JP3863746B2 - インクジェット捺染方法およびインクジェット捺染物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維とセルロース繊維からなる布帛をインクジェット捺染する方法およびその方法によって得られたインクジェット捺染物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル繊維とセルロース繊維からなる布帛を堅牢度良く染色する場合は、一般的に分散染料と反応染料を用いている。分散染料を用いてポリエステル繊維をインクジェット方式で染色する場合は酸性の処理液を布帛に付与することが一般的である。
また、反応染料を用いてセルロース繊維をインクジェット方式で染色する場合はアルカリ性の処理液を布帛に付与している。
しかし、分散染料はアルカリ性では不安定であり、処理液をアルカリ性にした場合は、再現性良く同一色調の捺染物を得ることは困難である。
また、反応染料は処理液が酸性の場合セルロース繊維との染着率が低いため満足した濃度を得ることは困難である。
【0003】
かかる問題を解決するために2工程による染色が検討されているがコストアップや再現性等の問題があり実用化には至っていない。
また、耐アルカリ性の分散染料、あるいは酸性のpH領域でセルロース繊維に染着する反応染料の開発も行われているが、満足する濃度、鮮明性が得られないのが現状である。
【0004】
これらの具体的な例として、例えば特開昭56―4784号には第4級窒素置換基を有する1個以上のS−トリアジニル基を用いて酸結合剤なしにセルロース系繊維を染色する方法が開示されている。
また、特開昭58−186682号にはニコチン酸を有する1個以上のS−トリアジニル基を有する染料を用いて弱酸性からアルカリ性のpH領域でセルロース系繊維を染色する方法の開示がある。
さらに、特開平5−209375号にはピリジン誘導体を有する1個以上のS−トリアジニル基を有する染料を用いて弱酸性から中性のpH領域でセルロース系繊維を染色する方法が開示されている。
【0005】
これらはいずれもトリアジニル基を有する反応染料に置換基を付与し、一般的な捺染及び吸尽染色方法によりセルロース系繊維を反応染料で染色するものである。
しかしこれらを単純に利用してインクジェット捺染を行っても満足する濃度、鮮明性、均染性を得ることはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決し、染料を含むインクを合成繊維とセルロース繊維からなる布帛にインクジェット方式により捺染し、高濃度で鮮明性に優れた複合繊維捺染物を得ることができるインクジェット捺染方法およびインクジェット捺染物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するもので次の構成よりなるものである。
すなわち、本発明の第1は、セルロース繊維及び合成繊維から成る布帛を反応染料と分散染料を用いてインクジェット捺染するに際し、予め該布帛に繊維素反応性化合物、水溶性ポリマー、及び融点が40℃〜150℃である非水溶性不活性有機化合物を含む酸性の水性分散液を付与し、そして乾燥処理を行うことを特徴とするセルロース繊維及び合成繊維から成る布帛のインクジェット捺染方法である。
本発明の第2は、繊維素反応性化合物が窒素含有有機化合物である本発明第1の方法である。
本発明の第3は、繊維素反応性化合物が1又は2個の環窒素をもつ脂環族又は芳香族化合物である本発明第1又は第2の方法である。
本発明の第4は、繊維素反応性化合物がピリジンカルボン酸系化合物及びピリジンカルボン酸アミド系化合物から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする本発明第1〜3のいずれか1項に記載の方法である。
本発明の第5は、非水溶性不活性有機化合物が炭化水素系ワックス化合物、脂肪酸アミド系化合物、及び多価アルコール脂肪酸エステル系化合物から選択される少なくとも1種から成る本発明第1〜4のいずれか1項記載の方法である。
本発明の第6は、合成繊維が、ポリエステル繊維またはアセテート繊維であることを特徴とする本発明第1〜5のいずれか1項記載の方法である。
本発明の第7は、本発明第1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット捺染方法によって製造されたインクジェット捺染物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成についてポリエステル繊維とセルロース繊維の混合布帛を例に挙げて詳細に説明する。
反応染料とセルロース繊維の反応は、電離したCell−O−(セルロースイオン)と反応染料の求核置換反応または求核付加反応によって進むことは公知となっている。
セルロース繊維のイオン化はpHの上昇によって進み、Cell−O−濃度がpH7では3×10−6のものが、pH10では3×10−3 と1000倍にも上昇する。
これにともない反応染料とセルロース繊維の反応率も1000〜100000倍高くなるといわれ、一般的に反応染料とセルロース繊維との染色はpH9〜12のアルカリ性で行われている。
【0009】
ところが、このpH領域でポリエステル繊維を分散染料で染色した場合、再現性や均染性不良という問題が生じてしまう。(分散染料でポリエステル繊維を問題なく染色するには酸性から中性のpH領域が適している。)
ポリエステル繊維とセルロース繊維からなる複合繊維について満足のいく濃度、鮮明性を有したインクジェット捺染物を得るためには酸性から中性でのpH領域でセルロース繊維を活性化させセルロースイオンの数を増やし反応染料との反応率を高める必要がある。
【0010】
本発明の繊維素反応性化合物を用いた場合に、弱酸性から中性のpH領域にもかかわらず反応染料とセルロース繊維の反応率が上昇する。
これらが効果を上げる理由は定かではないが、第1に繊維素反応性化合物を使用した場合にセルロース繊維が活性化されてセルロースイオンの数、つまり、セルロースの活性座席が増え、反応染料はセルロース繊維と求核置換反応または求核付加反応により共有結合を形成し着色を達成することができると推定される。
また、第2に反応染料と反応した繊維素反応性化合物がプラスに帯電しているため、マイナスのセルロースイオンとの直接性がアップするという効果も推定できる。
繊維素反応性化合物を用いることでこれらの2つの相乗効果により弱酸性から中性のpH領域にもかかわらず反応染料とセルロース繊維の反応率が上昇し、分散染料によるポリエステル繊維の染色に影響を与えることなく、満足すべき同色性、再現性を有したセルロース繊維とポリエステル繊維からなる複合繊維のインクジェット捺染物を得ることができる。
【0011】
本発明ではインクジェット捺染する前に布帛を、繊維素反応性化合物、水溶性ポリマー、及び融点が40℃〜150℃である非水溶性不活性有機化合物を含む酸性の水性分散液(以下処理液と称する)で処理することを要する。
水溶性ポリマーはインク保持剤として機能するものであり、具体例としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、クリスタルビアガム、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、デンプン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等のインク保持剤として知られた水溶性ポリマーが挙げられる。
高濃度、高堅牢度、鮮明性の点から高置換度のカルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
水溶性ポリマーは処理液中に通常0.3〜10.0重量%存在させる。
本発明で用いる繊維素反応性化合物とは、上述したとおり反応染料とセルロース繊維との反応を促進させる薬剤のことを言い、具体的にはピリジン系化合物、ピラジン系化合物、キノリン系化合物、ピペリジン系化合物、ピペラジン系化合物等の1又は2個の環窒素をもつ脂環族又は芳香族化合物及びアミノ酸系化合物等から選択できる。
ピリジン系化合物としては、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、ジニコチン酸、ジピコリン酸等のピリジンカルボン酸系化合物、ニコチン酸アミド、ピコリン酸アミド等のピリジンカルボン酸アミド系化合物、ピリジンメタノール、α―ピコリン、β―ピコリン等のメチルピリジン系化合物、ピリジルアミン、ジメチルピリジンアミン等のアミノピリジン系化合物等をあげることができる。
ピラジン系化合物としてはピラジンモノカルボン酸、ピラジンジカルボン酸、カルバモイルピラジンカルボン酸等のピラジンカルボン酸系化合物、ジメチルピラジン、メチルピラジン等のメチルピラジン系化合物が挙げられる。
キノリン系化合物としては、ヒドロキシキナルジン、メチルカルボスチリル、キナルジン等のメチルキノリン系化合物、キナルジン酸、キヌレン酸、キニン酸等のキノリンカルボン酸系化合物が挙げられる。
ピペリジン系化合物としては、2―ピペコリン、3−ピペコリン、4-ピペコリン等のメチルピペリジン系化合物、ピペコリン酸、ニペコチン酸、イソニペコチン酸等のピペリジンカルボン酸系化合物が挙げられる。
ピペラジン系化合物としては、ジメチルピペラジン、ピリミジルピペラジン、2−メチルピペラジン、アミノメチルピペラジン等が挙げられる。
アミノ酸系化合物としては、L―アラニン、グリシン、グルタミン、L−プロリン等があげられる。
なかでも、反応を促進させる効果の高いピリジン系化合物が好ましく、特にピリジンカルボン酸系化合物及びピリジンカルボン酸アミド系化合物が好ましい。
これらの繊維素反応性化合物は処理液中に0.3〜5.0重量%存在させることが好ましい。
【0012】
また、セルロース繊維とポリエステル繊維からなる複合繊維のインクジェット捺染物においてさらに満足すべき濃度、鮮明性を得るためには上記の繊維素反応性化合物に非水溶性不活性有機化合物を併用する必要がある。
セルロース繊維は親水性、ポリエステル繊維は疎水性であるため、両繊維に同時にインクジェット捺染を行った場合は、インクの吸収性・浸透性等に差が生じ、同色性不良、均染性不良の問題が起こりうる。
そこで、非水溶性不活性有機化合物で繊維布帛表面を処理することにより、他の併用成分との相互作用もあり、繊維布帛表面を平滑にしてセルロース繊維及びポリエステル繊維の両繊維の表面を均一に疎水性化することができるため、染料インクは布帛表面に均一に付与される。
また、染料インク中の水成分も布帛内部に浸透することなく印写されたインク受容層の表層にとどまる。
このような作用に基づき、高濃度で滲みの少ない印写物を得ることが可能となる。
【0013】
非水溶性不活性有機化合物としては、融点が40℃〜150℃の範囲の有機モノマー、オリゴマー又は低分子量ポリマーが用いられる。これらの数平均分子量は、通常10000以下、好ましくは5000以下、更に好ましくは100〜2000である。
分子量が大きすぎると融点が高くなるだけでなく、乳化分散しにくくなる。
融点が40℃未満の場合は加工安定性、製品の保管安定性に問題があり、150℃以上の場合は溶融させるための熱処理温度が高温になるため布帛の黄変、劣化等の問題が発生すると同時に風合いを損ねる場合がある。
【0014】
本発明に用いられる非水溶性不活性有機化合物の例としては、低分子量合成樹脂類、炭化水素系ワックス化合物、天然系ワックス化合物、高級脂肪酸アミド系化合物、高級アルコール系化合物、多価アルコール高級脂肪酸エステル系化合物等がある。より具体的には、非水溶性低分子量合成樹脂の例としては、低分子量のナイロン、ポリ塩化ビニル等があり、炭化水素系ワックス化合物としては、ポリエチレン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の低級アルキレンポリマー系化合物、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックスなどの石油化学系合成ワックス類があり、天然系ワックス化合物としては、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウなどの植物性ワックス類、モンタンワックス、オゾケイライト、セレシン等の鉱物系ワックス類があり、高級脂肪酸アミド系化合物としては、エチレンビスステアリンアミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、メチロールステアリンアミド、12―ヒドロキシステアリン酸アミド等があり、高級アルコール系化合物としては、エトキシルセチルアルコール、エトキシルステアリルアルコール等があり、多価アルコール高級脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリンオレイン酸エステル、グリセリンステアリン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールステアリン酸エステル、12―ヒドロキシステアリン酸エステル等がある。これらのうちでも、炭化水素系ワックス化合物、高級脂肪酸アミド系化合物、または多価アルコ−ル高級脂肪酸エステル系化合物が好ましい。また、これらのうち炭化水素系ワックスと他の化合物の混合物は乳化分散性に優れる等の点で特に好ましい。
【0015】
これらは処理液中に乳化分散される。処理液中の濃度は0.5〜20.0重量%が好ましい。0.5重量%以下ではインクを布帛表面に留めて、インクの浸透防止効果や、濃度を向上させる効果が期待できず、20重量%以上では効果の大きな向上が期待できないばかりでなく、インク吸収が悪くなり、滲みや均染性の不良が起こり得る。
処理液は酸性に調節される。その際のpHは4.5〜6.5の範囲が好ましい。
【0016】
本発明でいう布帛としては、織物、編物、不織布、組み紐等を問わずあらゆる布帛組織を用いることができるが、特に織物、編物が好ましい。
布帛を構成する素材は、合成繊維としてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど種々のポリエステル繊維、ジアセテート、トリアセテートなどのアセテート繊維、ナイロン6,ナイロン6.6等のポリアミド繊維等が挙げられる。なお、アセテート繊維は一般的には半合成繊維に分類されるが、本発明では合成繊維に含めるものとする。このうち、中性ないし弱酸性サイドで染着可能なポリエステル繊維またはアセテート繊維が好ましい。
また、セルロース繊維として綿、麻等の天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維等があげられる。
なお、合成繊維とセルロース繊維の混率については特別な制限はないが、通常は重量比がセルロース繊維/合成繊維=95/5〜5/95のものが用いられる。
【0017】
本発明のインクジェット捺染方法に用いる処理液には必要に応じて、難燃剤、紫外線吸収剤、還元防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、ヒドロトロープ剤、消泡剤、浸透剤、ミクロポーラス形成剤等を適宜添加しても差し支えない。
【0018】
難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノール、塩素化パラフィン、デカブロムジフェニルエーテル等のハロゲン系難燃剤、トリクレジルホスフェート、クロロホスフェート、トリエチルホスフェート等のリン系難燃剤、及び三酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸等の無機系難燃剤がある。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等がある。
還元防止剤としては、ニトロベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸誘導体等がある。
酸化防止剤としては、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール等がある。
pH調整剤としては、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、リン酸二水素カリウム等の酸性調整剤や、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム等のアルカリ性調整剤がある。
ヒドロトロープ剤としては、尿素、ポリエチレングリコール、チオ尿素等がある。
消泡剤としては、イソプロパノール、エタノール、n―ブタノール等の低級アルコール、オレイン酸、ポリプロピレングリコール等の有機極性化合物、及びシリコーン樹脂がある。
浸透剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム、オレイン酸ブチルエステル等のアニオン性界面活性剤、及びノニルフェノールEO、ラウリルアルコールEO等のノニオン性界面活性剤がある。
ミクロポーラス形成剤としては、水不溶性または難溶性で沸点が105〜200℃の低沸点液体を微粒子状態で均一に水中に乳化分散させたものが好ましく用いられる。低沸点液体としては、炭化水素系のトルエン、キシレン、ハロゲン化炭化水素系のパークロルエチレン、モノクロルベンゼン、ジクロルペンタン、有機酸系の酢酸ブチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0019】
上記処理液を布帛に付与する方法としては、パッド法、スプレー法、浸漬法、コーティング法、ラミネート法、グラビア法、インクジェット法などいずれの方法でも可能である。処理液の温度は通常、常温(20℃〜40℃)である。
【0020】
布帛に処理液を付与した後は、乾燥処理することが必要である。処理温度は用いられる非水溶性不活性有機化合物の融点・軟化点以上が好ましい。但し、乾燥温度が80℃以下では効率的に乾燥しにくいと云う問題があり、180℃以上では水溶性ポリマーの劣化及び変色が生じるという問題があるため、実際の乾燥温度は好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜150℃が適当である。また、乾燥時間が0.5分以下では被膜形成のバラツキ及び乾燥不良が生じるという問題があり、60分以上では水溶性ポリマーの劣化及び退色が生じるという問題がある。そのため、乾燥時間は0.5〜60分が適当であり、好ましくは1〜20分が最適である。
このように熱処理することによって、非水溶性不活性有機化合物が溶融して繊維表面を覆うことによりセルロース繊維及びポリエステル繊維の両繊維の表面を均一に疎水化することができるため、染料インクは布帛表面に均一に付与される。
本発明に使用される染料インクは、反応染料と分散染料を含有していればよい。例えば、反応染料からなるインクと分散染料からなるインクそれぞれを用いてもよいし、これらを混合したインクを用いてもよい。これら染料は適宜公知のものを用いうる。具体例としては、アゾ系、含金属アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、ホルマザン系、オキサジン系等の反応染料、アゾ系、ベンゼンアゾ系、ジスアゾ系、アントラキノン系、クマリン系、キノリン系、ニトロ系等の分散染料がある。
【0021】
インクジェット印写方法としては、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式などの連続方式、ステメ方式、パルスジェット方式、バブルジェット方式、静電吸引方式などのオン・デマンド方式などいずれも採用可能である。
また、インクには必要に応じて分散剤、消泡剤、浸透剤、pH調整剤等を添加することが可能である。
【0022】
通常、染料インクを布帛に付与した後に湿熱処理が行われる。湿熱条件は通常、温度が150〜190℃、時間が0.5〜60分であるが、好ましくは温度が160〜180℃、時間が5〜30分である。
150℃以下では染料の発色不良の問題があり、190℃以上では生地や水溶性高分子の黄変、あるいは樹脂の硬化の問題がある。時間が0.5分以下では発色にバラツキを生じるという問題があり、60分以上では退色が進み水溶性高分子が劣化するという問題がある。
このような方法で処理液の付与、インクジェット印写、および被印写物の湿熱処理が行われ、最後に洗浄、乾燥することによって本発明の捺染物が得られる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
評価方法
(1)濃度
ブルーのインクをベタ印写した部分を、反射濃度計(マクベスRD918:マクベス社製)を用いて測定した。数値が高いほど良好である。
(2)鮮明性
得られた捺染物の鮮明性を目視で評価した。
○:色彩が鮮明である
△:色彩がやや鮮明である
×:色彩が鮮明でない
(3)同色性
得られた捺染物のセルロース繊維部分と合成繊維部分の色相を目視で評価した。
○:セルロース繊維と合成繊維が同じ色相で染まっている
△:セルロース繊維と合成繊維がほぼ同じ色相で染まっている
×:セルロース繊維と合成繊維の色相が違う
【0024】
〔実施例1〕
ポリエステル50%、綿50%の平織物に、次の組成の処理液をパッド法で付与した。
▲1▼処理液(pH 5.2)
水溶性高分子:セロゲンPR 2部
(第一工業製薬(株)製:カルボキシメチルセルロース系)
イソニコチン酸 1部
リポオイルNT−15 3部
(日華化学株式会社製 多価アルコール高級脂肪酸エステル系化合物、炭化水素系ワックス化合物:融点60℃)
pH調整剤 :リン酸水素二ナトリウム 1部
尿素 3部
水 : 90部
次に、130℃で2分間の乾燥を行った後、以下の処方のインクを使用してオン・デマンド方式シリアル走査型インクジェット印刷装置にて以下の印写条件でフルカラー画像をプリントした。
【0025】
▲2▼インク処方
分散染料インク
分散染料 5部
リグニンスルホン酸塩(アニオン性界面活性剤) 4部
信越シリコーン KM−70(消泡剤) 0.05部
信越化学工業(株)製
エチレングリコール 10部
ケイ酸 0.1部
イオン交換水 80部
尚、使用した染料は、C.I.Disperse Yellow 149、C.I.Disperse Red 92、C.I.Disperse Blue54であった。
反応染料インク
反応染料 10部
イオン交換水 90部
尚、使用した染料は、C.I.Reactive Yellow 85、C.I.Reactive Red 24、C.I.Reactive Blue 176であった。
【0026】
▲3▼印写条件
ノズル径;40μm
駆動電圧;100V
周波数 ;5KHz
解像度 ;360dpi(4×4マトリックス)
次いで、175℃の過熱蒸気で7分間の湿熱処理を行った。その後、洗浄・乾燥を行って捺染物を得た。その結果を表1に示す。
【0027】
〔実施例2〕
ポリエステル30%、レーヨン70%の平織物に、次の組成の処理液をパッド法で付与した。
▲1▼処理液(pH 5.8)
水溶性高分子:PVA205 2部
(クラレ(株)製;ポリビニルアルコール系)
ピコリン酸アミド 1部
リポオイルNT−6 5部
(日華化学株式会社製 多価アルコール高級脂肪酸エステル系化合物:融点70℃)
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、印写条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、洗浄・乾燥を行って捺染物を得た。その結果を表1に示す。
【0028】
〔実施例3〕
ポリエステル70%、綿30%の平織物に、次の組成の処理液をコーティング法で付与した。
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、印写条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、洗浄・乾燥を行って捺染物を得た。その結果を表1に示す
【0029】
〔比較例1〕
実施例1と同様の平織物に、次の組成の処理液をパッド法で付与した。
処理液(pH 8.2)
水溶性高分子:セロゲンPR 2部
(第一工業製薬(株)製:カルボキシメチルセルロース系)
pH調整剤 :炭酸水素ナトリウム 1部
尿素 3部
水 : 94部
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、印写条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、洗浄・乾燥を行って捺染物を得た。
その結果を表1に示す。
【0030】
〔比較例2〕
実施例1と同様の平織物に、次の組成の処理液をパッド法で付与した。
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、印写条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、洗浄・乾燥を行って捺染物を得た。その結果を表1に示す。
【0031】
〔比較例3〕
実施例1と同様の平織物に、次の組成の処理液をパッド法で付与した。
処理液(pH 7.3)
水溶性高分子:セロゲンPR 2部
(第一工業製薬(株)製:カルボキシメチルセルロース系)
リポオイルNT−15 3部
(日華化学株式会社製 多価アルコール高級脂肪酸エステル系化合物、炭化水素系ワックス化合物:融点60℃)
pH調整剤 :リン酸水素二ナトリウム 1部
尿素 3部
水 : 91部
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、印写条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、洗浄・乾燥を行って捺染物を得た。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
本発明により得られた捺染物は、高濃度で鮮明性、同色性が良好で、優れた品位を得ることができた。このように、本発明を実施することにより合成繊維及びセルロース繊維からなる布帛においても、極めて高品質のインクジェット捺染が可能となった。
Claims (7)
- セルロース繊維及び分散染料で染着可能な合成繊維から成る布帛を反応染料と分散染料を用いてインクジェット捺染するに際し、予め該布帛に繊維素反応性化合物、水溶性ポリマー、及び融点が40℃〜150℃である非水溶性不活性有機化合物を含む酸性の水性分散液を付与し、そして用いた非水溶性不活性有機化合物の融点以上の温度で乾燥処理を行うことを特徴とするセルロース繊維及び合成繊維から成る布帛のインクジェット捺染方法。
- 繊維素反応性化合物が窒素含有有機化合物である請求項1記載の方法。
- 繊維素反応性化合物が1又は2個の環窒素をもつ脂環族又は芳香族化合物である請求項1又は2記載の方法。
- 繊維素反応性化合物がピリジンカルボン酸系化合物及びピリジンカルボン酸アミド系化合物から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 非水溶性不活性有機化合物が炭化水素系ワックス化合物、脂肪酸アミド系化合物、及び多価アルコール脂肪酸エステル系化合物から選択される少なくとも1種から成る請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- 合成繊維が、ポリエステル繊維またはアセテート繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット捺染方法によって製造されたインクジェット捺染物。
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Publications (2)
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