JP3864690B2 - 多光軸光電センサ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、複数個の投光素子が配列された投光器と、前記投光素子と対をなす複数個の受光素子とを、各投受光素子が向かい合うように配置して複数の平行な光軸を設定し、各光軸の遮光状態に応じて物体を検知するようにした多光軸光電センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の多光軸光電センサは、一般に、プレス機などの機械の作業領域に人体などの物体が侵入するのを検知するために用いられるもので、複数の投光素子が一列に配置された投光器と、投光素子と同数の受光素子が一列に配置された受光器とを、所定の距離を隔てて設置して成る。投受光器の設置時には、各投光素子と各受光素子とが一対一の関係で向かい合うように調整することにより、投受光器の各光軸が位置合わせされる。投受光素子の組合せ毎に位置合わせされた光軸は、素子の並び方向に沿って平行に整列し、2次元状の検知エリアを形成する。
【0003】
図7は、従来の光電センサの概略構成を示す。
図中の81は投光器、82は受光器であり、それぞれ複数個の投光素子3,受光素子4が組み込まれている。投光器81には、前記各投光素子3のほか、これら投光素子3を個別に駆動するための複数個の駆動回路5,光軸順次選択回路6,処理回路7などが組み込まれる。一方、受光器82には、前記投光素子3と対をなす各受光素子4とともに、各受光素子4毎の増幅器8やアナログスイッチ9,光軸順次選択回路10,処理回路11などが組み込まれる。
【0004】
投光器81および受光器82の各処理回路7,11は、マイクロコンピュータを主体とするもので、両回路7,11は、投光および受光のタイミングを同期させるために、通信ケーブル13を介して相互に接続される。
投光器81側の処理回路7は、所定の時間間隔毎に、投光素子発光用の駆動信号(以下これを「発光指示信号」という。)を出力する。前記光軸順次選択回路6は、各投光素子3の駆動回路5を順に処理回路7に接続するためのゲート回路であって、この回路6における切替処理により、前記処理回路7からの発光指示信号が各駆動回路5に順に与えられて、各投光素子3が順に発光する。
なおこの発光指示信号は、通信ケーブル13を介して受光器82側の処理回路11にも与えられる。
【0005】
受光器82側では、各光軸の受光素子4からの出力は、それぞれ増幅器8およびアナログスイッチ9を介して処理回路11への単一の入力ライン14に接続される。光軸順次選択回路10は、投光器81側の回路6と同様のゲート回路であって、各アナログスイッチ9に順に処理回路11からの駆動信号を与えて、処理のために有効化する光軸を切り替える。
なおこの切替え処理のための駆動信号は、前記発光指示信号に同期するタイミングで与えられるもので、切替えは、前記投光器1側の投光素子3の発光順序に対応する順序で行われる。これにより発光中の投光素子3に対応する光軸が順に有効化され、その光軸における受光出力が処理回路11に入力される。
【0006】
処理回路11には、マイクロコンピュータのほか、入力信号から前記発光指示信号に同期するタイミングの受光量を抽出するためのサンプルホールド回路や、サンプルホールドされたレベルをディジタル量に変換するためのA/D変換回路などが含まれる。マイクロコンピュータは、光軸毎に取り込んだ受光量レベルのディジタル値(以下、「受光量データ」という。)を、それぞれ所定のしきい値と比較する。そしていずれかの受光量データがしきい値を下回ると、前記検知エリアに物体があると判別し、図示しない出力回路から異常検知信号を出力する。この異常検知信号は、後段の機械の駆動系に与えられるもので、これにより機械が動作不可能な状態に設定されるなどの異常処理が行われる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記図7の構成に示すように、この種のセンサでは、アナログスイッチ9を切り替えて各光軸を順に有効化することにより、各光軸における遮光状態を精度よく抽出して高精度の物体検知を行うようにしている。しかしながら前記アナログスイッチ9が1つでも短絡状態(スイッチオンの状態)で故障すると、検知エリアに物体が侵入しているにも関わらず、その物体が検知されない状態が生じる可能性がある。
【0008】
すなわちある光軸にかかるアナログスイッチ9が短絡状態で故障すると、この光軸における受光素子4からの出力は、常時、入力ライン14に流れることになる。したがって仮にこの故障の生じた光軸に隣接する光軸が遮光された状態になっても、この遮光状態にある光軸の投光素子3からの光が故障の生じた光軸の受光素子4に入射し、処理回路11にしきい値を越えるレベルの信号が入力されて「物体なし」と判定される可能性がある。このような誤検知が生じると、後段の機械には異常検知信号が出力されないから、機械が通常どおり動作する危険状態が発生することになる。
【0009】
この発明は上記問題点に着目してなされたもので、アナログスイッチの故障などにより光軸の有効化処理に異常が生じた場合にも、その異常を速やかに検出することにより、多光軸光電センサにおける誤検知を防止することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明では、複数個の投光素子が配列された投光器と、前記投光素子と対をなす複数個の受光素子が配列された受光器とを、各光軸が平行となるように設置し、投光器において各投光素子を順次発光させるとともに、受光器において発光した投光素子と対をなす受光素子により得た受光出力を用いて物体を検知する多光軸光電センサにおいて、前記受光器に、物体検知処理を行うための処理回路と、この処理回路に各受光素子からの出力を与えるための単一の入力ラインと、各受光素子と入力ラインとの接続を切り替えるために光軸毎に設けられた複数のスイッチ機構と、光軸毎の受光出力にそれぞれ一定のバイアス電圧を重畳するためのバイアス設定手段と、各スイッチ機構がすべて開となった状態下の入力ラインの電位を前記バイアス電圧とは異なる一定レベルに維持するためのライン電位維持手段とを具備させる。前記入力ラインと処理回路との間には、前記バイアス電圧が重畳されていない信号が入力されたときの出力が飽和する特性を有する増幅回路を配備する。処理回路は、前記光軸毎の受光出力が各投光素子の発光動作に同期するタイミングで入力ラインに流れるように各スイッチ機構の開閉動作を制御しつつ各受光出力を取り込んで前記物体検知処理を行うとともに、所定のタイミングですべてのスイッチ機構にスイッチの開放を指示し、そのときの入力信号の電位に基づきスイッチ機構の故障の有無を判別する。さらに処理回路は、物体検知処理の実行下において、前記増幅回路からの入力信号の電位が飽和レベルに達しているとき、前記バイアス設定手段に故障が生じたと判別する。
【0011】
一般に、前記投光素子には発光ダイオード(LED)、受光素子にはフォトダイオード(PD)が用いられる。また受光器におけるスイッチ機構には、トランジスタによるアナログスイッチが用いられる。
処理回路は、マイクロコンピュータによる演算回路を主体とするが、そのほか、各スイッチ機構の開閉動作を直接制御するための回路(前記図7の光軸順次選択回路10に相当する。)や、受光出力をサンプリングしてディジタル変換するための回路なども含む。なお受光出力とは、受光素子より出力された信号そのもの、またはその信号に増幅処理やノイズカット処理などを施した後の信号のことである。
【0012】
前記バイアス設定手段は、たとえば電圧設定用の抵抗およびこの抵抗に電流を供給するための電源によって構成され、各スイッチ機構の入力側や受光素子からの出力を増幅するための増幅器に前記バイアス電圧をかけるように設定される。このバイアス設定手段は、光軸毎に個別に設けられるか、または各光軸に共通の手段として設定される。
前記増幅回路の具体例としては、入力ラインからの信号とバイアス設定手段によるバイアス電圧と同レベルの信号とを入力し、両信号間の電位差に比例する出力を行うオペアンプが考えられる。なおこのオペアンプには、バイアス電圧設定用の抵抗が正常である場合の入力ラインからの信号、すなわち前記バイアス電圧が重畳された信号に対し出力が飽和しないようなゲインを設定する必要がある。
【0013】
上記構成の多光軸光電センサでは、投光器の各投光素子の発光タイミングに同期させて、発光中の投光素子に対応する光軸のスイッチ機構を閉じることにより、前記投光素子の発光に対応する受光出力を入力ラインを介して処理回路に入力し、各受光出力のレベルによって光軸が遮光されているか否かを判別し、光軸が遮光されていると判別した場合は、外部に対し所定の検知信号を出力する。
【0014】
さらにこの構成では、各受光出力に一定のバイアス電圧が重畳されるとともに、各スイッチ機構がすべて開になった状態下での入力ラインの電位が、ライン電位維持手段によってバイアス電圧とは異なる一定のレベルに維持される。
したがって所定のタイミングですべてのスイッチ機構を開にすれば、処理回路への入力信号の電位は、前記ライン電位維持手段によって維持されるレベル(以下、「維持レベル」という。)になるはずである。しかしながらいずれかのスイッチ機構が故障して所定レベルの受光出力(少なくとも受光素子からの出力電圧に前記バイアス電圧が加算または減算された電圧)が入力ラインに流れていると、入力ラインの電位が故障の生じた光軸からの信号のレベルに引っ張られるため、処理回路には前記維持レベルとは異なる電位の信号が入力されることになる。
【0015】
よってこの入力信号の電位が前記維持レベルとは異なる電位になっている場合は、スイッチ機構に故障が生じていることになり、入力信号の電位をチェックすることにより簡単かつ迅速に回路の故障を検出することが可能となる。
なお、前記ライン電位維持手段は、たとえば入力ラインに接続されるプルアップ抵抗またはプルダウン抵抗により構成される。
【0016】
さらに、上記構成によれば、たとえば所定の光軸においてバイアス電圧設定用の抵抗が受光出力の経路からはずれるような故障が生じて、その光軸における受光出力にバイアス電圧が重畳されなくなると、この受光出力が入力ラインを介して増幅回路に入力されたとき、増幅回路からの出力が飽和する。よってバイアス設定手段に故障が発生した場合は、処理回路への入力信号が飽和することによって故障の発生が判別できるので、故障の発生に速やかに対応することが可能となる。
【0017】
さらにこの発明の別の態様では、複数個の投光素子が配列された投光器と、前記投光素子と対をなす複数個の受光素子が配列された受光器とを、各光軸が平行となるように設置し、投光器において各投光素子を順次発光させるとともに、受光器において発光した投光素子と対をなす受光素子により得た受光出力を用いて物体を検知する多光軸光電センサにおいて、前記受光器に、物体検知処理を行うための処理回路と、この処理回路に各受光素子からの出力を与えるための単一の入力ラインと、各受光素子と入力ラインとの接続を切り替えるために光軸毎に設けられた複数のスイッチ機構と、光軸毎の受光出力にそれぞれ一定のバイアス電圧を重畳するためのバイアス設定手段と、各スイッチ機構がすべて開となった状態下の入力ラインの電位を前記バイアス電圧とは異なる一定レベルに維持するためのライン電位維持手段とを具備させる。処理回路は、前記光軸毎の受光出力が各投光素子の発光動作に同期するタイミングで入力ラインに流れるように各スイッチ機構の開閉動作を制御しつつ各受光出力を取り込んで前記物体検知処理を行うとともに、所定のタイミングですべてのスイッチ機構にスイッチの開放を指示し、そのときの入力信号の電位に基づきスイッチ機構の故障の有無を判別する。さらに処理回路は、すべての投光素子が消灯している状態下において、任意の光軸に対応するスイッチ機構を閉じてその時点の入力信号の電位を前記バイアス電圧と比較し、各電位が異なるとき、前記バイアス設定手段に故障が生じたと判別する。
【0018】
スイッチ機構を閉じる方法としては、たとえば通常の物体検知処理の実行下において、各スイッチ機構をそれぞれ対応する投光素子の発光期間よりも所定時間だけ長く閉じるように制御する方法がある。この場合、処理回路は、投光素子の発光終了後の入力信号の電位を前記バイアス電圧と比較するように構成される。
【0019】
このほか、通常の物体検知処理の合間にすべての投光素子を所定期間消灯し、この状態下で各スイッチ機構の開閉動作を物体検知処理時と同様に制御し、スイッチ機構が閉じる毎の入力信号の電位をバイアス電圧と比較するようにしてもよい。
これらの方法によれば、各光軸について、光を受光していない状態下での受光出力がバイアス電圧と比較されることになる。ここでバイアス設定手段が故障している場合、受光出力にはバイアス電圧が重畳されないから、処理回路への入力信号の電位はバイアス電圧と異なるレベル(例えば0V)となる。したがってバイアス設定手段の故障を速やかに判別して対応することが可能となる。
【0020】
この発明の好ましい実施態様によれば、前記処理回路は、各光軸の受光出力の取込みが一巡する毎にすべてのスイッチ機構にスイッチの開放を指示し、このときの入力信号が前記維持レベルとは異なる電位になっているとき、スイッチ機構に故障が生じたと判別する。なおこの時点では、投光器側の各投光素子を発光させないようにするのが望ましい。
この構成によれば、1サイクル分の物体検知処理を行う毎に、スイッチ機構の故障の有無を判別することができ、センサ稼働中の故障の発生に即座に対応することが可能となる。
【0021】
さらに処理回路は、上記いずれかの構成によりスイッチ機構またはバイアス設定手段に故障が生じたと判別したとき、外部に対し、物体検知時と同様の検知出力を行うように構成されるのが望ましい。
物体検知時の検知出力とは、後段の機械の駆動系、またはランプ,警報などの報知手段を作動させるための信号を意味する。したがって上記の構成により、受光器内部の回路故障が生じたときは、異常検知時と同様に、機械を動作不可能にしたり、異常発生を報知することが可能となり、誤動作による事故を防止することが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施例にかかる多光軸光電センサの設置状態を示すもので、図中の1は投光器を、2は受光器を、それぞれ示す。
前記投受光器1,2は、いずれも長手形状のケース体15を本体とする。各ケース体15,15は、それぞれ一側面に図示しない窓部が形成されており、長手方向を垂直方向に対応させ、各窓部を対向させた状態で設置される。
【0023】
投光器1には複数個の投光素子3が、受光器2には前記投光素子3と同数の受光素子4が、それぞれ前記窓部に沿って一列に並べた状態で組み込まれる。
各投光素子3および各受光素子4は、いずれも所定のピッチで配置される。投光器1と受光器2とを対向させたとき、各投光素子3と各受光素子4とが一対一の関係で向かい合うように設置することにより、各投受光素子3,4の光軸が合わせられ、投受光器1,2間に、投受光素子3,4の組合せ毎の光軸が平行に並ぶ2次元の検知エリアSが設定される。
【0024】
なお前記検知エリアSは、たとえば産業用ロボットのロボットアームの作業領域や、プレス機械における型の往復動領域のような危険区域内に設置され、前記検知エリアへの物体(作業者の身体など)の侵入を検知すると、前記受光器2から機械側に異常検知信号が出力される。機械側では、この異常検知信号を受けて、機械の動作を停止させるなどの異常処理を行う。
【0025】
図2は、前記投光器1および受光器2の内部の構成を示す。投光器1には、複数個の投光素子3のほか、各投光素子3を個別に駆動するための複数個の駆動回路5,光軸順次選択回路6,処理回路7などが組み込まれる。なおこの投光器1の構成は、前記図7に示した従来の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0026】
受光器2では、各投受光素子3,4に対応する光軸毎に、増幅器8,カップリングコンデンサ19,およびアナログスイッチ9が、順に配置される。また従来と同様に、光軸順次選択回路10や処理回路11が組み込まれ、処理回路11は、投光器3側の処理回路7と通信用ケーブル13を介して接続される。
【0027】
この実施例では、各アナログスイッチ9に対しそれぞれ一対の抵抗16,17を設け、入力側に一定レベルのバイアス電圧を印加している。(各アナログスイッチ9に対応する抵抗16,17はいずれも同種のものであり、一方の抵抗16は図示しない直流電源に、他方の抵抗17は接地に接続される。)
この構成により、受光素子4からの出力は、増幅器8で増幅されてからカップリングコンデンサ19により直流成分が除かれた後、アナログスイッチ9により前記バイアス電圧が重畳された状態で出力されることになる(以下、この経路を経た出力を「受光出力」という。)。
【0028】
各受光出力の経路は、従来と同様に、アナログスイッチ9を介して処理回路11への単一の入力ライン14に接続される。なお入力ライン14と処理回路11との間には、増幅器12が配備される。
処理回路11および光軸順次選択回路10は、従来と同様に、各アナログスイッチ9をそれぞれ同じ光軸上の投光素子3の発光動作に同期するタイミングでオン動作させるので、発光動作および受光量を取り込む処理(以下、「投受光処理」という。)が正常に行われている場合、各光軸毎の受光出力が順に入力ライン14に流れて、処理回路11に入力されることになる。
【0029】
この実施例の多光軸光電センサでは、前記入力ライン14を、抵抗18によってプルダウンされた状態に設定する。そして図3に示すように、光軸毎の投受光処理の間に各光軸の受光出力に基づき前記した物体検知を行うとともに、投受光処理が一巡する毎に、前記アナログスイッチ9の故障を検知するための期間(以下、「故障検知期間」という。)を設けている。この故障検知期間には、投光器1側のすべての投光素子3を発光させない状態に設定するとともに、受光器2側のすべてのアナログスイッチ9をオフ(スイッチを開いた状態)に設定する。
なお故障検知期間においては、投光器1,受光器2間の通信により、投光素子3の消灯期間とアナログスイッチ9のオフ期間とが同期するように制御される。
【0030】
前記故障検知期間において、いずれのアナログスイッチ9も正常であれば、前記プルダウン抵抗18の作用により入力ラインの電位は0Vに維持される。これに対し、いずれかのアナログスイッチ9が故障によりオン状態のままになっている場合は、そのスイッチに対応する受光出力が入力ライン14に流れているため、入力ライン14の電位はバイアス電圧側に引っ張られ、電位が高くなることになる。
【0031】
前記処理回路11は、前記故障検知期間に、入力信号のレベルをチェックし、これが0Vであれば、各アナログスイッチ9が正常に動作しているものと判断してつぎの物体検知処理に進む。他方、入力信号のレベルが0Vよりも高くなっている場合は、いずれかのアナログスイッチ9が故障していると判断し、異常検知信号を出力する。
【0032】
上記構成によれば、1サイクル分の物体検知処理を行う毎にアナログスイッチ9の故障の有無をチェックすることになるので、いずれかのアナログスイッチ9が光軸順次選択回路10からの駆動信号によってオン動作したままオフに復帰できなくなっている場合にも、その故障を速やかに抽出して異常検知信号を出力することができる。したがって仮に検知エリアSに物体が侵入した状態下でアナログスイッチ9に故障が生じ、物体を検知できない事態が生じても、物体を検知したときと同様に異常検知信号を出力し、危険状態を回避することができる。
【0033】
なお図2の構成において、アナログスイッチ9がオフ状態で故障した場合は、投受光処理期間において故障の生じた光軸より得られる受光出力が0Vとなる。処理回路11は、この状態を物体により光軸が遮光された状態と見なして異常検知信号を出力するので、スイッチがオン状態で故障したときと同様に、故障に対応することができる。
【0034】
また入力ライン14には、上記のプルダウン抵抗18に代えてプルアップ抵抗を接続してもよい。プルアップ抵抗を接続した場合は、各アナログスイッチ9が開いている状態下での入力ライン14の電位は所定レベルで維持されるが、いずれかのアナログスイッチ9がオン状態で故障すると、入力ライン14の電位は前記維持レベルよりも低くなることになる。
【0035】
つぎに前記図2の構成では、アナログスイッチ9に入力する時点の受光出力にバイアス電圧を重畳するようにしているが、これに代えて、たとえば図4のような構成を採用してもよい。
図4では、各光軸において、受光素子4とアナログスイッチ9との間にオペアンプ20を配置する。このオペアンプ20は、+側端子に前記バイアス電圧が印加されるとともに、−側端子に受光素子4からの出力を入力する。なおこの実施例では、バイアス設定用抵抗16,17を各光軸共通に1組だけ設けているが、図2の実施例と同様に、光軸毎に個別の抵抗16,17の組を設けてもよい。また図中の21は、オペアンプ20の帰還抵抗である。
【0036】
上記構成によれば、各オペアンプ20は、受光素子4が投光素子3からの光を受光していない状態(受光量がほぼゼロの状態)下で前記バイアス電圧レベルの信号を出力し、受光素子4が投光素子3からの光を受光している状態下では、その受光量をバイアス電圧に基づき増幅した受光出力を出力する。したがって前記図2の実施例と同様に、1サイクルの投受光処理終了後に故障検知期間を設定し、入力ライン14の電位に基づきアナログスイッチ9に故障が発生していないか否かを検知することが可能となる。
【0037】
ところで上記図2または図4の構成において、バイアス設定用の抵抗16,17のうち、電源側に接続されている抵抗16がラインからはずれる断線状態が生じると、バイアス電圧は0Vとなる。この場合、前記故障検知期間における入力ライン14の電位は、アナログスイッチ9のオンオフにかかわらず0Vとなるため、前記したアナログスイッチ9の故障の検出は不可能となる。
【0038】
このような問題に対応するため、つぎの実施例では、前記入力ライン14と処理回路11との間に介在させる増幅器12を、図5のようなオペアンプ22に変更する。なお図5中、16a,17aは、前記バイアス設定用抵抗16,17によるバイアス電圧と同レベルの信号を設定するための抵抗であり、23,24は、オペアンプ22のゲイン設定用の抵抗を示す。
【0039】
このオペアンプ22の+側端子には、前記した抵抗16a,17aによるバイアス電圧と同レベルの信号が入力され、−側端子には、前記入力ライン14からの信号が入力される。なお前記ゲイン設定用の抵抗23,24には、+,−の入力信号間の電位差がバイアス電圧より小さい場合は、オペアンプ22から飽和レベルより低い適度なレベルの信号が出力される一方、+,−の入力信号間にバイアス電圧に相当する電位差が生じると、オペアンプ22の出力が飽和するようなゲインを設定するものを選択する。
【0040】
図5は、前記図2の構成において、バイアス設定用の抵抗16が受光出力経路から外れる断線状態が発生し、かつアナログスイッチ9がオン状態で故障したときの故障検知期間における接続状態を示す。(故障中の抵抗16,アナログスイッチ9は図示されていない。)
【0041】
図5の状態下では、オペアンプ22の−側端子には、抵抗17により0Vにプルダウンされた信号が入力される。この場合、オペアンプ22における+,−の入力信号間の電位差は、バイアスレベルに相当するレベルとなるため、出力はオペアンプ22の電源電圧側に飽和する。
たとえばオペアンプ22の電源電圧を5V,抵抗23,24によるゲインを10倍、バイアス電圧を2.5Vであるとすると、アナログスイッチ9が故障した状態下での増幅レベルは25Vとなるが、実際の出力は5Vで飽和してしまう。
【0042】
上記構成では、投受光処理期間において抵抗16が断線している場合には、オペアンプ22における入力信号間の電位差は、前記バイアス電圧よりさらに大きくなるから、オペアンプ22からの出力は上記と同様に飽和する。したがって処理回路11において、物体検知期間に飽和レベルの信号が入力されたときに異常検知信号を出力することにより、受光出力側の抵抗16に故障が生じた場合に対応することができる。
(故障検知期間におけるオペアンプ22からの出力は、アナログスイッチ9の状態に関わらず、飽和状態となる。)
【0043】
またここでは図示しないが、受光出力毎のバイアス設定用の抵抗16が正常に機能している場合には、前記故障検知期間にアナログスイッチ9がオン状態になると、オペアンプ22の−側端子にはバイアス電圧に相当するレベルの信号が入力される。この場合、オペアンプ22における入力信号間の電位差はほぼ0Vとなるため、オフセット分のバイアス電圧レベルの信号が出力されるようになり、前記故障検知期間においてアナログスイッチ9の故障を、問題なく行うことが可能となる。
【0044】
さらに前記バイアス設定用の抵抗の故障の検出は、上記のようなハード構成に限らず、処理回路11に与える検知用プログラムの変更によっても実現することができる。
図6は、この検知動作の具体例を示す。ここでは光軸毎の投受光処理において、投光素子3を発光させる期間に対し、光軸有効化期間(アナログスイッチ9をオンにして受光出力を取り込む期間)をやや長めに設定し、発光期間終了から受光出力の取込み終了までの期間に、受光出力のレベルに基づき前記抵抗16に故障が発生していないか否かを検知している。抵抗16が正常であれば、発光期間後にはバイアス電圧のレベルに相当する受光出力が得られるが、抵抗16が故障してバイアスがかけられなくなると、発光期間後の受光出力は、0V側に落ち込むようになる。(図示例では、第2光軸においてこの異常が発生している。)
なお、この異常状態は物体侵入時の遮光状態と同様に取り扱われて、異常検知信号が出力されることになる。
【0045】
【発明の効果】
この発明にかかる多光軸光電センサは、光軸毎の受光出力にそれぞれ一定のバイアス電圧を重畳しておき、これら受光出力を処理回路への入力ラインに流すためのスイッチ機構をすべて開放した状態で前記入力信号の電位をチェックすることによりスイッチ機構の故障の有無を判別するようにしたので、スイッチ機構の故障を速やかに報知したり、後段の機械の動作を停止することによって、故障に起因する誤検知による事故の発生を防止することができ、安全面において優れた性能を具備する多光軸光電センサを提供することが可能となる。
さらにこの発明において、入力ラインから増幅回路を介して処理回路に入力される信号のレベルや、通常の投受光処理における入力信号のレベルによってバイアス電圧を設定する手段の故障を検知するように構成すれば、アナログスイッチの故障検知のためのバイアス電圧に異常が生じた場合にも速やかに対応でき、安全性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる多光軸光電センサの設置例を示す斜視図である。
【図2】多光軸光電センサの構成例を示すブロック図である。
【図3】故障検知期間の設定例を示すタイミングチャートである。
【図4】多光軸光電センサの第2の構成例を示すブロック図である。
【図5】バイアス設定用の抵抗の故障を検出するための構成を示す等価回路である。
【図6】バイアス設定用の抵抗の故障の検出例を示すタイミングチャートである。
【図7】従来の多光軸光電センサの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 投光器
2 受光器
3 投光素子
4 受光素子
11 処理回路
14 入力ライン
16,17,18 抵抗
22 オペアンプ
Claims (4)
- 複数個の投光素子が配列された投光器と、前記投光素子と対をなす複数個の受光素子が配列された受光器とを、各光軸が平行となるように設置し、投光器において各投光素子を順次発光させるとともに、受光器において発光した投光素子と対をなす受光素子により得た受光出力を用いて物体を検知するようにした多光軸光電センサにおいて、
前記受光器は、前記物体検知処理を行うための処理回路と、前記処理回路に各受光素子からの出力を与えるための単一の入力ラインと、各受光素子と前記入力ラインとの接続を切り替えるために光軸毎に設けられた複数のスイッチ機構と、光軸毎の受光出力にそれぞれ一定のバイアス電圧を重畳するためのバイアス設定手段と、前記スイッチ機構がすべて開となった状態下の入力ラインの電位を前記バイアス電圧とは異なる一定レベルに維持するためのライン電位維持手段とを具備し、
前記入力ラインと処理回路との間には、前記バイアス電圧が重畳されていない信号が入力されたときの出力が飽和する特性を有する増幅回路が配備されており、
前記処理回路は、前記光軸毎の受光出力が各投光素子の発光動作に同期するタイミングで入力ラインに流れるように各スイッチ機構の開閉動作を制御しつつ各受光出力を取り込んで前記物体検知処理を行うとともに、所定のタイミングですべてのスイッチ機構にスイッチの開放を指示し、そのときの入力信号の電位に基づきスイッチ機構の故障の有無を判別し、さらに前記処理回路は、物体検知処理の実行下において、前記増幅回路からの入力信号の電位が飽和レベルに達しているとき、前記バイアス設定手段に故障が発生したと判別するようにした多光軸光電センサ。 - 複数個の投光素子が配列された投光器と、前記投光素子と対をなす複数個の受光素子が配列された受光器とを、各光軸が平行となるように設置し、投光器において各投光素子を順次発光させるとともに、受光器において発光した投光素子と対をなす受光素子により得た受光出力を用いて物体を検知するようにした多光軸光電センサにおいて、
前記受光器は、前記物体検知処理を行うための処理回路と、前記処理回路に各受光素子からの出力を与えるための単一の入力ラインと、各受光素子と前記入力ラインとの接続を切り替えるために光軸毎に設けられた複数のスイッチ機構と、光軸毎の受光出力にそれぞれ一定のバイアス電圧を重畳するためのバイアス設定手段と、前記スイッチ機構がすべて開となった状態下の入力ラインの電位を前記バイアス電圧とは異なる一定レベルに維持するためのライン電位維持手段とを具備し、
前記処理回路は、前記光軸毎の受光出力が各投光素子の発光動作に同期するタイミングで入力ラインに流れるように各スイッチ機構の開閉動作を制御しつつ各受光出力を取り込んで前記物体検知処理を行うとともに、所定のタイミングですべてのスイッチ機構にスイッチの開放を指示し、そのときの入力信号の電位に基づきスイッチ機構の故障の有無を判別し、さらに前記処理回路は、すべての投光素子が消灯している状態下において、任意の光軸に対応するスイッチ機構を閉じてその時点の入力信号の電位を前記バイアス電圧と比較し、各電位が異なるとき、前記バイアス設定手段に故障が生じたと判別するようにした多光軸光電センサ。 - 前記処理回路は、前記各受光出力の取込みが一巡する毎に前記すべてのスイッチ機構にスイッチの開放を指示するとともに、このときの入力信号の電位が前記ライン維持手段により維持されるレベルとは異なる電位になっているとき、スイッチ機構に故障が発生したと判別する請求項1または2に記載された多光軸光電センサ。
- 前記処理回路は、スイッチ機構またはバイアス設定手段に故障が生じたと判別したとき、外部に対し、物体検知時と同様の検知出力を行う請求項1〜3のいずれかに記載された多光軸光電センサ。
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