以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る多段パイプライン構成を有するアナログ−デジタル変換回路の構成を示すブロック図である。図1のアナログ−デジタル変換回路1は、10ビット4段パイプライン構成を有する。
図1において、アナログ−デジタル変換回路1は、主に1段目の回路3、2段目の回路4、3段目の回路5、4段目の回路6、複数のラッチ回路7、出力回路8、段差エラー検出制御回路30、メモリ15、減算器16および補正回路17から構成されている。
1段目(初段)の回路3は、サブA/D(アナログ−デジタル)コンバータ9a、サブD/A(デジタル−アナログ)コンバータ10、演算増幅器11および減算回路12を含む。また、1段目の回路3には、段差エラー検出制御回路30によりオンおよびオフが制御されるスイッチSW31,SW32が設けられる。スイッチSW31の一端には基準電圧Vrefaが印加される。
2段目および3段目の回路4,5は、サブA/Dコンバータ9、サブD/Aコンバータ10、演算増幅器11および減算回路12を含む。以下、減算回路12および演算増幅器11が差分増幅回路14を構成する。
1段目の回路3、2段目の回路4および3段目の回路5内の演算増幅器11の利得は4である。4段目(最終段)の回路6は、サブA/Dコンバータ9のみを含む。ここで、サブA/Dコンバータ9aは、サブA/Dコンバータ9の構成にさらに後述するモード切替回路を含む。また、各段のサブA/Dコンバータ9,9aおよびサブD/Aコンバータ10は、それぞれ第1基準電圧VRTおよび第2基準電圧VRBを参照する。
1段目の回路3は4ビット構成、2〜4段目の回路4〜6はそれぞれ2ビット構成である。ただし、1段目以外のサブA/Dコンバータ9には、ほぼ1ビット程度の冗長ビットが用意されている。この冗長ビットの詳細については後述する。
次に、図1のアナログ−デジタル変換回路1の動作を説明する。
通常のA/D変換動作時においては、段差エラー検出制御回路30は、スイッチSW31をオフにし、スイッチSW32をオンにする。それにより、アナログ入力信号Vinが、1段目の回路3の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9aへ転送される。
次に、1段目の回路3において、サブA/Dコンバータ9aは、アナログ入力信号Vinに対してA/D変換を行う。サブA/Dコンバータ9aのA/D変換結果である上位4ビットのデジタル信号D9,D8,D7,D6は、サブD/Aコンバータ10へ転送されるとともに、4つのラッチ回路7を介して出力回路8へ転送される。サブD/Aコンバータ10は、サブA/Dコンバータ9aのA/D変換結果である上位4ビットのデジタル信号D9,D8,D7,D6をアナログ信号に変換する。
減算回路12は、アナログ入力信号VinからサブD/Aコンバータ10のD/A変換結果を減算する。演算増幅器11は、減算回路12の出力を増幅する。演算増幅器11の出力は、2段目の回路4へ転送される。
2段目の回路4においては、サブA/Dコンバータ9が、1段目の回路3の演算増幅器11の出力に対してA/D変換を行う。サブA/Dコンバータ9のA/D変換結果は、サブD/Aコンバータ10へ転送されるとともに、3つのラッチ回路7を介して出力回路8へ転送される。これにより、2段目の回路4から中上位2ビットのデジタル信号D5,D4が得られる。
2段目の回路4の減算回路12は、1段目の回路3の演算増幅器11の出力からサブD/Aコンバータ10のD/A変換結果を減算する。2段目の回路4の演算増幅器11は、減算回路12の出力を増幅する。演算増幅器11の出力は、3段目の回路5へ転送される。
3段目の回路5においては、2段目の回路4と同様の動作が行われる。それにより、3段目の回路5から中下位2ビットのデジタル信号D3,D2が得られる。
4段目の回路6においては、3段目の回路5の演算増幅器11の出力に対してサブA/Dコンバータ9がA/D変換を行い、下位2ビットのデジタル信号D1,D0が得られる。
1段目〜4段目の回路3〜6のデジタル信号D9〜D0は、各ラッチ回路7を経て同時に出力回路8に到達する。すなわち、各ラッチ回路7は各回路3〜6のデジタル信号D9〜D0の出力の同期をとるために設けられている。
出力回路8は、後述する補正回路17からの与えられる補正信号に応じてアナログ入力信号Vinに対応する10ビットのデジタル出力値Doutを出力する。
次に、図2は、図1のアナログ−デジタル変換回路1の入出力特性を示す図である。図2の横軸はアナログ入力信号Vinを示し、縦軸はデジタル出力値Doutを示す。
図2の破線Trはアナログ−デジタル変換回路1の理想的な入出力特性を示し、実線Erはアナログ−デジタル変換回路1の差分増幅回路14の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の入出力特性を示す。
理想的には、破線Trで示されるようにデジタル出力値Doutがアナログ入力信号Vinに対して一定の比例関係を有することが望ましい。しかし、演算増幅器11がゲインエラーを有する場合、アナログ−デジタル変換回路1の入出力特性には、実線Erで示されるように非直線性誤差の段差エラーが現れる。
具体的に、図1のアナログ−デジタル変換回路1においては、1段目の回路3において上位4ビットのA/D変換を行っているため、図2に示す16個の段差を有する段差エラーが発生する。2段目の回路4によりその16個の各段差に細かい段差エラーが発生する。3段目の回路5によりその細かい各段差にさらに細かい段差が発生する。このように、本実施の形態におけるアナログ−デジタル変換回路1においては、1段目の回路3が上位ビットのデジタル信号D9〜D6を出力するため、1段目の回路3の演算増幅器11のゲインエラーが入出力特性に最も大きく影響を与える。
図3は、図2に示す入出力特性の一部の拡大図である。本実施の形態では、1断目の回路3における演算増幅器11がゲインエラーを有するものとする。
図3においては、図2と同様に破線Trがアナログ−デジタル変換回路1の理想的な入出力特性を示し、実線Erはアナログ−デジタル変換回路1の差分増幅回路14の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の入出力特性を示す。
図3に示すように、破線Trで示す理想的な入出力特性では、アナログ入力信号Vinが後述する基準電圧Vrefaよりも低い領域(後述する外部入力信号CDSaが“0”となる領域)とアナログ入力信号Vinが基準電圧Vrefa以上の領域(外部入力信号CDSaが“1”となる領域)とでデジタル出力値Doutが連続的に変化する。一方、実線Erで示すように、1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合には、アナログ入力信号Vinが後述する基準電圧Vrefaよりも低い領域(外部入力信号CDSaが“0”となる領域)とアナログ入力信号Vinが基準電圧Vrefa以上の領域(外部入力信号CDSaが“1”となる領域)とでデジタル出力値Doutが不連続となる。
段差エラーにおいてアナログ入力信号Vinが基準電圧Vrefaのときのデジタル出力値Doutの差を段差エラーの大きさESと呼ぶ。
段差エラー検出時には、段差エラー検出制御回路30がスイッチSW31をオンし、スイッチSW32をオフする。それにより、基準電圧Vrefaが1段目の回路3の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9aに印加される。また、段差エラー検出制御回路30は、後述するサブA/Dコンバータ9aのモード切替回路に外部入力信号(CDSa)およびテストモード信号(MD1)を与える。この外部入力信号(CDSa)およびテストモード信号(MD1)については後述する。
次に、サブA/Dコンバータ9aの構成について説明する。図4は、サブA/Dコンバータ9aの内部構成を示す回路図である。
図4のサブA/Dコンバータ9aは、全並列比較(フラッシュ)方式サブA/Dコンバータである。サブA/Dコンバータ9aは、複数の基準抵抗R0〜R15、複数のコンパレータ900〜915、エンコーダ920およびモード切替回路91から構成される。
複数の基準抵抗R0〜R15は全て同じ抵抗値を有し、第1基準電圧VRTを受けるノードと第2基準電圧VRBを受けるノードとの間に直列に接続されている。
複数の基準抵抗R0〜R15により第1基準電圧VRTと第2基準電圧VRBとの間の電位差が分割され、複数の基準電圧が生成される。基準抵抗R0と基準抵抗R1との間のノードには基準電圧Vrefaが生成される。
コンパレータ900〜915は、それぞれ対応する基準電圧をアナログ入力信号Vinと比較する。上記のように、本実施の形態においては、コンパレータ901に与えられる基準電圧Vrefaが図1のスイッチSW31に与えられる。
モード切替回路91は、CMOS(相補型金属酸化物半導体)スイッチSW51、CMOSスイッチSW61およびインバータ71から構成される。
CMOSスイッチSW51は、PチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、PMOSFETと呼ぶ)52およびNチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、NMOSFETと呼ぶ)53から構成され、CMOSスイッチSW61は、PチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、PMOSFETと呼ぶ)62およびNチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、NMOSFETと呼ぶ)63から構成される。
段差エラー検出制御回路30は、テストモード信号MD1を出力する端子IT1および外部入力信号CDSaを出力する端子IT2を有する。
CMOSスイッチSW51は、段差エラー検出制御回路30の出力端子IT2とノードN1との間に接続されている。CMOSスイッチSW61は、コンパレータ901の出力端子とノードN1との間に接続されている。
PMOSFET52のゲートおよびNMOSFET63のゲートには、段差エラー検出制御回路30の端子IT1のテストモード信号MD1が与えられ、PMOSFET62のゲートおよびNMOSFET53のゲートには、インバータ71を介してテストモード信号MD1の反転信号が与えられる。
通常のA/D変換動作時には、段差エラー検出制御回路30の端子IT1のテストモード信号MD1が“1”となる。それにより、CMOSスイッチSW51がオフし、CMOSスイッチSW61がオンする。その結果、コンパレータ901の出力信号がノードN1から出力信号CDS1として出力される。
段差エラー検出時には、段差エラー検出制御回路30の端子IT1のテストモード信号MD1が“0”となる。それにより、CMOSスイッチSW51がオンし、CMOSスイッチSW61がオフする。その結果、段差エラー検出制御回路30の端子IT2の外部入力信号CDSaがノードN1から出力信号CDS1として出力される。
エンコーダ920は、各コンパレータ900,902〜915の出力信号CDS0,CDS2〜CDS15およびモード切替回路91の出力信号CDS1に基づいて、上位4ビットのデジタル信号D9,D8,D7,D6を生成する。
ここで、段差エラー検出時のアナログ−デジタル変換回路1の動作について説明する。例えば、アナログ−デジタル変換回路1のA/D変換動作前に段差エラー検出を行う。この場合、上記のように、テストモード信号MD1が“0”に設定される。まず、段差エラー検出制御回路30は、外部入力信号CDSaを“0”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが図1のメモリ15に記憶される。次に、段差エラー検出制御回路30は、外部入力信号CDSaを“1”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが減算器16に与えられる。減算器16は、外部入力信号CDSaが“1”のときのデジタル出力値Doutとメモリ15に記憶されたデジタル出力値Doutとの差分値を算出する。減算器16により算出された差分値が図3の段差エラーの大きさESに相当する。減算器16により算出された差分値は、補正回路17に与えられる。
補正回路17は、メモリを内蔵する。この場合、補正回路17は、段差エラーの大きさESをメモリに記憶するとともに、段差エラーの大きさESに基づいて段差エラーの補正のための式または係数を算出し、メモリに記憶する。
アナログ−デジタル変換回路1のA/D変換動作時に、補正回路17は、メモリに記憶された式または係数に基づいて、出力回路8から出力されるデジタル出力値Doutを補正し、補正されたデジタル出力値Doutaを出力する。
以上のように、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1では、段差エラーを検出することができるとともに、検出された段差エラーが補正回路17により補正される。その結果、段差エラーを有さないデジタル出力値Doutaを出力することが可能となる。
また、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1では、段差エラーを補正するためにチューニング設計のような調整を行う必要がないため、開発コストを低減することができる。
さらに、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1では、差分増幅回路14に供給される電源電圧が変動した場合でも、容易に段差エラーを検出および補正することができるので、入出力特性の劣化を容易に防止することができる。
本実施の形態においては、1段目の回路3、2段目の回路4、3段目の回路5および4段目の回路6が複数段の回路に相当し、アナログ−デジタル変換回路1がアナログ−デジタル変換回路に相当し、サブA/Dコンバータ9a,9がアナログ−デジタル変換器に相当し、サブD/Aコンバータ10がデジタル−アナログ変換器に相当し、コンパレータ900〜915が比較器に相当し、演算増幅器11が演算増幅器に相当し、基準電圧Vrefaが基準電圧に相当し、アナログ入力信号Vinがアナログ信号に相当し、スイッチSW31,SW32が第1のスイッチに相当し、“0”が第1の論理値に相当し、“1”が第2の論理値に相当し、外部入力信号CDSa“0”が第1の論理値を有する第1の信号に相当し、外部入力信号CDSa“1”が第2の論理値を有する第2の信号に相当し、段差エラー検出制御回路30が信号生成回路に相当し、正規レンジORが正規レンジに相当し、冗長レンジeR1,eR2が冗長レンジに相当し、減算器16が減算器に相当し、補正回路17が補正回路に相当する。
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る多段パイプライン構成を有するアナログ−デジタル変換回路の構成を示すブロック図である。図5のアナログ−デジタル変換回路1aの構成が、図1のアナログ−デジタル変換回路1の構成と異なるのは、以下の点である。
図5において、1段目の回路3には、段差エラー検出制御回路30の代わりに段差エラー検出制御回路30bが設けられ、段差エラー検出制御回路30bによりオンおよびオフが制御されるスイッチSW31,SW32,SW33が設けられる。また、スイッチSW31の一端には、後述する基準電圧Vrefaが印加され、スイッチSW33の一端には、後述する基準電圧Vrefbが印加される。さらに、図1の1段目の回路3のサブA/Dコンバータ9aの代わりにサブA/Dコンバータ9bが設けられる。
通常のA/D変換動作時においては、段差エラー検出制御回路30bは、スイッチSW31,SW33をオフにし、スイッチSW32をオンにする。それにより、アナログ入力信号Vinが1段目の回路3の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9bへ転送される。
次に、図6は、図5のアナログ−デジタル変換回路1aの入出力特性を示す図である。図6の横軸はアナログ入力信号Vinを示し、縦軸はデジタル出力値Doutを示す。
図6の破線Trはアナログ−デジタル変換回路1aの理想的な入出力特性を示し、実線Erはアナログ−デジタル変換回路1の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の入出力特性を示す。
理想的には、破線Trで示されるようにデジタル出力値Doutがアナログ入力信号Vinに対して一定の比例関係を有することが望ましい。しかし、演算増幅器11が入力電圧により異なるゲインエラーを有する場合、アナログ−デジタル変換回路1の入出力特性には、実線Erで示されるようにそれぞれ大きさの異なる段差が現れる。本実施の形態においては、アナログ入力信号Vinが基準電圧Vrefaとなるα部における段差エラーの大きさESとアナログ入力信号Vinが基準電圧Vrefbとなるβ部における段差エラーの大きさES1とが異なる。
段差エラー検出時には、段差エラー検出制御回路30bがスイッチSW31をオンし、スイッチSW32,SW33をオフする。それにより、基準電圧Vrefaが1段目の回路3の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9bに印加される。また、段差エラー検出制御回路30bは、後述するサブA/Dコンバータ9bのモード切替回路に外部入力信号(CDSa)およびテストモード信号(MD1)を与える。
続いて、段差エラー検出制御回路30bはスイッチSW33をオンし、スイッチSW31,SW32をオフする。それにより、基準電圧Vrefbが1段目の回路3の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9bに印加される。また、段差エラー検出制御回路30は、後述するサブA/Dコンバータ9bのモード切替回路に外部入力信号(CDSb)およびテストモード信号(MD2)を与える。
次に、サブA/Dコンバータ9bの構成について説明する。図7は、サブA/Dコンバータ9bの内部構成を示す回路図である。
図7のサブA/Dコンバータ9bが図4のサブA/Dコンバータ9aと異なるのは次の点である。図7のサブA/Dコンバータ9bは、図4のサブA/Dコンバータ9aに加えてモード切替回路92をさらに含む。
本実施の形態においては、コンパレータ914に与えられる基準電圧Vrefbが図5のスイッチSW33に与えられる。
図7のモード切替回路91は、図4のモード切替回路91と同じ構成を有する。一方、図7のモード切替回路92は、CMOSスイッチSW55、CMOSスイッチSW65およびインバータ75から構成される。
CMOSスイッチSW55は、PMOSFET56およびNMOSFET57から構成され、CMOSスイッチSW65は、PMOSFET66およびNMOSFET67から構成される。
段差エラー検出制御回路30bは、テストモード信号MD1を出力する端子IT1、テストモード信号MD2を出力する端子IT2、外部入力信号CDSaを出力する端子IT2および外部入力信号CDSbを出力する端子IT4を有する。
CMOSスイッチSW55は、段差エラー検出制御回路30bの出力端子IT4とノードN2との間に接続されている。CMOSスイッチSW65は、コンパレータ914の出力端子とノードN2との間に接続されている。
PMOSFET56のゲートおよびNMOSFET67のゲートには、段差エラー検出制御回路30bの端子IT3のテストモード信号MD2が与えられ、PMOSFETのゲート66およびNMOSFET57のゲートには、インバータ75を介してテストモード信号MD2の反転信号が与えられる。
通常のA/D変換動作時には、段差エラー検出制御回路30bの端子IT1のテストモード信号MD1および端子IT1のテストモード信号MD2が“1”となる。それにより、CMOSスイッチSW51,SW55がオフし、CMOSスイッチSW61,SW65がオンする。その結果、コンパレータ901の出力信号がノードN1から出力信号CDS1として出力され、コンパレータ914の出力信号がノードN2から出力信号CDS14として出力される。
段差エラー検出時には、まず、段差エラー検出制御回路30bの端子IT1のテストモード信号MD1が“0”となり、端子IT3のテストモード信号MD2が“1”となる。それにより、CMOSスイッチSW51,SW65がオンし、CMOSスイッチSW55,SW61がオフする。その結果、段差エラー検出制御回路30bの端子IT2の外部入力信号CDSaがノードN1から出力信号CDS1として出力される。
エンコーダ920は、各コンパレータ900,902〜915の出力信号CDS0,CDS2〜CDS15およびモード切替回路91の出力信号CDS1に基づいて、上位4ビットのデジタル信号D9,D8,D7,D6を生成する。
続いて、段差エラー検出制御回路30bの端子IT1のテストモード信号MD1が“1”となり、端子IT3のテストモード信号MD2が“0”となる。それにより、CMOSスイッチSW55,SW61がオンし、CMOSスイッチSW51,SW65がオフする。その結果、段差エラー検出制御回路30bの端子IT4の外部入力信号CDSbがノードN2から出力信号CDS14として出力される。
エンコーダ920は、各コンパレータ900〜913,915の出力信号CDS0〜CDS13,CDS15およびモード切替回路92の出力信号CDS14に基づいて、上位4ビットのデジタル信号D9,D8,D7,D6を生成する。
ここで、段差エラー検出時のアナログ−デジタル変換回路1aの動作について説明する。例えば、アナログ−デジタル変換回路1aのA/D変換動作前に段差エラー検出を行う。
この場合、上記のように、最初に、テストモード信号MD1が“0”に設定され、テストモード信号MD2が“1”に設定される。
まず、段差エラー検出制御回路30bは、外部入力信号CDSaを“0”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが図5のメモリ15に記憶される。次に、段差エラー検出制御回路30bは、外部入力信号CDSaを“1”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが減算器16に与えられる。減算器16は、外部入力信号CDSaが“1”のときのデジタル出力値Doutとメモリ15に記憶されたデジタル出力値Doutとの差分値を算出する。減算器16により算出された差分値が図6の段差エラーの大きさESに相当する。減算器16により算出された差分値は、補正回路17に与えられる。
続いて、テストモード信号MD1が“1”に設定され、テストモード信号MD2が“0”に設定される。
まず、段差エラー検出制御回路30bは、外部入力信号CDSbを“0”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが図5のメモリ15に記憶される。次に、段差エラー検出制御回路30bは、外部入力信号CDSbを“1”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが減算器16に与えられる。減算器16は、外部入力信号CDSbが“1”のときのデジタル出力値Doutとメモリ15に記憶されたデジタル出力値Doutとの差分値を算出する。減算器16により算出された差分値が図6の段差エラーの大きさES1に相当する。減算器16により算出された差分値は、補正回路17に与えられる。
補正回路17は、段差エラーの大きさES,ES1をメモリに記憶するとともに、段差エラーの大きさES,ES1に基づいて段差エラーの補正のための式または係数を算出し、メモリに記憶する。
アナログ−デジタル変換回路1aのA/D変換動作時に、補正回路17は、メモリに記憶された式または係数に基づいて、出力回路8から出力されるデジタル出力値Doutを補正し、補正されたデジタル出力値Doutaを出力する。
以上のように、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1aでは、大きさの異なる段差を有する段差エラーを検出することができるとともに、検出された段差エラーが補正回路17により補正される。その結果、段差エラーを有さないデジタル出力値Doutaを出力することが可能となる。
また、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1aでは、段差エラーを補正するためにチューニング設計のような調整を行う必要がないため、開発コストを低減することができる。
さらに、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1aでは、差分増幅回路14に供給される電源電圧が変動した場合でも、容易に段差エラーを検出および補正することができるので、入出力特性の劣化を容易に防止することができる。
第2の実施の形態においては、1段目の回路3、2段目の回路4、3段目の回路5および4段目の回路6が複数段の回路に相当し、アナログ−デジタル変換回路1aがアナログ−デジタル変換回路に相当し、サブA/Dコンバータ9b,9がアナログ−デジタル変換器に相当し、サブD/Aコンバータ10がデジタル−アナログ変換器に相当し、コンパレータ900〜915が比較器に相当し、演算増幅器11が演算増幅器に相当し、基準電圧Vrefa,Vrefbが基準電圧に相当し、アナログ入力信号Vinがアナログ信号に相当し、スイッチSW31,SW32,SW33が第1のスイッチに相当し、段差エラー検出制御回路30bが信号生成回路に相当し、正規レンジORが正規レンジに相当し、冗長レンジeR1,eR2が冗長レンジに相当し、減算器16が減算器に相当し、補正回路17が補正回路に相当する。
(第3の実施の形態)
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る多段パイプライン構成を有するアナログ−デジタル変換回路の構成を示すブロック図である。図8のアナログ−デジタル変換回路1bの構成が、図1のアナログ−デジタル変換回路1の構成と異なるのは、以下の点である。
図8において、段差エラー検出制御回路30の代わりに段差エラー検出制御回路30cが設けられる。1段目の回路3には、段差エラー検出制御回路30cによりオンおよびオフが制御されるスイッチSW31,SW32が設けられる。2段目の回路4には、段差エラー検出制御回路30cによりオンおよびオフが制御されるスイッチSW41,SW42が設けられ、3段目の回路5には、段差エラー検出制御回路30cによりオンおよびオフが制御されるスイッチSW51,SW52が設けられる。
また、スイッチSW31の一端には、基準電圧Vrefaが印加され、スイッチSW41の一端には、基準電圧Vrefcが印加され、スイッチSW51の一端には、基準電圧Vrefdが印加される。
さらに、図1の2段目の回路4および3段目の回路5のサブA/Dコンバータ9の代わりにサブA/Dコンバータ9cが設けられる。
通常のA/D変換動作時においては、段差エラー検出制御回路30cは、スイッチSW31,SW41,SW51をオフし、スイッチSW32,SW42,SW52をオンにする。それにより、アナログ入力信号Vinが、1段目の回路3の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9aに転送される。1段目の回路3から出力されるアナログ入力信号Vin1が2段目の回路4の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9cに転送され、2段目の回路4から出力されるアナログ入力信号Vin2が3段目の回路5の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9cに転送される。
次に、図9は、図8のアナログ−デジタル変換回路1bの入出力特性を示す図である。図9の横軸はアナログ入力信号Vinを示し、縦軸はデジタル出力値Doutを示す。
図9の破線Trはアナログ−デジタル変換回路1bの理想的な入出力特性の一部を示し、実線Erはアナログ−デジタル変換回路1bの1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の入出力特性を示し、実線Er1はアナログ−デジタル変換回路1bの1段目の回路3および2段目の回路4の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の入出力特性を示し、実線Er2はアナログ−デジタル変換回路1bの1段目の回路3、2段目の回路4および3段目の回路5の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の入出力特性を示す。
本実施の形態においては、1段目の回路3の演算増幅器11による段差エラーの大きさES、1段目の回路3および2段目の回路4の演算増幅器11による段差エラーの大きさES2、1段目の回路3、2段目の回路4および3段目の回路5の演算増幅器11による段差エラーの大きさES3がそれぞれ検出される。
段差エラー検出時には、段差エラー検出制御回路30cがスイッチSW31,SW42,SW52をオンし、スイッチSW32,SW41,SW51をオフする。それにより、基準電圧Vrefaが1段目の回路3の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9aに印加される。また、段差エラー検出制御回路30cは、図4に示した1段目の回路3のサブA/Dコンバータ9aのモード切替回路91に外部入力信号CDSaおよびテストモード信号MD1を与える。
次に、段差エラー検出制御回路30cはスイッチSW41をオンし、スイッチSW42をオフする。それにより、基準電圧Vrefcが2段目の回路4の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9cに印加される。また、段差エラー検出制御回路30cは、後述する2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9cのモード切替回路に外部入力信号CDSaおよびテストモード信号MD1を与える。
続いて、段差エラー検出制御回路30cはスイッチSW51をオンし、スイッチSW52をオフする。それにより、基準電圧Vrefdが3段目の回路5の差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9cに印加される。また、段差エラー検出制御回路30cは、後述する3段目の回路5のサブA/Dコンバータ9cのモード切替回路に外部入力信号CDSaおよびテストモード信号MD1を与える。
図8の1段目の回路3のサブA/Dコンバータ9aは、図4のサブA/Dコンバータ9aの構成と同じである。
次に、2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9cの構成について説明する。図10は、サブA/Dコンバータ9cの内部構成を示す回路図である。図10の2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9cが図4のサブA/Dコンバータ9aと異なるのは次の点である。
図10のサブA/Dコンバータ9cは、図4の基準抵抗R0〜R15の代わりに基準抵抗R0〜R7を含み、図4のコンパレータ900〜915の代わりにコンパレータ900〜907を含む。
サブA/Dコンバータ9cの複数の基準抵抗R0〜R7により基準電圧VRT1と基準電圧VRB1との間の電位差が分割され、複数の基準電圧が生成される。基準抵抗R2と基準抵抗R3との間のノードには基準電圧Vrefcが生成される。
また、サブA/Dコンバータ9cにおいては、正規レンジの上下に冗長レンジが設けられており、コンパレータ900,901,906,907の出力信号Res0,Res1,Res6,Res7が冗長エンコーダ921に与えられる。
冗長エンコーダ921は、出力信号Res0,Res1,Res6,Res7に基づいて冗長レンジ判定信号RE0,RE1を生成する。
コンパレータ902〜905は、それぞれ対応する基準電圧を1段目の回路3から出力されるアナログ入力信号Vin1と比較する。上記のように、本実施の形態においては、コンパレータ903に与えられる基準電圧Vrefcが図8のスイッチSW41に与えられる。
図10のモード切替回路91は、図4のモード切替回路91と同じ構成を有する。
段差エラー検出制御回路30cは、テストモード信号MD1を出力する端子IT1および外部入力信号CDSaを出力する端子IT2を有する。
通常のA/D変換動作時には、段差エラー検出制御回路30cの端子IT1のテストモード信号MD1が“1”となる。それにより、CMOSスイッチSW51がオフし、CMOSスイッチSW61がオンする。その結果、コンパレータ903の出力信号がノードN1から出力信号CDS1として出力される。
段差エラー検出時には、段差エラー検出制御回路30cの端子IT1のテストモード信号MD1が“0”となる。それにより、CMOSスイッチSW51がオンし、CMOSスイッチSW61がオフする。その結果、段差エラー検出制御回路30cの端子IT2の外部入力信号CDSaがノードN1から出力信号CDS1として出力される。
エンコーダ920は、各コンパレータ902,904,905の出力信号CDS0,CDS2,CDS3およびモード切替回路91の出力信号CDS1に基づいて、中上位2ビットのデジタル信号D5,D4を生成する。
まず、段差エラー検出制御回路30cは、外部入力信号CDSaを“0”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが図8のメモリ15に記憶される。
次に、段差エラー検出制御回路30cは、外部入力信号CDSaを“1”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが減算器16に与えられる。減算器16は、外部入力信号CDSaが“1”のときのデジタル出力値Doutとメモリ15に記憶されたデジタル出力値Doutとの差分値を算出する。減算器16により算出された差分値が図9の段差エラーの大きさES2に相当する。減算器16により算出された差分値は、補正回路17に与えられる。
3段目の回路5のサブA/Dコンバータ9cの構成および動作は、図10に示す2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9cの構成および動作と同じである。
3段目の回路5のサブA/Dコンバータ9cでは基準抵抗R2と基準抵抗R3との間のノードには基準電圧Vrefdが生成される。
コンパレータ902〜905は、それぞれ対応する基準電圧を2段目の回路4から出力されるアナログ入力信号Vin2と比較する。上記のように、本実施の形態においては、コンパレータ903に与えられる基準電圧Vrefdが図8のスイッチSW51に与えられる。
3段目の回路5のサブA/Dコンバータ9cのエンコーダ920は、各コンパレータ902,904,905の出力信号CDS0,CDS2,CDS3およびモード切替回路91の出力信号CDS1に基づいて、中下位2ビットのデジタル信号D3,D2を生成する。
まず、段差エラー検出制御回路30cは、3段目の回路5のサブA/Dコンバータ9cに与える外部入力信号CDSaを“0”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが図8のメモリ15に記憶される。
次に、段差エラー検出制御回路30cは、3段目の回路5のサブA/Dコンバータ9cに与える外部入力信号CDSaを“1”に設定する。このときのデジタル出力値Doutが減算器16に与えられる。減算器16は、外部入力信号CDSaが“1”のときのデジタル出力値Doutとメモリ15に記憶されたデジタル出力値Doutとの差分値を算出する。減算器16により算出された差分値が図9の段差エラーの大きさES3に相当する。減算器16により算出された差分値は、補正回路17に与えられる。
補正回路17は、段差エラーの大きさES,ES2,ES3をメモリに記憶するとともに、段差エラーの大きさES,ES2,ES3に基づいて段差エラーの補正のための式または係数を算出し、メモリに記憶する。
アナログ−デジタル変換回路1bのA/D変換動作時に、補正回路17は、メモリに記憶された式または係数に基づいて、出力回路8から出力されるデジタル出力値Doutを補正し、補正されたデジタル出力値Doutaを出力する。
以上のように、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1bでは、2段目の回路3および3段目の回路4の演算増幅器14による段差エラーを検出することができるとともに、検出された段差エラーが補正回路17により補正される。その結果、段差エラーを有さないデジタル出力値Doutaを出力することが可能となる。
また、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1bでは、段差エラーを補正するためにチューニング設計のような調整を行う必要がないため、開発コストを低減することができる。
さらに、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1bでは、差分増幅回路14に供給される電源電圧が変動した場合でも、容易に段差エラーを検出および補正することができるので、入出力特性の劣化を容易に防止することができる。
第3の実施の形態においては、1段目の回路3、2段目の回路4、3段目の回路5および4段目の回路6が複数段の回路に相当し、アナログ−デジタル変換回路1がアナログ−デジタル変換回路に相当し、サブA/Dコンバータ9a,9cがアナログ−デジタル変換器に相当し、サブD/Aコンバータ10がデジタル−アナログ変換器に相当し、コンパレータ900〜907が比較器に相当し、演算増幅器11が演算増幅器に相当し、基準電圧Vrefa,Vrefc,Vrefdが基準電圧に相当し、アナログ入力信号Vin,Vin1,Vin2がアナログ信号に相当し、スイッチSW31,SW32,SW41,SW42,SW51,SW52が第1のスイッチに相当し、段差エラー検出制御回路30cが信号生成回路に相当し、正規レンジORが正規レンジに相当し、冗長レンジeR1,eR2が冗長レンジに相当し、減算器16が減算器に相当し、補正回路17が補正回路に相当する。
(第4の実施の形態)
図11は、本発明の第4の実施の形態に係る多段パイプライン構成を有するアナログ−デジタル変換回路の構成を示すブロック図である。図11のアナログ−デジタル変換回路1cは、回路ST0、スイッチSW11,SW12、SW71、段差エラー検出制御回路30dおよび信号発生器40を含む。
図11において、回路ST0は、演算増幅器50、サブA/Dコンバータ9a、サブD/Aコンバータ10、減算回路12および演算増幅器11を含む。減算回路12および演算増幅器11が差分増幅器14を構成する。
回路ST0内の演算増幅器11の利得は2であり、演算増幅器50の利得は4である。また、回路ST0のサブA/Dコンバータ9aは4ビット構成である。
信号発生器40は、クロック信号CLK1,CLK2および制御信号SWを発生する。クロック信号CLK1の周波数はFsであり、クロック信号CLK3の周波数はクロック信号CLK1の周波数Fsの3倍すなわち3Fsである。制御信号SWの周波数はクロック信号CLK1の周波数Fsと等しい。
回路ST0内の演算増幅器50、サブA/Dコンバータ9a、サブD/Aコンバータ10および演算増幅器11は、クロック信号CLK3に応答して動作する。また、スイッチSW11,SW12は、制御信号SWに応答して相補的にオンおよびオフする。スイッチSW71は、段差エラー検出制御回路30dによりオンおよびオフが制御される。スイッチSW71の一端には、後述する基準電圧Vrefeが印加される。
次に、図11のアナログ−デジタル変換回路1cの動作を説明する。
通常のA/D変換動作時においては、段差エラー検出制御回路30dは、スイッチSW71をオフにする。それにより、アナログ入力信号Vinが、スイッチSW11のオン時に回路ST0内の演算増幅器50およびサブA/Dコンバータ9aへ転送される。
サブA/Dコンバータ9aは、アナログ入力信号Vinに対してA/D変換を行い、A/D変換結果である上位4ビットのデジタル信号D9〜D6を出力するとともにそのデジタル信号をサブD/Aコンバータ10に与える。サブD/Aコンバータ10は、サブA/Dコンバータ9aから与えられる4ビットのデジタル信号に対してD/A変換を行い、アナログ信号を出力する。
一方、演算増幅器50は、入力ノードNIのアナログ入力信号Vinをサンプリングおよび増幅して出力する。減算回路12は、演算増幅器50から出力されたアナログ入力信号VinとサブD/Aコンバータ10から出力されたアナログ信号とを減算する。演算増幅器11は、減算回路12の出力信号を増幅してアナログ信号を出力する。演算増幅器11から出力されるアナログ信号は、スイッチSW12のオン時に入力ノードNIに与えられる。この動作を繰り返すことにより、サブA/Dコンバータ9aから中位3ビットD5〜D3と、下位3ビットD2〜D0とが得られる。これにより、サブA/Dコンバータ9aは、アナログ入力信号Vinに対応する10ビットのデジタル出力値Doutを出力する。
次に、図11のアナログ−デジタル変換回路1cの通常のA/D変換動作時について説明する。図12は図11のアナログ−デジタル変換回路1cの通常のA/D変換動作時を説明するためのタイミングチャートである。
図12において、AMPは増幅動作を示し、AZはオートゼロ動作を示し、SMPはサンプリング動作を示す。
期間T1〜T2では、制御信号SWがハイレベルになる。それにより、スイッチSW11がオンし、スイッチSW12がオフする。したがって、入力端子Inに与えられるアナログ入力信号VinがスイッチSW11を介して入力ノードNIに転送される。
まず、期間T1では、クロック信号CLK3がハイレベルになる。それにより、回路ST0内の演算増幅器50がオートゼロ動作およびサンプリング動作を行い、サブA/Dコンバータ9aがオートゼロ動作およびサンプリング動作を行う。このとき、演算増幅器11は増幅動作を行い、サブD/Aコンバータ10の出力は不定となっている。
次に、期間T2では、クロック信号CLK3がローレベルになる。それにより、回路ST0内の演算増幅器50が増幅動作を行い、サブA/Dコンバータ9aがA/D変換動作を行う。この場合、サブA/Dコンバータ9aから上位4ビットのデジタル信号D9〜D6が出力される。
期間T3〜T6では、制御信号SWがローレベルになる。それにより、スイッチSW11がオフし、スイッチSW12がオンする。したがって、演算増幅器11から出力ノードNOに出力されるアナログ信号がスイッチSW12を介して入力ノードNIに与えられる。
まず、期間T3では、クロック信号CLK3がハイレベルになる。それにより、回路ST0内の演算増幅器50がオートゼロ動作およびサンプリング動作を行い、サブA/Dコンバータ9aがオートゼロ動作およびサンプリング動作を行う。このとき、演算増幅器11は増幅動作を行い、サブD/Aコンバータ10はD/A変換動作を行う。その結果、演算増幅器11から出力ノードNOに出力されるアナログ信号がスイッチSW12を介して入力ノードNIに与えられる。
次に、期間T4では、クロック信号CLK3がローレベルになる。それにより、回路ST0内の演算増幅器50が増幅動作を行い、サブA/Dコンバータ9aがA/D変換動作を行う。この場合、サブA/Dコンバータ9aから中位3ビットのデジタル信号D5〜D3および冗長1ビットが出力される。このとき、演算増幅器11はオートゼロ動作およびサンプリング動作を行い、サブD/Aコンバータ10の出力は不定となっている。
さらに、期間T5では、クロック信号CLK3がハイレベルになる。それにより、回路ST0内の演算増幅器50がオートゼロ動作およびサンプリング動作を行い、サブA/Dコンバータ9aがオートゼロ動作およびサンプリング動作を行う。このとき、演算増幅器11は増幅動作を行い、サブD/Aコンバータ10はD/A変換動作を行う。その結果、演算増幅器11から出力ノードNOに出力されるアナログ信号がスイッチSW12を介して入力ノードNIに与えられる。
続いて、期間T6では、クロック信号CLK3がローレベルになる。それにより、回路ST0内の演算増幅器50が増幅動作を行い、サブA/Dコンバータ9aがA/D変換動作を行う。この場合、サブA/Dコンバータ9aから下位3ビットのデジタル信号D2〜D0および冗長1ビットが出力される。このとき、演算増幅器11はオートゼロ動作およびサンプリング動作を行い、サブD/Aコンバータ10の出力は不定となっている。
次に、図13は図11のアナログ−デジタル変換回路1cの段差エラー検出時の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図13において、AMPは増幅動作を示し、AZはオートゼロ動作を示し、SMPはサンプリング動作を示す。段差エラー検出時には、段差エラー検出制御回路30dがテストモード信号MD1を“0”に設定する。
期間T1〜T2では、段差エラー検出制御回路30dがスイッチSW71をオンにする。また、スイッチSW11,SW12はオフにされる。それにより、基準電圧VrefeがスイッチSW71を介して入力ノードNIに与えられる。
この場合、段差エラー検出制御回路30dは外部入力信号CDSaを“0”に設定する。それにより、図4に示したように、外部入力信CDSaがノードN1から出力信号CDS1として出力される。それにより、サブA/Dコンバータ9aから上位4ビットのデジタル信号D9〜D6が出力される。
期間T3〜T6では、スイッチSW11,SW71がオフにされ、スイッチSW12がオンにされる。したがって、演算増幅器12から出力ノードNOに出力されるアナログ信号がスイッチSW12を介して入力ノードNIに与えられる。
それにより、サブA/Dコンバータ9aから中位3ビットのデジタル信号D5〜D3および冗長1ビットが出力される。続いて、サブA/Dコンバータ9aから下位3ビットのデジタル信号D2〜D0および冗長1ビットが出力される。このときのデジタル出力値Doutが図11のメモリ15に記憶される。
期間T7〜T8では、段差エラー検出制御回路30dがスイッチSW71をオンにする。また、スイッチSW11,SW12はオフにされる。それにより、基準電圧VrefeがスイッチSW71を介して入力ノードNIに与えられる。
この場合、段差エラー検出制御回路30dは外部入力信号CDSaを”1”に設定する。それにより、図4に示したように、外部入力信CDSaがノードN1から出力信号CDS1として出力される。それにより、サブA/Dコンバータ9aから上位4ビットのデジタル信号D9〜D6が出力される。
期間T9〜T12では、スイッチSW11,SW71がオフにされ、スイッチSW12がオンにされる。したがって、演算増幅器12から出力ノードNOに出力されるアナログ信号がスイッチSW12を介して入力ノードNIに与えられる。
それにより、サブA/Dコンバータ9aから中位3ビットのデジタル信号D5〜D3および冗長1ビットが出力される。続いて、サブA/Dコンバータ9aから下位3ビットのデジタル信号D2〜D0および冗長1ビットが出力される。
このときのデジタル出力値Doutが減算器16に与えられる。減算器16は、外部入力信号CDSaが“1”のときのデジタル出力値Doutとメモリ15に記憶されたデジタル出力値Doutとの差分値を算出する。減算器16により算出された差分値が段差エラーの大きさESに相当する。減算器16により算出された差分値は、補正回路17に与えられる。
補正回路17は、段差エラーの大きさESをメモリに記憶するとともに、段差エラーの大きさESに基づいて段差エラーの補正のための式または係数を算出し、メモリに記憶する。
アナログ−デジタル変換回路1cのA/D変換動作時に、補正回路17は、メモリに記憶された式または係数に基づいて、サブA/Dコンバータ9aから出力されるデジタル出力値Doutを補正し、補正されたデジタル出力値Doutaを出力する。
以上のように、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1cでは、段差エラーを検出することができるとともに、検出された段差エラーが補正回路17により補正される。その結果、段差エラーを有さないデジタル出力値Doutaを出力することが可能となる。
また、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1cでは、段差エラーを補正するためにチューニング設計のような調整を行う必要がないため、開発コストを低減することができる。
さらに、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1cでは、差分増幅回路14に供給される電源電圧が変動した場合でも、容易に段差エラーを検出および補正することができるので、入出力特性の劣化を容易に防止することができる。
また、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1cにおいては、1段の回路ST0から上位4ビットのデジタル信号D9〜D6、中位3ビットのデジタル信号D5〜D3および下位3ビットのデジタル信号D2〜D0が順次出力される。このようにして、1段の回路ST0により10ビットの3段パイプライン構成が実現される。したがって、省面積化が実現される。
さらに、上記実施の形態では、回路ST0において、2段の演算増幅器11,50が設けられているが、回路に1段の演算増幅器または3段以上の演算増幅器を設けてもよい。
第4の実施の形態においては、入力ノードNIおよび出力ノードNOが第1および第2のノードに相当し、アナログ−デジタル変換回路1cが第1の回路に相当し、サブA/Dコンバータ9aがアナログ−デジタル変換器に相当し、サブD/Aコンバータ10がデジタル−アナログ変換器に相当し、スイッチSW11,SW12が切替器に相当し、コンパレータ900〜915が比較器に相当し、演算増幅器11が演算増幅器に相当し、基準電圧Vrefeが基準電圧に相当し、アナログ入力信号Vinがアナログ信号に相当し、スイッチSW71が第1のスイッチに相当し、段差エラー検出制御回路30dが信号生成回路に相当し、モード切替回路91が第2のスイッチに相当し、正規レンジORが正規レンジに相当し、冗長レンジeR1,eR2が冗長レンジに相当し、減算器16が減算器に相当し、補正回路17が補正回路に相当する。
(第5の実施の形態)
図14は、本発明の第5の実施の形態に係る多段パイプライン構成を有するアナログ−デジタル変換回路の構成を示すブロック図である。図14のアナログ−デジタル変換回路1dの構成が、図1のアナログ−デジタル変換回路1の構成と異なるのは、以下の点である。
図14において、1段目の回路3には、調整ユニット27がさらに設けられ、サブD/Aコンバータ10の代わりにサブD/Aコンバータ10aが設けられている。調整ユニット27は、コンパレータ25、サンプルホールド回路26およびモード切替回路91を含む。スイッチSW31の一端には、後述する基準電圧Vreffが印加される。なお、モード切替回路91は図4のサブA/Dコンバータ9aのモード切替回路91と同じ構成を有する。
調整ユニット27のサンプルホールド回路26は、2倍の増幅率を有する演算増幅器および演算増幅器に与えられる基準電圧を調整する調整回路を含む。また、サブD/Aコンバータ10aは、図1のサブD/Aコンバータ10の構成に加えて、サンプルホールド回路26における基準電圧の調整に基づいて出力電圧を調整する調整回路を含む。
図15は調整ユニット27の動作を説明するための模式図である。図15(a)の左側の軸はアナログ入力信号Vinの電圧レンジを示し、右側はコンパレータ25による比較結果を示す。また、図15(b),(c)の左側の軸はアナログ−デジタル変換回路1dへ入力可能なアナログ入力信号Vinの電圧レンジを示し、中央の軸はサンプルホールド回路26の演算増幅器の入力電圧を示し、右側の軸はサンプルホールド回路26の演算増幅器の出力電圧を示す。図15において、VRTは第1基準電圧であり、VRBは第2基準電圧である。また、コンパレータ25には、基準電圧Vreffが与えられる。本実施の形態では、一例として第2基準電圧VRBを0Vとして説明する。
図15(a)に示すように、コンパレータ25は、アナログ入力信号Vinを基準電圧Vreffと比較し、比較結果を示す判定信号CPoutを出力する。
アナログ入力信号Vinが基準電圧Vreff以上の場合、コンパレータ25による判定信号CPoutは“1(H)”になる。この場合、サンプルホールド回路26の調整回路が演算増幅器の基準電圧を調整することにより、図15(b)に示すように、例えばアナログ入力信号VinからVRT/4を減算した電圧が演算増幅器に入力される。それにより、演算増幅器の入力電圧の範囲はVRT/4から3VRT/4に相当し、従来の半分となる。演算増幅器は、入力電圧を2倍に増幅して出力する。演算増幅器の出力電圧の範囲は0VからVRTまでとなる。
アナログ入力信号Vinが基準電圧Vreffよりも低い場合、コンパレータ25による判定信号CPoutは“0(L)”になる。この場合、サンプルホールド回路26の調整回路が演算増幅器の基準電圧を調整することにより、図15(c)に示すように、例えばアナログ入力信号VinにVRT/4を加算した電圧が演算増幅器に入力される。それにより、演算増幅器の入力電圧の範囲はVRT/4から3VRT/4に相当し、従来の半分となる。演算増幅器は、入力電圧を2倍に増幅して出力する。演算増幅器の出力電圧の範囲は0VからVRTに相当し、従来の半分となる。
このように、サンプルホールド回路26の演算増幅器の入力電圧の範囲はVRT/4から3VRT/4までとなるので、演算増幅器の入力電圧の範囲が0VからVRTまでの場合に比べて、演算増幅器の出力電圧の範囲を小さくすることができる。それにより、アナログ入力信号Vinを従来より大きな範囲にしても、入力電圧と出力電圧との線形性を確保することができる。また、アナログ−デジタル変換回路1dおける電圧を低減することができ、低消費電力化を図ることができる。
コンパレータ25による判定信号CPoutが“1(H)”の場合には、サブD/Aコンバータ10a内の調整回路は、基準電圧Vreffに対応するデジタル値からVRTに対応するデジタル値までの範囲が0VからVRTまでのアナログ電圧の範囲に変換されるように、サブD/Aコンバータ10a内の基準電圧を調整する。
コンパレータ25による判定信号CPoutが“0(L)”の場合には、サブD/Aコンバータ10a内の調整回路が0Vに対応するデジタル値から基準電圧Vreffに対応するデジタル値までの範囲が0VからVRTまでのアナログ電圧の範囲に変換されるように、サブD/Aコンバータ10a内の基準電圧を調整する。
図16は、図14のアナログ−デジタル変換回路1dの入出力特性を示す図である。図16の横軸はアナログ入力信号Vinを示し、縦軸はデジタル出力値Doutを示す。
図16の破線Trはアナログ−デジタル変換回路1dの理想的な入出力特性を示し、実線Er3はアナログ−デジタル変換回路1dのサンプルホールド回路26の演算増幅器がゲインエラーを有する場合の入出力特性を示し、実線Er4はアナログ−デジタル変換回路1dの1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の入出力特性を示す。
サンプルホールド回路26の演算増幅器がゲインエラーを有する場合には、アナログ入力信号Vinが基準電圧Vreffよりも低い領域とアナログ入力信号Vinが基準電圧Vreff以上の領域とでデジタル出力値Doutが不連続となる。サンプルホールド回路26の演算増幅器のゲインエラーによる段差エラーにおいて、アナログ入力信号Vinが基準電圧Vreffのときのデジタル出力値Doutの差を段差エラーの大きさES4と呼ぶ。
次に、調整ユニット27の構成について説明する。図17は、調整ユニット27の構成を示す回路図である。
段差エラー検出制御回路30とモード切替回路91との接続は、図4に示した接続と同様である。コンパレータ25の一方の入力端子にアナログ入力信号Vinが与えられ、他方の入力端子に基準電圧Vreffが与えられる。コンパレータ25の出力端子は、CMOSスイッチSW61を通してノードN1に接続されている。
通常のA/D変換動作時には、段差エラー検出制御回路30は、スイッチSW31をオフにし、スイッチSW32をオンにする。それにより、アナログ入力信号Vinが調整ユニット27およびサブA/Dコンバータ9に入力される。また、段差エラー検出制御回路30の端子IT1のテストモード信号MD1が“1”となる。それにより、CMOSスイッチSW51がオフし、CMOSスイッチSW61がオンする。その結果、コンパレータ25の出力信号がノードN1から判定出力CPoutとしてサンプルホールド回路26およびサブD/Aコンバータ10aに出力される。
段差エラー検出時には、段差エラー検出制御回路30は、スイッチSW31をオンにし、スイッチSW32をオフにする。それにより、基準電圧Vreffが調整ユニット27およびサブA/Dコンバータ9に入力される。また、段差エラー検出制御回路30の端子IT1のテストモード信号MD1が“0”となる。それにより、CMOSスイッチSW51がオンし、CMOSスイッチSW61がオフする。その結果、段差エラー検出制御回路30の端子IT2の外部入力信号CDSaがノードN1から判定出力CPoutとして出力される。
まず、段差エラー検出制御回路30は、外部入力信号CDSaを“0”に設定する。それにより、基準電圧VreffにVRT/4を加算した電圧がサンプルホールド回路26の演算増幅器に入力され、2倍に増幅される。このときのデジタル出力値Doutが図14のメモリ15に記憶される。
次に、段差エラー検出制御回路30は、外部入力信号CDSaを“1”に設定する。それにより、基準電圧VreffからVRT/4を減算した電圧がサンプルホールド回路26の演算増幅器に入力され、2倍に増幅される。このときのデジタル出力値Doutが減算器16に与えられる。
減算器16は、外部入力信号CDSaが“1”のときのデジタル出力値Doutとメモリ15に記憶されたデジタル出力値Doutとの差分値を算出する。減算器16により算出された差分値が図16の段差エラーの大きさES4に相当する。減算器16により算出された差分値は、補正回路17に与えられる。
補正回路17は、段差エラーの大きさES4をメモリに記憶するとともに、段差エラーの大きさES4に基づいて段差エラーの補正のための式または係数を算出し、メモリに記憶する。
アナログ−デジタル変換回路1dのA/D変換動作時に、補正回路17は、メモリに記憶された式または係数に基づいて、出力回路8から出力されるデジタル出力値Doutを補正し、補正されたデジタル出力値Doutaを出力する。
以上のように、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1dでは、サンプルホールド回路26の演算増幅器のゲインエラーによる段差エラーを検出することができるとともに、検出された段差エラーが補正回路17により補正される。その結果、段差エラーを有さないデジタル出力値Doutaを出力することが可能となる。
また、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1dでは、段差エラーを補正するためにチューニング設計のような調整を行う必要がないため、開発コストを低減することができる。
さらに、本実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1dでは、サンプルホールド回路26の演算増幅器に供給される電源電圧が変動した場合でも、容易に段差エラーを検出および補正することができるので、入出力特性の劣化を容易に防止することができる。
第5の実施の形態においては、1段目の回路3、2段目の回路4、3段目の回路5および4段目の回路6が複数段の回路に相当し、アナログ−デジタル変換回路1dがアナログ−デジタル変換回路に相当し、サブA/Dコンバータ9がアナログ−デジタル変換器に相当し、サブD/Aコンバータ10がデジタル−アナログ変換器に相当し、コンパレータ900〜915が比較器に相当し、演算増幅器11が演算増幅器に相当し、基準電圧Vreffが基準電圧に相当し、アナログ入力信号Vinがアナログ信号に相当し、スイッチSW31,SW32が第1のスイッチに相当し、差分増幅回路14が差分増幅器に相当し、比較器25が比較器に相当し、サンプルホールド回路26が演算増幅器および調整回路に相当し、段差エラー検出制御回路30が信号生成回路に相当し、モード切替回路91が第2のスイッチに相当し、正規レンジORが正規レンジに相当し、冗長レンジeR1,eR2が冗長レンジに相当し、減算器16が減算器に相当し、補正回路17が補正回路に相当する。
(第6の実施の形態)
図18は、本発明の第6の実施の形態に係る多段パイプライン構成を有するアナログ−デジタル変換回路の構成を示すブロック図である。
図18のアナログ−デジタル変換回路1eの構成が、図1のアナログ−デジタル変換回路1の構成と異なるのは、以下の点である。
図18において、補正回路17の代わりに制御回路101が設けられ、第1段目の回路3の演算増幅回路11の代わりに演算増幅回路11aが設けられている。制御回路101は、減算器16から出力された段差エラーの値に応じて演算増幅回路11aの増幅率を変更することにより、段差エラーを補正する。
図19は、図18の演算増幅回路11aの構成の一例を示す回路図である。
図19に示す演算増幅回路11aは、演算増幅器110、コンデンサ200,201,202,203,204およびスイッチSW101,SW102,SW103を含む。
コンデンサ200は容量400Cを有し、コンデンサ201は容量96Cを有し、コンデンサ202は容量1Cを有し、コンデンサ203は容量2Cを有し、コンデンサ204は容量4Cを有する。
演算増幅器110の反転入力端子と出力端子の間にコンデンサ201、コンデンサ202とスイッチSW101との直列回路、コンデンサ203とスイッチSW102との直列回路およびコンデンサ204とスイッチSW103との直列回路が接続されている。演算増幅器110の反転入力端子には、コンデンサ200が接続されている。演算増幅器110の非反転入力端子は、接地されている。
制御回路101が減算器16から出力される段差エラーの値に応じてスイッチSW101〜SW103を選択的にオンまたはオフすることにより演算増幅回路11aの増幅率を1%ずつ8段階に切り替えることができる。
例えば、制御回路101がスイッチSW101〜SW103の全てをオフにした場合、演算増幅回路11aの利得は、400C/96C=約4.16(約4%)となる。また、制御回路101がスイッチSW101をオンし、スイッチSW102,SW103をオフした場合、演算増幅回路11aの利得は、400C/97C=約4.12(約3%)となる。制御回路101がスイッチSW101〜SW103の全てをオンにした場合、演算増幅回路11aの利得は、400C/104C=約3.84(約−4%)となる。その結果、段差エラーを補正することができる。
また、制御回路101による段差エラーの補正動作を繰り返し行うことにより段差エラーを最小にしてもよい。
また、本実施の形態においては、制御回路101を用いて差分増幅回路14の演算増幅器11の増幅率を調整することにより段差エラーを補正することとしたが、これに限定されず、例えば、制御回路101が段差エラーに応じて2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の基準電圧を調整することにより段差エラーを補正してもよい。
(冗長補正)
上記第1の実施の形態のアナログ−デジタル変換回路1において、1段目,2段目および3段目の回路3,4,5の出力電圧が2段目,3段目および4段目の回路4,5,6のサブA/Dコンバータ9の正規レンジから外れる場合を想定し、2段目,3段目および4段目の回路4,5,6のサブA/Dコンバータ9の電圧レンジは正規レンジの上下に冗長レンジを有する。
この場合、2段目,3段目および4段目の回路4,5,6のサブA/Dコンバータ9は、2ビットのデジタル信号D5,D4に加えて冗長レンジに対応する1つの冗長ビットを有する。すなわち、2段目,3段目および4段目の回路4,5,6のサブA/Dコンバータ9は、冗長ビットを含めて3ビット構成を有する。
図20は、アナログ−デジタル変換回路1の1段目の回路3および2段目の回路4におけるサブA/Dコンバータ9a,9の電圧レンジを示す説明図である。図20(a)〜(d)の左側に1段目の回路3のサブA/Dコンバータ9aの電圧レンジとデジタル信号の値との関係を示し、図20(a)〜(d)の右側に2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の電圧レンジの一部とデジタル信号の値との関係を示す。
2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9は、正規レンジ(理想レンジ)ORの上下に冗長ビットで表される冗長レンジeR1,eR2を有する。デジタル信号D5,D4(正規ビット)および冗長ビットの合計3ビットにより8個のデジタル値が表される。正規レンジ(理想レンジ)ORに8個のデジタル値のうち中間の4個のデジタル値が割り当てられ、上下の冗長レンジeR1,eR2の各々に2個のデジタル値が割り当てられる。
1段目の回路3が正常に動作する場合には、図20(a)に示すように、1段目の演算増幅器11の出力電圧は2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の正規レンジOR内にある。
図20(b)の例では、1段目の演算増幅器11が入力オフセットを有することにより、演算増幅器11の出力電圧の一部が2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の正規レンジORから外れ、冗長レンジeR1内にある。
図20(c)の例では、1段目の演算増幅器11がゲインエラーを有することにより、演算増幅器11の出力電圧の一部が2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の正規レンジORから外れ、冗長レンジeR1,eR2内にある。
図20(d)の例では、1段目の回路3のサブA/Dコンバータ9aが誤動作することにより、1段目の演算増幅器11の出力電圧の一部が2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の正規レンジORから外れ、冗長レンジeR2内にある。
このように、1段目の演算増幅器11の出力電圧が2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の冗長レンジeR1,eR2内にある場合には、1段目の回路3のサブA/Dコンバータ9aから出力されるデジタル信号D9〜D6の値および2段目のサブA/Dコンバータ9から出力されるデジタル信号D5〜D4の値を補正する。
例えば、1段目の回路3のサブA/Dコンバータ9aから出力されるデジタル信号D9〜D6の値が“0111”であり、演算増幅器11の出力電圧が2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の冗長レンジeR2内にある場合には、デジタル信号D9〜D6の値を“0110”に補正し、2段目の回路3のサブA/Dコンバータ9aのデジタル信号D5,D4の値を“11”に補正する。
このようにして、1段目の回路3における演算増幅器11の出力電圧が2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の正規レンジORから外れる場合でも、冗長レンジeR1,eR2の存在により誤ったデジタル信号D9〜D4が出力されることを防止することができる。
図21(a)は1段目の回路3の演算増幅器11が入力オフセットを有する場合の演算増幅器11の出力電圧を示す図であり、図21(b)は1段目の回路3の演算増幅器11が入力オフセットを有する場合のアナログ−デジタル変換回路1の入出力特性を示す図である。
図21(a)において、1段目の回路3の演算増幅器11が入力オフセットを有さない場合の演算増幅器11の出力電圧を実線で示し、1段目の回路3の演算増幅器11が入力オフセットを有する場合の演算増幅器11の出力電圧を破線で示す。図21(b)において、1段目の回路3の演算増幅器11が入力オフセットを有さない場合のアナログ−デジタル変換回路1の入出力特性を実線で示し、1段目の回路3の演算増幅器11が入力オフセットを有する場合のアナログ−デジタル変換回路1の入出力特性を破線で示す。
図21(a)に示すように、1段目の回路3の演算増幅器11が入力オフセットを有する場合、その演算増幅器11の出力電圧は2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の正規レンジORから外れる。この場合、冗長レンジeR1,eR2を設けることにより、ミスコード(誤ったデジタル値)が発生することが防止される。図21(b)に示すように、アナログ−デジタル変換回路1の入出力特性は、全体的にオフセットを有するが、直線性は保たれる。
図22(a)は1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の演算増幅器11の出力電圧を示す図であり、図22(b)は1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合のアナログ−デジタル変換回路1の入出力特性を示す図である。
図22(a)において、1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有さない場合の演算増幅器11の出力電圧を実線で示し、1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合の演算増幅器11の出力電圧を破線で示す。
図22(b)において、1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有さない場合のアナログ−デジタル変換回路1の入出力特性を実線で示し、1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合のアナログ−デジタル変換回路1の入出力特性を破線で示す。
図22(a)に示すように、1段目の回路3の演算増幅器11がゲインエラーを有する場合、その演算増幅器11の出力電圧は2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9の正規レンジORから外れる。この場合、冗長レンジeR1,eR2を設けることにより、ミスコードが発生することが防止される。図22(b)に示すように、アナログ−デジタル変換回路1の入出力特性には段差エラーが生じるが、各段の入出力特性の境界はつながる。
図23は2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9が冗長レンジを有する場合のアナログ−デジタル変換回路1の入出力特性を示す図である。
図23においては、基準電圧Vrefは、図4の基準抵抗R1〜R15により生成される基準電圧のいずれかである。上記のように、2段目の回路4のサブA/Dコンバータ9が冗長レンジeR1,eR2を有する場合、入出力特性において正規レンジORと冗長レンジeR1,eR2とが重なる領域(以下、オーバーラップ領域と呼ぶ)が存在する。図23の例では、冗長レンジeR2の下限の電圧Vref1から冗長レンジeR1の上限の電圧Vref2までの範囲がオーバーラップ領域である。
この場合、段差エラー検出時に基準電圧Vrefの代わりにオーバーラップ領域の任意の電圧を差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9aに印加することができる。すなわち、段差エラー検出時に図1のスイッチSW31に基準電圧Vrefaの代わりにオーバーラップ領域の任意の電圧Vrefnを印加することにより、段差エラーの大きさを検出することができる。
この場合にも、まず、外部入力信号CDSaが“0”のときのデジタル出力値Doutと外部入力信号CDSaが“1”のときのデジタル出力値Doutとの差分値が段差エラーの大きさに相当する。
第2の実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1aにおいても、同様に、段差エラー検出時に基準電圧Vrefa,Vrefbの代わりにオーバーラップ領域の任意の電圧を図5のスイッチSW31,SW33を介して差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9bに印加することにより、段差エラーの大きさを検出することができる。
第3の実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1bにおいても、同様に、段差エラー検出時に基準電圧Vrefa,Vrefc,Vrefdの代わりにオーバーラップ領域の任意の電圧をスイッチSW31,SW41,SW51を介して差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9a,9cに印加することにより、段差エラーの大きさを検出することができる。
第4の実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1cにおいても、同様に、段差エラー検出時に基準電圧Vrefeの代わりにオーバーラップ領域の任意の電圧をスイッチSW71を介して入力ノードNIに印加することにより、段差エラーの大きさを検出することができる。
第5の実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1dにおいても、同様に、段差エラー検出時に基準電圧Vreffの代わりにオーバーラップ領域の任意の電圧をスイッチSW31を介して比較器25およびサンプルホールド回路26に印加することにより、段差エラーの大きさを検出することができる。
第6の実施の形態に係るアナログ−デジタル変換回路1eにおいても、同様に、段差エラー検出時に基準電圧Vrefaの代わりにオーバーラップ領域の任意の電圧を図18のスイッチSW31,SW33を介して差分増幅回路14およびサブA/Dコンバータ9bに印加することにより、段差エラーの大きさを検出することができる。
なお、上記第1〜第6の実施の形態において、スイッチSW31,SW32,SW33,SW41,SW42,SW51,SW52,SW61,SW62,SW71,SW11,SW12は、例えばCMOSスイッチにより構成されるが、これに限定されず、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ等の種々のスイッチング素子により構成することができる。