位置に向けて移動するとき前記ロックバーと係合可能な抑止部が設けられ、前記係合保持位置において、前記ロックバーが、前記係合保持解除位置への移動を抑止される抑止姿勢と前記係合保持解除位置への移動を抑止されない非抑止姿勢との間で姿勢変更自在とされ、前記係合保持位置において前記ロックバーを前記抑止姿勢に姿勢変更するように付勢する抑止姿勢付勢手段をさらに備え、前記レリースボタンに、前記ロックバーを前記係合保持位置から前記係合保持解除位置に向けて移動させるときに、前記抑止姿勢付勢手段の付勢力に抗して前記ロックバーを前記非抑止姿勢に姿勢変更させる姿勢変更手段が設けられたものである。
【0016】
また、請求項2記載のように、前記ロックバーが、前記係合保持位置にあってかつ前記抑止姿勢付勢手段により前記抑止姿勢にあるとき、前記基体に設けられた前記抑止部は、前記ロックバーが前記レリースボタンの姿勢変更手段により姿勢変更するための間隔を隔てて前記ロックバーに対向して配置されているとよい。
【0017】
なお、請求項3記載のように、前記ロックバーは、扁平形状の両端部を有し、前記抑止部は、前記各長孔の一方側側縁部に形成された切欠部であり、前記係合保持位置において、前記ロックバーは、その各端部の扁平方向を前記各長孔の長手方向に沿わせた非抑止姿勢から、その各端部の周縁部のうち前記タングプレートの挿入方向側の一方側側縁部を前記切欠部に係合させるように傾動させて抑止姿勢に姿勢変更するものであってもよい。
【0018】
また、請求項4記載のように、前記フック部材と前記ロックバーとの間に介在してコイルバネが設けられ、該コイルバネが前記ロックバーを前記係合保持位置に向けて常時付勢する手段であると共に、前記抑止姿勢付勢手段であってもよい。
【0019】
さらに、請求項5記載のように、前記抑止姿勢付勢手段は、前記ロックバーを前記係合保持位置に向けて常時付勢するロックバー付勢手段と、前記各長孔の両端部のうち前記係合保持位置側の端部に形成された支軸突部とを有し、前記ロックバーが前記係合保持位置に向けて付勢されると、前記ロックバーの各端部の他方側側縁部が前記各支軸突部に当接すると共に、その当接部分を中心として前記ロックバーが回動して前記抑止姿勢に姿勢変更するようにしてもよい。
【0020】
あるいは、請求項6記載のように、前記抑止姿勢付勢手段は、前記ロックバーを前記係合保持位置に向けて常時付勢するロックバー付勢手段と、前記各長孔の両端部のうち前記係合保持位置側の端部に形成された姿勢変更ガイド部とを有し、前記ロックバーが前記係合保持位置に向けて付勢されると、前記ロックバーの各端部が前記姿勢変更ガイド部に受入れられて、前記ロックバーが前記抑止姿勢に姿勢変更するものであってもよい。
【0021】
また、請求項7記載のように、前記レリースボタンは、押込み操作される押動操作部と、前記押動操作部より一体形成され、前記各側板部の外側面で前記各長孔の長手方向に沿って移動自在な一対のガイド側板部と、を有し、前記各ガイド側板部に、前記各側板部の外面側に突出する前記ロックバーの両端部に当接可能なロックバー当接部と、前記ロックバーの両端部をその扁平方向を前記各長孔の長手方向に沿わせるようにガイドする姿勢変更ガイド面とを有するガイド凹部が形成され、前記姿勢変更手段は、前記姿勢変更ガイド面であってもよい。
【0022】
さらに、請求項8記載のように、前記レリースボタンの押込み操作により、前記各ロックバー当接部が前記ロックバーの各端部に当接するよりも手前の位置で、前記姿勢変更ガイド面は前記ロックバーの両端部をその扁平方向を前記各長孔の長手方向に沿わせるようにガイドするとよい。
【0023】
また、請求項9記載のように、前記切欠部は、前記各長孔の両側側縁部のうち、前記ロックバーと前記フック部材とが当接する側の側縁部に形成されたものであってもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態に係るバックル装置について説明する。
【0025】
このバックル装置は、車両等のシートベルト装置において、乗員の身体に装着されたウエビングを車体側に連結固定するための装置である。
【0026】
図1〜図6に示すように、このバックル装置10は、タングプレート12と、該タングプレート12が挿脱されるバックル本体20とを備えている。
【0027】
タングプレート12は、図示省略のウエビングの途中に移動自在に配設されるものであり、タング部14とこのタング部14に一体的に形成された連結部16とを備えている。
【0028】
タング部14は、金属等により略矩形板状に形成されており、その略中央部に略矩形状の係合孔14aが形成されている。この係合孔14aに、後述するバックル本体20側のフック部材60が係合することで、タングプレート12とバックル本体20とが連結固定される。
【0029】
また、連結部16は、前記タング部14よりも幅広でかつ肉厚の部材に形成されており、その略中央部にウエビングを挿通可能なウエビング挿通孔16aが形成されている。そして、ウエビングが該ウエビング挿通孔16a内に挿通されることで、タングプレート12がウエビングの途中に移動自在に配設されることとなる。
【0030】
バックル本体20は、フロア等の車体側に配設されるものであり、図1〜図4に示すように、基体30と、イジェクタ52と、フック部材60と、ロックバー70と、レリースボタン90とを備えている。これらの各部材は、合成樹脂等により形成されたベースカバー48と蓋カバー49との間に収容配置される(図1参照)。なお、図2及び図3は、バックル本体20にタングプレート12が挿入係合された状態を示しており、図4は、バックル本体20からタングプレート12が離脱した状態を示している。このバックル本体20の説明において、便宜上、タングプレート12が挿入される側を前側(図1の右下側)、その反対側を後側(図1の左上側)として説明する。
【0031】
基体30は、例えば、厚板状金属材を適宜打抜き屈曲形成することにより形成されたもので、基板部31とこの基板部31の両側部に立設された一対の側板部35とを有している。上記タングプレート12は、両側板部35間に挿脱自在とされる。
【0032】
基板部31は、略長方形板状に形成されており、その略中央部にガイド穴32が形成されている。ガイド穴32は、略矩形状に形成されており、後述するイジェクタ52の移動をガイドすると共に、そのガイド穴32内に該イジェクタ52を付勢するためのコイルバネ80が収容配置可能とされている(図2〜図4参照)。また、ガイド穴32の後端縁の幅方向略中央部に長尺状のバネ連結部33が突出形成されている。
【0033】
一対の側板部35には、それぞれタングプレート12の挿脱方向(前後方向)に沿って長孔36が形成されており、後述するロックバー70が該長孔36に沿って前側の係合保持位置(図2及び図3参照)と後側の係合保持解除位置(図4参照)との間で移動自在に配設される。
【0034】
また、図1及び図5に示すように、この基体30は、抑止部39を有している。抑止部39は、ロックバー70が係合保持位置に移動して抑止姿勢に姿勢変更すると、該ロックバー70は移動することで係合可能となり、該ロックバー70が後方の係合保持解除位置に向けて慣性移動するのを抑止する機能を有している。
【0035】
本実施の形態では、抑止部39は、各長孔36の上側側縁部のうち前側端部(タングプレート12の離脱方向側の端部)よりの位置に形成されており、受面39aと係合面39bとを有する略三角形状の切欠状とされている。そして、ロックバー70が抑止姿勢(図5に2点鎖線で示されるロックバー70参照)に姿勢変更すると、該ロックバー70の両端部の上面が受面39aに当接すると共に、ロックバー70の両端部の一方側側縁部(タングプレート12の挿入方向側)は、係合面39bとの間にロックバー70の姿勢変更を許容するための若干の間隙をもって該係合面39bに対向して配設され該係合面39bに移動して(図5参照)係合可能な状態となる。なお、ロックバー70の両端部の上面が受面39aに当接しない構造であってもよい。
【0036】
図1〜図4に戻って、各側板部35の上縁部であって前記長孔36よりも後側の位置に、それぞれ揺動支持部37が切欠形成されている。揺動支持部37は、その開口縁部が若干狭まった凹切欠状に形成されており、後述するフック部材60を揺動自在に支持する。
【0037】
さらに、各側板部35の内面側には、それぞれ案内突部38が突出形成されている。各案内突部38は、基板部31の上面からタングプレート12の厚み寸法分離れた位置に形成されており、該タングプレート12が基板部31の上面に摺接しつつ両側板部35間で挿脱されるようにガイドする機能を有している。
【0038】
なお、この基体30の基板部31の後端部には、車体側への固定に供される取付孔30hが形成されている。
【0039】
イジェクタ52は、樹脂材料等により形成されており、上記両側板部35間において基板部31上を、タングプレート12の挿脱方向(前後方向)に沿って移動自在に配設されている。そして、該タングプレート12の挿入により所定の係合不許容位置(前側の位置、図4参照)から所定の係合許容位置(後側の位置、図2及び図3参照)に向けて押込まれる。
【0040】
具体的には、イジェクタ52は、基板部31上を摺動するイジェクタ本体部55と、イジェクタ本体部55の下面側に形成されたイジェクタガイド部53とを備えている。
【0041】
イジェクタ本体部55の前端部上面には、前方に向けて下向き傾斜する案内傾斜部56が形成されており、後述するフック部材60のフック部66の先端部が該案内傾斜部56上を摺動して、タングプレート12の係合孔14aに案内される。
【0042】
また、イジェクタ本体部55の両側部の前部に、後述するレリースボタン90を前方へ押動するための一対のボタン押動部57が突出形成されている。また、イジェクタ本体部55の後端縁部両側には、フック部材60を後述する係合位置に向けてより確実に押動するためのフック押動部58が形成されている。
【0043】
また、イジェクタガイド部53の両側部には、その前後方向に沿って断面略U字状の溝(図示省略)が形成されている。そして、基板部31のガイド穴32の両側縁部を該溝にスライド自在に嵌め込むことにより、本イジェクタ52が基体30に対して前後移動自在に取付けられることとなる。
【0044】
また、イジェクタ52の後端部には、バネ連結部54が突出形成されている。そして、上述のようにイジェクタ52を基体30に組込んだ状態で、イジェクタ52を前側に付勢するための付勢部材としてのコイルバネ80が、該バネ連結部54とガイド穴32側のバネ連結部33との間に若干の圧縮状態で介在されている。このコイルバネ80の付勢力により、イジェクタ52が前方(タングプレート12の離脱方向)に向けて常時弾性付勢される。
【0045】
すなわち、イジェクタ52を基体30に組込んだ状態では、イジェクタ52は、コイルバネ80の付勢力により前方に向けて付勢され、前方の係合不許容位置に移動している。
【0046】
この状態から、タングプレート12をバックル本体20内に挿入すると、該タングプレート12の先端部がイジェクタ本体部55の前端部に当接する。これにより、コイルバネ80の付勢力に抗して、イジェクタ52が後方に押込まれる。タングプレート12がバックル本体20内の所定位置まで挿入された状態で、イジェクタ52は、フック部材60が該タングプレート12に係合するのを許容する係合許容位置に移動している。
【0047】
フック部材60は、例えば厚板状金属材を適宜打抜き・屈曲形成すること等により形成された部材であり、本体部61と、その本体部61の前方に連設された湾曲部65と、該湾曲部65の先端部に連設されたフック部66とを備えている。
【0048】
本体部61は、両側板部35間に配設可能な板状部材に形成され、その後部に左右一対の揺動軸部62が突出形成されている。そして、フック部材60を両側板部35間に配設して、一対の揺動軸部62を一対の揺動支持部37にそれぞれ回動自在に嵌入することで、フック部材60が一対の揺動軸部62周りに揺動自在に支持されることとなる。
【0049】
この本体部61の後端部の幅方向略中央部には、バネ連結部63が立設されると共に、本体部61の後端縁部の両側部に上記フック押動部58と当接可能なフック被押動部64が垂設されている。
【0050】
バネ連結部63は、本体部61に立設されたバネ連結支持片63aと該バネ連結支持片63aの上端部の前面に突設されたバネ支持突部63bとを有している。そして、コイルバネ82の一端部を前記バネ支持突部63bに外嵌めすることで、該コイルバネ82の一端部が所定位置かつ所定姿勢に支持される。また、バネ支持突部63bの一端部は、斜め前上を指向している。これにより、コイルバネ82の一端部が、斜め前上に傾いた姿勢で支持されており、後に詳述するように、ロックバー70を抑止姿勢に姿勢変更するように付勢する構成となっている。
【0051】
また、湾曲部65は、本体部61の前方から上方へ弧状に湾曲する形状に形成されている。フック部66は、該湾曲部の先端部から下方に向けて延設されており、そのフック部66の先端部は、本体部61の下面よりも下方に伸びている。
【0052】
このフック部材60は、後述する付勢力により、揺動軸部62周りにフック部66を上向き(係合解除位置の方向)に付勢されている。
【0053】
そして、上記イジェクタ52が前方の係合不許容位置にある状態では、フック部66の先端部はイジェクタ52の上面に当接しており、フック部材60は係合解除位置に位置している。
【0054】
この状態から、フック部66の先端部をイジェクタ52の上面に摺接させつつ、イジェクタ52を係合不許容位置から後方の係合許容位置に向けて移動させて、イジェクタ52をフック部66よりも後方に位置させると、フック部66の下方への移動が許容される状態となる。そして、後述する付勢力により、又は、さらに後方に押込まれたイジェクタ52のフック押動部58がフック被押動部64に当接して押動することにより、フック部材60は、そのフック部66を下向きに移動させる方向に揺動し、係合位置に変位する。そして、タングプレート12を、その係合孔14aをフック部66の下方に位置させるまで、十分に押込むと、フック部66は、下方に移動して係合孔14aに係合して、タングプレート12とバックル本体20とが結合する。
【0055】
コイルバネ82の付勢力により、フック部材60は係合解除位置に向けて付勢されている。また、イジェクタ52がコイルバネ80の付勢力により前方に向けて移動しようとすると、イジェクタ本体部55の先端部がフック部66の後面に摺接してフック部66を上方に持上げようとする。このため、イジェクタ52を前方に移動させようとする力は、フック部材60を係合解除位置に向けて付勢する力としても作用する。
【0056】
ロックバー70は、金属等により形成されており、扁平な長尺板形状に形成されている。なお、必ずしもロックバー70の長手方向全体に亘って扁平な形状を呈している必要はなく、各長孔36に挿通保持される部分であるロックバー70の両端部が扁平な形状に形成されていればよい。
【0057】
このロックバー70は、このロックバー70の両端部は、それぞれ各長孔36にその長手方向に沿って移動自在に挿通保持されており、ロックバー70全体も長孔36の長手方向、即ち、前後方向に沿って移動自在とされている。
【0058】
ロックバー70が最も前方に移動した係合保持位置では、ロックバー70は、湾曲部65の上方に配設される。そして、フック部材60が上記係合位置に揺動した状態で、該湾曲部65の上部に当接し、フック部材60がタングプレート12に係合する状態を保持するようになっている。
【0059】
また、ロックバー70が各長孔36に沿って最も後方に移動した係合保持解除位置では、ロックバー70は湾曲部65よりも後方に配設される。そして、フック部材60が係合位置から係合解除位置に変位するのを妨げないようになっている。
【0060】
また、図5に示すように、このロックバー70は、係合保持位置において、抑止姿勢(図5の2点鎖線参照)と非抑止姿勢(図5の実線参照)との間で姿勢変更自在とされている。
【0061】
非抑止姿勢では、ロックバー70は係合保持位置から係合保持解除位置へ移動するのを抑止されない。すなわち、ロックバー70の両端部の扁平方向を各長孔36の長手方向に沿わせた姿勢が、非抑止姿勢とされている。
【0062】
また、抑止姿勢では、ロックバー70は前記抑止部39に移動して係合することで係合保持位置から係合保持解除位置への移動を抑制される。本実施の形態では、ロックバー70の各端部の周縁部のうち後側の側縁部を各抑止部39に係合させるように、即ち、ロックバー70の後側の側縁部を上方に持上げるように、ロックバー70を傾かせた姿勢が抑止姿勢とされている。
【0063】
この抑止姿勢では、ロックバー70の各端部の上面が抑止部39の受面39aに当接すると共に、それら各端部の後側側縁部は係合面39bとの間に若干の間隙を形成して係合面39bに対向するようにして配設されている。そして、該姿勢で、ロックバー70が後方へ移動すると、ロックバー70の各端部の後側の側縁部が係合面39bに係合し、後方への移動が抑止されるようになっている。
【0064】
図1〜図4に戻って、ロックバー70の両端部は、両側板部35の外側に突出している。
【0065】
また、ロックバー70の幅方向中央部に、上記バネ連結部63に対向するようにして細長板状のバネ連結部72が突出形成されている。
【0066】
そして、付勢部材としてのコイルバネ82の他端部が該バネ連結部72に外嵌め固着される。このコイルバネ82は、コイルバネ82がロックバー70のバネ連結部72とフック部材60側のバネ連結部63との間に圧縮状態で介在する。コイルバネ82は、ロックバー70を前方の係合保持位置に向けて付勢する。ロックバー70が係合保持解除位置において前方に向けて付勢されると、該ロックバー70が湾曲部65の外周側湾曲面の後部に圧接され、湾曲部65が下方に向けて付勢され、即ち、係合解除位置においてフック部材60が係合位置に向けて付勢されることとなる。
【0067】
この際、上述したように、バネ連結部63側では、コイルバネ82の一端部は、斜め前上に傾いた姿勢で支持されている。従って、コイルバネ82はその中間部を上方に湾曲させる姿勢で、バネ連結部72とバネ連結部63との間に介在することとなる(図3及び図4参照)。これにより、ロックバー70は、その後側部分を上方に持上げるように付勢され、即ち、抑止姿勢に姿勢変更するように付勢される。つまり、コイルバネ82は、ロックバー70を抑止姿勢に姿勢変更するように付勢する付勢手段としても機能する。なお、コイルバネ82がロックバー70を抑止姿勢に姿勢変更するように付勢する態様は、上記のものに限られない。
【0068】
レリースボタン90は、上記ロックバー70を係合保持位置から係合保持解除位置に向けて移動させる。
【0069】
具体的には、レリースボタン90は、樹脂等により形成されており、操作部91と、一対のガイド側板部92と、ガイド側板部92を所定間隔寸法に連結支持するための枠部94と、操作部91の後面に突出形成されて一対のボタン押動部57に当接可能な一対のボタン被押動部96とを備えている。
【0070】
操作部91は、略方形板状に形成されており、上記一対の側板部35の前方に配設されて操作者の手指等により、押込み操作可能とされている。
【0071】
一対のガイド側板部92は、上記操作部91の両端部にその後方に向けて延出するように一体形成された長尺状の部材であり、それぞれ各側板部35の外側面に摺接しながら各長孔36の長手方向に沿って移動自在とされている。
【0072】
このレリースボタン90は、一対のガイド側板部92を各側板部35の外面側に配設すると共に、操作部91を基体30の前方に配設するようにして、基体30に組込まれる。そして、操作部91の前後移動に伴って、各ガイド側板部92が各側板部35の外側面に沿って前後移動することとなる。
【0073】
なお、このレリースボタン90の後方への移動は、操作者が手指等で操作部91を押込むことにより行われる。また、レリースボタン90の前方への移動は、タングプレートの解離時には、イジェクタ52が前方の係合不許容位置に移動する際に、その一対のボタン押動部57が一対のボタン被押動部96に当接することにより行われる。なお、タングプレート12が挿入された係合状態のときは、係合保持位置に移動したロックバー70が後述するロックバー当接凹部98に当接して、レリースボタン90を前方へ付勢している。
【0074】
このレリースボタン90には、ロックバー70を非抑止姿勢に姿勢変更させる姿勢変更手段が設けられる。
【0075】
本実施の形態では、図6に示すように、ガイド側板部92に姿勢変更手段を設けている。
【0076】
具体的には、各ガイド側板部92の後端部内面であって各側板部35の外面側に突出するロックバー70の両端部の高さ位置に、レリースボタン90の押込み方向に沿って延びるガイド凹溝部93がそれぞれ形成されている。
【0077】
各ガイド凹溝部93は、ロックバー70の各端部の上面又は下面に摺接可能な上下のガイド壁部97と、ロックバー70の各端部に当接可能なロックバー当接凹部98と、ロックバー70の両端部を姿勢変更可能な姿勢変更ガイド面99とを備えている。
【0078】
ロックバー当接凹部98は、ロックバー70の両端部の厚み寸法と実質的に同じ開口幅寸法(図6の上下幅寸法)の凹状に形成されており、その前側端部がロックバー70の両端部の前側の側縁部に当接可能なロックバー当接面98aに形成されている。そして、ロックバー70の各端部がロックバー当接凹部98内に収容されると、その扁平方向を各長孔36の長手方向に沿わせた姿勢、即ち、非抑止姿勢に保持されることとなる(図6の実線参照)。また、この状態では、ロックバー70の両端部の前側の側縁部がロックバー当接面98aに当接している。そして、レリースボタン90の押込みに伴って、ロックバー70の両端部が後方に向けて押込まれる。これにより、ロックバー70は、非抑止姿勢を維持したまま、後方の係合保持解除位置に向けて移動することとなる。
【0079】
また、姿勢変更ガイド面99は、ロックバー当接凹部98の上面後端からその後方に向けて上向き傾斜するように形成されている。そして、レリースボタン90の非押込み状態では、ロックバー70は傾いた抑止姿勢となっており、姿勢変更ガイド面99とロックバー70の各端部の上面とが非接触或は該ロックバー70を姿勢変更させない程度に僅かに接触する状態となっている。この状態から、レリースボタン90を押込むと、まず、姿勢変更ガイド面99がロックバー70の各端部の上面に圧接される。そして、レリースボタン90をさらに奥に押込むと、ロックバー70の各端部がロックバー当接凹部98に収容配置されてロックバー当接面98aに当接するよりも手前の位置で、姿勢変更ガイド面99がロックバー70の各端部の上面を下方に向けて押圧する。これにより、ロックバー70の各端部の後側測縁部が抑止部39の係合面39bに接することなく、ロックバー70の各端部がその扁平方向を各長孔36の長手方向に沿って配設した姿勢に姿勢変更され、従って、ロックバー70全体も非抑止姿勢に姿勢変更されることとなる。
【0080】
以上のように構成されたバックル装置10について、まず、バックル本体20とタングプレート12との基本的な離脱動作について図7〜図11を参照して説明する。なお、図7〜図11において、説明の便宜上、かくれ線を実線で描いている。
【0081】
まず、バックル本体20とタングプレート12とが係合した状態では、図7に示すように、タングプレート12が基体30の後方に押込まれ、イジェクタ52が後方の係合許容位置に、フック部材60がそのフック部66をタングプレート12の係合孔14aに係合させた係合位置に、ロックバー70が前方の係合保持位置に、それぞれ移動している。
【0082】
この状態で、操作者が手指等で操作部91を押動して(図8の矢符R参照)、レリースボタン90を基体30に対して後方に押込むと、図8に示すように、ロックバー70の両端部がレリースボタン90の各ガイド凹溝部93内に配設され、ロックバー当接面98aがロックバー70の両端部の前側の側縁部に当接する。そして、レリースボタン90をさらに押込むと、図9に示すように、コイルバネ82の付勢力に抗して、ロックバー70が係合保持位置から後方の係合保持解除位置に向けて移動する。
【0083】
図10に示すように、ロックバー70が後方の係合保持解除位置に移動するまで、レリースボタン90を後方に押込むと、コイルバネ82の付勢力により、フック部材60が係合解除位置に向けて揺動する。これにより、フック部材60とタングプレート12との係合状態が解離される。また、これと同時に、コイルバネ80の付勢力により、イジェクタ52が前方の係合不許容位置に向けてその途中まで移動する。このイジェクタ52により、タングプレート12がバックル本体20の前方に向けて押出される。なお、フック部66は下方に向けて若干前向きに傾斜しているので、イジェクタ52を前方に向けて付勢する力は、フック部66と係合孔14aとの係合状態を解離させようとする力、即ち、フック部材60を係合解除位置に向けて移動させようとする力としても作用している。
【0084】
そして、レリースボタン90を押込む力を完全に取去ると、図11に示すように、イジェクタ52がさらに前方に係合不許容位置に向けて移動する。この際、イジェクタ52の一対のボタン押動部57が、レリースボタン90の一対のボタン被押動部96に当接し、該レリースボタン90を前方に向けて移動させる。
【0085】
これらの一連の動作により、解離動作が終了する。
【0086】
なお、バックル本体20とタングプレート12との係合動作は、上記と逆の動作である。
【0087】
即ち、タングプレート12をバックル本体20に挿入すると、タングプレート12の先端部がイジェクタ52の前端部に当接する(図11参照)。タングプレート12をさらに奥に押込むと、コイルバネ80の付勢力に抗して、イジェクタ52が後方に押込まれ、後方の係合許容位置に移動する。
【0088】
すると、ロックバー70を介したコイルバネ82の付勢力又はフック押動部58がフック被押動部64に当接して押動することにより、フック部材60が係合位置に揺動して、フック部66が下方に移動し、タング部14の係合孔14aに係合する(図9参照)。
【0089】
また、これに伴い、コイルバネ82の付勢力によってロックバー70が係合保持位置に移動し、フック部66が係合解除位置に揺動することを阻止し、即ち、フック部66が係合孔14aに係合する状態を保持する(図9参照)。また、このようにロックバー70が係合保持位置に移動すると、コイルバネ82の付勢力により、ロックバー70は非抑止姿勢から抑止姿勢に姿勢変更する。
【0090】
これにより、バックル本体20とタングプレート12との係合動作が終了する。
【0091】
上述した一連の解離動作におけるロックバー70の挙動を、図12〜図16を参照して詳述する。なお、図12〜図16においても、説明の便宜上、かくれ線を実線で描いている。
【0092】
まず、バックル本体20とタングプレート12とが係合した当初の状態においては、図12に示すように、コイルバネ82の付勢力によって、ロックバー70が抑止姿勢に姿勢変更された状態、即ち、ロックバー70の両端部が、その後側の側縁部を若干上方に持上げるように傾けて、該後側の側縁部を抑止部39の係合面39bに対向させた姿勢とされている。
【0093】
そして、レリースボタン90が押込まれると、図13に示すように、まず、レリースボタン90の各姿勢変更ガイド面99がロックバー70の両端部の上面に摺接され、ロックバー70の各端部の後側の側縁部が下方に向けて押圧される(図13の矢符P1参照、図14の矢符P2参照)。
【0094】
そして、さらにレリースボタン90が押込まれ、ロックバー70の各端部の後側測縁部が抑止部39の係合面39bに接しないで、ロックバー70の両端部がロックバー当接凹部98内に収容された状態では、図14に示すように、ロックバー70の各端部は、その扁平方向を各長孔36の長手方向に沿わせた姿勢に配設される。即ち、ロックバー70は、非抑止姿勢に姿勢変更される。この状態では、ロックバー70の各端部の前側の側縁部は、各ロックバー当接凹部98のロックバー当接面98aに当接する。
【0095】
さらに奥にレリースボタン90が押込まれると、図15に示すように、ロックバー70は、非抑止姿勢を維持したまま、後方の係合保持解除位置に移動することとなる(図15の矢符Q参照)。
【0096】
そして、レリースボタン90を押込む力を取去ると、図16に示すように、ロックバー70を非抑止姿勢で係合保持解除位置に残留させたまま、レリースボタン90が上述したように前方へ移動する(図16の矢符R参照)。
【0097】
次に、このバックル装置10に大きな加速力が加わった場合の動作について説明する。
【0098】
図17及び図18は、リトラクタ側のプリテンショナー装置が動作してタングプレート12側のウエビングが急激に引張れられた場合、即ち、バックル本体20に対してその前方へ大きな加速力が加わった場合の動作を示している。図17及び図18においても、説明の便宜上、かくれ線を実線で描いている。
【0099】
まず、通常初期状態では、フック部材60はタングプレート12に係合しており、ロックバー70は抑止姿勢で係合保持位置に位置してフック部材60の係合状態を保持している(図17参照)。
【0100】
そして、プリテンショナー装置の動作により、バックル本体20に前方への大きな加速力が加わると、該バックル本体20は前方へ瞬時に移動するところ、ロックバー70に対してその反対方向である後方への慣性力が加わることとなる。この際、ロックバー70は上述した抑止姿勢を維持したまま抑止部39に係合するように慣性移動するので、図18に示すように、ロックバー70の両端部の後側側縁部が係合面39bに係合する。これにより、ロックバー70の後方への移動が抑止される。この時、レリースボタン90もロックバー70と同様に慣性移動して、レリースボタン90の姿勢変更ガイド面99がロックバー70を抑止姿勢から非抑止姿勢に回動させようとするが、前述したように、既にロックバー70の両端部の後側測縁部が係合面39bに係合しているため、ロックバー70は非抑止姿勢に姿勢変更されることが無い(図18参照)。従って、フック部材60の係合解除位置への揺動も抑止され、バックル本体20とタングプレート12との係合離脱を防止することができる。
【0101】
なお、バックル本体20側にプリテンショナー装置が組込まれている場合に、該プリテンショナー装置が動作した場合には、バックル本体20に後方への大きな加速力が加わった後に、該バックル本体20を停止させる力が加わることとなる。バックル本体20に後方への大きな加速力が加わった際には、ロックバー70に対して前方への慣性力が加わることとなるから、勿論、ロックバー70の後方への移動は抑止される。また、バックル本体20の停止時において、ロックバー70に対して後方への慣性力が加わっても、上記と同様の動作によって、ロックバー70に対して後方への移動が抑止され、バックル本体20とタングプレート12との係合離脱を防止することができる。
【0102】
以上のように構成されたバックル装置によると、タングプレート12をバックル本体20に挿入係合させた状態で、ロックバー70が抑止姿勢付勢手段であるコイルバネ82の付勢力により抑止姿勢に姿勢変更し、抑止部39に係合可能な状態となっている。この状態では、ロックバー70の係合保持解除位置への慣性力による移動が防止されている。従って、移動防止のための慣性体を設けることなく、バックル本体20に大きな加速力が加わった際におけるタングプレート12の離脱を防止できる。
【0103】
しかも、バックル本体20が急激に前方へ引張られた場合でも後方へ引張られた場合でも、ロックバー70は確実に抑止部39に係合可能な状態となっているので、プリテンショナー装置がバックル側に設けられた場合でもリトラクタ側(アンカー側に設けられた場合も含む)に設けられた場合にも対応できる。
【0104】
一方、通常の離脱操作時においては、レリースボタン90の姿勢変更ガイド面99により、ロックバー70の各端部の後側測縁部が抑止部39の係合面39bに接する前に、ロックバー70が非抑止姿勢に姿勢変更されるため、ロックバー70は係合保持解除位置に移動するので、何ら支障無くタングプレート12はバックル本体20から離脱する。また、レリースボタン90に姿勢変更ガイド面99が形成されているので、別部材を設けることなく、構成の簡易化を図ることができる。しかも、各ガイド側板部92の内面に姿勢変更ガイド面99が設けられているので、該姿勢変更ガイド面99がフック部材60やイジェクタ52等と係わる構成を採用することなく、簡易な構成とすることができる。
【0105】
しかも、通常の解離動作時においては、ロックバー70の両端部が抑止部39の係合面39bに当接する前に、姿勢変更ガイド面99によりロックバー70が非抑止姿勢に姿勢変更するようにしているので、ロックバー70が抑止部39に干渉することなく、円滑な解離動作がなされる。
【0106】
特に、ロックバー70の両端部を扁平な形状に形成すると共に、各長孔36の切欠状の抑止部39を形成すればよいので、この点においても、部品点数を少なくして、構成の簡易化を図ることができる。従って、組立が容易で、組立作業効率もよい。
【0107】
なお、通常の解離動作時において、ロックバー70の両端部が抑止部39に干渉することなく円滑に各長孔36の係合保持位置から係合解除位置に向けて移動できるように、図19に示すように、後方に向けて(係合保持位置から係合解除位置に向けて)順次幅広となる長孔36Dに形成してもよい。
【0108】
しかも、コイルバネ82を、ロックバー70を係合保持位置に向けて付勢する手段としても、ロックバー70を抑止姿勢に付勢する手段としても機能させているので、それらの付勢部材が共用化され、より構成が簡易となる。
【0109】
なお、本実施の形態では、抑止姿勢付勢手段として、コイルバネ82を用いているが、これに加えて、又は、代えて、次に説明する第1及び第2変形例に係る構成を採用してもよい。
【0110】
まず、図20(a)〜図20(c)に示す第1変形例では、各長孔36の両端部のうち係合保持位置側の端部に支軸突部36aが形成されている。支軸突部36aは、抑止部39が形成された側とは反対側の位置に形成されている。より具体的には、支軸突部36aは、ロックバー70を前方に付勢する力の作用線を中心にして、抑止部39が形成された側とは反対側に形成されている。そして、ロックバー70がコイルバネ82により係合保持位置側に向けて付勢されると、ロックバー70の両端側の前側側縁部の下部が支軸突部36aに当接する。これにより、ロックバー70は、該当接部分を中心にしてその後側部分を上方に持上げるようにして回動し、上述の抑止姿勢に姿勢変更するようになっている。
【0111】
この第1変形例では、各長孔36に支軸突部36aを形成するという簡易な構成で、ロックバー70を抑止姿勢に姿勢変更させることができる。
【0112】
また、図21(a)〜図21(d)に示す第2変形例では、各長孔36の両端部のうち係合保持位置側の端部に姿勢変更ガイド部36bが形成されている。姿勢変更ガイド部36bは、ロックバー70の各端部の前側の側縁部を受入れ可能な形状で、かつ、前方に向けて下向き(抑止部39が形成された側とは反対側)に傾斜する形状とされている。そして、コイルバネ82により、該ロックバー70が前方に向けて付勢されると、ロックバー70の各端部の前側の側縁部が姿勢変更ガイド部36bに受入れられて、上述の抑止姿勢に姿勢変更されるようになっている。
【0113】
この第2変形例では、各長孔36に姿勢変更ガイド部36bを形成するという簡易な構成で、ロックバー70を抑止姿勢に姿勢変更することができる。
【0114】
また、ロックバー70が抑止部39に係合する態様は、上記実施の形態において説明したものに限られない。
【0115】
例えば、図22及び図23に示す第3変形例のバックル装置10Bのバックル本体20Bでは、基体30Bの側板部35Bに形成された各長孔36の両側側縁部のうち、ロックバー70とフック部材60とが当接する側の側縁部に、抑止部39Bを切欠形成している。また、ロックバー70は、フック部材60の係合状態を保持する係合保持位置において、略水平姿勢の非抑止姿勢とその後側側縁部を後方に下げた非抑止姿勢(図23参照)との間で姿勢変更自在とされており、前記非抑止姿勢で抑止部39Bに係合可能な状態となる。
【0116】
また、フック部材60の後部に立設されたバネ連結支持片63Baに突設されたバネ支持突部63Bbの一端部は、少なくとも係合位置において斜め下前方を指向しており、これによりコイルバネ82Bの一端部が斜め前下に傾いた姿勢で支持されるようになっている。そして、このコイルバネ82Bがバネ支持突部63Bbとロックバー70との間に介在し、該コイルバネ82Bが、ロックバー70を前方に付勢すると共に、ロックバー70が前方の係合保持位置に移動した状態で、該ロックバー70の後方を押下げ付勢し、抑止姿勢に姿勢変更するように付勢する構成となっている(図23参照)。なお、上記実施の形態における姿勢変更ガイド面99も、上記抑止部39Bに対応させてそれを非抑止姿勢に姿勢変更可能な位置に形成する。
【0117】
この第3変形例のバックル装置でも、上記実施の形態の場合と同様の動作により、同様の作用効果を得ることができる。
【0118】
また、本実施の形態、第1及び第2変形例において、フック部材60の湾曲部65がロックバー70の後側部分に当接するようにし、また、第3変形例においては、フック部材60の湾曲部65がロックバー70の前側部分に当接するようにするとよい。この場合、タングプレート12が引張られることにより、フック部材60のフック部66を上方に持上げる力が加わると、ロックバー70の後側部分又は前側部分が上方に付勢され、より確実に上記抑止姿勢が維持される。従って、より確実に、バックル本体20からのタングプレート12の離脱を防止することができる。
【0119】
【発明の効果】
以上のように、この発明の請求項1〜請求項9記載のバックル装置によると、タングプレートをバックル本体に挿入係合させた状態で、ロックバーが抑止姿勢付勢手段の付勢力により抑止姿勢に姿勢変更し、抑止部に係合可能な状態となっている。この状態では、ロックバーの係合保持解除位置への慣性移動が防止されている。従って、慣性体を設けることなく、バックル本体に大きな加速力が加わった際におけるタングプレートの離脱を防止できる。
【0120】
一方、通常の離脱操作時においては、レリースボタンの姿勢変更手段により、ロックバーが抑止部に接することなく非抑止姿勢に姿勢変更されるため、ロックバーは係合保持解除位置に移動し、何ら支障無くタングプレートはバックル本体から離脱する。
【0121】
また、請求項2記載のように、前記ロックバーが、前記係合保持位置にあってかつ前記抑止姿勢付勢手段により前記抑止姿勢にあるとき、前記基体に設けられた前記抑止部は、前記ロックバーが前記レリースボタンの姿勢変更手段により姿勢変更するための間隔を隔てて前記ロックバーに対向して配置されていると、通常の解離動作時においては、ロックバーが抑止部と干渉することなく、円滑に非抑止姿勢に変更する。
【0122】
また、請求項3記載のバックル装置によれば、ロックバーの両端部を扁平な形状に形成すると共に、各長孔に切欠部を形成すればよいので、構成の簡易化を図ることができる。
【0123】
さらに、請求項4記載のバックル装置にあっては、コイルバネが、ロックバーを係合保持位置に向けて付勢すると共に、ロックバーを抑止姿勢に付勢しているので、各付勢部材が共用化され、構成が簡易となる。
【0124】
また、請求項5記載のバックル装置によれば、各長孔に支軸突部を形成するという簡易な構成で、ロックバーを抑止姿勢に姿勢変更させることができる。
【0125】
また、請求項6記載のバックル装置によれば、各長孔に姿勢変更ガイド部を形成するという簡易な構成で、ロックバーを抑止姿勢に姿勢変更することができる。
【0126】
また、請求項7記載の発明によれば、レリースボタンの各ガイド凹部の姿勢変更ガイド面により、ロックバーを非抑止姿勢に姿勢変更させるようにしているので、その構成が簡易である。
【0127】
また、請求項8記載の発明によれば、各ロックバー当接部がロックバーの各端部に当接するよりも手前の位置で、姿勢変更ガイド面がロックバーを非抑止姿勢に姿勢変更することとなるので、通常時においては、タングプレートの離脱動作が円滑に行われる。
【0128】
さらに、請求項9記載の発明によれば、前記切欠部が、各長孔の両側側縁部のうち、ロックバーとフック部材とが当接する側の側縁部に形成されているため、通常時において、フック部材が該ロックバーに当接する方向に強く付勢された場合であっても、ロックバーと切欠部とが干渉し難く、タングプレートの離脱動作が円滑に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係るバックル装置を示す分解斜視図である。
【図2】同上のバックル装置の一部切欠斜視図である。
【図3】バックル本体(タングプレートが係合した状態)を示す断面図である。
【図4】バックル本体(タングプレートが離脱した状態)を示す断面図である。
【図5】抑止部とロックバーとを示す要部拡大図である。
【図6】ガイド凹溝部93とロックバーとを示す要部拡大図である。
【図7】バックル本体とタングプレートとの通常の離脱動作を説明するための図である。
【図8】同上の解離動作を説明するための他の図である。
【図9】同上の解離動作を説明するためのさらに他の図である。
【図10】同上の解離動作を説明するためのさらに他の図である。
【図11】同上の解離動作を説明するためのさらに他の図である。
【図12】同上の解離動作におけるロックバーの挙動を説明するための図である。
【図13】同上の解離動作におけるロックバーの挙動を説明するための他の図である。
【図14】同上の解離動作におけるロックバーの挙動を説明するためのさらに他の図である。
【図15】同上の解離動作におけるロックバーの挙動を説明するためのさらに他の図である。
【図16】同上の解離動作におけるロックバーの挙動を説明するためのさらに他の図である。
【図17】バックル本体に急激な力が加わった際におけるロックバーの挙動を説明するための図である。
【図18】バックル本体に急激な力が加わった際におけるロックバーの挙動を説明するための他の図である。
【図19】長孔の変形例を示す図である。
【図20】第1変形例に係る長孔を示す要部拡大側面図である。
【図21】第2変形例に係る長孔を示す要部拡大側面図である。
【図22】第3変形例に係るバックル本体(タングプレートが離脱した状態)を示す断面図である。
【図23】第3変形例に係るバックル本体(タングプレートが係合した状態)を示す断面図である。
【符号の説明】
10,10B バックル装置
12 タングプレート
20,20B バックル本体
30,30B 基体
31 基板部
35,35B 側板部
36 長孔
37 揺動支持部
39 抑止部
52 イジェクタ
60 フック部材
62 揺動軸部
63 バネ連結部
66 フック部
70 ロックバー
72 バネ連結部
80,82,82B コイルバネ
90 レリースボタン
92 ガイド側板部
93 ガイド凹溝部
97 ガイド壁部
98 ロックバー当接凹部
98a ロックバー当接面
99 姿勢変更ガイド面

Claims (9)

  1. タングプレートと、前記タングプレートが挿脱されるバックル本体とを備えたバックル装置であって、
    前記バックル本体は、
    基板部とこの基板部の両側部に立設された一対の側板部を有し前記両側板部間に前記タングプレートが挿脱自在とされると共に前記両側板部に前記タングプレートの挿脱方向に沿って長孔が形成された基体と、
    前記両側板部間に挿入されたタングプレートに係合可能な係合位置と前記タングプレートとの係合を解除可能な係合解除位置との間で揺動自在に配設され、前記タングプレートの挿入により前記係合位置に揺動して前記タングプレートに係合すると共に、前記係合解除位置に向けて常時付勢されるフック部材と、
    前記各長孔にその長手方向に沿って移動自在に挿通保持された両端部を有する長尺形状に形成され、前記係合位置に揺動した前記フック部材に当接して前記フック部材が前記タングプレートに係合する状態を保持する係合保持位置と、前記フック部材が前記係合位置から前記係合解除位置に揺動するのを許容する係合保持解除位置との間で移動自在に配設されると共に、前記係合保持位置に向けて常時付勢されるロックバーと、
    前記ロックバーを前記係合保持位置から前記係合保持解除位置に向けて移動させるレリースボタンと、
    を備え、
    前記基体に前記ロックバーが前記係合保持位置から前記係合保持解除位置に向けて移動するとき前記ロックバーと係合可能な抑止部が設けられ、
    前記係合保持位置において、前記ロックバーが、前記係合保持解除位置への移動を抑止される抑止姿勢と前記係合保持解除位置への移動を抑止されない非抑止姿勢との間で姿勢変更自在とされ、
    前記係合保持位置において前記ロックバーを前記抑止姿勢に姿勢変更するように付勢する抑止姿勢付勢手段をさらに備え、
    前記レリースボタンに、前記ロックバーを前記係合保持位置から前記係合保持解除位置に向けて移動させるときに、前記抑止姿勢付勢手段の付勢力に抗して前記ロックバーを前記非抑止姿勢に姿勢変更させる姿勢変更手段が設けられた、バックル装置。
  2. 請求項1記載のバックル装置であって、
    前記ロックバーが、前記係合保持位置にあってかつ前記抑止姿勢付勢手段により前記抑止姿勢にあるとき、前記基体に設けられた前記抑止部は、前記ロックバーが前記レリースボタンの姿勢変更手段により姿勢変更するための間隔を隔てて前記ロックバーに対向して配置されているバックル装置。
  3. 請求項1又は請求項2記載のバックル装置であって、
    前記ロックバーは、扁平形状の両端部を有し、
    前記抑止部は、前記各長孔の一方側側縁部に形成された切欠部であり、
    前記係合保持位置において、前記ロックバーは、その各端部の扁平方向を前記各長孔の長手方向に沿わせた非抑止姿勢から、その各端部の周縁部のうち前記タングプレートの挿入方向側の一方側側縁部を前記切欠部に係合させるように傾動させて抑止姿勢に姿勢変更する、バックル装置。
  4. 請求項3記載のバックル装置であって、
    前記フック部材と前記ロックバーとの間に介在してコイルバネが設けられ、該コイルバネが前記ロックバーを前記係合保持位置に向けて常時付勢する手段であると共に、前記抑止姿勢付勢手段である、バックル装置。
  5. 請求項3又は請求項4記載のバックル装置であって、
    前記抑止姿勢付勢手段は、
    前記ロックバーを前記係合保持位置に向けて常時付勢するロックバー付勢手段と、
    前記各長孔の両端部のうち前記係合保持位置側の端部に形成された支軸突部とを有し、
    前記ロックバーが前記係合保持位置に向けて付勢されると、前記ロックバーの各端部の他方側側縁部が前記各支軸突部に当接すると共に、その当接部分を中心として前記ロックバーが回動して前記抑止姿勢に姿勢変更する、バックル装置。
  6. 請求項3又は請求項4記載のバックル装置であって、
    前記抑止姿勢付勢手段は、
    前記ロックバーを前記係合保持位置に向けて常時付勢するロックバー付勢手段と、
    前記各長孔の両端部のうち前記係合保持位置側の端部に形成された姿勢変更ガイド部とを有し、
    前記ロックバーが前記係合保持位置に向けて付勢されると、前記ロックバーの各端部が前記姿勢変更ガイド部に受入れられて、前記ロックバーが前記抑止姿勢に姿勢変更する、バックル装置。
  7. 請求項3〜請求項6のいずれかに記載のバックル装置であって、
    前記レリースボタンは、
    押込み操作される押動操作部と、
    前記押動操作部より一体形成され、前記各側板部の外側面で前記各長孔の長手方向に沿って移動自在な一対のガイド側板部と、
    を有し、
    前記各ガイド側板部に、前記各側板部の外面側に突出する前記ロックバーの両端部に当接可能なロックバー当接部と、前記ロックバーの両端部をその扁平方向を前記各長孔の長手方向に沿わせるようにガイドする姿勢変更ガイド面とを有するガイド凹部が形成され、
    前記姿勢変更手段は、前記姿勢変更ガイド面である、バックル装置。
  8. 請求項7記載のバックル装置であって、
    前記レリースボタンの押込み操作により、前記各ロックバー当接部が前記ロックバーの各端部に当接するよりも手前の位置で、前記姿勢変更ガイド面は前記ロックバーの両端部をその扁平方向を前記各長孔の長手方向に沿わせるようにガイドする、バックル装置。
  9. 請求項3〜請求項8のいずれかに記載のバックル装置であって、
    前記切欠部は、前記各長孔の両側側縁部のうち、前記ロックバーと前記フック部材とが当接する側の側縁部に形成された、バックル装置。
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