JP3859986B2 - ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、著しく摩擦係数が小さく、磨耗量が少ない、摺動性に優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリフェニレンサルファイド(以下PPSと略す)樹脂に代表されるポリアリーレンサルファイド樹脂(以下PASと略す)は、耐熱性、機械的物性、耐化学薬品性、寸法安定性、難燃性等に優れているため、電気・電子機器部品材料、自動車機器部品材料、化学機器部品材料等に広く使用されている。
【0003】
しかしながら、PAS樹脂は他部品と摺動するような部品においては、摩擦係数が大きく、摺動時に発生する磨耗量が多いという欠点がある。このため、PAS樹脂は、前記した優れた特性を有するにもかかわらず、応用される部品が制限されることがあった。
【0004】
PAS樹脂の摺動性を改良する方法としては、従来よりフッ素樹脂を配合することが知られている。特開昭63−213561号公報ではポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合した樹脂組成物、特開平7−304925号公報、特開平7−70436号公報では特定のポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合した樹脂組成物が示されているが、いずれも摩擦係数が比較的高く、満足できる摺動性は得られていない。特開平6−109146号公報ではフッ素樹脂と特定の無機充填剤を配合することが示されているが、十分な摺動性改良には至っていない。
【0005】
一方、摺動性を改良する他の方法として、特開昭55−45704号公報、特開平2−190677号公報の炭素繊維、特開平1−95158号公報のアモルファスカーボンのような炭素系充填物を添加することも知られているが、モース硬度の比較的高い充填物を使用しており、摩擦係数が十分改良されていない上に、磨耗量が多いという欠点がある。また、特開平2−191672号公報では、特定オイルの添加が示されているが、成形品表面にオイルが染み出し、金型汚染等の問題が生じ、実用に耐えない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術の問題を解決し、著しく摩擦係数が小さく、磨耗量が少ない、摺動性に優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供すべく鋭意検討した結果、PAS樹脂に対し特定の3成分を併用配合することが極めて有効であることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は
(A) ポリアリーレンサルファイド樹脂100重量部に対して、
(B) 焼成処理を施したポリテトラフルオロエチレン樹脂20 60重量部、
(C) モース硬度3.5 以下の無機充填剤30 100重量部、
(D) 数平均分子量1000〜10000 のα−オレフィン重合体1〜3重量部を配合したポリアリーレンサルファイド樹脂組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における(A) 成分としてのPAS樹脂は、主たる繰り返し単位が-(-Ar-S-)-(但しArはアリーレン基)で構成されたものである。アリーレン基(-Ar-)としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基(但し置換基はアルキル基、好ましくはC1〜C5のアルキル基、又はフェニル基)、p,p'−ジフェニレンスルフォン基、p,p'−ビフェニレン基、p,p'−ジフェニレンエーテル基、p,p'−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが使用できる。この場合、前記のアリーレン基から構成されるアリーレンサルファイド基の中で、同一の繰り返し単位を用いたポリマー、即ちホモポリマーを用いることができ、又、組成物の加工性という点から、異種繰り返し単位を含んだコポリマーが好ましい場合もある。
【0009】
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰り返し単位とするものが特に好ましく用いられる。又、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基を主とし、m−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中でp−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、より好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。又、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが特に好ましくは使用できるが、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐または架橋構造を形成させたポリマーも使用できるし、低分子量の直鎖状構造ポリマーを、酸素又は酸化剤存在下、高温で加熱して、酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも使用可能である。
【0010】
又、(A) 成分のPAS樹脂は、前記直鎖状PAS(310 ℃、ズリ速度1200 sec-1における粘度が10〜300 Pa・s )を主体とし、その一部(1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%)が、比較的高粘度(300 〜3000Pa・s 、好ましくは500 〜2000Pa・s )の分岐又は架橋PAS樹脂との混合系も好適である。又、本発明に用いるPAS樹脂は重合後、酸洗浄、熱水洗浄、有機溶剤洗浄(或いはこれらの組合せ)を行って副生不純物等を除去精製したものが好ましい。
【0011】
次に本発明で(B) 成分として用いるポリテトラフルオロエチレン樹脂は、焼成処理を施されたポリテトラフルオロエチレン樹脂である。この焼成処理が施されていないポリテトラフルオロエチレン樹脂は熱安定性が悪く、分解等によって十分な摺動性が得られない。焼成処理温度は360 ℃以上が好ましい。
【0012】
また、このポリテトラフルオロエチレン樹脂は、数平均分子量としては10万以上のものが好ましく、更に好ましくは20万以上のものである。
【0013】
(B) 成分の配合量は、(A) ポリアリーレンサルファイド樹脂 100重量部に対して5〜100 重量部、好ましくは20〜60重量部である。
【0014】
次に本発明で(C) 成分として用いる無機充填剤は、モース硬度が3.5 以下のものである。モース硬度が3.5 より高い無機充填剤を添加した場合、摺動時の磨耗性が著しく悪化する。モース硬度が3.5 以下の無機充填剤としては、タルク、マイカ、カオリン、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0015】
(C) 成分の配合量は、(A) ポリアリーレンサルファイド樹脂 100重量部に対して20〜200 重量部、好ましくは30〜100 重量部である。
【0016】
尚、(C) 成分の無機充填剤の使用にあたっては、必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用してもかまわない。これらの例を示せば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物等が挙げられる。これらの化合物は、予め表面処理又収束処理を施して用いてもよく、また材料調製の際同時に添加してもよい。
【0017】
次に本発明で用いられる(D) 成分のα−オレフィン重合体は、α−オレフィンを主成分とする限定された分子量を持つ重合体である。(D) 成分のα−オレフィン重合体は、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンの重合体又はこれら2種以上の共重合体であり、一部酸化された重合体でもかまわない。また、これらオレフィン重合体に、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類や、酸化エチレン、酸化プロピレン等の酸化オレフィン類、カルボン酸エステル類、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリレート類等を共重合したものも本発明の(D) 成分に含まれる。この場合、これら共重合体の組成としては、α−オレフィンが50モル%以上であるα−オレフィン主体の共重合体であることが好ましい。
【0018】
(D) 成分のα−オレフィン重合体は、数平均分子量が1000〜10000 であることが必要である。一般にパラフィンと呼ばれる分子量が小さいオレフィン重合体では、著しい成形品表面への染み出し、混練時の分解を生じ、摺動性改良効果が乏しい。また、数平均分子量が10000 より大きいオレフィン重合体では、成形品表面の改質効果が少なく、十分な摺動性改良には至らない。好ましい数平均分子量は2000〜6000である。
【0019】
(D) 成分の配合量は、(A) ポリアリーレンサルファイド樹脂 100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは1〜3重量部である。0.01重量部より少ない場合には効果が少なく、5重量部より多い場合には成形品表面への染み出しが著しくなる問題点が生じる。
【0020】
本発明の樹脂組成物には、摺動時の摺動性及び磨耗性を阻害しない範囲で、機械的強度、耐熱性、寸法安定性(耐変形、そり)、電気的性質等の性能の改良の為に、(C) 成分以外の無機充填物を配合することもでき、これには目的に応じて繊維状、粉粒状、板状の充填剤が用いられる。これらの充填剤は、一種又は二種以上併用することができる。
【0021】
これらの充填剤の使用にあたっては、必要ならば前述と同様に収束剤又は表面処理剤による処理を施すことができる。
【0022】
更に本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、バリ等を改良する目的として、シラン化合物を配合することができる。シラン化合物としては、ビニルシラン、メタクリロキシシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン等の各種タイプが含まれ、例えばビニルトリクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
又、本発明の樹脂組成物には、その目的に応じ前記成分の他に、他の熱可塑性樹脂を補助的に少量併用することもできる。ここで用いられる他の熱可塑性樹脂としては、高温において安定なものであればいずれのものでもよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール或いはオキシカルボンさんなどからなる芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオキサイド、ポリアルキルアクリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂などを挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することもできる。
【0024】
更に、本発明の樹脂組成物には、目的に応じて一般に熱可塑性樹脂に添加される公知の物質、すなわち酸化防止剤、耐候安定剤等の安定剤、難燃剤、染・顔料等の着色剤、潤滑剤および結晶化促進剤、結晶核剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、一般に合成樹脂組成物の調製に用いられる設備と方法により調製することができる。一般的には必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機を使用して溶融混練し、押出して成形用ペレットとすることができる。
【0026】
このようにして得た材料ペレットは、射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形等、一般に公知の熱可塑性樹脂の成形法を用いて成形することができるが、最も好ましいのは射出成形法である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例及び比較例に用いた(A) 〜(D) の具体的物質は以下の通りである。
(A) ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂;呉羽化学工業(株)製、フォートロンKPS(310 ℃、ズリ速度1200 sec-1での粘度50Pa・s )
(B) ポリテトラフルオロエチレン樹脂
B-1 ;焼成処理(焼成温度380 ℃)を施したポリテトラフルオロエチレン樹脂
B-2 ;焼成処理を施していないポリテトラフルオロエチレン樹脂
(C) 無機充填剤
C-1 ;炭酸カルシウム(モース硬度3)
C-2 ;タルク(モース硬度1)
C-3 ;ウォラストナイト(モース硬度5)
C-4 ;ガラスビーズ(モース硬度6.5 )
(D) オレフィン重合体
D-1 ;ポリエチレン重合体(数平均分子量5000)
D-2 ;ポリエチレン重合体(数平均分子量150000)
D-3 ;ポリエチレン重合体(数平均分子量600 )
実施例1〜4
(A) ポリフェニレンサルファイド樹脂に対し、(B) 、(C) 及び(D) 成分を表1に示す量で加え、ヘンシェルミキサーで5分間混合し、次いでこれをシリンダー温度320 ℃の2軸押出機に供給し、樹脂温度350 ℃にて溶融混練して、ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物のペレットをつくった。
【0028】
次いでこのペレットより射出成形機でシリンダー温度 320℃、金型温度 150℃で各種試験片を成形し、下記の各種試験を行った。
比較例1〜6
比較のため、表1に示す如く、(D) 成分を配合しない場合、(B) 、(C) 、(D) 成分の何れか一つ以上が本発明に該当しないものを用いた場合等について、上記実施例と同様にペレットを作成し、同様に試験した結果を併せて表1に示す。
摺動性の評価;
鈴木式(スラスト型)摩擦磨耗試験機を用いて、上側を評価材料、下側を相手材(鋼S55C)として、摺動部の接触面積2cm2 にて、摺動性の評価を行った。試験条件は以下の通りとした。
・試験速度5mm/分
・荷重216 N
・試験時間30分
動摩擦係数として、試験時間30分間の平均値を測定した。
【0029】
磨耗状態は、試験後、目視にて磨耗状態を観察することにより評価した。磨耗面にほとんど変化がなく磨耗粉がほとんどないものを○、若干磨耗面に変化および磨耗粉があったものを△、著しく磨耗面に変化があり磨耗粉が多いものを×とした。
引張試験;ASTM D-638に準じて、引張強度及び伸度の測定を行った。
曲げ試験;ASTM D-790に準じて、曲げ強度及び弾性率の測定を行った。
【0030】
評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0003859986

Claims (4)

  1. (A) ポリアリーレンサルファイド樹脂100重量部に対して、
    (B) 焼成処理を施したポリテトラフルオロエチレン樹脂20 60重量部、
    (C) モース硬度3.5 以下の無機充填剤30 100重量部、
    (D) 数平均分子量1000〜10000 のα−オレフィン重合体1〜3重量部を配合したポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  2. (B) 成分が焼成処理温度360 ℃以上で焼成されたポリテトラフルオロエチレン樹脂である請求項1記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  3. (C) 成分が炭酸カルシウムである請求項1又は2記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  4. (D) 成分が数平均分子量2000〜6000のα−オレフィン重合体である請求項1〜3の何れか1項記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
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