以下、本発明の一実施例による食器洗い機について図面を参照して説明する。まず、図1、図2により本実施例(以下「第1実施例」という)の食器洗い機の全体構成を説明する。図1及び図2は本食器洗い機の全体構成を示す概略縦断面図であり、図1は洗浄庫を筐体内に完全に収納した状態、図2は洗浄庫を筐体から引き出す途中の状態である。
前面が開口した筐体1の内部には上面開口3を有する洗浄庫2が配設され、洗浄庫2の内部には食器類を整列配置するための食器籠4が設置されている。筐体1内の上方空間には、洗浄庫2の上面開口3を閉塞するための上蓋5が、前後一対のリンク6、6’を含む左右一対の平行リンク機構により上下動自在に配置されている。洗浄庫2の前壁2aには、筐体1の前面開口を閉塞するドアを兼ねた前面パネル7が着脱可能に取り付けられており、前面パネル7と洗浄庫2とは一体に、筐体1の両側壁内側に略水平に架設された案内レール8に沿って前方に引き出し自在となっている。
前面パネル7の上部は庇状に突出した斜面部7aを有しており、その斜面部7aには各種の操作キーや表示器を備える操作パネル9が設けられている。この斜面部7aの下側は内側に窪んだ把手部10に形成されており、把手部10には上記操作手段として左右方向に回動可能な操作レバー11が設けられている。この操作レバー11の左右方向の回動動作は、洗浄庫2の前壁2aと前面パネル7との間で上方に突出した、上記ラッチ手段であるラッチバー12に連動しており、使用者による操作レバー11の操作に連動して洗浄庫2の引き出し動作を阻止する(つまりラッチする)又はその阻止を解除することができるようになっている。
後に詳しく述べるが、本食器洗い機では、操作レバー11の操作に連動して上記ラッチバー12のほか、上蓋5の上下動、つまり洗浄庫2の上面開口3の閉塞・開放動作が行われるように構成されている。すなわち、図1に示すように、洗浄庫2が筐体1内に完全に収納された状態において操作レバー11をラッチ方向に回動させると、ラッチバー12が回動して洗浄庫2が引き出せない状態に係止するとともに、上蓋5が降下して洗浄庫2の上面に密着して上面開口3を閉塞する。一方、使用者が操作レバー11をラッチ解除方向に回動させると、図2に示すように上蓋5が上昇して洗浄庫2の上面開口3に接しない状態となり、またラッチバー12の係止も解除されるため、洗浄庫2を筐体1内から前方へと自由に引き出すことができるようなる。
洗浄庫2の後方には図示しない給水バルブを備えた伸縮自在の給水ホース13が接続されており、給水バルブが開かれると外部の水道栓等から供給された水が給水ホース13を通して洗浄庫2内に注がれる。洗浄庫2の前部底面には大きく窪んだ貯水槽14が連通して配設されており、洗浄庫2内に注がれた水は貯水槽14に流れ込んで貯留される。この貯水槽14の上部には、食器洗浄時に食器から流れ落ちる食物の残滓を捕集するためのメッシュ状のフィルタ15が着脱自在に設けられている。洗浄庫2の底部中央には、上面に複数の水噴出穴が形成された回転自在のノズルアーム16が設けられ、洗浄庫2の底面下方には洗浄兼排水ポンプ17が配置されている。洗浄兼排水ポンプ17は両回転方向に回転駆動可能なモータを含み、このモータが正転方向に回転するとき洗浄兼排水ポンプ17は洗浄ポンプとして機能し、逆転方向に回転するとき排水ポンプとして機能する。
図1に示すように洗浄庫2が筐体1内に完全に収納された状態にあって洗浄運転やすすぎ運転時には、図示しない給水バルブが開放されて、給水ホース13を通して洗浄庫2内に水が供給される。洗浄庫2内に供給された水は貯水槽14を含む洗浄庫2の底部に溜まる。この貯留水は洗浄庫2の底部に配設されたヒータ18により適度に加熱される。この状態で洗浄兼排水ポンプ17が洗浄ポンプとして駆動されると、貯水槽14から吸引された温水がノズルアーム16へと圧送され、水噴出穴から洗浄庫2内に噴射される。この噴射の勢いによりノズルアーム16は回転する。これにより、食器籠4に収容されている食器類に水が吹き掛かって汚れが落ちる。食器に付着していた食物の残滓はフィルタ15に捕集され、水は貯水槽14に流れ込んで再び循環して使用される。
なお、図が煩雑になるため記載を省略しているが、洗浄庫2の前壁2aと前面パネル7との間には送風ファンなどを含む送風手段と排気手段とが備えられており、乾燥行程時には送風手段により洗浄庫2内に外気が供給されて、その外気はヒータ18により加熱されて食器に当たり、食器から発する水蒸気を含む空気は排気手段により機外へと排出されるようになっている。
本食器洗い機の主たる特徴の一つは上蓋5の開閉駆動機構にある。次に、これについて図3〜図9を参照して詳細に説明する。図3及び図4は上蓋5の開閉駆動機構を中心とする要部の側面構成図であり、図3は洗浄庫2を筐体1内に完全収納した状態、図4は洗浄庫2を筐体1から引き出す途中の状態である。図5は上蓋5の開閉駆動機構を中心とする要部の正面図である。図6は上蓋5の開閉駆動機構を構成する操作レバー周辺の要部の上面図、図7は同じ要部の正面図、図8は図3中のA部付近の拡大図、図9は図8中のD−D’切断線断面図である。
上記平行リンク機構を構成する1個のリンク6(又は6’)は略L字形状の板状部材であり、そのL字形状の短辺部が連接体として機能する。図8、図9に示すように、この短片部の前端部には前後方向に細長い長円形状穴6aが開口しており、その穴6aには上蓋5の側面に螺着された円筒軸5aが脱落しないように挿通され、これにより上蓋5は穴6aの長さで決まる範囲で前後方向にスライド移動可能となっている。一方、上記短片部の他方の端部、つまりL字の中央部は筐体1の側壁1a内面に螺着されたネジ6bにより回転自在に軸支されている。
また、前後2個のリンク6、6’の長片の端部は略水平に延在する作動板20の両端部にネジ6c、6c’で回転自在にそれぞれ軸着されており、これらは上記作動力伝達手段に含まれる作動力付与部として機能する。筐体1の側壁1a内面にあって上記円筒軸5aの前方には、この円筒軸5aの頭部に接触する位置まで突出して位置規制板28が固着されている。また、図示しないものの、後部側のリンク6’では上記円筒軸5aに相当する円筒軸の後方に同じように位置規制板28’が固着されている。すなわち、上蓋5は上述したように前後方向にスライド移動自在であるものの、実際には前後の位置規制板28、28’により前後方向への移動が規制されている。これにより、リンク6、6’がネジ6bを中心に筐体1に対して回動するとき、上蓋5はほぼ垂直に上下動するようになっている。また、作動板20は上蓋5と互いに略平行に且つ水平に維持された状態で前後動するようになっている。
後部側のリンク6’の長片部には、第1付勢手段として略水平に架設されたコイルばね21の一端が接続され、コイルばね21の他端は筐体1の側壁1a内側面に固定されている。このコイルばね21はリンク6’がネジ6b’を中心に図3で時計回り方向に回転するように付勢しており、そのため上蓋5はネジ6b、6b’を中心に上方に持ち上げられるように付勢されている。
作動板20の前端部には、第2付勢部材としての小型のコイルばね22を介挿して、作動力伝達手段の一部である線状部材としてのワイヤ23を構成するワイヤロープの一端が固定されている。ワイヤ23はチューブの中をワイヤロープが摺動自在に挿通された構成となっており、そのチューブの一端23aは作動板20とワイヤロープとの接続箇所よりも後方側の筐体1の側壁1a内側面に固定されている。ワイヤ23は該接続箇所から後方に延伸して大きく円弧を描いて下方へと配設され、洗浄庫2の側壁外側面に略水平に形成されたワイヤ案内溝24に沿って前方へと送られ、更に、前面パネル7と洗浄庫2の前壁2aとの空隙へと導かれている。なお、図3、図4には現れない、本食器洗い機の反対側面にも同様にワイヤ23’が配設されている。
図6、図7に示すように、操作レバー11は垂直方向に延伸する回動部材25に固定され、両者は一体に、前面パネル7に固着された取付部材26に対して軸25aを中心に所定範囲で回動自在となっている。回動部材25と取付部材26との間にはコイルばね27が架設されている。このコイルばね27は操作レバー11の回動範囲の両端よりも中央部においてより伸長するため、操作レバー11が回動範囲の略中央にあるときにその両方向に回動するように付勢する。したがって、例えば、ラッチ解除位置にある操作レバー11をラッチ方向に回動しようとすると、始めはコイルばね27の付勢力に抗して操作レバー11を回さなければならないため或る程度の力を必要とするが、操作レバー11が回動範囲の略中央を通過すると、コイルばね27の付勢力はその回動を助けるように作用するため、大きな力を加えることなく操作レバー11はラッチ位置まで移動する。
図5、図7に示すように、両ワイヤ23、23’のチューブの他端部23b、23b’は取付部材26に固定されており、各ワイヤロープの端部は回動部材25に固着されている。したがって、操作レバー11がラッチ位置にあるときには、操作レバー11と一体に回動する回動部材25によりワイヤロープが牽引され、操作レバー11がラッチ解除位置に戻されるとワイヤロープの牽引は解除される。
上述のように操作レバー11がラッチ位置まで回動されてワイヤロープが牽引されると、作動板20はコイルばね21の圧縮付勢力に抗して後方へと引かれる。回動部材25は左右のワイヤ23、23’の各ワイヤロープをほぼ同一長さだけ同時に牽引するから、左右の作動板20は同じように後方へと移動し、これにより、上蓋5はほぼ垂直に降下して洗浄庫2の上面開口3を閉塞する。なお、組立工程上や部品のバランスの悪さのために左右両側の平行リンク機構の動作の不均衡によるアンバランスがあった場合でも、ワイヤロープと作動板20との間に介挿したコイルばね22の作用によってそのアンバランスは修正される。すなわち、そうしたアンバランスのために上蓋5が左右に傾きながら降下し、左右いずれか一方の側で上蓋5下面が先に洗浄庫2の上縁部に接触した場合、その側面ではコイルばね22が伸長することによって牽引力が吸収され、他方の側面では牽引力がそのまま作用して上蓋5が降下する。そして、上蓋5全体が洗浄庫2の上面開口3を閉塞した後には、全体にほぼ均一に押圧力が作用するため、上蓋5と洗浄庫2の上縁部との密着箇所では全周に亘って高い水封性を達成することができる。
操作レバー11がラッチ位置にある状態からラッチ解除の位置まで回動されると、回動部材25が一体に回動して左右のワイヤ23、23’のワイヤロープの牽引が解除される。すると、左右の作動板20はコイルばね21の圧縮力によって前方へと移動する。これにより上蓋5はほぼ垂直に上昇し、洗浄庫2の上面開口3を開放する。
このように本食器洗い機では、使用者による操作レバー11の回動操作に応じて洗浄庫2の引き出し阻止又はその解除を行うことができると同時に、上蓋5の閉鎖又は開放を行うことができる。このような上蓋5の開閉駆動動作は、洗浄庫2の側壁外側面と筐体1の側壁1a内側面との間に形成された狭い空隙に配設したワイヤ23、23’を介して行われるので、筐体1内の空間を大きく占有することがなく、洗浄庫2の容積を大きく確保するのに有利である。
次に、本食器洗い機の他の特徴である上蓋5と洗浄庫2との接触箇所の水封構造について、図10〜図12を参照して説明する。図10及び図11は洗浄庫2の上縁部と上蓋5との接触箇所の詳細構成を示す縦断面図であり、図10は上蓋5が上昇した状態、図11は上蓋5が降下した状態である。また、図12は洗浄庫2の上面図である。
洗浄庫2の上縁端には、内立壁部2cと、これよりも高い外立壁部2dとから成る溝が周設されている。この溝の中には水封部材としてのガスケット31が嵌め込まれている。ガスケット31は上下二段の中空構造を有しており、上段中空部31aは周方向に適宜の箇所に設けた小孔によって外部と連通し、溝に嵌挿しない状態では図10中に点線で示すように外側に張り出した形状になっている。一方、下段中空部31bは図12に示すように四隅のコーナ部を挟んで両側に切れ目を有しており、その切れ目から断面略L字形状の補強金具32を内側に挿入することができるようになっている。補強金具32は、周方向に殆ど隙間なく取り付けられるように、洗浄庫2の前辺、後辺に対応した短手の直線状部材32bと、左右の辺に対応した長手の直線状部材32cと、四つのコーナ部をカバーするコーナ形状部材32aとから成る。溝の底部と各補強金具32の適宜の箇所にはネジ穴が穿孔されており、補強金具32を下段中空部31bに挿入したガスケット31を溝に嵌挿したならば、溝の底部下方からネジ穴に貫通したネジを補強金具32のネジ穴に螺合して固定する。
この補強金具32はガスケット31を溝に固定するための機能を有するとともに、洗浄庫2の上縁端を補強する機能を有している。すなわち、洗浄庫2の上縁端は左右側壁の中央付近や前後壁の中央付近などで内側に湾曲するように変形し易い。しかしながら、金属製であって高剛性の補強金具32を差し渡すことによって、こうした変形を防止することができる。
上述したように、ガスケット31は溝に嵌挿されない状態では上段中空部31aが外側に張り出した形状になっている。そのため、ガスケット31を溝に嵌挿したとき、その張り出し部は収縮する方向に押され、溝の外立壁部2dの内周面に緊密に密着する。また、このとき、ガスケット31の上端は外立壁部2dの上端よりも低くなる。更に、ガスケット31は内周側に段差部31cを有しており、溝に取り付けるとこの段差部31cは内立壁部2cの上縁端の上に載る。上蓋5が降下すると、上蓋5の最外周の突片部5bがガスケット31の上段中空部31aを押し潰し、その反発力によって隙間無く密着し、高い水封性を発揮する。
上述のようにガスケット31の上端は外立壁部2dの上端よりも低く、ガスケット31の上面は外側から内側に向かって下傾し、しかも、ガスケット31の内周面は内立壁部2cの上縁端の上に載っている。そのため、仮にガスケット31の上に水が落ちた場合でも、水がガスケット31を伝って洗浄庫2の内部へと流下し、外側へはこぼれ落ちない。
更にまた、上蓋5には、突片部5bの内周側に、断面略J字形状の合成樹脂成型品である樋部30が取り付けられている。但し、この樋部30は上蓋5の全周に亘って設けられているのではなく、図2に示した位置Bよりも後方側にのみ設けられており、位置Bで樋部30は途切れている。位置Bは洗浄庫2が最大限引き出された場合でも直下が洗浄庫2の範囲内となるような位置である。このような構造は次のような作用がもたらす。
すなわち、上蓋5が閉塞されて洗い運転が開始されると、ノズルアーム16から噴射された水が上蓋5の下面にも到達する。掛かった水は上蓋5の下面を伝って周囲に流れ樋部30の中に入る。そして樋部30に沿って流れ、上記切れ目から洗浄庫2内に流下する。洗い運転中に運転が一時停止されて洗浄庫2が筐体1から引き出されたとしても、上記切れ目の直下は洗浄庫2内であるため、樋部30を伝った水は必ず洗浄庫2内へと落ち、庫外に水が流下することはなく、筐体1の内部を濡らしてしまったり、更に外側に漏れ出したりすることを防止することができる。
次に、本食器洗い機の他の特徴である筐体1の構造について、図13〜図16を参照して詳細に説明する。図13は本食器洗い機をシステムキッチンに取り付けた状態を示す正面図、図14は同じく側面図、図15は本食器洗い機を載置する置台の外観斜視図、図16は図13中のC−C’切断線断面図である。
本食器洗い機はビルトインタイプであるため、所定の寸法(例えば横幅450mm)に納める必要がある。現在、一般的には、図14に示すような置台81が使用されている。すなわち、引き出し等として利用される箱の両側壁82が載置板83から上方に突出した(突出部82a)構造となっている。この置台81は図13に示すようにシステムキッチンの両側板80の間に収納され、ずれを防止するために突出部82aと側板80とがボルト等の固定金具で固定される。
食器洗い機はこの置台81の載置板83上に載置される訳であるが、本食器洗い機では、筐体1の横幅はキッチンの両側板80の内側の幅よりも僅かに小さいサイズとなっており、その底部1bの両側方のコーナ部1cは湾曲形状に形成されており、これによって突出部82aとの干渉を回避するようにしている。横幅450mmのシステムキッチンに対応した従来のビルトインタイプの引き出し式食器洗い機では、筐体の横幅を置台81の両側壁82の内側の寸法に合わせていたため410mm程度でしかなかったが、本食器洗い機では、筐体の横幅を450mmよりも僅かに小さい程度まで広げることが可能である。その分だけ、洗浄庫2の最大横幅も広げることができる。
なお、洗浄庫2の底部には洗浄兼排水ポンプなどを内装した洗浄庫カバーが取り付けられ、これは洗浄庫2よりも横幅を小さくすることができるから、上述したように、筐体1のコーナ部1cを湾曲形状に形成しても何ら問題はない。
上述したように、本食器洗い機をシステムキッチンに組み込んだとき、本食器洗い機の筐体1の側壁1aとキッチンの側板80との間隙はごく僅かである。しかしながら、本食器洗い機が振動すると側板80に接触して騒音を発生するおそれがあるため、次のような構造を採用している。すなわち、図16に示すように、筐体1の側壁1aの前縁部は略垂直に内側に折り曲げられ、その折り曲げ部と前面パネル7との間隙には当て金33が設けられ、その当て金33には介装体としてのゴムなどの弾性部材から成る防音ガスケット34が取り付けられている。防音ガスケット34は前面パネル7と当て金33との間の隙間を閉塞するとともに、側方に突出した突片34aがキッチンの側板80に当接している。これにより、食器洗い機の横ずれを防止することができるとともに、食器洗い機が振動してもその振動がキッチンの側板80に伝わりにくく騒音も軽減できる。また、この防音ガスケット34により前面パネル7と筐体1との隙間が閉塞されるため、不快害虫などの侵入防止にも有効であるとともに、洗い運転時に筐体1内で発生する各種の運転音が外部へ漏れにくくなり静音化に有用である。なお、好ましくは、同様に側板80に接触する突片を有する弾性部材を筐体1の後部側にも設けるとよい。
ところで、図5及び図13においては筐体1の両側壁1a及び底部1bは一枚の板材をコーナ部1cが湾曲するように成形したものとして記載しているが、本食器洗い機では、これは元々一枚の板部材ではない。すなわち、図17に示すように、ちょうど縦の垂直面で分割される略左右対称な二枚の板部材100a、100bをその底部の中央で突き合わせて溶接などにより接合したものである。底部1bの中央を接合箇所としたのは、強度(剛性)を確保すべく、接合箇所が湾曲したコーナ部1cを避けるようにするためである。
筐体1の両側壁1a及び底部1bを一枚の板部材で成形する場合、その大きさは約1600×600mm程度のかなり大きな金属板が必要である。このような板部材はロール状の鋼板から切り出されるが、サイズが大きいほど採れ率が低下し、廃棄される鋼板の割合が増加する。また、切り出した板部材に一箇所でも疵があると廃棄されるが、サイズが大きいほど疵がある確率が増し、この点においても廃棄量が増加する。これに対し、本食器洗い機では、筐体1の両側壁1a及び底部1bを二枚の板部材100a、100bから成形しているため、一枚の板部材のサイズは約1/2となり、採れ率が向上して廃棄される鋼板の割合が大きく減少する。また、疵がある確率も減少し、疵があった場合でも廃棄される量は半分になる。このように、本食器洗い機では、材料の使用効率を上げることができるので、資源の有効利用という点においても優れている。
次に、本食器洗い機の他の特徴である食器籠4の構造について、図18〜図20を参照して詳細に説明する。図18は本食器洗い機の食器籠4の上面図、図19は後記椀類収容籠45を持ち上げた状態を示す上面図、図20は正面図を示している。
この食器籠4にあっては、前後方向に延伸する軸40を中心に回動自在にコップ類を載置するための上部棚41が設けられ、その上部棚41の最前部には軸42を中心に回動自在に洗剤容器43が設けられている。洗剤容器43は上面全体が開口した皿状であって、一方向に傾斜した底面の最底部には洗剤が流れ出る流出穴43aが開口している。一方、下部籠のうちの前方側の椀類収容籠45は上記軸40、42と同じく前後方向に延伸する軸44を中心に回動自在となっている。
図12に示すように、洗浄庫2の底部前方右寄りにはフィルタ15が配置されており、フィルタ15に捕集された残滓を捨てるにはフィルタ15の摘み部15aを摘んで洗浄庫2から取り出す必要がある。フィルタ15の直上には食器籠4が設けられていてそのままではフィルタ15を取り出すことができないが、図20に示すように椀類収容籠45を回動させて立てると、図19に示すようにフィルタ15の摘み部15aの上方が大きく開口する。したがって、この状態で(又は上部棚41も回動させた状態で)、使用者が上からフィルタ15の摘み部15aを指で摘んで横にずらしながら容易に持ち上げることができる。
この食器洗い機では、特に、この回動式の椀類収容籠45の軸44を前後方向に延伸させているため、洗浄庫2を引き出す際に加わる力によって椀類収容籠45が回動しにくいので、食器のがたつきが防止できる。また、全ての軸40、42、44が同一方向に延伸しているので、使用者が操作を行う際に理解が容易で操作性が高い。
次に、本発明の他の実施例(以下「第2実施例」という)である食器洗い機について図面を参照して説明する。この第2実施例の食器洗い機は、上記第1実施例による食器洗い機と上蓋開閉駆動機構の構成が相違する。図21は第2実施例による食器洗い機の上蓋開閉駆動機構の要部の側面構成図、図22は正面図である。なお、上記第1実施例と同一又は相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
第2実施例の食器洗い機では、操作レバーの手動操作に連動したワイヤの牽引・弛緩によって平行リンク機構を作動させて上蓋5を上下動させる代わりに、左右の平行リンク機構を結合し、その結合部をトルクモータの駆動力でもって牽引する又は弛緩することによって上蓋5の開閉動作を行っている。
この食器洗い機では、平行リンク機構を構成する連接部を含むリンク6、6’にネジ6cで回転自在に軸着された左右の作動板20は、洗浄庫2の底壁の下を通して配設された連結板部材50によって連結されており、その連結板部材50の底部の略中央に接続されたワイヤロープ51を二個のプーリ52、53を介してトルクモータ54が牽引する。すなわち、ここでは作動板20及び連結板部材50が上記結合手段として機能し、ワイヤロープ51、プーリ52、53及びトルクモータ54が上記駆動手段として機能する。
トルクモータ54がオンしてワイヤロープ51を牽引すると、連結板部材50を介して両側の作動板20がコイルばね21の付勢力に抗して後方に略水平に移動する。これによって、上記第1実施例において操作レバー11をラッチ方向に回動させたときと同様に、平行リンク機構の作用により上蓋5はほぼ垂直に降下し、上蓋5が洗浄庫2の上面開口3を閉塞する位置で停止する。
洗浄庫2を引き出す際には、それに先立ってトルクモータ54はオフされる。すると、ワイヤロープ51は弛緩して連結板部材50の牽引を解除するから、コイルばね21の付勢力によって連結板部材50は前方側へと移動し、これに伴い平行リンク機構により上蓋5はほぼ垂直に上昇して洗浄庫2から離間する。
なお、この構成では、トルクモータ54がオンしているときにのみ上蓋5は洗浄庫2の上面開口3を閉塞している。したがって、省電力やトルクモータ54の長寿命化などのためには、トルクモータ54の作動時間をできる限り短くすることが望ましい。そこで例えば、トルクモータ54は洗浄運転の開始スイッチが操作されたときにオンされ、運転が終了したあと適宜の時間的余裕をとった後に速やかにオフされるようにするとよい。すなわち、操作の手順としては、使用者は洗浄庫2内の食器籠4に食器を収容した後、洗浄庫2を筐体1内に完全に押し入れて操作レバー11をラッチ位置まで回動する。この状態では洗浄庫2の引き出しはラッチバー12により阻止されるが、上蓋5は未だ洗浄庫2から離間した位置に留まる。そして、使用者が操作パネル9で所定の操作を行って運転開始のスイッチを操作した後に、トルクモータ54がオンして上述のように上蓋5が閉鎖される。その後に、水が洗浄庫2内へ導入されて洗い運転が開始される。
更に、この第2実施例の食器洗い機は次のように変形することができる。図23は第3実施例による食器洗い機の上蓋開閉駆動機構の要部の側面構成図、図24は操作レバー11周辺の要部の上面図である。なお、上記第1、第2実施例と同一又は相当する構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
この第3実施例の食器洗い機では、上蓋5の開閉駆動機構は第2実施例と同一である。この第3実施例では、更に、作動板20の前端部にコイルばね22、プーリ55を介してワイヤ23のワイヤロープの端部が固着されている。ワイヤ23は第1実施例と同様にワイヤ案内溝24を経て前方へと送られているが、操作レバー11周辺の構造は第1実施例とは相違している。すなわち、図24に示すように、操作レバー11は軸25aを中心に回動自在であるが、ラッチ位置と解除位置は第1実施例とは全く逆である。コイルばね27は操作レバー11が解除位置に来るように回動部材25を付勢している。
トルクモータ54がオフしていて上蓋5が洗浄庫2から離間した位置にあるときには、ワイヤ23のワイヤロープは弛緩していて回動部材25に力を及ぼさないため、コイルばね27の付勢力によって操作レバー11は解除位置にある。上述したようにトルクモータ54がオンすると作動板20が後方へと移動する。すると、ワイヤ23のワイヤロープが牽引され、回動部材25はコイルばね27の付勢力に抗して回動し、操作レバー11はラッチ位置に到達する。これによりラッチバー12は洗浄庫2の引き出しを阻止する。すなわち、この構成によれば、トルクモータ54のオン/オフに応じて上蓋5の開閉を行うとともに、操作レバー11も回動させて洗浄庫2のラッチ又はその解除を行うことができる。したがって、使用者の操作レバー11の操作に依らずに、洗い運転中に洗浄庫2の引き出しを確実に阻止することができる。
また、第1実施例の食器洗い機では置台81の側壁82の突出部82aを避けるために、筐体1のコーナ部1cを湾曲形状に形成していたが、内側の洗浄庫2の底部カバーなどに接触しない範囲であれば様々な形状とすることができる。図25はコーナ部1cを斜めに切り落とすように面取りした例である。また、図26は突出部82aを避けるように内側に折り曲げた例である。このような構成によっても第1実施例と同様の効果を奏することは明らかである。
また、第1実施例の食器洗い機では、ガスケット31の下段中空部31bに挿入される補強金具32が断面L字形状を有しているが、図27に示すように単なる断面矩形状のものでもよい。
また、上記各実施例は単に一例にすぎないから、上記記載のもの以外に、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行ってもよいことは明らかである。