JP3851346B2 - 光硬化式歯補強方法及びそのための装置 - Google Patents

光硬化式歯補強方法及びそのための装置 Download PDF

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Description

発明の背景
本発明は、神経を抜去した歯根及び歯の補強方法と、ポリマー材料から成る比較的柔軟な樹脂で形成した歯科用合釘とに関する。この合釘は、好ましくは光透過性のものであり、歯髄を除去した歯根の歯根壁を内部から補強するための補強用充填部を形成する際のセンタリングの機能を提供すると共に、歯内処置を再度施す際に歯根に容易にアクセスできるようにする機能を提供するものである。
傷んだ神経を根管から抜去してその歯根尖にグッタペルカを充填するという処置を、例えばその根管へ硬質セメント材料を充填する処置等のその他の再建治療的処置の予備段階として行なうことは、歯科学の分野では公知となっている。また、歯冠を喪失ないし甚だしく損傷した場合に、その歯の上部の残った疾患部分を切削除去し、鋳金製アンカーを介して歯に固定する義歯を取付けるのに適した形状にするということも広く行なわれており、この場合、鋳金製アンカーは、根管を削り広げた孔の中に挿通して固定される。歯科用アンカーを固定するためには、一般的に、孔の中にセメントで固着して固定するか、或いは螺条部を形成して螺着して固定するようにしており、場合によっては、セメントへのアンカーの固着性を高めるために、アンカーの表面に細かな凹凸や、横方向に延在する細かな複数の溝が形成されることもある。しかしながら、一般的に知られているように、義歯それ自体の強度や、義歯の固着強度を高めるためには、根管を著しく削り広げなければならない場合があり、そのようにすると、残った歯根壁が非常に薄くなる。このような場合には、たとえ歯根が顎骨に強固に固着していても、その歯根それ自体の強度が、義歯を支持するための充分な強度には不足することがある。
これまでは、根管の形状が根本から先端に行くにつれて広がった形状で、しかも根管の孔が広く、そのため歯根壁が薄く頼りない場合でも、その根管を更に削り広げて整形し、真直ぐに連続した内面を形成した上で、その空間に、その空間の形状に合わせて特に製作した鋳金製合釘を埋め込み、その合釘の土台用の芯部分を歯根の上方に突出させて、その土台用の芯部分に継続義歯を装着するようにしていた。しかしながらこのようにすると、太い鋳金製合釘の周囲を薄い歯根壁が囲繞する形になるため、しばしば歯根が割れるという問題が発生していた。歯根が割れると、その破片を取り除いて更に高価なインプラント及び義歯に交換しなければならない。鋳金製合釘には更に、薄い歯根壁とその周囲の軟組織とを通して合釘の影が外部から透けて見えることが避けられないという問題が付随していた。このことは、美観的に優れた結果を得ようとする上での弱点となり、特に前歯に適用する際に大きな欠点となる。更に、鋳金製合釘は、個々の歯ごとにその形状に合わせて製作しなければならないためにコストが余分にかかり、また、患者が歯科医院へ通院せねばならない回数も多くなることから金銭的負担も大きくなる。
一方、ポリマー材料から成る樹脂製のピンないし合釘を使用することも公知であるが、それらは、例えば「ロストワックス」法を用いた鋳金法で義歯固定具を製作するために利用されている。その種の従来のピンないし合釘は患者の口中に使用されることはなく、また一般に光不透過性であった。
発明の概要
従って本発明の目的は、神経を除去した歯根及び歯を補強すると同時に、再治療のために歯の内部にアクセスするときに比較的容易にアクセスできる状態に維持しておく方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、損傷した神経を抜去した後に、根管を大きく削り広げて根本から先端に行くにつれて広がる形状にした歯の歯根及び歯冠を補強すると共に、永久的な或いは齲歯治療中における本来の機能ないし副次的機能としての咀嚼運動に伴う衝撃力に耐える能力を向上させる方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、光硬化性の複合充填材料と共に使用して本発明の方法を実施するための、光透過製材料で形成した、弾性を有する歯科用合釘である補強部材を提供することにある。
以上の目的は、また更にその他の目的が、本発明によれば次のようにして達成される。先ず、神経を抜去したこと以外は全く健全な、それも特に若年者の歯であって、通常の方法を用いて神経を抜去してあり、根管を著しく削り広げてもおらず真直ぐに削り直してもいない歯を維持するために、最初に、その歯根尖を例えばグッタペルカで封止する。光透過性の、生理的不活性材料(例えば米国食品医薬品局に認められている材料)で形成した、可撓性を有する細い合釘を、準備の整った比較的細い根管の中に、その合釘の先端がグッタペルカに当接する一杯の深さまで挿入し、また好ましくは複合充填材ないし封止材の層で周囲を囲むようにする。この複合充填材料ないし封止材料は光硬化性であることが最も好ましい。これによって合釘をコートすると共に、根管の周囲の歯根壁を補強し封止する。硬化した複合材料は、象牙質の内面に重なる枠部としての機能を果たす共に象牙質の内面を封止する封止材料としても機能し、象牙質を液体の浸入とそれによる劣化とから防護する。
合釘を充分な量の硬化性複合封止材料でコートして、歯根の内面を封止すると共に、その合釘を根管内に固定できるようにする。この合釘は充分な可撓性を有し、根管に挿入する際には、根管の屈曲に沿って屈曲することができ、本発明のこの実施例では、根管はその本来の僅かな屈曲を持ったままのもので良い。
枠部を形成する充填材料としての機能と、封止材料としての機能との両方の機能を果たす複合材料は、透明な樹脂製合釘の全長及び全周に亙る透照による光によって硬化するものであることが好ましく、更に、この複合材料が硬化した後には、合釘の長さを切り詰めるようにし、それによって、根管にアクセスするために穿設した歯冠を貫通する開口を、確実に覆い且つ封止することのできる充分な空間が得られるようにする。このような処置が最も多く行なわれるのは、おおむね16〜18才以上にまで成長して時間による解決がなされるのを待つ以外にない事故による精神的外傷を受けた若年者に対してである。覆われて封止された樹脂製合釘は、その周囲の複合材料から成る枠部であり裏打ち部である封止材料と共に、歯髄を抜去した根管を補強し、現在使用しているグッタペルカからの色移りを防止し、更に、例えばその樹脂製合釘を必要に応じてより強度の大きな金属製合釘に交換する等の、将来の処置を行なう際のアクセスを容易にしている。
本発明の第2実施例は、歯が破損する等して損傷した場合に適用するものであり、この実施例では、神経を抜去した後に根管を削り広げて、罹患しているおそれのある部分を全て除去して歯及び歯根の健全な構造の部分だけを残し、歯科用の成形工具であるリーマ工具を用いて適当な大きさの根管を形成する。本発明では、歯根壁が非常に薄くて頼りない場合でも、顎骨に固着した健全な歯根によって強固な支持力及び固着力を得ることができる。これまでは、歯根壁が非常に薄い場合には、たとえ歯根が顎骨にしっかりと固定されていても予後は不良であった。本発明によれば、その壁の薄い歯根を補強することができ、確実に補修して1本ないし複数本の継続義歯を充分強固に支持すると共に、そのように再建した構造は、将来、再度の歯内治療が必要となったときに根管にアクセスすることが容易な構造となる。
本発明の第3実施例では、齲歯の治療期間中には、硬化用の樹脂製合釘を用いて、根管に充填した封止材料から成る枠部を形成しておく。根管の中をリーマで切削処置して神経を抜去してから完全に治療が終了するまでに長い時間がかかることがしばしばある。この治療期間中は、薬剤の追加投入を継続して行なうために根管を開けたままにしておかねばならないが、容易に理解されるように、異物の小粒子が根管内に入り込むことがないように暫定的な閉塞をしておく必要がある。これまでは、殆ど必ずといっていいほど、根管内へのかなりの液体の浸入が発生して、その結果として象牙質の内面の劣化が生じていた。本発明を採用することによって、根管の内面の全長に亙って、合釘を囲繞するようにして封止材料の枠部を形成することができ、また、薬剤の投入の際には合釘を容易に抜去することができ、更に、合釘を別のものに交換して根管を閉塞することができる。この場合、根管内に液体が浸入することがあっても、封止材料から成る枠部によって象牙質の劣化が防止されるため、象牙質の劣化部分を除去するために更に根管を広げるという事態を回避できる。ここで注意すべきは、当然のことながら、この長い治療期間中は、薬剤が骨構造へ流入するのを妨げないように、歯根尖にはグッタペルカは充填されていないということである。
根管を形成するためには、その成形用の端部の形状が特別の先細り形状になったリーマを選択する。これによって、切削した孔の最奥部の形状を、先細り形状で先端の直径が最小になる所定の形状にすることができる。これは、歯科用リーマ工具を用いれば、即ち、切削側の端部が長手軸方向の端部へ行くに従って先細りになって先端で実効直径が最小になり、軸方向を向いた切削面で歯を切削するようにしてあるリーマ工具を用いれば、容易に達成することができる。このリーマ工具の動力接続側の端部には、端部へ行くに従って広がるようにテーパのついた座ぐり切削部分を備えたものであっても良く、そのようなものであれば、切削を終了した孔は、外端部の方の径が大きなものとなる。このように基端の形状が端部へ近付くほど広がったリーマ工具は、主として疾患組織を比較的多量に除去するために有用である。
根管を清浄化し、感染部位や疾患部位があればその処置をした後に、歯根尖をグッタペルカで封止した上、特別の大きさのリーマを用いて根管の最奥部にセンタリング位置を形成し、このとき余分なグッタペルカがあればそれを除去する。続いて、そのリーマに対応した大きさの、好ましくは透照機能を備えた、樹脂製合釘を根管の中に挿入してセンタリングさせる。この合釘は、略々円筒形の軸部と先細り形状の端部とを備えたものとすることが好ましい。軸部の直径は根管の直径より小さくして、根管の内面の表面仕上並びに封止のために硬化性の複合材料を充填する空隙が残されるようにすることが好ましい。この合釘の先細り形状の端部は、長手軸方向の端部に行くに従って実効直径が小さくなって内端部で最小の実効直径となり、また、この先細り形状の端部の形状は、切削工具ないしリーマ工具の端部の形状と一致する形状とすることが好ましく、そうすれば、根管の成形された最奥部に隙間なくぴったりと納まり、この最奥部において、グッタペルカに密着して支持される。この硬化用の合釘の外端部にはマーカーを設けてあり、このマーカーを根管の入口部分の高さに合わせることによって、硬化性複合材料を注入するために合釘を一時的に根管から抜去した後にその合釘を再び元の位置に嵌装する際の目安となるようにしている。
光硬化性の複合材料は、合釘を一時的に抜去したときの歯根内の空隙を満たすだけの充分な量を充填することが好ましく、この後、抜去した合釘を再び根管の中へ押し込み、複合材料の中に最大深さまで沈ませ、即ち、マーカーの位置まで沈ませる。これによって合釘は、その元の位置へ戻され、成形した根管の最奥部の先細り形状の部分において、グッタペルカが充填されていればそれに接触し、また、歯根尖のすぐ上の位置では、根管の内面に非常に近接して、この合釘と、対応する歯科用リーマで適切な形状に削られた根管の内面との間には、複合封止材料の薄い層が環状に形成される。歯根尖には、容易に除去できる材料で歯根尖を充填し、それによって、歯根尖が硬化した複合材料で封止されるのを防止して歯根尖を介して医薬品を投与できるようにし、この容易に除去できる材料は、永久的に閉塞するときには、グッタペルカに替えるようにする。
根管の先細り形状の最奥部にまで合釘を完全に押し込み、光硬化性の複合材料が根管の中のその合釘の周囲に存在するようにしたならば、合釘の外端部に光を照射し、この合釘を介した透照によって、光を合釘の端部及び周面から根管の中へ照射する。これによって、合釘の周囲の光硬化性の複合材料を、合釘の全長に亙って且つ合釘の全周に亙って完全に硬化させる。
合釘は更に、中央通路と、この中央通路の中に摺動可能に保持された比較的細いロッドとを備えたものとすることが好ましい。このロッドは少なくとも、先細り形状即ち弾丸形の端部の中に延在しているようにし、この先端は光反射性にしておくのが良い。この好適実施例では、細いロッドは、光学ガラスのファイバ、或いはその他の様々な光透過性物質から形成したものとし、中央通路の中をその全長に亙って貫通させて更に中央通路から外へ延出させ、それによって、合釘の中への光の伝達と、合釘を通した歯根尖への光の伝達とを、より効果的に行なえるようにしている。
複合材料の硬化が完了したならば、それに続く処置がたどり得る道筋は幾つかに分かれる。第1の道筋は、既に述べたように、患者が若年者であって、神経を除去した以外は健全な歯を治療する場合に、樹脂製合釘が完全に歯の孔の中に納まるようにその合釘を切り詰めた上で、歯冠に開いた開口を閉塞して封止するというものである。これとは別の1つの道筋は、樹脂製合釘を、より強度の高い予め製作してある金属製合釘に交換し、この金属製合釘を継続義歯のアンカー即ち支持部材として利用するというものである。
最も好適な実施例では、以上に説明した最初に使用する樹脂製合釘を、その全体のうちの根管に挿入する部分の周面が実質的に滑らかな面である合釘にし、これによって、小さな力で捻って引っ張るだけで、その合釘を容易に抜去できるようにしている。このように周面を滑らかな面にした合釘は、抜去して新たな別の樹脂製合釘に交換したり、金属製合釘に交換したりすることができる。交換する新たな別の樹脂製合釘は、その周面に複数の溝を間隔をあけて形成したものとする。それら複数の溝は周溝とすることが好ましく、そうすれば、この合釘を歯の孔の中に固定保持することの助けとなる。更に、それら複数の溝はこの合釘から光硬化性複合充填材料へ照射される硬化光を強めることも判明しており、これによって、溝付合釘を根管の中へゆっくりと押し込んで行きながら、複合材料から成るセメントを、より速やかに、より完全に硬化させることができる。溝付合釘は、その直径が最初に用いた表面の滑らかな合釘の直径よりも僅かに小さなものとすることが好ましく、そうすれば、表面の滑らかな合釘を抜いた後の孔の中へ溝付合釘を容易に挿入することができると共に、最初に充填したセメント即ち複合材料が完全に硬化した後に溝付合釘を固定するための新たなセメントの層を塗布することができる。合釘の全長及び全周から射出される強められた透照光は、周囲の複合材料を孔の最奥部に至るまで完全に硬化させて歯根尖にまで達する。溝付合釘は、捻って引き抜こうとしても容易に引き抜けないが、同じ直径のリーマで切削すれば確実に除去することができ、そうして除去した後には正確な大きさの孔が残り、必要に応じて再治療を行なうことができる。
更に、本発明の合釘の端部の形状が、丸みの付いた先細り形状であるために、合釘の透照効果が向上していることも判明している。透照光が最も強く集中するのは、合釘の円錐形状の内端部の先細りになった先端部である。この現象を最も有利に利用できるのは、複合材料が上に説明したようにして最初に硬化した後である。既述の如く、表面の滑らかな合釘は捻って引っ張ることによって抜去することができ、この表面の滑らかな合釘をそれより僅かに直径の小さい溝付の合釘に替えることが好ましく、その溝付の合釘を、根管の全長に亙って徐々に押し込んで行くか、或いは間欠的に少しずつ例えば3〜4回に分けて移動させ、移動と移動との間隔は数秒間とする。これによって複合材料を、その厚さの如何にかかわらず、その全長に亙って確実に完全に硬化させることができる。別法として、最初に使用した表面の滑らかな合釘が、引き抜こうとしても引き抜けない場合には、適当な太さのリーマを用いてその合釘を切削除去するようにしても良く、その後に、それより僅かに細い新たな溝付の合釘を、光源に接続し、上に説明したようにして徐々に或いは間欠的に挿入して行くようにして、できる限り多くの光を集中させるようにすれば良い。
本発明の更に詳細な様々な細部特徴が添付図面に示されているが、ただし、それらはあくまでも具体例として図示したものであり、本発明がそれら細部特徴に限定されるというものではない。また、本発明の様々な部分及びそのための細部構造の多くが単に模式的にのみ図示されているが、それらを単に模式的にのみ示したのは、それらが当業者には自明のものであるため、更に詳細に示すまでもないからである。添付図面については以下のとおりである。
図1は、本発明の実施例に係る可撓性及び光透過性の溝付の合釘を用いて補強した、開口を塞いだ状態の健全な歯の断面側面図、
図2は、本発明の実施例に係る可撓性及び光透過性の表面の滑らかな合釘を用いて補強した、開口を塞いだ状態の健全な歯の断面正面図、
図3は、歯の疾患部位の組織をリーマで切削除去して根管を広げているところを示した断面側面図、
図4は、本発明に従って切削成形した歯根に合釘をセンタリングした状態であって、複合材料のセメントで合釘をその位置に固着する前の状態を示した断面側面図、
図5は、図4の歯から合釘を抜去して未硬化の複合充填材料を充填した状態を示した断面側面図、
図6は、本発明に従って図5の歯の中に合釘を戻し充填材料を硬化させるための準備を整えた状態を示した断面側面図、
図7は、本発明に従って図6の歯から硬化用の合釘を抜去している状態を示しだ断面側面図、
図8は、本発明に従って図7の歯から硬化用の合釘を完全に抜去した後に環状の枠部が残った状態を示した断面側面図、
図9は、本発明に従って図8の歯において表面の滑らかな合釘に替えて溝付の合釘を環状の枠部の中に挿入した状態を示した断面側面図、
図10は、本発明に従って図4の歯根に継続義歯を装着した状態を示した断面側面図、
図11は、本発明に係る断面が円形で樹脂製で溝付の歯科用合釘の、丸みの付いた端部の側から見た平面図、
図12は、光硬化用光源装置及びフード形光コネクタの一部断面側面図、そして、
図13は、図12の部分拡大図であり、光源装置と、フード形光コネクタと、光硬化用ツール合釘とを示した図である。
図1について説明すると、同図に示したのは、損傷した神経を抜去した以外は健全な歯10であり、図示の歯10は、通常の技法に従って細いリーマ工具を用いて根管の切削を完了した状態を示した状態にあり、細いリーマ工具を使用したのは、歯根の組織には疾患部分が殆んどないし全く存在していないからである。歯根尖の部分にはグッタペルカ12を充填してあり、グッタペルカ12のすぐ上の部分の根管に対して、孔の内面成形を施して、その部分の根管を所望の先細り形状にし、しかもその内面を滑らかに仕上げてある。一般的に、グッタペルカ12の深さとしては少なくとも4mmほどを確保しておく。合釘であってしかも硬化させるためのツールでもある部材11が根管に挿入されており、この合釘11は、その下端部分が隙間なく根管の中に嵌合してグッタペルカに接触しており、また根管の内面が、充填材料であってしかも歯冠アマルガム封止材料である複合材料16aを使用した枠部16を形成することで封止されている。溝付の合釘11aは略々円筒形状の軸部13を備え、弾丸形の第1端15を有し、この第1端15の形状はリーマ工具の切削用端部の形状と略々一致しており、従って、リーマ切削した歯根の底部の形状と略々一致している。
図2及び図4〜図6に示すように、樹脂製合釘11aが、切削成形の完了した根管8に挿入されており、先細り形状の弾丸形の端部15aがグッタペルカ12のすぐ上の部分の根管8の内部に嵌合してグッタペルカ12に接している。ただし、この端部15aは、合釘がグッタペルカに接している箇所以外では、複合充填材料16の層によって環状に囲繞されている。従って歯根尖は閉塞されていない。合釘11aは、歯根の深さを決定するマーカーストッパ29でマーキングされている。これに続いて、合釘11aを抜去し、開放された根管8の中に硬化性の充填材料である複合材料16aを充填し、更に、合釘11aを再び歯根に挿入してマーカーストッパ29が歯の表面と同じ高さになるまで押し込み、合釘の弾丸形端部15aを、孔の底に押し付けるようにして、グッタペルカから成る封止材料12に当接させる。合釘11aの外端部の端面から光を導入して(光源32を合釘11に接続するフード形光コネクタを使用することが好ましい)、歯根の中のセメントを透照する。これによって、複合材料の硬化が開始され、従って、壁部8に重なる環状の枠部が形成される。
歯冠表面30には、その上向きの面に、根管へ通じる開口が形成されており、この点を除けば歯冠表面30は完全に健全である。以上に続いて、根管へ通じるこの開口に充填材料を充填して、この開口を閉塞し、これは通常の技法を用いて行なう。この場合、先ず最初に合釘11aの外端部18の余分な長さの部分を切り詰めて、合釘11aの上端が歯冠表面30より低くなるようにし、それによって、この開口を確実に封止するための空間を確保する必要がある。ここで注意すべきことは、以上に説明した図3〜図7の準備的処置の図は、実際には、根本から先端に行くにつれて広がった形状の根管を示しているということである。ただし、その処置手順は全体としては、先に説明した若年者の歯に対する処置手順と同じであり、異なっているのは、若年者の歯では、補綴物の必要がないため根管を大きく拡大せず、樹脂製合釘を装着したままにするというだけである。若年者の健全な歯では、最初に使用する樹脂製合釘11を、図1に示すように軸部13に溝を列設した溝付合釘として、根管内への固着力を増強すると共に光硬化性を向上させることが好ましい。
図10に示した合釘の実施例では、ツール合釘11は、この合釘の中心軸に沿って一端から他端まで貫通して延在している長手方向の中心通路と、この中心通路の中に摺動自在に挿通した光ファイバ・ロッド17とを備えており、この光ファイバ・ロッド17は、合釘の外端部18から外へ延出すると共に、合釘の先細り形状の前端部15の中まで延在している。光ファイバ・ロッド17は、その外端部を、複合材料を硬化させるための適当な波長を有する光源に接続することができる。またロッド17は、合釘を抜去したときに根管の中に残すことができ、硬化性の複合充填材料をロッド17の周囲に充填した後に、合釘を戻して押し込むときに、このロッド17が、ツール合釘を歯の孔の中にセンタリングさせる機能を果たす。本発明の図1に示した実施例の利点の1つは、根管の最奥部を閉塞する硬化した硬い複合充填材料が存在せず、従ってそれをドリルで切削する必要がないため、歯根尖にアクセスする必要が生じたときには容易にアクセスできるということにある。硬化性の複合充填材料が根管の中を完全に充填してしまわないようにしているため、根管を再び開放して更なる歯内処置を施すことが比較的容易になっている。例えば、図7に示したように、通常のリーマ工具を用いて合釘11とグッタペルカとを容易に除去することができる。後日、歯内処置を施す必要が生じたときには、樹脂製合釘を覆っている上部の封止層16aをダイヤモンド・バーを用いて切削除去し、それに続いて単なるリーマ工具を用いて樹脂製合釘11を切削除去すれば良く、これらは比較的容易で安全な処置である。
既述の如く、樹脂製合釘は、生理的不活性な透明即ち導光性の材料で形成するようにしており、具体的には、ポリカーボネート(例えば、Lexan等)をはじめとする米国食品医薬品局に認められている種々の材料のうち、必要な構造特性を有し、また好ましくは適当な光学特性を有する材料で形成する。軸部13の表面には、軸部13の長手方向に間隔をあけて複数の周溝19を形成することが好ましい。それら周溝19の表面は、溝の稜部に光を集中させるように機能すると共に、図1に示すように、合釘を半永久的な補綴物として使用するときに、その合釘の定着力を高める。
樹脂製合釘は、幾分の可撓性を有するものとすることが好ましく、そうしておけば、根管へ通じる通路が屈曲している場合に必要に応じて屈曲させることができる。また、樹脂製合釘は、周囲の複合充填材料よりも硬度の小さなものとすべきであり、そうしておけば、クッション効果を得つつ、孔を補強する複合充填材料から成る環状の枠部を補強することができる。
更に、この合釘の先細り形状の下端部15は、その先端部分の最小の曲率半径が約0.06mm以下になるように形成することが好ましく、最も好ましいのは、約0.03mm〜約0.04mmの範囲内にすることである。透明な弾丸形の先端からは集中光が放射されるが、これを効果的に利用するためには、最初に前述のファイバ・ロッドを、中央開口に挿入して、この中央開口に沿って間欠的に移動させて複合充填材料を硬化させ、その後に合釘を、根管の長手方向にゆっくりと或いは間欠的に移動させながら複合充填材料の内面の全長に亙って光を照射して、確実に完全に硬化させるようにすれば良い。
複合充填材料を硬化させる方法には様々な方法がある。例えば、自己硬化剤を混合するという方法があり、その場合には、混合してから短時間のうちに自然硬化する。最も好ましいのは、複合充填材料を、以上に説明したように、光硬化性のものとするということであり、そうすれば、導光ツールである合釘11を介して適当な周波数の光を導光することによって硬化させることができる。自己硬化性セメントを用いた場合には、合釘11を導光性のものとする必要はないが、ただしその場合でも、金属製合釘のようにX線不透過性ではなく、X線透過性にしておくことが好ましく、そうしておけば、根管を開けて合釘を除去することなしに、根管の画像を得ることができる。ツール合釘11から外へ照射される光のうち、先細り形状の下端15から照射される集中光が強度が最も大きく、特にツール合釘として滑らかな軸部を有するものを使用したときにそうなり、そのため、光硬化性の複合充填材の最下部の硬化を速やかに行うことができる。
別の好適実施例として、根管の下部に当接しているロッド17の先端21を、光不透過性で光反射性の材料で形成するようにしても良く、そうすれば光をロッド19に沿って上方へ、また、ツール合釘11の周面から外方へ反射させることができる。
本発明の第1の利点は、神経を抜去したこと以外の点では健全で顎骨に良好に固定している歯を、その歯の構造上及び機能上の完全性を維持するために補強する方法を提供することにある。前述の好適実施例(図1)では、複合充填材料が樹脂製ツール合釘11と協働して、歯を使用しているときに歯及び歯根に加わる力を吸収するための充分な弾性を提供し、それによって、歯に更に大きな応力が作用するおそれを低減しており、しばしば経験される歯根の割れに対する抵抗力を高めている。幾分の可撓性を有する衝撃吸収材として機能するように調製した適当な複合充填材料は、その他の点では健全でそれを支持する骨構造に固定されている歯根を、長期に亙って使用可能に維持する。その種の可撓性を有する複合材料の具体例は、現在広く使用されている様々な材料であって、ただし、その材料中の、広く使用されている充填粒子の比率を高めたものである。
複合材料の弾性を更に向上させるために、合釘11の周囲に補強網21を巻装し、この補強網21が複合材料の中に埋め込まれるようにしても良い。補強網には、例えば、フルオロカーボネート・ポリマー(例えばTeflon等)や、非発錆性の金属(例えばステレンススチールや、一般的な金ないし銀の合金)を使用すれば良く、金ないし銀の合金から成る網が機能的に最も優れている。
本発明は更に、図3〜図7に示すように根管8の内面が大きく削り取られて、根本から先端へ行くにつれて広がった形状にされている場合(このような場合には、しばしば歯根壁が非常に薄くなっている)に、特に有用なものでもある。このような大幅な削り取りは、例えば図1に示すように、最初の処置によって行なわれる場合もあり、或いは、再度の処置によって行なわれる場合もある。いずれにせよ、根管が、大きく削り取られて広げられ、従って先端へ行くにつれて広がった形状であると、たとえその歯が顎骨にしっかりと固着していたとしても、その歯の予後は良くない。しかるに、本発明を適用すれば、歯根壁を内側から補強すると同時に、非常に長く好適な大きさで直径が一定の歯根壁を形成することができ、それによって、この処置に続いて行なう、或いは将来行なわれる、より強度の高い金属製合釘の装着を可能にする。図3〜図8に例示した処置手順に続いて、適当な大きさの(潤滑剤または分離剤を塗布した)合釘11を、根管の最大深さまで挿入して固定し、そして複合材料が硬化した後に、その合釘を強く捻って抜去し、或いは、別法として同じ大きさのリーマを用いて切削除去するようにしても容易に除去することができ(これは図7に示した通りである)、それによって図8に示すように、複合材料でできた環状の枠部22を備えた開放された根管が形成される。
いずれの場合にも、図8に示すように根管に枠部を形成したならば、続いて、米国特許第4990088号のリーマ・ルータ・ツール等を用いて、その根管の孔をさらい、硬化した複合材料の環状の枠部22の内周面に、定着補助及び回転防止のための細かな凹凸を形成することが好ましい。続いて図5に示すように、対応した大きさの、ただし構造強度はより大きい、溝付の合釘26を挿入してセメントで固定する。この構造強度のより大きな合釘26は、この用途に適した金属材料で製作したものであることが好ましい。ただしその前に先ず、複合材料、及び/または、封止材に、より直接的に光を照射して、更に硬化させるようにしても良く、その場合には、根管の中で摺動可能な、より細い、好ましくは溝付の樹脂製合釘を介して光を導くことによって、光をその合釘の長さ方向の幾つかの箇所で段階的に照射して硬化を行なうのが良い。
本発明に従って枠部を形成した根管に挿入固定する金属製合釘26は、一般的な種類もので良く、また、その合釘26の形状は、その製造時に、合釘の軸部をセメント等で固定できるように、また、歯冠部義歯32の土台として使用できるような形状にしておくのが良い。永久固定する金属製合釘26は、枠部を形成した根管8の中にセメントで固着するという受動的な固着法によって装着することもでき、或いは、能動的な固着法を用いて装着することもできる。能動的な固着法を採用する際には、合釘を、やや太めで螺条部を形成したものとし、その合釘を根管の枠部22の内面に螺合して直接固定する。この場合には、いわゆる能動固定用螺条部が、複合材料で形成した枠部22の内面22に直接食い込む。
本発明に使用する合釘の大きさは、歯科治療に用いるための通常の大きさとすれば良い。例えば合釘の最大直径部分の径は、約1.9mmまでとするのが良く、その好ましい範囲は約1mm〜約1.9mmである。合釘の断面形状は略々円形としても良いが、ただし合釘が根管の中で回転しないようにすることが望まれる場合には、根管及び合釘の断面形状を楕円形にしたり多角形にしたりするのも良い。合釘の長さは約20mmまでとするのが良く、その好ましい範囲は約8mm〜約15mmである。樹脂製合釘の先細り形状の端部の長さは、約10mmまでとするのが良く、その好ましい範囲は約4mm〜約8mmである。この先細り形状の端部の長さは歯根の長さと元の歯の残っている量とに左右される。周溝どうしの間隔は少なくとも約0.1mmとすることが好ましく、周溝の幅は少なくとも0.3mmとすることが好ましい。
硬化光を導光する機能を有する合釘11は、広く一般的に利用されている硬化用光源に接続することが好ましく、例えば、図12にその全体に対して引用符号50を付して示した手持形光源装置にフード形光コネクタ31を装着して、このフード形光コネクタ31によって、光源50の延長管60を、合釘11に接続するようにすれば良い。フード形光コネクタ31は、図示の如くその全体が略々円錐形状であり、基端である太い方の端部131と先端である細い方の端部132とが共に開放した形状を有する。手持形硬化用光源装置50は、硬化光を発生する光源61(例えば、レーザ光発生器等)と、光を照射する際に操作する電源スイッチ63と、透明な導光端68(例えば透明レンズ等)を有する光照射用の延長管とを備えている。
フード形光コネクタ31は、弾性材料製とすることが好ましく、細い方の端部の開口の直径を、硬化光を導光する合釘11の直径より小さくして、合釘11を隙間なくきっちりと保持できるようにし、また同様に、太い方の端部である基端の開口131の直径を、硬化光を導光する延長管60の直径より小さくして、延長管60の端部に隙間なくきっちりと嵌装できるようにすることが好ましい。このフード形アダプタの内面56は、反射性の表面としておくことが好ましく、そうすれば、光エネルギがこのフード形アダプタの材料に吸収されてしまう吸収量を減少させることができる。
光出力の強度及び集中度は、延長管60の光出力端61と、先端の開口132との間の距離を変化させることによって制御することができる。透明な合釘11を使用せずにフード形光コネクタ31だけを、硬化光を集中させるための手段として使用することも可能であることが判明しており、その場合、細い方の端部の開口132を介して、限られた範囲の表面や、或いは例えば根管の内部等のその他の比較的アクセスしにくい表面へ硬化光を集中させることができる。このフード形光コネクタは、操作者を直接光から防護すると共に、光エネルギを、それを必要としている表面に集中させ、従って必要な合計エネルギ出力を低く抑えるように機能する。
以上に説明した、ないしは請求項に記載した本発明の実施例は、本発明の具体例として提示したものに過ぎない。本発明の範囲に包含されるその他の実施例も当業者であれば容易に想到し得るものであり、従って添付の請求項の範囲に包含されるべきものである。

Claims (8)

  1. 光硬化性の複合材料との使用に適し、神経が抜去され且つ根管の疾患組織が全て洗浄で取り除かれた歯を補強するための構造体であって、
    略々円筒形状の軸部と、先細り形状の第1端とを有すると共に、光透過性且つ生理的不活性な材料で形成された歯科用合釘を具備し、該歯科用合釘は、前記根管への挿入時に該根管の屈曲形状に追従する十分な可撓性を有し、該根管の略々中心に挿入され且つ前記複合材料が前記根管に充填されると、前記歯科用合釘は該複合材料に密着し且つ囲繞されることを特徴とする、歯を補強するための構造体。
  2. 孔を塞いだ歯及び歯根を補強するための歯科用ツール合釘であって、略々円筒形状の軸部と、先細り形状の第1端とを備え、前記ツール合釘は生理的不活性且つ光透過性で、比較的可撓性の大きいポリマー材料で形成され、更に、自然状態の根管の自然な屈曲形状に沿って屈曲できるだけの充分な可撓性を有することを特徴とする歯科用ツール合釘。
  3. 前記ツール合釘の前記先細り形状の第1端の横断面は、その直径が自然状態の根管の直径より大きくない直径である請求項2に記載のツール合釘。
  4. 前記ツール合釘の内周面は、該ツール合釘を略々軸方向且つ長手方向に貫通して延在する軸方向通路を画成し、前記ツール合釘は該合釘に対して相対的に移動可能なロッドを更に有し、該ロッドは、前記軸方向通路の内部に延入すると共に該軸方向通路を貫通し且つ前記先細り形状の第1端を超えて延伸し、該ロッドは光ファイバ製である請求項2に記載のツール合釘。
  5. 前記光ファイバ製のロッドの前記第1端には光反射性且つ光不透過性の面が形成された請求項4に記載のツール合釘。
  6. 前記ツール合釘は、前記軸部の周面に複数の横方向溝を有する請求項2に記載のツール合釘。
  7. 歯科用の光硬化性複合材料を硬化させる光エネルギを供給する構成の歯科用硬化光照射装置において、硬化光発生器と、電源スイッチと、透明導光端を有する延長管と、該延長管の該透明導光端を囲繞するように着脱自在に取付けられるフード形コネクタとを備えており、該フード形コネクタは、前記導光端の直径よりも僅かに小さな開口を画成している比較的太い基端と、透明歯科用ツール合釘が隙間なく嵌挿される構成の開口を画成している比較的細い尖端部とを備えており、前記フード形コネクタは、前記比較的太い基端が前記延長管の前記導光端に隙間なく嵌合できるように弾性材料で形成されており、前記フード形コネクタは、前記延長管の前記導光端に対して相対的に軸心方向に可動であり、前記尖端部の前記開口に嵌装された透明ツール合釘が、前記フード形コネクタに対して相対的に可動であることを特徴とする歯科用硬化光照射装置
  8. 光源装置において、光を発生するための手段を有する第1端と、内端と外端とを有するフード形光コネクタとを備え、前記内端は前記光源装置の前記第1端を囲むようにして止着され、前記フードは前記内端から軸方向外方へ向かって延在しており、前記外端は光透過性歯科用合釘の端部を囲むようにして該合釘に着脱可能に止着されるように構成されていることを特徴とする光源装置。
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