JP3860057B2 - 電気接点装置及び接触子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気部品の電極と可動導体との間の電気的導通を図る電気接点装置とこの電気接点装置に組込まれた接触子に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気接点を介して電気部品に電気信号や電力を印加したり、電気部品から電気信号を取出すための電気接点装置として種々の形態が提案されている。
【0003】
図9は特開平11―304838号公報に提案された測定用端子の概略構成を示す断面模式図である。半導体基板1上に電極2が形成さている。この電極2に対してプローブ端子3の先端が当接している。このプローブ端子3の他端は固定具4で可動導体5に固定されている。この可動導体5は、図示しない移動機能によって、図中矢印6方向に移動される。この可動導体5を上方へ移動させることにより、プローブ端子3が電極2から離れ、可動導体5を下方へ移動させることにより、プローブ端子3が電極2へ当接する。図9では、プローブ端子3が電極2に接触して両者間に電気的導通が実現した状態を示している。
【0004】
プローブ端子3は、S字型のバネ作用により電極2に加圧され、両者間の電気的導通を保証する。また、プローブ端子3の表面は、ダイヤモンド、アルミナ、SiC、WC、WNなどの硬質な微粉末を含有する金属により被覆されており、電極2との多数回の接触による磨耗を抑えている。
【0005】
図10は、機械式リレースイッチに組込まれた電気接点装置の概略構成図である。基板7上に導体8及び固定治具9が取付けられている。この固定治具9の先端に短冊状の可動導体10の一端が固定されている。導体8上における可動導体10の他端に対向する位置に固定接触子11が取付けられている。可動導体10の中途位置に、移動機能12にて矢印14で示す上下方向に移動制御される加圧棒13が当接している。
【0006】
移動機能12にて加圧棒13を下方へ移動させると、可動導体10が下方へ撓み、可動導体10の先端が固定接触子11に当接する。移動機能12にて加圧棒13を上方へ移動させると、可動導体10はバネの復元力により元の水平状態に戻り、可動導体10の先端は固定接触子11から離れる。
【0007】
可動導体10と固定接触子11との間では、機械的接触により固定接触子11の磨耗が生じるため、多数回の接触に対する信頼性が問題となる。このため、固定接触子11には硬質の金属材料が使用される。
【0008】
図11は、IC試験装置のIC取付基板15上に形成された電極16とICパッケージ17の電極18との間に介挿される電極プローバー19の断面模式図である。IC試験装置のIC取付基板15の電極16に下面が固定された図示断面形状を有した接続導体20内に弾性ゴム21が封入されており、可動接点22の下端がこの弾性ゴム21に当接し、可動接点22の上端がICパッケージ17の電極18に当接する。この可動接点22は、接続導体20に設けられた穴内を摺動可能に設けられている。
【0009】
ICパッケージ17の電極18と可動接点22とが接触するように、ICパッケージ17を上方からこの電極プローバー19に押し当てる。このとき、可動接点22は接続導体20に設けられた穴内に沿って押し込まれ、その移動分は弾性ゴム21の変形により吸収される。ICパッケージ17を取除けば、可動接点22はICパッケージ17の電極18から受ける外力から開放され、弾性ゴム21が元の形に戻ろうとするため、可動接点22も元の位置に戻る。
【0010】
図12は、DC(直流)モータにおける電気接点装置としてのブラシ構造を示す模式図である。一点鎖線で示す中心軸を中心に回転する回転軸23の外周面に一対の隙間24a、24bを介して、曲面に形成された一対の電極25a、25bが取付けられている。この電極25a、25bは、回転軸23に取付けられた図示しない電機子のコイルに接続されている。この電極25a、25bの外周面に一対のブラシ26a、26bの先端近傍が当接されている。この一対のブラシ26a、26bの他端は絶縁体材料で形成されたブラシ固定部材27に固定されている。
【0011】
DCモータの場合、電極25a、25bは電機子の同じコイルの別々の端子に接続されており、ブラシ26a、26bはそれぞれ電池の陽極および陰極に接続されている。したがって、回転軸23が回転するに従い、ブラシ26a、26bが接触する電極25a、25bが交代し、電機子のコイルに流れる電流の向きが反転し、コイルにより発生する磁界の向きも反転する。同コイルの外部に永久磁石を配置しておけば、回転軸23が回転運動力を得る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9、図10、図11、図12に示した各電気接点装置においてもまだ改良すべき次のような課題があった。
【0013】
すなわち、図9に示す測定用端子においては、プローブ端子3の表面は、ダイヤモンド、アルミナ、SiC、WC、WNなどの硬質な微粉末を含有する金属により被覆されている。しかし、この硬質な微粉末は柔軟な金属で保持されており、この柔軟な金属が摩滅することにより、硬質な微粉末が空気中に飛散することになり、プローブ端子3自体の耐磨耗性は一定の限界があり、長期間に亘って使用できない問題があった。
【0014】
さらに、金属性の電極2を大気中で用いる場合、大気に含まれる酸素や湿度の影響により電極2の表面に酸化皮膜が形成されてしまい、接点における電気的特性が悪化する問題があった。この酸化皮膜の形成を阻止するため、電極2の表面をある程度故意に磨耗させて電気特性の悪化を防ぐ方法が通常とられる。しかし、これは前記寿命に関する問題をさらに悪化させだけでなく、摩耗の結果生じる微粉末の酸化物がゴミとしてプローブ端子3の接点に残ると、電極2とプローブ端子3との間において、電気的接触の不良も引き起こす結果となる。
【0015】
また、図10に示した機械式リレースイッチに組込まれた電気接点装置においても、たとえ、固定接触子11に硬質の金属材料が使用されたとしても、上述した図9に示した測定用端子の場合とほぼ同じ理由で、機械的接触により固定接触子11の磨耗が生じる。さらに、可動導体10の加圧棒13による繰り返し変形に起因する金属疲労による劣化が問題となる。
【0016】
また、図11に示した電極プローバー19においては、弾性ゴム21を採用しているので、ICパッケージ17の電極18における数十μm以上の高さのバラツキを吸収できるものの、ゴム材料を採用しているために、その使用回数の増加と共に弾性材料の劣化が速く進み、変形後に元の形状に戻りきらなくなってしまう。結果として、接点不良が生じることになる。
【0017】
さらに、図12に示すDCモータにおける電気接点装置においても、DCモータでは電極25a、25bとブラシ26a、26bとが回転軸23の回転に伴い互いに摺動するので、この摺動に起因する磨耗が発生する。したがって、これらの磨耗により電極25a、25bとブラシ26a、26bとの寿命が短くなる。
【0018】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、カーボンナノチューブを採用することにより、電気接点における機械的接触による磨耗が生じず、多数回数の機械的接触に対しても電気的特性の劣化を生じず、さらに、表面に酸化皮膜を形成することがなく、また、電気接点自体の弾性を調節可能とする電気接点装置及び接触子を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気部品に取付けられた電極と、電気部品に対して入出力される電気が通電する可動導体と、この可動導体における電極の対向面に取付けられた接触子と、可動導体を付勢して接触子を電極に当接させる付勢機構とを備えた電気接点装置において、
接触子を、一端が可動導体に固定され他端の自由端が電極に対向する複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ束で形成している。
【0020】
このように構成された電気接点装置において、カーボンナノチューブ束である接触子は、電極に対して付勢力をもって当接される。
【0021】
カーボンナノチューブ(CNT)は、図3に示すように、カーボン原子の共有結合のみからなる単結晶で筒状に形成されている。そして、カーボンナノチューブ(CNT)単体では、半永久的に機械特性が劣化せずに、高い導電率、高い耐酸化性を有している。このカーボンナノチューブ(CNT)を複数本まとめたカーボンナノチューブ束で、接触子を形成している。
【0022】
したがって、接触子は、多数回の機械的接触に対してほとんど磨耗することがなく、表面酸化膜が形成されないために半永久的に電気的特性が一定に保たれる電気接点装置を実現できる。
【0023】
また、非常に優れた機械的特性のためこの接触子に大きな外力(付勢力)が加えられても、接触子は変形するだけで機械的損傷を受けず、その外力(付勢力)が取り除かれれば、接触子は元の形状に戻るバネ性を有し、かつ機械的にも金属材料を用いた場合に比べて優れた電気接点を実現することが可能となる。
【0024】
したがって、この接触子が組込まれた電気接点装置の電気的特性の劣化を防止できる。
【0025】
さらに別の発明は、上述した発明の電気接点装置における接触子は、カーボンナノチューブ束内に収納されたカーボンナノチューブの密度を変更することによって、一端から他端方向の弾性率を変更可能にしている。
【0026】
ミクロ的に見ると、カーボンナノチューブ束を構成する各カーボンナノチューブ(CNT)は、稠密配列されているのではなくて、相互間に多少の間隔を開けて配列されている。したがって、カーボンナノチューブ束内に収納されたカーボンナノチューブの密度を変更することによって、カーボンナノチューブ束全体の剛性を変更することが可能となる。
【0027】
さらに、別の発明は、上述した発明の電気接点装置における接触子を構成するカーボンナノチューブ束は、半導体基板上にカーボンナノチューブの密度に対応して分散配置されたコバルトニッケル上にカーボンを成長させて製造される。
【0028】
このように、接触子を構成するカーボンナノチューブ束を既存の半導体製造手法を用いて容易に製造できる。
【0029】
さらに、別の発明は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ束で形成されるとともに、各カーボンナノチューブの一端が可動導体に固定され、この可動導体が付勢される事により、他端の自由端が電気部品に取付けられた電極に当接するように構成された接触子である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る接触子が組込まれた電気接点装置の概略構成を示す模式図である。
【0031】
電気部品としての半導体30の上面に電極31が取付けられている。この電極31に対向して可動導体33が設けられている。可動導体33には電気部品としての半導体30に入出力される電気信号が通流している。この可動導体33の前記電極31に対向する位置に接触子32が固定されている。この接触子32は、上面が可動導体33に固定された円盤状の固定板36と、各上端がこの固定板36に固定され、下端の自由端が電極31に対向する複数のカーボンナノチューブ(CNT)37からなるカーボンナノチューブ束35とで構成されている。
【0032】
可動導体33は、例えば、バネ34aと可動アーム34bとからなる付勢機構34にて、図中矢印38で示す上下方向へ移動制御される。すなわち、付勢機構34が可動導体33をバネ34aの弾性力で下方へ付勢すると、可動導体33に取付けられたカーボンナノチューブ束35で形成された接触子32の下端が電極31に当接する。したがって、可動導体33と半導体30の上面の電極31とは接触子32を介して導通する。
【0033】
また、付勢機構34が可動アーム34bを回動して可動導体33を上方へ移動させると、図1に示すように、可動導体33に取付けられたカーボンナノチューブ束35で形成された接触子32の下端が電極31から離れて上方へ移動する。したがって、可動導体33と半導体30の上面の電極31とは電気的に遮断される。
【0034】
なお、ここでは、付勢機構34としてバネ34aと可動アーム34bとしているが、付勢機能があるものなら、カンチレバーのようなものでもよい。このように、付勢機構34を一つの部品で構成することにより、装置全体を小型化できる。
【0035】
複数のカーボンナノチューブ(CNT)37からなるカーボンナノチューブ束35で形成された接触子32は、図2(a)に示すように、円形断面を有する。各カーボンナノチューブ(CNT)37は、図3に示すように、カーボン原子の共有結合のみからなる単結晶で筒状に形成されている。
【0036】
前述したように、微視的には、カーボンナノチューブ束35を構成する各カーボンナノチューブ(CNT)37は、稠密配列されているのではなくて、図2(b)に示すように、相互間に多少の間隔を開けて配列されている。各カーボンナノチューブ(CNT)37の直径d、長さL、間隔Sは、概略下記の範囲に設定されている。
【0037】
直径d:数nm〜数10nm
長さL:数10μm〜数100μm
間隔S:数100nm〜数μm
このように構成された電気接点装置の接触子32として、複数のカーボンナノチューブ(CNT)37からなるカーボンナノチューブ束35を採用することの長所を説明する。
【0038】
前述したように、カーボンナノチューブ(CNT)38単体では、半永久的に、弾性係数(弾性率)、剪断係数、塑性変形の降伏点応力、摩擦係数、硬度等の機械的特性が劣化しなくて、高い弾性率、高い導電率、高い耐腐食性を有している。
【0039】
これらのカーボンナノチューブ(CNT)37が有する機械的特性、電気的特性、化学的特性は、図9〜図12で示した各電極2、8、18、25a、25bに選択的に当接する各接触子としてのプローブ端子3、固定接触子11、可動接点22、ブラシ26a、26bの各材料の各特性に比較して、格段に優れている。
【0040】
例えば、機械的強度の1つの尺度である弾性率(ヤング率)が、通常の電気接点に用いられる硬質Ni(ニッケル)でも200Gpaであるのに対し、カーボンナノチューブ(CNT)37の弾性率(ヤング率)は数千Gpaと桁違いに大きい。
【0041】
したがって、接触子32は、多数回の機械的接触に対してほとんど弾性劣化を生ぜずかつ磨耗することがなく、かつ表面酸化膜が形成されないために半永久的に電気的特性が一定に保たれる電気接点装置を実現できる。
【0042】
さらに、図9〜図12で示した各接触子は金属材料であるために、大気中の酸素により表面酸化が生じて接点の電気的特性が劣化してしまう。しかし、この実施形態装置に組込まれたの接触子32は、カーボンナノチューブ(CNT)37で形成されているために、表面酸化が生じず、電気的特性が変化しない。
【0043】
さらに、従来装置のように接触子が金属材料の場合、接触子と電極との間で故意に摺動させて、表面に形成された酸化膜を除去しなければならず、たとえ酸化膜を除去でき電気的特性が改善されても接点の寿命は短縮されてしまう。
【0044】
これに対して、本実施形態のカーボンナノチューブ(CNT)37は、前述したように、カーボン原子の共有結合のみからなる単結晶で筒状に形成されており、酸化に強いだけでなく、たとえ酸化したとしても気体の二酸化炭素CO2が生成されるだけなので,表面に酸化膜は形成されず電気的特性も変化しない。そのため、接触子と電極との間で故意に摺動させて、表面に形成された酸化膜を除去する必要がなく、信頼性の高い電気接点装置を実現できる。
【0045】
さらに、従来装置のように接触子が金属材料の場合、この金属材料における応力―歪み特性における塑性変形が発生する降伏点の歪み量(%)は小さいので、外部から付勢力が印加された場合の接触子の変形量が小さい。したがって、図9のように接触子としてのプローブ端子3の構造をバネ形状にしたり、図10のように可動導体10を片持ち梁に形成したり、図11のように弾性体であるゴムを併用する必要があった。
【0046】
しかし、本実施形態のカーボンナノチューブ(CNT)37の塑性変形が発生する降伏点の歪み量(%)は、金属材料に比較して格段に大きいので、接触子32自体をバネ材として変形させて用いることで、外部に弾性体を用いずにバネ性を有する小型の電気接点装置を実現できる。
【0047】
さらに、複数のカーボンナノチューブ(CNT)37からなるカーボンナノチューブ束35で形成された接触子32全体のカーボンナノチューブ(CNT)37方向の弾性率を任意の値に変更する手法を図4、図5を用いて説明する。
【0048】
図4(a)に示すように、各カーボンナノチューブ(CNT)37は、カーボンナノチューブ束35内に、所定の間隔Sを開けて配置されているので、上方から付勢力Fが印加すると、各カーボンナノチューブ(CNT)37は、図4(b)に示すように、各カーボンナノチューブ(CNT)37相互間の隙間内で撓み、カーボンナノチューブ束35の長さがLからLaへと縮むが、カーボンナノチューブ束35の外側に突出することはない。
【0049】
カーボンナノチューブ束35全体の断面積を一定に保った状態で、このカーボンナノチューブ束35内に収納するカーボンナノチューブ(CNT)37の本数を変更して、カーボンナノチューブ(CNT)37の密度を変更する。このように密度を変更することによって、カーボンナノチューブ(CNT)37の長軸方向における接触子32の弾性率を任意の値に設定できる。
【0050】
この場合、カーボンナノチューブ束35内のカーボンナノチューブ(CNT)37の密度が高くなると、カーボンナノチューブ(CNT)37相互間の間隔Sが狭くなり、変形時に隣接するカーボンナノチューブ(CNT)37に当接して、これ以上縦方向に変形しなく(縮まなく)なる。このカーボンナノチューブ束35における縦方向の変形可能率(La―L)/Lと、カーボンナノチューブ(CNT)37相互間の間隔S(密度)との関係を図5に示す。
【0051】
このように、カーボンナノチューブ(CNT)37相互間の間隔S(密度)を調整することにより、接触子32の変形可能率(La―L)/Lを故意に特定の値に設定できる。
【0052】
図6は、接触子32を形成するカーボンナノチューブ束35の製造方法を示す図である。図6(a)に示すように、半導体基板39上に、カーボンナノチューブ(CNT)37の間隔Sを開けてコバルトニッケル40をフォトマスクを用いて形成する。そして、図6(b)に示すように、真空中でこのコバルトニッケル40上にカーボン(炭素 C)を成長させることによって、各カーボンナノチューブ(CNT)37を得る。
【0053】
このように、接触子32を構成するカーボンナノチューブ束35を既存の半導体製造手法を用いて容易に製造できる。
【0054】
なお、コバルトニッケル40の他に、ニッケル(Ni)炭化珪素(Sic)を採用することも可能である。
【0055】
(第2実施形態)
図7は本発明の第2実施形態に係る電気接点装置が組込まれたDCモータにおけるブラシ構造の概略構成を示す模式図であり、図8はこのブラシ構造を上方から見た上面図である。図12に示す従来のDCモータにおけるブラシ構造と同一部分には同一符号を付して重複する部分の詳細説明を省略する。
【0056】
一点鎖線で示す中心軸を中心に回転する回転軸23の外周面に一対の隙間24a、24bを介して、曲面に形成された一対の電極25a、25bが取付けられている。この電極25a、25bは、回転軸23に取付けられた図示しない電機子のコイルに接続されている。この電極25a、25bの外周面に一対の接触子41a、41bの先端面が当接されている。この一対の接触子41a、41bの他端は各可動導体42a、42bに固定されている。
【0057】
そしで、この各可動導体42a、42bは図示しない付勢機構で回転軸23方向へ付勢されている。したがって、各接触子41a、41bの先端面は常時電極25a、25bに対して一定の圧力で付勢されている。したがって、この各接触子41a、41bと各電極25a、25bとは良好な電気的接触状態を維持している。
【0058】
DCモータの場合、電極25a、25bは電機子の同じコイルの別々の端子に接続されており、各可動導体42a、42bはそれぞれ電池の陽極および陰極に接続されている。したがって、回転軸23が回転するに従い、接触子41a、41bが接触する電極25a、25bが交代し、電機子のコイルに流れる電流の向きが反転し、コイルにより発生する磁界の向きも反転する。同コイルの外部に永久磁石を配置しておけば、回転軸23が回転運動力を得る。
【0059】
各接触子41a、41bは、図1に示した接触子32a、32bと同様に、複数のカーボンナノチューブ(CNT)37からなるカーボンナノチューブ束35で構成されている。
【0060】
このように構成された第2実施形態に係る電気接点装置においては、接触子41a、42bの先端面が曲面を有した電極25a、25bに当接して、この電極25a、25bの表面上を摺動するが、前述したように、接触子41a、42bを構成するカーボンナノチューブ(CNT)37の耐摩耗性は、図12に示す従来のブラシ26a、26bに比較して、格段に優れている。
【0061】
したがって、上述した第1実施形態の電気接点装置と同様に、接触子41a、42bと電極25a、25bとの間の良好な電気的接触状態を維持したままで、電気接点装置の長寿命化を図ることができる。
【0062】
さらに、前述したように、カーボンナノチューブ束35で構成された接触子41a、42b自体が良好なバネ特性を有しているので、図12に示す従来の短冊状のブラシ26a、26bを採用する必要がないので、DCモータにおけるブラシ構造全体の小型化を図ることができる。
【0063】
なお、この第2実施形態装置においては、DCモータのブラシ構造を例としているが、可変抵抗器など、接点部分が移動するものであれば、その用途は限定されるものではない。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電気接点装置及び接触子においては、カーボンナノチューブを採用することにより、電気接点における機械的接触による磨耗が生じず、よって摩耗の結果に生じる微粉末の酸化物がゴミとして接点に付着することなく、多数の機械的接触回数に対しても電気的特性の劣化を生じず、さらに、表面に酸化皮膜を形成することがなく、また、電気接点自体の弾性が調節可能となり、この電気接点装置の適用範囲を広くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る接触子が組込まれた電気接点装置の概略構成を示す模式図
【図2】同第1実施形態の接触子の構造を示す模式図
【図3】同接触子を構成するカーボンナノチューブの構造を示す模式図
【図4】同カーボンナノチューブ束の変形状態を示す図
【図5】同カーボンナノチューブ束におけるカーボンナノチューブの間隔と変形可能量との関係を示す図
【図6】同カーボンナノチューブ束の製造方法を示す図
【図7】本発明の第2実施形態に係る電気接点装置が組込まれたDCモータのブラシ構造を示す模式図
【図8】同DCモータのブラシ構造の上面図
【図9】従来の測定用端子の概略構成を示す模式図
【図10】機械式リレースイッチに組込まれた従来の電気接点装置の概略構成を示す断面模式図
【図11】IC試験装置に組込まれた従来の電気接点装置の概略構成を示す断面模式図
【図12】従来の電気接点装置が組込まれたDCモータのブラシ構造を示す模式図
【符号の説明】
23…回転軸
30…半導体
31、25a、25b…電極
32、41a、41b…接触子
33…可動導体
34…付勢機構
35…カーボンナノチューブ束
36…固定板
37…カーボンナノチューブ(CNT)
39…半導体基板
40…コバルトニッケル
42a、42b…可動導体

Claims (4)

  1. 電気部品に取付けられた電極(31、25a、25b)と、前記電気部品に対して入出力される電気が通電する可動導体(33、42a、42b)と、この可動導体における前記電極の対向面に取付けられた接触子(32、41a、41b)と、前記可動導体を付勢して前記接触子を前記電極に当接させる付勢機構(34)とを備えた電気接点装置において、
    前記接触子は、一端が前記可動導体に固定され他端の自由端が前記電極に対向する複数のカーボンナノチューブ(37)からなるカーボンナノチューブ束(35)で形成されたことを特徴とする電気接点装置。
  2. 前記接触子は、前記カーボンナノチューブ束内に収納されたカーボンナノチューブの密度を変更することによって、前記一端から他端方向の弾性率を変更可能にしたことを特徴とする請求項1記載の電気接点装置。
  3. 前記カーボンナノチューブ束は、半導体基板上に前記カーボンナノチューブの密度に対応して分散配置されたコバルトニッケル上にカーボンを成長させて製造されたことを特徴とする請求項2記載の電気接点装置。
  4. 複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ束で形成されるとともに、前記各カーボンナノチューブの一端が可動導体に固定され、この可動導体が付勢される事により、他端の自由端が電気部品に取付けられた電極に当接することを特徴とする接触子。
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