JP3864105B2 - 顕微鏡用照明光学系 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は顕微鏡用照明光学系に関し、対物レンズの瞳位置に適切な光源像を形成することができる顕微鏡用照明光学系に関する。また、光量損失の少ない輪帯照明が可能な顕微鏡用照明光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は顕微鏡用照明光学系の基本構成を示す全体図である。照明光学系は、光源1と、光源1からの発散された光束を略平行光束に変換するコレクタレンズ2と、光源像4を結像させる中間結像レンズ10と、中間結像レンズ10を介して光源像4を形成した後に発散する光束を再び結像して光源像を対物レンズの瞳位置6に投影する投影レンズ5とを有して構成されている。
【0003】
また、このような構成に加えて、更に、光源と共役の位置に、リング状の開口絞り(リング状開口)を配置した構成がある。この構成は、暗視野照明光学系として知られている。また、リング状開口の開口部の大きさを調整することで、観察物体を照明する角度をコントロールすることができる。これを利用して、照明光をカバーガラスと観察物との境界で全反射させ、観察物側に僅かに沁み出るエバネッセント波を用いて照明する方法が「Axelrod D.Total internal reflection fluoresence at biological surfaces. Noninvasive techniques in cell biology. New York,NY:Wiley-Liss,Inc.,1990.」等により知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、水銀ランプのような発光面積の小さい光源の場合、対物レンズの瞳位置に適切な大きさの光源像を形成しようとすると、照明に必要な照射角を得ることができないという問題があった。また、暗視野照明では、リング状開口の遮蔽部で殆どの照明光が遮られてしまうため、明るく照明することが出来ないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、対物レンズの瞳位置に適切な大きさと照射角度を有する光源像を形成可能な顕微鏡用照明光学系を提供することを目的とする。また、照明効率を著しく落とすことのない輪帯照明が可能な顕微鏡用照明光学系を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本第1の発明による顕微鏡用照明光学系は、光源と、前記光源からの発散された光束を略平行光束に変換するコレクタレンズと、光源像を結像させる中間結像レンズと、前記中間結像レンズを介して光源像を形成した後に発散する光束を再び結像して光源像を対物レンズの瞳位置に投影する投影レンズとを有する顕微鏡用照明光学系において、前記中間結像レンズが、その頂角が1点を中心として回転方向に合計で360°になるように並べられた複数の扇形レンズ面の集合からなり、前記各々の扇形レンズ面の光軸が、その頂角近傍に位置し、かつ、前記1点を中心とする同心円上に並べられていることを特徴とする。
【0007】
また、本第2の発明による顕微鏡用照明光学系は、本第1の発明において、前記光源と共役な位置にリング状開口が配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本第3の発明による顕微鏡用照明光学系は、本第1又は本第2の発明において、前記各扇形レンズ面における頂角を形成する2つの直線部の1つの長さをR、前記各扇形レンズ面における光軸位置から前記頂角を形成する2つの直線部の交差する点までの距離をXとしたとき、次の条件式(1)を満足することを特徴とする。
0.02 < X/R < 0.25 …(1)
【0009】
【発明の実施の形態】
本実施の形態では、光源像を結像させる中間結像レンズを、複数の扇形レンズ面の集合で構成し、複数の光源像を形成させるようにしている。そして、扇形レンズ面の数や屈折力を適切に設定することで、異なるパターンの光源像を形成できるようにしている。複数の扇形レンズ面を介して形成された各々の光源像は、光源と共役位置に置かれたリング状開口の開口部付近に形成される。
【0010】
扇形レンズ面の詳細を図1に示す。中間結像レンズ3は、複数の扇形レンズ面3aの集合で構成されている。扇形レンズ面3aは、中間結像レンズの直径よりも小さな直径を有する円の一部を扇形に切り取った形状である。また、切り取られた扇形には、元の円中心Oを含んでいる。本実施の形態では、この元の円中心Oを扇形レンズの光軸とする。
また、数の扇形レンズ面3aは、その頂角を1点に向けて配置されている。そして、その1点を中心として回転方向に合計で360°になるように並べられている。また、各々の扇形レンズ面3aの光軸Oは、その頂角近傍に位置し、かつ、1点Pを中心とする同心円上に位置している。
なお、回転方向に合計で360°になるように扇形レンズ面を並べるには、扇形レンズ面の数は3〜8個程度が適当である。ただし、2個〜12個程度でも良い。また、中間結像レンズ3は、扇形レンズ面をもつレンズを複数個集めて構成しても、又は、複数個の扇形レンズ面を集めた形状に一体形成されたレンズを用いて構成しても良い。
【0011】
また、本発明における中間結像レンズ3は、各扇形レンズ面3aにおける頂角を形成する2つの直線部の1つの長さをR、各扇形レンズ面3aにおける光軸Oの位置から頂角を形成する2つの直線部の交差する点(すなわち点P)までの距離をXとしたとき、次の条件式(1)を満足している。
0.02<X/R<0.25 …(1)
X/Rが0.02を下回る場合には、各々の扇形レンズ面を経た各々の光源像の間隔が狭く、開口径の小さなリング状開口に対して適切な照明となる。しかし、そのサイズがあまりにも小さくなりすぎるため、実施用可能な照明系の設計や、リング状開口の製造が困難となる。
一方、X/Rが0.25を上回る場合には、各々の扇形レンズ面を経た各々の光源像の間隔が広く、開口径の大きなリング状開口に対して適切な照明となる。しかし、開口部を通過する光線の開口角αが小さくなり観察物体側の照明範囲が狭くなるので、観察可能な視野が狭くなり、照明ムラも増すという問題が生じる。
【0012】
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1
図2は本発明による顕微鏡用照明光学系の第1実施例を示す要部説明図であり、(a)は中間結像レンズの構成を示す正面図、(b)は中間結像レンズから光源像位置までの光束の結像状態を示す説明図、(c)は光源像位置における光源像の様子を示す図である。
本実施例の顕微鏡用照明光学系は、基本構成は図6に示す従来のものと同様である。光源1と、光源1からの発散された光束を略平行光束に変換するコレクタレンズ2と、光源像4を結像させる中間結像レンズ3と、中間結像レンズ3を介して光源像4を形成した後に発散する光束を再び結像して光源像を対物レンズの瞳位置6に投影する投影レンズ5とを有している。
本実施例では、従来の照明光学系とは異なり、中間結像レンズ3が図2(a)に示したように、4つの扇形レンズ面3aの集合からなっている。この4つの扇形レンズ面3aは、その頂角が1点Pを中心として回転方向に合計で360°になるように並べられている。また、各々の扇形レンズ面3aの光軸Oが、その頂角3bの近傍に位置し、かつ、1点Pを中心とする同心円上に並べられている。
本実施例の中間結像レンズ3は、各扇形レンズ面3aにおける頂角3bを形成する2つの直線部の1つの長さをR、各扇形レンズ面3aにおける光軸Oの位置から頂角を形成する2つの直線部の交差する点Pまでの距離をXとしたときのX/Rが0.067となっている(R=15mm,X=1mm)。
【0013】
本実施例の照明光学系では、中間結像レンズ3は4つの扇形レンズ面3aを有している。そのため図2(c)に示すように、4つの光源像4が形成される。本実施例では、この4つの光源像全てが重なり合う領域を有するように、扇形レンズ面3aの形状が選択されている。したがって、光源像4全体は、一つの大きな光源とみなすことができる。よって、水銀ランプのような発光面積の小さな光源でも、従来の中間結像レンズ10に比べて大きな光源像を形成することができる。この結果、この光源像を対物レンズの瞳位置に投影するにあたって、必要な面積と入射角度を有する光源像を、対物レンズの瞳位置に形成することが容易にできる。
【0014】
次に、本発明の実施例2を比較例と比較して説明する。
実施例2
図3は本発明による顕微鏡用照明光学系の第2実施例を示す要部説明図であり、(a)は中間結像レンズの構成を示す正面図、(b)は中間結像レンズからリング状開口までの光束の結像状態を示す説明図、(c)は光源像位置における光源像の様子を示す図である。
本実施例の顕微鏡用照明光学系も、基本構成は図6に示す従来のものと同様である。なお、光源像4の位置には、リング状開口7が配置されている。
本実施例では図3(a)に示すように、中間結像レンズ3が8つの扇形レンズ面3aの集合からなっている。この8つの扇形レンズ面3aは、その頂角が1点Pを中心として回転方向に合計で360°になるように並べられている。また、各々の扇形レンズ面3aの光軸Oが、その頂角3bの近傍に位置し、かつ、1点Pを中心とする同心円上に並べられている。
本実施例の中間結像レンズ3は、各扇形レンズ面3aにおける頂角3bを形成する2つの直線部の1つの長さをR、各扇形レンズ面3aにおける光軸Oの位置から頂角を形成する2つの直線部の交差する点Pまでの距離をXとしたときのX/Rが0.1となっている(R=15mm,X=1.5mm)。
【0015】
本実施例の照明光学系では、中間結像レンズ3は8つの扇形レンズ面3aを有している。そのため図3(c)に示すように、8つの光源像4が形成される。しかも本実施例では、隣り合う光源像のみが重なり合うように、扇形レンズ面3aの形状が選択されている。したがって、光源像4全体は、輪帯形状になっている。よって、従来のリング状開口を用いる場合に比べて、光量を殆ど損失することなく輪帯照明が行える。
また、光源像4の位置にリング状開口7を配置した場合であっても、光源像4がの開口部7a付近に結像する。このため、本実施例の照明光学系によれば、リング状開口7の遮蔽部7bによる光量損失を大幅に抑えることができる。また照明光の開口角αを充分に確保することができる。
【0016】
従って、本実施例の照明光学系によれば、扇形レンズ面3aの集合と、リング状開口7(この場合のリング開口は、照明光がカバーガラスと観察物体との境界で全反射する角度で照明するように設計されている)とを併用することで、照明効率を著しく落とすことなく、コントラストの良い蛍光観察を行うことが可能となる。また照明光の開口角αが充分に確保されているので、照明ムラが無く、広い観察視野が得られる。
【0017】
比較例1
図4は本実施例に対する第1比較例を示す要部説明図であり、(a)は中間結像レンズの構成を示す正面図、(b)は中間結像レンズからリング状開口までの光束の結像状態を示す説明図である。
第1比較例の照明光学系は、中間結像レンズ3が単一の凸レンズ3cで構成されている。第1比較例の構成では、図4に示すように、照明光の殆どが、リング状開口7の遮蔽部7bで遮られる。よって、図3に示す扇形レンズ3を用いて構成した実施例のような明るい照明が得られない。
【0018】
比較例2
図5は本実施例に対する第2比較例を示す要部説明図であり、(a)は中間結像レンズの構成を示す正面図、(b)は中間結像レンズからリング状開口までの光束の結像状態を示す説明図である。
第2比較例の照明光学系は、中間結像レンズ3が円形の微小レンズ3dの集合で構成されている。第2比較例の構成では、図5に示すように、一部の微小レンズ3dを透過した光はリング状開口7の開口部7aを通り照明光となるが、開口角αが小さいため、観察視野の一部しか照明することができない。
【0019】
【発明の効果】
本発明の顕微鏡用照明光学系によれば、照明効率を著しく落とすことなく、コントラストの良い蛍光観察を行うことが可能な顕微鏡用照明光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の顕微鏡用照明光学系に用いる中間結像レンズの一構成例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は扇形レンズ面の詳細を示す説明図である。
【図2】本発明による顕微鏡用照明光学系の第1実施例を示す要部説明図であり、(a)は中間結像レンズの構成を示す正面図、(b)は中間結像レンズからリング状開口までの光束の結像状態を示す説明図、(c)は光源像の様子を示す図である。
【図3】本発明による顕微鏡用照明光学系の第2実施例を示す要部説明図であり、(a)は中間結像レンズの構成を示す正面図、(b)は中間結像レンズからリング状開口までの光束の結像状態を示す説明図、(c)は光源像の様子を示す図である。
【図4】本実施例に対する第1比較例を示す要部説明図であり、(a)は中間結像レンズの構成を示す正面図、(b)は中間結像レンズからリング状開口までの光束の結像状態を示す説明図である。
【図5】本実施例に対する第2比較例を示す要部説明図であり、(a)は中間結像レンズの構成を示す正面図、(b)は中間結像レンズからリング状開口までの光束の結像状態を示す説明図である。
【図6】顕微鏡用照明光学系の基本構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 光源
2 コレクタレンズ
3、10 中間結像レンズ
4 光源像
5 投影レンズ
6 対物レンズの瞳位置
7 リング状開口
7a 開口部
7b 遮蔽部
3a 扇形状レンズ面
3b 扇形レンズ面の頂角
3c 凸レンズ
3d 微小レンズ

Claims (3)

  1. 光源と、前記光源からの発散された光束を略平行光束に変換するコレクタレンズと、光源像を結像させる中間結像レンズと、前記中間結像レンズを介して光源像を形成した後に発散する光束を再び結像して光源像を対物レンズの瞳位置に投影する投影レンズとを有する顕微鏡用照明光学系において、
    前記中間結像レンズが、その頂角が1点を中心として回転方向に合計で360°になるように並べられた複数の扇形レンズ面の集合からなり、
    前記各々の扇形レンズ面の光軸が、その頂角近傍に位置し、かつ、前記1点を中心とする同心円上に並べられていることを特徴とする顕微鏡用照明光学系。
  2. 前記光源と共役な位置にリング状開口が配置されたことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用照明光学系。
  3. 前記各扇形レンズ面における頂角を形成する2つの直線部の1つの長さをR、前記各扇形レンズ面における光軸位置から前記頂角を形成する2つの直線部の交差する点までの距離をXとしたとき、次の条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の顕微鏡用照明光学系。
    0.02 < X/R < 0.25
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