JP3851675B2 - 物体の断層写真像を作成するシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、一般的には計算機式断層写真(CT)作像に関し、更に具体的に言えば、螺旋走査で取得された投影データから像を再生するための補間アルゴリズムに関する。
【0002】
【従来の技術】
CTシステムでは、X線源が扇形ビームを投射し、このビームは、「作像平面」と呼ばれる直角座標系のX−Y平面内にあるようにコリメートされる。X線ビームは患者のような作像される物体を通過して、放射線検出器の線形配列に入射する。透過した放射線の強度は、物体によるX線ビームの減衰に関係する。線形配列の各々の検出器は、ビーム減衰量の測定値である個別の電気信号を発生する。すべての検出器からの減衰測定値を個別に取得して、透過輪郭を形成する。
【0003】
CTシステム内にあるX線源及び線形検出器配列は、X線ビームが物体と交わる角度が絶えず変化するように、作像平面内で物体の周りをガントリと共に回転させられる。1つのガントリ角度における検出器配列からの一群のX線減衰測定値が、「図(ビュー)」と呼ばれる。物体の「走査」は、X線源及び検出器が1回転する間の相異なるガントリ角度で求められた一組の図で構成されている。軸方向走査では、物体を通り抜けるように求めた2次元スライスに対応する像を構成するようにデータが処理される。一組のデータから像を再生する1つの方法が、この分野では、フィルタ式逆投影方式と呼ばれている。この過程は、ある走査からの減衰測定値を所謂「CT数」又は「ハウンズフィールド単位」と呼ばれる整数に変換し、この整数を用いて、陰極線管表示装置上の対応する画素の輝度を制御する。
【0004】
計算機式断層写真走査は、ストップ・アンド・シュート方式を用いて収集される。ストップ・アンド・シュート方法では、患者を次の位置へ並進させる前に、完全な一組の投影を取得する。画質を保証するために、走査の合間にゼロでない走査間遅延(ISD)を導入する。ISDは典型的には、ガントリが投影データを求めながら一定速度で回転し、且つ次の走査が開始される前に、患者が次の位置へ移動して停止するのを保証するのに十分なくらいに長い。少なくとも患者のスループットについて言うと、この走査モードは効率がよくない。
【0005】
CT走査は連続データ取得方式を用いても取得することができる。このモードでは、ガントリ及び患者の両方が一定速度で動く。この過程全体にわたって、データの取得は連続している。この走査モードは、螺旋走査又は渦巻き形走査として知られている。
螺旋走査には多くの利点(例えば、任意の位置の像の再生及び改良された患者のスループット)があるが、いくつかの欠点もある。例えば、断層写真再生理論の基本的な前提は、データの組内にある各々の投影が同じ物体の線積分を表すことになっている。即ち、減衰マップの分布は、再生平面内で変化しないままでいる。螺旋モードで均質でない物体を走査するとき、物体はデータ取得の間に絶えず並進する。物体が不均質であるため、走査平面内の減衰の分布は絶えず変化する。このような連続的な変化は明らかに、断層写真再生理論の基本的な前提に反する。物体の並進に対して、投影データを正しく補正しないと、望ましくない像のアーティファクト(偽像)が生ずる。
【0006】
この不均質性の問題に対処する種々の補正アルゴリズムが知られている。例えば、本出願人に譲渡された米国特許第5,233,518号には、螺旋補外(HE)アルゴリズムが記載されている。HEアルゴリズムは、螺旋投影の各組は半走査の二組に分割することができるという事実に基づいている。補間(内挿)及び補外(外挿)を実施することにより、予め定められたスライス平面における更に一貫性のある一組の投影を求めることができる。ビームが扇形の形状であることにより、このアルゴリズムから導き出された加重関数は、ラドン空間内の線に沿って連続していない。この不連続性が原因でアーティファクトが起こるのを回避するために、2つの領域の間の一層滑らかな移行を保証するフェザリング・アルゴリズムが用いられている。補外の性質によっても、負であるか又は1よりも大きい重みが生ずる。
【0007】
それに対応する補外方式よりも一層安定である補間アルゴリズムを提供することが望ましい。更に、アーティファクトのない再生を保証すると共に、このような再生の雑音特性を改善するために、フェザリング・アルゴリズムの必要をなくすことが望ましい。
【0008】
【発明の要約】
本発明の一形式に従って像スライスを再生する際に、投影データ配列が作成される。一旦配列が作成されたら、配列内のデータ要素に重みを割り当てる。その後、加重データを用いて加重投影データ配列を作成する。加重投影データ配列を用いて、データをフィルタ作用にかけて逆投影する。フィルタ作用及び逆投影の結果として、像データ配列が作成される。
【0009】
加重投影データ配列を作成するために適用される加重関数は、次の通りである。
w(β,γ)=β/(π−2γ) 0≦β≦π−2γ
w(β,γ)=(2π−β)/(π+2γ) π−2γ<β≦2π
後で更に詳しく説明するが、本発明のアルゴリズムは、雑音の抑圧を改善することにより像の発生における性能を改善すると共に、不連続性によるフェザリング・アルゴリズムの必要をなくすことにより性能を改善する。
【0010】
【実施例】
図1及び図2について説明すると、計算機式断層写真(CT)作像システム10が、「第三世代」CTスキャナの代表であるガントリ12を含んでいる。ガントリ12は、ガントリ12の反対側にある検出器配列16に向かってX線ビーム14を投射するX線源13を有している。検出器配列16は2列の検出器素子18によって形成されており、これらの検出器素子は一緒になって、医療患者15を通過した投射されたX線を感知する。各々の検出器素子18は、入射するX線ビームの強度、従って患者15を通過するときのビームの減衰量を表す電気信号を発生する。X線投影データを取得するための走査の間に、ガントリ12及びその上に装着された部品は、回転中心19の周りを回転する。
【0011】
ガントリ12の回転及びX線源13の動作は、CTシステム10の制御機構20によって制御される。制御機構20は、X線源13に対する電力及びタイミング信号を供給するX線制御器22と、ガントリ12の回転速度及び位置を制御するガントリ・モータ制御器23とを含んでいる。制御機構20に設けられたデータ取得システム(DAS)24が、検出器素子18からのアナログ・データをサンプリングし、この後の処理のために、このデータをディジタル信号に変換する。像再生器25がサンプリングされてディジタル化されたDAS24からのX線データを受け取って、高速の像再生を実施する。再生像はコンピュータ26に対する入力として印加され、このコンピュータは大容量記憶装置29に像を記憶する。
【0012】
コンピュータ26は又、キーボードを有しているコンソール30を介して、オペレータからの指令及び走査パラメータを受け取る。関連する陰極線管表示装置32は、オペレータが再生像及びコンピュータ26からのその他のデータを観察することができるようにする。オペレータから供給された指令及びパラメータをコンピュータ26で用いて、DAS24、X線制御器22及びガントリ・モータ制御器23に対する制御信号及び情報を供給する。更に、コンピュータ26は、ガントリ12内で患者15を位置決めするためのモータ式テーブル36を制御するテーブル・モータ制御器34を作動させる。
【0013】
像スライスを再生する際に、典型的には投影データ配列が作成される。一旦配列が作成されたら、配列内にあるデータ要素に重みを割り当てる。その後、加重されたデータを用いて、加重投影データ配列を作成する。この加重投影データ配列を用いて、データをフィルタ作用にかけて逆投影する。フィルタ作用及び逆投影の結果として、像データ配列が作成される。
【0014】
図3を参照して説明すると、投影データから像を再生するために補間(内挿)又は補外(外挿)アルゴリズムを用いるとき、再生平面(POR)を投影データの組の中の中間点に、且つ並進軸線に対して垂直に配置する。PORを2つの末端投影平面(最初及び最後)の間の中点に配置することにより、この中間平面は大まかに言うと、2つの極限の投影の間の差を半分に割るものであるから、投影データの組に固有の最大の誤差は最小限に抑えられる。PORをz軸に対して垂直にするという条件は、PORが常にz軸に対して法線方向である従来の軸方向走査の形式から引き継がれたものである。
【0015】
しかしながら、PORをz軸に対して異なる角度に選択することができない論理的な理由は全くない。例えば、図4に示すように、PORは、角度φが90°未満になるように選択することができる。例示のため、図4の角度φは90°とはかなり異なる場合を示してある。しかしながら、実際には、最初及び最後の投影平面が互いにかなり接近しているので、PORの傾斜の量は非常に小さい。
【0016】
PORを傾斜させる影響が、図5(A)にラドン空間で示されている。特に図5(A)は、ラドン空間内の投影の2次元の図であり、横軸は扇形角度を表しており、縦軸は観察角度を表している。線DCは従来のPORを示しており、回転軸線に対して垂直である。z軸に対して法線方向ではない再生平面が線FGによって表されている。角度φと90°との間の差が増加するにつれて、線FGは線DCから更に遠くへ傾く。
【0017】
螺旋補外(HE)アルゴリズムについて言うと、参照し易いように、データ冗長度のマップが図5(B)に示されている。対応する冗長なサンプルには同じ文字が付されている。例えば、(この図面に向かって見て)左側下隅にある陰影線を施した三角形ABCは、陰影線を施した中央の三角形ABC内にあるサンプルの複製である。両方のサンプルがPOR(線DC)の同じ側にあるので、補外方式が用いられる。その結果、次の加重関数が用いられる。
【0018】
w(β,γ)=(β+2γ)/(π+2γ) 0≦β≦π−2γ
w(β,γ)=(2γ−β−2γ)/(πー2γ) π−2γ<β≦2π
式(1)
関数w(β,γ)は、線β=π−2γに沿ってγが不連続である。更に、2つの陰影線を施した三角形(下側のABC及び上側のBDE)におけるw(β,γ)は負になる。不連続をなくすために、線β=π−2γにわたって、w(β、γ)にフェザリングを施す。w(β,γ)のフェザリングにより、冗長なサンプルの重みの和が1に等しいという性質が失われる。
【0019】
PORを、2つの半走査を分離する線AEと重なるように選択した場合、ラドン空間全体が、今度は図6(A)に示すように2つの半走査領域に分割される。図6(A)の2つの点p1 及びp2 は、走査内の任意の冗長なサンプルの対を表している。実際の物理的な空間内の対応するサンプルを上下方向に見た図が図6(B)に示されている。PORは公称位置からわずかしか傾いていない。この傾きの最悪の場合は、10mmのスライスの厚さを用いたときに起こる。この状態では、再生平面は従来のPORに対して0.3°しか回転していない。
【0020】
以下の説明で、z1 及びz2 は点の対p1 及びp2 のz軸座標をそれぞれ表す。更に、PORの交点を、点の対を通り、z軸に平行な2つの線zγ1及びzγ2で表す。一次補間の操作の後に、点p1 に対する加重係数w1 は次のようになる。
1 =(z2 −zγ2)/((z2 −zγ2)+(zγ1−z1 )) 式(2)
同様に、点p2 に対する加重係数w2 は、次のようになる。
【0021】
2 =(zγ1−z1 )/((z2 −zγ2)+(zγ1−z1 )) 式(3)
患者及びガントリの両方が一定速度で動くことを考慮に入れると、テーブル位置zは角度(オブジェクション・アングル)βに比例する。従って、
1 =(β2 −βγ2)/(β2 −β1 +βγ1−βγ2) 式(4)
2つのサンプリング点が相補的なサンプリングの対を形成するためには、β2 =β1 +π+2γ1 という関係が成立しなければならない。PORがβ=π+2πによって定義されることを考慮すると、
1 =β1 /(π−2γ1 ) 式(5)
同じ過程に従って、p2 に対する加重係数は、
2 =(2π−β2 )/(π+2γ2 式(6)
再生平面β=π−2γでは、両方の加重係数が1に等しい。このことは、加重関数がどこででも連続であることを示す。更に、β=0及びβ=2πの両方で、加重係数はゼロに近付く。投影の非一貫性が両方の位置で最悪になると予想されるので、これは望ましい性質である。更に、両方の式の範囲は、それぞれの領域で[0,1]である。
【0022】
この加重関数は、次のように表すことができる。
Figure 0003851675
本発明のアルゴリズムの雑音特性について言うと、点ごとに投影に対してこの加重関数を乗ずるので、雑音エネルギ、w(β,γ)のN(γ)は、β方向に沿った、加重関数の自乗の積分と定義することができる。走査される物体が、同じ中心(イソセンタ)に中心を有している円筒形の一様なファントムである場合、雑音エネルギは、加重過程によるチャンネルごとの雑音の増加の目安になる。本発明のアルゴリズムに対する雑音エネルギは、次のようになる。
【0023】
【数1】
Figure 0003851675
【0024】
雑音エネルギは、γ(検出器チャンネル)の関数ではない。言い換えれば、投影にw(β,γ)を乗ずる影響は、検出器全体にわたって一様である。雑音特性はできるだけ均質であるべきであるから、この性質は望ましい性質である。他方、HEアルゴリズムに対する雑音エネルギは、次のようになることを証明することができる。
【0025】
Figure 0003851675
HEアルゴリズムでは、雑音エネルギは検出器チャンネルの関数である。イソセンタのチャンネル(γ=0)では、両方のアルゴリズムに対する雑音エネルギの目安は同一である。γが増加するにつれて、HEアルゴリズムの雑音エネルギの目安は常に、本発明のアルゴリズムの場合よりも大きい。このことは、本発明のアルゴリズムが雑音の抑制の点では、幾分か作用が一層よいことを示すものである。
【0026】
前に説明したように、本発明のアルゴリズム及びHEアルゴリズムのいずれも、像の再生のために、2π回転の投影を用いている。しかしながら、本発明のアルゴリズムに対する加重関数は連続である。従って、フェザリングを必要としない。更に、本発明のアルゴリズムは、加重の値を0と1との間に制限している。この結果、雑音の抑制の点で性能が改善される。
【0027】
本発明の種々の実施例について上に述べたところから、本発明の目的が達成されたことは明らかである。本発明を詳細に説明し、図面に示したが、これは例示であって、本発明を制約するものと解してはならないことをはっきりと承知されたい。従って、本発明の要旨は、特許請求の範囲のみによって限定されることを承知されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を用いることのできるCT作像システムの見取図である。
【図2】図1に示すCT作像システムの概略ブロック図である。
【図3】投影データの組の中間点にある再生平面を示す図である。
【図4】傾いた再生平面を示す図である。
【図5】図5(A)はラドン空間における再生平面の図であり、図5(B)はHEアルゴリズムに関連するデータ冗長度のマップである。
【図6】図6(A)は投影データ点の冗長なサンプルの対を示す図であり、図6(B)は実際の物理的な空間における対応するサンプルを示す図である。
【符号の説明】
10 計算機式断層写真作像システム
12 ガントリ
13 X線源
16 検出器配列
24 データ取得システム
25 像再生器

Claims (3)

  1. 物体の断層写真像を作成するシステム(10)であって、該システムは、前記物体の螺旋走査を行うと共に、像平面内の且つ軸線の周りの複数のガントリ角度で求められた一連の扇形ビーム投影から前記螺旋走査の間にビーム投影データを収集する手段を備えており、
    前記断層写真像を作成するシステム(10)は更に、データ取得システム(24)を含んでおり、該データ取得システムは、
    (a) 前記螺旋走査で収集されたデータを用いて投影データ配列を作成し、
    (b) 該投影データ配列内の各々のデータ要素に重みを割り当てることにより加重データ配列を作成するように構成されており、前記重みは、
    (i) 前記扇形ビーム投影で収集されたデータから投影データ配列を発生し、
    (ii) z軸に垂直ではない補間/補外平面であって、最初の投影平面と最後の投影平面との間にある、補間/補外平面を選択し、
    (iii) 該選択された前記補間/補外平面に対して、前記投影データ配列を用いて加重投影データ配列を作成することにより、割り当てられている物体の断層写真像を作成するシステム。
  2. 物体の断層写真像を作成するシステム(10)であって、該システムは、前記物体の螺旋走査を行うと共に、像平面内の且つ軸線の周りの複数のガントリ角度で求められた一連の扇形ビーム投影から前記螺旋走査の間にビーム投影データを収集する手段を備えており、
    前記断層写真像を作成するシステム(10)は更に、データ取得システム(24)を含んでおり、該データ取得システムは、
    (a) 前記螺旋走査で収集されたデータを用いて投影データ配列を作成し、
    (b) 該投影データ配列内の各々のデータ要素に重みを割り当てることにより加重データ配列を作成するように構成されており、前記重みは、
    (i) 前記扇形ビーム投影で収集されたデータから投影データ配列を発生し、
    (ii) z軸に垂直ではない補間/補外平面であって、最初の投影平面と最後の投影平面との間にある、補間/補外平面を選択し、
    (iii) 該選択された前記補間/補外平面に対して、前記投影データ配列を用いて加重投影データ配列を作成し、
    (c)該加重投影データ配列を用いて、フィルタ作用及び逆投影を行うことにより、割り当てられている物体の断層写真像を作成するシステム。
  3. 加重投影データ配列を作成することは、前記投影データに次の加重関数
    w(β,γ)=β/(π−2γ) 0≦β≦π−2γ
    w(β,γ)=(2π−β)/(π+2γ) π−2γ<β≦2π
    を適用することを含んでいる請求項1または2に記載のシステム(10)。
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