JP3859577B2 - 二環系共役ジエン重合体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状共役ジエン重合体に関し、詳細には、二環系共役ジエン重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
主鎖に環状炭化水素骨格を有する重合体は、その剛直な構造から、従来のポリオレフィンに比べ熱的および機械的強度の優れた高分子材料として近年注目を集めている。このような重合体は、その性質に大きく影響を与える構成主鎖の観点から、二つに分類される。第一に、ノルボルネン系化合物メタセシス重合体である(例えば、非特許文献1参照)。これらの重合体は、嵩高い環状骨格分子の間に鎖状骨格のスペーサー部位を有することを構造的特長としている。第二に、スペーサ−部位を有さず環状骨格のみを構成単位とする重合体である。例えば、ノルボルネン系化合物ビニレン型重合体(例えば、特許文献1、2および3参照)、シクロペンテン重合体(例えば、特許文献4および5参照、非特許文献2参照)、シクロペンタジエン重合体(例えば、非特許文献3参照)および1,3−シクロヘキサジエン重合体(例えば、特許文献6、7および8参照)などである。しかしながら、これらの重合体は、溶媒への溶解性、高い耐熱性および機械強度などの、実用的な要素を十分満たすものは未だに開発されていない。
【0003】
そのような中でも、1,3−シクロヘキサジエン重合体は、ガラス転移点が170℃と高く、溶媒に対する溶解性も高く、次世代樹脂として有望である。しかし、その剛直なシス構造と立体的嵩高さのため、重合の手法が限られる。最近、ブチルリチウム/テトラメチルエチレンジアミン触媒によるアニオン重合(例えば、特許文献6参照)や、ニッケル触媒配位重合(例えば、特許文献7および8参照、非特許文献4参照)等の重合法が開発されているが、重合に用いる触媒は未だに限定されている。また、1,3−シクロヘキサジエン自体の工業的製造は困難を伴う。例えば、シクロヘキセンの脱水素法(例えば、特許文献9参照)は転換率および選択性が悪く、副生成物の分離が困難である。さらに重合を阻害する1,4−シクロヘキサジエンも副生されるという致命的欠陥を抱える。塩化シクロヘキセンを経由する製造法(例えば、特許文献10参照)があるが、製造段階が数段階を経るうえに収率が低いなど、工業的には理想的とは言いがたい。
【特許文献1】
特開平3−205408号公報
【特許文献2】
特開平4−63807号公報
【特許文献3】
特開平5−262821号公報
【特許文献4】
特開平3−139506号公報
【特許文献5】
WO99/50320号公報
【特許文献6】
特開平7−247321号公報
【特許文献7】
特開2000−26581号公報
【特許文献8】
特開2000−351885号公報
【特許文献9】
特開平7−196737号公報
【特許文献10】
特開平11−189614号公報
【非特許文献1】
R.H.グラーブス著「シンセシスオブポリマーズ」ウイリーVCH刊、1999年、第3章
【非特許文献2】
「マクロモレキュールス」1998年、31,6705
【非特許文献3】
「マクロモレキュールス」2001年、34,3176
【非特許文献4】
「ケミカルコミュニケーションズ」2000年、2207−2208
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、製造が簡便で重合活性の高い環状共役ジエン単量体から製造され、さらには高耐熱性、高機械強度を有し溶媒への溶解性が良好な環状ジエン重合体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意工夫を重ねた結果、二環系非共役ジエンの異性化によって簡便に得られる二環系共役ジエン単量体が、高い反応性を示し、従来報告されたことのない構造を有する二環系共役ジエン重合体を与え、さらには高いガラス転移点を示しうることを発見し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1]下記の一般式(I)で表わされる化合物のうち少なくとも1種類を含む二環系共役ジエン単量体を含有するモノマーを重合して得られる、二環系共役ジエン重合体、
【0007】
【化2】
Figure 0003859577
(但し、一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲンまたは炭素数1から20のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基である。nおよびmは、0から10の整数である。X1、X2、Y1およびY2は同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲンまたは炭素数1から20のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基である。また、mまたはnが2以上の場合、m個のX1は互いに同一でも異なってもよく、m個のX2、n個のY1およびY2もそれぞれ互いに同一でも異なってもよい。)
[2]二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)において、R1=R2=R3=R4=R5=R6=H、n=2、m=1、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンを含む、上記[1]記載の二環系共役ジエン重合体、
[3]二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)において、R1=R2=R3=R4=R5=R6=H、n=2、m=1、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンおよびR1=R2=R3=R4=R5=R6=H、n=1、m=2、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンを含む、上記[1]記載の二環系共役ジエン重合体、
[4]二環系共役ジエン単量体が、ビシクロ[4.3.0]−3,7−ノナジエンの異性化反応生成物の一部または全部である、上記[2]または[3]に記載の二環系共役ジエン重合体、
[5]二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)において、R1=R2=R3=R4=R6=H、R5=CH3、n=1、m=2、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエンを含む、上記[1]記載の二環系共役ジエン重合体、
[6]二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)において、R1=R2=R3=R4=R6=H、R5=CH3、n=1、m=2、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエン、およびビシクロ[4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエンを含む、上記[1]記載の二環系共役ジエン重合体、
[7]二環系共役ジエン単量体が、ビシクロ[4.3.0]−3−メチル−3,7−ノナジエンの異性化反応生成物の一部または全部である、上記[5]または[6]に記載の二環系共役ジエン重合体、
[8]上記[2]から[7]のいずれかに記載の二環系共役ジエン共重合体を化学変換させることによって得られる修飾二環系共役ジエン重合体、
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の二環系共役ジエン重合体について詳細に説明する。本発明における二環系共役ジエン重合体は、一般式(I)の二環系共役ジエン単量体を構成単位とする重合体で、その構造は限定されない。本発明の重合体の主な結合形式としては、一般式(I)の二環系共役ジエン単量体において、(n+4)員環と(m+4)員環との結合、(m+4)員環と(m+4)員環との結合、(n+4)員環と(n+4)員環との結合などが挙げられる。例えば、二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)においてR1=R2=R3=R4=R6=H、R5=CH3、n=1、m=2、X1=X2=Y1=Y2=Hで表わされるビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエン、およびビシクロ[4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエンを含む場合は、ビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエンの5員環または6員環とビシクロ[4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエンの6員環との結合も含まれ得る。これら結合形式はランダムに存在してもよく、全てが混合してもよい。また、本発明における二環系共役ジエン重合体は、ブタジエンの重合における結合形式と同様に、一般式(I)の二環系共役ジエン単量体の1,4結合もしくは1,2結合のいずれかもしくは両方をとる。なお、1,4結合をとる場合はシス構造とトランス構造をとることが可能である。
本発明における二環系共役ジエン重合体は、通常、重量平均分子量が約500〜100,000程度のものが得られるが、用途により約1,000以上、さらに約10,000以上のものを好ましく用いることができる。また、通常、ガラス転移点が約170℃程度のものまで得られ、通常は約90℃以上、用途により約130℃以上さらには約150℃以上のものが好ましく用いられる。
【0009】
本発明における二環系共役ジエン単量体である一般式(I)で表わされる化合物、すなわちビシクロ[2+n.2+m.0]骨格を有する共役ジエンとしては、ビシクロ[4.4.0]−1,9−デカジエン、ビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエン、ビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンおよびビシクロ[3.3.0]−1,7−オクタジエン、ビシクロ[4.3.0]−X−メチル−2,9−ノナジエン(Xは2から9の任意の整数)、ビシクロ[4.3.0]−X−メチル−1,3−ノナジエン(Xは2から9の任意の整数)などがあげられる。好ましくはビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエン、ビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエン、ビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエン、およびビシクロ[4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエン、さらに好ましくはビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンである。これらは単独もしくは二種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、ビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンは、工業的に大量生産されているビシクロ[4.3.0]−3,7−ノナジエンをジクロロチタノセン/リチウムアルミニウムハイドライド触媒で異性化反応させることにより簡便に得られる(テトラヘドロンレターズ1980,vol.21,637−640)。同様に、ビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンはビシクロ[4.3.0]−3,7−ノナジエンの異性化反応で得られ、ビシクロ[4.3.0]−X−メチル−2,9−ノナジエンおよびビシクロ[4.3.0]−X−メチル−1,3−ノナジエンはビシクロ[4.3.0]−X−メチル−3,7−ノナジエン(Xは2から9の任意の整数)および/またはビシクロ[4.3.0]−X−メチル−3,8−ノナジエン(Xは2から9の任意の整数)の異性化反応で得られる。ビシクロ[4.3.0]−3,7−ノナジエンの異性化反応生成物には、ビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンやビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエン等が含まれるが、反応生成物の一部または全部(ひとつあるいは複数の化合物)を本発明におけるモノマーとして使用することができる。また、ビシクロ[4.3.0]−3−メチル−3,7−ノナジエンおよび/またはビシクロ[4.3.0]−3−メチル−3,8−ノナジエンの異性化反応生成物には、ビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエンやビシクロ[4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエン等が含まれるが、反応生成物の一部または全部(ひとつあるいは複数の化合物)を本発明におけるモノマーとして使用することができる。
【0010】
本発明における二環系共役ジエン重合体の重合方法は特に限定がなく、ブタジエンなどの鎖状共役ジエン単量体と同様に、カチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、配位重合等によって重合できる。これらの重合に用いる触媒もしくは反応開始剤は、ブタジエンなどの鎖状共役ジエン単量体の重合における、触媒もしくは反応開始剤を利用できる。
【0011】
カチオン重合で用いる触媒には特に限定はなく、例えば、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム、塩化スカンジウム、四塩化チタン、トリフルオロボレート、トリフルオロボレートエーテル錯体、トリフルオロボレートメタノール錯体、トリフルオロボレートフェノール錯体、トリスペンタフルオロボレート等のルイス酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、硝酸等のプロトン酸、塩化アルキルアルミニウム、活性白土等を用いることができる。
【0012】
アニオン重合で用いる触媒には特に制限はなく、例えば、ノルマルブチルリチウム、セカンダリーブチルリチウム、ターシャリーブチルリチウム等のアルキルリチウム、アルキルリチウム/テトラメチルエチレンジアミン混合系、ナトリウムメトキシド等のアルキルナトリウム、クミルカリウム等のアルキルカリウム、ナトリウムナフタレン、ジスチリルジアニオン、金属カリウム、金属ナトリウム、金属リチウム等を用いることができる。
【0013】
ラジカル重合で用いる開始剤には特に制限ななく、例えば、過酸化ジターシャリーブチルなどの過酸化ジアルキル、過酸化ベンゾイルなどの過酸化ジアシル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、テトラアルキルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド化合物、過酸化水素/鉄塩系、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン系、四価セリウム塩/アルコール系などのレドックス開始剤等を用いることができる。これらラジカル開始剤を、必要に応じ、加熱もしくは光照射をすることで、ラジカルを発生させる。
【0014】
配位重合で用いる触媒には特に制限はなく、例えば、テトラクロロチタニウム/トリイソブチルアルミニウム、テトラクロロチタニウム/トリエチルアルミニウム、ジクロロコバルト/クロロジエチルアルミニウム、トリクロロバナジウム/トリエチルアルミニウム、テトラクロロバナジウム/トリエチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナートバナジウム/トリエチルアルミニウム等をもちいることができる。
【0015】
これらの重合に用いる溶媒に特に制限はなく、通常の溶媒を用いることができる。例えば、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶媒、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等の極性溶媒が挙げられる。これらは単独もしくは二種類以上を組み合わせて用いることもできる。なお溶媒なしで重合を行ってもよい。
【0016】
重合温度は、−150℃から150℃の間で行うことが望ましい。好ましくは−100℃から100℃、さらに好ましくは−60℃から60℃である。重合温度は重合形式によって異なる。重合時間は、24時間以内好ましくは6時間以内さらに好ましくは4時間以内で反応させる。
【0017】
かようにして得た重合体を適当な富溶媒、例えばトルエン、テトラヒドロフランなどに溶解させ、適当な貧溶媒、例えばメタノール、イソプロピルアルコール、アセトンなどに注ぐことによって、重合体を沈殿させることができる。この沈殿を、ろ過によって溶媒と分離した後、減圧加熱乾燥することにより、白色の重合体を得ることができる。
得た重合体中に残存する二重結合を、水素化、エポキシ化、アリール化等の化学変換させることもできる。
【0018】
【実施例】
以下に、製造例および実施例を記すことにより本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実験に用いた測定機器は次のとおりである。重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、島津製作所(株)製GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)を用いて測定した。カラムは東ソー(株)製のTSKguardcoluMnHXL−L、TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXLを用いた。溶出溶媒はテトラヒドラフラン、温度は40℃、流速は1.0mL/分である。1HNMRおよび13CNMRは、日本電子(株)製lambda400で測定した。1HNMRは400MHz、13CNMRは100MHzである。有機化合物の純度は島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィーGC−17Aで測定した。カラムはTC−1、測定条件は60℃から90℃まで、昇温速度は1℃/分である。重合体のガラス転移点(Tg)は、セイコー電子工業(株)製DCS220Cで測定した。測定条件は70℃から250℃まで、昇温速度は20℃/分である。
【0019】
(単量体の製造例1)
二環系共役ジエン単量体であるビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンおよびビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンをテトラヘドロンレターズ1980,Vol.21,63,7−640を参考にして次のように合成した。窒素で置換したフラスコ内にビシクロ[4.3.0]−3,7−ノナジエン97.4g(0.81mol)、ジクロロチタノセン825mg(3.3mmol)、リチウムアルミニウムハイドライド500mg(13.2mmol)をフラスコ内に仕込んだ。攪拌しながら、温度を徐々に上げ、内温160℃とした。紫色のサスペンジョンに変化した後、ビシクロ[4.3.0]−3,7−ノナジエン200mL=177.1g(1.47mol)をさらに滴下し、内温160℃で6時間攪拌した。これと同様の実験を3回繰り返し、反応液850mLを得た。これに日本石油化学(株)製ジアリールアルカンSAS296を200mL加え、665Pa(5mmHg)42〜47℃(top)でフラッシュ蒸留し、薄黄透明な液体700mLを得た。これにSAS296を400mL加え、精密蒸留を行い(カラム長さ=70cm、カラム充填物=helipackNo3を430mL、圧力=532Pa(4mmHg)、オイルバス温度75〜80℃、還流比=20/1)、無色透明な液体300gを得た。この液体のガスクロマトグラフィーによる純度は99%以上であり、1HNMRより、ビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエン/ビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンの87/13の混合物であった。図1に1HNMRチャートを、図2に13CNMRチャートを示す。
【0020】
(単量体の製造例2)
二環系共役ジエン単量体であるビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエンおよびビシクロ [4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエンを次のようにして合成した。窒素で置換したフラスコ内にビシクロ[4.3.0]−3−メチル−3,7−ノナジエンとビシクロ[4.3.0]−3−メチル−3,8−ノナジエンの約90/10の混合物28.7g(0.21mol)およびジクロロチタノセン200mg(0.8mmol)を仕込んだ。攪拌しながら、温度を徐々に上げ、内温130℃としたのち、1.0Mリチウムアルミニウムハイドライドテトラヒドロフラン溶液12mL(12mmol)を滴下ロートを用いて、系内温度が上昇し過ぎないように少しずつ加えた。紫色のサスペンジョンに変化した後、内温130℃で12時間攪拌した。室温まで冷却後、メタノール1mLを加え、反応液を濾紙で濾過した。減圧下で濾液から溶媒を溜去し、淡黄色透明の液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエン41%とビシクロ[4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエン33%の混合物であった。図3に1HNMRチャートを、図4に13CNMRチャートを示す。
【0021】
以下実施例1から5はカチオン重合による二環系共役ジエン重合体の合成例である。
(実施例1)
窒素で置換したフラスコ内に塩化メチレン25mLと上記製造例1で得られたビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンとビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンの87/13の混合物5mLを仕込んだ。フラスコの内温を0℃にして攪拌した。BF3エーテル錯体(BF3含有率47%)0.1mLを塩化メチレン10mLに溶かした溶液0.25mLを、系中に滴下し、20分間攪拌した。トルエン50mLを加え、均一溶液とし、これをメタノール350mL中に注いだ。生じた白色固体を吸引ろ過回収し、130℃で真空乾燥して白色固体3.5gを得た。得られた個体は、トルエンへの溶解性が良好であり、GPCにより分子量を測定した結果、重量平均分子量(Mw)=16,700、数平均分子量(Mn)=5,400であった。またTgは155℃あった。
【0022】
(実施例2)
窒素で置換したフラスコ内に塩化メチレン25mLと上記製造例1で得られたビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンとビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンの87/13の混合物5mLを仕込んだ。内温を−40℃にして攪拌した。BF3エーテル錯体(BF3含有率47%)0.1mLを塩化メチレン10mLに溶かした溶液0.25mLを、系中に滴下し、60分間攪拌した。トルエン50mLを加え、均一溶液とし、これをメタノール350mL中に注いだ。生じた白色固体を吸引ろ過回収し、130℃で真空乾燥して白色固体1.5gを得た。得られた個体は、トルエンへの溶解性が良好であり、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=31,800、Mn=12,100であった。またTgは169℃であった。図5にこの得られた重合体の1HNMRチャートを、図6に13CNMRチャートを示す。
【0023】
(実施例3)
窒素で置換したフラスコ内に塩化メチレン25mLと上記製造例1で得られたビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンとビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンの87/13の混合物5mLを仕込んだ。内温を0℃にして攪拌した。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン106mgを塩化メチレン0.5mLに溶かした溶液を、系中に滴下し、3分間攪拌した。トルエン50mLを加え、均一溶液とし、これをメタノール350mL中に注いだ。生じた白色固体を吸引ろ過回収し、130℃で真空乾燥して白色固体4.1gを得た。得られた個体は、トルエンへの溶解性が良好であり、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=39,600、Mn=11,400であった。またTgは166℃であった。
【0024】
(実施例4)
窒素で置換したフラスコ内に塩化メチレン25mLと製造例1で得られたビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンとビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンの87/13の混合物5mLを仕込んだ。内温を−60℃にして、攪拌した。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン109mgを塩化メチレン0.5mLに溶かした溶液を系中に滴下し、6分間攪拌した。トルエン120mLを加え、均一溶液とし、これをメタノール500mL中に注いだ。生じた白色固体を吸引ろ過回収し、130℃で真空乾燥して白色固体3.2gを得た。得られた個体は、トルエンへの溶解性が良好であり、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=78,800、Mn=36,000であった。またTgは167℃であった。
【0025】
(実施例5)
窒素で置換したフラスコ内に塩化メチレン10mLと製造例2で得られたビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエンおよびビシクロ[4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエンの混合物2.35gを仕込んだ。フラスコの内温を0℃にして攪拌した。トリスペンタフルオロフェニルボラン130mgを塩化メチレン2mLに溶かした溶液を系中に滴下し、20分間攪拌した。メタノール1mLを添加後、反応液を濾紙で減圧濾過し、トルエンで洗浄した。濾液中の溶媒を減圧下で溜去したのち、30℃で真空乾燥し、黄色透明の粘性液体を得た。得られた液体は、トルエンへの溶解性は良好であり、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=571、Mn=318であった。図7に1HNMRチャートを、図8に13CNMRチャートを示す。
【0026】
以下実施例6はアニオン重合による二環系共役ジエン重合体の合成例である。
(実施例6)
窒素で置換したフラスコ内にテトラヒドロフラン20mL、ノルマルブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)2.3mLとテトラメチルエチレンジアミン0.7mLを仕込んだ。5分間攪拌し、上記製造例で得られたビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンとビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンの87/13の混合物5mLを滴下し、3時間室温で攪拌した。得られた溶液をメタノール500mL中に注いだ。生じた白色固体を吸引ろ過回収し、100℃で真空乾燥して白色固体1.8gを得た。得られた個体は、トルエンへの溶解性が良好であり、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=1,300、Mn=1,000であった。またTgは98℃であった。
【0027】
以下実施例7はラジカル重合による二環系共役ジエン重合体の合成例である。
(実施例7)
ジムロート付3つ口ナスフラスコに、製造例1で得られたビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンとビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンの87/13の混合物4.12g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.18g、トルエン30mLを入れ、アルゴンでバブリングを1時間行った。その後、アルゴン気流下、オイルバスにて90℃に加熱した。3時間後、反応を終了した。反応液から軽質分を減圧下で溜去したのち、30℃で真空乾燥し、黄色透明の粘性液体を得た。得られた液体のNMRを測定した。図9に1HNMRチャートを、図10に13CNMRチャートを示す。また、GPCにより分子量を測定した結果、Mw=569、Mn=523であった。
【0028】
以下実施例8は配位重合による二環系共役ジエン重合体の合成例である。
(実施例8)
2乾燥した二口ナスフラスコにN2雰囲気下でエチレンビス(インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロライド/トルエン溶液2.4mg/20mLを入れたのち、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(10%)2.0mLを入れた(溶液が黄色からオレンジへ変化した)。その後、製造例1で得られたビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンとビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンの87/13の混合物9mLを添加した。4時間攪拌後、エタノールによりクエンチし、さらにエタノールを加えることにより、白色の沈殿が発生した。吸引濾過し、エタノールで洗浄したのち、濾物を40℃で真空乾燥し、1.5gの固体を得た。得られた個体のTgは141℃であった。
【0029】
これらの重合体は、従来報告されたことのない構造を有する二環系共役ジエン重合体であり、光学材料、電子材料、医療器具、接着剤、潤滑剤などの幅広い用途に用いることができる。これらは、二環系構造を有するため高い機械的強度が期待される。また、特に実施例2〜4で得られた重合体は、高いTgを示し高耐熱性を有する。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明の環状ジエン重合体は、製造が簡便で重合活性の高い環状ジエン単量体から製造され、溶媒への溶解性が良好であり、さらには高耐熱性、高機械強度を有するものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 製造例1において得られた単量体混合物の1HNMR(400MHz)チャートである。
【図2】 製造例1において得られた単量体混合物の13CNMR(100MHz)チャートである。
【図3】 製造例2において得られた単量体混合物の1HNMR(400MHz)チャートである。
【図4】 製造例2において得られた単量体混合物の13CNMR(100MHz)チャートである。
【図5】 実施例2において得られた重合体の1HNMR(400MHz)チャートである。
【図6】 実施例2において得られた重合体の13CNMR(100MHz)チャートである。
【図7】 実施例5において得られた重合体の1HNMR(400MHz)チャートである。
【図8】 実施例5において得られた重合体の13CNMR(100MHz)チャートである。
【図9】 実施例7において得られた重合体の1HNMR(400MHz)チャートである。
【図10】 実施例7において得られた重合体の13CNMR(100MHz)チャートである。
【図11】 実施例8において得られた重合体の1HNMR(400MHz)チャートである。
【図12】 実施例8において得られた重合体の13CNMR(100MHz)チャートである。

Claims (8)

  1. 下記の一般式(I)で表わされる化合物のうち少なくとも1種類を含む二環系共役ジエン単量体を含有するモノマーを重合して得られる、二環系共役ジエン重合体。
    Figure 0003859577
    (但し、一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲンまたは炭素数1から20のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基である。nおよびmは、0から10の整数である。X1、X2、Y1およびY2は同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲンまたは炭素数1から20のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基である。また、mまたはnが2以上の場合、m個のX1は互いに同一でも異なってもよく、m個のX2、n個のY1およびY2もそれぞれ互いに同一でも異なってもよい。)
  2. 二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)において、R1=R2=R3=R4=R5=R6=H、n=2、m=1、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンを含む、請求項1記載の二環系共役ジエン重合体。
  3. 二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)において、R1=R2=R3=R4=R5=R6=H、n=2、m=1、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−2,9−ノナジエンおよびR1=R2=R3=R4=R5=R6=H、n=1、m=2、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−1,8−ノナジエンを含む、請求項1記載の二環系共役ジエン重合体。
  4. 二環系共役ジエン単量体が、ビシクロ[4.3.0]−3,7−ノナジエンの異性化反応生成物の一部または全部である、請求項2または3に記載の二環系共役ジエン重合体。
  5. 二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)において、R1=R2=R3=R4=R6=H、R5=CH3、n=1、m=2、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエンを含む、請求項1記載の二環系共役ジエン重合体。
  6. 二環系共役ジエン単量体が、一般式(I)において、R1=R2=R3=R4=R6=H、R5=CH3、n=1、m=2、X1=X2=Y1=Y2=Hで表されるビシクロ[4.3.0]−3−メチル−2,9−ノナジエン、およびビシクロ[4.3.0]−3−メチル−1,3−ノナジエンを含む、請求項1記載の二環系共役ジエン重合体。
  7. 二環系共役ジエン単量体が、ビシクロ[4.3.0]−3−メチル−3,7−ノナジエンの異性化反応生成物の一部または全部である、請求項5または6に記載の二環系共役ジエン重合体。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の二環系共役ジエン共重合体を化学変換させることによって得られる修飾二環系共役ジエン重合体。
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