JP3862679B2 - 自然石ブロック - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は自然石ブロックに関し、特に、河川における魚道工、或いは根固工、水制工、護岸工その他、海岸、海洋構造物としても適用される自然石ブロックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、河川の利水が進むにつれて、取水のための河川横断構造物等の施設が多くなって河川が遮断され、魚の遡上が困難となり、この対策として人工的な魚道施設も造られている。而して、之等魚道施設の多くはコンクリート製であるため、景観的にも自然環境にマッチせず、地球環境的にも好しくない二酸化炭素を発生させるセメントが使用されている。そこで、特に、河川環境に最も適応する自然石を用いた自然石結合ブロックも提案されている(引用文献1)。而して、この引用文献1に開示されている自然石結合ブロックは複数個の大塊状の自然石を集合させ、隣接相互の自然石の接合部に穿孔して接合孔に亘って可撓性金属状接合材を挿入して接合剤を充填し、前記複数の自然石を水平状に結合して一体成形して成るものである。
【0003】
該引用文献1記載の結合ブロックは隣接相互の自然石に穿孔した接合孔に可撓性金属接合材を挿入し、そして、前記接合孔に接合剤を充填して水平状に成形されるのであるから、特に、魚道工として之を採択する場合は、一般に容易に入手できる例えば50kg〜100kg相当の通常の自然石を採択する場合は、流速に対して充分に安定的質量を維持することが不可能となり、該自然石結合ブロックを河川敷に施行した構造物は破壊脱落すると云う欠陥を有する。そこで、このような欠陥を解消するには前記流速に耐え得る例えば1000kg以上の大塊状の自然石を用いることになるが、このような大塊状の自然石を入手することは極めて困難であり、且つ、施工性にも難点がある。
【0004】
そこで、ネットを用い、該ネット上に多数のブロックを載置し、そして、該ブロックに引留具を固設し、該引留具をネットの経糸又は緯糸に通し掛けして固定した施工面積敷設ブロックも知られている(引用文献2)。
【0005】
更に又、ネット上面に複数のブロックを載置し、該ブロックの下面にはアンカーボルト又はアンカーナットを植設し、そして、該ネットの下面からボルト孔を有する固定プレートを該アンカーボルト又はアンカーナットにナット又はボルトを螺着して固定し、ネットをブロック下面と固定プレート上面にて挟むことにより、該ブロックをネットに固定したものも知られている(引用文献3)。而して、之等ブロックは自然石を用いることもできる。
【0006】
【特許文献1(引用文献1)】
第2513973号実用新案登録公報(実用新案登録請求の範囲、第1図参照)
【0007】
【特許文献2(引用文献2)】
特公平07−11121号公報(特許請求の範囲、第4図参照)
【0008】
【特許文献3(引用文献3)】
第3058521号実用新案登録公報(実用新案登録請求の範囲、第2図参照)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例の引用文献1〜3記載のブロックは何れも水平状に多数のブロックを結合して構成する関係上、之等ブロックを河川構造物として設置した場合に於いて、水平状に多くの自然石を連繋して敷設しても河川流速に対して単位面積あたりの重量が不足し、又、河床に対しての噛み合わせ、及び摩擦力が劣勢であるため、やがては該流速等により該ブロックによって構築された構造物は破壊されて脱落すると云う欠陥がある。
【0010】
そこで、自然石と金網を用い、且つ、河川流速に対して安定した質量を有し、構造物としての大きさ及び構造に適する自然石ブロックを得るために解決せられるべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は該課題を解決することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、上下に対峙して配設される自然石と自然石との間に金網を挟み込み、該上下の自然石には対向する部位が穿孔されており、該穿孔部に凝固剤が充填され、且つ、前記金網の網目を通して両側部が夫々対峙する前記上下の穿孔部に挿入されて固定するように設けられた連結金具にて上下の自然石及び金網を一体化した自然石ブロックであって、前記自然石ブロックの上下の自然石は大きさを異にして配設されて成る自然石ブロックに於いて、
上記上下に対峙して配設される自然石と自然石は、対峙する両側部が接触して配設されると共に、上部の自然石の大きさを異にして水筋を形成するように構成されて成る自然石ブロックであり、且つ、水制工の用に供せられる自然石ブロック、
及び、請求項2記載の発明は、上下に対峙して配設される自然石と自然石との間に金網を挟み込み、該上下の自然石には対向する部位が穿孔されており、該穿孔部に凝固剤が充填され、且つ、前記金網の網目を通して両側部が夫々対峙する前記上下の穿孔部に挿入されて固定するように設けられた連結金具にて上下の自然石及び金網を一体化した自然石ブロックであって、前記自然石ブロックの上下の自然石は大きさを異にして配設されて成る自然石ブロックに於いて、
上記上下に対峙して配設される自然石と自然石は、対峙する両側部が接触して配設されると共に、上部の自然石の大きさを異にして水筋を形成するように構成されて成る自然石ブロックであり、且つ、河川における魚道工の用に供せられる自然石ブロック、
及び、請求項3記載の発明は、上記自然石ブロックは、自然石を上記金網を挟んで3層構造以上に形成して成る請求項1又は2記載の自然石ブロック、
並びに、請求項4記載の発明は、上記金網はジオテキスタイルをもって構成されている請求項1,2又は3記載の自然石ブロックを提供するものである。
【0012】
本発明の自然石ブロックは金網を挟んで2層構造以上に製造されるので単位面積あたりの重量を増大させることができ、河川流速等に充分に耐え、破壊・脱落等の憂は解消される。
【0013】
又、使用する用途、機能に応じて自然石の大きさを変化させることも可能であり、かかる場合に於いては、特に自然石と自然石との間に形成される空間が生態系に生息し易い環境を付与することになる。
【0014】
更に又、金網もジオテキスタイルを用いることにより強靭性、不蝕性が維持され、且つ、河川等に対する構造物としての構築作業も該金網によって上下の自然石が一体化され、且つ、上下の自然石のズレ止め及びクッションとしての作用と相俟って施工性が向上し、大重量の一体化ブロックによって流速に耐え、且つ、河川環境に優しい構造物となり、更に又、構造物として機能を充分に発揮することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図1乃至図7に従って詳述する。図1(a)(b)(c)は本発明の自然石ブロックの結合状態を示す解説図である。本発明に於いては構造物を設置する対象河川に存在する自然石2又はその近辺にある自然石2等、一般に容易に入手できる自然石2を用いるものとする。而して、かかる自然石2は通常50kg〜100kgのものであり、この程度の自然石2を複数個水平状に結合して敷設しても河川流速には耐え得ることができない。そこで、本発明の実施の形態は先ず、図1(a)に示すように前記自然石2の任意の個所を穿孔し、この穿孔部3に凝固剤4を充填する。次に、同図(b)に示すように該自然石2に設けた穿孔部3に異型鋼棒或いはボルト等のアンカー材5の一側部を挿入し、そして、前記凝固剤4の硬化によって該アンカー材5が固定されたアンカー材固定自然石2A,2A…を製造する。
【0016】
次に、同図(c)に示すように、前記自然石2,2…を敷き詰め、該自然石2,2…上に金網6をかぶせる。該金網6は施工性を向上させるため2m×2m位のサイズのものが採択されることを可とする。而も、該金網6は強度、不蝕性、作業性等に鑑み、ジオテキスタイルを使用することを可とする。而して、該金網6がかぶせられた各自然石2,2…の上部には同図(c)の左側に示すように該金網6の網目6a,6a…を介して穿孔機により穿孔され、そして、該穿孔部3a,3a…に凝固剤4,4…を夫々充填する。更に、該凝固剤4,4…が充填された各自然石2,2…の上方から、前記網目6a,6a…を介して前記アンカー材固定自然石2A,2A…のアンカー材5,5…他側部を下部の前記凝固剤4,4…の硬化を待って上部のアンカー材固定自然石2A,2A…と下部の自然石2,2…とによって前記金網6を挟持し、そして、全体が一体化されたブロックとしての2層の自然石ブロック1Aを製造するのである。
【0017】
斯くの如く、下部の自然石2,2…上に金網6を張設し、そして、該金網6の網目6a,6a…を介して該自然石2,2…に開穿された穿孔部3a,3a…にアンカー材5を固定したアンカー材固定自然石2A,2A…の各アンカー材5,5…の他側部を挿入し、該穿孔部3a,3a…に充填されている凝固剤4,4…の硬化によって上方部のアンカー材固定自然石2A,2A…と下方部の自然石2,2…と、その間に挟挿された金網6とによって2層の自然石ブロック1Aが製造されるのであるが、更に、図2に示す如く、この2層の自然石ブロック1Aの前記アンカー材固定自然石2A,2A…上に他の金網6を張設し、そして、該金網6の網目6a,6a…を介して該アンカー材固定自然石2A,2A…の上面に穿孔機を用いて穿孔部3b,3b…を開穿し、該穿孔部3b,3b…に凝固剤4,4…を夫々充填し、そして、他のアンカー材固定自然石2A,2A…のアンカー材5,5…の突設部を夫々対向する下方部のアンカー材固定自然石2A,2A…の前記穿孔部3b,3b…に、該下方部のアンカー材固定自然石2A,2A…上に張設した前記金網6の網目を介して挿入し、該穿孔部3b,3b…内の凝固剤4,4…の硬化を待って3層の自然石ブロック1Bを製造する。更に又、前記製造法を用いることにより、更に多層の自然石ブロックも製造できることは当然である。
【0018】
本発明の一実施の形態は叙述せる如き構成に係るので、自然石2は一般に容易に入手することのできるφ300〜φ500のものが採択され、この自然石によって金網6と挟持し、そして、上下に対向した自然石相互をアンカー材5によって結合し、全体を一体化した自然石ブロックに係るものであるが、前記金網6は2m×2m=4m2程度のものが採択され、そして、この金網6の両側面に配設される自然石2A,2A…及び2,2…は概して4〜20個程度であり、依って、河川構造物の構築の作業性が向上し、更に又、該金網6と一体化される該自然石2A,2A…及び2,2…による質量も、本発明を2層構造以上に任意に増大させることにより、特に図3に示す如く魚道工、或いは図4に示す根固工、図5に示す湾岸工のみならず、図6に示す海岸の緩傾斜護岸工や、図7に示す藻場が造成てきる人工リーフとして充分に対応させることが可能となる。更に又、図3の(b)に示すように上部の自然石の大きさ、特に同図に於いて左右側部の自然石2,2…を中央部の自然石2,2…より大径のものを採択することにより、中央部の自然石2,2…によって凹部が形成され、之によって水筋Wが形成されることになり、上方へ移動する魚群の魚道として最適となる。
【0019】
又、アンカー材固定自然石2A,2A…及び他の自然石2,2…の大きさを夫々変化させることにより、該自然石2A,2A…又は2,2…間に適正な空間部が形成でき、魚の稚魚、プランクトンなどの繁殖に適する河川環境が自然に生成されることになる。
【0020】
尚、図4及び図5中の符号7は水生植物であり、図6中の符号8は砂群を示し、図7中の9は拾石群を夫々示す。
【0021】
而して、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0022】
【発明の効果】
本発明は上記一実施の形態にて詳述したように、上下に配設される自然石と自然石で金網を挟持し、そして、上下に向き合った自然石同士の対抗面に設けた各穿孔部に連結金具を挿入し、該穿孔部に充填されている凝固剤の硬化によって上下両側部が接触して配設した多数の自然石及び金網並びに連結金具が一体化された自然石ブロックに係るものであるところ、従来通常の自然石を水平状に結合した一層構造に於いては自然石の大きさ及び製造上の点から1m2当りの質量500kg/m2程度であって、これ以上の質量を期待することはできず、従って、河川流速等によって自然石の一層構造の構造物は破壊され、脱落し易いのであるが、本発明により、之等の欠陥は悉く解消される。特に、本発明は河川等の現場の状況に応じ、2層のみならず3層以上にも構築できるので急流河川に於いても流速に対して安定する質量を有して常に該流速等にも対応することができ、河川環境の向上に寄与するのである。
【0023】
更に、金網を上下の自然石により挟持する構造を採択しているので、該金網は上下の自然石を一体化すると共に上下の自然石のズレ止めやクッション材としての作用も奏し、特に、河川敷等に構造体を構築する際の作業性が向上し、且つ、該ジオテキスタイルから成る金網の強度及び不蝕性等も考慮されるので、河川敷等内の構造体としての耐久性も向上する。
【0024】
更に又、上部自然石の大きさを変えることにより水筋を形成し、このことにより、水筋が水の流れを誘い水勢を制御するから水制工を形成することとなる。そして、同様に、上部自然石の大きさを変えることにより水筋を形成し、これにより、魚の上方移動時の最適の魚道を形成することになる。
【0025】
又、各自然石は大きさを任意に異にして配設されることにより、各自然石間に適切な空間が確保され、且つ、該自然石を金網を挟んで3層構造以上に形成して成るので、該自然石の複層化により該空間は一層助長されることになり、魚の稚魚やプランクトン等の繁殖に適し、更に又、流下土砂や転石をはさみ込んで堆積させることにより、該流下土砂や転石による構造物の破損や磨耗も最大限に低減されると共に、該流下土砂の堆積により、植物が繁茂する環境や昆虫類の生息空間も自然に生成されることになる。
【0026】
又、前記自然石空間は流水力の低減効果も期待でき、河川等の水制工に関する構造物としての機能を適正に発揮することができる。
【0027】
更に又、本発明は自然石ブロックであるところ、コンクリート等の人造石を使用しないので、生態系に良好な空間効果により磯の復元効果及び消波効果も発揮することが可能であり、上記金網にジオテキスタイルを使用することにより、不触姓、強靭性を持たせ、堤防の安全機能、波の打上高低減効果、反射率の低減等に基づく災害の防止にも効率よく寄与する等、正に諸種の著大なる効果を奏する発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、自然石ブロックの製造工程の解説図であり、(a)は自然石の任意の個所を穿孔し、この穿孔部に凝固剤を充填し、更に、該穿孔部にアンカー材の一側を挿入しようとする状態を示す解説図、(b)は前記(a)の状態からアンカー材の一側部を前記穿孔部に挿入し、該穿孔部内の凝固剤の硬化によってアンカー材固定自然石を製造した状態を示す斜視図、(c)は下部に複数の自然石を敷き詰め、そして、該下部の自然石上に金網をかぶせた後、該金網の網目を介して該下部の自然石上面に穿孔部を開穿し、更に、該穿孔部に凝固剤を充填し、該金網の上面から前記(b)に示すアンカー材固定自然石のアンカー材の他側部を下部の自然石に開穿した前記穿孔部に挿入し、凝固剤の硬化を待って上下の自然石及び金網並びに前記アンカー材が一体化して自然石ブロックを製造した状態を示す解説図。
【図2】図1によって製造した2層の自然石ブロックに更に上方に金網及び自然石を積層することにより3層の自然石ブロックを製造した状態を示す一部切欠正面図。
【図3】(a)は図2の自然石ブロックを魚道工に実施した状態を示す解説図。(b)は上記(a)のA−A線断面図。
【図4】図2の自然石ブロックを根固工に実施した状態を示す解説図。
【図5】図2の自然石ブロックを護岸工に実施した状態を示す解説図。
【図6】図2の自然石ブロックを海岸の緩傾斜護岸工に実施した状態を示す解説図。
【図7】図2の自然石ブロックを人工リーフに実施した状態を示す解説図。
【符号の説明】
1A 2層の自然石ブロック
1B 3層の自然石ブロック
2 自然石
2A アンカー材固定自然石
3,3a,3b 穿孔部
4 凝固剤
5 アンカー材
6 金網
6a 網目
W 水筋
Claims (4)
- 上下に対峙して配設される自然石と自然石との間に金網を挟み込み、該上下の自然石には対向する部位が穿孔されており、該穿孔部に凝固剤が充填され、且つ、前記金網の網目を通して両側部が夫々対峙する前記上下の穿孔部に挿入されて固定するように設けられた連結金具にて上下の自然石及び金網を一体化した自然石ブロックであって、前記自然石ブロックの上下の自然石は大きさを異にして配設されて成る自然石ブロックに於いて、
上記上下に対峙して配設される自然石と自然石は、対峙する両側部が接触して配設されると共に、上部の自然石の大きさを異にして水筋を形成するように構成されて成る自然石ブロックであり、且つ、水制工の用に供せられることを特徴とする自然石ブロック。 - 上下に対峙して配設される自然石と自然石との間に金網を挟み込み、該上下の自然石には対向する部位が穿孔されており、該穿孔部に凝固剤が充填され、且つ、前記金網の網目を通して両側部が夫々対峙する前記上下の穿孔部に挿入されて固定するように設けられた連結金具にて上下の自然石及び金網を一体化した自然石ブロックであって、前記自然石ブロックの上下の自然石は大きさを異にして配設されて成る自然石ブロックに於いて、
上記上下に対峙して配設される自然石と自然石は、対峙する両側部が接触して配設されると共に、上部の自然石の大きさを異にして水筋を形成するように構成されて成る自然石ブロックであり、且つ、河川における魚道工の用に供せられることを特徴とする自然石ブロック。 - 上記自然石ブロックは、自然石を上記金網を挟んで3層構造以上に形成して成ることを特徴とする請求項1又は2記載の自然石ブロック。
- 上記金網はジオテキスタイルをもって構成されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の自然石ブロック。
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