JP2020059919A - 鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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ひとみ 西畑
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夏実 大浦
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Tomoya Fujiwara
知哉 藤原
顕吾 畑
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顕吾 畑
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Abstract

【課題】強度−延性バランスに優れた鋼材を提供する。【解決手段】化学組成が、質量%で、C:1.00%以下、Si:3.00%以下、Mn:0.2〜7.0%、P≦0.10%、S≦0.030%、Al≦3.00%、N≦0.010%、Ni:0〜10.0%、Cu:0〜3.0%、Cr:0〜10.0%、Ti:0〜1.0%、Nb:0〜1.0%、V:0〜1.0%、Mo:0〜2.0%、W:0〜1.0%、B:0〜0.01%、Co:0〜1.0%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、REM:0〜0.01%、残部:Feおよび不純物であり、Ceqが0.10〜1.00であり、金属組織が、体積%で、残留γ:3.0〜15.0%、を含み、かつ、マルテンサイト+ベイナイト:2.5〜50.0%であり、残留γ+マルテンサイト+焼戻しマルテンサイト+ベイナイト+フェライト:90.0%以上であり、残留オーステナイトの平均結晶粒径が2.0μm以下、マルテンサイトおよびベイナイトの平均結晶粒径が4.5μm以下であり、素地組織の平均ナノ硬さが3.2GPa未満である、鋼材。【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼材およびその製造方法に関する。
鋼の組織が微細になるほど、強度、延性および靱性のいずれもが向上することが知られている。例えば、軟質な素地中に硬質なマルテンサイトが分散した複相組織鋼において、マルテンサイトを微細に多数分散させた鋼は、同じマルテンサイト体積率でマルテンサイトが粗大化・連結した鋼と比較して、優れた延性および靭性を有する。
また、組織中に残留オーステナイトを含有させると、歪導入時にオーステナイトが歪誘起によるマルテンサイト変態を起こす。そのため、組織中に残留オーステナイトを含む鋼では、延性に優れるとともに高い強度が得られ、強度−延性バランスに優れる結果となる。
強度−延性バランスに優れた材料として、DP鋼または残留オーステナイト鋼が知られている。例えば、特許文献1には、引張強度が590MPa以上、降伏比が0.65以上で、かつヤング率が225GPa以上である剛性に優れた高強度薄鋼板が開示されている。
また、特許文献2には、自動車用、家電用及び機械構造用等に用いられる冷延鋼板について、プレス加工による歪の導入がなくても、低歪域での吸収エネルギーが大きく、耐衝突特性に優れる高強度冷延鋼板が開示されている。さらに、特許文献3には、伸びと伸びフランジ性に優れ、高降伏比を有する高強度冷延鋼板が開示されている。
特開2007−92131号公報 特開2008−231480号公報 特開2015−34326号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の鋼においては、組織制御のため組成を厳しく制限する必要が生じるという問題がある。そのため、化学組成の自由度が低く、製造コストが上昇する懸念がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、強度−延性バランスに優れた鋼材を提供することを目的とする。
本発明は、下記の鋼材およびその製造方法を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:1.00%以下、
Si:3.00%以下、
Mn:0.2〜7.0%、
P:0.10%以下、
S:0.030%以下、
Al:3.00%以下、
N:0.010%以下、
Ni:0〜10.0%、
Cu:0〜3.0%、
Cr:0〜10.0%、
Ti:0〜1.0%、
Nb:0〜1.0%、
V:0〜1.0%、
Mo:0〜2.0%、
W:0〜1.0%、
B:0〜0.01%、
Co:0〜1.0%、
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.01%、
REM:0〜0.01%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で定義されるCeqが0.10〜1.00であり、
金属組織が、体積%で、
残留オーステナイト:3.0〜15.0%、を含み、かつ、
マルテンサイトおよびベイナイトの合計体積率が2.5〜50.0%であり、
残留オーステナイト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイトおよびフェライトの合計体積率が90.0%以上であり、
残留オーステナイトの平均結晶粒径が2.0μm以下、
マルテンサイトおよびベイナイトの平均結晶粒径が4.5μm以下であり、
焼戻しマルテンサイトおよびフェライトの平均ナノ硬さが3.2GPa未満である、
鋼材。
Ceq=C+1/24Si+1/6Mn+1/40Ni+1/5Cr+1/4Mo+1/14V ・・・(i)
但し、式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Ni:0.1〜10.0%、
Cu:0.3〜3.0%、および
Cr:0.1〜10.0%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載の鋼材。
(3)前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.01〜1.0%、
Nb:0.01〜1.0%、
V:0.01〜1.0%、
Mo:0.05〜2.0%、
W:0.05〜1.0%、
B:0.0003〜0.01%、および
Co:0.05〜1.0%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)または(2)に記載の鋼材。
(4)前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.0001〜0.01%、
Mg:0.0001〜0.01%、および
REM:0.0001〜0.01%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の鋼材。
(5)上記(1)から(4)までのいずれかに記載の化学組成を有し、
冷間加工されたマルテンサイトまたは冷間加工された焼戻しマルテンサイトを主体とする金属組織を有する鋼素材を、
再結晶させずにAc点以上、かつ、Ac点未満の範囲の温度域まで加熱した後、2s以内に冷却を開始し、前記温度域から300℃までの平均冷却速度が20〜150℃/sとなるように、100℃以下の温度まで冷却する、
鋼材の製造方法。
(6)加熱時の前記温度域がAc点+10℃以上、かつ、(Ac点+Ac点)/2以下である、
上記(5)に記載の鋼材の製造方法。
本発明によれば、強度−延性バランスに優れた鋼材を得ることが可能になる。
引張強さと伸びとの関係を示すグラフである。
本発明者らは、強度−延性バランスに優れた鋼材を得るための方法について鋭意検討を行った結果、以下の知見を得るに至った。
(a)高い強度と優れた延性とを両立するためには、微細に分散した残留オーステナイト、マルテンサイトおよびベイナイトを含み、それ以外の素地部分が、軟質な焼戻しマルテンサイトおよびフェライトを主体とする金属組織とするのがよい。
(b)鋼素材を再結晶させずにフェライト/オーステナイト2相域まで加熱することで、高温において金属組織の一部に超微細なオーステナイト粒が生成される。そして、その状態から直ちに冷却することで微細に分散した残留オーステナイト、マルテンサイトおよびベイナイトが得られる。
(c)加熱を行う前の鋼素材の組織の違いによって、加熱後の微細度合が大きく変わる。鋼素材には金属組織中にオーステナイトの核生成サイトが多数存在するものを用いるのが望ましい。そのため、冷間加工されたマルテンサイトまたは冷間加工された焼戻しマルテンサイトを主体とする金属組織を有する鋼素材を用いることが望ましい。
(d)加熱後の未変態の領域、すなわち、冷間加工されたマルテンサイトまたは冷間加工された焼戻しマルテンサイトが残存した領域は焼戻しを受け、焼戻しマルテンサイトとなる。
(e)速い昇温速度で加熱を行った場合、オーステナイトへの変態完了温度(Ac点)が上昇するため、高温域で短時間のうちに初期のマルテンサイトを焼戻すことができる。
(f)生成した超微細オーステナイト粒は、高温状態では粒界の移動により粗大な粒に成長しやすい。そのため、加熱後は直ちに冷却を開始することによって、超微細組織を維持したまま室温まで冷却する。
(g)一方、冷却速度をある程度遅くすることで、焼戻しマルテンサイトを軟質化するとともに、さらに軟質なフェライトを素地中に生成させる。加えて、フェライトを生成させることにより、オーステナイトへ炭素が濃化し、残留オーステナイトを安定化させる効果も得られる。
(h)超微細オーステナイト粒の成長粗大化を防止するため、変態温度を低くすることも有効である。粒界の移動は原子の拡散によるものであるため、温度を下げて拡散速度を小さくすれば、微細な粒のまま維持することが可能になる。
(i)Mn等の含有量を調整することによって、鋼素材の変態温度を低下させることが可能になる。
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:1.00%以下
Cは鋼材の強度を向上させる元素である。C含有量は鋼材に要求される特性に応じて選定されるが、1.00%を超えるとMf点が低下しすぎて、加熱中に生じたオーステナイトの一部または全部が冷却中に変態せずに、必要量のマルテンサイトが得られず、十分な強度が得られなくなる。そのため、C含有量は1.00%以下とする。C含有量は0.50%以下であるのが好ましく、0.35%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得るためには、C含有量は0.03%以上であるのが好ましい。
Si:3.00%以下
Siはフェライト相へ分配される元素であって、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するには、脱酸のために通常含有される量より多く含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が3.00%を超えると、熱間加工性が劣化して圧延時に割れやすくなる。そのため、Si含有量は3.00%以下とする。Si含有量は2.50%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Si含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましい。
Mn:0.2〜7.0%
MnはA変態点を低下させてオーステナイト生成温度域を低くすることによって、オーステナイト相の成長粗大化速度を低下させるのに有効な元素である。また、Mnはオーステナイト相へ分配される元素である。さらに、残留オーステナイトを活用したい場合には有効な元素となる。超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するためには、0.2%以上含有させる必要がある。一方、Mn含有量が7.0%を超えると、Mf点が低下しすぎて、加熱中に生じたオーステナイトの一部または全部が冷却中に変態せずに、必要量のマルテンサイトが得られず、十分な強度が得られなくなる。そのため、Mn含有量は0.2〜7.0%とする。Mn含有量は5.0%以下であるのが好ましく、3.0%以下であるのがより好ましい。
P:0.10%以下
Pは、一般に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により強度を高める効果を有する元素でもある。したがって、Pを積極的に含有させてもよい。しかし、Pは偏析し易い元素であり、その含有量が0.10%を超えると、粒界偏析に起因する成形性および靭性の低下が顕著となる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。P含有量は0.050%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましく、0.020%以下であるのがさらに好ましい。P含有量の下限は特に規定する必要はないが、上記の効果を得たい場合には、0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.030%以下
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して鋼板の成形性を低下させる。S含有量が0.030%を超えると、成形性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.030%以下とする。S含有量は0.010%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましく、0.001%以下であるのがさらに好ましい。S含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの上昇を抑制する観点からは0.0001%以上とすることが好ましい。
Al:3.00%以下
Alはフェライト相へ分配される元素であって、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するには、脱酸のために通常含有される量より多く含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が3.00%を超えると、熱間加工性が劣化して圧延時に割れやすくなる。そのため、Al含有量は3.00%以下とする。Al含有量は2.50%以下であるのが好ましく、2.00%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得るためには、Al含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましい。
N:0.010%以下
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼板の成形性を低下させる作用を有する。N含有量が0.010%を超えると、成形性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。N含有量は0.0080%以下であるのが好ましく、0.0070%以下であるのがより好ましい。N含有量の下限は特に規定する必要はないが、後述するようにTi、NbおよびVの1種以上を含有させて鋼組織の微細化を図る場合を考慮すると、炭窒化物の析出を促進させるためにN含有量は、0.0010%以上とすることが好ましく、0.0020%以上とすることがより好ましい。
本発明に係る鋼材には、上記の元素に加えてさらに、下記に示す量のNi、Cu、Cr、Ti、Nb、V、Mo、W、B、Co、Ca、MgおよびREMから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Ni:0〜10.0%
NiはA変態点を低下させてオーステナイト生成温度域を低くすることによって、オーステナイト相の成長粗大化速度を低下させるのに有効な元素である。また、Niはオーステナイト相へ分配される元素である。そのため必要に応じてNiを含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が10.0%を超えると、粒成長の抑制効果が飽和してくる。したがって、Ni含有量は10.0%以下とする。Ni含有量は5.0%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Ni含有量は0.1%以上とするのが好ましい。
Cu:0〜3.0%
CuはA変態点を低下させてオーステナイト生成温度域を低くすることによって、オーステナイト相の成長粗大化速度を低下させるのに有効な元素である。また、Cuはオーステナイト相へ分配される元素である。そのため必要に応じてCuを含有させてもよい。しかしながら、Cu含有量が3.0%を超えると、加工性が劣化して圧延時に割れやすくなる。したがって、Cu含有量は3.0%以下とする。Cu含有量は2.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Cu含有量は0.3%以上とするのが好ましい。
Cr:0〜10.0%
Crはオーステナイト相へ分配される元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてCrを含有させてもよい。しかしながら、Cr含有量が10.0%を超えると、強度と延性または強度と靱性とのアンバランスが生じる。したがって、Cr含有量は10.0%以下とする。Cr含有量は8.0%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Cr含有量は0.1%以上とするのが好ましい。
Ti:0〜1.0%
Tiはフェライト相へ分配され、かつ、拡散の遅い元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が1.0%を超えると、鋼が脆化してくる。したがって、Ti含有量は1.0%以下とする。Ti含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Ti含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
Nb:0〜1.0%
Nbはフェライト相へ分配され、かつ、拡散の遅い元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてNbを含有させてもよい。しかしながら、Nb含有量が1.0%を超えると、鋼が脆化してくる。したがって、Nb含有量は1.0%以下とする。Nb含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Nb含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
V:0〜1.0%
Vはフェライト相へ分配される元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、V含有量が1.0%を超えると、鋼が脆化してくる。したがって、V含有量は1.0%以下とする。V含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、V含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
Mo:0〜2.0%
Moはフェライト相へ分配され、かつ、拡散の遅い元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、Mo含有量が2.0%を超えると、粒成長の抑制効果が飽和してくる。したがって、Mo含有量は2.0%以下とする。Mo含有量は1.0%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Mo含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
W:0〜1.0%
Wはフェライト相へ分配され、かつ、拡散の遅い元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてWを含有させてもよい。しかしながら、W含有量が1.0%を超えると、粒成長の抑制効果が飽和してくる。したがって、W含有量は1.0%以下とする。W含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、W含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
B:0〜0.01%
Bは焼入れ性が向上する元素で、マルテンサイトを含む組織を得るには有効な元素である。そのため必要に応じてBを含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.01%を超えると、靱性が悪化する。したがって、B含有量は0.01%以下とする。B含有量は0.005%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、B含有量は0.0003%以上とするのが好ましい。
Co:0〜1.0%
Coはフェライト相へ分配される元素であり、超微細オーステナイト組織の成長粗大化を抑制するのに有効な元素である。そのため必要に応じてCoを含有させてもよい。しかしながら、Co含有量が1.0%を超えると、粒成長の抑制効果が飽和してくる。したがって、Co含有量は1.0%以下とする。Co含有量は0.5%以下であるのが好ましい。上記の効果を得るためには、Co含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
Ca:0〜0.01%
Mg:0〜0.01%
REM:0〜0.01%
Ca、MgおよびREMは、オーステナイト粒成長を抑制するピン留め効果を有し、オーステナイト粒を微細化する効果を有する。そのため必要に応じてこれらの元素から選択される1種以上を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素の含有量がそれぞれ0.01%を超えると、脆化して加工性が劣化する。したがって、各元素ともその含有量を0.01%以下とする。また、2種以上を複合的に含有させる場合、その合計含有量は0.03%であってもよい。上記の効果を得るためには、Ca、MgおよびREMから選択される1種以上を0.0001%以上含有させるのが好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、前記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
本発明に係る鋼材の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。なお「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
Ceq:0.10〜1.00
Ceqは炭素当量を意味し、下記(i)式で定義される。Ceqが0.10未満では、焼入れを施してもマルテンサイト組織が得られない。一方、Ceqが1.00を超えると、靭性および延性が悪化するだけでなく、溶接を行う場合には溶接性および溶接部特性が劣化する。したがって、Ceqは0.10〜1.00とする。Ceqは0.20以上であるのが好ましく、0.30以上であるのがより好ましい。
Ceq=C+1/24Si+1/6Mn+1/40Ni+1/5Cr+1/4Mo+1/14V ・・・(i)
但し、式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。
(B)鋼材の金属組織
本発明に係る鋼材の金属組織は、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイトおよびフェライトの複相組織が主体となる。具体的には、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイトおよびフェライトの合計体積率が90.0%以上である金属組織を有する。鋼材中には、パーライト等の組織が混在する場合もあるが、これらの組織は合計体積率で10.0%未満であれば許容される。
なお、以下の説明において、初期のマルテンサイトが焼戻しを受けた焼戻しマルテンサイトと区別するため、新たに析出したマルテンサイトを「新出マルテンサイト」ということがある。また、軟質な焼戻しマルテンサイトおよびフェライトを合せて「素地組織」ということがある。
また、金属組織中の残留オーステナイトの体積率は、3.0〜15.0%であり、平均結晶粒径は、2.0μm以下である。さらに、新出マルテンサイトおよびベイナイトの合計体積率は、2.5〜50.0%であり、平均結晶粒径は、4.5μm以下である。金属組織中に微細な残留オーステナイト、新出マルテンサイトおよびベイナイトを所定量分散させることにより、高い強度を有しつつ、伸びの低下を抑えることが可能となる。
鋼材の機械的性質は結晶粒径の微細化とともに向上し、特に、新出マルテンサイトおよびベイナイトの平均結晶粒径が4.5μm以下になるとその向上効果は極めて顕著になる。平均結晶粒径は3.0μm以下であるのが望ましい。なお、ここでいう新出マルテンサイトおよびベイナイトの結晶粒径とは、マルテンサイトおよびベイナイトの旧オーステナイト粒径またはパケット粒径のいずれか特定できるものを指す。
本発明において、各組織の体積率および平均結晶粒径は、以下の方法により測定するものとする。
まず、鋼材の圧延方向および板厚方向に平行な断面が観察面となるように、試料を採取する。そして、当該観察面を鏡面研磨し、ナイタール腐食液で腐食した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて組織観察を行う。
上記観察面の板厚1/4深さ位置において、1000倍で300μm×300μmの範囲を撮影する。得られたミクロ組織写真を白黒の二値化処理を施してから画像解析を行い、新出マルテンサイト、ベイナイトまたは残留オーステナイトと判断される領域を特定し、JIS G 0551(2013)規格に定める、「鋼−結晶粒度の顕微鏡試験方法」に基づく方法を用いて、それらの面積率の合計量を求める。
次に、同じ視野(写真)において、新出マルテンサイト、ベイナイトまたは残留オーステナイトと判断される領域以外と判別した領域から、焼戻しマルテンサイトまたはフェライトである領域を特定する。フェライトとパーライトおよび焼戻しマルテンサイトとは、炭化物析出の有無で判断する。また、パーライトと焼戻しマルテンサイトとは、炭化物の形状および位置で判断する。そして、画像処理において、特定された焼戻しマルテンサイトまたはフェライトである領域の面積率の合計量を求める。
続いて、同じ試料のSEM観察を行った視野と同じ視野において、電子線後方散乱回折装置(EBSD)による結晶方位の測定および解析を行う。測定は30μm×30μm以上の領域を対象とし、0.05μm以下のステップで行うものとする。そして、解析結果からFCC相を特定し、上記と同様にJIS G 0551(2013)に基づき、その面積率を求め、残留オーステナイトの面積率とする。
以上の方法によって求めた各組織の面積率から体積率への換算は、線分法により行う。当該線分法は、例えば、Robert T. DeHoff、Frederik N. Rhines共編(Quantitative Microscopy、1968年)に記載される手法に基づく。
そして、上述の新出マルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイトの合計体積率から残留オーステナイトの体積率を差し引くことにより、新出マルテンサイトおよびベイナイトの合計体積率を求める。さらに、上述の新出マルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイトの合計体積率と焼戻しマルテンサイトおよびフェライトの合計体積率を足し合わせることにより、残留オーステナイト、新出マルテンサイト、ベイナイト、焼戻しマルテンサイトおよびフェライトの合計体積率を求める。
また、FCC相と特定された結晶粒を球状化近似して、その直径を求める。さらに、視野内の全結晶粒の直径を平均することにより、残留オーステナイトの平均結晶粒径を算出する。
さらに、上述のSEMを用いて撮影した写真から、同じ視野におけるEBSD測定で残留オーステナイトと特定された部分を排除して画像処理することによって、新出マルテンサイトまたはベイナイトと判断される組織を特定する。そして、特定された組織を画像解析により球状化近似して、その直径を求める。そして、視野内の全結晶粒の直径を平均することにより、新出マルテンサイトおよびベイナイトの平均結晶粒径を算出する。
ここで、初期のマルテンサイトが焼戻しを受けた焼戻しマルテンサイトは、それぞれ新出マルテンサイトと比較して軟質となる。また、加熱中に出現したオーステナイトが冷却中にフェライト変態して生じたフェライトも軟質である。素地部分を軟質化することにより、延性を向上することが可能になる。また、低降伏比の材料が得られるため、成形時の形状凍結性の向上も期待できる。そのため、焼戻しマルテンサイトおよびフェライト(素地組織)の平均ナノ硬さは、3.2GPa未満とする。
なお、素地組織の平均ナノ硬さは、ナノインデンテーション法を用いて測定するものとする。具体的には、以下の条件で測定する。押込圧子としてダイアモンド製キューブコーナー型を用い、押込方法としては連続剛性方式を採用する。また、荷重は500μNとし、室温で、10箇所(間隔は5μm以上)において測定を行う。そして、それらの平均値を平均ナノ硬さとする。
(C)製造方法
本発明に係る鋼材は、上述の化学組成を有し、所定の金属組織を有する鋼素材に対して、加熱した後、直ちに冷却を開始する熱処理を施すことによって製造することが可能である。各条件について、以下に詳しく説明する。
<鋼素材>
熱処理を施す前の鋼素材としては、冷間加工されたマルテンサイトまたは冷間加工された焼戻しマルテンサイトを主体とする金属組織を有するものを用いる。その理由は以下のとおりである。
加熱時に微細なオーステナイトの結晶粒を多数分散させるためには、金属組織中に予め多数のオーステナイトの核生成サイトを得ておく必要がある。核生成サイトとなり得るのは、初期組織の結晶粒界、炭化物等の析出物と素地の結晶粒との界面などである。マルテンサイト組織は、旧オーステナイト粒の中にパケット、ブロック、ラス等の下部組織を有し、それらの境界も核生成サイトとなり得る。したがって、マルテンサイト組織は、フェライト/パーライト組織等と比較して、オーステナイトの核生成サイトが多く、加熱時に微細な組織が得られる。
また、マルテンサイト組織に冷間加工を施すと、結晶粒がより微細になるため、さらに核生成サイトが増加し、金属組織中に細かく分散した状態となる。そのため、冷間加工されたマルテンサイトを鋼素材として用いることにより微細な組織が得られる。
マルテンサイトを加熱する場合には、フェライトがオーステナイトに変態するのに先立ち、マルテンサイトに固溶していたCが炭化物として析出する。炭化物もオーステナイトと同じく金属組織内の結晶界面等に優先的に析出する。前述のように析出した炭化物と素地組織との界面も有効な核生成サイトであることから、冷間加工されたマルテンサイト組織を出発組織とし、加熱過程で微細な炭化物が多数形成する過程を経てからオーステナイト変態が開始するように加熱することで、より多くの核生成サイトを得ることができる。
なお、マルテンサイトは硬質で延性に乏しいため、成分によっては冷間加工が施せない場合がある。その場合には、冷間加工前に焼戻し処理を施し、焼戻しマルテンサイトとしてもよい。冷間加工された焼戻しマルテンサイト組織を出発組織とした場合であっても、多くの核生成サイトを得ることが可能である。
ここで、「冷間加工されたマルテンサイトまたは冷間加工された焼戻しマルテンサイトを主体」とするとは、冷間加工されたマルテンサイトおよび冷間加工された焼戻しマルテンサイトの合計体積率が95.0%以上である金属組織を意味する。鋼素材中には、フェライト、パーライト、ベイナイト、残留オーステナイト等の組織が混在する場合もあるが、これらの組織は合計体積率で5.0%未満であれば許容される。
なお、鋼素材の製造方法については、金属組織を上記の組織に制御可能なものである限り特に制限はなく、一般的な方法を用いればよい。また、鋼素材に冷間加工を施す方法についても特に制限はなく、例えば、冷間圧延を行う場合、冷間加工度が20%以上となる条件とすることが望ましい。
<昇温工程>
前述の化学組成および金属組織を有する鋼素材を、まず再結晶させずにAc点以上、かつ、Ac点未満の範囲の温度域まで加熱する。上記の温度域まで加熱することで、金属組織の一部に微細なオーステナイトを生成させることができる。また、残存した初期のマルテンサイトは焼戻しを受け、焼戻しマルテンサイトとなる。
上記の温度域はAc点+10℃以上、かつ、(Ac点+Ac点)/2以下とすることが好ましい。加熱温度域を二相域の低温側にし、オーステナイト分率を10〜20%とした状態から後述する冷却を行うことで、微細な残留オーステナイトを効率的に得ることが可能となる。
なお、加熱速度については、再結晶が生じない条件であれば特に制限はない。しかし、確実に再結晶を防止するためには、上記の温度域までの平均昇温速度は、150℃/s以上であるのが望ましく、500℃/s以上であるのがより望ましく、1000℃/s以上であるのがさらに望ましい。平均昇温速度の上限については特に制限はないが、実用的な範囲として20000℃/s以下であることが望ましい。
なお、本発明において、Ac点およびAc点は以下の方法により求める。同一の化学組成および金属組織を有する複数の試験片を用意し、所定の加熱速度で、種々の温度まで加熱後、保持時間を1s以内として、前記加熱温度から70℃まで1000℃/sの平均冷却速度で冷却する。そして、各試験片について顕微鏡観察を行い、金属組織中に新出マルテンサイトが認められた最低加熱温度をAc点とする。さらに、各試験片の硬度を測定し、硬度が、最高焼入れ硬さとなる試験片に適用した加熱温度をAc点とする。また、Ac点およびAc点は加熱時の熱膨張測定から求めても同様の結果が得られる。
<保持工程>
上記の条件で加熱した後、2s以内に冷却を開始する。上記の温度域での保持時間が2sを超えると、保持中にオーステナイトが成長し、微細な新出マルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイトを得難くなる。また、保持中にオーステナイトが成長する過程では、オーステナイトの体積分率増加に伴ってオーステナイト中の炭素濃度が低下するため、オーステナイトの安定性が損なわれ、冷却後に得られる残留オーステナイト量が減少する。上記保持時間は1s以下であるのが望ましい。
<冷却工程>
冷却工程では、上述の加熱温度から300℃までの平均冷却速度が20〜150℃/sとなるように、100℃以下の温度まで冷却する。冷却速度が20℃/s未満では冷却途中でオーステナイトの大部分がフェライト、パーライト組織となり、超微細なマルテンサイトおよびベイナイトが得られない。一方、冷却速度が150℃/sを超えるとオーステナイトの大部分が冷却中にマルテンサイト変態するため残留オーステナイトが減少し、また、焼戻しマルテンサイトの軟質化も不十分となる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する180kgの鋼塊を高周波真空溶解炉にて溶製し、熱間鍛造により30mm厚さの鋼片にした。得られたスラブについて、熱間圧延試験機によって熱間圧延を施し、厚さ2mmの熱延鋼板とした。その後、主体となる金属組織が表2に示す組織になるように、種々の加熱処理を施した。さらに冷間圧延試験機にて冷間圧延を施し、厚さ1mmの冷延鋼板とし、鋼素材とした。
Figure 2020059919
Figure 2020059919
得られた鋼素材から、幅10mm、長さ50mm、および厚さ1mmの試験片を採取した。採取した各試験片に対して、表2に示す条件に従って熱処理を実施した。加熱は通電加熱により行い、通電加熱の電源遮断後、直ちに冷却水を噴射して室温まで冷却した。なお、表2には、各素材のAc点およびAc点を併せて示す。
熱処理前後の試験片の金属組織は、以下の方法により測定した。
まず、熱処理前後の試験片から、圧延方向および板厚方向に平行な断面が観察面となるように、観察用試料を採取した。そして、当該観察面を鏡面研磨し、ナイタール腐食液で腐食した後、SEMを用いて組織観察を行った。
上記観察面の板厚1/4深さ位置において、1000倍で300μm×300μmの範囲を撮影した。得られたミクロ組織写真を白黒の二値化処理を施してから画像解析を行い、新出マルテンサイト、ベイナイトまたは残留オーステナイトと判断される領域を特定し、JIS G 0551(2013)に基づきそれらの面積率の合計量を求め、線分法により体積率に換算した。
次に、同じ視野(写真)において、新出マルテンサイト、ベイナイトまたは残留オーステナイトと判断される領域以外と判別した領域から、焼戻しマルテンサイトまたはフェライトである領域を特定した。フェライトとパーライトおよび焼戻しマルテンサイトとは、炭化物析出の有無で判断し、パーライトと焼戻しマルテンサイトとは、炭化物の形状および位置で判断した。そして、画像処理において、JIS G 0551(2013)に基づき特定された焼戻しマルテンサイトおよびフェライト(素地組織)の面積率の合計量を求め、線分法により体積率に換算した。
続いて、同じ試料のSEM観察を行った視野と同じ視野において、EBSDによる結晶方位の測定および解析を行った。測定は30μm×30μm以上の領域を対象とし、0.05μm以下のステップで行った。そして、解析結果からFCC相を特定し、JIS G 0551(2013)に基づきその面積率を求め、線分法により残留オーステナイトの体積率に換算した。また、FCC相と特定された結晶粒を球状化近似して、その直径を求め、視野内の全結晶粒の直径を平均することにより、残留オーステナイトの平均結晶粒径を算出した。
そして、上述の新出マルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイトの合計体積率から残留オーステナイトの体積率を差し引くことにより、マルテンサイトおよびベイナイトの合計体積率を求めた。さらに、上述の新出マルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイトの合計体積率と焼戻しマルテンサイトおよびフェライトの合計体積率を足し合わせることにより、残留オーステナイト、新出マルテンサイト、ベイナイト、焼戻しマルテンサイトおよびフェライト(複相組織)の合計体積率を求めた。
さらに、上述のSEMを用いて撮影した写真から、同じ視野におけるEBSD測定で残留オーステナイトと特定された部分を排除して画像処理することによって、新出マルテンサイトまたはベイナイトを特定した。そして、特定された新出マルテンサイトまたはベイナイトを画像解析により球状化近似して、その直径を求め、視野内の全結晶粒の直径を平均することにより、新出マルテンサイトおよびベイナイトの平均結晶粒径を算出した。
また、素地組織のナノ硬さは、以下の条件によりナノインデンテーション法を用いて測定した。押込圧子としてダイアモンド製キューブコーナー型を用い、押込方法としては連続剛性方式を採用した。また、荷重は500μNとし、室温で、10箇所(間隔は5μm以上)において測定を行った。そして、それらの平均値を平均ナノ硬さとした。
これらの結果を表3に示す。
Figure 2020059919
表3に示すように、本発明の規定を満足する試験番号1〜9、25、26、28〜30、32および35〜40では、超微細な残留オーステナイトおよびマルテンサイトが分散し、かつ軟質な素地部分が得られる結果となった。
実施例1と同様に、表1に示す化学組成を有する180kgの鋼塊のうち、鋼AおよびBを高周波真空溶解炉にて溶製し、熱間鍛造により30mm厚さの鋼片にした。得られたスラブについて、熱間圧延試験機によって熱間圧延を施し、厚さ2mmの熱延鋼板とした。その後、主体となる金属組織が表4に示す組織になるように、種々の加熱処理を施した。表4に示す試験番号60、61および67以外については、さらに冷間圧延試験機にて冷間圧延を施し、厚さ1mmの冷延鋼板とした。試験番号60については、焼鈍を行い、熱延焼鈍板とした。そして、こられの鋼板を、鋼素材とした。
Figure 2020059919
得られた鋼素材から、幅10mm、長さ50mm、および厚さ1mmの試験片を採取した。採取した各試験片に対して、表4に示す条件に従って熱処理を実施した。加熱は通電加熱により行い、通電加熱の電源遮断後、直ちに冷却水を噴射して室温まで冷却した。なお、表4には、各素材のAc点およびAc点を併せて示す。
続いて、熱処理前後の試験片の金属組織および素地組織のナノ硬さを、実施例1と同様の方法により測定した。これらの結果を表5に示す。
Figure 2020059919
さらに、これらの試験片を引張試験に供し、機械的特性の測定を行った。引張試験は、ASTM規格E8の規定に準拠して、インストロン社製引張試験機で実施した。上記試験片から、試験方向が圧延方向に平行になるように、インストロン型引張試験片(平行部長さ:30mm、平行部板幅:6.0mm)を採取した。なお、本実施例で用いた通電加熱装置冷却装置では、長さ200mm程度のサンプルから得られる均熱部位は限られるため、ASTM規格E8のハーフサイズ板状試験片を採用することとした。
その結果を表6に示す。また、鋼AおよびBのそれぞれにおいて、引張強さと伸びとの関係を図1に示す。
Figure 2020059919
表5および6ならびに図1に示すように、本発明の規定を満足する試験番号44〜52および68〜73では、超微細な残留オーステナイトおよびマルテンサイトが分散し、かつ軟質な素地部分が得られ、引張強さと伸びとのバランスに優れる結果となった。
本発明によれば、強度−延性バランスに優れた鋼材を得ることが可能になる。

Claims (6)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:1.00%以下、
    Si:3.00%以下、
    Mn:0.2〜7.0%、
    P:0.10%以下、
    S:0.030%以下、
    Al:3.00%以下、
    N:0.010%以下、
    Ni:0〜10.0%、
    Cu:0〜3.0%、
    Cr:0〜10.0%、
    Ti:0〜1.0%、
    Nb:0〜1.0%、
    V:0〜1.0%、
    Mo:0〜2.0%、
    W:0〜1.0%、
    B:0〜0.01%、
    Co:0〜1.0%、
    Ca:0〜0.01%、
    Mg:0〜0.01%、
    REM:0〜0.01%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式で定義されるCeqが0.10〜1.00であり、
    金属組織が、体積%で、
    残留オーステナイト:3.0〜15.0%、を含み、かつ、
    マルテンサイトおよびベイナイトの合計体積率が2.5〜50.0%であり、
    残留オーステナイト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイトおよびフェライトの合計体積率が90.0%以上であり、
    残留オーステナイトの平均結晶粒径が2.0μm以下、
    マルテンサイトおよびベイナイトの平均結晶粒径が4.5μm以下であり、
    焼戻しマルテンサイトおよびフェライトの平均ナノ硬さが3.2GPa未満である、
    鋼材。
    Ceq=C+1/24Si+1/6Mn+1/40Ni+1/5Cr+1/4Mo+1/14V ・・・(i)
    但し、式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ni:0.1〜10.0%、
    Cu:0.3〜3.0%、および
    Cr:0.1〜10.0%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.01〜1.0%、
    Nb:0.01〜1.0%、
    V:0.01〜1.0%、
    Mo:0.05〜2.0%、
    W:0.05〜1.0%、
    B:0.0003〜0.01%、および
    Co:0.05〜1.0%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1または請求項2に記載の鋼材。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0001〜0.01%、
    Mg:0.0001〜0.01%、および
    REM:0.0001〜0.01%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1から請求項3までのいずれかに記載の鋼材。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の化学組成を有し、
    冷間加工されたマルテンサイトまたは冷間加工された焼戻しマルテンサイトを主体とする金属組織を有する鋼素材を、
    再結晶させずにAc点以上、かつ、Ac点未満の範囲の温度域まで加熱した後、2s以内に冷却を開始し、前記温度域から300℃までの平均冷却速度が20〜150℃/sとなるように、100℃以下の温度まで冷却する、
    鋼材の製造方法。
  6. 加熱時の前記温度域がAc点+10℃以上、かつ、(Ac点+Ac点)/2以下である、
    請求項5に記載の鋼材の製造方法。
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