JP3858949B2 - 射出成形金型を用いたゴルフボールの製造方法 - Google Patents

射出成形金型を用いたゴルフボールの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層カバー構造ゴルフボールの射出成形金型を用いたゴルフボールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、射出成形法によるゴルフボールの中間層カバーの製造方法としては、例えば図10及び11に示すように、上型2と下型3とからなる射出成形金型1のキャビティ4内にコア5を中子として挿入し、更にこのコア5を上下複数個の支持ピン6で支持し、次いでキャビティ4内にインナーカバーの成形材料を金型割面の位置(トンネルゲートの場合は割面付近)に設けた複数個のゲート(図示せず)から射出すると共に、カバー材の射出完了直前又は射出完了と同時に支持ピン6先端をキャビティ4内面(成形面7)に一致するように引き抜くことによりコア5にインナーカバー8を被覆する方法が一般に採用されている。
【0003】
更に、図11に示すようにインナーカバー8成形後、成形品を金型から取り出し、成形面にディンプル形成用凸部を備えた点で異なる以外は上記金型と実質上同じ構成の別の射出成形金型を用い、そのキャビティ内に上記成形品を入れてこれをコアとして用い、上で説明した場合と同様の方法でアウターカバーを成形し、最終成形品(ゴルフボール)を製造する。なお、アウターカバーは、圧縮成形により成形する場合もある。
【0004】
なお、図中9はガス抜き孔であり、10はこの孔9内に挿入された円柱状固定ピン、11は該ピン10とガス抜き孔9内周面との間に形成されたガス抜き用の隙間である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようにアウターカバーは射出成形するか又は圧縮成形により成形するが、インナーカバーとアウターカバーとが材料の特性により密着が悪く、ボールの耐久性が著しく損なわれる場合がある。このため、このような場合に密着度を高める目的でインナーカバーを成形後、表面を粗らしたり、化学的表面処理する工程が必要となり、アウターカバーとインナーカバーの密着がそれによって向上するとしても、その分工程が増えることになる。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、インナーカバーとアウターカバーが材料の特性により密着が悪い場合でも、密着度を高めるためにインナーカバー成形後、表面を荒らしたり、化学的表面処理する工程を省略し、又は簡略化し、耐久性の優れた多層カバー構成のゴルフボールの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため、
コアのまわりに少なくとも一層のインナーカバーとアウターカバーを有するゴルフボールを製造するに当り、
インナーカバー成形面を基準にキャビティに進退するコア支持ピンをキャビティの相対する側に各々複数本備えたインナーカバー射出成形金型のキャビティ中心部にコアを上記ピンによって支持する工程と、
キャビティ内のコアとインナーカバー成形面との間の空所に、金型内に設けられたゲートより成形材料を射出する工程と、
射出した成形材料を、上記支持ピンがカバー成形面よりキャビティ内に突出した状態で硬化させるか、又は支持ピンをカバー成形面より後退させ、しかる後硬化させることによって、インナーカバーに凹部及び/又は凸部を形成する工程とを含むことを特徴とする射出成形金型を用いたゴルフボールの製造方法
を提供する。
【0008】
本発明によれば、多層カバーのインナーカバーを射出成形するとき、コアの支持ピンを成形面より突出したまま、若しくは成形面より後退させることにより、インナーカバーに凹凸部を形成し、これにアウターカバーを嵌合することによって密着が高められ、インナーカバー成形後に表面を荒らしたり、化学的表面処理する工程を省略し、又は簡略化しても、耐久性の優れたゴルフボールが得られる。
【0009】
この場合、同様な効果を得るためにインナーカバー成形用の射出成形金型の成形面に凹凸をつけることも考えられるが、この方法はモールド加工工数が増えることや、設けた凹凸の位置によってはモールドからの成形品の取り出し時に脱型が悪くなり、成形品が駄目になる場合があるが、本発明によれば容易にインナーカバーに凹凸がつくれる。
【0010】
【発明の実施の形態及び実施例】
以下、本発明につき図1〜9を参照して更に詳しく説明する。なお、図1〜9において、射出成形金型の構成は図10,11のものと実質上同じであるため、図10,11と同一構成部品については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0011】
本発明の多層カバー構成のゴルフボールの製造方法は、図10に示すようにインナーカバー成形材料(熱可塑性、熱硬化性樹脂など)を射出する場合において、射出した成形材料を、上記支持ピンがカバー成形面よりキャビティ内に突出した状態で硬化させるか、又は支持ピンをカバー成形面より後退させ、しかる後硬化させることによって、インナーカバーに凹部及び/又は凸部を形成するものである。
【0012】
第1実施例
図1,2は本発明の第1実施例を示すもので、この例はインナーカバー成形材料の射出に先立ち、コア5を支持していたピン6(上型2,下型3各々4本)を、成形材料の射出後、ピン6の先端をインナーカバー8の厚みのほぼ中央の位置まで後退させ、この状態で成形材料を硬化させたものである。
【0013】
その結果、インナーカバー成形後、図2に示すように、支持ピン6の位置に、その数だけインナーカバー8の厚みのほぼ中央位置に達する凹部12が形成される。従って、さらにその外側にアウターカバー13を成形する(最終成形品)と、アウターカバー13の成形材料が上記インナーカバー8の凹部12内に侵入し、固着されるので、インナー及びアウターカバー8,13間の結合が強固なゴルフボールGが得られるものである。
【0014】
第2実施例
図3,4は第2実施例を示す。この例はインナーカバー成形材料の射出後、ピン6の先端を成形面よりも後退させて該ピン6の収容孔6a内まで成形材料を流入させ、この状態で成形材料を硬化させるようにしたものである。
【0015】
従って、この例にあっては、インナーカバー成形後、インナーカバー8には、図4に示すようにピン6の位置にその数だけ凸部14が形成され、これにアウターカバー13を成形すると、アウターカバー13内に凸部14が侵入した状態で固着され、同様にインナー及びアウターカバー8,13間の結合が強固なゴルフボールGが得られる。
【0016】
第3実施例
図5,6は本発明の第3実施例を示す。この例は、コア5の支持ピン6をコア5を支持した状態のままインナーカバー成形材料を硬化させたものである。従って、インナーカバー8は、図6に示すようにインナーカバー8の厚み全体に亘って延びる、図2の第1実施例の場合よりも深い凹部12が形成され、第1実施例と同様にインナーカバー8とアウターカバー13との結合が強固なゴルフボールGが得られるものである。
【0017】
第4実施例
図7,8は本発明の第4実施例を示す。この例は、第1実施例と第2実施例とを組合せたもので、成形材料射出後、支持ピン6の一部の先端をインナーカバー8の厚みの中途まで後退させる一方、残余の支持ピン6の先端を成形面より上記一方のピン6先端の突出量とほぼ同じ量後退させ、その収容孔6a内に成形材料を進出させた状態で硬化したものである。
【0018】
その結果、図8に示すように、インナーカバー8の表面に凹部12と凸部14が形成されるものである。従って、この例もインナーカバー8とアウターカバー13との結合が強固なものである。
【0019】
第5実施例
図9は第5実施例を示す。この実施例の特徴は、コア5とアウターカバー13との間に物性が異なる第1インナーカバー8a及び第2インナーカバー8b(複数のインナーカバー)を形成したものであるが、この場合、第1実施例と同様の方法で夫々のインナーカバー8a,8bに凹部12a,12bを形成したものである。従って、この例のゴルフボールは、第1及び第2インナーカバー8a,8b間及び第2インナーカバー8b,アウターカバー13間の結合が強固なものである。
【0020】
なお、上記各実施例において、凹凸を形成する支持ピンの断面積、支持ピンの成形終了時の成形面からの突出高さ若しくは後退距離(深さ)、支持ピンの数、支持ピンの位置は適宜選定され、特に制限はないが、成形上の問題や本発明の目的から、支持ピンの断面積は3〜30mm2、より望ましくは7〜20mm2、成形面からの突出高さ若しくは後退距離(深さ)は0.3〜5mm、より望ましくは1〜2mm、支持ピンの数は上型及び下型にそれぞれ3〜10本、より望ましくは3〜6本とすることが好ましい。
【0021】
また、本発明において、コアはソリッドコアでも糸巻きコアでもよく、本発明によれば多層カバー構成のソリッドゴルフボールあるいは糸巻きゴルフボールを製造し得るものである。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、インナーカバーとアウターカバーとの強固な結合が得られ、インナーカバー成形後にその表面を荒らしたり、化学的表面処理する工程を省略又は簡略化しても耐久性の優れたゴルフボールが製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を説明する射出成形金型の断面図である。
【図2】第1実施例で得られるゴルフボールの断面図である。
【図3】本発明の第2実施例を説明する射出成形金型の断面図である。
【図4】第2実施例で得られるゴルフボールの断面図である。
【図5】本発明の第3実施例を説明する射出成形金型の断面図である。
【図6】第3実施例で得られるゴルフボールの断面図である。
【図7】本発明の第4実施例を説明する射出成形金型の断面図である。
【図8】第4実施例で得られるゴルフボールの断面図である。
【図9】第5実施例で得られるゴルフボールの断面図である。
【図10】ゴルフボールの射出成形金型の一例を示す断面図である。
【図11】従来例を説明する射出成形金型の断面図である。
【符号の説明】
1 射出成形金型
2 上型
3 下型
4 キャビティ
5 コア
6 支持ピン
7 成形面
8,8a,8b インナーカバー
12,12a,12b 凹部
13 アウターカバー
14 凸部

Claims (1)

  1. コアのまわりに少なくとも一層のインナーカバーとアウターカバーを有するゴルフボールを製造するに当り、
    インナーカバー成形面を基準にキャビティに進退するコア支持ピンをキャビティの相対する側に各々複数本備えたインナーカバー射出成形金型のキャビティ中心部にコアを上記ピンによって支持する工程と、
    キャビティ内のコアとインナーカバー成形面との間の空所に、金型内に設けられたゲートより成形材料を射出する工程と、
    射出した成形材料を、上記支持ピンがカバー成形面よりキャビティ内に突出した状態で硬化させるか、又は支持ピンをカバー成形面より後退させ、しかる後硬化させることによって、インナーカバーに凹部及び/又は凸部を形成する工程とを含むことを特徴とする射出成形金型を用いたゴルフボールの製造方法。
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