JP3858803B2 - 熱延鋼材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延鋼材及びその製造方法に関し、詳しくは、自動車や各種の産業機械に用いられる高強度部材の素材として好適な熱延鋼材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車を初めとする輸送用機械や各種産業機械の構造部材の素材として用いられる鋼材には、強度、加工性及び靱性などの機械的性質の向上が要求される。これらの機械的性質を総合的に向上させる手段として組織を微細化することが有効であることから、微細な組織を得るための鋼成分や製造方法が数多く提案されてきた。なお、以下の説明において「鋼材」の例として「鋼板」と記載することがある。
【0003】
組織の微細化手法としては、Nb又はTiの析出強化作用を利用して高強度化を図るとともに、NbやTiが備えるオーステナイト粒の再結晶抑制効果を利用して低温仕上げ圧延を施し、未再結晶変形オーステナイト粒からの「オーステナイト/フェライト」歪誘起変態によって、フェライト結晶粒を微細化しようとするものである。しかし、NbやTiの炭化物が高密度に析出した鋼板は延性が劣り、組織の細粒化効果による特性向上が得られない場合がある。
【0004】
一方、NbやTiを含まない鋼板では、変態や粒成長速度が速いため、従来の圧延方法では細粒組織が得られず、大圧下圧延法による細粒化や表層部近傍の細粒組織を得るための冷却方法が提案されている。しかし、大圧下圧延により結晶粒が扁平したり、鋼中の炭化物の分布が不均一になることにより、機械的性質に異方性が生じ、特に捻れの加わる変形に対してはその特性が劣る。又、鋼板の表面近傍で細粒組織が得られても、鋼板全体の機械的特性の向上には寄与しない。
【0005】
更に、鋼板の強度、延性及び加工性は第2相の形状や性質に大きく左右されることから、第2相の形状や硬さを制御するための冷却方法も多数提案されている。しかし、主相が細粒化しても、第2相は必ずしも細粒化せず、第2相の効果が得られない。
【0006】
例えば、特許文献1には、フェライトを主相とし、フェライトの占績率、フェライト粒径、フェライトと第2相のビッカース硬さを規定することにより、成形性、耐疲労特性及び耐熱軟化特性を向上させた熱延鋼板が開示されている。しかし、その実施例から明らかなようにNbを含有しない「C−Si−Mn鋼」において細粒組織を得るためには、C、Si及びMnの含有量を増やすか、「オーステナイト/フェライト」変態温度以下の低温で圧延する必要がある。
【0007】
特許文献2には、「C−Si−Mn鋼」について、圧延仕上げ前に表面を強制冷却し、圧延仕上げ温度を規定することによって、表層部が細粒の熱延鋼板を得る技術が開示されている。しかし、鋼板内部の粒径は20μmを超えるものもある。
【0008】
特許文献3には、「C−Si−Mn鋼」について、動的再結晶域での多パス圧延により平均フェライト粒径が0.9μmの細粒組織が得られることが記載されている。しかし、一般的な量産ホットストリップミルにおいて、圧延温度を安定して動的再結晶温度域に制御することは極めて困難である。
【0009】
特許文献4や特許文献5には、TiやNbを添加した鋼に動的再結晶域での多パス圧延を施して細粒熱延鋼板を得る技術が開示されている。しかし、上述のように、一般的な量産ホットストリップミルにおいて、圧延温度を安定して動的再結晶温度域に制御することは極めて困難である。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−143611号公報
【特許文献2】
特開平9−137248号公報
【特許文献3】
特開平11−152544号公報
【特許文献4】
特開2000−144316号公報
【特許文献5】
特2000−192191号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、自動車や各種の産業機械に用いられる高強度構造部材の素材として好適な、強度、延性、穴拡げ性及び捻れ変形性に優れた熱延鋼材及びその製造方法を提供することである。より具体的には、延性を高めるためにNb、Ti及びVなどの析出強化型の合金元素を極力低減した「C−Si−Mn鋼」であっても高強度が得られ、高強度鋼であっても優れた延性、穴拡げ性及び捻れ変形性を有する熱延鋼材及びその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)に示す熱延鋼材及び(2)に示す熱延鋼材の製造方法にある。
【0013】
(1)質量%で、C:0.05以上0.15%未満、Mn:0.8〜1.2%、Si:0.02〜2.0%、sol.Al:0.002%以上0.05%未満、N:0.001%以上0.005%未満を含み、残部はFe及び不純物から成り、不純物中のTi、Nb及びVがいずれも0.005%未満で、組織が平均粒径1.1〜5.0μmのフェライトを主相とし、第2相としてパーライトとセメンタイトのうちのいずれか一方又は双方を含有し、且つ、下記(1) 式を満足する熱延鋼材。
【0014】
Mnθ/Mnα≦1・・・(1) 。
ここで、Mnθはパーライト中のセメンタイトを含んだセメンタイト中のMn量、Mnαは主相であるフェライト中のMn量である。
【0015】
(2)タンデム熱延において、最終圧延スタンド又は最終から1段前の圧延スタンドで、Ae3 点〜「Ae3 点+50℃」の温度範囲で圧延し、その後800℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することを特徴とする上記(1)に記載の熱延鋼材の製造方法。
【0016】
ここで、フェライトの「平均粒径」とは、いわゆる「切片法」で求めた平均切片長さを1.128倍して得たものを指す。「主相」とは「組織に占める割合が50%を超える相」をいう。
【0017】
又、本発明における「平均冷却速度」とは、冷却前後の温度差を冷却時間で除したものをいう。
【0018】
以下、上記(1)の熱延鋼材に係る発明及び(2)のその製造方法に係る発明をそれぞれ(1)及び(2)の発明という。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記した目的を達成するために種々検討を行い、下記(a)〜(e)の知見を得た。
【0020】
(a)「C−Si−Mn鋼」の加工性は、Ti、Nb及びVといった析出強化型元素の含有量を低く制限することにより向上する。
【0021】
(b)Ti、Nb及びVなどをほとんど含まない鋼板の場合には、フェライトの平均粒径が1.1〜5.0μmの場合に捻れ変形特性が最も高くなる。
【0022】
(c)平均粒径が1.1〜5.0μmのフェライトを主相とする鋼板において、SiとMnの含有量を規定値以下に抑えることにより、セメンタイトが微細球状化しやすくなり、成形性が向上する。
【0023】
(d)平均粒径が1.1〜5.0μmのフェライトを主相とする鋼板において、セメンタイト中に分配するMn量を低く抑えると、セメンタイトの剛性率は低下し、一方主相であるフェライトの剛性率は増加するので両相間の剛性差が小さくなり、成形性が向上する。
【0024】
(e)所定の温度範囲で熱間圧延後、直ちに800℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することにより、平均粒径が1.1〜5.0μmのフェライト主相と、セメンタイト中のMn量が規定値以下になる熱延鋼板が得られる。
【0025】
前記(1)及び(2)の本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0026】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)熱延鋼材の化学組成
C:
Cは、鋼の強度を効果的に高めるとともに、「オーステナイト/フェライト」変態を支配する重要な元素である。しかし、その含有量が0.05%未満ではフェライトの平均粒径5μm以下が達成できないし、強度も確保できない。一方、0.15%以上では、ベイナイトが形成されるため、穴拡げ性及び捻れ変形特性が低下する。したがって、Cの含有量を0.05%以上0.15%未満とした。
【0027】
Mn:
Mnは、Ae3 点を低下させて結晶粒の微細化に寄与し、又、「オーステナイト/フェライト」変態を支配する重要な元素である。更に、固溶強化作用を有しフェライトを強化する。しかし、その含有量が0.8%未満では、十分な強度が得られない。一方、Mnを1.2%を超えて含有させると、セメンタイトが粒界に沿って板状に析出し、延性及び成形性の低下を招く。したがって、Mnの含有量を0.8〜1.2%とした。
【0028】
Si:
Siは、フェライトを強化するとともにフェライトの延性を向上させる元素である。しかし、Siの含有量が0.02%未満では添加効果に乏しく、一方、2.0%を超えて含有させると、セメンタイトが粒界に沿って板状に析出するので、延性及び成形性の低下をきたす。したがって、Siの含有量を0.02〜2.0%とした。なお、Si含有量の上限は1.0%とするのが望ましい。
【0029】
sol.Al:
Alは、脱酸作用を有し、sol.Alの含有量が0.002%以上で効果が得られる。しかし、Alをsol.Alで0.05%以上含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、sol.Alの含有量を0.002%以上0.05%未満とした。なお、sol.Alの含有量は、0.003%以上0.04%以下とするのがよい。
【0030】
N:
Nは、「オーステナイト/フェライト」変態を支配するとともに、フェライト中に固溶して強化する作用を有する。しかし、Nの含有量が0.001%未満では前記効果が得難い。一方、Nの含有量が0.005%以上の場合には、窒化物が粗大化して延性及び成形性の低下を招く。したがって、Nの含有量を0.001%以上0.005%未満とした。なお、Nの含有量は、0.002%以上0.004%未満とするのがよい。
【0031】
本発明に係る熱延鋼材は、不純物としてのTi、Nb及びVの含有量を以下のとおりに規制する。
Ti、Nb及びV:
Ti、Nb及びVは、Cと結合して微細な炭化物を形成し、延性及び成形性に悪影響を及ぼし、特に、これらの元素の含有量がそれぞれ0.005%以上になると延性及び成形性の低下が著しくなる。したがって、本発明においては、不純物としてのTi、Nb及びVの含有量をいずれも0.005%未満に規制した。
【0032】
なお、不純物中のP及びSも加工性に悪影響を及ぼすため低く抑えるのが望ましく、PとSの含有量はそれぞれ、0.02%以下及び0.005%以下とすることが望ましい。
(B)熱延鋼材の組織
主相:
主相はフェライトとする必要がある。これはフェライト以外の相、例えばベイナイト、マルテンサイト、セメンタイト、パーライトが主相を形成すると強度が高くなって延性、穴拡げ性及び捻れ変形性が低下するためである。
【0033】
第2相:
第2相はパーライトとセメンタイトのうちのいずれか一方又は双方とする必要がある。これは第2相がベイナイトの場合は延性と捻れ変形性が低下し、マルテンサイトやオーステナイトの場合には穴拡げ性が低下し、強度、延性、穴拡げ性及び捻れ変形性のいずれもが良好な熱延鋼材を得ることができないためである。
【0034】
フェライトの平均粒径:
フェライトの平均粒径を5.0μm以下に微細化すると、強度と延性が総合的に向上する。しかしながら、平均粒径が1.1μm未満の微細組織になると、却って延性が低下する。したがって、フェライトの平均粒径を1.1〜5.0μmとした。
【0035】
セメンタイト中のMn量:
Mnθをパーライト中のセメンタイトを含んだセメンタイト中のMn量、Mnαを主相であるフェライト中のMn量として、「Mnθ/Mnα」の値が1以下となる、つまり前記(1) 式を満たすことが重要である。これは、次の理由による。
【0036】
セメンタイトはこれを構成する金属元素がFeを主体とする炭化物で、Mnを含む鋼の場合には、セメンタイトを構成するFeの一部がMnで置換される。セメンタイトの成長に伴い、セメンタイト中にはMnが濃化し、主相であるフェライト中のMn固溶量が減少する傾向がある。
【0037】
セメンタイト中のMn量が増加すると、セメンタイトの剛性率が著しく増加するのに対し、主相のフェライト中ではMn量が減少して剛性率が低下する。そして両相間の剛性の差が大きくなると、二次加工時に、両相間の界面で割れが生じやすくなり、成形性が低下してしまう。したがって、良好な成形性を確保するためには、セメンタイト中のMn量(Mnθ)を主相であるフェライト中のMn量(Mnα)以下にする必要がある。
【0038】
したがって、(1)の発明における組織は、平均粒径1.1〜5.0μmのフェライトを主相とし、第2相としてパーライトとセメンタイトのうちのいずれか一方又は双方を含有し、且つ、前記(1) 式を満足するものとした。
【0039】
ここで、「Mnθ」及び「Mnα」は下記(イ)〜(ホ)の方法で測定、算出すればよい。
【0040】
(イ)得られた熱延鋼板について、電解抽出により抽出残渣を採取する。
【0041】
(ロ)析出物はセメンタイトのみであるから、抽出残渣量がセメンタイトの総析出量に相当する。
【0042】
(ハ)抽出残渣の定量分析を行い、抽出残渣の組成分析を行う。
【0043】
(ニ)残渣として抽出されたMn量をmn(%)、残渣として抽出されたFe量をfe(%)として、下記(2) 式からMnθを算出する。
【0044】
Mnθ=(mn/fe)×100・・・(2)。
【0045】
(ホ)鋼中の総Mn量をMn(%)、鋼中の総Fe量をFe(%)として、下記(3) 式からMnαを算出する。
【0046】
Mnα={(Mn−mn)/(Fe−fe)}×100・・・(3)。
(C)熱延鋼材の製造方法
前記(1)の発明に係る熱延鋼材は、例えば、タンデム熱延において、最終圧延スタンド又は最終から1段前の圧延スタンドで、Ae3 点〜「Ae3 点+50℃」の温度範囲で圧延し、その後800℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することによって製造することができる。
【0047】
なお、タンデム熱延に供するのは鋼塊又は鋼片のいずれであってもよい。鋼塊若しくは鋼片をAc3 点以上の温度に加熱した後に、又は鋳造後の鋼塊若しくは熱間加工後の鋼片をAr3 点以下の温度域まで温度低下させることなしに、タンデム熱延に供すればよい。
【0048】
すなわち、鋼塊や鋼片はAc3 点以上の温度に再加熱されると、合金元素がオーステナイト中に固溶する。加熱炉や均熱炉など再加熱処理のための炉への装入は、鋳造後や熱間加工後の高温のままの状態で行ってもよいし、一旦室温近傍まで冷却した状態から行ってもよい。このように鋼塊若又は鋼片をオーステナイト域へ再加熱した後タンデム熱延に供してもよいし、鋳造後の鋼塊又は熱間加工後の鋼片をAr3 点以下の温度域まで温度低下させることなしにオーステナイト状態のままでタンデム熱延に供してもよいのである。
【0049】
上記のオーステナイト組織を呈する鋼塊又は鋼片に、タンデム熱延を施すが、この場合、最終圧延スタンド又は最終から1段前の圧延スタンドで、Ae3 点〜「Ae3 点+50℃」の温度範囲で圧延し、その後800℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することによって、前記(B)項に記載した組織を得ることができる。
【0050】
タンデムミルにおける最終圧延スタンド又は最終から1段前の圧延スタンドでの圧延をAe3 点〜「Ae3 点+50℃」の温度範囲で行えば、オーステナイトを微細化できるとともに、オーステナイトを加工硬化させて、ポリゴナルフェライトの生成を促進することができるので、その後800℃/秒以上の平均冷却速度で冷却しても、冷却中に十分な量のポリゴナルフェライトを生成することが可能となる。
【0051】
平均冷却速度が800℃/秒以上という超急速冷却処理を施すことにより、オーステナイト中での転位の回復が抑えられ、フェライト変態に対する核生成密度が増加するとともに、フェライト変態後の粒成長が抑制され、マイクロアロイを含まない「C−Mn−Si鋼」であっても微細な組織が得られる。
【0052】
上記のような超急速冷却中には、変態とともに、セメンタイトがパラ平衡過程で析出するため、セメンタイト中の金属元素の主成分はFeであり、他の合金元素はほとんど含有しない。このように他の合金元素を含まないセメンタイトは極短時間で球状化し、均一な分布を示す。
【0053】
一方、800℃/秒を下回る平均冷却速度では、冷却中にオーステナイト中の転位回復が促進され、フェライト変態に対する核生成密度が低下し、粗粒フェライトが形成される。又、平均冷却速度が遅いと、セメンタイトがオルソ平衡過程で析出するようになり、Fe以外の合金元素の濃化を伴うようになる。このような場合、セメンタイトは粒界に沿って板状(フィルム状)に析出し、成形性及び延性に悪影響を及ぼす。
【0054】
したがって(2)の発明においては、タンデム熱延において、最終圧延スタンド又は最終から1段前の圧延スタンドで、Ae3 点〜「Ae3 点+50℃」の温度範囲で圧延し、その後800℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することとした。なお、上記平均冷却速度は大きければ大きい方がよいが、実質的には1500℃/秒程度が設備上の限界となる。
【0055】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0056】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する鋼のスラブを、実験圧延機を使用して、表2に示す条件で加熱、熱間圧延、冷却及び巻き取りして、板厚が2.5mmの熱延鋼板を得た。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
このようにして得た厚さ2.5mmの鋼板の任意の部位から試験片を採取し、組織、引張特性、穴拡げ性及び捻り特性を調査した。
【0060】
鋼板板厚の断面を光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡とを用いて観察し、組織における各相を判定した。又、走査型電子顕微鏡観察写真におけるコントラストの差によってフェライトとその他の第2相とを区分し、2次元の写真上でフェライトの占める割合を求めた。なお、視野数は5とした。
【0061】
又、いわゆる「切片法」で求めた平均切片長さを1.128倍してフェライトの平均粒径を求めた。
【0062】
電解による析出物の抽出は、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール系電解液を用い、得られた残渣の定量分析を行って前記(2)及び(3) 式からMnθとMnαを求めた。
【0063】
引張特性はJIS Z 2201に記載のJIS5号試験片を用いて調査した。
【0064】
又、縦横それぞれ120mmの正方形の試験片を採取し、その中央にポンチで直径が14mmの打ち抜き穴をあけ、円錐ポンチでこの穴を拡げて、穴の縁にクラックが貫通する限界の穴直径から計算される限界穴拡げ率によって穴拡げ性を評価した。
【0065】
更に、直径が2.0mmで長さが100mmの棒状試験片を圧延方向及びそれに直角な板幅方向に平行な方向から各2本ずつ採取し、90度の捻り変形を加えた場合の割れの発生状況から捻れ率を求めて捻れ変形性を評価した。
【0066】
表3に、前記の各調査結果をまとめて示す。なお、捻れ率とは各試験番号における前記4本の試験片のうちで割れが発生しなかったものの割合を指す。
【0067】
【表3】
【0068】
表3から、本発明で定める化学組成と組織を有する試験番号1〜12の熱延鋼板は、Ti、Nb及びVなどの析出強化型の合金元素を含有しないにもかかわらず、引張強度は500MPa以上、伸びは30%以上、限界穴拡げ率は85%以上で、しかも捻れ率は100%であり、高強度と高加工性を同時に満足することが明らかである。
【0069】
これに対して、本発明で規定する条件から外れた試験番号13〜18の場合には、強度、伸び、穴拡げ性及び捻れ加工性の少なくとも1つにおいて劣っている。
【0070】
すなわち、試験番号13は、鋼のC及びMnの含有量が本発明の規定を下回り、組織におけるフェライトの平均粒径も大きく、前記(1) 式からも外れるので、強度が低く、更に、捻れ特性も劣っている。
【0071】
試験番号14は、組織におけるフェライトの平均粒径が1.1μmを下回り、前記(1) 式からも外れるので、穴拡げ性及び捻れ特性が劣っている。
【0072】
試験番号15は、組織におけるフェライトの平均粒径が本発明の規定を上回り、前記(1) 式からも外れるので、強度が低く、捻れ特性も劣っている。
【0073】
試験番号16及び17は、TiやNbの添加によりフェライトの平均粒径は本発明の規定を満たすもののフェライトが主相ではなく、しかも第2相にセメンタイトとパーライトのいずれをも含んでいないし、前記(1) 式からも外れるので、伸びが低く、穴拡げ性及び捻れ特性が劣っている。
【0074】
試験番号18は、鋼のSi含有量が本発明の規定を上回り、更に前記(1) 式からも外れるので、捻れ特性が劣っている。
【0075】
【発明の効果】
本発明の熱延鋼材は、強度、延性、穴拡げ性及び捻れ変形性に優れるので、自動車や各種の産業機械に用いられる高強度構造部材の素材として利用することができる。本発明の熱延鋼材は、本発明の方法によって比較的容易に製造することができる。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.05以上0.15%未満、Mn:0.8〜1.2%、Si:0.02〜2.0%、sol.Al:0.002%以上0.05%未満、N:0.001%以上0.005%未満を含み、残部はFe及び不純物から成り、不純物中のTi、Nb及びVがいずれも0.005%未満で、組織が平均粒径1.1〜5.0μmのフェライトを主相とし、第2相としてパーライトとセメンタイトのうちのいずれか一方又は双方を含有し、且つ、下記(1) 式を満足する熱延鋼材。
Mnθ/Mnα≦1・・・(1)
ここで、Mnθはパーライト中のセメンタイトを含んだセメンタイト中のMn量、Mnαは主相であるフェライト中のMn量である。 - タンデム熱延において、最終圧延スタンド又は最終から1段前の圧延スタンドで、Ae3 点〜「Ae3 点+50℃」の温度範囲で圧延し、その後800℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼材の製造方法。
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