JP3853852B2 - フィルター付き蛍光体層の製造方法 - Google Patents

フィルター付き蛍光体層の製造方法 Download PDF

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  • Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は2層構造を有するフィルター付き蛍光体層の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
陰極線管やカラー受像機のフェースプレート内面には赤、青、緑色をしたドット状やストライプ状などの蛍光体層が形成されている。この蛍光体層に電子ビームが衝突することにより蛍光体層が発光して画像表示がなされる。コントラストや色純度などの画像表示特性を向上させるために、従来より蛍光体層の改善がなされている。たとえば、フェースプレートと蛍光体層との間に蛍光体層の発光色と同色の体色を持つ顔料層を設けるフィルター付き蛍光体層がある(特開昭 64-7457号公報)。このフィルター付き蛍光体層は、入射した外光のうち赤色顔料は緑や青成分の光を、青色顔料は緑や赤成分の光を、緑色顔料は青や赤成分の光を、それぞれ吸収するためコントラストや色純度が向上する。
【0003】
しかし、このフィルター付き蛍光体層の形成方法は各層ごとに露光・現像を繰り返す極めて複雑な工程によらねばならなかった。たとえば、顔料層をスラリー法を用いて形成し露光・現像した後、蛍光体層をさらにスラリー法を用いて形成し露光・現像するなど製造工程数が数倍になるという問題があった。
このため、顔料層に蛍光体層を重ね塗りして1回の露光でパターニングする露光1回方式が提案されている(特開昭 52-77578 号公報、特開平 5-266795 号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、重ね塗り後、1回の露光でパターニングする方法は、2層目を塗布するときに1層目が溶出する現象が起きやすくなる。これを防ぐために、1層目を完全に硬化させると2層目形成後、現像時に1層目が溶解除去しにくくなる。結果として蛍光体と同一パターンが形成されにくくなる。このように、重ね塗り1回露光でパターニングする方法は、溶出特性と現像特性という2つの相反する特性の両立が必要であるため、製造作業幅が狭く、均一な品質のフィルター付き蛍光体層が得られないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、重ね塗り1回露光でパターニングする方法においても、簡易で作業幅を充分広くとることのできるフィルター付き蛍光体層の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明のフィルター付き蛍光体層の製造方法は、基板に顔料層を形成する工程と、顔料層の上に蛍光体層を形成する工程と、顔料層および蛍光体層を同時に露光・現像する工程とを有するフィルター付き蛍光体層の製造方法において、基板に顔料層を形成する工程は、顔料粒子および高分子電解質の塩を含む顔料分散液を前記基板に塗布乾燥する工程であり、蛍光体層を形成する工程は高分子電解質と塩を形成する物質を含有する溶液を用いる工程であることを特徴とする。また、顔料分散液および高分子電解質と塩を形成する物質を含有する溶液は水を主体とする溶媒を用いることを特徴とする。
【0007】
本発明に係わる顔料粒子および高分子電解質の塩を含む顔料分散液は、基板上に塗布乾燥させると高分子電解質塩を形成する基の一部が解離し、顔料層に含まれる高分子電解質が蛍光体層を形成する工程で使用される溶媒に不溶性になる。一方、蛍光体層を形成する工程で使用される溶媒の中に塩の一部が解離した高分子電解質と再び塩を形成する物質を含有させて蛍光体層を形成すると、顔料層に含まれる高分子電解質が可溶化され現像時に顔料層と蛍光体層とが同時に溶解除去できる。
【0008】
本発明は、このような知見に基づくもので、フィルター付き蛍光体層の製造方法において、第1層目の膜が第2層目の塗布時に溶媒によって溶かされないこと(溶出特性)、ついで現像時に露光部以外はとけて蛍光体と同一パターンが形成されること(現像特性)の2つの相反する特性の両立を図ったものである。
【0009】
以下、それぞれの内容について説明する。まず、第1層目の膜を形成する顔料分散液について説明する。本発明にかかわる高分子電解質の塩は、高分子の構造単位が解離基を有している高分子化合物の塩であり、顔料を分散させる分散剤でもある。具体的には、アクリル酸系、アクリル酸−スチレン系などのアクリル酸共重合物、高分子ポリカルボン酸類、スチレンーポリカルボン酸共重合物、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート等のナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等を挙げることができる。より具体的にはアクリル酸系として、ディスペックN−40(ナトリウム塩)(アライド・コロイド社製)、ディスペックA−40(アンモニウム塩)(アライド・コロイド社製)、アクリル酸共重合物として、ディスペックG−40(ナトリウム塩)(アライド・コロイド社製)、ディスペックGA−40(アンモニウム塩)(アライド・コロイド社製)、高分子ポリカルボン酸類としてポイズ520(ナトリウム塩)(花王社製)、ディスコートN−14(アンモニウム塩)(第一工業製薬社製)、スチレンーポリカルボン酸共重合物としてはオキシラックSH−101(日本触媒化学社製)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩としてはハイテノール08(第一工業製薬社製)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩としてはハイテノールN−08(第一工業製薬社製)等を例示することができる。これらは単独でも混合物としても使用することができる。
【0010】
これらの中において、塗布乾燥方法によって顔料層を形成する場合には、揮発しやすいアンモニウム塩が好ましく、さらにアクリル酸系またはアクリル酸系共重合物のアンモニウム塩が溶出特性と現像特性との両立を図る上でとくに好ましい。
【0011】
本発明に係わる顔料は、無機系および有機系のいずれの顔料も使用することができる。とくにフィルター付き蛍光体層のフィルター層中に均一に分散でき、光の散乱を起こすことなくフィルター層が十分な透明性を有することのできる顔料であれば好ましい。
【0012】
具体的な例として以下の顔料を例示することができる。
赤の顔料として、酸化第二鉄系である商品名シコトランスレッド(Sicotrans Red)L−2817(粒子径、 0.01 μm 〜 0.02 μm 、BASF社製)、アンスラキノン系である商品名クロモファータルレッド(Cromophtal Red)A2B(粒子径、 0.01 μm 、チバガイギー社製)、青の顔料として、アルミン酸コバルト(Al2 3 −CoO)系である商品名コバルトブルーX(粒子径、 0.01 μm 〜 0.02 μm 、東洋顔料社製)、群青系である商品名群青No.8000(粒子径、0.3 μm 、第一化成社製)、フタロシアニンブルー系である商品名リオノールブルー(Lionol Blue)FGー7330(粒子径、 0.01 μm 、東洋インキ社製)、緑の顔料として、TiO2 −NiO−CoO−ZnO系である商品名タイピロキサイドTM−グリーン#3320(粒子径、 0.01 μm 〜 0.02 μm 、大日精化社製)、CoO−Al2 3 −Cr2 3 −TiO2 系である商品名タイピロキサイドTM−グリーン#3340(粒子径、 0.01 μm 〜 0.02 μm 、大日精化社製)、CoO−Al2 3 −Cr2 3 系である商品名タイピロキサイドTM−グリーン#3420(粒子径、 0.01 μm 〜 0.02 μm 、大日精化社製)、Cr2 3 系である商品名ND−801(粒子径、0.35μm 、日本電工社製)、塩素化フタロシアニングリーン系である商品名ファーストゲングリーンS(粒子径、 0.01 μm 、大日本インキ社製)、臭素化フタロシアニングリーン系である商品名ファーストゲングリーン2YK(粒子径、 0.01 μm 、大日本インキ社製)を例示することができる。
【0013】
上述の顔料の平均粒子径は、第2層目の蛍光体分散液との関係において考慮されなければならない。たとえば、本発明者の実験結果によると、蛍光体の平均粒子径が 5〜10μm 程度のものを使用する場合、顔料の平均粒子径は 1μm 以下でなければ、顔料粒子の隙間に蛍光体が入り込んでしまうため、2層構造が形成できなる。また、顔料の平均粒子径は、第1層目の透明性を維持するために 1μm 以下が好ましい。より好ましくは 0.1μm 以下である。
【0014】
高分子電解質の塩からなる分散剤に分散させる顔料濃度は、0.1 重量%〜 50 重量%、好ましくは 1重量%〜 50 重量%の範囲である。顔料濃度が0.1 重量%未満であると、第1層目の着色が認められなくなる。 1重量%をこえると、より明瞭に着色が認められる。また、 50 重量%をこえると分散液の粘度が急激に増加してしまうため均一な膜が塗布できなくなる。
【0015】
本発明において、高分子電解質濃度は顔料濃度との関係で重要である。顔料濃度(重量%)に対する高分子電解質濃度(重量%)の比率(=高分子電解質濃度/顔料濃度)は、0.005 〜 1、好ましくは 0.01 〜0.5 の範囲である。この比率が 1をこえると、第2層目の蛍光体分散液の乾燥が終了する前に第1層目が可溶化されてしまうため、第1層目と第2層目が混合してしまい、2層構造が形成できなくなる。また、比率が0.005 未満であると、顔料粒子間の結着力が強くなり、剥離性が悪くなる。
【0016】
上述の高分子電解質の塩および顔料とを純水とともに混合撹拌することにより第1層目を形成する分散液が得られる。なお、純水中に 5重量%以下であれば、水溶性の有機溶媒、たとえばアルコールなどを含ませることができる。
【0017】
さらに、剥離性を改善するために、高分子電解質の塩とともにノニオン系分散剤を併用することができる。ノニオン系分散剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレン誘導体などを挙げることができる。具体的には、ノイゲンEA−140、ノイゲンEA−170(ともに第一工業製薬社製)、エマルゲン106、エマルゲンA−500、レオドールTW−L120(ともに花王社製)を例示することができる。剥離性を改善するために好ましい配合比率は、ノニオン/アニオンNH4 塩が 1/30 〜1/300 である。
【0018】
つぎに、第2層目の膜を形成する蛍光体分散液について説明する。
この蛍光体分散液は顔料層の上に所定のパターンを有する蛍光体を形成するため、レジストを含有してなる蛍光体の懸濁液である。
【0019】
本発明に係わる蛍光体は陰極線管やカラー受像機に従来使用されてきた赤、青、緑色の蛍光体を使用することができる。
たとえば、赤色蛍光体として、Y2 2 S:Eu、Y2 3 :Eu、(Zn,Cd)S:Ag、Zn3 (PO4 2 :Mn等、青色蛍光体として、ZnS:Ag,Cl、ZnS:Ag,Al、ZnS:Ag等、緑色蛍光体として、ZnS:Cu,Al、ZnS:Au,Al、ZnS:Cu,Au,Al、Zn2 SiO4 :Mn,As等を例示することができる。
【0020】
レジスト剤としてはポリビニルアルコールおよび重クロム酸アンモニウム(ADC)、重クロム酸ナトリウム(SDC)、ジアゾニウム等の架橋剤とポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カゼイン等の組合わせまたはスチバゾル系レジスト等を使用することができる。
【0021】
本発明にあっては、とくに塩の一部が解離した高分子電解質と再び塩を形成することにより、水等に不溶性となった高分子電解質を可溶化する物質を蛍光体分散液に配合する。この物質は、光照射によりポリビニルアルコールなどを架橋させるレジストの役割も果たしている場合もある。このような物質としては、LiCl、LiNO3 、NaCl、Na2 CO3 、Na2 2 3 、NaOH、重クロム酸ナトリウム(SDC)、重クロム酸アンモニウム(ADC)などのアルカリ金属の各種塩、金属の水酸化物、アンモニウム塩等がある。これらは単独でも混合しても使用することができる。
【0022】
本発明にあっては、アクリル酸系またはアクリル酸系共重合物のアンモニウム塩を分散剤として使用する場合において、剥離性を劣化させずに2層膜を形成できる好ましい物質としてはアルカリ金属塩であり、イオン半径の小さいLiまたはNaイオンを含む化合物が好ましく、とくに重クロム酸ナトリウム(SDC)が好ましい。
【0023】
上述のレジスト剤および蛍光体とを純水とともに混合撹拌することにより第2層目を形成する蛍光体分散液が得られる。なお、蛍光体分散液の配合割合としては、蛍光体が 1〜 40 重量%、レジスト剤を構成する高分子物質が 0.1〜 10 重量%、アルカリ金属塩が 0.1〜 40 重量%の範囲であることが溶出特性と現像特性とを両立させる上で好ましい。
【0024】
さいごに、露光・現像する工程における現像液について説明する。
現像液として、顔料分散液および蛍光体分散液が水系溶媒である場合には温水またはアルカリ水溶液を好ましく使用することができ、好ましくは 35 ℃以上の温水、またはPH 8以上のアルカリ水溶液を使用することである。
【0025】
本発明の製造方法は、たとえばカラーブラウン管パネルにフィルター付き蛍光体層を形成する場合、以下のような手順でなされる。
まず、顔料分散液をフェースプレート内面に塗布し乾燥する。塗布方法としては、フェースプレート内面を上向き、横向き、下向き等の所定の向きに固定して塗布する。顔料分散液の固形分、粘度、塗りむらなどの関係で均一な塗布ができるように選択することができる。また、塗布方法はスピンコート法、ローラ法、浸漬法などを用いることができる。均一で所定の膜厚を得るために、スピンコート法がとくに好ましい。乾燥方法としては、水分を揮発させるとともに、高分子電解質塩中の塩の一部を解離させることができれば、とくに制限なく種々の方法を採用することができる。たとえばヒーターによる乾燥、熱風による乾燥、室温における長時間の乾燥により第1層目を形成することができる。なお、第1層目の形成前にフェースプレート内面にパターニングされた光吸収層を形成しておくこともできる。
つぎに、第1層目と同様の方法で蛍光体分散液を塗布して第1層目に重ねて第2層目を形成する。
最後にシャドウマスクを介して所望のパターンに、たとえば高圧水銀灯などを利用して、露光する。その後、現像液を霧状にしてスプレーすることにより現像がなされる。以上の操作を各色ごとに行う。
【0026】
【作用】
基板上に顔料層を形成するに際して、高分子電解質の塩を分散剤に使用して塗布乾燥を行うと、高分子電解質塩中の塩の一部が解離することにより、顔料層が蛍光体層を形成するための溶媒に溶解しなくなる。たとえばポリアクリル酸アンモニウム塩にあってはポリアクリル酸が形成され水に不溶性となる。そのため、顔料層と蛍光体層とが混合することなく、良好な2層膜を形成することができる。
【0027】
一方、蛍光体層を形成する液には高分子電解質と再び塩を形成するLiやNaイオンを含有させておくと、このイオンが蛍光体層形成時に第1層膜中に拡散し、高分子電解質の塩と置換し溶媒に可溶性となるものと考えられる。たとえば、上述のポリアクリル酸にあってはポリアクリル酸ナトリウム塩になって、水に可溶性となる。
【0028】
したがって、その後現像することにより、可溶性となった第1層は第2層とともにパターニングされる。すなわちネガレジストの場合、未露光部は第2層と共に現像され、露光部は第2層でカバーされそのまま基板に残る。この方法により、低コストで溶出がなく現像性良好な2層膜パターンが安定して得られる。
【0029】
【実施例】
実施例1
カラーブラウン管フェースプレート内面にフィルター付き蛍光体層のうち、青色蛍光体層を形成した。
顔料分散液は、アルミン酸コバルト(商品名コバルトブルーX(粒子径、 0.01 μm 〜 0.02 μm 、東洋顔料社製))を 30 重量%、ポリアクリル酸共重合体のアンモニウム塩(ディスペックGA−40(アライド・コロイド社製))を 0.3重量%、それぞれ純水中に分散させて作製した。本実施例における高分子電解質濃度/顔料濃度比は 0.01 である。
【0030】
蛍光体分散液は、青色蛍光体(ZnS:Ag,Cl)を 40g、重クロム酸ナトリウム(SDC)を 0.16g、ポリビニルアルコール(平均分子量 2400 、ケン化度 88 %)を 1.4g 、純水を 54g秤量して混合させることにより蛍光体の懸濁液を作製した。
【0031】
カラーブラウン管パネルを温度 30 ℃に保持してフェースプレート内面に顔料分散液を塗布した。ついで、パネルを 100〜150 rpm で回転させ過剰の顔料分散液を振り切った。ヒーター温度 120℃にて 3〜4 分間乾燥して青色顔料層を形成した。
【0032】
青色顔料層が形成されたフェースプレート内面に蛍光体分散液を上述と同じ方法で塗布し、 150〜230 rpm で回転させ過剰の蛍光体分散液を振り切った。ヒーター温度 120℃にて 2〜3 分間乾燥して青色顔料層の上に青色蛍光体層を形成した。
【0033】
シャドウマスクを介して、高圧水銀灯を用いて所定のパターンに露光した。霧状にした現像液を現像液圧 2〜10 kg/cm2 でスプレーすることにより現像して所定のパターンを有する青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。なお、現像液は 40 ℃の純水を使用した。
【0034】
得られたフィルター付き蛍光体層を以下の特性により評価した。
溶出特性;溶出とは、1層目の膜が2層目の液によって溶解し、1層目の成分が2層目の膜に、2層目の成分が1層目の膜に混じりあってしまうことをいう。溶出特性の評価は、1層目の顔料層の反射の吸収ピークの吸収率が、溶出していない場合に比較してどの程度劣化しているかで行った。全く劣化していない場合を○、溶出していない場合の吸収率に比較して劣化しているものの 80 %以上残存しているものを△、それ以下を×とした。
【0035】
付着力特性;付着力とは、現像後、露光した部分に2層膜が残っている特性を示す。露光した部分の面積が 100%残っている場合を○、80%をこえ 100%未満の場合を△、80%以下を×とした。
【0036】
剥離特性;剥離性とは、非露光部が現像後どの程度落ちているかを示す。非露光部分の面積が 100%落ちている場合を○、80%をこえ 100%未満の場合を△、80%以下を×とした。評価結果を表2に示す。
【0037】
実施例2から実施例7
顔料分散液における配合比率を変える以外は実施例1と同一の材料、方法で青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。顔料分散液における配合比率を表1に示す。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0038】
比較例1および比較例2
顔料分散液における高分子電解質濃度/顔料濃度の配合比率が0.0033(比較例1)、1.5 (比較例2)である以外は実施例1と同一の材料、方法で青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。顔料分散液における配合比率を表1に示す。得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0039】
比較例3および比較例4
顔料分散液は、アルミン酸コバルト(商品名コバルトブルーX(粒子径、 0.01 μm 〜 0.02 μm 、東洋顔料社製))を 30 重量%、ポリアクリル酸共重合体のナトリウム塩(ディスペックG−40(アライド・コロイド社製))を 1.5重量%(比較例3)、15重量%(比較例4)、それぞれ純水中に分散させて作製した。実施例1と同一の蛍光体分散液を用いて実施例1と同一の方法で青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。顔料分散液における配合比率を表1に示す。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0040】
比較例5ないし比較例13
青色蛍光体分散液において、重クロム酸ナトリウム(SDC)の代わりに重クロム酸アンモニウム(ADC)を使用する以外は実施例1から実施例7、比較例1および比較例2と同一の材料、方法でそれぞれ青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。評価結果を顔料分散液組成とともに表3に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003853852
【表2】
Figure 0003853852
【表3】
Figure 0003853852
表2に示すように、顔料分散液にポリアクリル酸共重合体のナトリウム塩を用いた場合(比較例3および比較例4)、溶出特性が不良となる。塗布乾燥方法によって顔料層を形成する場合には、不揮発性、不燃焼成の塩を単独で使用することは妥当でない。
【0042】
分散剤/顔料の比率が 0.0033 である比較例1は、剥離特性が悪く良好なパターニングができなかった。これは高分子電解質の量が少ないため、蛍光体分散液に含まれるアルカリ金属イオンにより高分子電解質が可溶化しても顔料粒子間の結着力が強くなり現像液で溶解しなくなったものと考えられる。また、分散剤/顔料の比率が 1.50 である比較例2は、溶出特性が悪かった。これは高分子電解質の量が多すぎたために、蛍光体分散液の乾燥が終了する前に顔料層が可溶化されたものと考えられる。
【0043】
表1および表2に示すように、分散剤/顔料の比率は 0.005から1.00の広い範囲にわたって溶出特性に優れた2層膜パターンが安定して得られた。
【0044】
実施例8
顔料分散液において、アルミン酸コバルトの代わりに群青を用いる以外は実施例1と同一の材料、方法で青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価したところ、実施例1と同一の結果が得られた。また、実施例2から実施例7と同様に分散剤の量を変化させて青色フィルター付き青色蛍光体層を作製し評価したところ、表2に示す結果と同一の結果が得られた。
【0045】
実施例9
青色蛍光体として、ZnS:Ag,Alを使用する以外は実施例1と同一の材料、方法で青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価したところ、実施例1と同一の結果が得られた。また、実施例2から実施例7と同様に分散剤の量を変化させて青色フィルター付き青色蛍光体層を作製し評価したところ、表2に示す結果と同一の結果が得られた。
【0046】
実施例10から実施例51
表4に示す顔料分散液および表5に示す蛍光体分散液を準備して、表6に示す組み合わせとする以外は実施例1と同一の方法で青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。ただし実施例10から実施例28にあっては現像液の温度を 25 ℃、PHを 7.0に設定し、実施例29から実施例51にあっては現像液の温度を 40 ℃、PHを 9.0に設定した。得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。評価結果を表6および表7に示す。表6は現像液の温度を 25 ℃、PHを 7.0に設定したときの評価結果であり、表7は現像液の温度を 40 ℃、PHを 9.0に設定したときの評価結果である。
【0047】
比較例14から実施例31
表4に示す顔料分散液および表5に示す蛍光体分散液を準備して、表6に示す組み合わせとする以外は実施例1と同一の方法で青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。ただし比較例14から比較例24にあっては現像液の温度を 25 ℃、PHを 7.0に設定し、比較例25から比較例31にあっては現像液の温度を 40 ℃、PHを 9.0に設定した。得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。評価結果を表6および表7に示す。表6は現像液の温度を 25 ℃、PHを 7.0に設定したときの評価結果であり、表7は現像液の温度を 40 ℃、PHを 9.0に設定したときの評価結果である。
【0048】
【表4】
Figure 0003853852
【表5】
Figure 0003853852
【表6】
Figure 0003853852
【表7】
Figure 0003853852
実施例52
板ガラスの一面にフィルター付き蛍光体層のうち、青色蛍光体層を形成した。顔料分散液および蛍光体分散液は実施例1と同一の材料を使用した。板ガラスを温度 30 ℃に保持して顔料分散液を塗布した。ついで、パネルを 100〜150 rpm で回転させ過剰の顔料分散液を振り切った。熱風温度 70 ℃にて 3〜4 分間熱風乾燥して青色顔料層を形成した。
青色顔料層が形成されたガラス面に蛍光体分散液を上述と同じ方法で塗布し、 150〜230 rpm で回転させ過剰の蛍光体分散液を振り切った。熱風温度 70 ℃にて 2〜3 分間熱風乾燥して青色顔料層の上に青色蛍光体層を形成した。
マスクを介して、高圧水銀灯を用いて所定のパターンに露光した。霧状にした現像液を現像液圧 2〜10 kg/cm2 でスプレーすることにより現像して所定のパターンを有する青色フィルター付き青色蛍光体層を得た。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価したところ、表2に示す結果と同一の結果が得られた。
【0049】
実施例53
カラーブラウン管フェースプレート内面にフィルター付き蛍光体層のうち、赤色蛍光体層を形成した。
顔料分散液は、Fe2 3 の微粒子(粒子径、 0.01 μm 〜 0.02 μm )を 25 重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩(ハイテノール08(第一工業製薬社製))を 0.25 重量%、それぞれ純水中に分散させて作製した。本実施例における高分子電解質濃度/顔料濃度比は 0.01 である。
【0050】
蛍光体分散液は、赤色蛍光体(Y2 2 S:Eu)を 40g、重クロム酸ナトリウム(SDC)を 0.16g、ポリビニルアルコール(平均分子量 2400 、ケン化度 88 %)を 1.4g 、純水を 54g秤量して混合させることにより蛍光体の懸濁液を作製した。
【0051】
上述の顔料分散液および蛍光体分散液を用いて実施例1と同一の方法で赤色フィルター付き赤色蛍光体層を得た。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。評価結果を表8に示す。
【0052】
実施例54から実施例58
顔料分散液における配合比率を変える以外は実施例53と同一の材料、方法で得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。
顔料分散液における配合比率および評価結果を表8に示す。
【0053】
比較例32および比較例33
顔料分散液における高分子電解質濃度/顔料濃度の配合比率が0.003 (比較例14)、1.5 (比較例15)である以外は実施例53と同一の材料、方法で赤色フィルター付き赤色蛍光体層を得た。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価した。
顔料分散液における配合比率および評価結果を表8に示す。
【0054】
【表8】
Figure 0003853852
実施例59
赤色蛍光体として、Y2 3 :Euを使用する以外は実施例53と同一の材料、方法で赤色フィルター付き赤色蛍光体層を得た。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例53と同一の方法で評価したところ、実施例53と同一の結果が得られた。また、実施例54から実施例58と同様に分散剤の量を変化させて赤色フィルター付き赤色蛍光体層を作製し評価したところ、表8に示す結果と同一の結果が得られた。
【0055】
実施例60
カラーブラウン管フェースプレート内面にフィルター付き蛍光体層のうち、緑色蛍光体層を形成した。
【0056】
顔料分散液は、TiO2 −NiO−CoO−ZnO(商品名タイピロキサイドTMグリーン#3320、粒子径、0.01μm 〜0.02μm 、大日精化社製)を 30 重量%、ポリアクリル酸共重合体のアンモニウム塩(ディスペックGA−40、アライド・コロイド社製)を 0.3重量%、それぞれ純水中に分散させて作製した。本実施例における高分子電解質濃度/顔料濃度比は 1/100 である。
【0057】
蛍光体分散液は、緑色蛍光体(ZnS:Cu,Al)を 40 g 、重クロム酸ナトリウム(SDC)を 0.16g、ポリビニルアルコール(平均分子量 2400 、ケン化度 88 %)を 1.4g 、純水を 54g秤量して混合させることにより蛍光体の懸濁液を作製した。
【0058】
上述の顔料分散液および蛍光体分散液を用いて実施例1と同一の方法で緑色フィルター付き緑色蛍光体層を得た。
得られたフィルター付き蛍光体層を実施例1と同一の方法で評価したところ、実施例1と同一の結果が得られた。
【0059】
実施例61
カラーブラウン管フェースプレート内面に、実施例1と同一の方法で青色フィルター付き青色蛍光体層を、つづいて実施例53と同一の方法で赤色フィルター付き赤色蛍光体層を、実施例60と同一の方法で緑色フィルター付き緑色蛍光体層を形成しパターンづけを行い良好な青・赤・緑のフィルター付き蛍光体2層パターンを得た。各色パターン形成時において、また各色相互間において、広い作業範囲にわたって溶出特性に優れた2層膜パターンが安定して得られた。さらに、得られたカラーブラウン管はコントラストや色純度が優れていた。
【0060】
【発明の効果】
本発明のフィルター付き蛍光体層の製造方法は、基板に顔料層を形成する工程が、顔料粒子および高分子電解質の塩を含む顔料分散液を基板に塗布し、少なくとも高分子電解質塩中の塩の一部を解離させて乾燥する工程であり、蛍光体層を形成する工程が、塩の一部が解離した高分子電解質と再び塩を形成する物質を含有する溶液を用いる工程であるので、重ね塗り1回露光でパターニングする場合において、溶出特性と現像特性という2つの相反する特性を両立させることができる。その結果、コントラストや色純度に優れた陰極線管やカラー受像機のフィルター付き蛍光体層を広い作業幅で得ることができる。
【0061】

Claims (9)

  1. 基板に顔料層を形成する工程と、前記顔料層の上に蛍光体層を形成する工程と、前記顔料層および前記蛍光体層を同時に露光・現像する工程とを有するフィルター付き蛍光体層の製造方法において、
    前記基板に顔料層を形成する工程は、顔料粒子および高分子電解質の塩を含む顔料分散液を前記基板に塗布乾燥する工程であり、前記蛍光体層を形成する工程は前記高分子電解質と塩を形成する物質を含有する溶液を用いる工程であることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
  2. 請求項1記載のフィルター付き蛍光体層の製造方法において、前記顔料分散液および前記高分子電解質と塩を形成する物質を含有する溶液は水を主体とする溶媒を用いることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
  3. 請求項1記載のフィルター付き蛍光体層の製造方法において、前記高分子電解質の塩は、アクリル酸系、アクリル酸−スチレン系等のアクリル酸共重合物、高分子ポリカルボン酸類、スチレン−ポリカルボン酸共重合物、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、アミン塩から選択される少なくとも1種を主成分とすることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
  4. 請求項3記載のフィルター付き蛍光体層の製造方法において、前記高分子電解質の塩は、アクリル酸系高分子化合物のアンモニウム塩またはアクリル酸系共重合物のアンモニウム塩であることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
  5. 請求項1記載のフィルター付き蛍光体層の製造方法において、前記高分子電解質と塩を形成する物質は、アルカリ金属の塩、金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
  6. 請求項5記載のフィルター付き蛍光体層の製造方法において、前記高分子電解質と塩を形成する物質は、LiCl、LiNO 3 、NaCl、Na 2 CO 3 、Na 2 2 3 、NaOH、重クロム酸ナトリウム(SDC)であることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
  7. 請求項6記載のフィルター付き蛍光体層の製造方法において、前記高分子電解質と塩を形成する物質は、重クロム酸ナトリウム(SDC)であることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
  8. 請求項1記載のフィルター付き蛍光体層の製造方法において、前記顔料分散液中の顔料濃度は0.1重量%〜50重量%であることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
  9. 請求項1記載のフィルター付き蛍光体層の製造方法において、前記顔料分散液中の顔料濃度に対する高分子電解質の重量比は、0.005〜1であることを特徴とするフィルター付き蛍光体層の製造方法。
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