JP3862912B2 - 印刷物検査方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷機から出力される印刷物の検査方法に関する。
【0002】
印刷機から出力される印刷物は所望の色で印刷される必要がある。しかし、印刷作業はインキ成分の変化、あるいは、刷り圧力の変化等の変動要素に左右されるため、印刷物が所望色からずれてくることがある。
【0003】
本発明は、印刷物が所望の色で印刷されているかどうかを検査する検査方法に関する。
【0004】
【従来技術】
従来から、印刷物の「濃度ムラの検出」「色調異常判定」等を行う検査装置を備えた印刷装置では、以下のようにして検査が行われている。
【0005】
まず、正常な印刷物を出力する。このとき、印刷物を技能のある担当者が目視して、「濃度ムラ」「色調異常」がないかチェックする。そして、正常な印刷物が得られると、その印刷物を読取手段で読み取って読取画像を基準画像として保存する。
【0006】
以上の準備の後、実際に印刷を行い、印刷出力毎に、印刷物の読取画像と基準画像との階調の差分をとり、該差分が所定のしきい値を越えていれば、「濃度ムラ」「色調異常」があると判定する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この方法の場合以下のような問題がある。
【0008】
▲1▼ 基準画像を得るのに熟練工が必要である。
【0009】
▲2▼ 基準画像を読み取るときの条件と、印刷物判定のために印刷物を読み取るときの条件とを一致させなければならない。すなわち、読み取りを開始する位置、走査線、解像度、読み取り倍率等をあわせる必要がある。
【0010】
▲3▼ 網点レベルでの細かい検査ができない。
【0011】
【課題を解決するための手段および効果】
第1の発明に係る印刷物検査方法は、検査対象の印刷物において実現される、網点の重なり方によって区別される複数の領域のそれぞれについての理想色を表色値と対応づけた理想色テーブルを準備する準備工程と、検査対象の印刷物を、網点を構成するドットが読取可能な解像度で読み取り、検査対象の印刷物の表色値を読取画素単位で表す読取データを取得する読取工程と、前記検査対象の印刷物の読取データを前記理想色テーブルから読み出した理想色の表色値と比較し、その比較の結果に応じて、検査対象の印刷物が所望の色で印刷されているか否かを判定する判定工程とを備えている。
【0012】
仮に印刷物に濃度ムラや色調異常が生じていれば、その印刷物には、その印刷物で使用した紙やインクによって一義的に定まる理想色と異なる色の微小部分が含まれる。本発明によれば、そのような理想色と異なる色の微小部分を検出することにより、印刷物の濃度ムラや色調異常を容易に検出することができる。
【0013】
第2の発明に係る印刷物検査方法は、第1の発明の印刷物検査方法において、前記判定工程が、検査対象の印刷物を複数のブロックに区分し、それぞれのブロックに含まれる読取画素についての表色値の統計量を算出する算出工程と、前記統計量と所定の閾値とをブロック単位で比較する比較工程とを含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、印刷物の濃度ムラや色調異常をより容易に検出することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
<1.本発明の考え方>
印刷物は、紙の上に単色ないし複数色のインキを選択的に付着させることで作成される。したがって、CMYK4色のインキを使用する場合、微視的には、どの色のインキも刷られていない部分と、1色のインキのみが刷られた部分、2色のインキが刷り重ねられた部分、3色のインキが刷り重ねられた部分、4色のインキが刷り重ねられた部分、のいずれかの微小部分からなっており、その組み合わせは16通りである。すなわち、原稿は、紙のみの色、C色、M色、Y色、K色、C色とM色の混合色、C色とY色の混合色、C色とK色の混合色、M色とY色の混合色、M色とK色の混合色、Y色とK色の混合色、C色とM色とY色の混合色、C色とM色とK色の混合色、C色とY色とK色の混合色、M色とY色とK色の混合色、C色とM色とY色とK色の混合色、の16色の微小部分で構成される。
【0016】
出力された印刷物が正常に印刷されていれば、その印刷物を高解像度(網点を構成するドットを読み取ることが可能な解像度)で読み取って得た各微小部分の色は上記16色のいずれかに収斂する。しかし、出力された印刷物に「濃度ムラ」や「色調異常」が生じている場合、その印刷物からは上記16色以外の色の微小部分が検出される。すなわち、ドットが形成される部分(インクを付着させるべき部分)なのにインクの付着の程度が悪いために十分に発色しないとか、ドットを形成すべきでない部分(紙の色とされるべき部分)なのにインクがにじんでいるとかすると、上記16色以外の微小部分が検出される。印刷物の出力異常は、印刷物の微小部分の色と上記16色との色差の量を算出することで検出できる。
【0017】
また、微小部分と理想色とのずれを色空間において算出することによって、印刷のための4色のインキの内、どのインキが不足あるいは過剰であるかを、その異常が発生している印刷物上の箇所と共に特定できる。この手法によれば、印刷物上のどの箇所で、どのインキが不足/過剰であるかが特定できるので、その箇所に相当する、印刷機のインキキーを自動的に制御することも可能である。このようにすれば、「濃度ムラ」や「色調異常」の無い印刷物が常時出力されるように印刷機を制御できる。
【0018】
<2.実施の形態のシステム構成>
図1はこの発明の一実施の形態である出力装置1のシステム構成である。以下、図1を用いてこの出力装置1について説明する。
【0019】
出力装置1は、印刷機10、読取装置20、出力異常検査装置30が適宜互いにインターフェイス(I/F)を介してバスラインBLにより接続されたシステムである。印刷機10は印刷物2を印刷し出力する。印刷物2の画像は読取装置20によって読み取られる。得られた読み取り画像データは、出力異常検査装置30にて検査され、印刷物2が所定の色で印刷されているかどうか、色調異常や濃度ムラなどの出力異常が存在するかどうか判定される。出力異常検査装置30はその判定結果に基づいて印刷機10を停止させるなどの制御を行う。
【0020】
このうち、出力異常検査装置30は、CPU31、基本的プログラムが記憶されているROM32,後述する色ムラ検出プログラム、印刷機制御プログラム等を記憶するRAM33、色ムラ検出プログラムおよび印刷機制御プログラムを磁気ディスクやCD−ROM等の記憶媒体34aから読み出す読取装置34、図示しないキーボードやマウス等からプログラムやデータを格納するハードディスク等が適宜インターフェイス(I/F)を介して内部バスラインIBにより接続された一般的なコンピュータにおいて、内部のCPU31等が色ムラ検出プログラム、印刷機制御プログラムを実行することによって実現される装置である。また、色ムラ検出プログラム、印刷機制御プログラムは予めROM32またはハードディスク37に記憶しておき、RAM33に読み出して記憶して用いるものとしてもよく、その場合にはROM32またはハードディスク37が記憶媒体として機能する。
【0021】
また、このコンピュータシステムは外部のバスラインBLに接続されており、各装置と通信を行って各種データ等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0022】
以上のような装置構成により以下に示す第1、第2の実施の形態に示す機能を実現する。
【0023】
<3.第1の実施の形態>
<<3−1.第1の実施の形態の機能的構成>>
図2はこの発明の第1の実施の形態である出力装置の機能ブロック図である。以下、図2を用いてこの出力装置1の機能について説明していく。
【0024】
まず、印刷機10について説明する。画像入力I/F部101は、図示しない外部の画像編集レイアウト装置により作成された編集済みのPS形式等の後述するRIP展開前の基画像データを受け取るインターフェイスであり、受け取った基画像データは一時的に画像メモリ106に保存された後、RIP展開部102に送られる。RIP展開部102は基画像データに対してスクリーングラデーションなどのトーン変更を行った後、階調値を網点面積に変換するために、高解像度で分布するしきい値群で2値化するRIP展開(ラスター展開)を行い、得られた2値データをビーム出力部103へ送る。すると、ビーム出力部103は、2値データに従って、高解像度でビームをON/OFF制御することにより、各色毎に、複数の版に焼き付けを行う。
【0025】
印刷部104は、複数版の画像を一枚の印刷用紙に順次刷り重ねることで該印刷用紙にカラー画像を形成する装置である。印刷部104は版を保持する版胴や、該版胴に対しインキを供給するインキキー、ブラケットシリンダー、圧胴、および圧胴に印刷用紙を供給する紙送り機構、等を備えている。なお、インキキーは版胴の軸方向に沿って複数個配置されている。各インキキーからのインキ供給量は個別に制御できるようになっている。
【0026】
また、制御系CPU105は、印刷用紙の紙送りや、RIP展開しきい値群の切換、インキキーの制御などの各部の制御を行う。
【0027】
次に、読取装置20について説明する。
【0028】
センサ読取部201は、印刷機10から出力される印刷物の中から抽出された印刷物2、または印刷機10から出力されるすべての印刷物2に照明を当てて、RGBセンサで読み取る。そして、得られた画像データは画像処理部202においてシェーディング補正や、必要に応じてガンマ変換が行われる。画像処理後の画像データは、外部のバスラインBLを通して出力異常検査装置30に送られる。
【0029】
次に出力異常検査装置30について説明する。この装置は、読取装置20によって読み取られた印刷物2に「濃度ムラ」「色ムラ」等の異常(以下、総称して「出力異常」という)が発生しているか否かを判定する処理(判定処理)、判定結果を作業者に知らせる処理(警告処理)、出力異常が生じている印刷物2中の部分を特定する処理(異常箇所特定処理)、判定処理および/または異常箇所特定処理に基づいて印刷機10を停止させ、あるいは印刷機10中の所望のインキキーを調整する等の印刷機を制御するための制御信号を生成する処理(制御信号生成処理)を行う装置である。
【0030】
図2に示すように、出力異常検査装置30は、主に、理論色データベース301、RGB→Lab変換部302、ピーク座標算出部303、拡散度算出部304、判定部305、印刷機制御信号生成部306、表示部307からなる。
【0031】
理想色データベース301は、たとえば図3に示すような内容のテーブルを複数を有するものである。図3図示のテーブルは、印刷物の微小部分で再現可能な16の色(微小部分の理想色)とその測色値とを対応づけたものである。このテーブルは特定の色の紙の上に、特定の4色のインキを、特定の順番で刷る場合のものである。たとえば、1枚の紙に対し、C、M、Y、Kの順番で刷る際に再現される16色の測色値が保持されている。したがって、別の紙やインキを使用する場合、あるいは別の順番で刷る場合には、印刷物上の微小部分の色合いも変わるので、別の測色値を記憶したテーブルが必要になる。理想色データベース301には、このような複数のテーブルで構成されている。
【0032】
RGB→Lab変換部302は、読取装置20から出力される各読取画素のRGB信号をCIE−Lab色空間の明度指数Lおよび色度指数a,bに変換する手段である。
【0033】
ピーク座標算出部303は、印刷物2の各読取ブロック(後述)に含まれる単数又は複数のピーク座標を算出する手段である。
【0034】
拡散度算出部304は、ピーク座標算出部303が算出したピーク座標に基づき、印刷物を構成する微小部分の色の拡散度を読取ブロック毎に算出する手段である。
【0035】
判定部305は、ピーク座標算出部303が算出した各読取ブロックのピーク座標および/または拡散度算出部304が算出した各読取ブロックの拡散度に基づいて、その読取ブロックが正常な色で印刷されたものかどうかを判定する手段である。
【0036】
印刷機制御信号生成部306は、判定部305の判定結果に基づき必要なインクの種類や量などを算出するなどして、印刷機10を制御するための制御信号を生成する手段である。
【0037】
表示部307は、CRT等の装置であり、判定部305の判定結果を操作者に知らせたり、必要な入力情報を出力異常検査装置30に入力するための手段である。
【0038】
<<3−2.第1の実施の形態の処理>>
以下、図4のフローチャートを参照して、本発明に基づく出力異常検査工程を説明する。
【0039】
最初に、たとえば図3に示すような理想色データベース301を準備する(ステップS.10)。理想色データベース301は紙やインキの種類、刷り重ねの順番毎に予め用意しておくことが望ましい。理想色データベース301は、そのように用意された複数のテーブルの中から、検査対象の印刷物2を印刷した条件に適合するテーブルが選択されることで準備される。
【0040】
次に、印刷機10による印刷を開始する(ステップS.20)。印刷機10からは印刷物2が印刷されて印刷機外部に出力される。印刷機10から出力される印刷物2の中から一部の印刷物が抽出されて、センサ読取部201により高解像度で読み取られる。得られた読取画像データは画像処理部202においてシェーディング補正や、必要に応じてガンマ変換、色変換などがおこなわれ、外部バスBLを通して出力異常検査装置30に送られる。
【0041】
図5は、出力異常検査装置30での処理の単位となる読取ブロックを説明するものである。出力異常検査の最終的な目的は、印刷物2のどの箇所で、どのような出力異常が生じているかを検出することである。この出力異常検査装置30では出力異常は読取ブロックのサイズを単位にして検出される。すなわち、読取ブロックの一部にでも出力異常が生じていれば、その読取ブロック全体が出力異常であると判断する。
【0042】
各読取ブロックの横方向のサイズ(版胴の軸方向のサイズ)はインキキーの幅と略同一とされる。そして、読取ブロックには左最下段から右最上段にかけて連番が付されている。
【0043】
出力異常検査装置30に送られた印刷物2の画像データはRGB→Lab変換手段302によってLab値(CIE−Lab色空間の明度指数Lおよび色度指数a、b)に変換される。
【0044】
このLab値に基づき、ピーク位置算出部303は各読取ブロックのピーク座標を算出し、拡散度算出部304は各読取ブロックの拡散度を算出する。一方、判定部305は、ピーク座標および/または拡散度に基づいて、印刷物2のすべての読取ブロックに関する適格/不適格を判定する(ステップS.60)。
【0045】
図6のフローチャートを用いて、ピーク座標算出、拡散度算出および判定工程について詳述する。
【0046】
最初に、ステップS.601において、変数nを1に設定することで、処理対象となる読取ブロックを第1ブロックとする。次のステップS.603において、この第1ブロックに属する読取画素のLab値を取得する。次のステップS.605で、第1ブロックの全画素のLab値の中から、不適正な画素のLab値を除去する。ここで不適正な画素というのは例えば、網点の縁にかかるような画素のことである。
【0047】
図7は、印刷物2の読取を模式的に示したものであり、印刷物2を構成する網点の1つを拡大している。1個の網点は複数のドットで構成される。各ドットは印刷用紙上にインクが付着することで発色する。読取画素1は、どのドットにも重なっていないので、この読取画素1からは紙の色のみが検出される。紙の色は、先述した16の理想色の1つに属している。一方、網点の縁のドットを読み取る読取画素2は、紙の色とドットの色の両方を一度に読み取っているので、この読取画素からは先述の16の理想色のいずれにも属さない色が検出される。この読取画素2のデータに基づいて判定を行うと不正確な結果が得られるので、網点の縁を読み取る読取画素データは出力異常判定の基礎とすべきでない。このような網点の縁を読み取る読取画素は、周辺8画素とのRGB値またはLab値の差異が極端に大きい場合にそれと判定される。
【0048】
次に、ステップS.606では、網点の縁を読み取る読取画素を除去した残りの読取画素についてのヒストグラムを作成する。
【0049】
図8は、ステップS.606で作成されるヒストグラムの模式図である。処理対象ブロックに属する読取画素のLab値とその出現個数とが対応づけられている。すなわち、横軸はLab値を表し、縦軸はそのLab値を示す読取画素の出現個数を表している。なお、本来Lab値は3次元の値であるが、説明を容易にするため、ここでは1次元の値として図示している。印刷物は最終的には16の色に収斂するため、図示のように、16のピークが形成される。
【0050】
第1のピークの座標(Lab値)をP1、第2のピークの座標(Lab値)をP2、以下、各ピークをP3乃至P16と呼ぶ。
【0051】
また、各ピーク座標を中心として出現する所定数の読取画素のLab値の範囲を集合と呼ぶ。各集合を、各ピークP1乃至P16と関連づけて、S1乃至S16と呼ぶ。
【0052】
図9は、不適正な読取画素を除去した後の第1ブロックの読取画素を3次元の色空間にプロットした様子を示す図面である。第1ブロックの読取画素は、色空間上に複数の集合に分かれて分布する。なお、先述のように実際には16の集合に分かれて分布するが、この図には簡単のため、5個の集合しか示さない。
【0053】
ステップS.607(図6)では、ピーク座標P1乃至P16を検出する。
【0054】
次のステップS.608(図6)では、ステップS.606で作成されたヒストグラムに基づいて集合S1乃至S16の範囲を確定する。各集合の範囲は、各ピーク座標に近い値のものから所定数の読取画素を選択することで確定される。
【0055】
図9に示すように、各集合S1乃至S5の内部または近傍には、理想色のLab値(Lab1乃至Lab5)が存在する。たとえば、集合S1の内部には理想色Lab1が位置する。集合S2の外部近傍には、理想色Lab2が存在する。理想色との色差が小さいピーク座標もあれば(例えば、ピークP1、P3、P5)、理想色から離れているピーク座標もある(例えばピークP2、P4)。この出力異常検査装置30では、判定部305がピーク座標と理想色との色空間上の離間距離を算出することで印刷物の発色異常を検出する(ステップS.611)。具体的には、ピークP1乃至P16の色座標値と直近の理想色の色座標値との差分(色差ΔE)が所定の閾値以下かどうかで発色異常を検出する。色差ΔEは式1により算出される。
(式1)
Figure 0003862912
但し、d1は、明度指数Lについての2色の差分、daは色度指数aについての2色の差分、dbは色度指数bについての2色の差分である。
【0056】
処理対象読取ブロックの中に、いずれの理想色とも近似しないピーク座標が含まれていることが判明すると、判定部305は、そのブロックは不適格であると判定する(ステップS.619)。
【0057】
反対に、処理対象読取ブロックの中のすべてのピーク座標がいずれかの理想色と近似することが判明すると、ステップS.613に進み、拡散度算出部304による拡散度の検出が行われる。
【0058】
拡散度とは、読取画素の色のまとまり度合いのことである。印刷物が適正に印刷されている場合には、すべての読取画素のLab値はいずれかの理想色のLab値近傍にまとまる。一方、印刷物が不適正に印刷されている場合には、読取画素のLab値は拡散して分布する。この出力異常検査装置30では、集合毎に拡散度を算出し、閾値以上の拡散度を示す集合が処理対象読取ブロックの中に1つでも含まれている場合は、その読取ブロックは不適正であると判断する。
【0059】
図10を用いて拡散度について説明する。本出力異常検査装置30では、いわゆる半値幅により拡散度を判定する。図10は集合S1内の読取画素とLab値との関係を示すヒストグラムである。横軸はLab値の1つの成分である色度指数aを表し、縦軸はその色度指数aを示す、集合S1内の読取画素の個数を表している。
【0060】
集合S1内の読取画素のLab値はピーク座標P1(Lab値:L1、a1、b1)を中心に分布しているから、読取画素の個数はピーク座標P1の色度指数a1において最も多く、色度指数a1から離れるに従って読取画素の個数は減少していく。色度指数a1を示す読取画素の個数をNとする。Nに1/2を掛けた数N/2だけ出現する読取画素の色度指数(a0およびa2)を検出する。次に、色度指数a0と色度指数a2の差分|a0−a2|を求める。この値が集合S3内の読取画素の色度指数aについての拡散度を示している。
【0061】
次に、ステップS.615において、拡散度|a0−a2|を所定の閾値と比較し、閾値を越える場合にはこのブロックは拡散度が高いと判定し、ステップS.619に進む。一方、拡散度が閾値以内の場合には、色度指数a以外のLab値成分(明度指数Lまたは色度指数b)について、色度指数aに関する拡散度を求めたときと同じ処理を行い、明度指数Lまたは色度指数bに関する拡散度が所定の閾値内にあるかどうか判定する。
【0062】
なお、上述の例では色度指数a0と色度指数a2との差分を求めたが、色度指数a0と色度指数a1との差分および/または色度指数a1と色度指数a2との差分を求めて拡散度を算出してもよい。
【0063】
Lab値の全ての成分について拡散度が閾値以内にあると判定されると、ステップS.617に進み、このブロックは適格であると判断する。次のステップS.621で、処理対象の印刷物についてのすべての読取ブロックが処理されたかどうか判断し、未判断のブロックが残っている場合には、次の処理ブロックを求め(ステップS.623)、再びステップS.603からの処理を開始する。
【0064】
すべてのブロックについての適格/不適格が判定されると、印刷機制御信号生成部306において不適格ブロックに関する過剰な、又は不足するインクの量が算出される(図4に示すステップS.80)。不適格ブロックの数があまりにも多い場合、あるいは、不適格ブロックが矯正不可能な場合には、印刷機10(図1)を停止させ、読取装置20の表示部307(図2)に警告メッセージを表示して、出力異常のため印刷機を停止させた旨を作業者に通知するようにしてもよい。
【0065】
不適格ブロックに関する過剰/不足インキの種類および量は、
【0066】
色空間においてピーク座標から理想色のLab値に向けて引いたベクトルの大きさと方向に基づいて決定できる。仮にこのベクトルがL軸プラス方向に向いているならば、色相を変えずに明度のみを低下させることが可能なインクの種類および量が算出される。あるいは、図10に示す拡散度から、必要なインクの種類および量を算出してもよい。
【0067】
次に、ステップS.90に進み、不適格ブロックに対応するインキキーを、ステップS.80で求めた過剰/不足インキの種類および量に基づき制御して、所望色の印刷物が得られるようにする。
【0068】
<4.第2の実施の形態>
以下、この発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態と第1の実施の形態との違いは、理想色データベースを予め準備しておくか否かという点にある。
【0069】
以下、図11のフローチャートを用いて説明する。
【0070】
最初に、理想画像を準備する(ステップS.1)。理想画像とは「濃度ムラ」や「色調異常」の無い印刷物の画像ことである。理想画像の各微小部分の大半は理想色で印刷されている。
【0071】
理想画像を高解像度(網点を構成するドットが読みとれる解像度)で読み取る(ステップS.3)。
【0072】
読取画像の画素データを均等色空間データに変換する(ステップS.5)。
【0073】
読取画像のすべての読取ブロックについて、ピーク座標を算出する(ステップS.7)。各読取ブロックには、16のピーク座標が発生する。
【0074】
次に、読取ブロック間で対応するピーク座標同士の均等色空間データ値の平均を求める。たとえば図9の例で、第1ブロックのピーク座標P1に相当するピーク座標は、別の読取ブロック(例えば第2ブロック)においても算出されると考えられる。このような対応するピーク座標同士の平均を求める。すなわち、第1ブロックのピーク座標P1(Lab値(L1,a1,b1))と、第2ブロックのピーク座標P1(Lab値(l2,a2,b2)と、第3ブロックのピーク座標P1、...、第nブロックのピーク座標P1(Lab値(Ln、an、bn)の各Lab値成分毎の平均値を求める。すなわち、算出される平均Lab値の明度指数Lは、(L1+L2+...+Ln)/nであり、色度指数aは、(a1+a2+...+an)/nであり、色度指数bは、(b1+b2+...+bn)/nである。
【0075】
平均値が示す座標は、特定の理想色のLab値とほぼ一致する。このような処理をすべてのピーク座標について行うと16の平均値が算出される。これらを16色の理想色の理想色データベースとして記憶する。
【0076】
その後は、図4のステップ20に進み、印刷機10による印刷を開始する。第1の出力される印刷物の全部又は一部について第1の実施の態様と同じ手法により検査対象画像の適格/不適格を判定し、判定結果に応じて印刷機10を制御する。
【0077】
なお、第1および第2の実施の形態ではCIE−Lab表色系を例にして説明したが、他の均等色空間または均等色空間以外の表色系(例.rgb表色系、XYZ表色系)を用いてもよい。但し、均等色空間においては、3次元の色差の均等が保証されているから、上述したピーク座標のずれ量や拡散度の計算が容易に行える。均等色空間以外の表色系を使用する場合には、比較する色が占める色空間位置に応じて色差が異なるので、先述のピーク座標の理想色Lab値からのずれ量や拡散度の大きさに基づく適格/不適格判定工程においては、閾値の大きさを色空間位置に応じて変更する必要がある。
【0078】
また、適格/不適格を判定する作業をRGB表色系に基づいて行う場合には、センサ読取部201で得られたRGB信号に対し画像処理部202においてシャドー部の階調を伸長するようなガンマ変換を加えておくのが望ましい。これは、センサ読取部201から出力される信号の特性は人の目の比視感度特性と異なっているので、予めシャドー部の階調を伸長させておくことでRGB色空間を擬似的な均等色空間として使用できるようにするためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態である出力装置のシステム構成図である。
【図2】第1の実施の形態である出力装置の機能ブロック図である。
【図3】第1の実施の形態における微小部分の理想色と測色値とを対応づけた図である。
【図4】第1の実施の形態における出力異常検査工程を説明するフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態における出力異常検査装置での処理単位である読取ブロックを説明する図である。
【図6】第1の実施の形態におけるピーク座標算出、拡散度算出および判定工程を説明するフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態における網点の拡大図である。
【図8】第1の実施の形態において作成されるヒストグラムの模式図である。
【図9】第1の実施の形態において読取画素の測色値を色空間にプロットした図面である。
【図10】第1の実施の形態において拡散度の算出方法を説明するためのヒストグラムである。
【図11】第2の実施の形態における出力異常検査工程を説明するフローチャートである。

Claims (6)

  1. 検査対象の印刷物において実現される、網点の重なり方によって区別される複数の領域のそれぞれについての理想色を表色値と対応づけた理想色テーブルを準備する準備工程と、
    検査対象の印刷物を、網点を構成するドットが読取可能な解像度で読み取り、検査対象の印刷物の表色値を読取画素単位で表す読取データを取得する読取工程と、
    前記検査対象の印刷物の読取データを前記理想色テーブルから読み出した理想色の表色値と比較し、その比較の結果に応じて、検査対象の印刷物が所望の色で印刷されているか否かを判定する判定工程とを備えた印刷物検査方法。
  2. 前記判定工程は、検査対象の印刷物を複数のブロックに区分し、それぞれのブロックに含まれる読取画素についての表色値の統計量を算出する算出工程と、前記統計量と所定の閾値とをブロック単位で比較する比較工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の印刷物検査方法。
  3. 前記算出工程においては、前記それぞれのブロックに含まれる複数の読取画素についての表色値から得られるヒストグラムにおいてピーク座標となる表色値を前記統計量として算出する、ことを特徴とする請求項2記載の印刷物検査方法。
  4. 前記算出工程においては、前記それぞれのブロックに含まれる複数の読取画素についての表色値から得られるヒストグラムの半値幅を前記統計量としてさらに算出する、ことを特徴とする請求項3記載の印刷物検査方法。
  5. 前記算出工程においては、前記読取データのうち網点の縁を読み取って得られた読取画素についての表色値を除外して算出を行う、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の印刷物検査方法。
  6. 前記理想色テーブルは、前記検査対象の印刷物の印刷に使用する紙およびインキの条件に応じて作成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷物検査方法。
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