JP7337486B2 - 鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼材およびその製造方法に関する。
鋼の組織中に残留オーステナイトを含む鋼材が知られている。残留オーステナイトを含む混合組織とした加工誘起変態型鋼(TRIP鋼)は、高強度でありながら優れた延性を有するため、様々な分野で使用されている。そのため、これまでに、組織中のオーステナイトを安定化させるための研究が数多くなされてきた。
例えば、特許文献1には、TRIP鋼板の特徴である優れた延性を損なうことなく、引張強度が1180MPa以上の超高強度域において、耐水素脆化特性を著しく高めることのできたTRIP薄鋼板が開示されている。また、特許文献2には、剛性と加工性に優れた高強度薄鋼板が開示されている。
特開2006-207018号公報 特開2007-92132号公報
特許文献1および2に開示されるような通常のTRIP鋼の場合、残留オーステナイトは、フェライト粒界などに偏在することが多い。粒界に存在する残留オーステナイトが加工誘起変態によりマルテンサイトとなると、応力集中が粒界近傍に生じ、破壊の起点となりうる。そのため、従来のTRIP鋼にも、延性向上の観点において改善の余地が残されている。
本発明は、残留オーステナイトを含む金属組織を有し、かつ従来のTRIP鋼より延性に優れる鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の鋼材およびその製造方法を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:1.00%以下、
Si:3.00%以下、
Mn:0.2~7.0%、
P:0.10%以下、
S:0.030%以下、
Al:3.00%以下、
N:0.010%以下、
Ni:0~10.0%、
Cu:0~3.0%、
Cr:0~10.0%、
Ti:0~1.0%、
Nb:0~1.0%、
V:0~1.0%、
Mo:0~2.0%、
W:0~1.0%、
B:0~0.01%、
Co:0~1.0%、
Ca:0~0.01%、
Mg:0~0.01%、
REM:0~0.01%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で定義されるCeqが0.10~1.00であり、
金属組織が、体積%で、50%以上のフェライトおよび5%以上の残留オーステナイトを含み、かつ、
フェライト粒の内部に存在する残留オーステナイトの面積割合が、鋼材中の残留オーステナイトの総量に対して15%以上である、
鋼材。
Ceq=C+1/24Si+1/6Mn+1/40Ni+1/5Cr+1/4Mo+1/14V ・・・(i)
但し、式中の各元素記号は、鋼素材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Ni:0.1~10.0%、
Cu:0.3~3.0%、および
Cr:0.1~10.0%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載の鋼材。
(3)前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.01~1.0%、
Nb:0.01~1.0%、
V:0.01~1.0%、
Mo:0.05~2.0%、
W:0.05~1.0%、
B:0.0003~0.01%、および
Co:0.05~1.0%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)または(2)に記載の鋼材。
(4)前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.0001~0.01%、
Mg:0.0001~0.01%、および
REM:0.0001~0.01%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の鋼材。
(5)前記金属組織が、さらに、体積%で、5%以上のベイナイトを含む、
上記(1)から(4)までのいずれかに記載の鋼材。
(6)前記金属組織中のフェライト粒の平均結晶粒径が5.0μm以下である、
上記(1)から(5)までのいずれかに記載の鋼材。
(7)上記(1)から(4)までのいずれかに記載の化学組成を有し、
マルテンサイトまたはベイナイトを主体とする金属組織を有する鋼素材に対して、焼戻し工程および焼鈍工程を順に行い、
前記焼戻し工程において、550℃~Ac点の範囲の温度域で60min以上保持し、
前記焼鈍工程において、500℃/s以上の平均昇温速度でAc点~Ac点+200℃の範囲の温度域まで加熱した後、5s以内に冷却を開始し、その温度域から500℃までの平均冷却速度が40℃/s以下となるように、300~500℃の温度まで冷却し、その後、300~500℃の温度域で30~500s保持した後、室温へ冷却する、
鋼材の製造方法。
(8)前記焼戻し工程の前、または前記焼戻し工程と前記焼鈍工程との間に、さらに冷間加工工程を行う、
上記(7)に記載の鋼材の製造方法。
本発明によれば、粒内に残留オーステナイトが分散した金属組織とすることにより、従来のTRIP鋼より延性に優れる鋼材を得ることが可能になる。
本発明者らは、従来のTRIP鋼よりもさらに延性に優れる鋼を製造するための方法について鋭意検討を行った結果、以下の知見を得るに至った。
(a)上述のように、残留オーステナイトが結晶粒界に偏在する場合、加工変態により硬質のマルテンサイトが結晶粒界に生成し、粒界近傍に応力集中が生じる結果となる。
(b)一方、残留オーステナイトがフェライト粒などの結晶粒内に存在する場合、粒内に加工誘起変態によるマルテンサイトが生成するため、応力集中も結晶粒内に生じる結果となる。結晶粒内は、結晶粒界に比べて、応力集中による破壊に対する抵抗力が強い。
(c)そのため、結晶粒内に残留オーステナイトが分散した金属組織を有する鋼は、通常のTRIP鋼に比べて、延性に優れるものと考えられる。
本発明者らは、上記のような金属組織を有する鋼を製造する方法について、さらに検討を行った結果、以下の知見を得た。
(d)マルテンサイトまたはベイナイトを主体とする初期組織を有する鋼素材に対して、Ac点以下の温度での熱処理を施すと、結晶粒内にセメンタイトが析出するとともに、セメンタイト中にMn等の元素が濃化する。
(e)上記の鋼素材を超急速加熱し、一気にオーステナイト単相域まで加熱すると、オーステナイト粒が生成する。この際、初期組織においてセメンタイトが存在していた領域では、元素の拡散より相変態が先に生じるため、オーステナイト粒の一部にMn等のオーステナイト安定化元素が濃化した領域が形成される。
(f)その後、直ちに冷却すると、Mn等が濃化した領域では、オーステナイトが安定化されるため、残留オーステナイトとなり、その他の領域ではフェライト等に変態する。
(g)すなわち、フェライト等の結晶粒内に、残留オーステナイトが形成されることとなる。
(h)また、超急速加熱を行う前の鋼素材の組織の違いによって、加熱後の微細度合が大きく変わる。鋼素材に、金属組織中にオーステナイトの核生成サイトが多数存在する鋼を用いると、微細な組織が得られやすくなる。
(i)微細な組織を得たい場合には、超急速加熱を行う前に、鋼素材に対して、冷間加工を行うことが好ましい。
(j)生成した超微細オーステナイト粒は、高温状態では粗大な粒に成長しやすい。そのため、超急速加熱後は直ちに冷却することによって、超微細組織を維持したまま室温まで冷却する。
(k)超微細オーステナイト粒の成長粗大化を防止するため、変態温度を低くすることも有効である。粒界の移動は原子の拡散によるものであるため、温度を下げて拡散速度を小さくすれば、微細な粒のまま維持することが可能になる。
(l)Mn等の含有量を調整することによって、鋼素材の変態温度を低下させることが可能になる。
本発明は、上記の知見を基礎としてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:1.00%以下
Cは鋼材の強度を向上させる元素である。C含有量は鋼材に要求される特性に応じて選定されるが、1.00%を超えるとMf点が低下しすぎて、加熱中に生じたオーステナイトの一部または全部が冷却中に変態せずに、必要量のマルテンサイトが得られず、十分な強度が得られなくなる。そのため、C含有量は1.00%以下とする。C含有量は0.50%以下であるのが好ましく、0.35%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得るためには、C含有量は0.03%以上であるのが好ましい。
Si:3.00%以下
Siはフェライト相へ分配される元素であって、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するには、脱酸のために通常含有される量より多く含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が3.00%を超えると、熱間加工性が劣化して圧延時に割れやすくなる。そのため、Si含有量は3.00%以下とする。Si含有量は2.50%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Si含有量は0.10%以上であるのが好ましく、0.30%以上であるのがより好ましい。
Mn:0.2~7.0%
MnはA変態点を低下させてオーステナイト生成温度域を低くすることによって、オーステナイト相の成長粗大化速度を低下させるのに有効な元素である。また、Mnはオーステナイト相へ分配される元素である。さらに、残留オーステナイトを活用したい場合には有効な元素となる。超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するためには、0.2%以上含有させる必要がある。一方、Mn含有量が7.0%を超えると、Mf点が低下しすぎて、加熱中に生じたオーステナイトの一部または全部が冷却中に変態せずに、必要量のマルテンサイトが得られず、十分な強度が得られなくなる。そのため、Mn含有量は0.2~7.0%とする。Mn含有量は5.0%以下であるのが好ましく、3.0%以下であるのがより好ましい。
P:0.10%以下
Pは、一般に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により強度を高める効果を有する元素でもある。したがって、Pを積極的に含有させてもよい。しかし、Pは偏析し易い元素であり、その含有量が0.10%を超えると、粒界偏析に起因する成形性および靭性の低下が顕著となる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。P含有量は0.050%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましく、0.020%以下であるのがさらに好ましい。P含有量の下限は特に規定する必要はないが、上記の効果を得たい場合には、0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.030%以下
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して鋼板の成形性を低下させる。S含有量が0.030%を超えると、成形性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.030%以下とする。S含有量は0.010%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましく、0.001%以下であるのがさらに好ましい。S含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの上昇を抑制する観点からは0.0001%以上とすることが好ましい。
Al:3.00%以下
Alはフェライト相へ分配される元素であって、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するには、脱酸のために通常含有される量より多く含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が3.00%を超えると、熱間加工性が劣化して圧延時に割れやすくなる。そのため、Al含有量は3.00%以下とする。Al含有量は2.50%以下であるのが好ましく、2.00%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得るためには、Al含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましい。
N:0.010%以下
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼板の成形性を低下させる作用を有する。N含有量が0.010%を超えると、成形性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。N含有量は0.0080%以下であるのが好ましく、0.0070%以下であるのがより好ましい。N含有量の下限は特に規定する必要はないが、後述するようにTi、NbおよびVの1種以上を含有させて鋼組織の微細化を図る場合を考慮すると、炭窒化物の析出を促進させるためにN含有量は、0.0010%以上とすることが好ましく、0.0020%以上とすることがより好ましい。
本発明の製造方法に供される鋼には、上記の元素に加えてさらに、下記に示す量のNi、Cu、Cr、Ti、Nb、V、Mo、W、B、Co、Ca、MgおよびREMから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Ni:0~10.0%
NiはA変態点を低下させてオーステナイト生成温度域を低くすることによって、オーステナイト相の成長粗大化速度を低下させるのに有効な元素である。また、Niはオーステナイト相へ分配される元素である。そのため必要に応じてNiを含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が10.0%を超えると、粒成長の抑制効果が飽和してくる。したがって、Ni含有量は10.0%以下とする。Ni含有量は5.0%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Ni含有量は0.1%以上とするのが好ましい。
Cu:0~3.0%
CuはA変態点を低下させてオーステナイト生成温度域を低くすることによって、オーステナイト相の成長粗大化速度を低下させるのに有効な元素である。また、Cuはオーステナイト相へ分配される元素である。そのため必要に応じてCuを含有させてもよい。しかしながら、Cu含有量が3.0%を超えると、加工性が劣化して圧延時に割れやすくなる。したがって、Cu含有量は3.0%以下とする。Cu含有量は2.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Cu含有量は0.3%以上とするのが好ましい。
Cr:0~10.0%
Crはオーステナイト相へ分配される元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてCrを含有させてもよい。しかしながら、Cr含有量が10.0%を超えると、強度と延性または強度と靱性とのアンバランスが生じる。したがって、Cr含有量は10.0%以下とする。Cr含有量は8.0%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Cr含有量は0.1%以上とするのが好ましい。
Ti:0~1.0%
Tiはフェライト相へ分配され、かつ、拡散の遅い元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が1.0%を超えると、鋼が脆化してくる。したがって、Ti含有量は1.0%以下とする。Ti含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Ti含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
Nb:0~1.0%
Nbはフェライト相へ分配され、かつ、拡散の遅い元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてNbを含有させてもよい。しかしながら、Nb含有量が1.0%を超えると、鋼が脆化してくる。したがって、Nb含有量は1.0%以下とする。Nb含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Nb含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
V:0~1.0%
Vはフェライト相へ分配される元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、V含有量が1.0%を超えると、鋼が脆化してくる。したがって、V含有量は1.0%以下とする。V含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、V含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
Mo:0~2.0%
Moはフェライト相へ分配され、かつ、拡散の遅い元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、Mo含有量が2.0%を超えると、粒成長の抑制効果が飽和してくる。したがって、Mo含有量は2.0%以下とする。Mo含有量は1.0%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Mo含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
W:0~1.0%
Wはフェライト相へ分配され、かつ、拡散の遅い元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてWを含有させてもよい。しかしながら、W含有量が1.0%を超えると、粒成長の抑制効果が飽和してくる。したがって、W含有量は1.0%以下とする。W含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、W含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
B:0~0.01%
Bは焼入れ性が向上する元素で、マルテンサイトを含む組織を得るには有効な元素である。そのため必要に応じてBを含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.01%を超えると、靱性が悪化する。したがって、B含有量は0.01%以下とする。B含有量は0.005%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、B含有量は0.0003%以上とするのが好ましい。
Co:0~1.0%
Coはフェライト相へ分配される元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてCoを含有させてもよい。しかしながら、Co含有量が1.0%を超えると、粒成長の抑制効果が飽和してくる。したがって、Co含有量は1.0%以下とする。Co含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Co含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
Ca:0~0.01%
Mg:0~0.01%
REM:0~0.01%
Ca、MgおよびREMは、オーステナイト粒成長を抑制するピン留め効果を有し、オーステナイト粒を微細化する効果を有する。そのため必要に応じてこれらの元素から選択される1種以上を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素の含有量がそれぞれ0.01%を超えると、脆化して加工性が劣化する。したがって、各元素ともその含有量を0.01%以下とする。また、2種以上を複合的に含有させる場合、その合計含有量は0.03%であってもよい。上記の効果を得るためには、Ca、MgおよびREMから選択される1種以上を0.0001%以上含有させるのが好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、前記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
本発明の製造方法に供される鋼の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。
なお「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
Ceq:0.10~1.00
Ceqは炭素当量を意味し、下記(i)式で定義される。Ceqが0.10未満では、鋼材の強度が十分に得られない。なお、本発明において、鋼の引張強さは、400MPa以上であることが好ましい。一方、Ceqが1.00を超えると、靭性および延性が悪化するだけでなく、溶接を行う場合には溶接性および溶接部特性が劣化する。したがって、Ceqは0.10~1.00とする。Ceqは0.20以上であるのが好ましく、0.30以上であるのがより好ましい。また、Ceqは0.90以下であるのが好ましい。
Ceq=C+1/24Si+1/6Mn+1/40Ni+1/5Cr+1/4Mo+1/14V ・・・(i)
但し、式中の各元素記号は、鋼素材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(B)金属組織
本発明に係る鋼材の金属組織は、体積%で、50%以上のフェライトおよび5%以上の残留オーステナイトを含む。鋼材の金属組織は、さらに、5%以上のベイナイトを含むことが好ましい。それぞれの組織の限定理由について説明する。
フェライト:50%以上
フェライトは、軟質な組織であり、鋼の延性を向上する。そのため、フェライトの体積率を50%以上とする。フェライトは軟質な組織であるため、強度より延性を重視したい場合には、その体積率は60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましい。
残留オーステナイト:5%以上
残留オーステナイトは、TRIP効果により、鋼の延性を向上する組織である。そのため、残留オーステナイトの体積率を5%以上とする。なお、残留オーステナイトの体積率について、上限は特に設けないが、他の組織との関係から実質的に45%以下となる。また、残留オーステナイトの体積率が過剰であると、強度が低下するおそれがある。そのため、残留オーステナイトの体積率は40%以下であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましく、20%以下であるのがさらに好ましい。
ベイナイト:5%以上
ベイナイトは、硬質な組織であり、鋼の強度を向上するため、必要に応じて金属組織中に含まれていてもよい。上記の効果を得るためには、ベイナイトの体積率を5%以上とすることが好ましい。ベイナイトはフェライトに比べて硬質な組織であるため、延性より強度を重視したい場合には、その体積率は10%以上であるのが好ましく、15%以上であるのより好ましく、20%以上であるのがさらに好ましい。なお、ベイナイトの体積率について、上限は特に設けないが、他の組織との関係から実質的に45%以下となる。また、ベイナイト体積率は35%以下であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましい。
上記以外の組織については特に限定されず、マルテンサイト、パーライト等の組織から選択される1種以上が含まれていてもよい。しかしながら、それらの合計体積率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
また、上述のように、鋼材の延性を従来のTRIP鋼よりさらに向上させるためには、残留オーステナイトの分散状態が重要となる。具体的には、フェライト粒の内部に存在する残留オーステナイトの面積割合を、鋼材中の残留オーステナイトの総量に対して15%以上にする必要がある。上記面積割合は20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。
平均結晶粒径について、特に制限はない。しかしながら、鋼材の機械的性質は結晶粒径の微細化とともに向上する。特に、金属組織中のフェライト粒の平均結晶粒径が5.0μm以下になるとその向上効果は極めて顕著になる。フェライト粒の平均結晶粒径は3.0μm以下であるのが望ましい。
なお、本発明においては、各組織の体積率、残留オーステナイトの分散状態およびフェライト粒の平均結晶粒径は以下の方法により測定するものとする。
まず、鋼材の圧延方向および板厚方向に平行な断面が観察面となるように、試料を採取する。そして、当該観察面を鏡面研磨し、ナイタール腐食液で腐食した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて組織観察を行う。
上記観察面の板厚1/4深さ位置において、1000倍で130μm×130μmの範囲を撮影する。得られたミクロ組織写真を白黒の二値化処理を施してから画像解析を行い、ベイナイト、フェライト、パーライトおよびその他の組織を特定し、JIS G 0551(2013)規格に定める、「鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法」に基づく方法を用いて、それぞれの面積率を求める。さらに面積率から体積率への換算は、線分法により行う。当該線分法は、例えば、Robert T. DeHoff、Frederik N. Rhines共編(Quantitative Microscopy、1968年)に記載される手法に基づく。
また、残留オーステナイトは、SEMではマルテンサイトとの区別が困難であるため、X線回折法によってその体積率の測定を行う。そして、上記のSEM観察によって得られたその他の体積率から、残留オーステナイトの体積率を差し引くことによって、残部(マルテンサイトなどが該当)の体積率とする。
さらに、残留オーステナイトの分散状態を求めるため、電子線後方散乱回折装置(EBSD)による結晶方位の測定および解析を行う。具体的には、EBSDによる測定により、残留オーステナイト粒に隣接するフェライト粒の数を計測する。ここで、本発明においては、結晶方位差が15°以上の結晶粒界で囲まれるBCC構造を有する結晶粒をフェライト粒とする。
そして、隣接するフェライト粒の数が1つである残留オーステナイト粒を、フェライト粒の内部に存在する結晶粒とする。一方、隣接するフェライト粒の数が2つ以上である残留オーステナイト粒を、結晶粒界に存在する結晶粒とする。そして、フェライト粒の内部に存在する残留オーステナイト粒の合計面積率を、全残留オーステナイト粒の合計面積率で除することにより、フェライト粒の内部に存在する残留オーステナイトの、鋼材中の残留オーステナイトの総量に対する面積割合を算出する。
また、フェライトの平均結晶粒径は、上記のEBSDによる測定において特定されたフェライト粒の円相当直径の平均値を、下式に基づき算出することにより求める。但し、下式中のAiはi番目のフェライト粒の面積を表し、diはi番目のフェライト粒の円相当直径を表す。
Figure 0007337486000001
なお、上記の測定においては、円相当直径が0.3μm以上の残留オーステナイトのみを対象とする。
(C)製造方法
本発明に係る鋼材は、上述の化学組成を有し、所定の金属組織を有する鋼素材に対して、焼戻し工程および焼鈍工程を順に行うことによって製造することが可能である。各条件について、以下に詳しく説明する。
(C-1)鋼素材
熱処理を施す前の鋼素材としては、マルテンサイトまたはベイナイトを主体とする金属組織を有するものを用いる。
ここで、「マルテンサイトまたはベイナイトを主体」とする組織とは、それらの合計の体積率が95.0%以上である金属組織を意味する。鋼素材中には、フェライト、パーライト、残留オーステナイト等の組織が混在する場合もあるが、これらの組織は合計体積率で5.0%以下であれば許容される。
なお、鋼素材の製造方法については、金属組織が上記の規定を満足するものである限り特に制限はなく、一般的な方法を用いればよい。
(C-2)焼戻し工程
上記の鋼素材に対して、550℃~Ac点の範囲の温度域で60min以上保持する。このような条件で熱処理を行うことにより、上記の各組織の結晶粒内にセメンタイトが析出するとともに、セメンタイト中にMn等の元素が濃化する。この工程での保持温度が550℃未満であるかまたは保持時間が60min未満では、セメンタイトの析出およびセメンタイト中への元素の濃化が不十分となる。一方、保持温度がAc点を超えると、オーステナイト変態が生じ、セメンタイトが析出しにくくなる。
(C-3)焼鈍工程
上記の鋼素材に対して、焼鈍工程を行う。焼鈍工程は、さらに昇温工程、保持工程および冷却工程の3つに細分化することができる。それぞれの工程における条件について、以下に詳しく説明する。
<昇温工程>
前述の化学組成および金属組織を有する鋼素材を、まず500℃/s以上の平均昇温速度でAc点~Ac点+200℃の温度域まで加熱する。Ac点以上のオーステナイト単相域まで加熱することで、均一な組織を得ることができる。一方、Ac点+200℃を超えて加熱すると粒成長の速度が大きくなり粗大なオーステナイト粒に成長してしまう。
また、セメンタイト中に濃化した元素が拡散してしまわないように、超急速加熱することが重要である。そのため、上記の温度域までの平均昇温速度は、500℃/s以上とする。平均昇温速度は1000℃/s以上であるのが望ましい。平均昇温速度の上限については特に制限はないが、実用的な範囲として20000℃/s以下であることが望ましい。
なお、本発明において、Ac点は以下の方法により求める。同一の化学組成および金属組織を有する複数の試験片を用意し、所定の加熱速度で、種々の温度まで加熱後、保持時間を1s以内として、上記の加熱温度から70℃まで1000℃/sの平均冷却速度で冷却する。そして、その後の試験片の硬度が、最高焼入れ硬さとなる試験片に適用した加熱温度をAc点とする。また、Ac点は加熱時の熱膨張測定から求めても同様の結果が得られる。
<保持工程>
上記の条件で加熱した後、5s以内に冷却を開始する。Ac点~Ac点+200℃の温度域での保持時間が5sを超えると、保持中における元素の拡散が顕著になるためである。上記保持時間は3s以下であるのが望ましく、1s以下であるのがより望ましい。
<冷却工程>
冷却工程では、上記のAc点~Ac点+200℃の温度域から500℃までの平均冷却速度が40℃/s以下となるように、300~500℃の温度まで冷却する。このときの平均冷却速度を40℃/s以下とすることで、冷却中に変態が起こりオーステナイトからフェライトが生成する。その後、300~500℃の温度域で30~500s保持した後、室温へ冷却する。
平均冷却速度が40℃/sを超えると、組織に十分なフェライトが現れず伸びが低下する。そして、この際、セメンタイトが存在していたMn濃化域は残留オーステナイトとして、未変態のまま残存する。冷却速度の下限は特に設けないが、過度に遅いと元素の拡散が生じるおそれがあるため、冷却速度は1℃/s以上とすることが好ましい。
また、冷却途中の300~500℃の温度域で30~500s保持する時効熱処理を施すことによって、Mn濃化域に形成した残留オーステナイト中にさらに炭素が濃化する。この効果によって、残留オーステナイトの安定性がさらに高まる。
これらの工程を行うことにより、結晶粒内に残留オーステナイトが分散した金属組織を有する鋼材を得ることが可能になる。
(C-4)冷間加工工程
さらに微細な組織を得たい場合には、上記の焼戻し工程の前、または上記の焼戻し工程と焼鈍工程との間に、冷間加工工程を行うことが望ましい。その理由は以下のとおりである。
加熱時に微細なオーステナイトの結晶粒を多数分散させるためには、金属組織中に予め多数のオーステナイトの核生成サイトを得ておく必要がある。核生成サイトとなり得るのは、初期組織の結晶粒界、炭化物等の析出物と素地の結晶粒との界面などである。マルテンサイト組織またはベイナイト組織は、旧オーステナイト粒の中にパケット、ブロック、ラス等の下部組織を有し、それらの境界も核生成サイトとなり得る。
また、マルテンサイト組織またはベイナイト組織に冷間加工を施すと、結晶粒がより微細になるため、さらに核生成サイトが増加し、金属組織中に細かく分散した状態となる。そのため、冷間加工されたマルテンサイトまたはベイナイトを鋼素材として用いれば微細な組織が得られる。
マルテンサイトを加熱する場合には、フェライトがオーステナイトに変態するのに先立ち、マルテンサイトに固溶していたCが炭化物として析出する。炭化物もオーステナイトと同じく金属組織内の結晶界面等に優先的に析出する。前述のように析出した炭化物と素地組織との界面も有効な核生成サイトであることから、冷間加工されたマルテンサイト組織を出発組織とし、加熱過程で微細な炭化物が多数形成する過程を経てからオーステナイト変態が開始するように加熱することで、より多くの核生成サイトを得ることができる。
なお、冷間加工を施す方法について特に制限はなく、例えば、冷間圧延を行う場合、冷間加工度が20%以上となる条件とすることが望ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する180kgの鋼塊を高周波真空溶解炉にて溶製し、熱間鍛造により30mm厚さの鋼片にした。得られたスラブについて、熱間圧延試験機によって熱間圧延を施し、厚さ2mmの熱延鋼板とした。その後、表2に示す試験番号1~18、20~23、25、29および30については、1℃/sの加熱速度で1000℃まで加熱し1h保持したのち、室温まで急冷し、マルテンサイト組織とした。
その後、表2に示すように、一部の試料については、焼戻し熱処理を施した。なお、試験番号1、6~11、13~19、21~24および29については、熱延後、焼戻し処理前または焼戻し処理後の上記熱延鋼板に対して冷間圧延試験機にて冷間圧延を施し、厚さ1mmの冷延鋼板とした。これにより、表2に示す金属組織を有する冷延鋼板または熱延鋼板を作製し、鋼素材(試験番号1~31)とした。
Figure 0007337486000002
Figure 0007337486000003
得られた鋼素材から、幅10mm、長さ50mm、および厚さ1mmの試験片を採取した。採取した各試験片に対して、表2に示す条件に従って熱処理を実施した。加熱は通電加熱により行い、通電加熱の電源遮断後、直ちに冷却水を噴射して室温まで冷却した。なお、表2には、各素材のAc点を併せて示す。熱処理前後の各試験片について組織観察に供した。
熱処理前後の試験片の金属組織は、以下の方法により測定した。
まず、熱処理前後の試験片から、圧延方向および板厚方向に平行な断面が観察面となるように、観察用試料を採取した。そして、当該観察面を鏡面研磨し、ナイタール腐食液で腐食した後、SEMを用いて組織観察を行った。
上記観察面の板厚1/4深さ位置において、1000倍で130μm×130μmの範囲を撮影した。得られたミクロ組織写真を白黒の二値化処理を施してから画像解析を行い、ベイナイト、フェライト、パーライトおよびその他の組織を特定し、JIS G 0551(2013)に基づきそれぞれの面積率を求め、線分法によりそれぞれの体積率に換算した。また、残留オーステナイトの体積率は、X線回折法によって測定した。
さらに、残留オーステナイトの分散状態を求めるため、EBSDによる結晶方位の測定および解析を行った。具体的には、EBSDによる測定により、残留オーステナイト粒に隣接するフェライト粒の数を計測した。
そして、隣接するフェライト粒の数が1つである残留オーステナイト粒を、フェライト粒の内部に存在する結晶粒とし、2つ以上である残留オーステナイト粒を、結晶粒界に存在する結晶粒とした。そして、フェライト粒の内部に存在する残留オーステナイト粒の合計面積率を、全残留オーステナイト粒の合計面積率で除することにより、フェライト粒の内部に存在する残留オーステナイトの、鋼材中の残留オーステナイトの総量に対する面積割合を算出した。
また、フェライトの平均結晶粒径は、上記のEBSDによる測定において特定されたフェライト粒の円相当直径の平均値を算出することにより求めた。
なお、上記の測定においては、円相当直径が0.3μm以上の残留オーステナイトのみを対象とした。
Figure 0007337486000004
表1~3を参照して、本発明で規定される条件を全て満足する試験番号1~14は、引張強さと伸びとの積が20000以上となり、強度および延性のバランスに優れる結果となった。
これらに対して、試験番号19~28は、鋼の化学組成は本発明の規定を満足するものの、製造条件が不適切であったことに起因して、金属組織が本発明の規定を満足しなかった。
具体的には、試験番号19は、熱処理前の鋼素材の金属組織がフェライト/パーライトを主体とするものであったため、Mnの局所濃化域が形成されず、焼鈍工程後に十分な量の残留オーステナイト粒が得られなかった。また、焼鈍工程の保持温度がAc+200℃を超えたため、フェライト粒径が5.0μmを超えた。
試験番号20は、焼戻し工程を行わなかったため、Mnの局所濃化域が形成されず、焼鈍工程後に十分な量の残留オーステナイト粒が得られなかった。
試験番号21は、焼鈍工程の保持温度がAc+200℃を超えたため、Mnの拡散により局所濃化域が失われ、焼鈍工程後に十分な量の残留オーステナイト粒が得られなかったとともに、フェライト粒径が5.0μmを超えた。
試験番号22は、焼鈍工程の加熱速度が500℃/s未満であり、また、保持時間は5sを超えたため、Mnの拡散により局所濃化域が失われ、焼鈍工程後に十分な量の残留オーステナイト粒が得られなかった。それとともに、フェライト粒径は5.0μmを超えた。
試験番号23は、焼鈍工程で冷却途中の保持温度が500℃超であったため、残留オーステナイトの大部分がセメンタイトとなり、十分な量の残留オーステナイト粒が得られなかった。
試験番号24および26は、鋼素材の金属組織がフェライト/パーライトを主体とするものであったため、Mnの局所濃化域が形成されず、焼鈍工程後に十分な量の残留オーステナイト粒が得られなかった。また、焼鈍工程の加熱速度が500℃/s未満であり、フェライト粒径が5.0μmを超えた。
試験番号25は、焼鈍工程の保持時間が5sを超えたため、Mnの拡散により局所濃化域が失われ、焼鈍工程後に十分な量の残留オーステナイト粒が得られなかった。
試験番号27は、鋼素材の金属組織がフェライト/パーライトを主体とするものであったため、Mnの局所濃化域が形成されず、焼鈍工程後にフェライト粒内の残留オーステナイト粒の割合が少なかった。また、焼鈍工程の加熱速度が500℃/s未満であり、フェライト粒径が5.0μmを超えた。
試験番号28は、鋼素材の金属組織がフェライト/パーライトを主体とするものであったが、Si含有量が高いため、本発明で規定する範囲の量の残留オーステナイト粒が得られた。しかしながら、フェライト粒内の残留オーステナイト粒の割合が少なかった。また、焼鈍工程の加熱速度が500℃/s未満であり、フェライト粒径が5.0μmを超えた。
その結果、これらの鋼は、強度または延性のいずれかが低く、強度および延性のバランスに劣る結果となった。
試験番号29および30は、MnまたはCの含有量が過剰であり、Ceqの値が高い例である。その結果、試験番号29および30は、伸びが低くなった。
試験番号31は、Ceqの値が低く焼入れ性が低いため、フェライトのみで構成された組織となった。そのため、強度が低くなった。
本発明によれば、粒内に残留オーステナイトが分散した金属組織とすることにより、従来のTRIP鋼より延性に優れる鋼材を得ることが可能になる。

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.09~0.42%
    Si:2.50%以下、
    Mn:0.31~3.34%
    P:0.050%以下、
    S:0.005%以下、
    Al:0.11%以下、
    N:0.0049%以下、
    Ni:0~0.114%、
    Cu:0~0.06%、
    Cr:0~1.01%、
    Ti:0~0.015%、
    Nb:0~0.065%、
    V:0~0.5%、
    Mo:0~0.718%、
    W:0~0.113%、
    B:0~0.005%、
    Co:0~0.21%、
    Ca:0~0.002%、
    Mg:0~0.001%、
    REM:0~0.001%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式で定義されるCeqが0.360.85であり、
    金属組織が、体積%で、50%以上のフェライトおよび5%以上の残留オーステナイトを含み、かつ、
    フェライト粒の平均結晶粒径が5.0μm以下であり、
    フェライト粒の内部に存在する残留オーステナイトの面積割合が、鋼材中の残留オーステナイトの総量に対して20%以上である、
    鋼材。
    Ceq=C+1/24Si+1/6Mn+1/40Ni+1/5Cr+1/4Mo+1/14V ・・・(i)
    但し、式中の各元素記号は、鋼素材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
  2. 前記金属組織が、さらに、体積%で、5%以上のベイナイトを含む、
    請求項1に記載の鋼材。
  3. 請求項1または請求項2に記載の鋼材の製造方法であって、
    請求項1に記載の化学組成を有し、
    マルテンサイトまたはベイナイトを主体とする金属組織を有する鋼素材に対して、焼戻し工程および焼鈍工程を順に行い、
    前記焼戻し工程において、550℃~Ac点の範囲の温度域で60min以上保持し、
    前記焼鈍工程において、500℃/s以上の平均昇温速度でAc点~Ac点+200℃の範囲の温度域まで加熱した後、5s以内に冷却を開始し、その温度域から500℃までの平均冷却速度が40℃/s以下となるように、300~500℃の温度まで冷却し、その後、300~500℃の温度域で30~500s保持した後、室温へ冷却する、
    鋼材の製造方法。
  4. 前記焼戻し工程の前、または前記焼戻し工程と前記焼鈍工程との間に、さらに冷間加工工程を行う、
    請求項に記載の鋼材の製造方法。
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