JP3852619B2 - 電磁波吸収パネル及びその材料 - Google Patents

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Description

発明の背景
1.発明の分野
本発明は、建材として用いられる、電磁波を吸収することのできるパネルに関するものであり、詳しくは、ラジオ放送周波数帯、テレビ放送周波数帯、及びマイクロ波周波数帯の電磁波を吸収することができる電磁波吸収パネルに関するものである。また、更に詳しくは、2種類以上の材料を使用した、例えば複合材料で形成した電磁波吸収パネル、ないしは多層構造の電磁波吸収パネルに関するものである。
2.課題の説明
建物等の構造物からの電磁波の反射が、例えばテレビ放送の受信時のゴーストや、ラジオ放送の受信時の空電雑音等の問題を引き起こすことは、はるか以前から知られている。この種の問題は、例えば米国、欧州、それに日本等の国々の大都市のように、人口密度の高いハイテクノロジー社会においては、特に重大な問題となる。例えば日本の大都市のうちには、大規模な建物を建設する際には、その建設に先立ってテレビ放送電波に対する影響評価書を提出することを義務付けている都市があり、また、建築規制条例によって、建物を建築する際には、ラジオ放送周波数帯、テレビ放送周波数帯、及びマイクロ波周波数帯に相当する80MHz〜2400MHzの周波数帯の電磁波の反射を回避できるようにその建物を建築することが義務付けられているところもある。電磁波が建築材料を透過して伝播することによって、場合によっては機密保持上の問題が生じることもある。これらの事情から、電磁波を吸収する性質を有する建築材料を追求するための熱心な研究がこれまでにも行なわれている。これについて記載した文献には、例えば、「Investigation on Oblique Incident Characteristics of Ferrite Absorbing Panels For TV Ghost Suppression(Hironobu Ito et al. Japan Broadcasting Corporation et al.)(刊行年:1994年頃)」がある。建築構造材として用いられる電磁波吸収パネルは一般的に、コンクリート等の基礎的な建築材料で構成された支持層と、多くの場合金網やその他の導電性材料で構成される反射層と、多くの場合フェライトで構成される吸収層と、表面層とを含んでおり、この表面層は、例えば、ケイ酸系の建築用タイル等で構成され、電磁波吸収層が環境から影響を受けないように防護するためのものである。電磁波吸収層としてこれまで用いられていたその他の材料としては、カーボンファイバ等の導電性材料を埋め込んだ樹脂材料等がある。
殆ど全ての物質は、電磁波を吸収する周波数である特性周波数を持っているため、ある狭い周波数領域における電磁波を吸収する性質を有する材料をつき止めることは比較的容易である。例えば、フェライト材料は一般的に、おおむね200MHzから400MHzまでの間に吸収ピークを有する。これに対して、数千MHzもの広い周波数領域に亙る電磁波を吸収する性質を有する材料を発見することは、たとえ不可能でないにしても非常に困難であり、また、僅か数百MHzの周波数領域に亙る電磁波を吸収する性質を有する材料を発見することですら容易ではない。そのため、複数のフェライト材料を組合せたものや、導電性ファイバを埋め込んだ樹脂材料や、その他の同様の構造が、これまで電磁波吸収材として用いられていた。
電磁波吸収材として4分の1波長板を使用することも公知である。この種の電磁波吸収材は、金属層等で形成した100%反射材の前面に、電磁波の波長の4分の1に等しい厚さの材料を配設した構成であった。しかしながら、4分の1波長板の電磁波吸収の原理を利用して、建材として用いられる電磁波吸収パネルを製作しようという試みはこれまでのところなされていない。それは、テレビ放送周波数帯の波長は数mにも及びからである。もし、この原理を採用した電磁波吸収パネルを製作したならば、その厚さは数mにもなり、厚すぎて建材としては使用できないものになってしまう。
フェライト材料は、電磁波吸収パネルの材料として非常に効果的な材料であるが、その比重が比較的大きい上に、場合によっては1cmもの厚さにしなければ電磁波吸収効果が得られない。また、比較的軟らかいことから、フェライト材料が環境の影響を受けて傷むのを防止するためには、例えばタイル等の建築材料層を付加する必要があった。これらの理由から、従来公知の電磁波吸収パネルのうちのあるものは、厚さ及び重量が大きく、そのため製作コストが高くなり、建物全体に用いることが困難なものとなっていた。また、大都市地域では一般的に様々な周波数の電波が飛び交っているが、従来公知の電磁波吸収パネルのうちのあるものは、それら電磁波の全てを包含し得る広い周波数領域に亙る電磁波吸収能力を備えていなかった。無論、これら両方の短所を併せ持つものもあった。更には、一般的なフェライト材料の吸収周波数領域が200MHz〜400MHzであるのに対して、VHFテレビ放送周波数帯は約100MHz〜250MHzであり、UHFテレビ放送周波数帯は、約450MHzから上は約800MHzまである。従って、比較的軽量で薄く、しかもそれと同時に、上は約800MHzまでの周波数領域を包含する広い周波数領域に亙って電磁波を吸収する能力を有する電磁波吸収パネルが強く求められている。
従来の電磁波吸収パネルの多くは、テレビ放送周波数帯に対応した周波数領域でだけ効果を発揮するものであった。これは、テレビ放送用の電波が、最も反射による問題が発生しやすい電磁波だからである。しかしながら、電磁波の反射という問題がより深刻な結果をもたらすおそれのある、特別な応用分野が存在している。その一例は例えば無線LANシステムであり、無線LANシステムでは、電磁波が反射すると、それによってデータが失われるおそれがある。また、空港の無線管制システムもその一例であり、空港の無線管制システムにおいては、信号の明瞭度が生死に関わる問題となり得る。従って電磁波吸収パネルを、これらのような特別な応用分野の周波数領域において高度の電磁波吸収性能を発揮するようにすることが強く求められている。
更に、現実の問題としては、電磁波を送信している送信源は一般的に非常に狭い周波数領域の電磁波しか送信しておらず、建物がその電磁波送信源に近接しているために、その狭い周波数領域の電磁波環境にだけ悪影響を及ぼしていることがよくあるということが知られている。ただし、建物をどこに建築するかが決まるまでは、悪影響を及ぼすおそれのある周波数領域を予測することはできない。従って、吸収周波数領域を調節して特定の周波数領域に設定することが容易な電磁波吸収パネル及びその製作方法を提供することによって、大いに利点が得られるものと見込まれる。
発明の概要
本発明は、複合材料を用いた電磁波吸収材を使用することで、上記問題を解決するようにしたものであり、この電磁波吸収材は、その吸収周波数領域を調節することで、広い周波数領域をカバーするようにすることができ、即ち、実際の建築現場に発生している電磁波環境問題に応じてその調節を行なうことで、特定の周波数領域において優れた吸収性能を発揮するようにすることができる。この吸収周波数領域の調節を行なう方法としては、多層構造を構成する各層の材料として特別の材料を選択する方法、複合材料の成分材料として特定の材料を選択する方法、多層構造を構成する各層の厚さないし複合材料層の厚さを変化させる方法、複合材料中の各成分の成分量を変化させる方法、それに以上の方法を種々に組合せた方法がある。
本発明は、広範な問題の解決に資する、ないしは、特定の問題の解決のための吸収周波数領域の調節に資する、特別の材料の組合せを提供する。例えば、本発明が提供する、高誘電率材料とフェライト材料の特定の組合せのうちには、テレビ放送周波数帯のうちの中域を吸収周波数領域とする非常に効果的な電磁波吸収材であって、使用する材料を選択することによって、また、電磁波吸収材を構成する複数の層の各々の厚さを変更することによって、吸収周波数領域を調節して所望の周波数領域の電磁波を吸収するようにすることができるものがある。また、別の実施の形態として、強磁性体材料層と、フェライト材料層と、ポリマー材料と、反射材としての金属材料とを組合せたものは、テレビ放送周波数帯の全域に亙って良好な電磁波吸収性能を発揮する。また、更に別の実施の形態として、第1フェライト材料層と、第2フェライト材料層とを組合せたものは、反射損失の大きさを殆ど変化させることなく、反射損失を発生させるべき周波数領域を変化させるように、吸収周波数領域の調節を行なって、特定の周波数領域の電磁波を吸収するようにすることができる。
本発明は、次のような建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、第1層と、第2層と、第3層とを含んでいる。前記第1層は、前記第2層より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側に近接して配設されており、前記第3層は、前記第2層より、前記電磁波入射側から離隔して配設されている。前記第1層が高誘電率材料を含んでおり、前記第2層がフェライト材料を含んでおり、前記第3層が低誘電率材料を含んでいる。好ましくは、前記低誘電率材料はポリマー材料であり、前記高誘電率材料は強誘電体材料である。
別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、第1層と第2層とを含んでいる。前記第1層は、前記第2層より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側に近接して配設されており、前記第1層がフェライト材料を含んでおり、前記第2層が高誘電率材料を含んでいる。好ましくは、前記フェライト材料はニッケル亜鉛フェライトであり、前記高誘電率材料がBSTである。また、前記電磁波吸収材が更に、前記第1層と前記第2層との間に配設された、ポリマー材料を含む第3層と、前記第3層と前記第2層との間に配設された、LSMを含む第4層とを備えたものであることが好ましい。また、前記電磁波吸収材は更に、前記第1層の配設位置と比べて、前期電磁波入射側からより離隔して配設された、低誘電率材料を含む第3層を備えたものであることが好ましい。この第3層は、前記第1層と前記第2層との間に配設されていることが好ましく、また、前記電磁波吸収パネルは、前記電磁波吸収材よりも、前記電磁波入射側から離隔して配設された、反射材を備えていることが好ましい。また、前記電磁波吸収材が更に、誘電体材料を含む第4層を含むものであることが好ましい。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、第1層と第2層とを含んでいる。前記第2層は、前記第1層より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側から離隔して配設されており、前記第1層が強磁性体材料を含んでおり、前記第2層がフェライト材料を含んでいる。前記電磁波吸収材が更に、前記第2層よりも、前記電磁波入射側から離隔して配設された第3層を含んでいることが好ましい。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、第1層と第2層とを含んでいる。前記第2層は、前記第1層より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側から離隔して配設されており、前記第1層がフェライト材料を含んでおり、前記第2層が強磁性体材料を含んでいる。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、ポリマー材料を含む第1層と、該ポリマー材料より大きな誘電率を有する材料を含む第2層とを含んでいる。前記第2層は、前記第1層より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側に近接して配設されていることが好ましい。ただし、前記第1層が、前記第2層より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側に近接して配設されているようにしてもよい。また、前記第2層がフェライトを含むものとし、前記電磁波吸収材をn個備えるようにし、それら複数の電磁波吸収材の各々が、複数の前記第1層のうちの1つと、複数の前記第2層のうちの1つとで構成されているようにし、更に、nを2以上で、100以下の整数とすることが好ましい。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された反射材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、前記反射材より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側に近接して配設されている。前記電磁波吸収材は、フェライト材料を含む第1層と、低誘電率材料を含む第2層とを含んでおり、前記第2層は、前記第1層より、前記電磁波入射側から離隔して配設されている。また、前記電磁波吸収材をn個備えるようにし、それら複数の電磁波吸収材の各々が、複数の前記第1層のうちの1つと、複数の前記第2層のうちの1つとで構成されているようにし、更に、nを2以上で、100以下の整数とすることが好ましい。
本発明はまた、次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された反射材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、前記反射材より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側に近接して配設されている。前記電磁波吸収材は、フェライト材料を含む第1層と、低誘電率材料を含む第2層とを含んでおり、前記第2層は、前記第1層より、前記電磁波入射側から離隔して配設されている。また、前記電磁波吸収材をn個備えるようにし、それら複数の電磁波吸収材の各々が、複数の前記第1層のうちの1つと、複数の前記第2層のうちの1つとで構成されているようにし、更に、nを2以上で、100以下の整数とすることが好ましい。
本発明は更に、次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、高誘電率材料を含む第1層と、複素透磁率の虚数部が複素透磁率の実数部と等しいかそれより大きい材料を含む第2層と、低誘電率材料を含む第3層とを含んでおり、前記第3層は、前記第1層より、前記電磁波吸収パネルの電磁波入射側から離隔して配設されており、前記第2層は、前記第1層と前記第3層との間に配設されている。前記第2層がフェライト材料を含んでおり、前記電磁波吸収パネルが更に、導電性材料で構成された反射材を備えており、該反射材が、前記電磁波吸収材より、前記電磁波入射側から離隔して配設されているようにすることが好ましい。また、前記第3層がポリマー材料を含んでおり、前記第1層が、ABO3型のペロブスカイト材料と層状超格子材料とから成る部類中から選択された材料を含んでいるようにすることが好ましい。
本発明は更に次のような、所定周波数領域の全域において実効的な電磁波吸収性能を有する、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、複合構造の電磁波吸収材を備え、前記電磁波吸収材は、入射電磁波の周波数をfとするとき、その複素誘電率の実数部の実効値ε′effと、その複素透磁率の実数部の実効値μ′effとが、前記所定周波数領域の全域において(ε′effμ′eff)1/2≒1/fを満たすものである。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、所定周波数領域の全域において実効的な電磁波吸収性能を有する、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、複合構造の電磁波吸収材を備え、前記電磁波吸収材は、周波数の上昇と共に、その複素誘電率の実数部の実効値ε′effが低下するものである。
本発明は更に、上記目的を解決するために、次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、この電磁波吸収パネルは、高誘電率材料、強誘電体材料、導電性酸化物材料、マグネトプラムバイト材料、ガーネット材料、シグネット磁性体材料、等々の材料を含むものであり、これらの材料は、従来はこの種の電磁波吸収パネルの材料として考えられなかったものである。これらの材料を、従来の電磁波吸収パネルに使用されていたフェライト材料と組合せて使用するようにしてもよく、本発明は、更に、電磁波吸収パネルに用いるフェライト材料として特に効果的な新規なニッケル亜鉛フェライト材料を提供するものであり、その新規なフェライト材料とはNi0.4Zn0.6Fe2O4である。
本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、その電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は高誘電率材料を含んでいる。前記電磁波吸収材が更に、フェライト材料とポリマー材料とを含むものとすることが好ましい。前記高誘電率材料を、ABO3型のペロブスカイト材料と、層状超格子材料と、導電性酸化物材料と、シグネット磁性体材料とから成る部類中から選択した材料とすることが好ましい。また、前記高誘電率材料が、BSTと、LSMと、100%>Z>0%とするときZ×BaTiO3+(100%-Z)×BiFeO3で表される材料とから成る部類中から選択された材料とすることが好ましい。
別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、その電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は高誘電率材料を含んでいる。前記電磁波吸収材が更に、フェライト材料とポリマー材料とを含むものとすることが好ましい。前記高誘電率材料を、ABO3型のペロブスカイト材料と、層状超格子材料と、導電性酸化物材料と、シグネット磁性体材料とから成る部類中から選択した材料とすることが好ましい。また、前記高誘電率材料を、BST材料と、LSM材料と、100%>Z>0%とするときZ×BaTiO3+(100%-Z)×BiFeO3で表される材料とから成る部類中から選択した材料とすることが好ましい。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、その電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は、ポリマー材料と第2の材料とを含む複合材料を含んでいる。前記第2の材料は、高誘電率材料と、強誘電体材料と、ガーネット材料と、マグネトプラムバイト材料とから成る部類中から選択された材料である。また、前記第2の材料を、ニッケル亜鉛フェライトと、BSTと、LSMと、イットリウム鉄ガーネットと、タンタル酸ストロンチウムビスマスと、ニオブ酸ストロンチウムビスマスと、チタン酸ストロンチウムビスマスと、ジルコン酸ストロンチウムビスマスと、それらの種々の固溶体とから成る部類中から選択した材料とすることが好ましい。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、その電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材はガーネット材料を含んでいる。このガーネット材料は、イットリウム鉄ガーネットとすることが好ましい。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、その電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材は磁気抵抗材料を含んでいる。この磁気抵抗材料は、La0.67Sr0.33MnO3で表される材料と、0<x<1とするときLaxCa(1-x)MnO3で表される材料と、0<x<1とするときLaxPb(1-x)MnO3で表される材料とから成る部類中から選択した材料とすることが好ましい。
更に別の特徴的局面として、本発明は次のような、建材として用いられる電磁波吸収パネルを提供するものであり、その電磁波吸収パネルは、基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、前記電磁波吸収材はNi0.4Zn0.6Fe2O4である。
以上に記した新規な材料を使用した電磁波吸収パネルは、従来の電磁波吸収パネルと比較して軽量で薄型となり、より広い周波数領域に亙って電磁波を吸収するものとなる。更に、以上の材料がどのように機能するかについての解析によって、電磁波吸収のプロセスをより深く理解することができた。
本発明は、単に、従来の建材として用いられる電磁波吸収パネルの構造と比較して、より軽量で、より薄型で、より広い周波数領域に亙って電磁波を吸収する電磁波吸収パネルのための複合構造を提供するばかりでなく、それら構造の研究は、電磁波がどのようにして吸収されるかについてのより深い理解をもたらすものであり、例えば、電磁波吸収パネルにおける誘電率が果たし得る役割を明らかにし、また、電磁波吸収パネルの設計方法をも提供するものであり、その方法とは、まず最初に、吸収させたい電磁波の周波数領域とおおむね一致する周波数領域において電磁波吸収能力を発揮する構造を決定し、次に、その電磁波吸収材の組成を調節することで、その電磁波吸収材の誘電率等のパラメータが、4分の1波長板により近い特性となるようにし、また、材料層の厚さを調節することで、吸収周波数領域を移動させて、所望の周波数領域をカバーできるようにする。本発明の特徴、目的、及び利点は、以上に説明した他にも数多く存在し、それら特徴、目的、利点は、以下の説明を添付図面と共に参照することによって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
図1は、一部破断した斜視図で示した本発明にかかる電磁波吸収パネルの概略図、
図2は、図1の2−2線に沿った断面図で示した本発明にかかる電磁波吸収パネルの横断面図、
図3は、図1の電磁波吸収パネルの電磁波吸収層の1つの好適な実施の形態の横断面図、
図4は、図1の電磁波吸収パネルの電磁波吸収層の別の好適な実施の形態の横断面図、
図5は、本発明にかかる、高誘電率材料とフェライト材料との複合材料で製作した3種類の電磁波吸収タイルの、周波数に対する反射損失の曲線を示したグラフ、
図6は、6種類のニッケル亜鉛フェライト固溶体材料の、周波数に対する反射損失の曲線を示したグラフ、
図7は、フェライト材料であるNi0.4Zn0.6Fe2O4の、周波数の関数としての複素誘電率の実数部と虚数部とを示したグラフ、
図8は、フェライト材料であるNi0.4Zn0.6Fe2O4の、周波数の関数としての複素透磁率の実数部と虚数部とを示したグラフ、
図9〜図15は、図1の電磁波吸収パネルの電磁波吸収層の更に別の幾つかの好適な実施の形態の横断面図、
図16は、5通りに厚さを異ならせたマンガンフェライト層とニッケル亜鉛固溶体フェライト層とから成る多層構造の電磁波吸収材の、周波数に対する反射損失の曲線を示したグラフ、
図17は、BaTiO3+BaFeO3の50:50の固溶体で形成した厚さ1mmの固溶体層と、厚さ5mmのNi0.4Zn0.6Fe2O4層と、厚さ5mmのテフロン層とを備えた電磁波吸収パネルについて、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失のグラフ、
図18は、厚さ5mmのNi0.4Zn0.6Fe2O4層と、厚さ5mmのポリカーボネート層と、バリウムとストロンチウムの組成比が70:30のBSTで形成した厚さ1mmのBST層とから成る、フェライト/ポリマー/高誘電率材料を用いた多層構造を備えた電磁波吸収パネルについて、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失のグラフ、
図19は、50%のポリカーボネートと50%の(BaTiO3+4BiFeO3)とから成るポリマー-セラミック複合材料で形成した厚さ13mmの複合材料層を備えた電磁波吸収パネルについて、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失のグラフ、
図20は、フェライト材料としてNi0.4Zn0.6Fe2O4を使用し、誘電体材料182としてBSTを使用し、反射材を備えていない構成とした、フェライト材料層と高誘電率材料層とを含む多層構造の電磁波吸収材について、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失のグラフ、
図21〜図24は、図1の電磁波吸収パネルの電磁波吸収層の、更に別の幾つかの好適な実施の形態の横断面図、
図25は、様々な厚さの、フェライト材料層とポリマー材料層とLSM高誘電率材料層とを含む多層構造の電磁波吸収パネルについて、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失のグラフ、
図26は、様々な厚さの、フェライト材料層とポリマー材料層とを含む多層構造の電磁波吸収材について、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失のグラフ、
図27は、フェライト材料層とポリマー材料層とから成る組を50組重ねて形成した電磁波吸収材について、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失のグラフ、
図28は、本発明にかかるポリマー-セラミック複合材料の製造方法のフローチャート、
図29は、本発明にかかるセラミック材料の製造方法の製造方法のフローチャート、そして、
図30は、図1のパネルの電磁波吸収層の更に別の好適な実施の形態の横断面図である。
好適な実施の形態の詳細な説明
図1及び図2は、本発明にかかる電磁波吸収パネルの概略図である。図1は、一部破断した斜視図で示し、図2は横断面図で示している。尚、これらの図1及び図2も、また、本発明にかかる電磁波吸収材106の横断面を示したその他の図も、電磁波吸収パネルないし電磁波吸収材のありのままの姿を図示したものではなく、ありのままの姿を図示した場合よりも更に明瞭に本発明を表し得るように単純化した模式図である。例えば、1枚の電磁波吸収パネルを構成している幾つもの層は、厚さに大きな差があるため、それらの層の全てを正確な相対的厚さを保って図示したならば、多くの図が大きくなり過ぎて1枚の図面用紙に収まらなくなってしまうおそれがある。電磁波吸収パネル100は、4つの基本的構成要素を含んでおり、それらは、基材102、反射材104、電磁波吸収材106、及び表面保護材108である。それら基本的構成要素102、104、106、及び108は、夫々の材料を層状に形成したものであり、それら4つの材料層が互いに略々平行に重ねられている。基材102は、例えばコンクリート等の建築構造材料で形成されるものである。反射層104は、一般的に、導電性材料で形成する層であり、例えば金属材料等を用いる。図示の好適な実施の形態では、この反射層104は、コンクリート層102に埋め込んだ鉄製の金網ないし格子で構成するようにしており、それによって、コンクリートの技術分野において周知の如く、コンクリートの補強材を兼ねるようにしている。典型的な具体例としては、金網104をコンクリート層102に埋め込む深さは1〜5インチとする。吸収すべき電磁波の波長は概ね1m〜数百m程度であり、そのような波長の電磁波にとっては、金網は事実上連続体であるように「見える」ため、金網によって電磁波が反射されるのである。電磁波吸収材106は、図1及び図2には概略的示しただけである。この電磁波吸収材、即ち電磁波吸収層106の、幾つかの好適な実施の形態について以下に詳述する。以下に説明する電磁波吸収層106の幾つかの実施の形態は、そのいずれもが複合構成のものである。複合構成という用語には2通りの意味があり、その1つは、少なくとも2種類の異なった成分材料を含む複合材料を用いて構成したというものであって、例えば、ポリマー材料に第2の材料としてセラミック材料を混練した、ポリマー-セラミック複合材料を用いたものがこれに該当する。もう1つの意味は、互いに異なった材料で形成した層を2層以上重ね合せて構成したというものである。従って、本開示で使用する「複合構成」という用語は、単一の化学組成物で構成したものは、その化学組成物が2種類以上の元素から成るものであっても除外することを意味するものである。表面防護材108は、一般的に述べるならば、通常の建築材料であって、耐候性を有する材料であればよい。また、美観性にも優れた材料を用いることが好ましく、例えば二酸化珪素を主成分とするタイル等を使用することができる。本発明の実施の形態のうちには、タイル等の表面保護材108を備えても、備えなくともよいような実施の形態があり、このことも本発明の重要な特徴とうちの1つである。また、別の実施の形態として、表面保護タイル108と電磁波吸収材106とを一体化した構成とすることも可能である。即ち、本発明において使用する電磁波吸収性を有する材料のうち、高誘電率材料(後に詳述する)としては例えばセラミック材料を使用することができ、セラミック材料のような高硬度材料は高度の耐候性を備えている。反射材104も、実施の形態によって装備されている場合と装備されていない場合とがある構成要素である。即ち、実施の形態によっては、基材102が充分に厚いため、基材102だけで電磁波の透過を完全に防止できるものがあり、そのような実施の形態では、反射材104の役割を基材102に肩代わりさせることができる。また、実施の形態によっては、電磁波吸収材106が充分な強度を有するため、電磁波吸収材106だけで、電磁波吸収パネルを用いて構成する建築物の壁等の構造部分に必要とされる強度が得られるものがあり、そのような実施の形態では、電磁波吸収材106がそのまま基材102を兼ねるようなものとすることができる。好適な実施の形態は、一般的に、コンクリート等の建物構造部分の表面に取付けることが多く、そのような場合には、その建物構造部分のコンクリート中に概に、反射材104の機能を果たす構成要素が埋設されて入ることがあり、また、一方では、反射を抑制するという目的で、反射材を備えていない電磁波吸収パネルが望まれることもある。これは、例えば、反射をゼロにしなければ、ゴーストの問題を解消できないという状況があるからである。ただし、以下に説明する実施の形態では、反射材104を備えていないと明記したものを除いて、いずれも反射材104を備えている。本発明にとって特に重要であるのは、電磁波吸収材106の材料及び構造であり、そのため本開示の以下の部分では、電磁波吸収材106に力点を置いて説明をして行く。尚、図2も、またそれ以後の、電磁波吸収材106の実施の形態を示した夫々の図も、図中の左側から電磁波100が入射するものとして図を描いてある。どちらが入射側であるかということが重要であるのは、多層構造の電磁波吸収材において、その各層が電磁波110の入射側109からどのような順序で並べて配設するかが、吸収を最適化する上で重要な意味を持つからである。
これまで、電磁波吸収パネルを改良することを困難にしていた大きな障害要因の1つに、電磁波吸収パネル100を実際に製作して試験することが容易でないということがあった。電磁波吸収パネル100は、それ自体が極めて大きなものであるため、試験用サンプルとして種々の構造のものを製作することには困難が伴う。更には、試験用サンプルの試験を行なう際には、そのサンプルを取付ける試験用構造体が必要であるが、この試験用構造体の製作も容易ではない。本開示に関しては、これらの困難を避けるために、種々の電磁波吸収パネル100の形態をシミュレートする能力を備えた、複合コンピュータシミュレーションシステムを製作した。実際に様々な形態の多くの電磁波吸収パネル100を製作して、このコンピュータシミュレーションシステムの結果と比較し、このシミュレーションシステムを完全なものとするようにした。以下の説明中に提示する測定値のうち、コンピュータシミュレーションシステムによって求めた測定値に関してはその旨を明記してあり、従って、そのように明記されていない測定値は、全て、以下に説明するようにして実際に製作したサンプルを実測して得た測定値である。
図3は、本発明にかかる電磁波吸収材の1つの好適な実施の形態106Aを示した横断面図である。実際に電磁波吸収材106を製作して試験したものについては、図3の実施の形態106Aも、以下に説明するその他の実施の形態も、後述する製作方法によって製作した。また、製作した電磁波吸収材は、同軸形の取付構造を成す金属材料製の支持部材に取付けるようにした。即ち、基材102や表面保護タイル109は備えておらず、そのようにした理由は、それらを装備することで試験が困難になることが明らかだったからである。ただし、電磁波は、導電性を有する金属材料層によって100%反射され、また、表面保護タイル109は電磁波吸収材に大きな影響を及ぼさないことが試験から明らかとなった。そのため、以下に述べる試験結果は、実際の電磁波吸収パネル100を良好に評価した試験結果となっている。電磁波吸収材106Aは、材料層112を含むものである。この材料層112は、誘電体材料で形成することが好ましいが、ただし、後掲の表1に記載した種々の材料のうちの任意のものを使用することができる。この図3の実施の形態では、後掲の表1に記載した誘電体材料のうちの任意のものを使用することができるが、この実施の形態において誘電体材料112は、高誘電率材料とすることが好ましい。層114は、フェライト材料層である。このフェライト材料層114は、任意のフェライト材料で形成することができるが、好ましい具体例としては、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、コバルト亜鉛フェライト等があり、最も好ましいのは、Ni0.4Zn0.6Fe2O4である。誘電体材料層112は、フェライト材料層114よりはるかに薄くすることが好ましく、特に、誘電体材料層112を高誘電率材料で形成する場合にはそのようにするのがよい。誘電体材料層112を高誘電率材料で形成する場合には、この誘電体材料層112の厚さを、フェライト材料層114の厚さの、2分の1ないし10分の1にするのが一般的であり、約3分の1ないし約6分の1にすることが最も好ましい。図3の実施の形態では、誘電体材料層112の位置は、反射材104から離れた側であり、従って、電磁波吸収パネル100の表面に近い側である。ただし、高誘電率材料は、電磁波吸収パネルに用いる材料として非常に優れたものであることが確かめられており、しかも、電磁波吸収材を構成しているその他の材料に対する相対的な配設位置の如何にかかわらず、優れた電磁波吸収性能を発揮することも確かめられている。また、本開示において「高誘電率」というのは、誘電率が20以上であることを意味し、好ましくは50以上である。一方、「低誘電率」というのは、誘電率が10以下の材料のことをいう。低誘電率材料の好ましい具体例は、ケイ珪ガラス系の材料ないしプラスチック材料であり、プラスチック材料のうちでは、例えば、テフロン(商標)、ポリカーボネート、ポリビニル等の材料が好ましく、その他のポリマー材料も好ましいものである。酸化アルミニウムを使用することも可能である。誘電材料層112には、室温では強誘電性を示さないが、ある温度において強誘電性を示すような金属酸化物を用いることも可能である。電磁波吸収パネルに用いるのに好適な誘電体材料の具体例としては、種々のABO3型のペロブスカイト材料があり、その種のペロブスカイト材料のうちには、単なる誘電体材料であるものも、また強誘電体材料であるものも含まれ、例えば、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)や、チタン酸バリウムがある。好適な誘電体材料の具体例としては更に、種々の層状超格子材料があり、それらのうちには、単なる誘電体材料であるものも、また強誘電体材料であるものも含まれ、例えば、タンタル酸ストロンチウムビスマス、ニオブ酸ストロンチウムビスマスタンタル、それに、ニオブ酸バリウムビスマスがある。ABO3型のペロブスカイト材料について記載した文献には、Franco JonaとG.Shiraneの共著である「Ferroelectric Crystals」(Dover Publications, New York)があり、その第108頁以降に説明されている。また、層状超格子材料について記載した文献には、米国特許第5,519,234号(1996年5月21日発行)がある。フェライト材料層114と組合せる第2の層を形成するために使用することのできるその他の材料としては、La(1-x)SrxMnO3(LSM)やFe3O4等の導電性酸化物材料があり、また、例えばLa0.67Sr0.33MnO3や、LaxCa(1-x)MnO3ないしLaxPb(1-x)MnO3等で表される磁気抵抗材料があり、更に、BaTiO3+BiFeO3をはじめとする種々のシグネット磁性体材料、BaO.6Fe2O3等をはじめとする種々のマグネトプラムバイト材料、イットリウム鉄ガーネット(3Y2O3.5Fe2O4ないしY6Fe10O24)等のガーネット材料、それにその他の多くの材料がある。
図3の実施の形態で使用することができ、また、本明細書において開示するその他の種々の実施の形態においても使用することのできる、種々の材料の分類を一覧にして示したのが以下の表1である。尚、表中に共通特性として示したものは、おおむね共通する特性であり、その分類中の材料であってもその共通特性を
Figure 0003852619
持たないものがある。組成式に中にピリオドが含まれているものは、様々な比率を取り得るその材料の2つの構成部分をピリオドによって分離して示したものである。例えばBaO.6Fe2O3は、1単位のBaOと、6単位のFe2O3のとの組合せを意味しており、これは、マグネトプラムバイト材料やシグネット磁性体材料等の材料の一般的な表記法である。表1には、誘電体材料の一種として「複合材料」も記載してある。この複合材料に該当する材料には数多くのものがあり、それらについて以下に説明して行く。本開示において使用する「複合材料」という用語は、例えば、ポリマー材料の中にセラミックパウダーを均一に分散させた材料のように、少なくとも2種類の材料を均一に混合して生成した材料を意味するものである。
図5は、3種類の、いずれも高誘電率材料層とフェライト材料層とから成る多層型の電磁波吸収タイル106Aの電磁波吸収性能を示したグラフである。曲線117、118、119の各々は、周波数の関数としての反射損失を表しており、反射損失の単位はデシベル(dB)、周波数の単位はギガヘルツ(GHz)である。反射損失というのは、側面109へ入射する電磁波の強度と側面109から反射する電磁波の強度とを比較して測定した値である。3つの曲線はいずれも、室温で測定した値を示している。曲線117は、層112を厚さ1mmのタンタル酸ストロンチウム(SrTa2O6)の層とし、層114を厚さ5mmのニッケル亜鉛フェライト(Ni0.4Zn0.6Fe2O4)の層とした電磁波吸収タイル106Aの、周波数の関数としての反射損失を表しており、後者のニッケル亜鉛フェライトは、2種類のフェライト材料(NiFe2O4及びZnFe2O4)から成る固溶体である。曲線118は、層112を厚さ1mmのタンタル酸ストロンチウム(SrTa2O6)の層とし、層114を厚さ4mmのニッケル亜鉛フェライト(Ni0.4Zn0.6Fe2O4)の層とした電磁波吸収タイル106Aの、周波数の関数としての反射損失を表している。曲線119は、層112を厚さ1mmのタンタル酸ストロンチウム(SrTa2O6)の層とし、層114を厚さ5mmのマンガンフェライト(MnFe2O4)の層とした電磁波吸収タイル106Aの、周波数の関数としての反射損失を表している。これらのうち、SrTa2O6の誘電率は約90であり、Ni0.4Zn0.6Fe2O4の誘電率は約10であった(図7参照)。一般的に、電磁波吸収パネルの技術分野では、入射電磁波に対して20dB以上の反射損失を発生する材料であれば、良好な電磁波吸収材料であると見なされている。なぜならば、20dBという電磁波吸収率は、電磁波に対する建物の影響の大きさをはっきりと異なったものとするのに充分なほどに電磁波の強度を低下させることのできるものであり、反射電磁波がこれだけ減衰していれば、現在使用されている平均的な電子回路によるフィルタ処理によって、その反射電磁波を除去することができるからである。厚さ1mmのタンタル酸ストロンチウム層と、厚さ5mmのニッケル亜鉛フェライト層とから成る電磁波吸収タイルの吸収周波数領域は、曲線119が示す通りであり、それによれば、この電磁波吸収タイルが、約0.1GHz〜0.3GHz(即ち、100MHz〜300MHz)の周波数領域の全域において良好な電磁波吸収材として機能し得ることが分かる。そして、この電磁波吸収タイルのニッケル亜鉛フェライト層の厚さを1mmだけ減じたならば、曲線118で示すように、良好な電磁波吸収材として機能し得る周波数領域が、約0.25GHz〜0.5GHzへ移動する。また、この電磁波吸収タイルのフェライト材料をマンガンフェライトに変えた場合には、良好な電磁波吸収材として機能し得る周波数領域が約0.5GHz〜0.65GHzへ移動する。従って、この周波数領域での電磁波吸収が重要であるということが、建物の電磁波障害影響評価書に示されている場合には、マンガンフェライトを使用した電磁波吸収タイルを選択することが適当である。一般的にフェライト材料は、その複素誘電率の実数部ε′が小であり、その複素透磁率の虚数部ε″が小または中であり、その複素透磁率の実数部μ′が小であり、その複素透磁率の虚数部μ″が大である。
図5の曲線から明らかなもののうち、おそらく最も重要であると思われる事実は、材料の厚さを僅かに変化させただけで、また、材料の材質を異ならせることによって、吸収ピーク周波数並びに吸収ピーク幅が大きく影響されるということであろう。従って、高誘電率材料とフェライト材料とを使用した電磁波吸収材は、その設計仕様を適宜に定めることで吸収周波数の調節を行なうことができ、それによって、テレビ放送周波数帯の全域である0.1GHz〜約8GHzの領域のうちのどこでも望む部分に、約200MHzの領域幅を有する吸収周波数領域を設定することができる。
2種類以上のフェライト材料から成る固溶体材料を用いて形成した電磁波吸収材106Bを図4に示した。このような固溶体材料は、本来的に、1種類のフェライト材料から成る電磁波吸収材より優れており、また特に、ある特定の周波数領域における電磁波吸収が重要である場合に優れていることが判明した。吸収ピーク周波数及び吸収ピーク幅は、その固溶体材料に含まれている個々のフェライト材料の比率と、その電磁波吸収材の厚さとに、大きく影響される。このことを示したのが図6であり、同図は、6種類のニッケル亜鉛フェライト固溶体材料の吸収特性を示したグラフである。それら固溶体材料の化学組成式と、それら固溶体材料で形成した各々の電磁波吸収タイルの厚さとを以下の表2に示した。
Figure 0003852619
図6に示した測定結果から明らかなように、固溶体材料で形成した電磁波吸収タイルは、図3の多層構造のタイルと同様に、電磁波吸収タイルの吸収周波数領域を、所望の周波数領域に設定するために有用なものである。更にそれと共に、Ni0.4Zn0.6Fe2O4という固溶体材料、並びにNi0.50Zn0.50Fe2O4という固溶体材料は、テレビ放送周波数帯の全領域において20dB以上の反射損失をもたらすことができ、特にNi0.4Zn0.6Fe2O4はVHF放送周波数帯における電磁波吸収に適しており、またNi0.50Zn0.50Fe2O4はUHF放送周波数帯における電磁波吸収に適している。あるフェライト材料の電磁波吸収材料としての性能の如何は、そのフェライト材料の周波数の関数としての複素誘電率及び複素透磁率に関係している。本開示において「複素誘電率」というのは、その単位が誘電率に対応しているパラメータである。即ち、「複素誘電率」の実数部が誘電率に等しい。図7及び図8は、夫々、固溶体フェライト材料Ni0.4Zn0.6Fe2O4の、複素誘電率εと複素透磁率μとを示したグラフである。図7は、その複素誘電率の実数部ε′と、虚数部ε″とを、周波数(GHz)の関数として示し、図8は、その複素透磁率の実数部(誘電率)μ′と、虚数部μ″とを、周波数(GHz)の関数として示している。これらの曲線からは教えられるところが多い。殆どの材料では、複素誘電率の虚数部ε″と、複素透磁率の虚数部μ″とは、それらパラメータの実数部と比較してはるかに小さい。しかしながら、ニッケル亜鉛フェライトでは、その複素透磁率の虚数部μ″が、実数部μ′より大きい。また、この種のフェライト材料では、その複素透磁率の虚数部μ″が、他の材料では見られないほど大きな値を有する。
2種類以上のフェライト材料を「混用」して電磁波吸収材106に所望の電磁波吸収性能を持たせる方法としては、もう1つの方法があり、それは、フェライト材料層を多層構造として電磁波吸収材を形成するというものである。このようなフェライト多層構造とした電磁波吸収材106Cを図9に示した。本発明のこの実施の形態では、電磁波吸収材106Cを2層以上の複数のフェライト材料層150及び152で構成し、フェライト材料層150のフェライト材料と、フェライト材料層152のフェライト材料とを異なったものとする。この実施の形態でも、吸収ピーク周波数と吸収曲線の吸収領域幅とは、フェライト材料層150及び152に使用しているフェライト材料の材質と、それらフェライト材料層の厚さとに影響される。図16には、マンガンフェライトから成るフェライト材料層150と、ニッケル亜鉛固溶体フェライトから成るフェライト材量層152とを、様々な厚さで組合せて多層構造とした電磁波吸収材106Cの、周波数(GHz)の関数としての反射損失(dB)を示したグラフである。各々の多層構造において組合せたマンガンフェライト層とニッケル亜鉛フェライト層の厚さは、以下の表3に示す通りである。
Figure 0003852619
表3に示したフェライト多層構造の電磁波吸収材を個別に見るならば、それら電磁波吸収材のいずれもが、テレビ放送周波数帯の全域の約3分の2をカバーする広い周波数領域に亙って20dB以上の反射損失を達成していることが分かる。例えば、厚さ1.5mmのMnFe2O4層と、厚さ4.5mmのNi0.4Zn0.6Fe2O4層とを組合せて構成したフェライト多層構造の電磁波吸収材106Cに対応した曲線152を見るならば、この電磁波吸収材106Cが、VHFテレビ放送周波数帯の全域に亙って極めて効果的に電磁波を吸収することが分かる。また、表3に示した5通りの電磁波吸収材を全体として見るならば、図16に示した結果から明らかなように、複数のフェライト層を重ね合わせて構成したフェライト多層構造の電磁波吸収材106Cは、反射損失の絶対値に大きな変化を発生させることなく、テレビ放送周波数帯の心臓部に相当する比較的広い周波数領域の中の任意の特定の周波数に、その吸収ピーク周波数を設定するような設計が可能であることが分かる。
図10は、本発明にかかる電磁波吸収材106の更に別の実施の形態106Dを示した図である。この実施の形態は、高誘電率材料層160と、フェライト材料層162と、低誘電率材料層164とで構成したものである。高誘電率材料層160として用いる材料の好ましい具体例は、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)等の強誘電体セラミック材料であるが、ただし、その他の高誘電率材料を使用することも可能であり、例えばBSTをはじめとする種々のABO3型のペロブスカイト材料や、層状超格子材料、それに、例えばBaTiO3+BaFeO3等のシグネット磁性体材料等を使用することができる。尚、層状超格子材料について詳細に説明した文献としては、米国特許第5,519,234号(発明者:Araujo et al.、特許日:1996年5月21日)がある。シグネット磁性体材料には、BaTiO3+BaFeO3、BaTiO3+BiFeO3、それに、BaO.3BaTiO3.3Fe2O3等がある。フェライト材料層162に用いる材料の好ましい具体例はNi0.4Zn0.6Fe2O4であるが、ただし、先に説明したその他の種々のフェライト材料も使用可能である。低誘電率材料層164に用いる材料の好ましい具体例は、種々のポリマー材料であり、好適なポリマー材料には、例えば、テフロン(商標)、ポリカーボネート、それにButvar(商標)等のポリビニルがあるが、ただし、その他のプラスチック材料や、比較的軽量の低誘電率材料を使用することも可能である。
図17は、固溶割合が50:50のBaTiO3+BaO.6Fe2O3から成る厚さ1mmの高誘電率材料層と、厚さ5mmのNi0.4Zn0.6Fe2O4層と、厚さ5mmのテフロン層とで構成した電磁波吸収材を備えた電磁波吸収パネル100について、コンピュータシミュレーションを実行して求めた、周波数(GHz)に対する反射損失(dB)を示したグラフである。この電磁波吸収パネルは、テレビ放送周波数帯の全域に亙って約30dBの反射損失を達成しており、この反射損失の値は、この周波数領域のものとしては、現在知られているどの電磁波吸収パネルの反射損失よりも優れたものである。更に、この電磁波吸収パネルは、空港の建築物に適用するという目的においても非常に優れたものであり、なぜならば、空港の管制システムの周波数領域である約0.1GHz〜約0.4GHzの領域において良好な電磁波吸収性能を発揮するからである。
図11は、電磁波吸収材106の更に別の実施の形態106Eを示した図であり、この実施の形態106Eのおいては、フェライト材料層166と高誘電率材料層170との間にポリマー材料層168を挟み込んである。この実施の形態の夫々の材料層に使用する材料の好適な具体例は、図10の実施の形態に使用する対応する夫々の材料の具体例と同じものであり、図11の実施の形態が、図10の実施の形態と異なる点は、それら材料層の配設順序だけである。図18は、厚さ5mmのNi0.4Zn0.6Fe2O4層と、厚さ4mmのポリカーボネート層と、バリウムとストロンチウムの組成割合を70:30としたBST(即ちBa0.7Sr0.3TiO3)から成る厚さ1mmの高誘電率材料層とで構成された、フェライト/ポリマー/高誘電率材料から成る多層構造の電磁波吸収材106Eを備えた電磁波吸収パネル100について、コンピュータシミュレーションを実行して求めた、周波数(GHz)に対する反射損失(dB)を示したグラフである。この実施の形態は、800MHz〜900MHzの周波数領域において良好な電磁波吸収性能を発揮する。従って、この周波数領域の電磁波吸収が重要である場合に、具体的には例えば、吸収すべき電磁波が例えば無線ローカルエリアネットワーク(LAN)システムの電波である場合に、この実施の形態は、良好な電磁波吸収パネルとなり得るものである。
図12は、電磁波吸収材106の更に別の実施の形態106Fを示した図である。この実施の形態は、ポリマー材料とセラミック材料とから成るポリマー-セラミック複合材料層176で構成されている。ポリマー材料の好適な具体例は、ポリカーボネートやポリビニルであるが、ただし、テフロン(商標)をはじめとする、その他の適当な軽量で比較的強度の高いポリマー材料を使用するようにしてもよい。このポリマー材料に、パウダー状のセラミック材料を混練する。セラミック材料には、先に説明したセラミック材料のうちの任意のものを使用することができる。使用可能なセラミック材料の幾つかの好適な具体例を次の表4に示してあり、表4には更に、それらセラミック材料の複素誘電率の実数部ε′と虚数部ε″の夫々の値、それに複素透磁率の実数部μ′と虚数部μ″の夫々の値を併せて示した。尚、それらの値は、100MHz〜1GHzの周波数領域における平均値である。
Figure 0003852619
ポリマー材料をとしてその好適な具体例であるポリカーボネートを選択し、このポリマー材料(ポリカーボネート)だけから成る材料と、表4に示したセラミック材料のうちの幾つかを選択してそのポリマー材料に混練した複数の複合材料とについて実験を行なった結果を示したのが以下の表5である。この表5においても、そのポリマー材料及びそれら複合材料の各々の、複素誘電率の実数部ε′と虚数部ε″の夫々の値、それに複素透磁率の実数部μ′と虚数部μ″の夫々の値を複素誘電率の実数部ε’及び虚数部ε”の値、並びに複素透磁率の実数部μ’及び虚数部μ”の値を、100MHz〜1GHzの周波数領域における平均値で示してある。
Figure 0003852619
図19は、50%のポリカーボネートと50%の(0.25BaTiO3+0.75BiFeO3)とから成るポリマー-セラミック複合材料を用いて厚さ13mmの複合材料層として形成した電磁波吸収材106Fを備えた電磁波吸収パネル100について、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数(GHz)に対する反射損失(dB)のグラフである。このグラフから明らかなように、この構成とした電磁波吸収パネル100は、ラジオ放送周波数帯の高域部分において良好な電磁波吸収性能を発揮する。
図13は、本発明にかかる電磁波吸収材106の更に別の実施の形態106Gを示した図であり、この実施の形態106Gは、フェライト材料層と180と、もう1つの材料層182とで構成されている。この実施の形態は、図3の実施の形態と比べたとき、フェライト材料層180と、もう1つの材料層182との配設順序が電磁波110の入射側から見て逆になっている点を除き、同一構成となっている。フェライト材料層180の材料には、表1に記した種々のフェライト材料や、図3に関する説明の中で言及した種々のフェライト材料のうちの任意のものを使用することができる。テレビ放送周波数帯の電磁波を吸収することを目的とするのであれば、ニッケル亜鉛フェライトを用いることが好ましく、その中でも特にNi0.4Zn0.6Fe2O4を用いることが好ましい。材料層182の材料としては、表1に記した種々の材料や、図3に関する説明の中で言及した種々の材料のうちの任意のものを使用することができる。図3の実施の形態と同様に、この実施の形態でも、材料層182の材料は誘電体材料とすることが好ましいが、ただし、例えばLSM等のその他の材料のうちにも、吸収周波数領域によっては誘電体材料を使用した場合よりも良好な結果が得られるものがある。この図13の実施の形態106Gでは、フェライト材料層にいかなるフェライト材料を使用するかによって、低誘電率材料を用いて良好な結果が得られる場合と、高誘電率材料を用いて良好な結果が得られる場合とがあることが判明した。これに関して、誘電体材料層を電磁波110の入射側に配設するようにした図3の実施の形態では、常に高誘電率材料を用いるのが好ましいのに対して、誘電体材料層をフェライト材料層と金属材料層104との間に配設するようにした図13の実施の形態では、使用する誘電体材料を誘電率が10以下の低誘電率材料とした場合でも、良好な結果が得られる場合がある。メガヘルツ周波数領域においては、低誘電率材料それ自体は良好な電磁波吸収材となり得ないのであるが、低誘電率材料層をフェライト材料層と金属材料層との間に配設した構成とすることにより、電磁波吸収パネル100の系全体としての電磁波吸収特性が著しく向上するのである。
図20は、フェライト材料層の材料としてNi0.4Zn0.6Fe2O4を使用し、誘電体材料層182の材料としてBSTを使用するものとし、更に、フェライト材料層と高誘電率材料層とを含む多層構造の電磁波吸収材106Gを5通りの厚さに設定して、コンピュータシミュレーションを実行して求めた、周波数(GHz)に対する反射損失(dB)のグラフである。この具体的な実施の形態は、反射材104を装備していない。このグラフの各曲線に対応したフェライト材料層180の厚さは表6に示した通りである。誘電体材料層182の厚さは、電磁波がサンプルを透過しないような充分な厚さとし、即ち、コンピュータシミュレーション上では無限大の厚さに設定した。実際に殆どの材料は、数インチないし1フィートの厚さにすれば、電磁波がサンプルを透過することはなくなる。電磁波がサンプルを透過しないということは、電磁波が吸収されるか反射されるかのいずれかであるということに他ならず、従ってこの実施の形態でも、これまでに説明した実施の形態と同様に、反射損失の値が電磁波吸収性能を適切に表わす指標となる。
Figure 0003852619
図20のグラフから明らかなように、誘電体材料層の厚さをある厚さにしたときに大きな吸収性能が得られ、その他の厚さでは吸収性能が比較的小さい。このことから、反射材104を装備していない電磁波吸収パネルにとっては、それを装備しているもの以上に、電磁波吸収材106Gの厚さが重要であると考えられる。以上と同様のコンピュータシミュレーションを、電磁波吸収材を実施の形態106Gのように構成し、フェライト材料層180の材料にNi0.4Zn0.6Fe2O4を使用し、誘電体材料層182の材料にLSMを使用し、金属材料製の支持板104を装備したサンプルについて実行してグラフを作成した。これによって得られた曲線は、図20のグラフの曲線と同様のものであったが、ただし電磁波吸収率は約32dBとなり、また、厚さに対する吸収率の依存性はそれほど強くなかった。このサンプルの形態で吸収率が最大になったのは、フェライト材料層180の厚さを5mmとし、LSM層の厚さを5mmとしたときであった。また更に、以上と同様のコンピュータシミュレーションを、電磁波吸収材を実施の形態106Gのように構成し、フェライト材料層180の材料にNi0.4Zn0.6Fe2O4を使用し、誘電体材料層182の材料にマグネトプラムバイト材料Ba4Ti3Fe6O19を使用し、金属材料製の支持板104を装備したサンプルについて実行してグラフを作成した。これによって得られた曲線は、図20のグラフの曲線と同様のものであったが、ただし電磁波吸収が最大になったときの反射低減率は約-29dBとなり、また、厚さに対する吸収率の依存性はそれほど強くなかった。このサンプルの形態で吸収率が最大になったのは、フェライト材料層180の厚さを5mmとし、マグネトプラムバイト材料層の厚さを5mmとしたときであった。また更に、以上と同様の第4のコンピュータシミュレーションを、電磁波吸収材を実施の形態106Gのように構成し、フェライト材料層180の材料にNi0.4Zn0.6Fe2O4を使用し、誘電体材料層182の材料に酸化アルミニウム(Al2O3)を使用し、金属材料製の支持板104を装備したサンプルについて実行してグラフを作成した。酸化アルミニウムの誘電率は、約9である。これによって得られた曲線は、図20のグラフの曲線と同様のものであったが、ただし電磁波吸収が最大になったときの反射低減率は約-39dBであった。従って、図20のグラフに示された吸収率よりも僅かに大きかった。また、厚さに対する吸収率の依存性はそれほど強くなかった。このサンプルの形態で吸収率が最大になったのは、フェライト材料層180の厚さを5mmとし、酸化アルミニウム層の厚さを1mmとしたときであった。この形態とする場合に用いる酸化アルミニウム層は溶融被着法によって形成することができ、この方法は、本明細書に開示しているその他の誘電体材料層やフェライト材料層を形成するために用いるセラミック製作法と比べて様々な面においてより容易な方法である。従って、酸化アルミニウムを使用したこの実施の形態は、その点が、その他の実施の形態より優れている。
図14及び図15は、吸収周波数領域の調節性に優れた電磁波吸収システムが得られる、更に別の2つの実施の形態を示した図である。図14に示した電磁波吸収材106Hは、ポリマー材料層186と誘電体材料層188とで構成されている。図15に示した電磁波吸収材106Iは、誘電体材料層190とポリマー材料層192とで構成されている。これらの実施の形態においては、誘電体材料層188及び190の材料に、ポリマー材料層186及び192の材料よりも、大きな誘電率を有する材料を用いることが好ましい。これらの実施の形態は、吸収周波数領域の調節性に優れているものの、反射損失の大きさは、吸収周波数領域によっては20dBを超えることがある程度であって、実際に試した材料の組合せのうちには、図3、図10、及び図11の夫々の実施の形態と同程度に良好な電磁波吸収性能を発揮し得るものはなかった。図14及び図15のいずれの実施の形態においても、ポリマー材料の好適な具体例は、ポリカーボネートやポリビニルであり、誘電体材料の好適な具体例はBSTである。ただし、その他のポリマー材料や誘電体材料も使用可能である。これらの実施の形態にかかる電磁波吸収材106H及び106Hは、製作が用意であり、また比較的軽量に製作し得るという点において特に重要なものである。
図21は、良好な電磁波吸収性能を発揮する電磁波吸収材106の更に別の実施の形態106Jを示した図である。この電磁波吸収材106Jは、フェライト材料層194と、低誘電率材料層196と、高誘電率材料層198とで構成されている。この実施の形態106Jは、図11の実施の形態と同様のものであるが、ただし、ポリマー材料に限定することなく任意の低誘電率材料196を用いた構成であるという点において、より一般化された構成であるといえる。低誘電率材料196の好適な具体例はケイ酸ガラスであり、フェライト材料194及び高誘電率材料198の好適な具体例は、図11に関する説明の中で言及した種々の材料である。この実施の形態106Jは、吸収周波数領域の調節を施すことによって、図11の実施の形態106Eと同程度の良好な電磁波吸収性能を発揮させることができる。電磁波吸収材をこの実施の形態106Jのように構成するものとし、フェライト材料層194にNi0.4Zn0.6Fe2O4を使用し、低誘電率材料層196にケイ酸ガラスを使用し、高誘電率材料層198にBSTを使用するものとして、コンピュータシミュレーションを実行して反射損失曲線を求めた。電磁波吸収材をこの実施の形態106Jにように構成した場合に最大の電磁波吸収性能が得られるのは、フェライト材料層194の厚さを5mmとし、低誘電率材料層196の厚さを4mmとし、高誘電率材料層198の厚さを1mmとしたときであることが分かった。各層の厚さをこのように設定した電磁波吸収材は、テレビ放送周波数帯の全域において20dB以上の反射損失を達成し、吸収ピークにおける反射損失は35dBに迫る大きな値となることが分かった。
図22、図23、及び図24は、以上に説明した多層構造の原理の教示を拡張して、より多くの層を含む多層構造の電磁波吸収材106を構成する場合の実施の形態を示したものである。図22の実施の形態106Kは、1層のフェライト材料層210と、3層の誘電体材料層212、214、216とで構成されている。フェライト材料層210の材料には、これまでに言及した種々のフェライト材料のうちの任意のものを使用することができ、また、誘電体材料層の材料には、これまでに言及した種々の誘電体材料のうちの任意のものを使用することができる。ただし、この実施の形態106Kでは、誘電体材料層214の材料を、誘電体材料層212や誘電体材料層216とは異なった材料にしている。電磁波吸収材をこの実施の形態106Kのように構成する場合には、例えば、フェライト材料210をNi0.4Zn0.6Fe2O4とし、誘電体材料212をポリマー材料とし、誘電体材料214をLSMとし、誘電体材料216をBSTとすることができる。それら材料層の厚さを様々に設定してコンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数(GHz)に対する反射損失(dB)のグラフを図25に示した。また、そのグラフの各曲線に対応したそれら材料層の厚さを以下の表7に示した。
Figure 0003852619
誘電体材料層を更に増やして本発明を実施することも可能である。誘電体材料層の厚さは比較的薄いため、そのような多くの層から成る多層構造の電磁波吸収パネルを製作することは比較的容易である。
図28の実施の形態106Lは、第1フェライト材料層220と、第1ポリマー材料層222と、第2フェライト材料層224と、第2ポリマー材料層226と、第3フェライト材料層とで構成した電磁波吸収材106を示したものである。この実施の形態106Lにおいても、先に言及した種々のフェライト材料やポリマー材料のうちの任意のものを使用することができる。図26は、実施の形態106Lのように構成した電磁波吸収材について、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失(dB)のグラフであり、このコンピュータシミュレーションにおいては、フェライト材料層220、224、及び228をNi0.4Zn0.6Fe2O4で形成し、ポリマー材料層222、226を表5にその特性を示したポリカーボネートで形成したものとした。図26のグラフ中の各曲線に対応した夫々の層の厚さは、以下の表8に示す通りである。
Figure 0003852619
図24の実施の形態106Mは、フェライト材料層とポリマー材料層とを組合せたものを1つの単位とし、それをn組重ねて構成した電磁波吸収材を示したものであり、ここでnは、2以上で、100以下とすることが好ましい。即ち、この実施の形態106Mでは、1つの電磁波吸収基本単位が、1層のフェライト材料層230と1層のポリマー材料層231とで構成されている。そして、図示の如く、数字1で示した電磁波吸収基本単位と同じものがn個重ね合わせられている。フェライト材料層の材料には、これまでに言及した種々のフェライト材料のうちの任意のものを使用することができ、また、ポリマー材料層の材料には、これまでに言及した種々のポリマー材料のうちの任意のものを使用することができる。全ての電磁波吸収基本単位のフェライト材料層を同じフェライト材料で形成し、またそれらのポリマー材料層も同じポリマー材料で形成することが好ましいが、ただし本発明は、基本単位1〜基本単位nのうちのいずれかの基本単位を、或いは全ての基本単位を、その他の基本単位とは異なった材料で形成するような実施の形態とすることも可能である。図27は、実施の形態106Mのように構成した電磁波吸収材について、コンピュータシミュレーションを実行して求めた周波数に対する反射損失(dB)のグラフを示した図であり、このコンピュータシミュレーションにおいては、フェライト材料層230をNi0.4Zn0.6Fe2O4で形成し、ポリマー材料層231を表5にその特性を示したポリカーボネートで形成したものとし、更にn=50であるものとした。図27のグラフ中の各曲線に対応した基本電磁波吸収要素のフェライト材料層230及びポリマー材料層231の厚さは、以下の表9に示す通りである。
Figure 0003852619
以上に説明した実験結果の全体を解析して分かったことは、最良といえる電磁波吸収材106の構成は、おそらく図30に示した実施の形態106Nのような構成であろうということである。この電磁波吸収材106Nは、μ″の大きな材料の層302を、高誘電率材料層300と低誘電率材料層304との間に挟み込んだものである。高誘電率材料層を電磁波110の入射側に配設し、低誘電率材料層を支持構造100の側、即ち金属材料製の反射材104の側に配設することが好ましい。中間層302の複素透磁率の虚数部μ″は、単にその値が大きいというだけではなく、それが複素透磁率の実数部μ′より大きなものであることが好ましい。高誘電率材料の誘電率は100以上であることが好ましく、低誘電率材料の誘電率は5以下であることが好ましい。
以上に説明した技術的改良は、実験結果によって裏付けられたものである。総括的に述べるならば、本発明者らは、フェライト材料をはじめとするある種の材料については、その材料を使用することによって良好な結果が得られるのは、その材料のμ”が大きいことによるものであると考えている。ただし、実際に得られた多くの良好な結果の全てについて、その理由を説明することは困難であり、それは特に、使用した材料の多くは、その良好な結果を説明できるような容易に特定できる特性を持つものではないからである。しかしながら、以上に開示した実験結果を入念に解析して得た結論として、現在では、良好な電磁波吸収性能のうちには、4分の1波長板の原理に関係したものがあると考えている。4分の1波長板の原理を利用した電磁波吸収パネルは、金属材料層等で構成した100%反射材の前面に、波長の4分の1に等しい厚さの材料層を配設したものである。即ち、4分の1波長板の電磁波吸収の原理が効果を発揮するのは、その材料層の厚さtが、
(式1) t=λeff/4
を満たす場合に限られ、この式において、λeff=λ/(ε′μ′)1/2であり、λは入射する電磁波の波長である。一見したところ、この電磁波吸収の原理は、これまでに説明してきたような比較的広い吸収周波数帯に対しては成り立たないように思われる。それは、使用している材料層の厚さが、通常のテレビ放送周波数帯における波長の4分の1と比べてはるかに薄く、また、式1は非常に狭い波長領域でしか成り立たないはずだからである。しかしながら電磁波は、同じ周波数であっても、高誘電率材料中を伝播しているときには空気中を伝播しているときよりはるかに波長が短くなる。また、ある種の電磁波吸収材106の構造においては、そのε′×μ′の値が、以下の式2で示される周波数の関数となっているものがある。
(式2) f=1/(ε′μ′)1/2
この式において、fは波長がλの電磁波の周波数である。この場合、その電磁波吸収材106の構造は、式2が成り立つ周波数領域の全域に亙って良好な電磁波吸収材として機能することになる。従って、ある電磁波吸収材の構造のε′×μ′の実効値が、比較的広い周波数領域に亙って式2を満足する場合、即ち、
(式3) (ε′effμ′eff)1/2≒1/f
を満足する場合、また更に換言するならば、その広周波数領域における屈折率の実行値をneffとするときに、
(式4) neff≒1/f
を満足する場合には、その構造は良好な電磁波吸収材として機能するものとなる。前掲の表4及び表5を見れば分かるように、本発明に使用する材料の多くは、そのμ′effが、1または1に非常に近い値である。それら材料のうちの幾つかを用いて製作した構造のμ′effの値も、やはり1または1に非常に近い値となる。それら材料を用いて製作した構造であって、しかも、所与の周波数領域において、
(式5) (ε′eff)1/2≒1/f
を満足する構造は、その周波数領域において良好な電磁波吸収材として機能するものとなる。
以上から次のことが分かる。即ち、ある周波数領域において周波数の上昇と共にそのε′×μ′の実効値が低下して行くような材料ないし構造、ないしは、ある周波数領域において周波数の上昇と共にその誘電率の実効値が低下して行きしかもその周波数領域においてμ′の実効値が略々1のままであるような材料ないし構造は、その厚さが式1に示された厚さに近ければ、少なくともその周波数領域の一部分において良好な電磁波吸収材として機能するものとなる。換言すれば、ε′が周波数の上昇と共に低下することによって、4分の1波長の条件を表した式1が略々成り立つ周波数領域が広がり、従ってその材料ないし構造が事実上の4分の1波長板として機能する領域が広がるのである。また、その周波数領域内で誘電率の実効値が低下する際の傾きが、式5で示された傾きに近付くほど、その材料ないし構造が良好な電磁波吸収材として機能する周波数領域が広がることになる。以上を念頭においた上で、あらためて図7及び図8を見れば、なぜニッケル亜鉛フェライトが、特に高誘電率材料と組合せたときに、広い周波数領域において良好な電磁波吸収材として機能し得るのかが明らかとなる。
良好な電磁波吸収性能を発揮するためのもう1つの重要なファクターは、隣接する層どうしの間のインピーダンスマッチングである。即ち、隣接する層どうしはインピーダンスを略々等しくすべきである。電磁波吸収パネル100の表面に位置する層に関しては、これは、インピーダンスを1または1に近い値にするということであり、なぜならば空気のインピーダンスは1だからである。隣接する層どうしのインピーダンスが大きく異なると、それら2つの層の界面で電磁波が反射するようになり、より深くに位置している層が電磁波吸収に充分に貢献できなくなる。インピーダンスの定義はz=([μ′-iμ″]/[ε′-iε″])1/2である。このように複素数で表記されると、直感的な把握が困難であるが、ε″及びμ″は本質的に損失を表わすものであって、マッチングさせる必要のある重要なパラメータは(μ′/ε′)1/2であるということを理解すれば、幾分理解し易くなると思われる。空気のインピーダンスは1である。図7及び図8から明らかなように、フェライト材料であるNi0.4Zn0.6Fe2O4では、200MHzにも及ばんとするかなりの広さの周波数領域においてμ′=ε′であり、従ってその(μ′/ε′)1/2の値は1に近い値を取っている。この事実と、このフェライト材料が前段落で説明した条件を満たすものであるという事実とが組合わさることで、このフェライト材料が良好な電磁波吸収材として機能し得ることの理由となっている。
以上から、電磁波吸収パネルの好適な設計方法が得られる。第1に、所望の吸収周波数領域の近傍の周波数領域において周波数の上昇と共に屈折率の値が低下し、従ってその周波数領域において電磁波を良好に吸収するような材料の組合せを決定する。次に、その材料の組合せに対して吸収周波数領域の調節を施して、その屈折率の値を理想値である式4の値に近付けることによって、その吸収周波数領域を広げる。更に、必要とあらば、それら材料の材質やそれら材料層の相対的な厚さに調節を施すことによって、吸収ピーク周波数を移動させたり、隣接する材料層どうしの間のインピーダンスをできる限りマッチングさせるようにする。そして、以上を反復して実行することで、一旦得られた材料の組合せに更に繰り返して調節を施して、式4に近付いて行くようにする。
特に、周波数の上昇と共にその誘電率の実効値が低下して行くような材料は、表面層、即ち、電磁波110の入射側に最も近い層の材料として用いた場合に非常に効果的であり、それによって多層構造の電磁波吸収システムの電磁波吸収特性を向上させ得ることが判明している。
以上の説明にした多くの実施の形態において、ポリマー-セラミック複合材料が使用されている。そこで、ポリマー-セラミック複合材料の製造方法のフローチャートを図28に示した。最初に、所望のセラミック材料のパウダー280と、ポリマー材料のパウダー281と、そのポリマー材料を溶解する溶剤282とを、ステップ284で混合する。例えば、ポリマー材料としてButvar(商標)を使用する場合には、適当な溶剤は、テトラヒドロフラン(THF)等である。混合したならば、セラミックパウダーが溶液中に懸濁した状態になる。こうして得られた溶液を攪拌して均質溶液にし、続いてステップ286において、それを型枠に注入する。続いてその複合材料を、適当な時間に亙って適当な温度に維持することで硬化させる。例えば、ポリマー材料がButvar(商標)である場合には、適当な温度は室温であり、適当な時間は12時間である。
以上の説明からも明らかなように、このようにして製作するポリマー-セラミック複合材料は、従来の電磁波吸収材料と比べたとき、幾つもの利点を有している。先ず、このようなポリマー-セラミック複合材料は、軽量であることに加えて、室温で容易に製作することができる。また、このようなポリマー-セラミック複合材料では、異なった性質を有する複数の材料を容易に組合せることができ、例えば、強誘電体材料とフェライト材料とを、或いは、高誘電率材料とフェライト材料とを容易に組合せることができ、従って、個々の具体的な電磁波反射による問題を解決するのに適するように、材料の吸収周波数領域の調節を行なうことができる。更には、このようなポリマー-セラミック複合材料を用いて製作した電磁波吸収材106は、比較的大きな可撓性を有するため、取り扱いが容易であり、また一般的に建材として用いるのに適したものとなる。
本発明にかかる電磁波吸収材106に用いられる種々の誘電体材料、強誘電体材料、フェライト材料、及びその他の材料は、その多くがセラミック材料である。それらセラミック材料はいずれも、図29のフローチャートに示した製造方法によって製造したものである。ステップ291では、所望のセラミック材料のパウダー290を成形型に充填する。この成形型はステンレス鋼製のものであることが好ましい。ステップ292では、成形型の中のセラミックパウダーを等方的に圧縮する。その圧縮の際の圧力の好適な具体例は、50,000ポンド/平方インチ(PSI)(約3,500kg/cm2)である。続いてステップ296において、圧縮したセラミック材料を成形型から取出して燒結する。燒結温度の好適な具体例は900℃〜1100℃である。続いてそのサンプル(試験片)に対して、必要であれば整形を施し、そして試験を行なう。その試験が誘電率試験である場合には、成形型から取出した段階で、そのサンプルが既に円板形状に形成されているようにすることが好ましい。磁性試験である場合には、そのサンプルにドリルで穴を穿設し、そのサンプルをドーナツ形状にしてから試験するのがよい。
本発明の1つの特徴として、本発明にかかる多層構造の電磁波吸収材の多くは、従来の電磁波吸収材と比べて、はるかに薄く軽量に製作できるということがある。例えば、本発明によれば、上で説明した高誘電率材料層の好適な厚さは、従来のフェライト材料で形成した電磁波吸収材の好適な厚さと比べて、2分の1ないし10分の1の薄さである。更に、種々の高誘電率材料の多くは、例えばBSTのように、耐候性に優れた硬質セラミック材料である。そのため、表面保護タイル109を薄くしたり、不要化したりすることができる。
本発明のもう1つの特徴として、誘電体材料の誘電率を大きなものとするほど、その誘電体材料を薄くしても、他の材料と組み合わせたときの電磁波吸収性能を良好に保てることも判明している。
本発明の更に別の1つの特徴として、本発明の材料及び構造には、最適な電磁波吸収特性が得られる最適厚さtcが存在しており、また一般的に、この最適厚さを中心とする、良好な電磁波吸収性能が得られるある厚さ領域が存在するということがある。
本発明の更に別の1つの特徴として、誘電率ε′が周波数の関数として変化するような誘電体材料が、良好な電磁波吸収材として機能するものとなり、また特に、そのような誘電体材料を、その誘電率の実効値が式3に従って変化する周波数領域を広げるようなその他の材料と組合せて使用することによって、良好な電磁波吸収材が得られるということがある。
本発明の更に別の1つの特徴として、本発明の実施の形態の略々全てが、比較的容易に吸収周波数領域の調節を施すことができ、それによって吸収周波数領域を、テレビ放送周波数帯の全域及びラジオ放送周波数帯の高域部分の中の特定の周波数領域に設定できるということがある。この吸収周波数帯の調節を行なう方法としては、各々の実施の形態を構成している材料層の材質を変化させる方法、各々の材料層の厚さを変化させる方法、また、複合材料または固溶体材料を使用している場合であればその材料の各成分量を変化させる方法、それに、以上の方法の幾つかを組合せて実行する方法がある。そのため本発明の電磁波吸収パネルは、個々の建築現場に発生する具体的な電磁波環境上の問題の解決に大いに資するものである。
本発明の更に別の1つの特徴として、電磁波吸収という目的に適した最良のフェライト材料はニッケル亜鉛フェライトであるということ、そしてその化学量がNi0.4Zn0.6Fe2O4で表わされるニッケル亜鉛フェライトが最も好ましい材料であるということがある。幾つかの異なった化学量に対応した組成式で表わされる材料についても上で説明した。更に、ニッケル亜鉛フェライトに、マグネシウム等のその他の金属をドーピングするようにしてもよいが、ただし、テレビ放送周波数帯において最良の吸収性能を発揮するフェライト材料は、ドーピングを施していないフェライト材料であることが分かっている。
本発明の更に別の1つの特徴として、低誘電率材料それ自体は、メガヘルツ周波数領域では良好な電磁波吸収材料ではないが、フェライト材料層と金属材料層との間に低誘電率材料層を挟み込んで使用する場合には、低誘電率材料は、電磁波吸収パネルのシステム全体としての電磁波吸収性能を著しく向上させるものであるということがある。
以上、現時点において本発明の好適な実施の形態であると考えられる幾つかの形態について説明したが、本発明は、その概念及び本質的特質から逸脱することなく、それら以外の形態で実施することも可能なものである。本発明にかかる多層構造の電磁波吸収材を使用することによって得られる利点を説明したため、それら電磁波吸収材の変更形態ないし変形形態にも容易に想到すると思われる。従って以上に説明した実施の形態は、あくまでも本発明の具体例を提示するためのものであり、本発明がそれら実施の形態に限定されるものではないことに注意された。本発明の範囲は、添付の請求の範囲に示した通りである。

Claims (6)

  1. 建材として用いられる電磁波吸収パネルにおいて、
    基材と、該基材に支持された電磁波吸収材(112、160、170、198)とを備えており、
    前記電磁波吸収材が、高誘電率材料を含んでおり、
    前記高誘電率材料が、層状超格子材料と、シグネット磁性体材料と、100%>Z>0%とするときZ×BaTiO3+(100%-Z)×BiFeO3で表される材料とから成る部類中から選択された材料である、
    ことを特徴とする電磁波吸収パネル。
  2. 建材として用いられる電磁波吸収パネルにおいて、
    基材と、該基材に支持された電磁波吸収材とを備え、
    前記電磁波吸収材(106)が、ガーネット材料と、磁気抵抗材料と、層状超格子材料と、マグネトプラムバイト材料と、シグネット磁性体材料と、LSMと、Fe3O4と、
    Ni0.4Zn0.6Fe2O4とから成る部類中から選択された材料である、
    ことを特徴とする電磁波吸収パネル。
  3. 前記材料がイットリウム鉄ガーネットを含んでいることを特徴とする請求項2記載の電磁波吸収パネル。
  4. 前記磁気抵抗材料が、La0.67Sr0.33MnO3で表される材料と、0<x<1とするときLaxCa(1-x)MnO3で表される材料と、0<x<1とするときLaxPb(1-x)MnO3で表される材料とから成る部類中から選択された材料であることを特徴とする請求項2記載の電磁波吸収パネル。
  5. 前記電磁波吸収材(176)が、ポリマー材料と前記部類中から選択された材料とを含む複合材料で構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の電磁波吸収パネル。
  6. 前記層状超格子材料が、タンタル酸ストロンチウムビスマスと、ニオブ酸ストロンチウムビスマスと、チタン酸ストロンチウムビスマスと、ジルコン酸ストロンチウムビスマスと、それらの種々の固溶体とから成る部類中から選択された材料を含んでいることを特徴とする請求項1または2記載の電磁波吸収パネル。
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