JP3852921B2 - トリアルキルシロキシシリケートエマルジョンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリアルキルシロキシシリケートエマルジョンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トリアルキルシロキシシリケートは、耐久性向上、密着性向上、撥水性付与などを図るため各種樹脂に添加されており、様々な産業分野で使用されている。通常、トリアルキルシロキシシリケートは有機溶剤に溶解して使用されているが、近年の環境汚染問題から各種産業分野では脱溶剤化の方向に進んでおり、これに伴いトリアルキルシロキシシリケートも水系タイプのものが求められるようになった。トリアルキルシロキシシリケートは固形であるため、エマルジョンとする場合には有機溶剤や揮発性オルガノポリシロキサンに溶解した状態で乳化するのが一般的であるが、この方法では環境汚染の原因となる有機溶剤などがエマルジョン中に残存してしまう。
【0003】
有機溶剤を使用しないエマルジョンの製造方法として、pH1〜7の乳化剤水溶液でアルコキシシランを重合する方法(特開平8-199066)がある。しかしながら、トリアルキルアルコキシシランやトリアルキルシラノールは製造方法が複雑であり、一般工業用原料として使用するには不経済である。また、アルコキシシランを乳化剤水溶液中15℃未満で重合するオルガノポリシロキサンヒドロゾルの製法(特公平7-39494)が知られているが、この方法ではトリアルキルシロキシシリケートの均一なエマルジョンは得られない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、有機溶剤を使用せずに、しかも汎用の原材料を使用することにより経済的に、かつ簡便な方法でトリアルキルシロキシシリケートのエマルジョンを製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(A)下記一般式(I):
【0006】
【化3】
R3Si-O-SiR3 (I)
(式中、Rは独立に炭素原子数が1〜10のアルキル基である。)
で表されるオルガノジシロキサンと
(B)下記一般式(II):
【0007】
【化4】
Si(OR)4 (II)
(式中、Rは独立に炭素原子数が1〜10のアルキル基である。)
で表されるテトラアルコキシシランおよびその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種とを、
(A)成分中のトリアルキルシロキシ単位:R3SiO0.5/(B)成分中の4官能単位:SiO4/2(モル比)が0.5〜2.0の範囲内となる比率で用いて、
(C)界面活性剤と
(D)水
からなる水溶液に添加し、
30〜90℃で重合させるトリアルキルシロキシシリケートエマルジョンの製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳述する。
【0009】
<反応原料>
(A)成分である下記一般式(I):
【0010】
【化5】
R3Si-O-SiR3 (I)
(式中、Rは前記のとおりである。)
で表されるオルガノジシロキサンは、末端をトリアルキルシロキシ封鎖するために用いられる。一般式(I)中のRとしては、具体的にはメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチルおよびt-ブチル基並びに直鎖状または分岐を有するペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシル基から選ばれる基であり、好ましくはメチル基である。
【0011】
(B)成分である上記一般式(II):
【0012】
【化6】
Si(OR)4 (II)
(式中、Rは前記のとおりである。)
で表されるテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物はSiO4/2単位構造の源となるものである。一般式(II)中のRとしては、前述のものと同じでよいが、重合反応性の面から好ましくはメチル、エチルおよびn-プロピルもしくはiso-プロピル基から選ばれる基であり、より好ましくはメチルおよびエチル基から選ばれる基である。
また、副生するアルコールを低減できることから、テトラアルコキシシランよりもその部分加水分解縮合物がより好ましい。
【0013】
(A)成分および(B)成分は、(A)成分中のトリアルキルシロキシ単位:R3SiO0.5/(B)成分中の4官能単位:SiO4/2(モル比)が0.5〜2.0の範囲内、より好ましくは0.7〜1.5の範囲内となる比率で用いられる。前記比率が低すぎるとゲル化したり、逆に高すぎると相分離を生じたりして、いずれの場合も均一なエマルジョンが得られない。
【0014】
(C)成分である界面活性剤は(A)及び(B)成分を水中に均一分散させるためのものであり、特に制限はないが、例えばアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル燐酸塩などのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;第4級アンモニウム塩、アルキルアミン酢酸塩などのカチオン系界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤などがあり、これらを単独でまたは2種以上を併用して使用する。中でも重合反応性および安定性の面からアニオン系界面活性剤が好ましい。(C)成分の配合量としては(A)成分と(B)成分の合計量を100重量部とした場合に通常0.1〜20重量部の範囲、より好ましくは0.3〜10重量部の範囲である。
【0015】
(D)成分の水の配合量としては(A)成分と(B)成分の合計量を100重量部とした場合に通常50〜2,000重量部の範囲、より好ましくは100〜1,000重量部の範囲である。
【0016】
(A)成分と(B)成分の重合触媒として、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、ギ酸、乳酸、トリフロロ酢酸などの酸性物質、または水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアなどのアルカリ性物質を有効量使用することができる。ただし、(C)成分の界面活性剤としてアルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル燐酸などの酸性物質を用いる場合には、別途重合触媒を用いなくてもよい。
【0017】
<反応条件>
(C)成分および(D)成分(および必要により重合触媒)の水溶液を30〜90℃に加温し、撹拌下(A)成分と(B)成分を滴下し、さらに30〜90℃で1〜100時間重合を行なった後、酸性触媒または酸性の(C)成分を使用した場合には炭酸ナトリウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンなどのアルカリ性物質で、アルカリ性触媒を使用した場合には酢酸、ギ酸、リン酸、塩酸などの酸性物質で中和すればよい。温度が30℃未満の場合には(A)成分であるオルガノジシロキサンの反応が進行し難く、均一なエマルジョンを得ることができず、また、90℃より高い場合にはエマルジョンの安定性が不安定となる。より好ましい温度範囲は、40〜85℃である。
なお、(B)成分を予め(C)成分と(D)成分(および必要により重合触媒)中で30〜90℃において重合させた後に、(A)成分を滴下しさらに30〜90℃で重合させる方法も可能である。
また、製造に際しジアルコキシジアルキルシラン、トリアルコキシアルキルシランおよびそれらの部分加水分解縮合物を併用することは何ら問題はない。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を用いて説明する。なお、以下において、「M単位」は、(CH3)3SiO0.5単位を、また、「Q単位」は、SiO4/2単位を表す。
【0019】
<実施例1>
温度計付き2リットルガラス製撹拌装置にドデシルベンゼンスルホン酸4g、水738gを入れ50℃に加温して、ヘキサメチルジシロキサン100gとテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(コルコート社製メチルシリケート51:SiO4/2分51重量%)145gの混合物(仕込みでのM単位/Q単位(モル比)=1.0)を2時間かけて滴下し、さらに50℃で6時間重合した後、3%アンモニア水溶液13gで中和し青白色半透明のエマルジョンを得た。このものは、pHが8.8、不揮発分が17.2重量%であった。このものの不揮発分をNMRにより解析した結果、M単位/Q単位(モル比)は約0.95であり、GPCにより測定した平均分子量は約3,000であった。
【0020】
<実施例2>
実施例1記載の装置にドデシルベンゼンスルホン酸10g、水745gを入れ50℃に加温して、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(コルコート社製メチルシリケート51:SiO4/2分51重量%)145gを添加した後、50℃で2時間重合した。さらにヘキサメチルジシロキサン100gを1時間かけて滴下しさらに50℃で3時間重合した後、10%炭酸ナトリウム水溶液24gで中和し殆ど無色透明のエマルジョンを得た。このものは、pHが6.4、不揮発分が17.2重量%であった。このものの不揮発分をNMRにより解析した結果、M単位/Q単位(モル比)は約0.95であり、GPCにより測定した平均分子量は約4,000であった。
【0021】
<実施例3>
実施例1記載の装置にドデシルベンゼンスルホン酸10g、水705gを入れ50℃に加温して、ヘキサメチルジシロキサン100gとテトラメトキシシラン185gの混合物(仕込みでのM単位/Q単位(モル比)=1.0)を2時間かけて滴下し、さらに50℃で6時間重合した後、10%炭酸ナトリウム水溶液24gで中和し青白色半透明のエマルジョンを得た。このものは、pHが6.4、不揮発分が17.9重量%であった。このものの不揮発分をNMRにより解析した結果、M単位/Q単位(モル比)は約0.95であり、GPCにより測定した平均分子量は約3,000であった。
【0022】
<実施例4>
実施例1記載の装置にドデシルベンゼンスルホン酸4g、水758gを入れ50℃に加温して、ヘキサメチルジシロキサン80gとテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(コルコート社製メチルシリケート51:SiO4/2分51重量%)145gの混合物(仕込みでのM単位/Q単位(モル比)=0.8)を2時間かけて滴下し、さらに50℃で6時間重合した後、3%アンモニア水溶液13gで中和し殆ど無色透明のエマルジョンを得た。このものは、pHが8.5、不揮発分が15.0重量%であった。このものの不揮発分をNMRにより解析した結果、M単位/Q単位(モル比)は約0.76であり、GPCにより測定した平均分子量は約3,500であった。
【0023】
<実施例5>
実施例1記載の装置にドデシルベンゼンスルホン酸4g、水786gを入れ50℃に加温して、ヘキサメチルジシロキサン150gとテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(コルコート社製メチルシリケート51:SiO4/2分51重量%)145gの混合物(仕込みでのM単位/Q単位(モル比)=1.5)を2時間かけて滴下し、さらに50℃で6時間重合した後、3%アンモニア水溶液13gで中和し青白色のエマルジョンを得た。このものは、pHが8.9、不揮発分が21.8重量%であった。このものの不揮発分をNMRにより解析した結果、M単位/Q単位(モル比)は約1.4であり、GPCにより測定した平均分子量は約2,500であった。
【0024】
<比較例1>
温度を15℃に変更した以外は、実施例1と同様に重合したが、撹拌を停止すると2相分離してしまい均一なエマルジョンは得られなかった。
【0025】
<比較例2>
実施例1記載の装置にドデシルベンゼンスルホン酸4g、水798gを入れ50℃に加温して、ヘキサメチルジシロキサン40gとテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(コルコート社製メチルシリケート51:SiO4/2分51重量%)145gの混合物(仕込みでのM単位/Q単位(モル比)=0.4)を2時間かけて滴下し、さらに50℃で6時間重合した後、3%アンモニア水溶液13gで中和したところゲル化してしまい均一なエマルジョンは得られなかった。
【0026】
<比較例3>
実施例1記載の装置にドデシルベンゼンスルホン酸4g、水628gを入れ50℃に加温して、ヘキサメチルジシロキサン210gとテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(コルコート社製メチルシリケート51:SiO4/2分51重量%)145gの混合物(仕込みでのM単位/Q単位(モル比)=2.1)を2時間かけて滴下し、さらに50℃で6時間重合したが、撹拌を停止すると2相分離してしまい均一なエマルジョンは得られなかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、汎用的な原材料を使用し、簡便な方法で有機溶剤を含有しないトリアルキルシロキシシリケートのエマルジョンを製造することができる。
Claims (2)
- (A)下記一般式(I):
で表されるオルガノジシロキサンと
(B)下記一般式(II):
で表されるテトラアルコキシシランおよびその部分加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種とを、
(A)成分中のトリアルキルシロキシ単位:R3SiO0.5/(B)成分中の4官能単位:SiO4/2(モル比)が0.5〜2.0の範囲内となる比率で用いて、
(C)界面活性剤と
(D)水
からなる30 〜 90 ℃の水溶液に添加することにより30〜90℃で該水溶液中への均一分散および重合を行うトリアルキルシロキシシリケートエマルジョンの製造方法。 - 前記(B)成分が前記一般式(II)で表されるテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物であり、かつ、前記(C)成分がアニオン性界面活性剤である請求項1記載のトリアルキルシロキシシリケートエマルジョンの製造方法。
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