JP3855553B2 - 高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法 - Google Patents
高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法に係わり、詳しくは、方向性電磁鋼板の基になる高Si含有溶鋼を溶製するに際して、含有させるAlを狭い濃度範囲に的中させる技術である。
【0002】
【従来の技術】
変圧器や発電機の鉄心材料として使用される高Si(通常、1重量%以上)の方向性電磁鋼板は、最も重要な特性として、高磁束密度、且つ低鉄損であることを要求される。そのためには、該方向性電磁鋼板の製造時に、結晶方位をゴス方位と呼ばれる状態にする必要がある。つまり、{100}面を<001>方位に高度に集積させるのである。
【0003】
このような二次再結晶の集積を促進させるためには、一次再結晶の成長を選択的に抑制するインヒビターと呼ばれる析出分散相を、鋼中に均一且つ適正なサイズで形成させるのが一般的である。このインヒビターの一つにAlNがある。AlNを前記インヒビターとして働かせるには、溶鋼段階で鋼中のAl及びN濃度をある範囲内に調整する必要がある。その範囲をわずかでもはずれると、これらの元素は有害元素としてふるまい、前記特性が劣化することになるからである。
【0004】
現在、この高Si含有溶鋼は、転炉出鋼後の該溶鋼をRH真空脱ガス槽を用いて減圧下でAl源を投入して、Al濃度の調整を行なっている。しかしながら、Alは非常に酸化し易い元素であり、溶鋼の溶製時には酸化物としてスラグに移行してしまい、溶鋼のAlを狭い濃度範囲に調整することが非常に難しい状況にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、溶鋼が高Siであっても、Al濃度を非常に狭い範囲に調整可能な高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究し、その成果を本発明に具現化した。
【0007】
すなわち、本発明は、Si:1.5〜5.0重量%を含む高Si含有溶鋼をRH真空脱ガス槽で溶製するに際して、脱ガス処理により溶鋼中のSiO2の浮上を図る浮上処理期間の経過後に、Al源を溶鋼に添加することを特徴とする高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法である。
【0008】
また、本発明は、前記SiO2の浮上処理期間は、脱ガス処理開始から取鍋内の全溶鋼が脱ガス槽との間で1回環流するに要する時間の7倍であることを特徴とする高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法である。
【0009】
さらに、本発明は、前記Al源を、フェロアルミニウムとすることを特徴とする高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法である。
【0010】
本発明によれば、溶鋼中に存在するSiO2がほとんどスラグに移行してから、Al源を溶鋼に添加するようにしたので、SiO2に邪魔されることなく溶鋼中へのAlが溶解するようになる。すなわち、SiO2によるAl酸化を防止したAl添加ができるようになる。その結果、溶鋼のAl濃度が目標値から狭い範囲に留まるようになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなすに至った経緯を交え、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
まず、RH真空脱ガス槽を用いた従来の溶鋼中Al濃度の調整方法を説明する。
【0013】
RH真空脱ガス槽1は、図3に示すように、2本の浸漬管2を介して溶鋼3を吸い上げたり、降下させて、取鍋4内の溶鋼3を脱ガス槽1と取鍋4間で環流(循環)し、減圧した雰囲気にある溶鋼3から脱ガスする作用をする。その際、溶鋼3の脱炭も行なったり、あるいは合金源5を添加し、溶鋼3の成分調整も行なわれる。
【0014】
高Si溶鋼のAl濃度を調整するにも、従来よりこのRH真空脱ガス槽1が用いられており、転炉内及び/又は出鋼中に添加されるSi源、脱ガス処理中に添加されるAl源の順で、溶鋼3に添加されている。ところが、前記したように、高Si含有鋼の場合には、Al濃度の狭幅な調整を難しくするという問題が生じていた。つまり、方向性電磁鋼板用の溶鋼3とするには、目標Al濃度に対して、±10ppmの精度で調整するのが理想であるが、それが達成できていなかった。
【0015】
そこで、発明者は、その原因について鋭意研究を行ない、転炉内又は出鋼中に大量に添加されたSiがSiO2として溶鋼3中に存在し、これがAlを酸化する酸素源となってAlの添加歩留りを不安定にし、Al濃度の狭幅な調整を難しくするという結論を得た。そして、Al歩留りが不安定になる原因が溶鋼3中に大量に存在する珪素介在物であるなら、この介在物を浮上させた後にAlを添加すれば、Al歩留りは安定すると考え、真空脱ガス処理中におけるSiO2浮上のための浮上処理期間経過後にAl源を添加するようにしたものである。また、このSiO2浮上のための浮上処理期間は、溶鋼中に懸濁しているSiO2を分析することで求められる。つまり、脱ガス処理中の溶鋼サンプリングを行なってSi濃度が一定の値に安定した時、浮上処理が完了したとみることができ、この間をSiO2浮上のための浮上処理期間とするのである。この浮上処理期間は、使用している脱ガス装置の大きさや能力別処理溶鋼量毎に予め調査しておくことでも、設定することができる。また、SiO2浮上に要する浮上処理の時間から設定することもできる。発明者らは、このSiO2浮上に要する浮上処理の時間を調査した。
【0016】
その調査は、溶鋼3の環流量Qを表わす下記(2)式を用いて、取鍋内の溶鋼3の全量が脱ガス槽との間で一回の還流をするに要する時間Hを(1)式で求め、環流回数(環流時間の何倍の時間であるか)と溶鋼中のSi濃度との関係を求めることで行なわれた。得られた結果を図1に示す。なお、図1で、[Si%]は各時間でのSi濃度であり、[Si%]fは処理後の値である。
【0017】
SiO2介在物もSiとして分析されるため、図1より、脱ガス処理の開始から溶鋼を7回還流((7×H)分後)すれば、溶鋼3中のSi濃度に変化がなくなる。このことは、、溶鋼3中のSiO2がほぼ全量浮上し、スラグ7にトラップされたことを意味している。
【0018】
従って、発明者は、溶鋼が7回環流した状態になってからAl源を溶鋼に添加すれば、溶鋼のAl濃度は目標値から大きく変動することはないと考え、この考えを本発明としたのである。
【0019】
【実施例】
方向性電磁鋼板を製造するため、C:0.03〜0.10重量%、Si:1.5〜5.0重量%、Mn:0.04〜0.15重量%を含む高Si含有溶鋼を、図3に示したRH真空脱ガス槽1で溶製した。1回の溶製で処理した溶鋼量Wは190トンであり、予め転炉(図示せず)から出鋼した前記溶鋼190トンを取鍋4に装入し、該取鍋4をRH真空脱ガス槽1にセットした。直ちに、RH真空脱ガス槽1の内部雰囲気を40torrに減圧し、環流ガス6を流して溶鋼3を脱ガス槽1に吸引し、環流を開始した。その後は、作業者がコンピュータにより前記(1)〜(2)式に基き、環流時間Hを求め、脱ガス開始からの経過時間が7Hを超えてから、フェロアルミを820kg/minで溶鋼面上に投入した。なお、目標Al濃度は、0.010〜0.030wt%の範囲で、処理毎に変更した。
【0020】
かかる操業で得た溶鋼3の実績Al濃度と目標値と差を、その出現度数割合で図2に示す。なお、図2には、比較のため従来の方法での操業結果も示してある。図2より、本発明によれば、溶鋼3中のAl濃度が目標値に対して±10ppmで調整されたことが明らかである。また、脱ガス処理後の溶鋼中のN濃度は、100ppmであり、AlNを形成するに十分な量であった。
【0021】
上記実施例では、溶鋼として電磁鋼板用のものを使用したが、本発明はそれに限らず、高Siであれば如何なる鋼材の溶鋼にも適用できることは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、高Si含有溶鋼のAl濃度が狭い範囲で調整できるようになる。その結果、高磁気密度、低鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板が安定して製造できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶鋼の脱ガス処理期間(溶鋼全量の1回還流時間の何倍であるか)と溶鋼中Si濃度との関係を示す図である。
【図2】本発明に係るAl濃度調整方法と従来方法でのAl濃度の的中精度を示す図である。
【図3】RH真空脱ガス槽を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 RH真空脱ガス槽
2 浸漬管
3 溶鋼
4 取鍋
5 合金源
6 環流ガス
7 スラグ
Claims (3)
- Si:1.5〜5.0重量%を含む高Si含有溶鋼をRH真空脱ガス槽で溶製するに際して、
脱ガス処理により溶鋼中のSiO2の浮上を図る浮上処理期間の経過後に、Al源を溶鋼に添加することを特徴とする高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法。 - 前記SiO2の浮上処理期間は、脱ガス処理開始から取鍋内の全溶鋼が脱ガス槽との間で1回環流するに要する時間の7倍であることを特徴とする請求項1記載の高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法。
- 前記Al源を、フェロアルミニウムとすることを特徴とする請求項1又は2記載の高Si含有溶鋼のAl濃度調整方法。
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