JP3864354B2 - 排水ネット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に盛土内の法面側に敷設し、余剰水を法面に排出することによって、余剰水による盛土の破壊を未然に防止する土木用の排水ネットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、盛土の崩壊を防止するために、その地盤内に敷設して補強するネットには多種多様のものがあり、また、それらのネットを敷設する工法も一般化されている。
【0003】
また、地盤内の水を排出させるために、上記ネットとは別に部分的に暗渠排水材を埋設することも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記地盤を補強するネットは盛土等の造成地が崩れないように唯その形状による抵抗や素材の高張力によて地盤のズレを防止するもので、地盤の崩壊の別の要因でもある地中の余剰水による軟弱化を防止するものではない。
【0005】
一方、排水材もまた余剰水を地盤外へ排水するだけのもので、強度的に崩壊を防止するものではなく、地盤内の余剰水を均等に排出させるには、個々の排水材をバランスよく設置することが必要となり、結果的にその設置作業は非常に大きな手間を要するものになっている。
【0006】
更に、地盤のズレ防止と軟弱化防止には、補強用のネットと排水材の二つの材料を埋設することが必要となり、このことが使用する材料費と手間賃を高め経済性に問題を残すものとなっている。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、排水機能を有し、かつ適度な強度もあわせ持った、土木用の排水ネットの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る排水ネットは、表面より内部に連通する多数の孔を備えた合成樹脂よりなる被覆部が一体化されて外部に連通する内部通水空隙を有する横糸と可撓性を有する縦糸とを、縦横にそれぞれ所定間隔をあけて並列して略直角に交差させ、すべての交差部を固着したことを特徴とする。
【0009】
上記構成の排水ネットは、横糸が外部に連通する内部通水空隙を有するため、土中埋設時に余剰水を内部通水空隙に吸収し、該空隙を通じて横糸の一端側へ排出することができる。また、縦糸は可撓性を有する故に、地盤に凹凸があっても排水ネットの敷設が可能となる。更に、この排水ネットは縦方向に巻くことができ、巻いた状態で使用現場まで運搬し、巻き戻して敷設ができるので、作業全体が楽になる。しかも、縦糸が被覆部によって補強され、同時に被覆部が表面より内部へ連通する多数の孔を有するため良好な吸水機能が維持されることになる。
【0010】
また、請求項2に係る排水ネットは、横糸が、不織布、周面に多数の貫通孔を有するチュ−ブ、線状物の集束体のいずれか、又は、これらの組み合わせで構成されていることを特徴とする。ここで、チューブとは管状体も含む概念である。
【0011】
上記構成の排水ネットは、横糸を構成する不織布、チューブ、線状物の集束体等が充分な内部通水空隙を有するため、排水性が良好である。
【0014】
そして、請求項3に係る排水ネットは、横糸の全長に亘って補強線体が一体化されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成の排水ネットは、横糸の全長に亘って一体化された補強線体によって横糸の引張強度が増大し、これによって地盤のズレに対する抵抗力が高まり、地盤が崩壊する確率をより低下させることができる。
【0016】
更に、請求項4に係る排水ネットは、横糸が縦糸よりも太いことを特徴とする。
【0017】
上記構成の排水ネットは、横糸を縦糸より太くすることによって、横糸の通水量を多くし、排水性を一層向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る排水ネットを示すもので、(a)はその平面図、(b)はそのA−A線断面図である。
【0020】
この排水ネット1は、外部に連通する内部通水空隙を有するテープ状の横糸2と、これより細いテープ状の可撓性を有する縦糸3とを、縦横にそれぞれ所定間隔をあけて並列して略直角に交差させ、そのすべての交差部4を固着したものである。
【0021】
横糸2は、外部に連通する内部通水空隙を有するものであれば、その材質や材料構成は特に限定されるものでないが、単一材としては透水性に優れた合成繊維や植物繊維などからなる不織布が好適に使用される。
【0022】
また、縦糸3も可撓性を有するものであれば、その材質や材料構成は限定されるものではなく、例えば合成樹脂製や、合成繊維製や、植物繊維製や、無機繊維製の縦糸が好適に使用される。
【0023】
そして、横糸2と縦糸3の交差部4は、止め具を用いて止着するか、或は、接着剤で接着するか、或は、双方の糸2,3が合成樹脂製又は合成繊維製の場合には溶着するなどの手段によって固着されている。
【0024】
上記の排水ネット1は縦糸3の方向に巻き取ることによって運搬しやすい荷姿となり、かつ工事現場の敷設予定箇所で排水ネット1を巻き戻しながら広げて簡単に設置することができる。
【0025】
図2は本発明の他の実施形態に係る排水ネットの断面図である。
【0026】
この排水ネット1は、内部通水空隙61に連通する多数の貫通孔61を周面に形成したチューブ6からなる横糸2を、可撓性を有する縦糸3と交差させ、交差部4を固着したものである。
【0027】
このような横糸2を構成するチュ−ブ6としては合成樹脂製のものが好適に使用され、また、合成樹脂製の暗渠排水管などもそのまま横糸として使用することが可能である。
【0028】
本発明の排水ネットの横糸2は、外部に連通する内部通水空隙を有するものであれば、その断面形状や材質等が特に限定されるものではなく、断面形状は矩形状、管状(チュ−ブ状)、円形状等、所望の形状とすることができ、図示しないが、例えば多数の線状物の集束体で横糸2が形成されていてもよい。
【0029】
また、横糸2の太さは、排水性を向上させるために縦糸3より太くすることが望ましいが、その断面積は100cm2 程度までである。また、横糸2の長さは、運搬性等を考慮すると7m以下とすることが望ましい。
【0030】
図3(a)〜(e)は横糸の他の具体例を示した断面図である。
【0031】
図3(a)の横糸2は、帯状の不織布5の周囲に、表面より内部に連通する多数の孔81を備えた合成樹脂よりなる被覆部8を一体化させたもので、被覆部8の孔81から水が吸収され、吸収された水が不織布5の内部通水空隙を通じて横糸2の一端側へ排出されるものである。このように被覆部8を一体化させると、被覆部8の補強作用によって横糸2の強度、特に引張強度等が向上する。
【0032】
被覆部8を構成する合成樹脂としては、熱可塑性でかつ誘電率が高く、高周波溶着性の良い樹脂、例えば塩化ビニル樹脂やエチレン一酢酸ビニル樹脂などが好適に使用され、望ましくは酢酸ビニルの含有率が15〜35重量%のエチレン一酢酸ビニル共重合体が使用される。このような樹脂の被覆部8を一体化させた横糸2は、縦糸3との交差部4を高周波溶着により効率良く固着できる利点がある。
【0033】
上記の被覆部8は孔81を機械的に形成したものであるが、例えば、帯状不織布5を上記の合成樹脂で押出被覆する時に合成樹脂を連続発泡させることにより、上記の孔81に代えて表面から内部に連通する連続気泡を形成するようにしてもよい。
【0034】
また、図3(b)の横糸2は、前述したチューブ6を複数本並べてその周囲に上記の被覆部8を一体化させたもの、図3(c)の横糸2は、チューブ6を複数本並べて上下から不織布5,5で挟み、その周囲に被覆部8を一体化させたもの、図3(d)の横糸2は、不織布5と補強線体9とを積層して周囲に被覆部8を一体化させたもの、図3(e)は、補強線体9をチュ−ブ6と不織布5で上下から挟み、その周囲に被覆部8を一体化させたものである。図3(d)(e)のように補強線体9を横糸2の全長に亘って一体化させると、引張強度が更に向上する利点がある。
【0035】
このように、排水ネットの横糸2には多種の材料やこれらの組み合わせが可能であり、上記の他にも、内部通水空隙を有する限り、織布なども好適に横糸を形成する材料となり得る。
【0036】
図4及び図5は本発明の排水ネットの使用例を示すもので、図4は本発明の排水ネットを盛土による人口地盤に使用した場合の断面図、図5は本発明の排水ネットを河川の堤防に使用した場合の断面図である。
【0037】
図4に示す使用例では、盛土の崩壊を防止するために、法面に鋼鉄製の格子からなる断面略L字形の補強材10が連続して積み上げられ、また盛土内には略水平に順次、各補強材10の後端部から連続して地盤を補強するネット11が埋設されている。そして、本発明の排水ネット1は、各補強材10の中央部分(換言すれば補強ネット11の中間部)に位置して略水平に埋設され、排水ネット1の横糸2の端部が法面に露出している。
【0038】
このように排水ネット1を埋設すると、盛土内の余剰水は横糸2に吸収され、横糸2の内部通水空隙を通じて横糸2の端から法面外部へ排水される。
【0039】
また、図5に示す使用例では、堤防の河川側に蛇かご12が最下部より積み上げられ、本発明の排水ネット1は各蛇かご12の端部に接続するように土中に順次、略水平に埋設されている。
【0040】
このような堤防は、大雨により水位が上がり、激流が発生しても、蛇かご12によって激流が緩和される上に、水位の上昇によって堤防地盤内へ逆浸透してきた水を、水位低下後に速みやかに排水ネット1の横糸2を通じて蛇かご12側に排出することで地盤の軟弱化を防止すると同時に、排水ネット1のネット形状が地盤のズレや沈下を防止することになり、長期的に決壊することの少ない堤防となりえる。
【0041】
【発明の効果】
上述してきたように、本発明の排水ネットは、排水機能と適度な強度を合わせ持つため、これを地盤内に埋設した時に、地盤内の余剰水を横糸を通じて排出して地盤の軟弱化を防止すると同時に、地盤のズレと沈下を防止し、長期に亘って地盤の破壊を防止できるといった顕著な効果を奏する。また、本発明の排水ネットのみ地盤内に埋設するだけで上記の効果が得られることから、工事に使用する材料費やその作業費を節減できるといった経済的効果も大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る排水ネットを示すもので、(a)はその平面図であり、(b)はそのA−A線断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る排水ネットの断面図である。
【図3】横糸の具体例を示すもので、(a)〜(e)はいずれも構成が異なる横糸の断面図である。
【図4】本発明の排水ネットの一使用例を示す断面図である。
【図5】本発明の排水ネットの他の使用例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 排水ネット
2 横糸
3 縦糸
4 交差部
5 不織布
6 チューブ
61 貫通孔
62 内部通水空隙
8 被覆部
81 孔
9 補強線体

Claims (4)

  1. 表面より内部に連通する多数の孔を備えた合成樹脂よりなる被覆部が一体化されて外部に連通する内部通水空隙を有する横糸と可撓性を有する縦糸とを、縦横にそれぞれ所定間隔をあけて並列して略直角に交差させ、すべての交差部を固着したことを特徴とする排水ネット。
  2. 横糸が、不織布、周面に多数の貫通孔を有するチューブ、綿状物の集束体のいずれか、又は、これらの組合わせで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水ネット。
  3. 横糸の全長に亘って補強線体が一体化されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水ネット。
  4. 横糸が縦糸よりも太いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排水ネット。
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