JP3854545B2 - 函体式交通路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、交通路における函体式交通路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、交通路の交差点における渋滞を解消するために、交差点を立体化させる施工では、交通路の直上に立体交差橋梁を構築する際に、作業区間となる交通路の通行が大規模に規制され、恒常的な渋滞が発生していた。
【0003】
従来の立体交差橋梁は、以下の方法によって構築されていた。
(1)交通路の周辺若しくは交通路上を掘削してフーチングを設置するための溝を構築する掘削工程。
(2)溝の底面に鉄筋コンクリートの基礎杭を打設する杭打設工程。
(3)溝に型枠を配置し、この型枠内に鉄筋を配筋してコンクリート材を打設するコンクリート打設工程。
(4)打設したコンクリート材を養生して硬化させることで、基礎杭を備えたフーチングを形成し、このフーチングに立体交差橋梁の橋脚を立設する橋脚立設工程。
(5)フーチングに立設した立体交差橋梁の橋脚に床版を架設し、立体交差橋梁を完成させる床版架設工程。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の立体交差橋梁の構築では、以下の問題が存在していた。
(1)掘削工程及び(2)杭打設工程では、騒音及び振動が大きく発生し、広範囲に伝わるため、特に、夜間作業では近隣住民に対する影響が大きくなり、一日の作業時間が限定されることから、施工期間が長期化し、交通路の交通規制が長期化していた。
【0005】
(2)杭打設工程及び(3)コンクリート打設工程では、基礎杭、型枠及び鉄筋を施工現場に搬入して保管する必要があり、保管用地を道路の周辺若しくは道路上に設けるため、既存の交通路における車両の通行に影響を与えていた。
【0006】
(3)コンクリート打設工程及び(4)橋脚立設工程では、フーチングを形成するコンクリート材の打設及び養生を雨天時に行うことは困難であることから、天候によって作業進行が妨げられるため、施工期間が長期化していた。さらに、コンクリート材の養生においては、乾燥によってコンクリート材に発生するひび割れを防ぐため、露出面をむしろ、布、砂等で覆い、水をまいて湿潤状態を保たせる必要があるため、現場での作業が煩雑であった。また、コンクリート材の養生期間は施工作業が中断されるため、施工期間が長期化していた。
【0007】
(5)床版架設工程では、構築後の立体交差橋梁を通過する車両の安全を確保するため、床版を橋脚に確実かつ高精度に架設する必要があり、高所の作業が煩雑になるとともに、床版の架設に用いる作業機械も増えるため、施工期間が長期化し、施工費用が増加していた。
【0008】
したがって、従来の立体交差橋梁の構築では、既存の交通路における車両の通行を大幅に規制する必要があるとともに、施工期間が長期化するため、迂回路を交通路の周辺に設ける必要があり、周辺地域社会の環境及び経済活動に対する影響が大きくなることから、施工実施が困難となり、都市整備が大幅に遅れる原因となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、既存の交通路の上方に交通路を構築する場合において、短期間に車両の通行を確保するため、迂回路を設けることなく、既存の交通に与える影響を大幅に低減することができるとともに、作業が簡易化されるため、施工の安全性を高めることができる函体式交通路を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決すべく構成されるものであり、請求項1に記載の発明は、連続して設置された複数のプレキャスト部材による函体から構成され、函体の上面に交通路が設けられている函体式交通路であって、二つの交通路が交差する交差点に設置される交差用函体と、交差点に面するように一方の交通路に設置される右折用函体と、右折用函体に隣接する斜路用函体とを備え、右折用函体の内部には、一方の交通路の側道から交差点に至る交通路が設けられていることを特徴とする。
【0011】
ここで、交通路とは、道路、鉄道線路等の各種交通機関及び歩道等の通行路をいう。
さらに、プレキャスト部材とは、予め工場等で形成された部材である。
また、函体とは、カルバート等の箱状の部材であり、材料及び形状は限定されるものではないが、本発明では、函体の上面に交通路を設けるため、車両等の荷重に十分に耐えられる構造及び材料を用いる必要がある。なお、函体を分割して構成してもよく、函体を分割することで小型化及び軽量化し、施工現場に容易に搬入することが好ましい。
【0012】
この発明によれば、プレキャスト部材である複数の函体を連続して既存の交通路に設置し、函体の上面に交通路を設けることにより函体式交通路を構築するため、既存の交通路の周辺に迂回路を設けることなく、函体式交通路を短期間に構築して作業区間における車両等の通行を早期に確保することができる。
さらに、函体の内部に交通路を設けることで、函体式交通路の上面に設けた交通路の直下に、交差する車線や右折車線等の交通路を容易に構築することができるため、函体式交通路を設置した交差点における渋滞の発生を防止することができる。
また、既存の交通路に基礎を有する橋脚を立設したり、橋脚に床版を高所で架設する必要がなくなるため、施工現場における作業が簡易化され、施工の安全性を高めることができる。
また、プレキャスト部材は工場等で形成され、形成精度が高いため、函体式交通路の安定性を高めることができる。特に、函体が鉄筋コンクリートによって形成される場合は、鉄筋の配筋、コンクリート材の打設を工場等で確実に行うことができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の函体式交通路であって、函体同士は緊張材によって一体化されていることを特徴とする。
【0014】
ここで、函体同士の一体化とは、複数の函体の壁体を貫通したPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材である緊張材の両端を函体に定着させ、この緊張材に緊張力を付加する、所謂ポストテンション方式による接合である。
【0015】
この発明によれば、緊張材に緊張力を付加して函体を一体化するため、函体同士の一体化が簡易化され、短時間に函体式交通路の強度及び安定性を高めることができる。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、連続して設置された複数のプレキャスト部材による函体から構成された連続函体が所定の間隔で設置され、前記連続函体同士の間に橋梁が架設されているとともに、函体と橋梁の上面に交通路が設けられている函体式交通路であって、二つの交通路が交差する交差点に面するように一方の交通路に設置される右折用函体と、右折用函体に隣接する斜路用函体とを備え、右折用函体の内部には、一方の交通路の側道から交差点に至る交通路が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、函体式交通路と交差する交通路の幅員が大きい場合に、函体式交通路の橋梁を交差する交通路の直上に架設することで、交差する交通路上に柱や補強壁等によって補強された大きなスパンの函体を設置する必要がなくなり、函体式交通路の構築後の交差する交通路の通行に影響を与えないことから、交差する交通路の幅員が大きい場合であっても、高い強度及び安定性を有する函体式交通路を適用することができる。なお、連続函体は複数の函体を緊張材によって一体化することで形成されることが好ましい。
【0019】
また、請求項に記載の発明は、連続して設置された複数のプレキャスト部材による函体から構成され、函体の上面に交通路が設けられている函体式交通路であって、二つの交通路が交差する交差点に設置される交差用函体と、交差用函体に隣接して一方の交通路に設置される斜路用函体とを備え、交差用函体内には、函体の上面に設けた交通路に平行して階層されるとともに、交差点における他方の交通路の上方を通過する交通路が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、既存の交通路上に階層された交通路を構築する場合に、形成精度の高い函体の上面及び内部を利用して交通路を設けることにより、階層された交通路を支持する支柱等を設けることなく、強度及び安定性が十分に確保された階層状態の交通路を短期間に構築することができる。
【0021】
したがって、本発明の函体式交通路では、広範囲の施工用地を必要とすることなく、形成精度の高いプレキャスト部材である函体により、高い強度及び安定性を有する函体式交通路を安全かつ短期間に構築し、作業区間における車両等の通行を早期に確保するため、交通路の周辺に迂回路を設ける必要がなくなり、周辺地域社会の環境及び経済活動に対する影響を低減するとともに、施工期間を短縮し、施工費を削減することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略するものとする。
【0023】
本発明の実施形態に係る函体式交通路は、自動車の道路、列車の線路、若しくは歩道等の交通路に適用可能であるが、この実施形態では、自動車の道路における交差点に函体式交通路を設けることで、交差点を立体化する場合を例として説明する。
【0024】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る函体式交通路について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る函体式交通路を示した斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る函体式交通路を示した図で、(a)は函体式交通路の側面図、(b)は函体式交通路の平面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る函体式交通路を示した図で、(a)は図2(a)のA−A断面図、(b)は図2(a)のB−B断面図、(c)は図2(a)のC−C断面図である。図4は、本発明の第1実施形態に係るカルバートの他の構成を示した図で、(a)は垂直に2分割された構成を示した正面断面図、(b)はカルバートを並列に設置した構成を示した正面断面図である。
【0025】
まず、本発明の第1実施形態に係る函体式交通路の構成について説明する。
函体式交通路1は、図1,図2に示すように、一方の道路D1と他方の道路D2が直交する交差点における一方の道路D1に設置されており、交差点の中央に設置された交差用カルバート2と、交差用カルバート2の両側に設置された複数の右折用カルバート3と、右折用カルバート3に隣接する複数の斜路用カルバート4とから構成され、カルバート2,3,4同士は連続した状態で一体化されている。
ここで、カルバート2,3,4とは、地中に連続して埋設することで地下道や水路を構築する鉄筋コンクリート造の筒状函体である。また、この第1実施形態では、図3に示すように、カルバート2,3,4を水平に2分割した状態で形成し、各カルバート2,3,4の側壁21,31,41を垂直に貫通したシース管8に、PC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材7を貫通させて緊張力を付加するポストテンション方式によって一体化している。したがって、カルバート2,3,4を施工現場に搬入する際に、分割することにより小型化及び軽量化し、搬入作業を簡易化することができる。なお、カルバート2,3,4は、容易に搬入することができる程度に小型化及び軽量化されていれば分割する必要はない。また、分割する場合において、分割の構成は限定されるものではなく、例えば、図4(a)に示すように、垂直に2分割して一体化する構成や、図4(b)に示すように、2列に並列した各カルバート2,3,4を一体化する構成にしてもよく、各種の施工現場への搬入に適した構成にすることが好ましい。
【0026】
次に、各構成要素について説明する。
交差用カルバート2は、図1,図2,図3(a)に示すように、交差点の中央に設置されるカルバートであり、側壁21が一方の道路D1に対して垂直になるように、すなわち、開口部24が他方の道路D2に対して開放された状態で設置されている。この交差用カルバート2の上面には道路D3が設けられているとともに、各側壁21には車両が通行可能な進入口25が設けられている。また、頂版22及び底版23には複数のシース管6が水平に貫通している。このシース管6の本数は、カルバート2,3,4同士の一体化に必要となるPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材5の数によって定まるものであり、そのPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材5の数は、函体式交通路1に係る荷重等の施工条件によって適宜定められる。さらに、交差用カルバート2の底版23の上面には道路D4が設けられており、この道路D4は道路D1,D2と同一平面になっている。
【0027】
右折用カルバート3は、図1,図2,図3(b)に示すように、交差用カルバート2の両側に設置されるカルバートであり、側壁31が一方の道路D1と平行になるように、すなわち、右折用カルバート3の開口部34と交差用カルバート2の進入口25が連通するように設置されている。この右折用カルバート3の上面には道路D3が設けられているとともに、右折用カルバート3の一方の側壁31には、車両が通行可能な進入口35が設けられている。ここで、右折用カルバート3の中央部には、補強壁36が設けられており、一方の側壁31に進入口35を設けたことによる頂版32の強度低下を防止している。なお、右折用カルバート3の強度が十分にある場合は、補強壁36を設けなくてもよい。さらに、進入口35の上方にはシース管6が水平に貫通している壁体37が形成されており、この壁体37は道路D3の高欄であるとともに、シース管6にPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材5を貫通させて緊張力を付加することにより、進入口35の上方の強度が高まるため、進入口35を設けたことによる函体式交通路1の強度低下を防止している。また、頂版32及び底版33には、交差用カルバート2のシース管6と連通する位置に複数のシース管6が水平に貫通している。さらに、右折用カルバート2の底版33の上面には道路D4が設けられており、この道路D4は道路D1,D2と同一平面になっている。
【0028】
斜路用カルバート4は、図1,図2,図3(c)に示すように、所定の高さに形成された複数の斜路用カルバート4が連続して設置されることにより、函体式交通路1の道路D3が一方の道路D1と接続するための斜路を形成するカルバートであり、側壁41が一方の道路D1と平行になるように設置されている。この斜路用カルバート4の上面には道路D3が設けられているとともに、頂版42及び底版43には、右折用カルバート3のシース管6と連通する位置に複数のシース管6が水平に貫通している。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態に係る函体式交通路1を設置した交差点における車両の流れについて説明する。
函体式交通路1は、図1,図2に示すように、一方の道路D1と他方の道路D2が直交する交差点における一方の道路D1に設置されており、交差用カルバート2が交差点の中央に設置されている。なお、函体式交通路1の両側には側道S1,S2が設けられている。
まず、一方の道路D1を直進する車両は、一方の道路D1から函体式交通路1の道路D3に進入し、交差点の上方を通過して一方の道路D1に合流する。
次に、一方の道路D1から他方の道路D2に右折する車両は、函体式交通路1の側道S1に進入し、右折用カルバート3の側壁31に設けられた進入口35から右折用カルバート3内の道路D4に進入する。この右折用カルバート3内の道路D4は、交差用カルバート2の進入口25を通じて交差用カルバート2内の道路D4と連通しているため、車両は交差用カルバート2内の道路D4で右折して他方の道路D2に合流する
次に、一方の道路D1から他方の道路D2に左折する車両は、一方の道路D1から函体式交通路1の側道S1に進入し、側道S1を左折して他方の道路D2に合流する。
【0030】
次に、他方の道路D2を直進する車両は、他方の道路D2から交差用カルバート2内の道路D4を通過して他方の道路D2に合流する。
また、他方の道路D2から一方の道路D1に右折する車両は、交差用カルバート内の道路D4で右折して側道S2に進入し、側道S2から一方の道路D1に合流する。
さらに、他方の道路D2から一方の道路D1に左折する車両は、他方の道路D2から左折して側道S2に進入し、側道S2から一方の道路D1に合流する。
【0031】
次に、本発明の第1実施形態に係る函体式交通路1の構築方法について説明する。
まず、一方の交通路D1にカルバート2,3,4の底版23,33,43の厚さだけ掘削した掘削溝を設ける。この掘削作業は、夜間等の交通が停止する時間帯に道路を閉鎖又は規制して行われるが、掘削量が少ないことから短期間で施工が完了するため、既存の交通に対する影響が軽減されている。
【0032】
次に、カルバート2,3,4を分割した状態でトラックやクレーン等の輸送手段により一方の道路D1に設けた掘削溝内に搬入する。このカルバート2,3,4を所定の位置に連続して設置し、カルバート2,3,4の両側に側道S1,S2を設ける。次に、各カルバート2,3,4の側壁21,31,41に設けられたシース管8に貫通させたPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材7の両端を各カルバート2,3,4の頂版22,32,42及び底版23,33,43に定着具7’によって定着させ、このPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材7をジャッキ等で緊張して、PC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材7に緊張力を付加し、ポストテンション方式により分割した状態のカルバート2,3,4を各々一体化する。
【0033】
次に、カルバート2,3,4同士が接する接合面にエポキシ樹脂等の接合剤を塗布してカルバート2,3,4同士を定着させる。
また、カルバート2,3,4の頂版22,32,42及び底版23,33,43に設けられたシース管6にPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材5を貫通させ、このPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材5の両端を、連続して設置したカルバート2,3,4の両端に定着具で定着する。このPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材5をジャッキ等で緊張して、PC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材5に緊張力を付加し、ポストテンション方式により、カルバート2,3,4同士を確実に一体化する。
ここで、カルバート2,3,4同士を定着する際に、カルバート2,3,4の間に目地を設け、モルタル等の充填材を目地に充填して定着させてもよい。
【0034】
次に、カルバート2,3,4の上面をアスファルト等によって舗装して道路D3を構築し、同時に、交差用カルバート2及び右折カルバート3の底版23,33の上面をアスファルト等によって舗装して道路D4を構築する。なお、舗装作業は、工場等でカルバート2,3,4を形成する際に舗装してもよい。
【0035】
最後に、函体式交通路1の道路D3の両側に高欄9を設けて函体式交通路1を完成する。
【0036】
したがって、本発明の第1実施形態に係る函体式交通路1では、施工現場で基礎を設けて橋脚を立設することなく、カルバート2,3,4を連続して設置することで函体式交通路1を容易に構築し、短期間に車両の通行を確保するため、迂回路を設ける必要がなくなり、既存の交通に与える影響を大幅に低減することができるとともに、施工作業を簡易化することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る函体式交通路1について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る函体式交通路を示した図で、(a)は函体式交通路の側面図、(b)はD−D断面図である。
【0038】
本発明の第2実施形態に係る函体式交通路1は、第1実施形態と略同様の構成であり、図5に示すように、交差用カルバートを用いることなく、右折用カルバート3の間に橋梁2Aを架設し、この橋梁2Aの上面を舗装することで函体式交通路1を構築している。なお、橋梁2Aは鋼製やプレストレストコンクリート製など、その材料及び構成は限定されるものではないが、この第2実施形態では、プレストレストコンクリート製の橋梁2Aを用いている。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係る函体式交通路1の構築方法について説明する。なお、第1実施形態と同様の工程に関しては、その説明を省略する。
まず、一方の道路D1に掘削溝を設け、この掘削溝に分割した状態のカルバート3,4を設置し、側道S1,S2を設ける。このとき、一方の道路D1と他方の道路D2が交差する交差部にはカルバートを設置しないことから、掘削溝を設ける必要がないため、他方の道路D2の交通を停止する必要がない。
次に、分割した状態のカルバート3,4を各々一体化し、隣接するカルバート3,4同士を一体化した後に、橋梁2Aをクレーン等の搬送手段によって右折用カルバート3,3の間に架設する。なお、橋梁2Aの架設方法は限定されるものではなく、施工現場に応じて適宜変更されるものである。さらに、右折カルバート3を工場等で形成する際に、橋梁2Aの受け部38を予め設けておくことにより、橋梁2Aを高精度かつ短期間に架設することができる。
最後に、橋梁2A及びカルバート3,4の上面をアスファルト等によって舗装して道路D3を構築し、高欄9を設けて函体式交通路1を完成する。
【0040】
したがって、本発明の第2実施形態に係る函体式交通路1では、他方の道路D2の幅員が大きい場合であっても、他方の交通路D2上に柱や補強壁等によって補強された大きなスパンの交差用カルバートを設置する必要がない。
【0041】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る函体式交通路1について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る函体式交通路を示した斜視図である。図7は、本発明の第3実施形態に係る函体式交通路を示した図で、図6のE−E断面図、図6のF−F断面図、図6のG−G断面図である。
【0042】
本発明の第3実施形態に係る函体式交通路1は、第1実施形態及び第2実施形態と略同様の構成であり、図6,図7に示すように、交差用カルバート2B内に、函体式交通路1の上面に設けられた道路D3に平行して階層された道路D5が設けられていることが異なっている。さらに、交差用カルバート2Bと、その両側に設置された斜路用カルバート4との間には、道路D6,D8の上方を交差するようにして橋梁2Aが架設されている。なお、各カルバートの構成やカルバート同士の一体化など、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成に関しては、その説明を省略する。
【0043】
第3実施形態に係る函体式交通路1では、函体式交通路1の上面に設けられた道路D3が、並列に配置された道路D6,D7,D8の上方を通過して交差している。さらに、交差用カルバート2B内に設けられた道路D5は、中央の道路D7の上方を通過して道路6と道路D8に接続するように構成されている。すなわち、道路D6を走行する車両は道路D5に進入することにより、道路D7の路上を通過することなく、道路D8に合流することができる。なお、同様にして道路D8から道路D6に合流することもできる。
【0044】
したがって、本発明の第3実施形態に係る函体式交通路1では、形成精度の高い交差用カルバート2Bの上面と内部に道路D3,D5を設けることにより、強度及び安定性が十分に確保された階層状態の道路D3,D5を短期間に構築することができるため、本発明の函体式交通路1の適用範囲を広げることができる。
【0045】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る函体式交通路1について説明する。
図8は、本発明の第4実施形態に係るカルバートの他の構成を示した図で、(a)は基礎杭を設けた構成の正面断面図、(b)はH−H断面図である。
【0046】
本発明の第4実施形態に係る函体式交通路1は、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態と略同様の構成であり、図8に示すように、カルバート2,2B,3,4の底版23,33,43に基礎杭10が嵌合する垂直孔11が設けられていることのみが異なっている。すなわち、工場等でカルバート2,2B,3,4を形成する際に、底版23,33,43を貫通する垂直孔11を形成し、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態と同様に函体式交通路1を構築した後に、垂直孔11を貫通して基礎杭10を地中に打設するものである。
【0047】
したがって、本発明の第4実施形態に係る函体式交通路1では、函体式交通路1を構築した後に、カルバート2,2B,3,4に基礎杭10を設けることができるため、函体式交通路1によって少なくとも道路D3における車両の通行を確保した後に、函体式交通路1の上面に設けられた道路D3の直下で基礎杭10を設けることができる。
【0048】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0049】
【発明の効果】
したがって、本発明の函体式交通路では、広範囲の施工用地を必要とすることなく、形成精度の高いプレキャスト部材である函体を交通路上に連続して設置することにより、高い強度及び安定性を有する函体式交通路を交通路上に容易かつ短期間に構築することができる。これにより、作業区間における車両の通行を早期に確保することができるため、交通路の周辺に迂回路を設けることなく、周辺地域社会の環境及び経済活動に対する影響を低減するとともに、施工期間を短縮し、施工費を削減することができる。
また、プレキャスト部材である函体を交通路上に連続して設置することにより、函体式交通路を構築するため、既存の交通路に基礎を有する橋脚を立設し、この橋脚に高所で床版を架設する必要がなくなり、施工現場における作業が簡易化され、施工の安全性を高めることができる。
さらに、緊張材に緊張力を付加することにより、函体同士を確実に一体化するため、函体式交通路の強度及び安定性を容易かつ短時間に高めることができる。
また、函体を連続して設置した連続函体の間に橋梁を架設する構成では、交差する交通路の幅員が大きい場合に、函体式交通路と交差する交通路の直上に橋梁を架設するため、交差する交通路上に大きなスパンの函体を設置する必要がなくなる。これにより、函体式交通路の構築後において、交差した交通路の通行に影響を与えないため、交差する交通路の幅員が大きい場合であっても、高い強度及び安定性を有する函体式交通路を適用することができる。
また、函体式交通路に階層された交通路を構築する構成では、形成精度の高い函体の上面及び内部に交通路を設けることにより、階層された交通路を支持する支柱等を設けることなく、強度及び安定性が十分に確保された階層状態の交通路を短期間に構築することができる。
また、基礎杭を設ける構成では、函体式交通路の構築後に、函体の底版上から基礎杭を設けることができるため、既存の交通に影響を与えることなく、函体式交通路の安定性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る函体式交通路を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る函体式交通路を示した図で、(a)は函体式交通路の側面図、(b)は函体式交通路の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る函体式交通路を示した図で、(a)は図2(a)のA−A断面図、(b)は図2(a)のB−B断面図、(c)は図2(a)のC−C断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るカルバートの他の構成を示した図で、(a)は垂直に2分割された構成を示した正面断面図、(b)はカルバートを並列に設置した構成を示した正面断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る函体式交通路を示した図で、(a)は函体式交通路の側面図、(b)はD−D断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る函体式交通路を示した斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る函体式交通路を示した図で、図6のE−E断面図、図6のF−F断面図、図6のG−G断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るカルバートの他の構成を示した図で、(a)は基礎杭を設けた構成の正面断面図、(b)はH−H断面図である。
【符号の説明】
1・・・・函体式交通路
2・・・・交差用カルバート(第1実施形態)
2A・・・・橋梁(第2実施形態)
2B・・・・交差用カルバート(第3実施形態)
3・・・・右折用カルバート
4・・・・斜路用カルバート
5・・・・PC鋼材
6・・・・シース管
7・・・・PC鋼材
8・・・・シース管
10・・・・基礎杭
11・・・・垂直孔
21・・・・側壁(交差用カルバート)
24・・・・開口部(交差用カルバート)
25・・・・進入口(交差用カルバート)
31・・・・側壁(右折用カルバート)
34・・・・開口部(右折用カルバート)
35・・・・進入口(右折用カルバート)
D1・・・・一方の道路
D2・・・・他方の道路
D3・・・・道路(函体式交通路)
D4・・・・道路(函体式交通路)
D5・・・・道路(函体式交通路)
S1・・・・側道
S2・・・・側道

Claims (4)

  1. 連続して設置された複数のプレキャスト部材による函体から構成され、前記函体の上面に交通路が設けられている函体式交通路であって、
    二つの交通路が交差する交差点に設置される交差用函体と、前記交差点に面するように一方の交通路に設置される右折用函体と、前記右折用函体に隣接する斜路用函体と、を備え、
    前記右折用函体の内部には、前記一方の交通路の側道から前記交差点に至る交通路が設けられていることを特徴とする函体式交通路。
  2. 前記函体同士は緊張材によって一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の函体式交通路。
  3. 連続して設置された複数のプレキャスト部材による函体から構成された連続函体が所定の間隔で設置され、前記連続函体同士の間に橋梁が架設されているとともに、前記函体と前記橋梁の上面に交通路が設けられている函体式交通路であって、
    二つの交通路が交差する交差点に面するように一方の交通路に設置される右折用函体と、前記右折用函体に隣接する斜路用函体と、を備え、
    前記右折用函体の内部には、前記一方の交通路の側道から前記交差点に至る交通路が設けられていることを特徴とする函体式交通路。
  4. 連続して設置された複数のプレキャスト部材による函体から構成され、前記函体の上面に交通路が設けられている函体式交通路であって、
    二つの交通路が交差する交差点に設置される交差用函体と、前記交差用函体に隣接して一方の交通路に設置される斜路用函体と、を備え、
    前記交差用函体内には、前記函体の上面に設けられた交通路に平行して階層されるとともに、前記交差点における他方の交通路の上方を通過する交通路が設けられていることを特徴とする函体式交通路。
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