JP3859434B2 - 電子ビーム描画装置およびパターン描画方法 - Google Patents

電子ビーム描画装置およびパターン描画方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルプロジェクション方式の電子ビーム描画装置およびパターン描画方法に関するもので、特に、低エネルギーの電子ビームを用いるパターン描画に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
電子ビーム(Electron Beam)を用いて半導体ウェーハなどの基板表面にパターンを描画する電子ビーム描画装置は、解像度の点で特に優れているため、半導体回路のより一層の微細化要求に応えるものとして注目されている。
【0003】
現在、実用化されている電子ビーム描画装置に対しては、
(1)近接効果の影響によりパターン精度が悪い
(2)スループットが小さい
等の欠点が指摘されている。
【0004】
近接効果とは、高い加速電圧で入射した電子がウェーハ上のレジストの内部で散乱し、背面散乱電子が入射点の周辺のレジストまでも露光してしまい、パターンの精度が低下する現象である。これを補正するためには、パターンのレイアウトに対応してドーズ量の補正を行うことが必要になり、これが装置の構成を極めて複雑にしている。
【0005】
スループットが小さい原因の一つにレジストの感度が低いことがある。これは、レジストの感度が電子ビームの入射により発生する二次電子の量に依存するのに対し、高い加速電圧で電子ビームを入射させると、入射電子がレジストを突き抜けてしまい、必要な二次電子が十分に発生しないためである。
【0006】
上記の二つの問題を解決できる手法として低加速電子ビーム描画方式がある。ここでいう低加速とは、近接効果の影響を無視できる程度の加速電圧を指し、具体的には概ね5kv以下である。加速電圧が低いと、入射電子のエネルギーが低く、背面散乱電子の影響が小さいので、近接効果を軽減できるからである。また、入射電子のエネルギーが低いと、レジスト内部の散乱断面積が大きくなって、二次電子の発生効率が高くなる。レジストの感光に寄与するのは低エネルギーの二次電子であるので、二次電子の発生効率の向上はそのままレジストの感度の向上となってあらわれる。レジストの高感度化はそのままスループットの向上となってあらわれる。
【0007】
このように、低加速電子ビーム描画方式は、高加速方式に比べて大きな利点を有しており、特に直接描画の分野で顕著な利点となる。さらに、低加速電子ビーム描画方式を採用する他の利点として、加速電圧が低いと静電型コラム(電界型レンズを用いた電子光学系)を使用できる点が挙げられる。静電型コラムは、小型化が容易であること、電界レンズであるため磁界型レンズのようにヒステリシスがないので応答性がよい、等の特長がある。しかし、この反面で、収束レンズとして使用するときのレンズ電圧が高くなるという欠点があった。例えば、加速電圧が50kVのとき、レンズ電圧は70〜100kVとなるため、これでは実用性に乏しい。しかし、低加速電圧(5kV以下)であれば、レンズ電圧は10kV程度となり、現状の高電圧電源技術で実用化可能である。静電型レンズは、収束レンズとしてではなく、高速性の要求される偏向器としてはすでに実用化されているが、全てを静電型レンズで構成された電子ビーム描画装置は未だ実用化されていない。
【0008】
一方、静電型コラムを用いた低加速電子ビーム描画装置は、特願平10−279075号(特開2000−173529「電子ビーム描画方法及びその装置」)で既に提案されている。この出願明細書(以下、先行技術1という)においては、セルプロジェクション方式の電子ビーム描画装置のコラムを全て静電型レンズで構成することが提案されている(ここでは、広い意味で偏向器や収差補正器も含めてレンズと呼んでいる)。ただし、本提案において収束用レンズは、回転対称系の静電型レンズで構成されている。
【0009】
このように、低加速電子ビーム描画技術によれば、スループットの大きい直接描画の可能性があり、しかも静電型コラムにより、小型で制御性の高い描画装置が実現される可能性がある。このことは、将来の微細化パターンの形成に大きな効果を奏することが期待できる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低加速電子ビーム描画装置については、空間電荷効果という大きな問題がある。空間電荷効果とは、空間電荷によって形成される空間電位により荷電粒子の流れが制限される現象であり、電子ビーム描画装置においては、陰極(カソード)からの放出電流の制限、クロスオーバを含む電子ビームの収束時におこるビーム径の広がり(いわゆるビームぼけ)となって現れる。空間電荷効果は、電子ビームのエネルギーに依存するため、電子ビームのエネルギーが低い場合は空間電荷効果が顕著に現れる。従って、低加速電子ビームコラムにおいて重大な問題となる。
【0011】
先行技術1に記載されたセルプロジェクション方式のコラムにおけるレンズ構成例を図7に示す。ただし、ここでは本発明の説明に直接関係のないビームの走査偏向系、非点収差補正等の収差補正系に関する説明は省略する。なお、以下の各図において、同一の部分は、同一の参照番号を付してその説明を適宜省略する。
【0012】
先行技術1に提案されたセルプロジェクション方式のコラムは、図7に示すように、主として電子銃51、照明光学系53、キャラクタープロジェクションアパーチャ(Character Projection aperture;以下、単にCPアパーチャという)5、投影光学系58から構成されている。
【0013】
電子銃51から出射された電子ビームは、第1の開き角絞り52により矩形の断面形状を有するように成形され、照明光学系53によりその軌道が制御されてCPアパーチャ5上に拡大投影される。第1の静電式成形偏向器4は、CPアパーチャ5上に形成されている多数のキャラクターから所望の描画パターンに対応したキャラクターを選択し、ビームを偏向することにより、選択されたキャラクタ上に照射させる。照明光学系53は、例えばCPアパーチャ5の有効領域が50μmであるとすると、50μm領域をカバーするように電子ビームを結像させる。第2の静電式成形偏向器6は、偏向された電子ームを光軸中心に振り戻すためのものである。
【0014】
CPアパーチャ5のキャラクタに照射した電子ビームは、キャラクタの形状に対応して成形され、CPアパーチャ5を起点とするセルパターンビームとして投影光学系58に入射し、投影光学系58によって基板上面に縮小投影される。基板表面で一括して露光する領域を5μm角とすると、縮小率は1/10である。
【0015】
セルプロジェクション方式の描画装置は、上記先行技術の他にも、H.Sunaoshiet.al;Jpn.J.Appl.Phys.Vol.34(1995),pp.6679-6683(以下、先行技術2という)や、K.Hattori et.al;J.Vac.Scl.Technol.B 11(6),Nov/Dec 1993,p.2346(以下、先行技術3という)にも記載されている。
【0016】
投影光学系は、先行技術3にも示されているように、縮小レンズ(Reduction Lens)と対物レンズ(Objective Lens)からなる二段縮小レンズ系になっている。空間電荷効果によるビームぼけは、この投影光学系内部と基板上面で発生する。
【0017】
静電型レンズでは、減速モードと加速モードの2つのモードが選択できる。一般的に収差性能は加速モードの方が優れているが、加速モードではレンズ電界に高電界が必要なので実用性が低く、このため、一般的には減速モードが用いられる。減速モードでは、電子はレンズ内部で一旦減速された後、再び加速されてレンズを出射する。
【0018】
電子ビームは、縮小レンズで一旦クロスオーバを結び、対物レンズ内部でさらに減速されるため、このときに空間電荷効果の影響を大きく受けてしまう。
【0019】
さらに、最も空間電荷効果の影響を顕著に受けるのが基板面である。この部分では、空間電荷効果によるビームのぼけは、開き角と焦点距離(電子が無電界空間を走行する距離)に依存する。即ち、開き角が小さくなると空間電荷効果の影響は大きくなり、焦点距離が長くなると空間電荷効果の影響は大きくなる。しかし、空間電荷効果の影響を軽減するために開き角を大きくすると、収差の影響が大きくなり、特に低加速電圧動作のときには色収差の影響が大きくなってしまうため、あまり開き角を大きくとることはできない。このことが低加速電子ビーム描画装置の電子光学系を設計するにあたっての困難な問題になっている。
【0020】
基板表面における空間電荷効果の影響は、Y.Yamazaki and M.Miyoshi;Optik 96.No.4(1994)pp.184-186(以下、先行技術4という)において解析されている。これは、楕円断面ビームの空間電荷効果によるビーム径の増大比と開き角比の関係を解析したものである。より具体的には、均一な電流密度を有する楕円断面ビームをアナモルフィック結像光学条件において基板表面で円形スポットに結像する場合において光学系に現れる空間電荷効果の影響について解析されている。
【0021】
空間電荷効果によるビーム径の増大比と開き角比との関係を図8に示す。回転対称系ではX方向、Y方向の軌道はいずれも同じであるから、入射電子の開き角は相互に等しく、従って開き角比は1である(α/γ=1)。図8のグラフは、回転対称系、即ち、α/γ=1の場合の空間電荷効果によるビームの広がりを1として、開き角の比の増大に伴って変化する、空間電荷効果によるビームの広がりの減少率を示している。このグラフからは、α/γ=γ/α=1から離れる(即ち、開き角比が大きくなる)に従って、ビーム径の増大比は小さくなっていき、ビームのぼけが軽減されていくことがわかる。
【0022】
これは、開き角比の増大に従い、等電位空間での楕円断面ビームのアスペクト比が増大し、ビーム束の最外端の電子に作用する電界強度が低減し、空間電荷効果によるビーム径の影響が抑制されることを示している。例えば、開き角比10のとき、最外端電子に作用する電界は、図中の破線で示しているように、円形断面ビームの場合に比べて58%に低減していることがわかる。これと比例してビーム径の増大も抑制される。
【0023】
従って、楕円断面ビームにより基板上に等方的なCPアパーチャ像を結像し、なおかつその楕円断面のアスペクト比を大きくできる光学系、言い換えれば、基板面に入射する入射角比を大きくする光学系を形成できれば、空間電荷効果によるビームぼけが著しく軽減された電子光学鏡筒を提供することができることがわかる。
【0024】
四極子レンズに代表される多極子非対称レンズ系をプローブ形成に用いることは、既にいくつかの論文に記載されている。このような多極子非対称レンズ系のいくつかの応用例が電子顕微鏡;Vol.25,No.3(1990)pp.159-166(以下、先行技術4という)、電子顕微鏡;Vol.25,No.1(1991)pp.58-65(以下、先行技術5という)に記載されている。先行技術4のp.159には、3段の電界型四極子レンズを用いた可変成形型の電子ビーム描画装置の電子光学系の概念図が示されている。この電子光学系の構成について図9を参照しながら説明する。
【0025】
図9に示す可変成形ビーム方式の電子光学系は、電子銃71から出射した電子ビームを磁界レンズ(コンデンサーレンズ72)で矩形絞り73上に照射し、これを通過した矩形ビームに対して、X,Y方向の縮小率を3段の四極子レンズ系74によって制御する電子光学系である。八極子レンズ75は、非点収差の補正および電子ビームの偏向に用いられる。図9から分かるように、先行技術4に記載された電子光学系は、照明光学系である電子銃からコンデンサーレンズまでは回転対称系のレンズで構成されている。投影光学系は四極子レンズ系74と八極子レンズ75から構成されている非対称レンズ系で構成されている。
【0026】
電子光学系の上半分、即ち、照明光学系が回転対称系であるため、矩形アパーチャ73を出射した電子のX,Y方向における軌道の出射角はいずれも等しい(α=γ)。従って、単純に矩形アパーチャ像を縮小投影した場合には、基板面の入射角も相互に等しいことになる。即ち、X軸方向の倍率とY軸方向の倍率は相互に等しく、従って、X方向入射角をαとし、Y方向入射角をγとすると、α=γである。
【0027】
先行技術4に記載された電子光学系は、可変成形ビーム方式の電子ビーム描画装置を提供することを目的としている。そのため、等方的な矩形アパーチャ像に対してX,Y方向の倍率を任意に変化させることにより電子ビームの基板上における照射面の形状を変化させる。線状ビームにして投影するときには、X,Y方向の倍率を変化させる。具体的には、先行技術4に示されているように、3段の四極子レンズの各電極Q1〜Q3のうち、電極Q1の励磁条件を固定して、電極Q2,Q3の励起条件を変化させる。これによりX軸方向とY軸方向の倍率は、相互に異なることとなり、従って基板表面への入射角も異なることとなり、X方向の入射角をα’、Y方向の入射角をγ’とすれば、α’≠γ’となる。
【0028】
異なる入射角による結像光学系は、Y.Yamazaki and M.Miyoshi;Nuclear lnstruments and Methods In Phisics Research A363(1995)67-72(先行技術6)に記載されている。ここでは、線状陰極(正確には矩形陰極)を等方的な円ビームに縮小投影するための電界型四極子レンズ系の結像条件について記載されている。ここに示された電子光学系では、光源を10μm×100μm、アスペクト比10のLaB線状陰極で構成し、3段の四極子レンズ系(トリプレット)でアナモルフィック結像系を構成し、X軸(短軸)の倍率を1/1000、Y軸(長軸)の倍率を1/100に設定しすることにより矩形ビームを円ビームに変形・縮小することが示されている。
【0029】
先行技術6に記載された、四極子レンズによるトリプレットの結像光学系の光線図を図10に示す。矩形陰極の長軸がX軸、短軸がY軸である。同図においては、四極子レンズ電極Q2の励起条件に基づく2つの結像条件が示されているが、縮小率を満足するためには、図中実線で示した強励起モードが最適解である。長軸軌道であるX軌道81は、四極子レンズ電極Q1で収束軌道、四極子レンズ電極Q2で発散軌道をとり、最終的に四極子レンズ電極Q3で収束されて基板21の上面に結像する。この一方、短軸軌道であるY軌道82は四極子レンズ電極Q1で発散軌道、四極子レンズ電極Q2で収束軌道をとり、最終的に四極子レンズ電極Q3で発散しながら結像する。
【0030】
非対称な矩形陰極から出射した電子ビームを等方的な丸ビームに結像するため、X,Y各軸の倍率が異なるので、基板表面における入射角度は倍率比に一致して異なっている(p.68,Fig.15)。この先行技術6によれば、Mx(X軸軌道の倍率)=1/1000,My(Y軸軌道の倍率)=1/100であるから、入射角の比は1:10になる。このように、先行技術6によれば、非対称な矩形陰極から出射した電子ビームを等方的な丸ビームに結像するための結像光学系の構成に関する基本概念は示されているが、セルプロジェクション方式の電子光学系に適用するための具体的手段は記載されていなかった。
【0031】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、空間電荷効果の影響を大幅に減少して解像度およびスループットに優れた低加速電子ビーム描画装置およびパターン描画方法を提供することにある。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の手段により上記課題の解決を図る。
【0033】
即ち、本発明によれば、
電子ビームを基板に照射して所望のパターンを描画する電子ビーム描画装置であって、上記電子ビームの照射により上記基板から発生する背面散乱電子の量が近接する描画パターンの露光量に影響を及す量を下回る加速電圧で、かつ、光軸に対して非対称な断面形状を有する上記電子ビームを出射する電子ビーム出射手段と、上記所望のパターン形状に対応した形状の絞り孔を有する成形アパーチャと、約1である第1のアスペクト比を有する断面形状で上記電子ビームが上記成形アパーチャに照射するように上記電子ビームの光軸に対して非対称な倍率が設定される照明光学系と、上記光軸の方向をZ軸方向とすると、上記成形アパーチャの形状に対応して成形されて上記成形アパーチャを出射した上記電子ビームをX軸方向およびY軸方向のいずれも同一の倍率で縮小するとともに、上記光軸に対して非対称な軌道を経て上記X軸方向と上記Y軸方向とで異なる入射角をもって上記基板に結像させる投影光学系と、を含む電子光学系を備える電子ビーム描画装置が提供される。
【0034】
上記電子ビーム描画装置によれば、上記照明光学系に上記光軸に対して非対称な倍率が設定されるので、上記電子ビームは、上記X軸方向と上記Y軸方向とで異なる入射角をもって上記成形アパーチャに入射する。このとき、一般的に、照明光学系は、結像条件で、即ち、上記X軸方向のビーム軌道と上記Y軸方向のビーム軌道が上記光軸上の一点で交差するという条件で動作する。回転対称の光学系では、必ず結像条件が成立するが、非対称の光学系では、X軸方向の焦点位置(X軌道がZ軸と交差する点をいう)とY軸方向の焦点位置(Y軌道がZ軸と交差する点をいう)とが一致する場合に結像条件が成立する。照明光学系の本来の目的は、CPアパーチャを照明することであるため、本発明においては、必ずしも結像する必要はない。従って、光源から非対称に出射された上記電子ビームが等方な断面形状(アスペクト比が約1)で上記成形アパーチャに入射するので、絞り孔の形状に応じた断面形状(CPアパーチャ像)を有する電子ビームが上記成形アパーチャへの入射角と同一の出射角で上記絞り孔から出射する。また、上記投影光学系は、上記絞り孔から出射した上記電子ビームを上記X軸方向および上記Y軸方向のいずれも同一の倍率で縮小するとともに、光軸に対して非対称な軌道を経て上記X軸方向と上記Y軸方向とで異なる入射角をもって上記基板表面に結像させる。これにより、上記電子ビームが照明光学系および投影光学系内でクロスオーバを一切結ぶことなく縮小されて上記基板表面で等方的に結像する。この結果、上記投影光学系内における空間電荷効果の影響が解消され、上記基板表面における空間電荷効果の影響を大幅に低減することができる。これにより、低加速の電子ビーム描画装置で従来発生していたビームぼけを大幅に低減することができる。この結果、低エネルギーの電子ビームを用いながら、解像度に優れ、スループットの高い電子ビーム描画装置が提供される。
【0035】
上記電子ビーム描画装置において、上記照明光学系は、第1の多極子レンズを有すると好適であり、さらに、少なくとも2段の上記第1の多極子レンズを有することが望ましい。
【0036】
非対称な断面形状の電子ビームを形成する方法には、矩形陰極からX軸方向およびY軸方向ともに等しい出射角度で電子を放出させる方法と、円陰極からX軸方向とY軸方向とで異なる出射角度で電子を放出させる方法とが含まれる。いずれの方法によっても、多極子レンズ系から構成される非対称光学系では同様の効果が得られる。
【0037】
即ち、上記X軸方向と上記Y軸方向とのアスペクト比が1を除く第2のアスペクト比である矩形状の第1の陰極を有する場合は、上記電子ビーム出射装置から上記X軸方向と上記Y軸方向とで等しい出射角で出射した電子が上記X軸方向と上記Y軸方向とで異なる入射角で上記成形アパーチャ上に入射する。この結果、非対称な断面形状で出射した電子ビームが実質的に等方な断面形状で上記成形アパーチャに入射する。上記照明光学系が上記少なくとも2段の多極子レンズを有する場合は、これらの多極子レンズが上記第2のアスペクト比に対応して、上記短軸の方向で拡大系となり上記長軸の方向で縮小系となるように上記照明光学系の焦点条件が設定されると好適である。
【0038】
この一方、実質的に円形状である第2の陰極を有する場合は、上記電子ビーム出射装置から上記X軸方向と上記Y軸方向とで異なる出射角で出射した電子が光軸に非対称な軌道を経て上記X軸方向と上記Y軸方向とで任意の異なる入射角で上記成形アパーチャに入射するように、上記照明光学系の焦点条件が設定されると良い。この焦点条件は、上記X軸方向における上記電子ビームの焦点位置と上記Y軸方向における上記電子ビームの焦点位置とが異なる位置となるように、上記X軸方向と上記Y軸方向とで相互に独立して設定される条件であることが望ましい。この結果、電子ビームはクロスオーバを結ぶことなく上記成形アパーチャに入射する。
【0039】
上記第1の陰極は、ランタンヘキサボライド(LaB)を用いて形成されると好適であり、また、上記第2の陰極は、ZrO/W熱電界放出型が好適である。
【0040】
上記電子ビーム描画装置において、上記投影光学系は、第2の多極子レンズを有することが望ましい。
【0041】
さらに、上記投影光学系は、4段の上記第2の多極子レンズを有し、これらの多極子レンズは、上記電子ビームが上記X軸方向で発散および収束を繰返す軌跡を描き、上記Y軸方向で上記X軸方向とは逆に集束および発散を繰返す軌跡を描くように結像条件が設定されると好適である。
【0042】
これにより、上記開き絞り孔の形状に応じた断面形状を有する電子ビームが投影光学系の内部でクロスオーバを一切結ぶことなく基板表面に結像する。この結果、投影光学系内部における空間電荷効果の影響が解消され、また基板表面における空間電荷効果の影響が大幅に低減するので、ビームぼけを大幅に低減することができる。
【0043】
上記多極子レンズは、静電型四極子レンズまたは八極子レンズを含むと良い。
また、本発明によれば、
電子ビームを出射する電子銃と、所望のパターン形状に対応した形状の絞り孔を有する成形アパーチャと、出射された上記電子ビームを制御して上記成形アパーチャに照射させる照明光学系と、上記絞り孔の形状に応じて成形され上記成形アパーチャを出射した上記電子ビームを制御して基板の表面に結像させる投影光学系と、を含む電子光学系を備える電子ビーム描画装置を用いて上記基板に上記所望のパターンを描画するパターン描画方法であって、上記電子ビームの照射により上記基板から発生する背面散乱電子の量が近接する描画パターンの露光量に影響を及す量を下回る加速電圧で、かつ、光軸に対して非対称な断面形状を有する上記電子ビームを出射させる第1の手順と、上記照明光学系の倍率を上記光軸に対して非対称な倍率に設定し、実質的に等方な断面形状で上記電子ビームが上記成形アパーチャに入射するように上記電子ビームを制御する第2の手順と、上記光軸の方向をZ軸方向とすると、上記成形アパーチャを出射した上記電子ビームをX軸方向およびY軸方向のいずれにおいても同一の倍率で縮小させるとともに、上記光軸に対して非対称の軌跡を描き、かつ、上記X軸方向と上記Y軸方向とで異なる入射角で上記基板に入射して結像するように上記投影光学系を制御する第3の手順と、を備えるパターン描画方法が提供される。
【0044】
上記第2の手順は、上記電子ビームが上記X軸方向と上記Y軸方向とで異なる入射角で上記成形アパーチャに入射するように、上記照明光学系の焦点条件を設定する手順であることが望ましい。
【0045】
さらに、上記焦点条件を設定する手順は、上記X軸方向における上記電子ビームの焦点位置と上記Y軸方向における上記電子ビームの焦点位置とが異なる位置となるように、上記X軸方向の焦点条件と上記Y軸方向の焦点条件とを相互に独立して設定する手順であると良い。これにより、照明光学系においてもビーム軸に対して非対称の光学系が形成され、上記電子ビームがクロスオーバを結ぶことを回避することができる。
【0046】
上記第3の手順は、上記電子ビームが上記X軸方向で発散および収束を繰返す軌跡を描き、上記Y軸方向で上記X軸方向とは逆に収束および発散を繰返す軌跡を描くように上記投影光学系に結像条件を設定する手順を含むと好適である。
【0047】
上記電子銃は、X軸方向とY軸方向とのアスペクト比が1を除く値である第1のアスペクト比である矩形状の第1の陰極を有し、上記第1の手順は、この第1の陰極から等しい出射角で電子を出射する手順を含むことが望ましい。
【0048】
また、これとは代替的に、実質的に円形状である第2の陰極を上記電子銃が有し、上記第1の手順は、上記X軸方向と上記Y軸方向とで異なる出射角で電子を放出させる手順を含むこととしても同様の結果が得られる。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。
【0050】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明にかかる電子ビーム描画装置の第1の実施の形態が備える電子光学系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態におけるセルプロジェクション方式の電子光学系10は、陰極1を有する電子銃と、第1の開き角絞り2と、照明光学系3と、第1の成形偏向器4と、CPアパーチャ(成形アパーチャ)5と、第2の成形偏向器6と、第2の開き角絞り7と、投影光学系8とを備えている。
【0051】
陰極1は、ランタンヘキサボライド(LaB)から形成された矩形陰極である。本実施形態において、陰極1は、短辺がl0μm、長辺が100μmであり、そのアスペクト比(第1のアスペクト比)は10となっている。
【0052】
照明光学系3は、本実施形態において特徴的な構成要素であり、電極Qa,Qaをそれぞれ有する四極子レンズ(第1の多極子レンズ)を用いた2段の非対称レンズ系(ダブレット)となっている。照明光学系3は、陰極1から出射した電子ビームを均一な密度でCPアパーチャ5上に照射させ、CPアパーチャ像を形成させる。CPアパーチャにおける照射領域は、通常50〜100μm角程度である。なお、第1の開き角絞り2は陰極1からの電子の出射角度を規定するためのものである。また、第2の開き角絞り7は、X,Y軌道の投影光学系への入射角度を規定するためのもので、X軸およびY軸についてそれぞれの絞りが必要なので、X,Y一対の開き角絞りで一つの絞りを構成している。
【0053】
投影光学系8は、電極Qb〜Qbをそれぞれ有する4極子レンズ(第2の多極子レンズ)を用いた4段の非対称レンズ系(カルテット)で構成され、CPアパーチャ5のキャラクタパターンにより成形されたアパーチャ像を縮小して投影し、基板21の上面に正確に結像させる。本実施形態において基板21の上面の有効露光領域は5μmであり、投影光学系8の縮小率は、1/10である。投影光学系8に4段の四極子レンズ系を採用した理由は、縮小率と収差特性とを同時に達成するためである。
【0054】
図1に示す電子光学系10の制御方法について、本発明にかかるパターン描画方法の第1の実施の形態として図面を参照しながら説明する。
【0055】
図2は、図1に示す電子光学系10により制御される電子ビームのビーム軌道を示す模式図である。同図においては、矩形陰極1の短辺方向をX軸方向、長辺方向をY軸方向とし、電子ビームのビーム軌道がX軸方向とY軸方向のそれぞれについて示されている。即ち、ビーム軌道11,12は、陰極1から出射した電子ビームがCPアパーチャ5を通過するまでのX,Y方向のビーム軌道をそれぞれ示し、また、ビーム軌道13,14は、投影光学系内におけるX,Y方向のビーム軌道をそれぞれ示す。
【0056】
本実施形態のパターン描画方法の最大の特徴は、照明光学系3の倍率を非対称に設定し、これにより、電子ビームをCPアパーチャ5上に等方的(正方形または円形)に照射できるようにした点にある。即ち、陰極1の電子ビーム放出面の形状について非対称である矩形状を持たせ、照明光学系3の倍率を光軸に垂直なビーム切断面の短軸方向と長軸方向とで互いに異なるように、即ち非対称に設定することにより、等しい出射角度で陰極1を出射した電子がCPアパーチャ5へ異なる入射角度で入射させる。この入射角度の相違は、単純に異なる倍率比を設定することによって決まり、さらに各倍率比は、陰極1のアスペクト比によって決まる。例えば、本実施形態のように、矩形陰極1のアスペクト比が1:l0であれば、X軸(短軸)方向とY軸(長軸)方向との間の倍率比はl0になり、従って入射角比は1:l0になる。
【0057】
本実施形態では、10μm×l00μmのサイズのLaB陰極1を用いているので、CPアパーチャ5への入射角は、X軸軌道方向の入射角α=0.2mrad,Y軸軌道方向の入射角γ=2mradとなり、基板21の上面への入射角は、X軸軌道方向α=2mrad、Y軸軌道方向γ=20mradとなる。以下、このような入射角を実現するための制御方法を各光学系について詳細に説明する。
【0058】
1)照明光学系の制御方法
図3に二段四極子レンズ系を用いた照明光学系3の具体的構成とビーム軌道を示す。
【0059】
LaB陰極1からの電子の放出角度は、一般に1mrad〜10mradである。ここでは1mradに設定している。四極子レンズ系に代表される多極子レンズ系の特長は、結像倍率をX軸方向、Y軸方向でそれぞれ独立に設定できる点にある。
【0060】
本実施形態においては、セルプロジェクション方式に従ってパターンを描画するので、CPアパチャー5で50μm角の等方形状の入射面を有するように電子ビームを成形する必要がある。
【0061】
四極子レンズ系において、電子ビームの軌道は、X軸方向とY軸方向のうち、一方が収束軌道をとるときには、もう一方は必ず発散軌道をとる。このため、四極子レンズ系で収束光学系を構成するためには、2段以上の構成が必要になり、ここで示しているダブレットは最小構成である。実用上は、収差性能や縮小率を考慮すると、急激な軌道変化を避けなければならないので、さらに多段の構成にすることが一般的であるが、セルプロジェクション方式の照明光学系においては、収差の影響は大きな問題にはならないので、図1に示す電子ビーム描画装置10は、最小構成のダブレットを採用することで小型化を実現している。
【0062】
LaB矩形陰極1からは、短辺方向(X方向)および長辺方向(Y方向)のいずれからも等しい開き角で電子が出射するので、CPアパチャー5上で正方形の50μm角のビームを形成するためには、X軸方向を拡大系、Y軸方向を縮小系の結像条件を設定する。図1に示す電子光学系10において矩形陰極1の短辺のサイズが10μm、長辺のサイズがl00μmなので、電子ビームの倍率のうちX軸軌道の倍率をMx、Y軸軌道の倍率をMyとすると、Mx=5、My=0.5となる。
【0063】
先ず、X軸軌道11を第1の電極Qaで収束させた後、第2の電極Qaで発散作用を与えてCPアパチャー5の上面で結像させる。
【0064】
この一方、Y軸軌道12については、X軸軌道とは反対に、まず第1電極Qaで発散させた後、第2電極Qaで収束作用を与えてCPアパチャー5の上面で結像させる。このときのCPアパチャー5への入射角はα=0.2mrad、γ=2mradと、非対称になる。
【0065】
2)投影光学系の制御方法
図4に四段四極子レンズ系(カルテット)を用いた投影光学系8の具体的構成とビーム軌道を示す。本実施形態では、CPアパチャー5の有効領域が50μm角であるため、基板21の上面での描画領域を5μm角と設定している。即ち、縮小率は1/10である。投影光学系8の光源となるCPアパーチャ5からの電子ビームの出射角は、前述した入射角と等しいので、α=0.2mrad(短軸:X軸方向)、γ=2mrad(長軸:Y軸方向)である。投影光学系8では、等方的にX軸、Y軸ともに1/10となるように電子ビームを縮小させて基板21の上面で投影させる。従って、X軸、Y軸ともに等しい倍率を設定する。即ち、Mx=My=1/10である。
【0066】
投影光学系8においても、前述したように、四極子レンズ系により交互に収束と発散を繰り返しながら最終的に基板21の上面にCPアパーチャ像を結像させる。X軸軌道13は、投影光学系の光源であるCPアパーチャ5をα=0.2mradの出射角で出射した後、電極Qbで発散、電極Qbで収束、電極Qbで発散、そして電極Qbで収束させて、基板21の上面に結像させる。この一方、Y軸軌道14は、CPアパーチャ5をγ=2mradの出射角で出射した後、電極Qbで収束、電極Qbで発散、電極Qbで収束、そして電極Qbで発散させて、基板21の上面に結像させる。
【0067】
ここで着目するべきことは、X,Y軌道を見て分かるように、投影光学系内部でクロスオーバを一切結ばせることなく、基板21上面に結像させる点である。従って、従来技術で問題点として指摘した投影光学系内部でのクロスオーバによる空間電荷効果によるビームぼけは発生しない。
【0068】
X,Y軸方向ともに倍率は、Mx=My=1/10である。従って、基板21の表面への入射角をそれぞれα、γとすると、α=2mrad、γ=20mradとなる。このことは、従来技術で一般原理として示したように、電子ビームの入射角度が非対称ならば基板表面での空間電荷効果が軽減されることに一致する。即ち、本実施形態のパターン描画方法によれば、基板21へのX,Y軸方向の入射角度比は1:10であるので、空間電荷効果によるビームのぼけは、次式
Δx/Δα=Δy/Δγ=2/〔(α/γ)1/2+(γ/α)1/2
で表され、空間分解能への影響が1/1.8に軽減される。
【0069】
本実施形態では、LaB矩形陰極のアスペクト比を1:10としてこの上記結果を取得したが、製造技術上では既に1:100のアスペクト比が得られるので、このような矩形陰極を用いれば、空間電荷効果の影響を約1/10と、さらに一桁軽減することが可能である。
【0070】
このように、本実施形態によれば、既に知られている原理(先行技術4)である、結像断面における電子ビームの開き角と空間電荷効果との関係を成立させて、空間電荷効果の影響を大幅に軽減できるパターン描画方法を低加速セルプロジェクション方式の電子ビーム描画装置を用いて達成することができる。
【0071】
(2)第2の実施形態
上述した第1の実施形態では、矩形光源を備える場合について説明したが、本発明によれば、一般に広く用いられている円光源でも前述した目的を達成することができる。
【0072】
図5は、本発明にかかる電子ビーム描画装置の第2の実施の形態が備える電子光学系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態におけるセルプロジェクション方式の電子光学系20は、円陰極81を有する電子銃を備える。円陰極81は、ZrO/Wを用いて約1μmの大きさで形成され(先端に1μmφの球を有する)、本実施形態の電子銃は、熱電界放出型(Thermal-assinted Field Emission:以下、単にTFEという)電子銃である。熱電界放出型電子銃は、輝度が高く、かつ、エネルギ幅が1eVと小さいので、色収差の影響を軽減できるという利点を有する。図5に示す電子光学系20における電子銃以外の構成は、図1に示す電子光学系10とほぼ同一である。従って、最小構成である2段の四極子レンズ系3が採用されている。
【0073】
図5に示す電子光学系20の制御方法について、本発明にかかるパターン描画方法の第2の実施の形態として図面を参照しながら説明する。
【0074】
電子光学系20の投影光学系の動作条件も上述した第1の実施形態とほぼ同一であるので、その説明は省略し、以下では照明光学系の制御方法について説明する。本実施形態における制御方法の特徴は、X軸軌道の焦点位置とY軸軌道の焦点位置とを互いに独立に設定することにより、非対称の光学系を構成する点にある。
【0075】
図6は、図5に示す電子光学系20が備える照明光学系の概略構成とビーム軌道を説明する模式図である。図3と同様に、図6においても、電子ビームのビーム軸をZ軸方向とし、電子ビームのビーム軌道がX軸方向とY軸方向のそれぞれについて示されている。即ち、ビーム軌道16,17は、円陰極81から出射した電子ビームがCPアパーチャ5を通過するまでのX,Y方向のビーム軌道をそれぞれ示す。
【0076】
まず、第1の開き角絞り2を適切に配置することにより(図5参照)、電子ビームの開き角のうち、X軸方向の開き角αとY軸方向の開き角γとをそれぞれ異なる値に設定する。本実施形態においては、TFE陰極の大きさは約1μmであるため、50μmのCPアパーチャ5を照明するために、電子ビームの放出は、X軸方向、Y軸方向ともに拡大系となる。
【0077】
代表的なTFE電子銃が備えるZrO/W陰極の放出角度分布において、安定的に放出電子を得られる放出角度は、最大で30mradである。そこで、本実施形態では、γ=30mrad、α=3mradと設定することにより、アスペクト比10の出射電子を得る。さらに、照明光学系の倍率として約50倍が必要なので、焦点位置における開き角は、それぞれα(X軸方向)が約0.006mrad、γ(Y軸方向)が約0.6mradとなる。しかしながら、図6に示すように、本実施形態においては、X軸方向の軌道とY軸方向の軌道とで結像させることなく、しかも焦点位置を互いにずらすように設定する。こもため、倍率値は、約50倍の近傍でX軸方向とY軸方向とで互いに異なる値をとる。このような設定は、引き続く結像光学系との間で最適化を図るためのものであり、単なる設計上の問題であって本質的な問題ではない。
【0078】
図6には、X軸方向の軌道における焦点距離XillumXとY軸方向の軌道における焦点距離YillumYが示されている。また、従来技術に従ってCPアパーチャ5の通過直後に電子ビームを結像させた場合の結像位置をZillumとして示す。本実施形態における照明光学系の制御方法によれば、光軸に対して非対称な光学系を形成するので、これらの焦点距離XillumX、YillumYは、それぞれ独立して設定することができる。即ち、XillumXとYillumYとをZillumを挟んでZ軸方向の上下にずらして設定している。このため、本実施形態のパターン描画方法によれば、電子ビームが結像することなく投影光学系に入射するので、光源からウェーハに至るまでにクロスオーバが形成されることは一切ない。この結果、クロスオーバによる電子の集中をさらに排除するので、空間電荷効果の影響をさらに軽減することができる。
【0079】
空間電荷効果の影響を軽減するためには、前記電子ビームの断面形状におけるアスペクト比が大きいほど好ましい。矩形陰極のアスペクト比は、現状でも100以上であるのに対し、TFEの場合は、安定的に放出電子を得られる放出角度は、前述したとおり、最大で30mradである。従って、矩形陰極を用いる場合と比較して、円陰極の場合には改善に限界があるが、本実施形態の制御方法を用いることにより、空間電荷効果の影響を大幅に軽減しつつ、高解像度および高スループットでパターンを描画することができる。
【0080】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記形態に限ることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0081】
例えば、上述した電子ビーム描画装置の第2の実施形態においては、陰極をZrO/W熱電界放出型としたが、その他Wコールドカソード、カーバイド系陰極であっても同様の効果が得られる。
【0082】
また、照明光学系、投影光学系のレンズについても、X,Y軸の収束特性、特に倍率を独立に設定できる非対称レンズ系であれば、本発明の目的を達成できる。従って、上記実施形態で説明した静電型四極子レンズ系でのみで構成する必要はなく、多極子レンズ(八極子、さらにそれ以上の多極子)であれば本発明の目的は達成される。また、多極子レンズの構成についても、上述した実施形態においては、照明光学系で2段、投影光学系で4段としたが、さらに多段の多極子レンズを用いて収差性能を向上させることもできる。さらに、静電型の多極子レンズの一部または全てを磁界型多極子レンズで置き換えることも動作上可能である。これは、コラムの形状(大きさ)および重量と要求仕様との間における設計上のトレードオフの問題となる。
【0083】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明は、以下の効果を奏する。
【0084】
即ち、本発明にかかる電子ビーム描画装置によれば、空間電荷効果によるビームのぼけを大幅に軽減できる電子光学系を備えるので、低加速の電子ビームを用いつつ、優れた解像度と大きなスループットを有する、セルプロジェクション方式の電子ビーム描画装置が提供される。
【0085】
また、本発明にかかるパターン描画方法によれば、空間電荷効果によるビームのぼけを大幅に軽減するので、低加速の電子ビームを用いつつ、優れた解像度で所望のパターンを大きなスループットで基板上に描画できるパターン描画方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる電子ビーム描画装置の第1の実施の形態における電子光学系の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電子光学系のビーム軌道を説明する模式図である。
【図3】図1に示す電子光学系が備える照明光学系の概略構成とビーム軌道を説明する模式図である。
【図4】図1に示す電子光学系が備える投影光学系の概略構成とビーム軌道を説明する模式図である。
【図5】本発明にかかる電子ビーム描画装置の第2の実施の形態における電子光学系の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示す電子光学系が備える照明光学系の概略構成とビーム軌道を説明する模式図である。
【図7】従来の技術におけるセルプロジェクション方式のコラムの一例を説明するためのレンズ構成図である。
【図8】空間電荷効果によるビーム径の増大比と開き角比との関係を示すグラフである。
【図9】3段電界型四極子レンズを用いた従来の技術による可変成形型電子ビーム描画装置の電子光学系の概念図である。
【図10】四極子レンズを用いたトリプレットの結像光学系によるビーム軌道を示す模式図である。
【符号の説明】
1 ランタンヘキサボライド(LaB)矩形陰極
2 第1の開き角絞り
3 照明光学系
4 第1の成形偏向器
5 キャラクター(CP)アパーチャ
6 第2の成形偏向器
7 第2の開き角絞り
8 投影光学系
10,20 電子ビーム描画装置
13 基板
11〜14 電子ビーム軌道
81 円陰極
Qa,Qa,Qb〜Qb 四極子レンズの電極

Claims (18)

  1. 電子ビームを基板に照射して所望のパターンを描画する電子ビーム描画装置であって、
    前記電子ビームの照射により前記基板から発生する背面散乱電子の量が近接する描画パターンの露光量に影響を及す量を下回る加速電圧で、かつ、光軸に対して非対称な断面形状を有する前記電子ビームを出射する電子ビーム出射手段と、
    前記所望のパターン形状に対応した形状の絞り孔を有する成形アパーチャと、
    約1である第1のアスペクト比を有する断面形状で前記電子ビームが前記成形アパーチャに照射するように前記電子ビームの光軸に対して非対称な倍率が設定される照明光学系と、
    前記光軸の方向をZ軸方向とすると、前記成形アパーチャの形状に対応して成形されて前記成形アパーチャを出射した前記電子ビームをX軸方向およびY軸方向のいずれも同一の倍率で縮小するとともに、前記光軸に対して非対称な軌道を経て前記X軸方向と前記Y軸方向とで異なる入射角をもって前記基板に結像させる投影光学系と、を含む電子光学系を備える電子ビーム描画装置。
  2. 前記照明光学系は、第1の多極子レンズを有することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム描画装置。
  3. 前記電子ビーム出射手段は、前記X軸方向と前記Y軸方向とのアスペクト比が1を除く第2のアスペクト比である矩形状の第1の陰極を備え、この第1の陰極から等しい出射角度で電子を放出させることを特徴とする請求項1または2に記載の電子ビーム描画装置。
  4. 前記照明光学系は、少なくとも2段の前記第1の多極子レンズを有し、これらの多極子レンズは、前記第2のアスペクト比に対応して、前記X軸方向で拡大系となり前記Y軸方向で縮小系となるように焦点条件が設定されることを特徴とする請求項3に記載の電子ビーム描画装置。
  5. 前記第1の陰極は、ランタンヘキサボライド(LaB)を用いて形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の電子ビーム描画装置。
  6. 前記電子ビーム出射手段は、実質的に円形状である第2の陰極と、前記第2の陰極と前記照明光学系との間に配置される開き角絞りと、を有し、
    前記開き角絞りは、前記電子ビームが前記X軸方向と前記Y軸方向とで異なる出射角度で前記電子ビーム出射手段から出射する位置に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子ビーム描画装置。
  7. 前記照明光学系は、前記電子ビームが前記X軸方向と前記Y軸方向とで異なる入射角で前記成形アパーチャに入射するように、焦点条件が設定されることを特徴とする請求項6に記載の電子ビーム描画装置。
  8. 前記焦点条件は、前記電子ビームがクロスオーバを結ぶことを回避するために、前記X軸方向における前記電子ビームの焦点位置と前記Y軸方向における前記電子ビームの焦点位置とが異なる位置となるように、前記X軸方向と前記Y軸方向とで相互に独立して設定される条件であることを特徴とする請求項7に記載の電子ビーム描画装置。
  9. 前記投影光学系は、第2の多極子レンズを有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の電子ビーム描画装置。
  10. 前記投影光学系は、4段の前記第2の多極子レンズを有し、これらの多極子レンズは、前記電子ビームが前記X軸方向で発散および収束を繰返す軌跡を描き、前記Y軸方向で前記X軸方向とは逆に集束および発散を繰返す軌跡を描くように結像条件が設定されることを特徴とする請求項9に記載の電子ビーム描画装置。
  11. 前記多極子レンズは、静電型四極子レンズを含むことを特徴とする請求項2ないし10のいずれかに記載の電子ビーム描画装置。
  12. 前記多極子レンズは、八極子レンズを含むことを特徴とする請求項2ないし10のいずれかに記載の電子ビーム描画装置。
  13. 電子ビームを出射する電子銃と、所望のパターン形状に対応した形状の絞り孔を有する成形アパーチャと、出射された前記電子ビームを制御して前記成形アパーチャに照射させる照明光学系と、前記絞り孔の形状に応じて成形され前記成形アパーチャを出射した前記電子ビームを制御して基板の表面に結像させる投影光学系と、を含む電子光学系を備える電子ビーム描画装置を用いて前記基板に前記所望のパターンを描画するパターン描画方法であって、
    前記電子ビームの照射により前記基板から発生する背面散乱電子の量が近接する描画パターンの露光量に影響を及す量を下回る加速電圧で、かつ、光軸に対して非対称な断面形状を有する前記電子ビームを出射させる第1の手順と、
    前記照明光学系の倍率を前記光軸に対して非対称な倍率に設定し、実質的に等方な断面形状で前記電子ビームが前記成形アパーチャに入射するように前記電子ビームを制御する第2の手順と、
    前記光軸の方向をZ軸方向とすると、前記成形アパーチャを出射した前記電子ビームをX軸方向およびY軸方向のいずれにおいても同一の倍率で縮小させるとともに、前記光軸に対して非対称の軌跡を描き、かつ、前記X軸方向と前記Y軸方向とで異なる入射角で前記基板に入射して結像するように前記投影光学系を制御する第3の手順と、を備えるパターン描画方法。
  14. 前記第2の手順は、前記電子ビームが前記X軸方向と前記Y軸方向とで異なる入射角で前記成形アパーチャに入射するように、前記照明光学系の焦点条件を設定する手順であることを特徴とする請求項13に記載のパターン描画方法。
  15. 前記焦点条件を設定する手順は、前記電子ビームがクロスオーバを結ぶことを回避するために、前記X軸方向における前記電子ビームの焦点位置と前記Y軸方向における前記電子ビームの焦点位置とが異なる位置となるように、前記X軸方向の焦点条件と前記Y軸方向の焦点条件とを相互に独立して設定する手順であることを特徴とする請求項14に記載のパターン描画方法。
  16. 前記電子銃は、前記X軸方向と前記Y軸方向とのアスペクト比が1を除く値である第1のアスペクト比である矩形状の第1の陰極を有し、
    前記第1の手順は、前記第1の陰極から等しい出射角で電子を出射する手順を含むことを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載のパターン描画方法。
  17. 前記電子銃は、実質的に円形状である第2の陰極を有し、
    前記第1の手順は、前記X軸方向と前記Y軸方向とで異なる出射角で電子を放出させる手順を含むことを特徴とする13ないし15のいずれかに記載のパターン描画方法。
  18. 前記第3の手順は、前記電子ビームが前記X軸方向で発散および収束を繰返す軌跡を描き、前記Y軸方向で前記X軸方向とは逆に収束および発散を繰返す軌跡を描くように前記投影光学系の結像条件を設定する手順を含むことを特徴とする請求項13ないし17のいずれかに記載のパターン描画方法。
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