JP3865941B2 - 気中不純物監視装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、液晶や半導体素子等を製造する電子工業、原子力発電所、医薬品製造工場等で利用されるクリーンルーム雰囲気中の不純物濃度を監視するのに適した気中不純物監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液晶や半導体集積回路素子(LSI)産業等においては、微粒子によるパターン欠陥の発生や、重金属汚染に起因する結晶欠陥の発生等を防止するために、製造工程で使用される化学薬品や洗浄に使用される純水中の不純物濃度の抑制、製造環境であるクリーンルームでの微粒子の発生防止など種々の対策が講じられてきた。
【0003】
しかしながら、近年、液晶およびLSIの微細化の進展や集積度の向上に伴い、これらデバイスの製造工程においては、クリーンルーム雰囲気中に存在する極微量の不純物によるシリコンウェーハやガラス基板等への汚染の影響が大きな問題となっており、従来以上の清浄度が要求されている。
【0004】
一般に、クリーンルーム雰囲気中の不純物は、ガス状、粒子状、ミスト状等の形態をとっており、製造環境の雰囲気中におけるこうした不純物が液晶ガラス基板や半導体基板に付着すると、液晶や半導体素子の歩留まりや信頼性を低下させることから、製造環境の雰囲気中における不純物を極低濃度に制御し、維持管理する必要性が高まっている。
【0005】
例えば、ゲート長が0.25μm程度のMOSトランジスタを集積したULSIの場合、ゲート酸化膜は60〜70オングストローム程度まで薄膜化されており、微小なリーク電流の増加、ゲート酸化膜の欠陥の生成あるいは信頼性の低下は微粒子ばかりではなく不純物種によっては1ng/m3 〜1μg/m3 の極微量の雰囲気中の不純物により影響を受ける。また、化学増殖型フォトレジストを使用する場合雰囲気中の陰イオンやアンモニウムイオンが寸法精度の低下をもたらすことも知られており、このような陰イオンやアンモニウムイオンもまた液晶や半導体素子の特性不良による歩留まりの低下や信頼性低下の原因となっている。 従来から、クリーンルームの雰囲気内に存在する微粒子濃度を測定する方法としては、クリーンルーム内の雰囲気をフィルタで濾過し、フィルタ上に捕捉された微粒子を電子顕微鏡により計数、あるいは計量することにより微粒子濃度を測定する方法が用いられている。また、製造環境の雰囲気中に含まれる微粒子にレーザを照射し、そのときに発生する散乱光を検知して浮遊微粒子の粒子径と個数を測定する方法も使用されている。そして、このような微粒子濃度の測定に用いられる測定装置は連続監視計器として数多く使用されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法および測定装置で検出可能な微粒子の粒径は、現在のところ0.05μm程度が限界であり、これより微細な微粒子を検出することは不可能であった。
【0007】
また、クリーンルーム内の不純物として、水溶性の微粒子や金属イオン、アニオン、有機物等の濃度を測定する方法としては、例えばクリーンルーム内の雰囲気を適当な超純水に通気させるインピンジャー法により不純物を超純水中に捕捉し、得られた溶液中の不純物濃度を原子吸光光度法やイオンクロマトグラフィー等の化学分析により測定する方法が用いられている。
【0008】
しかしながら、インピンジャー法と化学分析により不純物を測定する方法では精度と分析値の信頼性を維持する必要から、熟練した人が1日程度の時間をかけて分析作業を行わなければならなかった。
【0009】
すなわち、液晶や半導体素子等の製造現場において、上記従来の不純物濃度の測定装置および方法によりクリーンルーム雰囲気中の管理を実施した場合には、クリーンルーム雰囲気中に異常が発生したことが判明するまで1日程要することとなる。そのため、クリーンルーム雰囲気中の異常が判明するまでの間にも基板等は処理されてしまい、後から分析結果に異常があったことが判明しても、既に多数の製品が異常な環境の下で処理されてしまっていた。
【0010】
さらに、クリーンルーム雰囲気中で異常が発生した時点から、異常が判明するまでの時間が長いので、異常が判明した時点で既に異常の原因が解決している場合も多く、異常の原因を解明することは極めて困難であり、同じ原因に基づく異常の再発を防止するための対策を講ずることはほぼ不可能であった。
【0011】
すなわち、従来の方法では、検出可能な微粒子の粒径に限界があるばかりでなく、クリーンルームにおける雰囲気中の監視結果を液晶や半導体素子等の製造工程に反映させるには測定に要する時間が余りにも長いため、連続的に監視を行うことができず、クリーンルーム内の雰囲気が微粒子以外の不純物により汚染されていてもそれを検知できないまま作業が行われてしまい、不良品の発生を防止することが不可能であるという問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題を解消すべくなされたもので、クリーンルームのような清浄度を管理する必要のある区域の雰囲気中の微粒子や不純物の濃度を、自動的、迅速かつ連続して測定することが可能であると共に、取り扱いが簡便で低コストの気中不純物監視装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる気中不純物監視装置は、内部にほぼ直立した衝突壁を有する密閉可能な不純物捕捉容器と、前記不純物捕捉容器内の前記衝突壁に噴射口を向けて配設された圧縮純粋気体を噴射する圧縮純粋気体噴射管と、前記圧縮純粋気体噴射管の噴射口近傍の圧減圧領域にそれぞれ開口端を臨ませて配設された超純水導入管並びに試料雰囲気導入管と、前記不純物捕捉容器に設けたドレイン配管と、前記不純物捕捉容器の前記衝突壁近傍に開口させたミスト排出口と、前記ミスト排出口から排出されたミストを導入して急速乾燥させ、ミスト中の不純物を微粒子状に浮遊させてその濃度を測定する不純物濃度測定装置とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の気中不純物監視装置は、内部にほぼ直立した衝突壁を有する密閉可能な不純物捕捉容器を有している。この不純物捕捉容器の底部にはドレイン配管が配設され、衝突壁近傍にはミスト排出口が設けられている。ミスト排出口には管路を介して不純物濃度測定装置が接続されている。この不純物濃度測定装置は、ミストを導入して急速乾燥させ、ミスト中の不純物を微粒子状に浮遊させてその濃度を測定するものである。
【0015】
この気中不純物監視装置は次のように用いられる。
【0016】
まず、圧縮純粋気体噴射管から清浄な窒素ガスのような不活性ガスが噴射されると、これによって生じた減圧状態により、超純水導入管には超純水導入ラインを通じて設定量の超純水が導入されるとともに、クリーンルームに他端を開口させた試料雰囲気導入管には、試料雰囲気導入ラインを通じて設定量の試料雰囲気が導入される。このときの液/ガス比は、3〜7 l/m3 の範囲が適当である。 圧縮純粋気体噴射管から噴出される不活性ガス流は、導入された超純水と試料雰囲気とを瞬時に混合霧化して超純水中に試料雰囲気中の微粒子や不純ガスを取り込む。
【0017】
霧化した超純水微粒子を衝突板に衝突させて1μm以上の大きい超純水微粒子を衝突板に付着させ、液滴化することで排除し1μm未満の超純水微粒子がガス中を浮遊する状態を形成する。
【0018】
この過程で超純水の微粒子は雰囲気試料中の微粒子や不純ガスをさらに取り込む。このようにして試料雰囲気中の微粒子や不純ガスを取り込んだミストは、不純物捕捉容器のミスト排出口から排出され、不純物濃度測定装置の乾燥領域において急速乾燥され、ミスト中の不純物(不溶性の微粒子や微粒子以外の水溶性不純物(金属イオン、アニオンおよび有機物等))は、分散媒や溶媒である水の乾燥により微粒子状に気中に浮遊され、さらに核凝縮カウンター(CNC)中で微粒子が大径化されてその数が光学的に計測される。
【0019】
一方、衝突板に衝突し液滴化した超純水の一部は下方に配置されているドレインラインから排出される。不純物補捉容器に供給される超純水としては、例えば、比抵抗値が18MΩ・cm(25℃換算)以上と高く、その他の金属成分、イオン成分、有機成分、シリカ成分、などの不純物濃度が1ppb以下の高純度な超純水を用いる。
【0020】
不純物補捉容器やラインに使用される部品(配管,バルブ等)の材質には高純度石英、酸素バッジベ−ションを行ったステンレス、チタン、白金等強固で水に対しては不純物の溶出が少なくかつガス透過性のないものを用いることが好ましい。
【0021】
生成された試料水中の不純物濃度を測定する測定装置としては、例えばミストを急速乾燥させて試料水中に存在する不純物をエアロゾル状に浮遊させ、光学的に不純物濃度を測定する測定装置(例えば特公平6一63961に開示されている液中不純物測定装置)が使用される。
【0022】
出力装置は、測定装置の測定結果や測定結果に基づく補正結果を出力するだけでなく、例えば気中不純物監視装置の作動状況も出力させるものであることが好ましい。
【0023】
さらに、気中不純物監視装置の不純物補捉容器内に導入される超純水量と試料雰囲気量は、圧縮純粋気体の供給圧力とこれによって形成される減圧領域の圧力と超純水導入管の内径と長さと試料雰囲気導入管の内径と長さで決定されるため、これら条件を最適に所定することで測定条件の安定性を維持することが可能であるが、必要に応じて超純水導入管と試料雰囲気導入管のラインに流量調整バルブを入れることで微調整が可能となる。
【0024】
本発明においては、気中不純物の監視を自動で継続して行うことが可能であり、この場合には定常的な監視体制が実現される。
【0025】
本発明を用いて気中不純物の監視を行う場合には、測定結果と予め設定された基準値との比較が行われ、必要に応じて通常の化学分析も行われる。
【0026】
例えば、測定結果が予め設定された基準値より大きい場合に、確認のために再度、本発明の気中不純物監視方法を繰り返して測定結果と予め設定された基準値とを比較してもよいし、さらにドレインラインから排出される超純水を採取して、より高感度の分析にかけてもよい。
【0027】
また、測定結果が予め設定された基準値より大きい場合には、例えば警報により外部に警告するような構成も可能である。
【0028】
本発明の気中不純物監視装置により監視可能な不純物しては、クリーンルーム内の雰囲気中における金属成分、イオン成分、有機物等の微粒子や気体が例示される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。
【0030】
この実施例の気中不純物監視装置は、図1に示したように、密閉可能な不純物捕捉容器1を有している。この不純物捕捉容器1内には、ほぼ直立した衝突壁2が設けられており、この衝突壁2の対向する内壁に衝突壁2に先端を向けて圧縮窒素噴射口3が開口している。
【0031】
圧縮窒素噴射口3は図2に図1のA部を拡大して示すように圧縮窒素供給管4の端部に先端開放の大径の円筒状空室3aを設けた形状を有しており、その基部に超純水導入管5と試料雰囲気導入管6が互いに対向するようにその端部を開口させている。さらに、衝突壁2の近傍には上下に対向するようにミスト排出口7とドレイン配管8の端部が開口されている。
【0032】
圧縮窒素供給管4から圧縮窒素を噴射すると、図3に斜線で示す部分に減圧領域Lが形成され、超純水導入管5と試料雰囲気導入管6からそれぞれ超純水と試料雰囲気が吸引されて円筒状空室3a内に入り、ここで噴出する圧縮窒素により撹拌されてミストmとなり、衝突壁2に向け高速で送られる。
【0033】
なお、図示を省略したが、ミスト排出口7に続く管路には、乾燥カラム、拡散スクリーンを介して核凝縮カウンター(CNC)が接続されている。CNCは微粒子を過飽和アルコール蒸気中で大粒子に成長させ光散乱法で係数処理する装置である。係数結果は、プリンタやCRTあるいは磁気、光記録媒体に出力することもできる。
【0034】
この実施例における圧縮窒素供給管4の内径は約0.3mmであり、円筒状空室3aの内径は約1mmである。
【0035】
この実施例では、まず、不純物捕捉容器1や各ラインから不純物の混入がないように装置の各部が十分に洗浄され、予め不純物捕捉容器1の内部には不純物濃度の十分に低い窒素ガスが満たされる。
【0036】
そして、まず、超純水導入管5に0.6 ml/minで超純水を供給するとともに、試料雰囲気導入管6にクリーンルーム内の室内空気を導入するようにして、圧縮窒素供給管4から圧力2kg/cm2 の圧縮窒素ガスを流量2 l/minで噴出させた。
【0037】
これによって不純物捕捉容器1内には超純水のミストが発生し、一部はドレインとなって排出されたがミストとなったものはミスト排出口から乾燥カラム、拡散スクリーンを介して核凝縮カウンター(CNC)に送られた。
【0038】
このときの室内空気の吸引量は100 ml/minであり、超純水と吸引空気の液/ガス比は、6 l/m3 である。
【0039】
この状態で試料雰囲気として高純度N2 を用いた時と、大気を用いた時のCNCカウント数を測定したところ図4に示したとおりであった。このグラフのデ−タにおいて、高純度N2 は、不純物成分を全く含んでいないガスであり、大気は、さまざまな不純物を含んでいるガスであり、この2種類のガスで、大気の方がCNCカウント数は多い値を示した。これは前記してきた実施例が、空気中の不純物を検出できることを示している。又、図4のデ−タからは、試料雰囲気が大気維持のCNCカウント数から高純度N2 の時のCNCカウント数を引いた値を特公平6−63961に開示されている方法にならい、不純物濃度に換算し、更に、超純水量と試料雰囲気量を考慮することで大気中の不純物濃度を計測することが可能となる。
【0040】
【発明の効果】
以上の実施例から明らかなように、本発明の気中不純物測定装置によれば、圧縮純粋気体噴射管から噴射した高速の純粋気体により試料雰囲気と超純水を混合霧化させ微細なミストとした上で、急速乾燥させてミスト中の不純物を微粒子状に浮遊させてその濃度を測定するので、例えば、クリーンルーム内の空気中の微粒子や不純物の濃度を自動的、迅速かつ連続して測定することが可能であるとともに、取扱が簡便で低コストな気中不純物監視装置が提供可能である。
【0041】
このように連続的な監視が可能であるので、異常が判明した時点で即座に異常の原因を解明することが可能で、同じ原因に基づく異常の再発を防止するための対策を講ずることが極めて容易になる。
【0042】
したがって、クリーンルーム内の雰囲気の異常を迅速に検知して不良品の発生を防止するとともに、雰囲気異常を未然に防止する対策を施すことが可能で、異常対策のためにラインを停止する機会を減少させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の要部を概略的に示す断面図である。
【図2】図1のA部の拡大断面図である。
【図3】本発明により超純水と試料雰囲気からミストが形成される原理を説明する図である。
【図4】本発明の一実施例による微粒子の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
l……不純物捕捉容器 2……衝突壁 3……圧縮窒素噴射口 3a……円筒状空室 4……圧縮窒素供給管 5……超純水導入管 6……試料雰囲気導入管
7……ミスト排出口 8…… ドレイン配管 L……減圧領域
Claims (1)
- 内部にほぼ直立した衝突壁を有する密閉可能な不純物捕捉容器と、前記不純物捕捉容器内の前記衝突壁に噴射口を向けて配設された圧縮純粋気体を噴射する圧縮純粋気体噴射管と、前記圧縮純粋気体噴射管の噴射口近傍の圧減圧領域にそれぞれ開口端を臨ませて配設された超純水導入管並びに試料雰囲気導入管と、前記不純物捕捉容器に設けたドレイン配管と、前記不純物捕捉容器の前記衝突壁近傍に開口させたミスト排出口と、前記ミスト排出口から排出されたミストを導入して急速乾燥させ、ミスト中の不純物を微粒子状に浮遊させてその濃度を測定する不純物濃度測定装置とを有することを特徴とする気中不純物監視装置。
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