JP3850053B2 - 磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物及び磁気記録媒体用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体基板の製造に用いられる研磨材組成物及び磁気記録媒体用基板の製造方法に関し、更に詳しくは磁気記録媒体の高密度化に必要な低表面粗さを基板に与え、且つ基板を一層高速で研磨することができる磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物及び磁気記録媒体用基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年におけるハードディスク(HD)用基板に代表される磁気記録媒体用基板としては、従来一般的に用いられているアルミ基板及びガラス基板や、耐衝撃性の向上、薄板化による軽量化、軽量化によるモータ消費電力の低減等の目的を達成するために注目されているガラス状カーボン等からなるカーボン基板等がある。
【0003】
これらの磁気記録媒体用基板の製造に際しては、最終製品に必要な平坦度/面粗さを得るために、表面を研磨するラッピング工程、外周面及び内周面を研削して面取りするチャンファー加工工程を経て、最終研磨のためのポリッシング工程を行っている。
【0004】
また、これらの磁気記録媒体用基板においては、磁気記録媒体の高密度化に伴い、表面粗さが低く且つ高精度の表面を有することが要求されており、特にカーボン基板を研磨するラッピング工程やポリッシング工程において優れた研磨方法を開発し、上記性能を有するカーボン基板を提供することが要求されていた。
【0005】
かかる要求に対して、例えば、特開平6−339853号公報においては、カーボン基板を、水、アルミナ砥粒及び研磨助剤を用いて鏡面仕上げ研磨するカーボン基板の鏡面仕上研磨方法において、該研磨助剤として、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等を用いる研磨方法が提案されている。
【0006】
上記の研磨方法を用いて得られるカーボン基板は、ある程度の低表面粗さを有してはいる。しかしながら、上記の研磨方法においては、研磨助剤として酸化性基のアルミニウム塩を単独で用いており、該研磨助剤を含有する研磨材組成物を用いてカーボン基板を研磨した場合には、未だ満足のいく研磨速度が得られておらず、カーボン基板の生産性が十分でないというのが実情であった。
【0007】
また、上記公報には、研磨助剤として二種の化合物を組み合わせて用いることは記載されていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、磁気記録媒体の高密度化に必要な低表面粗さを基板に与え、且つ基板を一層高速で研磨することができる磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物及び磁気記録媒体用基板の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意研究した結果、磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物における研磨促進剤として、特定の化合物の組み合わせを用いることにより、基板の表面粗さを低くし、且つ研磨速度を向上させ得ることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、水と研磨材と研磨促進剤とを含有する磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物において、上記研磨促進剤として、硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムを用いることを特徴とする磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、水と研磨材と研磨促進剤とを含有する磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物を用いた研磨工程を有する磁気記録媒体用基板の製造方法において、上記研磨促進剤として、硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムを用いることを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、先ず本発明の磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物(以下、単に「研磨材組成物」ということもある)について詳細に説明する。
【0013】
上述の通り、本発明の研磨材組成物は、水と研磨材と研磨促進剤とを必須成分とするものである。以下、これらの成分について説明する。
【0014】
本発明の研磨材組成物に使用される上記研磨材としては、酸化アルミニウム(Al2 O3)を主成分とするアルミナ質研磨材やシリカ系研磨材等が挙げられる。上記アルミナ質研磨材は、その粒径や性状の違いにより、例えば、粉砕アルミナ系研磨材、六角板状アルミナ系研磨材、假焼アルミナ系研磨材等があり、本発明においては、製品の要求品質等に応じて種々選択することができる。また、上記シリカ系研磨材としては、Nalco社製 Nalco 2360 コロイドシリカや、Dow Corning社製 Ludox等が使用できる。これらのうち、アルミナ質研磨材を用いると研磨速度が速いので好ましく、特に基板表面の欠陥を少なくできる点で、六角板状アルミナ系研磨材及び假焼アルミナ系研磨材を用いることが好ましい。
【0015】
上記研磨材の粒径は、製品の要求品質等に応じて種々選択することができるが、一般的な範囲としての平均粒径は、好ましくは.0.001〜6μmであり、更に好ましくは0.01〜3μmである。上記平均粒径が上記の範囲内であると、研磨速度を遅くすることなく基板の表面粗さを小さく加工することが容易となるので好ましい。
【0016】
また、上記研磨材の最大粒径も、製品の要求品質等に応じて種々選択することができるが、一般的な範囲としての最大粒径は、好ましくは15μm以下であり、更に好ましくは6μm以下である。上記最大粒径が15μm以下であると、基板の表面欠陥が少なくなるように加工できるので好ましい。
【0017】
また、上記研磨材は、本発明の研磨材組成物中に分散させて用いられる。本発明の研磨材組成物中における該研磨材の含有量は、研磨材組成物の粘度や製品の要求品質等に応じて種々選択することができるが、一般的な範囲として含有量は、好ましくは0.05〜30重量%であり、更に好ましくは0.5〜25重量%である。上記含有量が0.05重量%未満であると、研磨パッドと基板とが直接接触し、基板にキズが生じる惧れがあり、30重量%を超えると、基板の表面粗さが高くなる惧れがある。
【0018】
また、上記研磨材は、本発明の研磨材組成物中に0.05〜30重量%含有され、その平均粒径が0.001〜6μmであり、且つその最大粒径が15μm以下であることが特に好ましい。
【0019】
而して、本発明の研磨材組成物においては、上記研磨促進剤として、硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムが用いられる。
【0020】
上述の通り、本発明においては、研磨促進剤として硫酸アルミニウムと硫酸マグネシウムとの組み合わせを用いる点に特徴がある。
【0021】
硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムは、本発明の研磨材組成物中に合計で、好ましくは0.5〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%含有される。上記含有量が0.5重量%未満であると、化学成分の効果が低くて、基板の表面粗さが高く、研磨速度が低くなる惧れがあり、30重量%を超えると、化学成分の効果が大きくなりすぎて、基板の表面欠陥が多くなる惧れがある。
【0022】
また、本発明の研磨材組成物における硫酸アルミニウムと硫酸マグネシウムとの含有量の重量比(前者/後者)は、好ましくは1/10〜10/1、更に好ましくは1/5〜5/1である。上記含有量の重量比が1/10未満であると、基板の表面欠陥が多くなる惧れがあり、10/1を超えると、基板の表面粗さが高くなる惧れがある。
【0023】
本発明の研磨材組成物は、例えば、所定量の研磨材と所定量の硫酸アルミニウムと所定量の硫酸マグネシウムとを個々に水(純水)に分散・溶解させておき、これらを混合させ、必要に応じて後述の他の成分を添加し、攪拌しながら所定量に達するまで水を加えることにより調製することができる。
【0024】
本発明の研磨材組成物において用いられる水は、その組成物中の含有量が好ましくは40〜99.4重量%、更に好ましくは65〜99重量%となるように使用される。上記水の含有量が40重量%未満であると、研磨材の分散性が低下し、基板の表面粗さが高くなる惧れがあり、99重量%を超えると、高研磨速度が得られなくなる惧れがある。
【0025】
また、本発明の研磨材組成物においては、上記各成分に加えて、必要に応じて他の成分を添加することもできる。そのような成分としては、例えば、増粘剤、研磨材向け分散剤、被研磨材(削りカス)向け分散剤等が挙げられる。これらの成分は、本発明の研磨材組成物中に好ましくは0.5〜10重量%含有される。
【0026】
本発明の研磨材組成物は、磁気記録媒体の基板を製造する際の研磨工程であれば何れの段階の研磨工程にも用いることができる。例えば、前述のラッピング工程及びポリッシング工程において用いることができる。特にポリッシング工程において用いることが好ましい。なお、本発明の研磨材組成物を用いてカーボン基板を得る場合には、上記ラッピング工程は、ディスク状の硬化樹脂を焼成してカーボン基板を得る工程(焼成炭素化工程)の前でも後でも行うことができる(以下、焼成炭素化工程の前にラッピングを行う工程を「焼成前ラッピング工程」といい、焼成炭素化工程の後にラッピングを行う工程を「焼成後ラッピング工程」という。)。
【0027】
また、本発明の研磨材組成物を用いた研磨の対象となる磁気記録媒体用基板は、磁性を有するものでも非磁性のものでもよいが、一般的には非磁性のものが用いられる。このような磁気記録媒体用基板としては、カーボン基板、強化ガラスや結晶化ガラスからなるガラス基板、アルミニウム合金等からなるアルミニウム基板、チタンやチタン合金からなるチタン基板、セラミックス基板、樹脂や複合材料からなる基板等が用いられ、特にカーボン基板、例えば、アモルファスカーボン一対のガラス板間で硬化させた樹脂をコア抜きして得られたディスク状硬化樹脂を焼成して得られるカーボン基板や、HIP法により得られるカーボン基板等が用いられるが、これらに制限されるものではない。
【0028】
次に、本発明の研磨材組成物を用いた研磨方法を有する磁気記録媒体用基板の好ましい製造方法について、カーボン基板のポリッシング工程を例にとり図1及び図2を参照して説明する。
ここで、図1は、磁気記録媒体カーボン基板の製造におけるポリッシング工程で使用される両面研磨機を下定盤を省略して示す概略正面図であり、図2は、図1におけるX−X線矢視図である。
【0029】
図1及び図2に示す両面研磨機2について説明すると、該両面研磨機2においては、ベース3上に矢印A方向に回転する下定盤4が設けられ、その上面には研磨パッド5が装着されている。
【0030】
図2に示すように、この下定盤4の上側には、中央の矢印B方向に回転する太陽歯車6と外周側の矢印C方向に回転する内歯歯車7とに噛み合って、公転しつつ自転する遊星歯車状のキャリア8が複数設けられていて、各キャリア8の複数の穴内にそれぞれ被加工物であるカーボン基板1がセットされる。
また、図1に示すように、上記下定盤4及び上記キャリア8の上方には上定盤9が設けられ、その下面には研磨パッド(図示せず)が装着されている。この上定盤9はエアシリンダ10の出力ロッド先端にブラケット11を介して回転可能に取り付けられていて、エアシリンダ10により昇降可能になされていると共に、下降時にはベース3側で図2に示す矢印D方向に回転するロータ12の溝に係合して同方向に回転するようになされている。
【0031】
上記上定盤9と上記下定盤4との間には、スラリー供給パイプ(図示せず)により本発明の研磨材組成物が供給されるようになっている。
そして、上記エアシリンダ10により上記上定盤9を下降させることにより、上記キャリア8と一体に動く上記カーボン基板は、上記下定盤4と上記上定盤9とに挟まれて研磨が行われる。
【0032】
上記両面研磨機を用いる研磨工程を有するカーボン基板の製造方法について更に説明すると、通常の方法で焼成されたカーボン基板は、最終製品に必要な平坦度及び面粗さを得るために焼成後ラッピング工程に付される。次いで、該カーボン基板は、その内周面及び外周面の面取りをするチャンファー加工に付される。その後、両面研磨機を用いるポリッシング工程に付され、所定の表面粗さを有する最終製品が得られる。
【0033】
上記両面研磨機を用いてカーボン基板をポリッシングする条件は、カーボン基板の種類、最終製品の要求品質、及び研磨材等にもよるが、一般的な条件は下記の通りである。
即ち、加工圧力は、好ましくは10〜2000g/cm2 であり、更に好ましくは30〜300g/cm2 である。
また、加工時間は、好ましくは2〜120分であり、更に好ましくは2〜30分である。
また、両面研磨機の定盤に装着する研磨パッドの硬度〔JIS A(JIS K−6301)〕は、好ましくは40〜100であり、更に好ましくは60〜100である。
また、両面研磨機の下定盤回転数は、研磨機サイズに依存するが、例えばSPEED FAM社製 9B型両面研磨機であれば、好ましくは10〜100rpmであり、更に好ましくは20〜60rpmである。
また、研磨材組成物の流量は、研磨機サイズに依存するが、例えばSPEEDFAM社製 9B型両面研磨機であれば、好ましくは5〜300cc/minであり、更に好ましくは10〜150cc/minである。
【0034】
以上、本発明の研磨材組成物を用いた研磨工程を有する磁気記録媒体用基板の好ましい製造方法について説明したが、かかる製造方法は上述の形態に制限されず、例えば、上記カーボン基板以外の基板を対象としたり、また上記ラッピング工程においても同様に適用できる。
【0035】
また、本発明においては、上記両面研磨機の定盤に、研磨パッドに代えて研磨材の砥石を装着し、該定盤間に上記研磨促進剤の所定濃度の水溶液を流し込みながら、上記基板を研磨することもできる。かかる研磨方法は、ラッピング工程及びポリッシング工程の際に用いることが特に好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0037】
〔実施例1、比較例1〜7並びに参考例1及び2〕
表1に示す研磨促進剤及び研磨材を水に分散させ、混合・攪拌することにより研磨材組成物を調製した。この研磨材組成物を用いて、図1及び図2に示す両面研磨機により粒径75μmのSiC砥粒にてラッピングした直径2.5インチのカーボン基板をポリッシングした。この際、両面研磨機は、下記の設定条件にして使用した。
【0038】
<両面研磨機の設定条件>
使用両面研磨機;SPEED FAM社製9B型両面研磨機
加工圧力;150g/cm2
加工時間;30分
研磨パッドの硬度;90
下定盤回転数;40rpm
研磨材組成物流量;50cc/min
【0039】
上記カーボン基板の研磨速度及び研磨後のカーボン基板の表面粗さRaを下記の測定法に従って測定した。それらの結果を表1に示す。
【0040】
<研磨速度>
研磨前の基板板厚と研磨後の基板板厚との差を求め、その値を加工時間(30分)で除すことで研磨速度を求めた。
<表面粗さRa>
触針式表面粗さ計 (TENCOR P2)により、次の条件で測定した。
触針径;0.6μm(針曲率半径)、触針押付け圧力;7mg、測定長;250μm×8箇所、トレース速度;2.5μm/秒、カットオフ;1.25μm(ローパスフィルタ)
【0041】
【表1】
【0042】
表1の結果より、以下のことが分かる。研磨材として六角板状アルミナを用いた場合に、研磨促進剤として硫酸アルミニウムと硫酸マグネシウムとの組み合わせを用いた実施例1の磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物を用いて研磨したときには、得られた基板の表面粗さが研磨促進剤として酸化性基を含むアルミニウム塩又は酸化性基を含むマグネシウム塩を単独で用いたとき(比較例1〜5)と同等程度でありながら、研磨速度が一層向上している。
【0043】
【発明の効果】
以上、詳述した通り、本発明の磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物は、研磨促進剤として硫酸アルミニウムと硫酸マグネシウムとの組み合わせを用いることにより、磁気記録媒体の高密度化に必要な低表面粗さを磁気記録媒体用基板に与え、且つ基板を一層高速で研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーボン基板のポリッシング工程で使用される両面研磨機を下定盤を省略して示す概略正面図である。
【図2】図1の両面研磨機のX−X線矢視図である。
【符号の説明】
1 カーボン基板
2 両面研磨機
4 下定盤
9 上定盤
Claims (8)
- 水と研磨材と研磨促進剤とを含有する磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物において、上記研磨促進剤として、硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムを用いることを特徴とする磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物。
- 上記研磨材がアルミナ質研磨材である、請求項1記載の研磨材組成物。
- 硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムが、上記研磨材組成物中に合計で0.5〜30重量%含有され、且つ硫酸アルミニウムと硫酸マグネシウムとの含有量の重量比(前者/後者)が1/10〜10/1である、請求項1又は2記載の研磨材組成物。
- 上記研磨材が上記研磨材組成物中に0.05〜30重量%含有され、該研磨材の平均粒径が0.001〜6μmであり、且つ該研磨材の最大粒径が15μm以下である、請求項1〜3の何れかに記載の研磨材組成物。
- 水と研磨材と研磨促進剤とを含有する磁気記録媒体基板製造用研磨材組成物を用いた研磨工程を有する磁気記録媒体用基板の製造方法において、上記研磨促進剤として、硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムを用いることを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
- 上記研磨材がアルミナ質研磨材である、請求項5記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
- 上記基板がカーボン基板である、請求項5又は6記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
- 硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムが、上記研磨材組成物中に合計で0.5〜30重量%含有され、且つ硫酸アルミニウムと硫酸マグネシウムとの含有量の重量比(前者/後者)が1/10〜10/1である、請求項5〜7の何れかに記載の磁気記録媒体用基板の製造方法。
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