JP3858732B2 - 半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置に係り、交流発電機の交流出力を直流出力に変換する半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
交流発電機の整流装置に関して、熱衝撃が多数回反復して加わる激しい環境でも電気的特性が長期間に渡って低下しない半導体装置を得るために、特開平4−229639号公報では、半導体チップをエポキシ系絶縁部材にて封止する構造が提案されている。これは、この樹脂封止構造は成型後の樹脂の収縮を利用して半導体チップの接合面に対して垂直方向の圧力をケース電極に作用させることで、ケース電極と半導体チップとの接合部材にクラックが発生しても、必要な通電経路を確保しようとするものである。また、同様のものとして、特開平10−215552号公報では、半導体チップの周囲に溝を設け、そこに樹脂を充填させて、絶縁部材を大気圧を超える高圧で充填しモールド成型して絶縁部材に残留圧縮応力を発生させる構造が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
半導体装置の搭載場所が自動車のエンジンルーム内のような場所である場合、高熱と、車両側電気負荷の変動により発電機の発熱量増大等の影響が極めて高い。また、特に自動車は、夏冬の温度差によって発生する、広範な温度範囲に及ぶ冷熱の繰り返しを受ける等の厳しい環境下にあるため、放熱性と熱疲労に強い半導体装置が必要となる。
【0004】
半導体装置が熱衝撃を多数回反復して受けると、半導体装置を構成する技術の線膨張率の差に起因するひずみがはんだなどの接合部材に加わり、十分な対策がされていないと、この接合部材にクラックが発生する恐れがある。クラックが発生すると、通電経路である接合部材の断面積が減少し、電気抵抗が増大することで発熱が増加するとともに、接合部材を通した放熱量も低下し、半導体チップの温度が異常に上昇する。このため、接合部材の溶融や半導体チップが耐熱限界に達すると、整流機能が消失するおそれがある。
【0005】
本発明の発明者は、かかる使用環境においても十分対応できる、熱ひずみに起因する熱疲労寿命向上と放熱性を効果的に達成する半導体装置を得るには前記公知例の構造では十分でないことを見出した。
特開平4−229639号公報は通電経路の確保により電気抵抗の増大や発熱量の低下を抑制して、半導体チップの温度の異常上昇をある程度抑制できるものであるが、この樹脂封止構造は、成型後の樹脂の収縮を利用して圧力をケース電極に作用させるだけのものであるから本来的に、線膨張率の差に起因する接合部材のひずみを低減できるものではない。そのため、寿命向上の効果は少しあるが、接合部材のひずみ発生に対して十分に解決されていない。特開平10−215552号公報は高温(140℃以上)でも絶縁部材の弾性率の低下がないので、弾性率低下によるケース電極の自由膨張の抑制効果の低下を防止できるが、樹脂のような剛性が大きいことから絶縁部材の劣化など絶縁部材自身の寿命が問題となる。また、半導体チップが放熱フィンの高さより高いところに位置するよう配置されるので熱抵抗が大きく放熱性が十分でない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、接合部材により電気的に接合されたケース電極と半導体チップとの相互の熱変形差から生じる半導体チップへのクラックを防止するとともに、接合部材のひずみが低減でき、半導体チップの放熱性を向上させた半導体装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために、ケース電極内の上面に接合部材により搭載された半導体チップと、この半導体チップの上面に接合部材により搭載されたリードとを備え、ケース電極の空間内に接合部分を封止する絶縁部材を充填した半導体装置において、半導体チップ端部直下の前記金属板の上面に溝を設けることで、半導体チップとケース電極の線膨張率の差により接合部材の端部に大きく発生する熱ひずみを低減し、熱疲労寿命の向上を図ったものである。
【0008】
(1)リードに連絡するリード電極と、周辺部に凸壁部を有するケース電極と、リード電極とケース電極との間に接合部材を介して配置される整流機能を有する半導体チップと、を有し, ケース電極は、半導体チップが配置される位置と凸壁部までの間の領域に、半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域と、第一の領域より厚い第二の領域を有し,第一の領域は前記半導体チップの端部からケース電極に接着する前記接合部材の厚さの5倍以内の距離に第一の領域の端部が配置される領域を含むことを特徴とする半導体装置を用いる。この構造は放熱性を向上させるために半導体チップを中間部材を設けずにケース電極に接合部材を介して直接接合されている構造になっている。また,ケース電極の線膨張率が大きく、半導体チップとケース電極間の接合部材はケース電極側ではケース電極と共に変形するが、半導体チップ側では半導体チップによってその変形は押さえられるようになり、接合部材の端部に大きくひずみが発生することに着目し、ケース電極は、半導体チップが配置される位置と凸壁部までの間の領域に、半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域と、第一の領域より厚い第二の領域を設ける.つまり溝を設けることによって、ケース電極と共に変形する接合部材の変形を低減するようにしたことと、溝である第一の領域は半導体チップの端部からケース電極に接着する前記接合部材の厚さの5倍以内の距離に第一の領域の端部が配置される領域を含むことを特徴としている。
【0009】
これによると、冷熱の繰返しがあっても半導体チップとケース電極の線膨張率の差が小さくなることと、特に接合部材端部でのケース電極と共に変形する量が低減でき、これが熱ひずみの低減となり、熱疲労寿命が低減できる。また、ケース電極の外周部と放熱板を機械的に固定する際にケース電極の変形によって半導体チップに応力が生じる。この時、溝はケース電極の変形が半導体チップの変形に及ぼす影響を吸収する作用があり、応力が低減できる.
(2)(1)に関して、半導体チップにおける第一の領域の端部とそれに対応する第一の領域における第一の端部との間の第一の距離は、半導体チップにおける第二の端部と第二の領域に対応する第一の領域における第二の端部との間の第二の距離より小さく、第二の距離はケース電極に接着する接合部材の厚さの5倍以内に形成されることを特徴としている。これによると、接合部材がケース電極と共に変形する量はケース電極と接触する接合部材の面積と比例するが、この面積を電気特性を保ちながら大きく低減できる位置に第一の領域である溝を設けることで、本発明による効果を最大限に発揮できる。
(3)(1)或いは(2)に関して、半導体チップが配置される領域が凸壁部の高さ以下の位置に形成されることを特徴とする。これによると、凸壁部は放熱フィんに取り付けられるので凸壁部の高さ以下の位置することによって放熱性が向上できる。
(4)(1)から(3)に関して、溝である第一の領域の幅は、前記ケース電極に接合した接合部材の厚さの50%以上に形成されることを特徴としている。これによると、溝を設けることはケース電極の剛性と通電容量に影響及ぼす恐れがあるので、溝の幅は定量的に決める必要がある。
(5)(1)から(4)に関して、第一の領域の幅は、前記ケース電極における前記半導体チップのもっとも前記凸壁側に近い外側端に相当する位置から前記凸壁部までの距離の90%以下に形成されることを特徴としている。これは(4)と同じ作用で溝の幅を制限し、溝の効果が向上できる。
(6)(1)から(5)に関して、ケース電極の第一の領域における半導体チップが搭載された面と反対側面までの厚さは、ケース電極の半導体チップが搭載位置する領域における厚さの30%以上に形成されることを特徴としている。これは請求項4と同じ作用で溝の高さを制限し、溝の効果が向上できる。
(7)(1)から(6)に関して、放熱板と接触している部分の前記凸壁の高さは、前記半導体装置の外周側に設置されるための放熱板の厚さ以下に形成されることを特徴としている。これによると、半導体装置の搭載場所が自動車のエンジンルーム内の場合、外部からの衝撃などにより放熱板と固定されているケース電極が抜けることを防止できる。
(8)(1)から(7)に関して、ケース電極の凸壁部で囲まれた領域に絶縁部材充填された領域を有し、前記絶縁部材は軟質性ゴム材からなることを特徴としている。これによると、絶縁部材によりリード電極と半導体チップとケース電極と、接合部材を外部から保護するための封止機能ができる。また絶縁部材自身の剛性が低いので、絶縁部材によってケース電極の外周部と放熱板を機械的に固定する際にケース電極の変形によって半導体チップに与える応力を低くすることができる。さらに絶縁部材と外部に突出している部分が少ないので、特開平10−215552号公報のように放熱性を考慮し外部にむき出しになっている樹脂などに比べ、絶縁部材の寿命を長くできる。
(9)(1)から(8)に関して、ケース電極はジルコン銅からなることを特徴としている。これによると、ジルコン銅は純銅より降伏応力値が高いのでケース電極の外周部と放熱板を機械的に固定する際にケース電極の変形が半導体チップの変形に及ぼす影響を低減することができる。
(10)リードに連絡するリード電極と、リード電極と接合層を介して配置される整流機能を有する半導体チップと、導体チップと接合層を介して配置されるケース電極とを有し、ケース電極は、周辺部を囲む凸壁部、凸壁部内に形成される半導体チップを配置する領域、半導体チップが配置される領域の外側に半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域、第一の領域と前記凸壁部との間に前記第一の領域より厚い第二の領域、とを有し、半導体チップの最も凸壁部に近い端部と第一の領域との間の距離は、ケース電極に接合する前記接合層の厚さの5倍以内に配置されることを特徴としている。これによると、接合部材がケース電極と共に変形する量はケース電極と接触する接合部材の面積と比例するが、この面積を電気特性を保ちながら大きく低減できる位置に第一の領域である溝を設けることで、本発明による効果を最大限に発揮できる。さらに、ケース電極の外周部と放熱板を機械的に固定する際にケース電極の変形が半導体チップの変形に及ぼす影響を低減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0011】
図1に示す第1実施形態の半導体装置では、リードに連絡するリード電極(1)と、周辺部に凸壁部を有するケース電極(5)と、リード電極(1)とケース電極(5)との間に接合部材(2)を介して配置される整流機能を有する半導体チップ(3)と、を有し, ケース電極(5)は、半導体チップ(3)が配置される位置と凸壁部(5d)までの間の領域に、半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域(5b)と、第一の領域より厚い第二の領域(5c)を有し,第一の領域(5b)は半導体チップ(3)の端部(3a)からケース電極(5)に接着する接合部材の厚さの5倍以内の距離に第一の領域(5b)の端部が配置される領域を含むように形成している。この構造は放熱性を向上させるために半導体チップ(3)を中間部材を設けずにケース電極5に接合部材を介して直接接合されている構造になっている。通常、リード電極(1)とケース電極(5)は銅系、あるいは鉄系の金属で形成されている。これらの電極体が例えば銅系で形成されている場合はその線膨張係数が17ppm/℃程度であり、一方、半導体チップの線膨張係数は3ppm/℃である。ここで、半導体チップ(3)とケース電極(5)間の線膨張率はが大きく、半導体チップ(3)とケース電極(5)間の接合部材はケース電極(5)側ではケース電極と共に変形するが、半導体チップ(3)側では半導体チップ(3)によってその変形は押さえられるようになり、接合部材(2)の端部に大きくひずみが発生するので,ケース電極(5)は、半導体チップ(3)が配置される位置と凸壁部までの間の領域に、半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域(5b)と、第一の領域(5b)より厚い第二の領域(5c)を設ける。ことによって、ケース電極(5)と共に変形する接合部材(2)の変形を低減するようにした。また、第一の領域(5b)は半導体チップの端部(3a)からケース電極(5)に接着する接合部材(2)厚さの5倍以内の距離に第一の領域(5b)の端部が配置される領域を含むようにすることによって、冷熱の繰返しがあっても半導体チップ(3)とケース電極(5)の線膨張率の差が小さくなることと、特に半導体チップを接合部材(2)を介してケース電極(5)に接合する際にケース電極(5)の長さが半導体チップ(3)の長さより長いため、接合部材(2)が半導体チップの端部(3a)からはみだしケース電極(5)の方流れるような形状になってしまうが、第一の領域(5b)端部の配置をチップの端部(3a)と同じ位置に設けることによって、接合部材(2)の流れを押さえられ、接合部材(2)がケース電極(5)共に変形する量を低減でき、これが接合部材(2)端部の熱ひずみの低減となり、熱疲労寿命が低減できる。また、ケース電極の外周部(5a)と放熱板(6)を機械的に固定する際にケース電極(5)の変形によって半導体チップ(3)に応力が生じる。この時、第一の領域(5b)はケース電極(5)の変形が半導体チップ(3)の変形に及ぼす影響を吸収する作用があり、応力が低減できる.
また、図1に示すように第1実施形態の半導体装置装置の半導体チップ(3)が配置される領域が凸壁部の高さ以下の位置に形成されることを特徴とするようにすることが好ましい。または、半導体チップ(3)の配置される位置は、半導体装置に設置される放熱板(6)の厚さ方向において、同放熱板(6)が位置する領域内になるようにすることが好ましい。これによると、凸壁部は放熱板(6)に接触されているので凸壁部(5d)の高さ以下の位置することによって放熱性が向上できる。
【0012】
図1第1実施形態の半導体装置装置はケース電極(5)の凸壁部で囲まれた領域に絶縁部材(4)充填された領域を有し、前記絶縁部材(4)は軟質性ゴム材からなることを特徴としている。軟質性ゴム材は常温(25℃)での剛性が1MPa〜3MPaで、高温(200℃)でも2MPa〜4MPaと高温でも物性値の低下はなく、長時間の使用に耐えることができる。また絶縁部材自身の剛性が低いので、絶縁部材によってケース電極の外周部と放熱板を機械的に固定する際にケース電極の変形によって半導体チップに与える応力を低くすることができる。さらに常温ではシリコーンゴムより優れた機械的強度をもつ樹脂などの有機ゴムも、多くは高温下(150〜200℃以上)で強度が低下し、その優劣が逆転じることを考えると、軟質性ゴム材は樹脂などに比べ、絶縁部材の寿命を長くできる。
【0013】
図2、図3に示す第2実施形態の半導体装置装置では、本発明の半導体装置装置を上から見た図である。図2と図3は半導体チップ(3)における第一の端部(3a)とそれに対応する第一の領域(5b)における第一の端部(5e)との間の第一の距離(d1)は、半導体チップにおける第二の端部(3a‘)と第二の領域(5c)に対応する第一の領域(5b)における第二の端部(5f)との間の第二の距離(d2)より小さく、第二の距離(d2)はケース電極(5)に接着する接合部材の厚さの5倍以内に形成される。第二の端部(3a)は、半導体チップ(3)の一端から多端までの距離が最も遠くなる場所であることができる。図2は半導体チップ(3)形状が円形状、図3はこれによると、半導体チップ(3)形状が四角形状を想定した場合の図である。また、他の多角形であることも考えられる。接合部材(2)がケース電極(5)と共に変形する量はケース電極(5)と接触する接合部材(2)の面積と比例するが、この面積を電気特性を保ちながら大きく低減できる位置に第一の領域(5b)である溝を設けることで、本発明による効果を最大限に発揮できる。
【0014】
図4に示す第3実施形態の半導体装置装置では、ケース電極(5)と半導体チップ(3)の側に線膨張係数との中間の値にすることによって、半導体チップ(3)に加わる機械的応力を緩和して半導体チップ(3)の割れを防止する構造を図1に示す第1実施形態に適用した物で、半導体チップ(3)とリード電極(1)、ケース電極(5)とリード電極(1)と半導体チップ(3)との接合部材(2)と半導体チップ(3)と銅−鉄合金−銅の三層構造となった金属板(8)をと接合部分(2)と金属板(8)とケース電極(5)との接合部分(2)を絶縁部材(4)により封止しており、絶縁部材(4)は軟質性ゴム材を用いて形成している。銅−鉄合金−銅の三層構造となった金属板(8)とケース電極(5)間の線膨張率の差によって生じる熱ひずみを低減するために、第1実施形態の半導体装置装置と同じく半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域(5b)と、第一の領域より厚い第二の領域(5c)を有し,第一の領域(5b)は半導体チップ(3)の端部(3a)からケース電極(5)に接着する接合部材の厚さの5倍以内の距離に第一の領域(5b)の端部が配置される領域を含むように形成している。
【0015】
図5に示す第4実施形態の半導体装置では、リード電極1と半導体チップ3の間に金属板(9)が設けられている。この金属板(9)は線膨張率差により生じる半導体チップ(3)の応力を低減させるために、金属板(9)はインバー(35%Ni-Feの合金)材で、半導体チップ(3)厚さの50%以上の厚さであることを特徴とする。これはインバーの線膨張係数が1.5ppm/℃であるが、それに対して半導体チップ(3)の線膨張係数が3ppm/℃で半導体チップ(3)の方が大きい。金属板(9)の厚さを半導体チップ(3)より厚くする事で熱に対する伸びの差が低減できる。また金属板(9)の厚さを厚くする事によってチップの変形を押さえる技能も向上するので半導体チップ(3)の応力低減が期待できる。さらに,半導体チップ(3)をケース電極(5)に直接接合されているので放熱性が優れている。半導体チップ(3)とケース電極(5)間の線膨張率の差によって生じる熱ひずみを低減するために、第1実施形態の半導体装置装置と同じく半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域(5b)と、第一の領域より厚い第二の領域(5c)を有し,第一の領域(5b)は半導体チップ(3)の端部(3a)からケース電極(5)に接着する接合部材の厚さの5倍以内の距離に第一の領域(5b)の端部が配置される領域を含むように形成している。
【0016】
図6に示す第5実施形態の半導体装置装置では、図1に示す第1実施形態の半導体装置装置を放熱板(6)に固定する際にケース電極(5)と放熱板(6)を、接合部材(2)を介して固定している。第1実施形態のように半導体装置装置をケース電極(5)の径より小さい径の放熱板(6)穴に圧入方式で固定する場合ペレット加わる応力の低減が期待できる。
【0017】
図7に示す第6実施形態の半導体装置装置では、請求項1の半導体装置の放熱板(6)と接触している部分(6a)の凸壁の高さ(Hb)は、半導体装置の外周側に設置されるための放熱板の厚さ(Ha)以下に形成されることを特徴としている。これによると、半導体装置の搭載場所が自動車のエンジンルーム内の場合、外部からの衝撃などにより放熱板(6)と固定されているケース電極(5)が抜けることを防止できる。
【0018】
図8に示す第7実施形態の半導体装置装置では、図1に示す第1実施形態の半導体装置装置のケース電極はジルコン銅から形成している。これによると、通常,ジルコン銅の降伏応力値427MPaで純銅の降伏応力値207MPaと2倍以上高いのでケース電極(5)の外周部(5a)と放熱板(6)を圧入方式で機械的に固定する際にケース電極(5)の変形が半導体チップ(3)の変形に及ぼす影響を低減することができる。
【0019】
図9に示すグラフは、数値計算によって、ケース電極(5)に設ける溝である第一の領域の溝の深さ×幅と、所定の温度でのひずみの範囲/最大ひずみ範囲との関係を求めたグラフである。
図1での溝の幅(W)はケース電極(5)に接合した接合部材の厚さの50%以上に形成している。溝を設けることはケース電極(5)の剛性と通電容量に影響及ぼす恐れがあるので、溝の幅(W)は定量的に決める必要がある。溝の効果が大きく期待できる溝の幅(W)は接合部材の厚さ2倍以上である。また、溝の位置による幅はケース電極(5)における半導体チップ(3)のもっとも凸壁(5d)側に近い外側端(3a)に相当する位置から凸壁部までの距離(d3)の90%以下に形成している。これは同じく溝の位置により幅を制限し、溝の効果が向上できる。溝の効果が大きく期待できる溝の位置による幅(W)は距離(d3)の50%以下である。
図1での溝の深さ(T3)はケース電極(5)の第一の領域における半導体チップ(3)が搭載された面と反対側面までの厚さ(T3)は、ケース電極(5)の半導体チップ(3)が搭載位置する領域における厚さ(T1)の30%以上に形成している。溝の深さ(T3)はより好ましくは厚さ(T1)の50%以下で、実用的に溝の効果が一番大きく期待できのは厚さ(T1)の〜10%である。これは図1に示すように溝の幅と深さは2倍のTと0.25倍のT1で効果は十分得られる。それ以上溝の幅と深さを大きくしてもそれほど効果は変わらないことがわかる。
【0020】
このように本発明を用いれば、接合部材により電気的に接合されたケース電極と半導体チップの相互の熱変形差から生じる熱疲労によるクラックを防止するとともに、放熱性を考慮し、熱伝達の信頼性が高い半導体装置を得ることができる。
【0021】
なお、公知例の調査の結果、本発明の発明者は、特開平11−243165号公報に凹状の支持電極(ケース電極)内の半導体チップと壁との間の中央付近に、蟻形断面を有する環状溝部を備えた構造が記載されていることを見出した。しかし、これは、凹状の支持電極内に充填される樹脂が支持電極から剥離することを防止することを補助するために、半導体チップと壁との間の中央に配置されるものであると推測され、当該公報に記載の構造では本願発明の効果は得られないことが分かった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、接合部材により電気的に接合されたケース電極と半導体チップとの相互の熱変形差から生じる半導体チップへのクラックを防止するとともに、接合部材のひずみが低減でき、さらに半導体チップの放熱性を向上させた半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態を示す半導体装置の要部縦断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態を上から見た図である(半導体チップの形状が円形状)。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態を上から見た図である(半導体チップの形状が四角形状)。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態を示す半導体装置の要部縦断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3実施形態を示す半導体装置の要部縦断面図である。
【図6】図6は、本発明の第4実施形態を示す半導体装置の要部縦断面図である。
【図7】図7は、本発明の第5実施形態を示す半導体装置の要部縦断面図である。
【図8】図8は、本発明の第6実施形態を示す半導体装置の要部縦断面図である。
【図9】図9は、半導体装置において、ケース電極に設ける溝の深さ×幅と冷却相対値でのひずみの範囲/最大ひずみ範囲との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…リード、2…接合部材、3…半導体チップ、3a…半導体チップの端部、4…絶縁部材、5…ケース電極、5a…ケース電極の取付部(ローレット)、5b…ケース電極の溝の部分、5c…ケース電極の溝以外の部分、5e…ケース電極の溝の第一端部、5f…ケース電極の溝の第二端部、6…放熱板、7…絶縁部材(部材が樹脂)8…金属板、9…金属板、10…ケース電極
Claims (10)
- リードに連絡するリード電極と、周辺部に凸壁部を有するケース電極と、前記リード電極と前記ケース電極との間に接合部材を介して配置される整流機能を有する半導体チップと、を有し、
前記ケース電極は、前記半導体チップが配置される位置と前記凸壁部までの間の領域に、前記半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域と、前記第一の領域より厚い第二の領域を有し、
前記第一の領域は前記半導体チップの端部から前記ケース電極に接着する前記接合部材の厚さの5倍以内の距離に前記第一の領域の端部が配置される領域を含むことを特徴とする半導体装置。 - 請求項1の半導体装置であって、前記半導体チップにおける第一の端部とそれに対応する前記第一の領域における第一の端部との間の第一の距離は、前記半導体チップにおける第二の端部と前記第二の領域に対応する前記第一の領域における第二の端部との間の第二の距離より小さく、前記第二の距離は前記ケース電極に接着する前記接合部材の厚さの5倍以内に形成されることを特徴とする半導体装置。
- 請求項1の半導体装置であって、前記半導体チップが配置される領域が前記凸壁部の高さ以下の位置に形成されることを特徴とする半導体装置。
- 請求項1の半導体装置であって、前記第一の領域の幅は、前記ケース電極に接合した前記接合部材の厚さの50%以上に形成されることを特徴とする半導体装置。
- 請求項1の半導体装置であって、前記第一の領域の幅は、前記ケース電極における前記半導体チップのもっとも前記凸壁側に近い外側端に相当する位置から前記凸壁部までの距離の90%以下に形成されることを特徴とする半導体装置。
- 請求項1の半導体装置であって、前記ケース電極の第一の領域における前記半導体チップが搭載された面と反対側面までの厚さは、前記ケース電極の半導体チップが搭載位置する領域における厚さの30%以上に形成されることを特徴とする半導体装置。
- 請求項1の半導体装置であって、前記半導体装置の外周側に設置されるための放熱板と接触する部分の前記凸壁の高さは、前記放熱板の厚さ以下に形成されることを特徴とする半導体装置。
- 請求項1の半導体装置であって、前記ケース電極の凸壁部で囲まれた領域に絶縁部材充填された領域を有し、前記絶縁部材は軟質性ゴム材からなることを特徴とする半導体装置。
- 請求項1の半導体装置であって、前記ケース電極はジルコン銅を有することを特徴とする半導体装置。
- リードに連絡するリード電極と、前記リード電極と接合層を介して配置される整流機能を有する半導体チップと、前半導体チップと接合層を介して配置されるケース電極とを有し、
前記ケース電極は、周辺部を囲む凸壁部、前記凸壁部内に形成される前記半導体チップを配置する領域、前記半導体チップが配置される領域の外側に前記半導体チップが配置される領域より薄い第一の領域、前記第一の領域と前記凸壁部との間に前記第一の領域より厚い第二の領域、とを有し、
前記半導体チップの最も前記凸壁部に近い端部と前記第一の領域との間の距離は、前記ケース電極に接合する前記接合層の厚さの5倍以内に配置されることを特徴とする半導体装置。
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